(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】サーバ装置、プロセス制御システム、及びプロセス制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2022198857
(22)【出願日】2022-12-13
【審査請求日】2024-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】吉田 善貴
(72)【発明者】
【氏名】戸井永 剛
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-111116(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207789(WO,A1)
【文献】特開2019-61412(JP,A)
【文献】特開2020-201952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0085456(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実プラントのプロセスデータを取得する複数の第1制御ノードのそれぞれからの前記プロセスデータの送信、又は、前記プロセスデータに基づいて前記実プラントを制御する第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードのそれぞれに対する前記プロセスデータの送信の要求の少なくとも一方を制御するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
第1時刻における前記実プラントの状態に基づいて、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記実プラントの状態を推定した仮想プラントを生成し、
前記仮想プラントの状態に基づいて、前記複数の第1制御ノードのそれぞれが前記第2時刻に前記実プラントのプロセスデータとして前記実プラントから取得する予定データに優先度を設定し、
前記優先度に基づいて、前記複数の第1制御ノードからの予定データの送信、又は、前記第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードへの予定データの送信の要求の少なくとも一方を制御する、
サーバ装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第2制御ノードに、前記複数の第1制御ノードのうち前記優先度が高く設定された予定データを取得する第1制御ノードに対する予定データの送信要求を、前記優先度が低く設定された予定データを取得する第1制御ノードに対する予定データの送信要求よりも先に実行させる、請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第2制御ノードが予定データの送信を前記複数の第1制御ノードのいずれかに対して要求する順序を決定できるように、前記第2制御ノードに対して前記優先度を送信する、請求項2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記複数の第1制御ノードのうち前記優先度が高く設定された予定データを取得する第1制御ノードに、前記優先度が低く設定された予定データを取得する第1制御ノードよりも先に予定データを送信させる、請求項1から3までのいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記複数の第1制御ノードのそれぞれが予定データを送信する順序を決定できるように、前記複数の第1制御ノードのそれぞれに対して前記優先度を送信する、請求項4に記載のサーバ装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記予定データに設定されている優先度に基づいて、前記第2制御ノードが前記予定データを受信する待機期間を設定する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のサーバ装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記待機期間が満了するまでに前記第2制御ノードが前記予定データを受信できなかった場合に、前記予定データに対応する前記仮想プラントのプロセスデータを前記第2制御ノードに対して送信する、請求項6に記載のサーバ装置。
