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  • 特許-ゲート駆動回路及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20240702BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H03K17/16 J
H02M1/08 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022112288
(22)【出願日】2022-07-13
(65)【公開番号】P2024010787
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆
(72)【発明者】
【氏名】政所 隆大
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-043842(JP,A)
【文献】特開2021-061663(JP,A)
【文献】特開2021-103849(JP,A)
【文献】特開2018-207276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/16
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー素子のゲート容量を充電する電流を流すソース側スイッチ素子と、前記パワー素子のゲート容量から放電する電流を流すシンク側スイッチ素子と、を備えたゲート駆動回路であって、
前記シンク側スイッチ素子に並列に接続されたシンク側サブスイッチ素子と、
前記シンク側スイッチ素子を駆動するローサイド側駆動信号を遅延させる遅延回路を用いて、前記シンク側サブスイッチ素子を、前記シンク側スイッチ素子と共に駆動を開始させた後、第1遅延時間が経過すると駆動を停止させ、前記シンク側スイッチ素子の駆動開始から前記第1遅延時間よりも長い第2遅延時間が経過すると駆動を開始させるローサイド側サブ駆動信号を生成するサブ駆動信号生成回路と、を具備し、
前記遅延回路は、
前記シンク側スイッチ素子と前記シンク側サブスイッチ素子との両方の駆動によって前記パワー素子のゲート容量がローレベルに遷移するまでの時間よりも短い前記第1遅延時間と、
前記シンク側サブスイッチ素子の駆動が停止した後に前記シンク側スイッチ素子のみの駆動によって前記パワー素子のゲート容量が前記ローレベルに遷移するまでの時間よりも長い前記第2遅延時間と、を生成することを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
前記シンク側スイッチ素子及び前記シンク側サブスイッチ素子は、MOSトランジスタで構成され、
前記遅延回路は、CMOSを用いて前記ローサイド側駆動信号を遅延させることを特徴とする請求項に記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゲート駆動回路を備えることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー素子をスイッチングするゲート駆動回路及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高電圧と大電流を制御するパワー素子は、スイッチングに際し、スイッチング損失とノイズとが相反する事象として存在している。スイッチング損失とノイズとの抑制は、スイッチングの初期と後期とでゲート抵抗値を変化させるステップドライブ回路によって両立できる。
【0003】
一方、パワー素子を用いたシステムを構成する場合、パワー素子は、ミラー容量による誤動作の可能性がある。ミラー容量による誤動作は、パワー素子のゲートをハイレベル又はローレベルに維持するミラークランプ回路によって防止できる。
【0004】
ステップドライブ回路及びミラークランプ回路の追加により、ICチップの制御回路部の素子面積は、増大する傾向にある。そこで、ステップドライブ回路及びミラークランプ回路を小さな素子面積で実現する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の半導体装置は、複数個が並列に接続されたパワー素子駆動用のMOSトランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)と、パワー素子のゲート電圧を検知するための2個のコンパレータと、を備える。パワー素子のオンオフの際は、最初はすべてのMOSトランジスタに駆動信号が入力されてオンとなり、高い電流でパワー素子のゲートに充電がされる。一方のコンパレータの基準電圧は、ステップドライブ用であり、パワー素子のゲート電圧がステップドライブ用の基準値を超えることで、MOSトランジスタのいくつかがオンからオフに切り替わる。これにより、充電電流は、低下し、入力波形をなまらせることで、ノイズが低減される。