(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】導電性2次元粒子およびその製造方法、導電性膜、導電性複合材料、ならびに導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20240702BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20240702BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20240702BHJP
C01B 32/921 20170101ALI20240702BHJP
【FI】
H01B5/00 H
H01B1/20 A
H01B5/14 Z
C01B32/921
(21)【出願番号】P 2022556971
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2021037602
(87)【国際公開番号】W WO2022080321
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2020173896
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】小柳 雅史
(72)【発明者】
【氏名】部田 武志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 匡矩
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 宏介
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼町 章麿
(72)【発明者】
【氏名】小河 佑介
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-93971(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110698847(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/20
H01B 5/14
C01B 32/921
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの層を含む、または1つの層と複数の層とを含む、層状材料の導電性2次元粒子であって、
前記層が、以下の式:
M
mX
n
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
Li含有率が、0.0001質量%以上、0.0020質量%以下であり、
前記導電性2次元粒子の2次元面の長径の平均値が、1.0μm以上、20μm以下である、導電性2次元粒子。
【請求項2】
X線回折測定して得られる(002)面のピークが8.0°以上である、請求項1に記載の導電性2次元粒子。
【請求項3】
前記Li含有率は0.0010質量%以下である、請求項1または2に記載の導電性2次元粒子。
【請求項4】
前記2次元面の長径の平均値は10μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の導電性2次元粒子。
【請求項5】
前記導電性2次元粒子で導電性膜を形成し、マイクロメーターで測定するか、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定するか、または触針式表面形状測定器で測定した前記導電性膜の厚みと、4探針法で測定した前記導電性膜の表面抵抗率を、下記式に代入して求めた導電率が、2000S/cm以上である、請求項1~4のいずれかに記載の導電性2次元粒子。
導電率[S/cm]=1/(導電性膜の厚み[cm]×導電性膜の表面抵抗率[Ω/□])
【請求項6】
1つの層を含む、または1つの層と複数の層とを含む、層状材料の導電性2次元粒子を含む導電性膜であって、
前記層が、以下の式:
M
mX
n
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
前記導電性2次元粒子中のLi含有率が、0.0001質量%以上、0.0020質量%以下であり、導電率が2000S/cm以上である、導電性膜。
【請求項7】
(a)以下の式:
M
mAX
n
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b1)エッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c)前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、Li含有化合物とを混合して撹拌する工程を含む、Liインターカレーション処理を行うこと、
(d)前記Liインターカレーション処理して得られたLiインターカレーション処理物を、遠心分離し、上澄み液を廃棄後に残りの沈殿物を水で洗浄する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(e)前記デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物と、酸溶液を混合して撹拌する工程を含む、酸処理を行うこと、および