【請求項8】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のサーバ装置と、実プラントのプロセスデータを取得する複数の第1制御ノードと、前記実プラントを制御する第2制御ノードと、前記サーバ装置と前記複数の第1制御ノードと前記第2制御ノードとを通信可能に接続するネットワークとを備える、プロセス制御システム。
【請求項9】
ネットワークスイッチを更に備え、
前記ネットワークスイッチは、前記第1制御ノード又は前記第2制御ノードの少なくとも一方にデータを送信する順番を制御する、請求項8に記載のプロセス制御システム。
【請求項10】
実プラントのプロセスデータを取得する複数の第1制御ノードのそれぞれからの前記プロセスデータの送信、又は、前記プロセスデータに基づいて前記実プラントを制御する第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードのそれぞれに対する前記プロセスデータの送信の要求の少なくとも一方を制御するプロセス制御方法であって、
第1時刻における前記実プラントの状態に基づいて、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記実プラントの状態を推定した仮想プラントを生成することと、
前記仮想プラントの状態に基づいて、前記複数の第1制御ノードのそれぞれが前記第2時刻に前記実プラントのプロセスデータとして前記実プラントから取得する予定データに優先度を設定することと、
前記優先度に基づいて、前記複数の第1制御ノードからの予定データの送信、又は、前記第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードへの予定データの送信の要求の少なくとも一方を制御することと
を含む、プロセス制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ装置、プロセス制御システム、及びプロセス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御ネットワークのオーバーロードを回避するために、制御ネットワークと別の帯域外通信経路に一部の通信を迂回させるプロセス制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
システムが制御ネットワークと別の通信経路を備えることは、ネットワークの制御ノードの小型化及び部品コストの観点からデメリットになる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で通信を維持できるサーバ装置、プロセス制御システム、及びプロセス制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る(1)サーバ装置は、実プラントのプロセスデータを取得する複数の第1制御ノードのそれぞれからの前記プロセスデータの送信、又は、前記プロセスデータに基づいて前記実プラントを制御する第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードのそれぞれに対する前記プロセスデータの送信の要求の少なくとも一方を制御するプロセッサを備える。前記プロセッサは、第1時刻における前記実プラントの状態に基づいて、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記実プラントの状態を推定した仮想プラントを生成する。前記プロセッサは、前記仮想プラントの状態に基づいて、前記複数の第1制御ノードのそれぞれが前記第2時刻に前記実プラントのプロセスデータとして前記実プラントから取得する予定データに優先度を設定する。前記プロセッサは、前記優先度に基づいて、前記複数の第1制御ノードからの予定データの送信、又は、前記第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードへの予定データの送信の要求の少なくとも一方を制御する。あらかじめ設定した優先度に基づいてプロセスデータの通信を制御することによって、迂回ネットワーク又は専用のハードウェアを用いずに、必要なプロセスデータの通信が維持される。その結果、簡便な構成でプロセスデータの通信が維持される。
【0007】
(2)上記(1)に記載のサーバ装置において、前記プロセッサは、前記第2制御ノードに、前記複数の第1制御ノードのうち前記優先度が高く設定された予定データを取得する第1制御ノードに対する予定データの送信要求を、前記優先度が低く設定された予定データを取得する第1制御ノードに対する予定データの送信要求よりも先に実行させてよい。優先度が高い予定データを先に送信するように要求することによって、必要なプロセスデータの通信が維持される。その結果、簡便な構成でプロセスデータの通信が維持される。
【0008】