他方のコンパレータの基準電圧は、ミラークランプ用であり、パワー素子のゲート電圧がミラークランプ用の基準値を超えることで、すべてのMOSトランジスタがオンになる。これにより、パワー素子のゲート電圧は、維持されて誤動作が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6634329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術は、複数の基準電圧によってパワー素子のゲート電圧をモニタして、MOSトランジスタのオンオフ制御を実施している。このため、依然として、回路の複雑化や素子面積の増大につながっている。例えば、3相のインバータ回路を1パッケージに収めたIPM(Intelligent Power Module)等に従来技術を適用する場合、回路の複雑化や素子面積の増大は、無視できなってしまう。
【0008】
また、近年では高速動作の必要性が高くなっており、その際に使用されるパワー素子として、SiC(シリコンカーバイド)を使用したMOSトランジスタやSJ(スーパージャンクション)-MOSトランジスタの採用が増加している。これらのMOSトランジスタは、動作速度が高速化しているため、パワー素子のゲート電圧をモニタし、コンパレータ経由してからの動作では応答が遅れることになり、想定した機能動作が実現できないことが懸念される。
【0009】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パワー素子のゲート電圧をモニタすることなく、ステップドライブ機能とミラークランプ機能とを実現できるゲート駆動回路及び半導体装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るゲート駆動回路及び半導体装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
本発明に係るゲート駆動回路は、パワー素子のゲート容量を充電する電流を流すソース側スイッチ素子と、前記パワー素子のゲート容量から放電する電流を流すシンク側スイッチ素子と、を備えたゲート駆動回路であって、前記シンク側スイッチ素子に並列に接続されたシンク側サブスイッチ素子と、前記シンク側スイッチ素子を駆動するローサイド側駆動信号を遅延させる遅延回路を用いて、前記シンク側サブスイッチ素子を、前記シンク側スイッチ素子と共に駆動を開始させた後、第1遅延時間が経過すると駆動を停止させ、前記シンク側スイッチ素子の駆動開始から前記第1遅延時間よりも長い第2遅延時間が経過すると駆動を開始させるローサイド側サブ駆動信号を生成するサブ駆動信号生成回路と、を具備し、前記遅延回路は、前記シンク側スイッチ素子と前記シンク側サブスイッチ素子との両方の駆動によって前記パワー素子のゲート容量がローレベルに遷移するまでの時間よりも短い前記第1遅延時間と、前記シンク側サブスイッチ素子の駆動が停止した後に前記シンク側スイッチ素子のみの駆動によって前記パワー素子のゲート容量が前記ローレベルに遷移するまでの時間よりも長い前記第2遅延時間と、を生成することを特徴とする。
本発明に係る半導体装置は、上述のゲート駆動回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゲート駆動回路及び半導体装置は、パワー素子のゲート電圧をモニタすることなく、ステップドライブとミラークランプとを実現できるため、回路を簡略して素子面積を削減できると共に、パワー素子の高速化に追従できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るゲート駆動回路の実施の形態の構成を示す回路図である。
図2図1に示すステップドライブ期間生成回路の構成を示す図である。
図3図1に示すミラークランプ期間生成回路の構成を示す図である。
図4図1に示すサブ駆動信号生成回路で使用される遅延回路を示す図である。
図5図1に示すゲート駆動回路における各部の信号波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
本実施の形態の半導体装置1は、図1を参照すると、パワー素子Q1を駆動するゲート駆動回路2を備えたIC(集積回路)である。半導体装置1は、パワー素子Q1のゲートが接続される出力端子HOと、高電位に接続される高電位端子VBと、低電位に接続される低電位端子HSと、を備える。
【0015】
パワー素子Q1は、高電圧と大電流を制御するスイッチ素子であり、SiC(シリコンカーバイド)を使用したMOSトランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)やSJ(スーパージャンクション)-MOSトランジスタ等の使用を想定している。パワー素子Q1は、通常のMOSやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であっても良い。