(f)酸処理して得られた酸処理物を、水で洗浄して導電性2次元粒子を得ること
を含み、前記導電性2次元粒子中のLi含有率が0.0020質量%以下である、導電性2次元粒子の製造方法。
【請求項8】
(a)以下の式:
M
mAX
n
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b2)Li含有化合物を含むエッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子をエッチングするとともに、Liインターカレーション処理を行うこと、
(d)前記エッチングおよびLiインターカレーション処理して得られた(エッチング+Liインターカレーション)処理物を、遠心分離し、上澄み液を廃棄後に残りの沈殿物を水で洗浄する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(e)前記デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物と、酸溶液を混合して撹拌する工程を含む、酸処理を行うこと、および
(f)酸処理して得られた酸処理物を、水で洗浄して導電性2次元粒子を得ること
を含み、前記導電性2次元粒子中のLi含有率が0.0020質量%以下である、導電性2次元粒子の製造方法。
【請求項9】
前記酸溶液のpHは2.5以下である、請求項7または8に記載の導電性2次元粒子の製造方法。
【請求項10】
前記(e)の酸処理で、前記酸溶液を混合し、撹拌してから遠心分離を行い、上澄み液を除去する工程を繰り返し行う、請求項7~9のいずれかに記載の導電性2次元粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれかに記載の導電性2次元粒子と、ポリマーとを含む導電性複合材料。
【請求項12】
請求項1~5のいずれかに記載の導電性2次元粒子を含有する導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性2次元粒子およびその製造方法、導電性膜、導電性複合材料、ならびに導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性を有する新規材料としてMXeneが注目されている。MXeneは、いわゆる2次元材料の1種であり、後述するように、1つまたは複数の層の形態を有する層状材料である。一般的に、MXeneは、かかる層状材料の粒子(粉末、フレーク、ナノシート等を含み得る)の形態を有する。
【0003】
現在、種々の電気デバイスへのMXeneの応用に向けて様々な研究がなされている。上記応用に向け、MXeneを含む材料の導電性をより高めることが求められている。その検討の一環として、多層化物として得られるMXeneの層間剥離法について検討されており、前記層間剥離法の一つとして、Liをインターカラントとして用いた層間剥離法が提案されている。しかし、Liをインターカレーションに用いると、耐吸湿性に劣り、抵抗変化が大きくなる、といった問題がある。
【0004】
上記問題に対して、非特許文献1には、Liを用いたインターカレーションにより得られた懸濁液に、塩酸等を添加して、pHを約2.9に調整することで、MXeneからLiイオンを除去することが示されている。また、非特許文献2には、上記Liに代えて、分散剤としてTMAOH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いることによって、多層MXeneの層間剥離を行ったことが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pristine Titanium Carbide MXene Films with Environmentally Stable Conductivity and Superior Mechanical Strength (Adv. Funct. Mater. 2020, 30, 1906996)
【文献】Guidelines for Synthesis and Processing of Two-Dimensional Titanium Carbide (Ti3C2Tx MXene) Chem. Mater. 2017, 29, 7633-7644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の技術では、抵抗変化が小さくなっているが、効果として十分とは言えない。非特許文献2は、Liを使用するものではなく、上記Liに起因する問題は生じないが、分散剤として使用するTMAOHがMXene中に残存し、この残存するTMAOHに起因して導電率が低い。また、TMAOHのように極性の高い分子が残存していると吸湿しやすく、抵抗変化も大きいと考えられる。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、抵抗変化が小さく、高導電性を示す導電性膜を形成できる導電性2次元粒子、高導電性を示す導電性膜、上記導電性2次元粒子の製造方法、および上記導電性2次元粒子を用いた導電性複合材料と導電性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの要旨によれば、
1つの層を含む、または1つの層と複数の層とを含む、層状材料の導電性2次元粒子であって、
前記層が、以下の式:
MmXn