(3)上記(2)に記載のサーバ装置において、前記プロセッサは、前記第2制御ノードが予定データの送信を前記複数の第1制御ノードのいずれかに対して要求する順序を決定できるように、前記第2制御ノードに対して前記優先度を送信してよい。第2制御ノードに対して優先度を送信することによって第2制御ノード自身に通信を制御させることができる。その結果、サーバ装置の負荷が低減する。つまり、簡便な構成で通信が維持される。
【0009】
(4)上記(1)から(3)までのいずれか一項に記載のサーバ装置において、前記プロセッサは、前記複数の第1制御ノードのうち前記優先度が高く設定された予定データを取得する第1制御ノードに、前記優先度が低く設定された予定データを取得する第1制御ノードよりも先に予定データを送信させてよい。優先度が高い予定データを先に送信することによって、必要なプロセスデータの通信が維持される。その結果、簡便な構成でプロセスデータの通信が維持される。
【0010】
(5)上記(4)に記載のサーバ装置において、前記プロセッサは、前記複数の第1制御ノードのそれぞれが予定データを送信する順序を決定できるように、前記複数の第1制御ノードのそれぞれに対して前記優先度を送信してよい。第1制御ノードに対して優先度を送信することによって第1制御ノード自身に通信を制御させることができる。その結果、サーバ装置の負荷が低減する。つまり、簡便な構成で通信が維持される。
【0011】
(6)上記(1)から(5)までのいずれか一項に記載のサーバ装置において、前記プロセッサは、前記予定データに設定されている優先度に基づいて、前記第2制御ノードが前記予定データを受信する待機期間を設定してよい。優先度に基づいて待機期間が設定されることによって、不要な待機期間が削減される。不要な待機期間の削減によって、ネットワークの混雑が緩和される。その結果、必要なプロセスデータの通信が維持される。
【0012】
(7)上記(6)に記載のサーバ装置において、前記プロセッサは、前記待機期間が満了するまでに前記第2制御ノードが前記予定データを受信できなかった場合に、前記予定データに対応する前記仮想プラントのプロセスデータを前記第2制御ノードに対して送信してよい。待機期間内に受信できなかった場合に仮想プラントのプロセスデータで代替することによって、プロセスデータの再送信が不要になる。プロセスデータの再送信が不要になることによって、ネットワークの混雑が緩和される。その結果、必要なプロセスデータの通信が維持される。
【0013】
幾つかの実施形態に係る(8)プロセス制御システムは、上記(1)から(7)までのいずれか1つに記載のサーバ装置と、実プラントのプロセスデータを取得する複数の第1制御ノードと、前記実プラントを制御する第2制御ノードと、前記サーバ装置と前記複数の第1制御ノードと前記第2制御ノードとを通信可能に接続するネットワークとを備える。サーバ装置があらかじめ設定した優先度に基づいてプロセスデータの通信を制御することによって、迂回ネットワーク又は専用のハードウェアを用いずに、必要なプロセスデータの通信が維持される。その結果、簡便な構成でプロセスデータの通信が維持される。
【0014】
(9)上記(8)に記載のプロセス制御システムは、ネットワークスイッチを更に備えてよい。前記ネットワークスイッチは、前記第1制御ノード又は前記第2制御ノードの少なくとも一方にデータを送信する順番を制御してよい。ネットワークスイッチによって第1制御ノード又は第2制御ノードへのデータの送信の順番を制御することによってネットワークの混雑が緩和される。ネットワークの混雑が緩和されることによって、必要なプロセスデータの通信が維持される。
【0015】
幾つかの実施形態に係る(10)プロセス制御方法は、実プラントのプロセスデータを取得する複数の第1制御ノードのそれぞれからの前記プロセスデータの送信、又は、前記プロセスデータに基づいて前記実プラントを制御する第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードのそれぞれに対する前記プロセスデータの送信の要求の少なくとも一方を制御することを含む。前記プロセス制御方法は、第1時刻における前記実プラントの状態に基づいて、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記実プラントの状態を推定した仮想プラントを生成することを含む。前記プロセス制御方法は、前記仮想プラントの状態に基づいて、前記複数の第1制御ノードのそれぞれが前記第2時刻に前記実プラントのプロセスデータとして前記実プラントから取得する予定データに優先度を設定することを含む。前記プロセス制御方法は、前記優先度に基づいて、前記複数の第1制御ノードからの予定データの送信、又は、前記第2制御ノードから前記複数の第1制御ノードへの予定データの送信の要求の少なくとも一方を制御することを含む。