(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】剥離シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240702BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240702BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240702BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/10
B32B27/30 102
A61K9/70 401
(21)【出願番号】P 2022092502
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2020169482の分割
【原出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敏昭
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111816(JP,A)
【文献】特開2016-186139(JP,A)
【文献】特開2002-166504(JP,A)
【文献】特開2011-6352(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014586(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0184663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A61K 9/00-9/72、47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離剤層、第1の樹脂層、紙基材及び第2の樹脂層をこの順に有
する経皮吸収性薬剤含有粘着剤層用剥離シートであって、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層が
完全鹸化ポリビニルアルコールもしくはアニオン変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール層であ
り、
前記剥離シートにおける少なくとも一方向のクラーク剛度が45.0cm
3
/100以上200.0cm
3
/100以下であり、
前記剥離シートの両方の面の平滑度が50秒以上である、経皮吸収性薬剤含有粘着剤層用剥離シート。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール層は完全鹸化ポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載の経皮吸収性薬剤含有粘着剤層用剥離シート。
【請求項3】
坪量が50~150g/m
2である、請求項1
又は2に記載の経皮吸収性薬剤含有粘着剤層用剥離シート。
【請求項4】
さらに印刷層を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の経皮吸収性薬剤含有粘着剤層用剥離シート。
【請求項5】
前記経皮吸収性薬剤がケトプロフェンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮吸収性薬剤含有粘着剤層用剥離シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シートに関する。具体的には、本発明は、湿布シート等の貼付剤に用いられる剥離シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な薬効成分を含む貼付剤(湿布シート等)が流通している。このような貼付剤は、通常、支持体と、経皮吸収性薬剤を含有する粘着剤層と、粘着剤層の表面に剥離可能に貼付された剥離シートから構成されている。貼付剤を使用する際には、剥離シートを粘着剤層から剥がし、露出した粘着剤層を患部に貼合する。
【0003】
例えば、特許文献1には、支持体の片面に薬物を含有する粘着剤層が設けられ、該粘着剤層表面が剥離紙により保護された貼付剤が開示されている。また、特許文献2には、貼付剤に貼合される剥離紙用基体(剥離シート)とであって、原紙の両面がポリオレフィン樹脂で被覆された剥離紙用基体が開示されており、特許文献3には、剥離剤層、第1の樹脂層、紙基材、及び第2の樹脂層をこの順で有し、剥離剤層側に凸となる向きにカールしている剥離シートが開示されている。なお、特許文献3では、紙基材の両面にポリエチレン樹脂が押出しラミネートによって積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-265372号公報
【文献】特開平3-227499号公報