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
Li含有率が、0.0001質量%以上、0.0020質量%以下であり、
前記導電性2次元粒子の2次元面の長径の平均値が、1.0μm以上、20μm以下である、導電性2次元粒子が提供される。
【0008】
本発明のもう1つの要旨によれば、
(a)以下の式:
MmAXn
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b1)エッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c)前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、Li含有化合物とを混合して撹拌する工程を含む、Liインターカレーション処理を行うこと、
(d)前記Liインターカレーション処理して得られたLiインターカレーション処理物を、遠心分離し、上澄み液を廃棄後に残りの沈殿物を水で洗浄する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(e)前記デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物と、酸溶液を混合して撹拌する工程を含む、酸処理を行うこと、および
(f)酸処理して得られた酸処理物を、水で洗浄して導電性2次元粒子を得ること
を含み、前記導電性2次元粒子中のLi含有率が0.0020質量%以下である、導電性2次元粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性2次元粒子が、所定の層状材料(本明細書において「MXene」とも言う)で形成され、Li含有率が、0.0001質量%以上、0.0020質量%以下であり、前記導電性2次元粒子の2次元面の長径の平均値が、1.0μm以上、20μm以下であり、これにより、MXeneを含み、抵抗変化が小さく、高導電性を示す導電性膜を形成できる、導電性2次元粒子が提供される。
また本発明によれば、(a)所定の前駆体を準備すること、(b1)エッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、(c)前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、Li含有化合物とを混合して撹拌する工程を含む、Liインターカレーション処理を行うこと、(d)前記Liインターカレーション処理して得られたLiインターカレーション処理物を、遠心分離し、上澄み液を廃棄後に残りの沈殿物を水で洗浄する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、(e)前記デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物と、酸溶液を混合して撹拌する工程を含む、酸処理を行うこと、および(f)酸処理して得られた酸処理物を、水で洗浄することにより、Li含有率が0.0020質量%以下である上記導電性2次元粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1つの実施形態における導電性膜に利用可能な層状材料であるMXeneを示す概略模式断面図であって、(a)は単層MXeneを示し、(b)は多層(例示的に二層)MXeneを示す。
【
図2】本発明に係るMXene粒子における層間距離を説明する図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態における導電性膜を説明する図であって、(a)は導電性膜の概略模式断面図を示し、(b)は導電性膜におけるMXene粒子の概略模式斜視図を示す。
【
図4】本発明の別の実施形態における導電性膜を示す概略模式断面図である。
【
図5】実施例1で製造した導電性2次元粒子(MXene粒子)の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図6】実施例でのX線回折測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1:導電性2次元粒子)
以下、本発明の1つの実施形態における導電性2次元粒子について詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態における導電性2次元粒子は、
1つの層を含む、または1つの層と複数の層とを含む、層状材料の導電性2次元粒子であって、
前記層が、以下の式:
MmXn
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体(該層本体は、各XがMの八面体アレイ内に位置する結晶格子を有し得る)と、該層本体の表面(より詳細には、該層本体の互いに対向する2つの表面の少なくとも一方)に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含む。
【0013】
上記層状材料は、層状化合物として理解され得、「MmXnTs」とも表され、sは任意の数であり、従来、sに代えてxまたはzが使用されることもある。代表的には、nは、1、2、3または4であり得るが、これに限定されない。
【0014】