あらかじめ設定した優先度に基づいてプロセスデータの通信を制御することによって、迂回ネットワーク又は専用のハードウェアを用いずに、必要なプロセスデータの通信が維持される。その結果、簡便な構成でプロセスデータの通信が維持される。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係るサーバ装置、プロセス制御システム、及びプロセス制御方法によれば、簡便な構成で通信が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】比較例に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係るプロセス制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】サーバ装置が実行するプロセス制御方法の手順例を示すフローチャートである。
【
図4】第2制御ノードが実行するプロセス制御方法の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(比較例)
プラントのプロセスを制御するシステムは、プラントの各部の測定データを取得する第1制御ノードと、第1制御ノードから測定データを取得してプラントを制御するための制御演算を行う第2制御ノードと、第1制御ノードと第2制御ノードとの間の制御ネットワークとを備える。制御ネットワークがオーバーロードになった場合、プラントのプロセスの制御が停止することがある。
【0019】
第1の比較例として、
図1に示されるように、システム9は、ネットワーク90と、プロセス制御管理装置91と、第1制御ノード92及び94と、第2制御ノード93及び95と、迂回ネットワーク97とを備える。第1制御ノード92及び94は、プラント96の状態を表す測定データを取得する。第2制御ノード93及び95は、第1制御ノード92及び94から測定データを取得し、プラント96を制御する情報を生成して第1制御ノード92及び94に出力する。第1制御ノード92及び94は、第2制御ノード93及び95から取得した制御情報をプラント96の各部に出力する。
【0020】
第1制御ノード92及び94、並びに、第2制御ノード93及び95は、通常時においてネットワーク90を介して互いに通信する。しかし、ネットワーク90がオーバーロードになった場合、第1制御ノード92及び94、並びに、第2制御ノード93及び95は、ネットワーク90を介して通信できなくなる。そこで、第1制御ノード92及び94、並びに、第2制御ノード93及び95は、ネットワーク90がオーバーロードになった場合に、迂回ネットワーク97を介して互いに通信する。
【0021】
しかし、第1の比較例に係るシステム9のように迂回ネットワーク97を備える構成において、第1制御ノード92及び94、並びに、第2制御ノード93及び95は、迂回ネットワーク97に接続するための部品又は回路等を必要とする。小型化の観点、又は、部品コストの観点から、迂回ネットワーク97の使用はデメリットとなる。
【0022】
第2の比較例として、プラントのプロセスを制御するシステムは、QoS(Quality of Service)等の通信品質又は通信速度を保証する技術を用いて、通信の優先制御又は帯域制限を実行する。しかし、第2の比較例に係るシステムにおいて、優先度を下げた通信のリアルタイム性(必ず所定時間内に通信が実行されること)が保証されない。リアルタイム性を確保するためにTSN(Time Sensitive Network)等のリアルタイム通信が用いられる場合、専用のハードウェアが必要とされる。専用のハードウェアは、小型化の観点又は部品コストの観点からデメリットとなる。
【0023】
以上述べてきたように、比較例に係るシステムにおいて、制御ネットワークにおける通信を維持するために複雑な構成が必要とされたり通信のリアルタイム性が保証されなかったりする。
【0024】
そこで、本開示は、簡便な構成で通信を維持できるシステムについて説明する。
【0025】
(プロセス制御システム1の構成例)
図2に示されるように、本開示の一実施形態に係るプロセス制御システム1は、サーバ装置10と、ネットワーク80と、第1制御ノード21及び22と、第2制御ノード31及び32と、ネットワークスイッチ61を備える。ネットワーク80は、サーバ装置10と、第1制御ノード21及び22と、第2制御ノード31及び32とを通信可能に接続する。
【0026】