【文献】国際公開第2017/038304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、脱プラスチック原料への代替が進められている中で、貼付剤においては、紙基材を用いた剥離シートを用いることが検討されている。しかしながら、紙基材を用いた従来の剥離シートにおいては、粘着剤層に含まれる経皮吸収性薬剤が剥離シートに移行するなどして、貼付剤としての薬効が低減する場合があり、問題となっていた。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、紙基材を用いた剥離シートであって、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行が少ない剥離シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、剥離剤層、第1の樹脂層、紙基材、及び第2の樹脂層をこの順に有する剥離シートにおいて、第1の樹脂層及び第2の樹脂層をポリビニルアルコール層とすることにより、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行が少ない剥離シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] 剥離剤層、第1の樹脂層、紙基材及び第2の樹脂層をこの順に有し、
第1の樹脂層及び第2の樹脂層がポリビニルアルコール層である、剥離シート。
[2] JIS B 0601:2013に準じて測定した剥離シートの剥離剤層側の表面粗さRzが、80μm以上である、[1]に記載の剥離シート。
[3] 剥離シートにおける少なくとも一方向のクラーク剛度が40cm3/100以上である、[1]又は[2]に記載の剥離シート。
[4] ポリビニルアルコール層は完全鹸化ポリビニルアルコールを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の剥離シート。
[5] 坪量が50~150g/m2である、[1]~[4]のいずれかに記載の剥離シート。
[6] さらに印刷層を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の剥離シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紙基材を用いた剥離シートであって、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行が少ない剥離シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の剥離シートの構成を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
(剥離シート)
本発明の剥離シートは、剥離剤層、第1の樹脂層、紙基材、及び第2の樹脂層をこの順で有する。ここで、第1の樹脂層及び第2の樹脂層はポリビニルアルコール層である。本発明においては、第1の樹脂層及び第2の樹脂層をポリビニルアルコール層とすることにより、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行が少ない剥離シートを得ることができる。このため、本発明の剥離シートを備える貼付剤(湿布シート等)においては、経時後であっても粘着剤層に含まれる経皮吸収性薬剤の残存率が高く、貼付剤(湿布シート等)は優れた薬効を発揮することが可能となる。
【0013】
図1は、本発明の剥離シートの構成を説明する概略断面図である。
図1に示されているように、本発明の剥離シート10は、剥離剤層12、第1の樹脂層14、紙基材16、及び第2の樹脂層18をこの順で有する。なお、剥離シート10は、第2の樹脂層18上にさらに剥離剤層を有していてもよい。すなわち、剥離シート10は、第1の剥離剤層12、第1の樹脂層14、紙基材16、第2の樹脂層18及び第2の剥離剤層をこの順で有するものであってもよい。
【0014】
剥離シートの全体の坪量は、30g/m2以上であることが好ましく、40g/m2以上であることがより好ましく、50g/m2以上であることがさらに好ましく、60g/m2以上であることが特に好ましい。また、剥離シートの全体の坪量は、150g/m2以下であることが好ましく、120g/m2以下であることがより好ましく、110g/m2以下であることが好ましい。これにより、クラーク剛度を調節して易剥離性を調整することができる。
【0015】
剥離シートの全体の厚みは、50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。また、剥離シートの全体の厚みは、190μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、140μm以下であることがさらに好ましい。これにより、クラーク剛度を調節して易剥離性を調整することができる。