MXeneの上記式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、Ti、V、CrおよびMoからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
【0015】
MXeneは、上記の式:MmXnが、以下のように表現されるものが知られている。
Sc2C、Ti2C、Ti2N、Zr2C、Zr2N、Hf2C、Hf2N、V2C、V2N、Nb2C、Ta2C、Cr2C、Cr2N、Mo2C、Mo1.3C、Cr1.3C、(Ti,V)2C、(Ti,Nb)2C、W2C、W1.3C、Mo2N、Nb1.3C、Mo1.3Y0.6C(上記式中、「1.3」および「0.6」は、それぞれ約1.3(=4/3)および約0.6(=2/3)を意味する。)、
Ti3C2、Ti3N2、Ti3(CN)、Zr3C2、(Ti,V)3C2、(Ti2Nb)C2、(Ti2Ta)C2、(Ti2Mn)C2、Hf3C2、(Hf2V)C2、(Hf2Mn)C2、(V2Ti)C2、(Cr2Ti)C2、(Cr2V)C2、(Cr2Nb)C2、(Cr2Ta)C2、(Mo2Sc)C2、(Mo2Ti)C2、(Mo2Zr)C2、(Mo2Hf)C2、(Mo2V)C2、(Mo2Nb)C2、(Mo2Ta)C2、(W2Ti)C2、(W2Zr)C2、(W2Hf)C2、
Ti4N3、V4C3、Nb4C3、Ta4C3、(Ti,Nb)4C3、(Nb,Zr)4C3、(Ti2Nb2)C3、(Ti2Ta2)C3、(V2Ti2)C3、(V2Nb2)C3、(V2Ta2)C3、(Nb2Ta2)C3、(Cr2Ti2)C3、(Cr2V2)C3、(Cr2Nb2)C3、(Cr2Ta2)C3、(Mo2Ti2)C3、(Mo2Zr2)C3、(Mo2Hf2)C3、(Mo2V2)C3、(Mo2Nb2)C3、(Mo2Ta2)C3、(W2Ti2)C3、(W2Zr2)C3、(W2Hf2)C3、(Mo2.7V1.3)C3(上記式中、「2.7」および「1.3」は、それぞれ約2.7(=8/3)および約1.3(=4/3)を意味する。)
【0016】
代表的には、上記の式において、Mがチタンまたはバナジウムであり、Xが炭素原子または窒素原子であり得る。例えば、MAX相は、Ti3AlC2であり、MXeneは、Ti3C2Tsである(換言すれば、MがTiであり、XがCであり、nが2であり、mが3である)。
【0017】
なお、本発明において、MXeneは、残留するA原子を比較的少量、例えば元のA原子に対して10質量%以下で含んでいてもよい。A原子の残留量は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下であり得る。しかしながら、A原子の残留量は、10質量%を超えていたとしても、導電性2次元粒子の用途や使用条件によっては問題がない場合もあり得る。
【0018】
本明細書において、導電性2次元粒子(MXene粒子)とは、上記MXeneで構成され、(MXene粒子の2次元面の長径の平均値)/(MXene粒子の厚みの平均値)の比率が1.2以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上の粒子をいう。前記MXene粒子の2次元面の長径の平均値と、前記MXene粒子の厚みの平均値は、後述する方法で求めればよい。
【0019】
本実施形態の導電性2次元粒子は、
図1(a)に模式的に例示する1つの層のMXene10a(単層MXene)を含む集合物である。MXene10aは、より詳細には、M
mX
nで表される層本体(M
mX
n層)1aと、層本体1aの表面(より詳細には、各層にて互いに対向する2つの表面の少なくとも一方)に存在する修飾または終端T3a、5aとを有するMXene層7aである。よって、MXene層7aは、「M
mX
nT
s」とも表され、sは任意の数である。
【0020】
本実施形態の導電性2次元粒子は、1つの層と共に複数の層を含みうる。複数の層のMXene(多層MXene)として、
図1(b)に模式的に示す通り、2つの層のMXene10bが挙げられるが、これらの例に限定されない。
図1(b)中の、1b、3b、5b、7bは、前述の
図1(a)の1a、3a、5a、7aと同じである。多層MXeneの、隣接する2つのMXene層(例えば7aと7b)は、必ずしも完全に離間していなくてもよく、部分的に接触していてもよい。前記MXene10aは、上記多層MXene10bが個々に分離されて1つの層で存在するものであり、分離されていない多層MXene10bが、残存し、上記単層MXene10aと多層MXene10bの混合物である場合がある。
【0021】
本実施形態を限定するものではないが、MXeneの各層(上記のMXene層7a、7bに相当する)の厚さは、例えば0.8nm以上、10nm以下、更には0.8nm以上、5nm以下、特に0.8nm以上、3nm以下でありうる(主に、各層に含まれるM原子層の数により異なり得る)。含まれうる多層MXeneの、個々の積層体について、層間距離(または空隙寸法、
図1(b)中にΔdにて示す)は、例えば0.8nm以上、10nm以下、特に0.8nm以上、5nm以下、より特に約1nmであり、層の総数は、2以上、20,000以下でありうる。
【0022】