サーバ装置10は、プロセッサ12と、通信部14とを備える。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)又は専用回路等を含んで構成されてよい。通信部14は、ネットワーク80に接続する有線又は無線の通信デバイスを備えてよい。通信デバイスは、例えばイーサネット(登録商標)又はRS-232C若しくはRS-485等の通信インタフェースを備えてよい。通信デバイスは、これらに限られず、他の種々の通信インタフェースを含んで構成されてよい。
【0027】
第1制御ノード21及び22は、例えばDCN(Distributed Control Node)等で構成されてよいし、CPU又は専用回路等を含んで構成されてよい。第2制御ノード31及び32は、例えばDCN等で構成されてよいし、CPU又は専用回路等を含んで構成されてもよい。第1制御ノード21及び22、並びに、第2制御ノード31及び32は、ネットワーク80に接続する有線又は無線の通信デバイスを備えてよい。第1制御ノード21及び22と、第2制御ノード31及び32とは、同じ種類の機器で構成されてもよいし、異なる種類の機器で構成されてもよい。
【0028】
第1制御ノード21及び22、並びに、第2制御ノード31及び32は、ネットワークスイッチ61を介してネットワーク80に接続される。
【0029】
ネットワークスイッチ61は、後述する優先度に基づいて、ネットワークスイッチ61のそれぞれに接続されている第1制御ノード21若しくは22又は第2制御ノード31若しくは32にデータを送信する順番を制御する。
【0030】
ネットワークスイッチ61は、例えば、L2SW(レイヤ2スイッチ)等の、通信の順番を制御する種々の部品又は回路を含んで構成されてよい。ネットワークスイッチ61は、サーバ装置10によって制御されてよい。ネットワークスイッチ61は、第1制御ノード21及び22、並びに、第2制御ノード31及び32によって制御されてもよい。プロセス制御システム1は、ネットワークスイッチ61を備えなくてもよい。プロセス制御システム1がネットワークスイッチ61を備えない場合、第1制御ノード21及び22、並びに、第2制御ノード31及び32は、ネットワークスイッチ61を介さずにネットワーク80に接続される。
【0031】
プロセス制御システム1が備える第1制御ノード21及び22の数は、2つに限られず3つ以上であってよい。プロセス制御システム1が備える第2制御ノード31及び32の数は、2つに限られず3つ以上であってよい。1つの第2制御ノード31又は32が1つの第1制御ノード21又は22と通信してもよいし2つ以上の第1制御ノード21及び22と通信してもよい。プロセス制御システム1が備えるサーバ装置10の数は、1台に限られず2台以上であってよい。
【0032】
第1制御ノード21及び22と第2制御ノード31及び32との間の通信は、例えば1対1で接続する方式で実行されてよい。第1制御ノード21及び22と第2制御ノード31及び32との間の通信は、例えばパケット方式のようにデータに宛先を対応づけた情報をネットワーク80に送信することによって実行されてもよい。第1制御ノード21及び22と第2制御ノード31及び32との間の通信は、例えばブロードキャスト通信の方式で実行されてもよい。
【0033】
(プロセス制御システム1の動作例)
以下、プロセス制御システム1において、実プラント40を制御するために必要な通信を維持する動作の一例が説明される。
【0034】
第1制御ノード21及び22は、実プラント40に設置されているセンサ等から実プラント40のプロセスデータを取得する。第2制御ノード31及び32は、第1制御ノード21及び22に対してプロセスデータの送信を要求する。第1制御ノード21及び22は、第2制御ノード31及び32からの送信要求に応じて、プロセスデータを第2制御ノード31及び32に出力する。第2制御ノード31及び32は、第1制御ノード21及び22から受信した実プラント40のプロセスデータに基づいて実プラント40に設置されているバルブ等の制御対象を制御するための制御情報を生成し、第1制御ノード21及び22に送信する。第1制御ノード21及び22は、第2制御ノード31及び32から制御情報を受信し、実プラント40に設置されているバルブ等の制御対象に対して制御情報を出力する。
【0035】
本実施形態において、第2制御ノード31は、第1制御ノード21から実プラント40のプロセスデータを受信して第1制御ノード21に接続されている制御対象に対して制御情報を送信する。第2制御ノード32は、第1制御ノード22から実プラント40のプロセスデータを受信して第1制御ノード22に接続されている制御対象に対して制御情報を送信する。第2制御ノード31及び32と第1制御ノード21及び22との通信は、これらの組み合わせに限られず種々の組み合わせで実行されてよい。
【0036】