【0016】
剥離シートの平滑度は、500秒以下であることが好ましく、400秒以下であることがより好ましく、300秒以下であることがさらに好ましく、200秒以下であることが特に好ましい。また、剥離シートの平滑度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、40秒以上であることが好ましく、50秒以上であることがより好ましい。剥離シートの平滑度は、JIS P 8155:2010に準じて測定される王研式平滑度である。なお、剥離シートにおいて少なくとも一方の面が上記平滑度の範囲であれることが好ましいが、両方の面が上記平滑度の範囲であれることが特に好ましい。剥離シートの平滑度を上記範囲内とすることにより、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行をより効果的に抑制することができる。
【0017】
JIS B 0601:2013に準じて測定した剥離シートの剥離剤層側の表面粗さ(最大高さ)Rzは、80μm以上であることが好ましく、85μm以上であることがより好ましく、90μm以上であることがさらに好ましい。また、剥離シートの剥離剤層側の表面粗さ(最大高さ)Rzの上限値は特に限定されるものではないが、200μm以下であることが好ましい。剥離シートの表面粗さRzを上記範囲内とすることにより、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行をより効果的に抑制することができる。
【0018】
また、JIS B 0601:2013に準じて測定した剥離シートの剥離剤層側の表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、3.00μm以上であることが好ましく、3.20μm以上であることがより好ましく、3.30μm以上であることがさらに好ましい。また、剥離シートの剥離剤層側の表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、4.20μm以下であることが好ましく、4.00μm以下であることがより好ましく、3.90μm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
JIS P 8143:2009に準じて測定される剥離シートにおける少なくとも一方向のクラーク剛度は、40.0cm3/100以上であることが好ましく、45.0cm3/100以上であることがより好ましく、50.0cm3/100以上であることがさらに好ましく、80.0cm3/100以上であることが特に好ましい。また、剥離シートにおける少なくとも一方向のクラーク剛度は、200.0cm3/100以下であることが好ましく、180.0cm3/100以下であることがより好ましく、170.0cm3/100以下であることがさらに好ましい。剥離シートのクラーク剛度を上記範囲内とすることにより、紙基材を用いた剥離シートの易剥離性を高めることができる。ここで、剥離シートを形成する長辺の方向を縦方向、これと直交する方向を横方向という。また、剥離シートが一対の辺を結ぶように形成された切り込み線を有する場合、切り込み線の方向を横方向、これと直交する方向を縦方向という。剥離シートの少なくとも一方向のクラーク剛度とは、例えば、剥離シートの縦方向のクラーク剛度である。
【0020】
剥離シートの剥離剤層側の面の剥離力は、50mN/50mm以上であることが好ましく、70mN/50mm以上であることがより好ましく、100mN/50mm以上であることがさらに好ましく、125mN/50mm以上であることが特に好ましい。また、剥離シートの剥離剤層側の面の剥離力は、350mN/50mm以下であることが好ましく、300mN/50mm以下であることがより好ましく、250mN/50mm以下であることがさらに好ましい。剥離シートの剥離力を上記範囲内とすることにより、保管時に剥離シートが意図せずに剥離することを抑制することができ、かつ積層体を使用する際の取り扱い性を高めることができる。また、紙基材を用いた剥離シートであって、例えばクラーク剛度が200.0cm3/100以下の剥離シートであってもその易剥離性を高めることができる。なお、剥離シートの剥離力は以下の方法で測定される値である。まず、剥離シートの剥離剤層上に乾燥前の塗布厚みが150μmになるようにアクリル系粘着剤オリバインBPS8170(トーヨーケム製)を塗布する。次いで、粘着剤を塗布した剥離シートを100℃の熱風乾燥機で乾燥した後、室温で坪量50g/m2の上質紙をローラーで貼り合わせ、さらに、2.45kPaの荷重をかけて、70℃で2時間エージングする。得られた積層シートを幅方向200mm×流れ方向50mm大きさのサンプルに裁断し、サンプルの上質紙側を180°に折り返し、引張試験機を用いて引張速度0.3m/minで剥離力を測定する。
【0021】
<紙基材>