本実施形態の導電性2次元粒子は、上記含みうる多層MXeneが、層間剥離処理を経て得られた、層数の少ないMXeneであることが好ましい。前記「層数が少ない」とは、例えばMXeneの積層数が10層以下であることをいい、更に6層以下であってもよい。また、層数の少ない多層MXeneの積層方向の厚みは、15nm以下であることが好ましく、さらに10nm以下であることがより好ましい。以下、この「層数の少ない多層MXene」を「少層MXene」ということがある。また、単層MXeneと少層MXeneを併せて「単層・少層MXene」ということがある。
【0023】
本実施形態の導電性2次元粒子は、好ましくは、単層MXeneと少層MXene、すなわち単層・少層MXeneを含む。本実施形態の導電性2次元粒子は、厚みが10nm以下である単層・少層MXeneの割合が、全MXeneに占める割合で、90体積%以上であることが好ましく、より好ましくは95体積%以上である。
【0024】
(導電性2次元粒子のLi含有率)
本実施形態の導電性2次元粒子は、Li含有率が、0.0001質量%以上、0.0020質量%以下である。Li含有率が、0.0020質量%以下に抑えられていることによって、抵抗変化が小さくなる。またLi含有率が少ないほど、導電性2次元粒子を用いて形成した導電性膜の導電率がより高くなる。前記Li含有率は、好ましくは0.0010質量%以下、より好ましくは0.0008質量%以下である。高導電率と抵抗変化低減の両立の観点からは、Li含有率の下限は0.0001質量%である。前記Li含有率は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いたICP-AESなどにより測定可能である。
【0025】
(導電性2次元粒子の2次元面の長径の平均値)
本実施形態の導電性2次元粒子は、2次元面の長径の平均値が、1.0μm以上、20μm以下である。以下、2次元面の長径の平均値を「平均フレークサイズ」ということがある。
【0026】
上記平均フレークサイズが大きいほど、フィルムの導電率は大きくなる。本実施形態の導電性2次元粒子は、平均フレークサイズが1.0μm以上であり大きいため、この導電性2次元粒子を用いて形成されたフィルム、例えばこの導電性2次元粒子を積層させて得られるフィルムは、2000S/cm以上の導電率を達成できる。2次元面の長径の平均値は、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.5μm以上である。非特許文献1では、MXeneに超音波処理を施すことでMXeneの層間剥離を行っているが、超音波処理により大部分のMXeneが長径で約数百nmと小径化するため、非特許文献1で得られた単層MXeneにより形成されたフィルムは導電率が低いと考えられる。
【0027】
2次元面の長径の平均値は、溶液中の分散性確保の観点から、20μm以下であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0028】
上記2次元面の長径は、後記の実施例に示す通り、電子顕微鏡写真において、各導電性2次元粒子を楕円形状に近似したときの長径をいい、上記2次元面の長径の平均値は、80粒子以上の上記長径の個数平均をいう。電子顕微鏡として、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)写真を用いることができる。
【0029】
本実施形態の導電性2次元粒子の長径の平均値は、該導電性2次元粒子を含む導電性膜(導電性フィルム)を溶媒に溶解させ、上記導電性2次元粒子を該溶媒に分散させて測定してもよい。または、前記導電性フィルムのSEM画像から測定してもよい。
【0030】
(導電性2次元粒子の厚みの平均値)
本実施形態の導電性2次元粒子の厚みの平均値は、1nm以上、10nm以下であることが好ましい。前記厚みの平均値は、好ましくは7nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。一方、単層MXeneの厚みを考慮すると、導電性2次元粒子の厚みの平均値の下限は1nmとなりうる。
【0031】
上記導電性2次元粒子の厚みの平均値は、マイクロメーターで測定して平均厚みを算出するか、触針式表面形状測定器で測定して平均厚みを算出するか、原子間力顕微鏡(AFM)写真または透過型電子顕微鏡(TEM)写真に基づき数平均寸法(例えば少なくとも40個の数平均)として求められる。
【0032】
(導電性2次元粒子の層間距離)
本実施形態の導電性2次元粒子は、MXeneを構成する層と層の間にLiイオンがほとんど存在していないため、MXeneを構成する層と層の間の距離、例えば、M
mX
nがTi
3C
2で表されるMXeneの一例であるTi
3C
2O
2において、
図2において両矢印で示される層と層の間の距離が短い。上記距離は、X線回折測定して得られるXRDプロファイルにおける、MXeneの(002)面に相当する10°以下の低角のピークの位置で判断できる。XRDプロファイルにおけるピークが高角であるほど、層間距離が狭まっていることを示す。本実施形態における導電性2次元粒子は、X線回折測定して得られる(002)面のピークが8.0°以上であることが好ましい。前記ピークはより好ましくは8.5°以上である。なお、ピーク位置の上限は9.0°程度である。前記ピークは、ピークトップをいう。前記X線回折測定は、後述する実施例に示す条件で測定すればよい。測定対象は、導電性2次元粒子(MXene粒子)であってもよく、または導電性2次元粒子(MXene粒子)から形成された導電性膜(MXene膜)であってもよい。
【0033】