サーバ装置10の通信部14は、第1制御ノード21及び22からプロセスデータを取得する。サーバ装置10のプロセッサ12は、プロセスデータに基づいて実プラント40を制御する第2制御ノード31及び32から複数の第1制御ノード21及び22のそれぞれに対するプロセスデータの送信の要求を制御する。プロセッサ12は、実プラント40のプロセスデータを取得する複数の第1制御ノード21及び22のそれぞれからのプロセスデータの送信を制御してよい。つまり、プロセッサ12は、第2制御ノード31及び32からのプロセスデータの送信の要求、又は、複数の第1制御ノード21及び22のそれぞれからのプロセスデータの送信の少なくとも一方を制御する。
【0037】
ここで、ネットワーク80の混雑によって少なくとも一部の第1制御ノード21又は22と第2制御ノード31又は32との間の通信が滞ることがある。プロセッサ12は、重要なプロセスデータの通信を維持できるように、第1制御ノード21及び22と第2制御ノード31及び32との間の通信の順番を制御する。プロセスデータの重要性は、プロセスデータが実プラント40の状態の変化を反映する度合いによって定まり得る。例えば、プロセスデータの変化が大きい場合に、そのプロセスデータの重要性が高いと認識されてよい。プロセッサ12は、以下に説明されるように、未来の実プラント40の状態をシミュレートした仮想プラント50の状態に基づいて通信の順番を制御してよい。
【0038】
通信部14は、第1制御ノード21及び22から、第1時刻における実プラント40のプロセスデータを取得する。プロセッサ12は、第1時刻における実プラント40のプロセスデータに基づいて、第1時刻よりも後の第2時刻における実プラント40の状態を表すプロセスデータをシミュレートする仮想プラント50を生成する。言い換えれば、プロセッサ12は、第1時刻の実プラント40のプロセスデータに基づいて、未来の第2時刻の実プラント40の状態をシミュレートした仮想プラント50の状態を生成する。プロセッサ12は、第1時刻から第2時刻までの時間を、実プラント40のプロセスデータの更新周期に基づいて設定してよい。プロセッサ12は、第1時刻から第2時刻までの時間を、例えば1秒に設定してよい。
【0039】
プロセッサ12は、第2時刻における実プラント40の状態を仮想プラント50によってシミュレートしたプロセスデータに基づいて、第1時刻から第2時刻に進むときのプロセスデータの変化量を推定してよい。プロセッサ12は、プロセスデータの変化量の推定値に基づいて、第1制御ノード21及び22と第2制御ノード31及び32との間の通信の順番を制御してよい。具体的に、プロセッサ12は、プロセスデータの変化量の推定値が大きいノード(第1制御ノード21又は22の一方)からのプロセスデータの送信を先に実行させてよい。プロセッサ12は、プロセスデータの変化量の推定値が所定閾値以上であるノード(第1制御ノード21又は22の一方)からのプロセスデータの送信を先に実行させ、プロセスデータの変化量の推定値が所定閾値未満であるノード(第1制御ノード21又は22の他方)からのプロセスデータの送信を後で実行させてもよい。
【0040】
<優先度の設定>
プロセッサ12は、第1制御ノード21及び22のそれぞれから送信される予定のプロセスデータに優先度を設定してよい。第1制御ノード21及び22のそれぞれから送信される予定のプロセスデータは、予定データとも称される。つまり、プロセッサ12は、予定データに優先度を設定してよい。
【0041】
プロセッサ12は、第2時刻の仮想プラント50の状態に基づいて、予定データの優先度を設定してよい。プロセッサ12は、例えば、変化量が大きいと推定される予定データの優先度を高く設定してよい。変化量が大きいと推定される予定データの優先度が高く設定されることによって、実プラント40の制御の精度が維持される。プロセッサ12は、予定データの発生元に基づいて、予定データの優先度を設定してよい。予定データの発生元は、例えば予定データを出力するセンサ又はノード等を含んでよい。プロセッサ12は、例えば、予定データを出力するセンサ又はノード等の予定データの発生元に設定した重要度に基づいて、予定データの優先度を設定してもよい。重要度は、予定データの発生元毎にあらかじめ設定されていてもよい。プロセッサ12は、予定データの発生元のうち重要度が高い発生元からの予定データの優先度を高く設定してよい。
【0042】
プロセッサ12は、優先度を数値の大小によって表してよい。プロセッサ12は、優先度が高いほど優先度を表す数値を大きい値に設定してよい。プロセッサ12は、優先度が高いほど優先度を表す数値を小さい値に設定してもよい。プロセッサ12は、優先度を複数の区分によって表してもよい。プロセッサ12は、優先度を表す複数の区分として、例えば、「高」及び「低」、「A」、「B」及び「C」、又は、「1」、「2」及び「3」等の区分を設定してよい。
【0043】
