(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】CPAP装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/056 20060101AFI20240702BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20240702BHJP
A61M 16/00 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
F04D29/056 Z
F04D29/58 P
A61M16/00 305A
(21)【出願番号】P 2022522204
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2021018256
(87)【国際公開番号】W WO2021230327
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020086002
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】東山 祐三
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴弘
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-084755(JP,A)
【文献】特表2014-508594(JP,A)
【文献】特開2014-080913(JP,A)
【文献】特開平03-207724(JP,A)
【文献】特開2009-057967(JP,A)
【文献】特開2019-078195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/056
F04D 29/58
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に収容されたモータと、前記モータによって回転される送風ファンとを備え、
前記モータは、
周方向に並べられた複数のコイルを有するステータアッシーと、
ロータヨーク及び永久磁石を有し、前記ステータアッシーの径方向内側に配置されたロータアッシーと、
前記ロータアッシーに固定され、前記ロータアッシーと共に回転する出力軸と、
前記出力軸の一部が挿入される挿入穴を有し、前記出力軸を支持するベースと
を備え、
前記ステータアッシーは、前記ベースに固定されており、
前記挿入穴の内周面と前記出力軸の外周面との間にはすべり軸受が介在されており、
前記出力軸には前記送風ファンが固定されており、
前記出力軸の長さ寸法に対する前記すべり軸受の長さの割合は、40%以上50%以下であ
り、
前記出力軸が延びる方向を高さ方向としたとき、
前記ロータヨークは、
前記高さ方向の一方側に位置し、前記径方向内側に前記出力軸が固定されている小径部と、
前記高さ方向の他方側に位置し、前記小径部よりも外径の大きい大径部と、
を有しており、
前記送風ファンは、前記小径部に取り付けられており、
前記永久磁石は、前記大径部に取り付けられており、
前記大径部は、前記高さ方向の一方側が前記小径部に接続し、前記高さ方向の他方側に向かって開口する筒形状である
CPAP装置。
【請求項2】
前記送風ファンの材質は、合成樹脂又は金属からなる基材に、当該基材よりも熱伝導率の高い放熱材が混合されたものである
請求項1に記載のCPAP装置。
【請求項3】
前記基材は合成樹脂であり、前記放熱材は炭素材である
請求項2に記載のCPAP装置。
【請求項4】
前記送風ファンを覆うファンケースを備えており、
前記ファンケースの内部には、前記送風ファンのからの空気が流通する流通路が区画されており、
前記流通路の少なくとも一部は、前記出力軸の軸線方向において前記ステータアッシーと重複する位置であって前記ステータアッシーの径方向外側に配置されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のCPAP装置。
【請求項5】
前記ベースは、有底で筒形状の本体部と、前記本体部の底部から突出する筒状の軸支部とを備え、
前記軸支部の内部が前記挿入穴を構成しており、
前記軸支部の外周面と前記ロータアッシーとが間に他の部材を介すことなく向かい合っており、前記ロータアッシーと前記ステータアッシーとが間に他の部材を介すことなく向かい合っている