本実施形態の導電性2次元粒子は、該導電性2次元粒子で導電性膜を形成し、マイクロメーターで測定するか、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定するか、または触針式表面形状測定器で測定した前記導電性膜の厚みと、4探針法で測定した前記導電性膜の表面抵抗率を、下記式に代入して求めた導電率が、2000S/cm以上を達成しうるものである。
導電率[S/cm]=1/(導電性膜の厚み[cm]×導電性膜の表面抵抗率[Ω/□])
【0034】
前記導電性膜の形成は次の通り行う。すなわち、後述する実施例1の導電性2次元粒子を用いた導電性膜の製造条件の通り、酸溶液で処理および水で洗浄後に得られる、上澄み液またはクレイを吸引ろ過する。ろ過後は80℃で24時間の真空乾燥を行って導電性膜(MXeneフィルム)を作製する。吸引ろ過のフィルターには、メンブレンフィルター(メルク株式会社製、デュラポア、孔径0.45μm)を用いる。上記上澄み液中には、MXene粒子の固形分で0.05g、純水40mL含まれるようにする。
【0035】
前記導電性膜の厚みは、マイクロメーター、走査型電子顕微鏡、または触針式表面形状測定器のいずれかで測定する。どの測定方法を採用するかは、前記導電性膜の厚みに応じて決定する。測定方法の採用の目安として、前記マイクロメーターでの測定は、前記導電性膜の厚みが薄い場合に用いればよい。前記導電性膜の厚みが5μm以上の場合に用いてもよい。前記触針式表面形状測定器での測定は、前記導電性膜の厚みが400μm以下の場合、前記走査型電子顕微鏡での測定は、前記導電性膜の厚みが200μm以下の場合であって、上記触針式表面形状測定器で測定できない場合に用いる。前記走査型電子顕微鏡で測定する場合、測定倍率は、膜厚に応じて、下記表1の通りとする。触針式表面形状測定器で測定する場合、Veeco Instruments Inc社のDektak(登録商標)測定器を用いて測定する。前記導電性膜の厚みは、平均値として算出する。
【0036】
【0037】
本実施形態の導電性2次元粒子は、アミンを含まない。非特許文献2に記載の通り、TMAOHを用いてMXeneの層間剥離を行った場合、単層・少層MXeneは得られるが、洗浄してもTMAOHがMXene表面に残存し、それが原因で導電率が低くなるため好ましくない。なお、本明細書における「アミンを含まない」とは、ガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)装置を用いて測定したときに、TMAOH由来のトリエチルアミン(m/z=42,53,54)が10質量ppm以下であることをいう。
【0038】
本実施形態の導電性2次元粒子は、塩素と臭素の合計含有率が1500質量ppm以下であっても、1500質量ppm超であってもよく、製造条件によっては、塩素と臭素の合計含有率が1500質量ppm超の場合もありうる。
【0039】
(実施形態2:導電性2次元粒子の製造方法)
以下、本発明の実施形態における導電性2次元粒子の製造方法について詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0040】
本実施形態の1つの導電性2次元粒子の製造方法(第1製造方法)は、
(a)以下の式:
MmAXn
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b1)エッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c)前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、Li含有化合物とを混合して撹拌する工程を含む、Liインターカレーション処理を行うこと、
(d)前記Liインターカレーション処理して得られたLiインターカレーション処理物を、遠心分離し、上澄み液を廃棄後に残りの沈殿物を水で洗浄する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(e)前記デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物と、酸溶液を混合して撹拌する工程を含む、酸処理を行うこと、および
(f)酸処理して得られた酸処理物を、水で洗浄して導電性2次元粒子を得ること
を含む。この製造方法により、導電性2次元粒子中のLi含有率が0.0020質量%以下である、導電性2次元粒子を製造できる。
【0041】
本実施形態のもう1つの導電性2次元粒子の製造方法(第2製造方法)は、
(a)以下の式:
MmAXn
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b2)Li含有化合物を含むエッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子をエッチングするとともに、Liインターカレーション処理を行うこと、
(d)前記エッチングおよびLiインターカレーション処理して得られた(エッチング+Liインターカレーション)処理物を、遠心分離し、上澄み液を廃棄後に残りの沈殿物を水で洗浄する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(e)前記デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物と、酸溶液を混合して撹拌する工程を含む、酸処理を行うこと、および