プロセッサ12は、複数の第1制御ノード21及び22のうち優先度が高く設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の一方)に、優先度が低く設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の他方)よりも先に予定データを送信させるように第1制御ノード21及び22を制御してよい。
【0044】
プロセッサ12は、優先度を、複数の第1制御ノード21及び22のそれぞれに送信することによって通知してよい。複数の第1制御ノード21及び22のそれぞれは、受信した優先度に基づいて、複数の第1制御ノード21及び22自身で予定データを送信する順序を決定してよい。
【0045】
プロセッサ12は、優先度に基づいてネットワークスイッチ61を制御することによって、複数の第1制御ノード21及び22のそれぞれから第2制御ノード31及び32への予定データの送信の順番を制御してもよい。具体的に、プロセッサ12は、高い優先度が設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の一方)からの予定データを、低い優先度が設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の他方)からの予定データよりも先に第2制御ノード31及び32に送信するように制御してよい。
【0046】
プロセッサ12は、第2制御ノード31及び32に、複数の第1制御ノード21及び22のうち優先度が高く設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の一方)に対する予定データの送信要求を、優先度が低く設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の他方)に対する予定データの送信要求よりも先に実行させるように第2制御ノード31及び32を制御してよい。
【0047】
プロセッサ12は、優先度を、第2制御ノード31及び32のそれぞれに送信することによって通知してよい。第2制御ノード31及び32のそれぞれは、受信した優先度に基づいて、第2制御ノード31及び32自身で予定データの送信を複数の第1制御ノード21及び22のいずれかに対して要求する順序を決定してよい。
【0048】
プロセッサ12は、優先度に基づいてネットワークスイッチ61を制御することによって、第2制御ノード31及び32のそれぞれから複数の第1制御ノード21及び22への予定データの送信の要求の順番を制御してもよい。具体的に、プロセッサ12は、高い優先度が設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の一方)に対する予定データの送信の要求を、低い優先度が設定された予定データを取得するノード(第1制御ノード21又は22の他方)に対する予定データの送信の要求よりも先に第1制御ノード21及び22に送信するように制御してよい。
【0049】
<待機期間の設定>
プロセッサ12は、予定データに設定されている優先度に基づいて、第2制御ノード31又は32がその予定データを取得する第1制御ノード21又は22に対して予定データの送信を要求したときに、第2制御ノード31又は32が予定データを受信するまで待機する期間を設定してよい。第2制御ノード31又は32が予定データを受信するまで待機する期間は、待機期間とも称される。プロセッサ12は、予定データに設定されている優先度が高いほど、その予定データを第2制御ノード31又は32が受信するときの待機期間を長い期間に設定してよい。プロセッサ12は、最も優先度が高い予定データを第2制御ノード31又は32が受信するときの待機期間を無限として設定してよい。つまり、プロセッサ12は、最も優先度が高い予定データを第2制御ノード31又は32が受信するまで第2制御ノード31又は32を受信状態のままで待機させてよい。
【0050】
サーバ装置10は、プロセスデータの重要性に応じて待機期間を設定することによって、不要な待機期間を削減できる。その結果、必要なプロセスデータの通信が維持される。
【0051】
プロセッサ12は、待機期間が満了するまでに第2制御ノード31又は32が予定データを受信できなかった場合、仮想プラント50でシミュレートした、予定データに対応するプロセスデータを第2制御ノード31又は32に対して送信してよい。第2制御ノード31又は32は、予定データの代わりに、予定データに対応する仮想プラント50のプロセスデータに基づいて、受信できなかった予定データに対応する実プラント40の制御対象に対する制御情報を生成して第1制御ノード21又は22に送信する。
【0052】