【0016】
ゲート駆動回路2は、主ドライブ回路10と、サブドライブ回路20と、サブ駆動信号生成回路30と、インバータINV0とを備える。
【0017】
主ドライブ回路10は、PチャネルのPMOSトランジスタQ11と、nチャネルのNMOSトランジスタQ12とを備える。PMOSトランジスタQ11は、ソースが高電位端子VBに接続され、ドレインが出力端子HOに接続される。NMOSトランジスタQ12は、ソースが低電位端子HSに接続され、ドレインが出力端子HOに接続される。
【0018】
サブドライブ回路20は、nチャネルのNMOSトランジスタQ21と、nチャネルのNMOSトランジスタQ22とを備える。NMOSトランジスタQ21は、ドレインが高電位端子VBに接続され、ソースが出力端子HOに接続される。NMOSトランジスタQ22は、ソースが低電位端子HSに接続され、ドレインが出力端子HOに接続される。
【0019】
主ドライブ回路10及びサブドライブ回路20の駆動によって、出力端子HOの信号レベルは、パワー素子Q1を駆動するゲート信号としてハイレベルとローレベルに遷移する。
【0020】
主ドライブ回路10のPMOSトランジスタQ11と、サブドライブ回路20のNMOSトランジスタQ21とは、パワー素子Q1のゲート容量を充電(注入)する電流を流すソース側に、並列に接続されたスイッチ素子である。ソース側のNMOSトランジスタQ12とNMOSトランジスタQ21との何れか若しくは両方を駆動させることで、出力端子HOの信号レベルは、パワー素子Q1のゲート容量が充電されて、パワー素子Q1をオンするハイレベルに遷移する。PMOSトランジスタQ11と、NMOSトランジスタQ21とは、適宜のスイッチ素子を用いることができる。
【0021】
主ドライブ回路10のNMOSトランジスタQ12と、サブドライブ回路20のNMOSトランジスタQ22とは、パワー素子Q1のゲート容量から放電(抽出)する電流を流すシンク側に、並列に接続されたスイッチ素子である。シンク側のNMOSトランジスタQ12とNMOSトランジスタQ22との何れか若しくは両方を駆動させることで、出力端子HOの信号レベルは、パワー素子Q1のゲート容量が放電されて、パワー素子Q1をオフするローレベルに遷移する。NMOSトランジスタQ12と、NMOSトランジスタQ22とは、適宜のスイッチ素子を用いることができる。
【0022】
主ドライブ回路10のPMOSトランジスタQ11は、ゲートに入力されるハイサイド側駆動信号INHによって駆動が制御される。サブドライブ回路20のNMOSトランジスタQ21は、ハイサイド側駆動信号INHがインバータINV0を介してゲートに入力され、ハイサイド側駆動信号INHを反転したハイサイド側サブ駆動信号INHSUBによって駆動が制御される。
【0023】
主ドライブ回路10のNMOSトランジスタQ12は、ゲートに入力されるローサイド側駆動信号INLによって駆動が制御される。サブドライブ回路20のNMOSトランジスタQ22は、ローサイド側駆動信号INLがサブ駆動信号生成回路30を介してゲートに入力され、ローサイド側駆動信号INLに基づいてサブ駆動信号生成回路30で生成されたローサイド側サブ駆動信号INLSUBによって駆動が制御される。
【0024】
ハイサイド側駆動信号INH、ローサイド側駆動信号INLは、パワー素子Q1のオンオフを制御する制御信号に基づいて、半導体装置1のデッドタイム生成回路3によって生成される。ローサイド側駆動信号INLは、ハイサイド側駆動信号INHと同時オンによる貫通電流を流さないためのデッドタイムを設けた信号である。
【0025】
サブ駆動信号生成回路30は、ステップドライブ期間生成回路31と、ミラークランプ期間生成回路32と、オア回路ORとを備える。
【0026】
ステップドライブ期間生成回路31は、図2(a)を参照すると、第1遅延回路311と、ナンド回路NAND1と、インバータINV1とを備える。ナンド回路NAND1の一方の入力端子には、ローサイド側駆動信号INLが入力される。ナンド回路NAND1の他方の入力端子には、第1遅延回路311によって遅延されたローサイド側駆動信号INLが入力される。ナンド回路NAND1の出力は、インバータINV1を介してオア回路ORの一方の入力端子に入力される。
【0027】
第1遅延回路311は、奇数個のインバータINV11~INV1mが直列に接続されて構成される。第1遅延回路311の遅延時間T1は、NMOSトランジスタQ12とNMOSトランジスタQ22との両方の駆動によって出力端子HOの信号レベルがローレベルに遷移するまでの時間よりも短く設定される。第1遅延回路311の遅延時間T1は、サブドライブ回路20のNMOSトランジスタQ22をステップドライブ用に駆動させる期間となる。
【0028】