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のCPAP装置。
【請求項6】
前記送風ファンは、円盤状の保持盤と、前記保持盤の一方側の面から突出する複数の羽根とを備える
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のCPAP装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、持続的気道陽圧(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)装置(以下、CPAP装置と記載。)に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のCPAP装置は、気体を供給するためのブロアを備えている。当該ブロアには、モータが内蔵されている。モータの出力軸には、送風ファンが取り付けられている。モータの出力軸が回転することで、送風ファンも出力軸と共に回転する。そして、送風ファンが回転することで空気が送風される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するCPAP装置では、モータの回転に伴って、コイル等のモータの内部に備えられた部品が発熱する。コイル等が発熱することにより、モータの性能が低下するおそれがあるため、モータ内の熱を効率よく排熱する必要がある。しかしながら、特許文献1が開示するCPAP装置では、モータの排熱についてなんら考慮されておらず、なお改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容されたモータと、前記モータによって回転される送風ファンとを備え、前記モータは、周方向に並べられた複数のコイルを有するステータアッシーと、永久磁石を有し、前記ステータアッシーの径方向内側に配置されたロータアッシーと、前記ロータアッシーに固定され、前記ロータアッシーと共に回転する出力軸と、前記出力軸の一部が挿入される挿入穴を有し、前記出力軸を支持するベースとを備え、前記ステータアッシーは、前記ベースに固定されており、前記挿入穴の内周面と前記出力軸の外周面との間にはすべり軸受が介在されており、前記出力軸には前記送風ファンが固定されているCPAP装置である。
【0006】
上記構成によれば、挿入穴の内周面と出力軸の外周面との間にはすべり軸受が設けられているので、例えば、出力軸を転がり軸受で支持する場合と比較して、挿入穴の内周面と出力軸の外周面との間の接触面積を広くできる。したがって、コイルに通電することに伴い発生した熱の一部は、ベースを介して出力軸に伝達される。そして、出力軸には、送風ファンが固定されているので、出力軸に伝達された熱は送風ファンにおいて放熱される。すなわち、上記構成によれば、ステータアッシーから送風ファンに至る伝熱経路を確保することで、送風ファンを放熱用の部材としても機能させて、排熱性能を向上させている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、モータの排熱性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】CPAP装置における送風ファンの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、装置内に導入した空気を使用者の気道に送り込むCPAP装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、CPAP装置10は、扁平な直方体状のハウジング20を備えている。ハウジング20の材質は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリカーボネート、フェノール樹脂等の合成樹脂である。なお、以下の説明では、ハウジング20の厚み方向を高さ方向Tdとする。また、高さ方向Tdから視た場合に、ハウジング20の長手方向を長手方向Ldとし、ハウジング20の短手方向を幅方向Wdとする。
【0011】
ハウジング20の高さ方向Tdの上側の面である上側面20Uには、CPAP装置10を操作するための操作部21が設けられている。この実施形態では、操作部21は、円形状のスイッチ21Aと、円環状のスイッチ21Bと、で構成されている。スイッチ21Bは、スイッチ21Aを取り囲むように配置されている。スイッチ21A及びスイッチ21Bは、いずれも押しボタンスイッチであり、これらを操作することで、CPAP装置10の電源のオンオフ、設定の変更等が可能になっている。