紙基材はパルプを含有する。本発明で用いることができるパルプとしては、木材パルプ、綿、麻、古紙パルプ、非木材パルプ等を挙げることができる。中でも、木材パルプを用いることが好ましく、木材パルプとしては、針葉樹由来パルプ(NKP)と広葉樹由来パルプ(LKP)等を挙げることができる。本実施形態で用いる紙基材は、パルプを90質量%以上含有するものである。紙基材としては、具体的には、上質紙、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙、クラフト紙等を用いることができる。
【0022】
紙基材の坪量は、30~150g/m2であることが好ましく、40~120g/m2であることがより好ましく、45~110g/m2であることがさらに好ましく、50~110g/m2であることが特に好ましい。また、紙基材の厚みは45~190μmであることが好ましく、60~150μmであることがより好ましく、70~140μmであることがさらに好ましい。紙基材の坪量及び厚みを上記範囲内とすることにより、粘着剤層からの易剥離性を高めつつ、剥離シートの薄膜化が可能となる。また、薄膜化した剥離シートは、使用後の処分も容易であり、環境への負荷を低減することができる。
【0023】
<樹脂層>
本実施形態の剥離シートにおいては、第1の樹脂層と第2の樹脂層はポリビニルアルコール層である。ポリビニルアルコール層を構成するポリビニルアルコールは、一般的には、酢酸ビニルモノマーを重合して得られたポリ酢酸ビニル樹脂を鹸化することで製造される。
【0024】
ポリビニルアルコールとしては、部分鹸化ポリビニルアルコールまたは完全鹸化ポリビニルアルコールを用いることができる。鹸化度は、ポリ酢酸ビニル樹脂を鹸化する工程で酢酸ビニル単位をどれだけ水酸基へ変換するかによって任意に調整できる。ポリビニルアルコールの鹸化度は、JIS K 6726-1994に準じて測定できる。
【0025】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。また、ポリビニルアルコールは、完全鹸化ポリビニルアルコールであってもよい。本実施形態においては、ポリビニルアルコール層は完全鹸化ポリビニルアルコールを含むことが好ましい。
【0026】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、300~4000であることが好ましく、500~3000であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度を上記範囲内とすることにより、水への溶解性が向上し、塗工が容易となる。なお、ポリビニルアルコールの平均重合度は、酢酸ビニルモノマーを重合させる工程で酢酸ビニルモノマーをどれだけ結合させるかによって任意に調整できる。ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて測定できる。
【0027】
ポリビニルアルコールとしては、水酸基(OH基)や酢酸基(OCOCH3基)以外の官能基を導入していない未変性ポリビニルアルコールを用いることができる。また、ポリビニルアルコールとしては、水酸基や酢酸基以外の官能基を導入した変性ポリビニルアルコールを用いることもできる。変性ポリビニルアルコールに導入される官能基としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、スルホン酸基、シラノール基、カチオン基、アルキル基などが挙げられる。中でも変性ポリビニルアルコールはアニオン変性ポリビニルアルコールであることが好ましく、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールであることが特に好ましい。
【0028】
ポリビニルアルコール層は、ポリビニルアルコールを主成分として含む層であり、ポリビニルアルコールのみからなる層であってもよい。また、ポリビニルアルコール層は、ポリビニルアルコール以外の任意成分を含んでいてもよい。この場合、任意成分としては、例えば、紫外線吸収剤、顔料、消臭剤、殺菌剤、消泡剤、濡れ剤等を挙げることができる。
【0029】
第1の樹脂層の坪量(形成量)は、片面当たり0.5~6.0g/m2であることが好ましく、0.6~5.0g/m2であることがより好ましく、0.7~4.0g/m2であることがさらに好ましい。また、第2の樹脂層の坪量(形成量)も上記範囲内であることが好ましい。第1の樹脂層及び第2の樹脂層の坪量(形成量)を上記範囲内とすることにより、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行をより効果的に抑制することができる。