図2(b)は、上からローサイド側駆動信号INL、第1遅延回路311の出力信号、ナンド回路NAND1の出力信号、インバータINV1の出力信号のそれぞれの波形である。図2(b)を参照すると、ローサイド側駆動信号INLの立ち上がりで立ち上がり、第1遅延回路311の遅延時間T1が経過すると立ち下がる。すなわち、NMOSトランジスタQ22は、NMOSトランジスタQ12と共に駆動を開始した後、第1遅延回路311の遅延時間T1が経過すると駆動を停止する。インバータINV1の出力信号、すなわちステップドライブ期間生成回路31の出力信号は、ステップドライブ用駆動信号SDとなる。
【0029】
ミラークランプ期間生成回路32は、図3(a)を参照すると、第2遅延回路321と、ナンド回路NAND2と、インバータINV2とを備える。ナンド回路NAND2の一方の入力端子には、ローサイド側駆動信号INLが入力される。ナンド回路NAND2の他方の入力端子には、第2遅延回路321によって遅延されたローサイド側駆動信号INLが入力される。ナンド回路NAND2の出力は、インバータINV2を介してオア回路ORの他方の入力端子に入力される。
【0030】
第2遅延回路321は、偶数個のインバータINV21~INV2nが直列に接続されて構成される。第2遅延回路321の遅延時間T2は、NMOSトランジスタQ22が駆動を停止した後NMOSトランジスタQ12のみの駆動によって出力端子HOの信号レベルがローレベルに遷移するまでの時間よりも長く、ローサイド側駆動信号INLのパルス幅よりも短く設定される。第2遅延回路321の遅延時間T2は、サブドライブ回路20のNMOSトランジスタQ22をミラークランプ用として駆動させるまで期間となる。
【0031】
図3(b)は、上からローサイド側駆動信号INL、第2遅延回路321の出力信号、ナンド回路NAND2の出力信号、インバータINV2の出力信号のそれぞれの波形である。図3(b)を参照すると、ローサイド側駆動信号INLの立ち上がりから第2遅延回路321の遅延時間T2が経過すると立ち上がり、ローサイド側駆動信号INLの立下りで立ち下がる。すなわち、NMOSトランジスタQ22は、NMOSトランジスタQ12の駆動開始から第2遅延回路321の遅延時間T2が経過すると駆動を開始する。インバータINV2の出力信号、すなわちミラークランプ期間生成回路32の出力は、ミラークランプ用駆動信号MCとなる。
【0032】
第1遅延回路311のインバータINV11~INV1mと、第2遅延回路321のインバータINV21~INV2nとは、図4に示すように、それぞれPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとからなるCMOSで構成される。遅延時間T1、T2は、前段のNMOSトランジスタのON抵抗と後段のPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタの入力容量Ciss(ゲートドレイン間容量Cgd+ゲートソース間容量Cgs)のCR時定数で生成される。
【0033】
第1遅延回路311及び第2遅延回路321のNMOSトランジスタと、NMOSトランジスタQ12及びNMOSトランジスタQ22とは、同一チップ上に同一プロセスで製作することができる。そして、NMOSトランジスタQ12及びNMOSトランジスタQ22の入力容量Cissは、ゲート酸化膜の静電容量で決まる。従って、入力容量Ciss、オン抵抗の変動は、温度変動等があっても、第1遅延回路311及び第2遅延回路321のNMOSトランジスタと、NMOSトランジスタQ12及びNMOSトランジスタQ22とで同じ傾向を示す。これにより、出力端子HOの放電時間と遅延時間T1、T2の温度等による変動を、ある程度連動させることができる。
【0034】
次に、ゲート駆動回路2の動作について図5を参照して詳細に説明する。図5は、上からパワー素子Q1の制御信号、ハイサイド側駆動信号INH、インバータINV0の出力信号、ローサイド側駆動信号INL、ローサイド側サブ駆動信号INLSUB、出力端子HOの電圧のそれぞれの波形である。
【0035】
デッドタイム生成回路3は、不図示の制御回路からの制御信号INに基づいて、ハイサイド側駆動信号INHと、貫通電流を流さないためのデッドタイムTdを設けたローサイド側駆動信号INLとを生成する。
【0036】
時刻t1で、ハイサイド側駆動信号INHがパワー素子Q1をオフに制御するハイレベルに遷移すると、PMOSトランジスタQ11及びNMOSトランジスタQ21は、駆動を停止する。
【0037】
その後、時刻t1からデッドタイムTdが経過した時刻t2で、ローサイド側駆動信号INLは、ハイレベルに遷移する。ローサイド側駆動信号INLがハイレベルに遷移すると、NMOSトランジスタQ12は、駆動を開始する。
【0038】
ローサイド側サブ駆動信号INLSUBは、ステップドライブ期間生成回路31のステップドライブ用駆動信号SDと、第2遅延回路321のミラークランプ用駆動信号MCとがオア回路ORで合成された信号である。従って、ローサイド側サブ駆動信号INLSUBは、時刻t2のローサイド側駆動信号INLの立ち上がりで立ち上がり、第1遅延回路311の遅延時間T1が経過した時刻t3で立ち下がる第1のパルス(ステップドライブ用駆動信号SD)を備える。遅延時間T1は、NMOSトランジスタQ12とNMOSトランジスタQ22との両方の駆動によって出力端子HOの信号レベルがローレベルに遷移するまでの時間よりも短く設定される。