【0012】
ハウジング20における長手方向Ldの第1端側の端面である第1端面20Aにおいては、ハウジング20の外部から内部に空気を導入するための吸入口22が開口している。吸入口22には、ハウジング20内へと導入される空気に含まれる塵等をろ過するフィルタ23が取り付けられている。
【0013】
図2に示すように、ハウジング20の内部には、ブロア40が収容されている。ブロア40は、ハウジング20において長手方向Ldの第1端側に寄せて配置されている。
図3に示すように、ブロア40は、モータ80と、送風ファン50と、送風ファン50を覆うファンケース61とを備えている。
【0014】
図3に示すように、ファンケース61は、上側ファンケース62と下側ファンケース63とを備えている。上側ファンケース62の下側に、下側ファンケース63が向かい合うように嵌め合わされている。また、ファンケース61は、略円環状のファン部60とファン部60から突出している導出管70とに大別される。
【0015】
図3に示すように、上側ファンケース62におけるファン部60は、略円形の椀形状になっている。上側ファンケース62におけるファン部60の中央には、ファンケース61内部に空気を吸入するための導入口64が開口している。導入口64は、平面視で円形状になっている。上側ファンケース62の上側の外面からは、板状の突出壁65が、上側に向かって突出している。突出壁65は、複数個設けられており、本実施形態では、10個の突出壁65が設けられている。突出壁65は、上側ファンケース62の径方向に延びている。また、各突出壁65は、導入口64の径方向外側を周方向に等間隔毎に配置されている。
【0016】
下側ファンケース63におけるファン部60は、高さ方向Tdから視た場合に、略円環状となっている。下側ファンケース63のファン部60の外径は、上側ファンケース62のファン部60の下縁の外径と同じになっている。下側ファンケース63のファン部60は、径方向に直交する断面においては、下側に凸の半円状になっている。下側ファンケース63のファン部60の中央の穴には、モータ80が嵌め込まれている。なお、モータ80の詳細については後述する。
【0017】
図3に示すように、ファン部60には、略円管状の導出管70が接続されている。導出管70は、上側管部71と、下側管部72と、で構成されている。
【0018】
上側管部71は、上側ファンケース62のファン部60から、長手方向Ldの第1端側に向かって延びている。上側管部71は、上側管部71の延び方向から視た場合に、上側に凸の円弧状となっている。すなわち、上側管部71は、略円管状である導出管70の上側半分を構成している。なお、本実施形態においては、上側管部71は、上側ファンケース62と一体成形されている。
【0019】
下側管部72は、下側ファンケース63のファン部60から、上側管部71と同方向に延びている。下側管部72の延設長さは、上側管部71と同じになっている。下側管部72は、下側管部72の延び方向から視た場合に、下側に凸の円弧状となっている。すなわち、下側管部72は、略円管状である導出管70の下側半分を構成している。なお、本実施形態においては、下側管部72は、下側ファンケース63と一体成形されている。
【0020】
図2に示すように、導出管70には、ハウジング20の内部から外部へと空気を排出するための排出管100が接続されている。排出管100は、円管状となっている。排出管100は、導出管70の空気流れ方向下流の端と連続して繋がっている。
【0021】
排出管100は、ハウジング20の第1端面20Aを貫通して、長手方向Ldに延びている。そのため、排出管100の長手方向Ldにおける第1端側の端は、ハウジング20の外側に位置している。排出管100の長手方向Ldにおける第1端側の開口は、ハウジング20の内部から外部へと空気を排出するための排出口101となっている。
【0022】
図6に示すように、CPAP装置10を使用する際には、ハウジング20の外部に延びている排出管100の先端部に、ホース130を介してマスク140が接続される。マスク140は、例えば、使用者150の鼻又は口を覆うように装着される。
【0023】