第2制御ノード31又は32が待機期間内に予定データを受信できなかった場合に仮想プラント50のプロセスデータで代替することによって、プロセスデータの再送信が不要になる。プロセスデータの再送信が不要になることによって、ネットワーク80の混雑が緩和される。その結果、必要なプロセスデータの通信が維持される。
【0053】
<フローチャート例>
サーバ装置10は、
図3に例示されるフローチャートの手順を含むプロセス制御方法を実行してよい。プロセス制御方法は、サーバ装置10のプロセッサ12に実行させるプロセス制御プログラムとして実現されてもよい。プロセス制御プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0054】
プロセッサ12は、第1時刻の実プラント40のプロセスデータを取得する(ステップS1)。プロセッサ12は、第1時刻の実プラント40のプロセスデータに基づいて、第2時刻の仮想プラント50の状態を生成する(ステップS2)。
【0055】
プロセッサ12は、第2時刻の仮想プラント50の状態に基づいて、予定データの優先度を決定する(ステップS3)。プロセッサ12は、予定データの優先度を第1制御ノード21若しくは22又は第2制御ノード31若しくは32に通知する(ステップS4)。第1制御ノード21若しくは22又は第2制御ノード31若しくは32は、通知された優先度に基づいて第1制御ノード21若しくは22又は第2制御ノード31若しくは32自身で通信の順番を制御する。プロセッサ12は、ステップS4の手順の実行後、
図3のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0056】
プロセッサ12は、優先度を通知する代わりに、優先度に基づいて第1制御ノード21若しくは22又は第2制御ノード31若しくは32の通信を制御してもよい。
【0057】
第2制御ノード31又は32は、
図4に例示されるフローチャートの手順を含むプロセス制御方法を実行してよい。
【0058】
第2制御ノード31又は32は、サーバ装置10から予定データの優先度を取得する(ステップS11)。第2制御ノード31又は32は、優先度に基づいて第1制御ノード21又は22(ノード)に対してプロセスデータの送信を要求する(ステップS12)。第2制御ノード31又は32は、プロセスデータを第1制御ノード21又は22(ノード)から受信するまでの待機期間を、優先度に基づいて設定する(ステップS13)。
【0059】
第2制御ノード31又は32は、プロセスデータを待機期間内に受信したか判定する(ステップS14)。第2制御ノード31又は32は、プロセスデータを待機期間内に受信した場合(ステップS14:YES)、第1制御ノード21又は22(ノード)から受信したプロセスデータに基づいて実プラント40の制御対象に対する制御情報を生成し、制御情報を第1制御ノード21又は22(ノード)に送信することによって実プラント40を制御する(ステップS15)。第2制御ノード31又は32は、ステップS15の手順の実行後、
図4のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0060】
第2制御ノード31又は32は、プロセスデータを待機期間内に受信しなかった場合(ステップS14:NO)、予定データに対応する仮想プラント50のプロセスデータをサーバ装置10から取得する(ステップS16)。第2制御ノード31又は32は、仮想プラント50のプロセスデータに基づいて実プラント40の制御対象に対する制御情報を生成し、制御情報を第1制御ノード21又は22(ノード)に送信することによって実プラント40を制御する(ステップS17)。第2制御ノード31又は32は、ステップS15の手順の実行後、
図4のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0061】
<まとめ>
以上述べてきたように、本実施形態に係るプロセス制御システム1において、サーバ装置10は、実プラント40の未来の状態をシミュレートした仮想プラント50のプロセスデータに基づいて、あらかじめプロセスデータに優先度を設定する。サーバ装置10は、あらかじめ設定した優先度に基づいてプロセスデータの通信を制御することによって、迂回ネットワーク又は専用のハードウェアを用いずに、必要なプロセスデータの通信を維持できる。つまり、サーバ装置10は、簡便な構成でプロセスデータの通信を維持できる。
【0062】
以上、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 プロセス制御システム
10 サーバ装置(12:プロセッサ、14:通信部)
21、22 第1制御ノード
31、32 第2制御ノード
40 実プラント
50 仮想プラント
61 ネットワークスイッチ
80 ネットワーク