【0030】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層は塗工層であることが好ましい。すなわち、第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、紙基材の両面に各樹脂層を形成する塗液を塗工して、乾燥することで得られる層であることが好ましい。第1の樹脂層及び第2の樹脂層を塗工層とすることにより、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行をより効果的に抑制することができる。
【0031】
<剥離剤層>
剥離剤層を形成する際には、シリコーン系剥離剤等を含有する塗布液を塗工した後に、130~200℃で加熱処理を施すことが好ましい。本実施形態においては、紙基材に第1の樹脂層が積層された2層構成体の樹脂層側に剥離剤等を含有する塗布液が塗工され、加熱処理が行われることが好ましい。
【0032】
剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アルキド系、長鎖アルキル系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ゴム系エラストマー、ワックス系、TPX系(メチルペンテコポリマー)等の剥離剤が挙げられる。これらの中でも、剥離剤はシリコーン系剥離剤であることが好ましい。
【0033】
剥離剤層の形成量は、特に限定されないが、片面当たり0.3~1.5g/m2であることが好ましく、0.4~1.3g/m2であることがより好ましく、0.6~1.2g/m2であることがさらに好ましい。
【0034】
<任意層>
本実施形態の剥離シートは、さらに印刷層を有していてもよい。印刷層は例えば、剥離シートの粘着剤層側とは逆の最表層に設けられてもよく、もしくは樹脂層と紙基材の間に設けられてもよい。
【0035】
(剥離シートの製造方法)
本発明の剥離シートの製造方法は、紙基材の一方の面上に、第1の樹脂層を形成し、第1の樹脂層の一方の面上に剥離剤層を形成する層形成工程と、紙基材の他方の面上に第2の樹脂層を形成する工程とをこの順で有することが好ましい。また、第2の樹脂層を形成する工程の後には、第2の樹脂層上にさらに剥離剤層を形成する工程を設けてもよい。
【0036】
層形成工程では、まず、紙基材の一方の面上に、第1の樹脂層を形成する。第1の樹脂層は、紙基材の一方の面上に積層される。この場合、第1の樹脂層は、樹脂形成用組成物(塗工液)を塗工することにより形成されることが好ましい。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。また、必要に応じて接着剤等を用いて両者を貼合してもよい。
【0037】
紙基材と第1の樹脂層の2層構成体が形成された後には、第1の樹脂層の一方の面上に剥離剤層を形成する工程が設けられる。このようにして、剥離剤層、第1の樹脂層及び紙基材がこの順に積層された3層構成体が形成される。剥離剤層は、剥離剤を含有する塗布液を塗工し、加熱処理を行うことにより形成ことができる。本発明の製造工程では、剥離剤層を形成する工程において、加熱処理が施されることが好ましい。
【0038】
剥離剤層、第1の樹脂層及び紙基材がこの順に積層された3層構成体が形成された後には、調湿工程が設けられてもよい。調湿工程では、紙基材の水分含有量を適宜調整することができる。
【0039】
剥離シートの製造工程は、さらに印刷工程を有していてもよい。印刷工程では、紙基材に印刷が施されてもよい。印刷は紙基材の一方の表面に施される。印刷工程における印刷方式は、公知の印刷方式を採用することができるが、中でもグラビア印刷方式であることが好ましい。また、印刷工程は、印刷層を形成する工程であってもよい。
【0040】
3層構成体が形成された後には、紙基材の他方の面上に第2の樹脂層を形成する工程が設けられる。第2の樹脂層は、紙基材の他方の面上に積層される。ここで、紙基材の他方の面とは、紙基材の一方の面であって、第1の樹脂層が積層された面とは反対側に位置する面のことをいう。第2の樹脂層は、樹脂形成用組成物(塗工液)を塗工することにより形成されることが好ましい。塗工装置としては、上述した塗工装置を用いることができる。
【0041】
(用途)
本実施形態の剥離シートは、例えば、湿布シートといった貼付剤等の粘着剤層の表面を保護する剥離シートとして用いられることが好ましい。湿布シートを構成する粘着剤層や支持体としては、例えば、国際公開第2017/038304号に記載の構成を採用することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、実施例3は、参考例3と読み替えるものとする。
【0043】
(実施例1~3)
<剥離シートの作製>
表1に記載した坪量を有する紙基材(王子エフテックス株式会社製の上質紙)の一方の面に、ポリビニルアルコールを含有する水溶液を、バー塗工(実施例1)またはグラビア塗工(実施例2及び3)し、乾燥することによって第1の樹脂層を形成した。次に、付加型溶剤シリコーン(信越化学工業株式会社製、KS835)を含有する塗布液を第1の樹脂層上に塗工し、60~150℃で2~10秒間加熱処理を行って剥離剤層を形成した。