図4に示すようにモータ80は、当該モータ80の構成部品を収容及び支持するためのベース82を備えている。ベース82の本体部83は、全体として有底な円筒状になっている。すなわち、本体部83は、円形の底部83Aの縁から側部83Bが高さ方向Tdの上側へ突出した形状になっている。底部83Aの中央からは、高さ方向Tdの上側に向って軸支部84が突出している。軸支部84は、中央に挿入穴84Aが貫通した筒状になっている。また、挿入穴84Aは、本体部83の底部83Aを貫通している。なお、本実施形態において、本体部83と軸支部84とは一体成形されている。なお、本実施形態において、ベース82の材質はアルミニウム合金である。
【0024】
図4及び
図5に示すように、ベース82において、軸支部84と側部83Bとの間の空間には、全体として円環状のステータアッシー85が配置されている。ステータアッシー85におけるステータヨーク86Aは、円環状になっている。ステータヨーク86Aの径方向外側の面は、側部83Bの径方向内側の面に固定されている。
【0025】
ステータヨーク86Aの径方向内側の面からは、ティース86Bが径方向内側に向けて突出している。ティース86Bは6つ備えられている。6つのティース86Bは、ステータヨーク86Aの周方向に等間隔に並んでいる。各ティース86Bには、コイル87が取り付けられている。コイル87は、ティース86Bに巻回された巻き線87Aによって構成されている。ステータヨーク86A及びティース86Bは、例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板からなる。
【0026】
図4及び
図5に示すように、ステータアッシー85の径方向内側には、ロータアッシー88が配置されている。ロータアッシー88は、全体として円筒状のロータヨーク89と永久磁石90とを備えている。ロータヨーク89は、高さ方向Tdの下側の大径部89Aと、高さ方向Tdの上側の小径部89Bとで構成されている。小径部89Bの外径及び内径は、大径部89Aの外径及び
内径よりも小さくなっている。
図5に示すように、小径部89Bの内径は、軸支部84の外径よりも小さくなっている。また、大径部89Aの内径は、軸支部84の外径よりも大きくなっている。大径部89Aの内部には、軸支部84が収容されている。また、ロータアッシー88における大径部89Aの内周面と軸支部84の外周面とは、間に他の部材を介すことなく向かい合っている。
【0027】
図4及び
図5に示すように、ロータヨーク89の大径部89Aの径方向外側の面には、円環状の永久磁石90が固定されている。永久磁石90は、周方向90度毎に、径方向外側の極が異なるように着磁されている。永久磁石90は、径方向においてコイル87と対向している。また、本実施形態においては、ロータアッシー88の外周面の一部を構成する永久磁石90が、間に他の部材を介すことなく、ロータヨーク89のコイル87と向かい合っている。
【0028】
ロータヨーク89の小径部89Bの径方向内側には、棒状の出力軸81が圧入されている。出力軸81の高さ方向Tdの下側の一部は、大径部89Aの内部にまで至っている。そして、出力軸81の高さ方向Tdの下側の一部は、大径部89Aの径方向内側において、軸支部84の挿入穴84Aに挿入されている。また、出力軸81の外周面と挿入穴84Aの内周面との間にはすべり軸受91が介在されている。
【0029】
すべり軸受91は円筒状である。当該すべり軸受91の外径は、挿入穴84Aの径と略同じになっている。また、すべり軸受91の内径は、出力軸81の外径よりも数マイクロ~数十マイクロほど大きくなっている。すべり軸受91の内面と出力軸81とのわずかな隙間には、潤滑油が充填されている。
【0030】
すべり軸受91の軸線方向の寸法は、出力軸81の全体の長さに対して45%程度になっている。この実施形態では、出力軸81のうちロータヨーク89の大径部89Aに収容されている箇所は、すべり軸受91で覆われている。すべり軸受91よりも高さ方向Tdの下側には、ナット92が配置されている。ナット92は軸支部84の挿入穴84Aを下側から蓋をしている。出力軸81は、ナット92によって下側より支えられている。また、ナット92は、出力軸81とすべり軸受91との間に充填された潤滑油が、すべり軸受91の高さ方向Tdの下側へと漏れることを抑制している。
【0031】
ベース82の高さ方向Tdの上側の開口縁には、円環状のフランジ93が被せられている。フランジ93の内径は、ロータヨーク89における大径部89Aの外径よりもやや大きくなっている。なお、フランジ93の中央の孔を挿通して、出力軸81が小径部89Bに覆われた状態でフランジ93よりも上側にまで突出している。