【0039】
これにより、パワー素子Q1のゲート容量を放電するための電流が、放電が完了してローレベルに遷移する前に減少するため、パワー素子Q1のゲート信号のスルーレートが低下し、ノイズの発生の低減するステップドライブ機能が得られる。
【0040】
ローサイド側サブ駆動信号INLSUBは、時刻t2のローサイド側駆動信号INLの立ち上がりから遅延時間T2が経過した時刻t5で立ち上がり、時刻t6の第1遅延回路311の立下りで立ち下がる第2のパルス(ミラークランプ用駆動信号MC)を備える。遅延時間T2は、NMOSトランジスタQ12とNMOSトランジスタQ22との駆動によって出力端子HOの信号レベルがローレベルに遷移するまでの時間(時刻t2~t4)よりも長く設定される。
【0041】
これにより、パワー素子Q1のゲート信号がローレベルに遷移後に、パワー素子Q1のゲート容量を放電する抵抗値が下がるため、ミラークランプ機能が得られる。
【0042】
以上のように、サブドライブ回路20のNMOSトランジスタQ22は、ステップドライブ機能及びミラークランプ機能として使用される。NMOSトランジスタQ22をオンオフ制御するローサイド側サブ駆動信号INLSUBは、パワー素子Q1のゲート電圧をモニタすることなく、ローサイド側駆動信号INLを遅延させることで生成している。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態は、パワー素子Q1のゲート容量を充電する電流を流すPMOSトランジスタQ11(ソース側スイッチ素子)と、パワー素子Q1のゲート容量から放電する電流を流すNMOSトランジスタQ12(シンク側スイッチ素子)と、を備えたゲート駆動回路であって、NMOSトランジスタQ12に並列に接続されたNMOSトランジスタQ22(シンク側サブスイッチ素子)と、NMOSトランジスタQ12を駆動するローサイド側駆動信号INLを遅延させる第1遅延回路311、第2遅延回路321(遅延回路)を用いて、NMOSトランジスタQ22を、NMOSトランジスタQ12と共に駆動を開始させた後、遅延時間T1(第1遅延時間)が経過すると駆動を停止させ、NMOSトランジスタQ12の駆動開始から遅延時間T1よりも長い遅延時間T2(第2遅延時間)が経過すると駆動を開始させるローサイド側サブ駆動信号IHLSUBを生成するサブ駆動信号生成回路30とを備える。
この構成は、パワー素子Q1のゲート電圧をモニタすることなく、ステップドライブ機能とミラークランプ機能とを実現できるため、回路を簡略して素子面積を削減できると共に、パワー素子Q1の高速化に追従できる。
【0044】
さらに、本実施形態において、第1遅延回路311は、NMOSトランジスタQ12とNMOSトランジスタQ22との両方の駆動によってパワー素子Q1のゲート容量がローレベルに遷移するまでの時間よりも短い遅延時間T1を生成し、第2遅延回路321は、NMOSトランジスタQ22の駆動が停止した後にNMOSトランジスタQ12のみの駆動によってパワー素子Q1のゲート容量がローレベルに遷移するまでの時間よりも長い遅延時間T2を生成する。
この構成は、第1遅延回路311によって遅延時間T1をステップドライブ用に生成すると共に、第2遅延回路321によって遅延時間T2をミラークランプ用に生成することができ、両方の機能に適した駆動タイミングでNMOSトランジスタQ22を駆動ができる。
【0045】
さらに、本実施形態において、第1遅延回路311及び第2遅延回路321は、CMOSを用いてローサイド側駆動信号IHLを遅延させる。
この構成は、NMOSトランジスタQ12及びNMOSトランジスタQ22と、第1遅延回路311及び第2遅延回路321とを同一チップ上に同一プロセスで製作することができるため、出力端子HOの放電時間と遅延時間T1、T2の温度等による変動を、ある程度連動させることができる。
【0046】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、同一構成要素には、各図において、同一符号を付している。
【符号の説明】
【0047】
1 半導体装置
2 ゲート駆動回路
3 デッドタイム生成回路
10 主ドライブ回路
20 サブドライブ回路
30 サブ駆動信号生成回路
31 ステップドライブ期間生成回路
32 ミラークランプ期間生成回路
311 第1遅延回路
321 第2遅延回路
HO 出力端子
HS 低電位端子
INV0~2、11~1m、21~2n インバータ
NAND1、2 ナンド回路
OR オア回路
Q1 パワー素子
Q11 PMOSトランジスタ
Q12、21、22 NMOSトランジスタ
VB 高電位端子
図1
図2
図3
図4
図5