なお、実施例で用いたポリビニルアルコールは、以下の通りである。
ポリビニルアルコール:完全鹸化ポリビニルアルコール(商品名:Kシリーズ、鹸化度97.5%以上、デンカ株式会社製)
ポリビニルアルコール:アニオン変性ポリビニルアルコール(商品名:Aシリーズ、鹸化度:96.5%以上、日本酢ビポバール株式会社製)
【0044】
次いで、紙基材の他方の面に、ポリビニルアルコールを含有する水溶液を、バー塗工(実施例1)またはグラビア塗工(実施例2及び3)し、乾燥することによって第2の樹脂層を形成した。なお、実施例1においては、付加型溶剤シリコーン(信越化学工業株式会社製、KS835)を含有する塗布液を第2の樹脂層上に塗工し、60~150℃で2~10秒間加熱処理を行ってさらに剥離剤層を形成し、剥離シートを得た。
【0045】
(比較例1及び2)
<剥離シートの作製>
表1に記載した坪量を有する紙基材(王子エフテックス株式会社製の上質紙)の一方の面に、ポリエチレン樹脂を用いて、押出しラミネートを行い、第1の樹脂層(厚さ19μm)を形成した。次に、付加型溶剤シリコーン(信越化学工業株式会社製、KS835)を含有する塗布液を第1の樹脂層上に塗工し、60~150℃で2~10秒間加熱処理を行って剥離剤層を形成した。
なお、比較例で用いたポリエチレン樹脂は、以下の通りである。
ポリエチレン樹脂:低密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HE680/ノバテックLD LC600A=40/60、日本ポリエチレン社製)
【0046】
次いで、紙基材の他方の面にも同様に押出しラミネートを行って第2の樹脂層(厚さ19μm)を形成した。なお、比較例2においては、付加型溶剤シリコーン(信越化学工業株式会社製、KS835)を含有する塗布液を第2の樹脂層上に塗工し、60~150℃で2~10秒間加熱処理を行って剥離剤層を形成し、剥離シートを得た。
【0047】
(評価方法)
実施例及び比較例で得られた剥離シートについて以下の評価を行った。
【0048】
<坪量>
JIS P 8124:1998に準じて測定した。
【0049】
<厚み>
JIS P 8118:1998に準じて測定した。
【0050】
<平滑度>
JIS P 8155:2010に準じて王研式平滑度を測定した。
【0051】
<クラーク剛度>
JIS P 8143:2009に準じて測定した。
【0052】
<剥離力>
実施例及び比較例で得られた剥離シートの剥離剤層上に乾燥前の塗布厚みが150μmになるようにアクリル系粘着剤オリバインBPS8170(トーヨーケム製)を塗布した。粘着剤を塗布した剥離シートを100℃の熱風乾燥機で乾燥した後、室温で坪量50g/m2の上質紙をローラーで貼り合わせた。さらに、2.45kPaの荷重をかけて、70℃で2時間エージングした後、得られた積層シートを幅方向200mm×流れ方向50mm大きさのサンプルに裁断した。得られたサンプルの上質紙側を180°に折り返し、引張試験機を用いて引張速度0.3m/minで剥離力を測定した。
【0053】
<表面粗さ>
JIS B 0601:2013に準じて、粘着剤層と接する剥離剤層表面(剥離シート表側面ともいう)の算術平均粗さRa、最大高さRzを測定した。
【0054】
<経皮吸収性薬剤の残存率>
市販品のケトプロフェン含有湿布シートの剥離フィルムを剥がし、実施例及び比較例で得られた剥離シートに貼り換えた。2Kgのローラーを2往復させることによりプレスした。アルミパウチに入れてヒートシールし、恒温恒湿器(40℃、相対湿度75%の環境条件)にて6か月間保存した。保存後、縦10mm×横20mmのシート片に裁断し、剥離シートを剥がして、粘着剤層及び支持体が積層されたサンプルについて溶媒抽出を行い、LC/PDA(フォトダイオードアレイ検出器付き高速液体クロマトグラフィー、LC:カラムCadenzaCD-C18、PDA:SCAN 210-800nm、分解能1.2nm)を用いて、抽出溶液中のケトプロフェン濃度を求めた。そして、粘着剤層及び支持体が積層されたサンプルについての1枚分の全面積重量を用いて、市販品サイズのシート1枚当たりのケトプロフェン量(mg/シート)を算出した。なお、恒温恒湿器に保存する前の粘着剤層及び支持体が積層されたサンプルについても同様の方法でケトプロフェン量(mg/シート)を算出し、下記式から経皮吸収性薬剤の残存率を算出した。
経皮吸収性薬剤の残存率(%)=40℃、相対湿度75%に6か月保存後のケトプロフェン残存量(mg/シート)/保存前のケトプロフェン残存量(mg/シート)×100
【0055】
【0056】
比較例に比べて実施例では、経皮吸収性薬剤の残存率が高かった。すなわち、実施例で得られた剥離シートにおいては、粘着剤層からの経皮吸収性薬剤の移行が抑制されていた。
【符号の説明】
【0057】
10 剥離シート
12 剥離剤層
14 第1の樹脂層
16 紙基材
18 第2の樹脂層