【0032】
図5に示すように、出力軸81の高さ方向Td上側の先端部には、ロータヨーク89の小径部89B及び筒体94を介して、送風ファン50が取り付けられている。筒体94は円筒状の金属部材であり、ロータヨーク89の小径部89Bの外周面に取り付けられている。
図3及び
図5に示すように、送風ファン50は、保持盤51と、複数の羽根52と、で構成されている。保持盤51は、略円盤状になっている。この実施形態では、保持盤51は、中央ほど上側に盛り上がるような形状になっている。保持盤51の中央においては、円形の貫通孔53が開口している。当該貫通孔53には、上記の筒体94及び小径部89Bを介して出力軸81が固定されている。
【0033】
図3に示すように、保持盤51の上側の面には、複数の羽根52が上側に向かって突出している。羽根52は、板状となっている。羽根52は、保持盤51の径方向内側から外側に向かって延びている。なお、この実施形態では、延設長さの異なる羽根52が設けられている。また、羽根52は、保持盤51の周方向に等間隔毎に配置されている。したがって、複数の羽根52は、高さ方向Tdから視た場合に、放射状に配置されている。
【0034】
送風ファン50は、熱硬化性の合成樹脂を基材、炭素粉末を放熱材として、これらの原料を混合した材質で形成されている。なお、合成樹脂よりも炭素粉末の方が熱伝導率は高くなっている。
【0035】
図5に示すように、ファンケース61のファン部60内部には、送風ファン50が収容される収容空間S1と、送風ファン50から送風される空気が流通する流通路S2が区画されている。収容空間S1は、ファン部60の内部空間のうちの径方向中央部分で構成されている。具体的には、収容空間S1は、フランジ93の上面と、上側ファンケース62の内面とで上下方向に挟まれた空間である。したがって、収容空間S1は、導入口64を介してファンケース61の外部に直接連通している。流通路S2は、ファン部60の内部空間のうちの径方向外側部分で構成されている。具体的には、流通路S2は、下側ファンケース63の内面と上側ファンケース62の内面とで上下方向に挟まれた空間である。したがって、流通路S2は、収容空間S1の径方向外側で円環状に延びている。また、流通路S2は、収容空間S1に対して径方向に連通している。この実施形態では、流通路S2は、当該流通路S2の延設方向に直交する断面視で概ね円形状になっている。
【0036】
ファンケース61にモータ80を組み付けた場合、流通路S2は、出力軸81の軸線方向においてステータアッシー85と重複する位置且つ、ステータアッシー85の径方向外側に配置されている。この実施形態では、流通路S2における高さ方向Tdの概ね下側半分が、ステータアッシー85と重複する位置に配置されている。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0038】
モータ80に電力が供給されると、コイル87と永久磁石90との間で発生する電磁力により、ロータアッシー88が回転する。ロータアッシー88の回転に伴って、出力軸81及び送風ファン50が回転する。送風ファン50が回転すると、ブロア40の外部の空気が、導入口64を通ってファンケース61内部に吸引される。空気は、送風ファン50の遠心力により、ファンケース61の流通路S2に導かれる。空気は、送風ファン50の回転に合わせて流通路S2を周方向に流通する。なお、流通路S2において、送風ファン50の回転によって空気の流速や圧力が増加する。流通路S2を通過した空気は、導出管70及び排出管100を通過してブロア40の外部に放出される。
【0039】
また、モータ80に電力が供給されると、コイル87の巻き線87Aに電流が流れる。巻き線87Aに電流が流れることに伴ってコイル87が発熱する。コイル87の熱は、コイル87近傍に配置されたベース82等の部材に伝わる。ベース82の熱は、軸支部84から放熱されたり、本体部83の側部83Bより放熱されたりする。
【0040】
軸支部84に伝わった熱は、軸支部84と接触しているすべり軸受91へと伝わる。また、すべり軸受91の熱は、すべり軸受91の内周面と接触している出力軸81へと伝わる。また、出力軸81には、送風ファン50が取り付けられている。送風ファン50には、炭素粉末が混合されているため、熱が伝わりやすい。したがって送風ファン50から熱が放散される。また、本体部83の側部83Bに伝わった熱は、側部83Bより径方向外側に配置されたファンケース61にも伝わる。特に、出力軸81の軸線方向において、ステータアッシー85と重複する位置に配置された流通路S2を区画する箇所のファンケース61に熱が伝達する。すなわち、ステータアッシー85から下側ファンケース63に熱が伝達される。
【0041】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0042】
(1)本実施形態において、出力軸81はすべり軸受91を介してベース82に支持されている。ここで、すべり軸受91は、転がり軸受と比較して、軸線方向の寸法が長い製品が一般的である。仮に、軸線方向の寸法が長い転がり軸受けを適用する場合は、径方向に大きい転がり軸受となり、モータの外径が大きくなるなどの欠点が生じる。
【0043】
本実施形態において、すべり軸受91は、出力軸81の全体の長さに対して45%程度の長さを有している。したがって、すべり軸受91を適用した場合は、モータ80の拡大を防止しながら出力軸81とベース82との接触面積を確保しやすい。出力軸81とベース82との接触面積が拡大すると、コイル87からベース82に伝わった熱は、出力軸81に伝わりやすくなる。しかも、上記実施形態では、出力軸81の外周面とすべり軸受91の内周面との間に潤滑油が充填されているので、当該潤滑油を介しても伝熱される。出力軸81に伝熱された場合、出力軸81に取り付けられた送風ファン50にも伝熱され、当該送風ファン50等を通して熱が放散される。このように、ステータアッシー85から送風ファン50に至る伝熱経路を確保することで、送風ファン50を放熱用の部材としても機能させて、排熱性能を向上させている。
【0044】
(2)モータ80に電力が供給された場合には、送風ファン50は回転している。したがって、モータ80に電力が供給されている場合には、送風ファン50には常に新しい空気が供給される。そのため、送風ファン50から排熱することにより、効率のよい排熱が期待できる。
【0045】
本実施形態において、合成樹脂を基材とする送風ファン50に炭素粉末が混合されている。そのため、炭素粉末が含まれていない場合と比較して、炭素粉末が含まれた送風ファン50の伝熱性が向上する。
【0046】
(3)ファンケース61の流通路S2には、新しい空気が供給される上、流通路S2を流通する空気の流速も速い。したがって、流通路S2を区画しているファンケース61は空気の流れにより冷やされやすい。
【0047】
本実施形態において、流通路S2は、出力軸81の軸線方向においてステータアッシー85と重複する位置且つ、ステータアッシー85の径方向外側のファンケース61に区画されている。したがって、ステータアッシー85のコイル87近傍のベース82の側部83Bからファンケース61に熱が伝わった場合、下側ファンケース63に熱が伝達しやすい。そして、下側ファンケース63に伝わった熱は、上述したように流通路S2を通過する空気の流れによって冷やされやすい。
【0048】
(4)本実施形態において、軸支部84の外周面とロータアッシー88との間、ステータアッシー85とロータヨーク89との間に他の部材は配置されていない。換言すれば、ステータアッシー85からロータアッシー88、ロータアッシー88から軸支部84へと伝熱されるのを妨げる部材が存在しない。したがって、ステータアッシー85におけるコイル87の熱を、出力軸81を介して送風ファン50に伝えやすい。
【0049】
また、ステータアッシー85とロータヨーク89との間に他の部材は配置されていない。換言すれば、ステータアッシー85からロータヨーク89へと伝熱されるのを妨げる部材が存在しない。したがって、ロータヨーク89を介しても、ステータアッシー85におけるコイル87の熱を送風ファン50へと伝達できる。
【0050】
(5)本実施形態において、送風ファン50は、保持盤51と、複数の羽根52と、で構成されている。また、保持盤51は中央ほど上側に盛り上がるような形状になっている。このような山形の保持盤51と平板状の保持盤とを比較すると、本実施形態のような山形の保持盤51の方がより大きな表面積を確保しやすい。また、当該保持盤51に、複数の羽根52取り付けられていることで、より表面積が大きくなっている。したがって、本実施形態の送風ファン50は熱の放散性は高くなっている。
【0051】
(6)本実施形態において、ベース82の材質は、アルミニウム合金である。したがって、コイル87からベース82の側部83Bに伝わった熱が、軸支部84を経て出力軸81へと伝わりやすい。
【0052】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・上記実施形態において、CPAP装置10は、ブロア40とは別の装置を備えていてもよい。例えば、CPAP装置10は、加湿器を備えていてもよい。加湿器を設ける場合には、例えば、ハウジング20の排出管100に加湿器を取り付け、加湿器の排出側にホース130を取り付けるのが好適である。
【0054】
・ブロア40の形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、ファンケース61は、送風ファン50を収容する収容空間が、高さ方向Tdから視た場合に、円形状であれば、ファンケース61の外形は直方体状であってもよいし、多角形状であってもよい。また例えば、導出管70は、内径が広がるように延びていてもよいし、湾曲していてもよい。
【0055】
・ファンケース61の形状は上記実施形態に限定されない。ファンケース61内部に区画された流通路S2が、出力軸81の軸線方向においてステータアッシー85と重複しない位置に配置されるようなファンケース61の形状でもよい。
【0056】
・ファンケース61を省略することもできる。この場合、例えば、ハウジング20がファンケース61の流通路S2に相当する空間を区画するような形状になっていればよい。
【0057】
・モータ80の構成は、上記実施形態に限定されない。モータ80は、出力軸81、ロータアッシー88、ステータアッシー85及びベース82を備えていれば、その他の部材は含まれていなくてもよいし、上記実施形態以外の構成が含まれていてもよい。
【0058】
・上記実施形態において、ベース82は、出力軸81を支持できる形状であればどのような形状でもよい。例えば、ベース82は、軸支部84のみを有しており、本体部83を備えていなくてもよい。
【0059】
・ベース82の材質は上記実施形態に限定されない。ただし、ベース82の材質は、ハウジング20を構成する材料よりも熱伝導率が大きい材質であることが好ましい。このような材質としては、例えば、上記実施形態のアルミニウム合金の他に、金、銀、銅やこれらの合金であることが好ましい。
【0060】
・上記実施形態において、軸支部84の外周面とロータアッシー88との間に他の部材が配置されていてもよい。また、ロータアッシー88とステータアッシー85との間に他の部材が配置されていてもよい。なお、仮に、軸支部84の外周面とロータアッシー88との間、及びロータアッシー88とステータアッシー85との間に、他の部材を配置する場合、その部材を構成する材質として、空気より熱伝達率が高いものを採用すると、ステータアッシー85からの熱が他の部材に伝わりやすい。
【0061】
・上記実施形態において、コイル87の数は限定されない。
【0062】
・円環状の永久磁石90に着磁される間隔は、上記実施形態のように周方向90度毎でなくてもよい。なお、永久磁石90が円環状でなく、複数の磁石が同一円周上に配置されていてもよい。
【0063】
・上記実施形態において、出力軸81に対するすべり軸受91の長さの割合は45%以上でも45%未満でもよい。一方で、出力軸81に対してすべり軸受91の長さが過度に長いと、モータ80が高さ方向に大きくなりすぎることがある。また、出力軸81に対してすべり軸受91の長さが過度に短いと、期待される放熱効果が得られないおそれがある。したがって、出力軸81の長さ寸法に対するすべり軸受91の長さの割合は、40%~50%程度が好ましい。
【0064】
・送風ファン50に混合される炭素材は、炭素粉末に限定されない。例えば、炭素繊維や木炭等、ほぼ炭素原子のみで構成される物質であればよい。
【0065】
・送風ファン50の基材は、合成樹脂でなく金属でもよい。その場合、当該金属よりも熱伝導率の高い材質を混合させるとよい。例えば、アルミに銅粉末を混合した材質で、送風ファン50を形成してもよい。
【0066】
・上記実施形態において、送風ファン50における保持盤51及び羽根52の形状は限定されない。また、保持盤51の上面又は下面から羽根52が突出していなくてもよい。例えば、円環状の保持盤の先端に複数の羽根52が取り付けられたものでもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…CPAP装置
20…ハウジング
50…送風ファン
80…モータ
81…出力軸
84A…挿入穴
82…ベース
85…ステータアッシー
87…コイル
88…ロータアッシー
90…永久磁石
91…すべり軸受