(f)酸処理して得られた酸処理物を、水で洗浄して導電性2次元粒子を得ること
を含む。この製造方法により、導電性2次元粒子中のLi含有率が0.0020質量%以下である、導電性2次元粒子を製造できる。
以下、第1製造方法と第2製造方法の各工程について詳述する。これら2つの製造方法で共通する工程(a)と工程(d)~(f)はまとめて説明する。
【0042】
・工程(a)
まず、所定の前駆体を準備する。本実施形態において使用可能な所定の前駆体は、MXeneの前駆体であるMAX相であり、
以下の式:
MmAXn
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される。
【0043】
上記M、X、nおよびmは、MXeneで説明した通りである。Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、通常はA族元素、代表的にはIIIA族およびIVA族であり、より詳細にはAl、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、SおよびCdからなる群より選択される少なくとも1種を含み得、好ましくはAlである。
【0044】
MAX相は、MmXnで表される2つの層(各XがMの八面体アレイ内に位置する結晶格子を有し得る)の間に、A原子により構成される層が位置した結晶構造を有する。MAX相は、代表的にm=n+1の場合、n+1層のM原子の層の各間にX原子の層が1層ずつ配置され(これらを合わせて「MmXn層」とも称する)、n+1番目のM原子の層の次の層としてA原子の層(「A原子層」)が配置された繰り返し単位を有するが、これに限定されない。
【0045】
上記MAX相は、既知の方法で製造することができる。例えばTiC粉末、Ti粉末およびAl粉末を、ボールミルで混合し、得られた混合粉末をAr雰囲気下で焼成し、焼成体(ブロック状のMAX相)を得る。その後、得られた焼成体をエンドミルで粉砕して次工程用の粉末状MAX相を得ることができる。
【0046】
・工程(b1)
第1製造方法では、エッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行う。エッチング処理の条件は、特に限定されず、既知の条件を採用することができる。前述のとおりエッチングは、F-を含むエッチング液を用いて実施され得、例えば、フッ酸を用いた方法、フッ化リチウムおよび塩酸の混合液を用いた方法、これらに更にリン酸等を含むエッチング液を用いた方法が挙げられる。これらの方法では、溶媒として例えば純水との混合液を用いた方法が挙げられる。上記エッチング処理により得られたエッチング処理物として例えばスラリーが挙げられる。
【0047】
・工程(c)
前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、Li含有化合物とを混合して撹拌する工程を含む、Liインターカレーション処理を行う。
【0048】
Li含有化合物として、Liイオンを含む金属化合物が挙げられる。Liイオンを含む金属化合物として、Liイオンと陽イオンが結合したイオン性化合物を用いることができる。例えばLiイオンの、ヨウ化物、リン酸塩、硫酸塩を含む硫化物塩、硝酸塩、酢酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。
【0049】
インターカレーション処理用配合物に占める、Li含有化合物の含有率は、0.001質量%以上とすることが好ましい。上記含有率は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、溶液中の分散性確保の観点からは、Li含有化合物の含有率を、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0050】
工程(c)では、例えば上記工程(b1)のエッチング処理で得られたスラリーを、遠心分離-上澄み液除去-残りの沈殿物に純水添加-再度遠心分離を繰り返すことで洗浄して得られたMXeneの水分媒体クレイを、エッチング処理物として、インターカレーション処理に供することが挙げられる。
【0051】
インターカレーション処理の具体的な方法は特に限定されず、例えば、上記MXeneの水分媒体クレイに対して、Li含有化合物を混合し、例えば室温で撹拌することが挙げられる。
【0052】
第2製造方法では、以下に説明する通り、工程(b2)で、前駆体のエッチング処理とLiインターカレーション処理をあわせて行う。
【0053】
・工程(b2)
第2製造方法では、Li含有化合物を含むエッチング液を用いて、前記前駆体から、少なくとも一部のA原子(および場合によりM原子の一部)をエッチング(除去および場合により層分離)するとともに、Liインターカレーション処理を行う。
【0054】
本実施形態では、MAX相からの少なくとも一部のA原子(および場合によりM原子の一部)のエッチング(除去および場合により層分離)時に、MmXn層の層間にLiイオンを挿入する、Liインターカレーション処理を行う。
【0055】
エッチング液中のLi含有化合物の含有率は、0.001質量%以上とすることが好ましい。上記含有率は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、溶液中の分散性確保の観点からは、エッチング液中のLi含有化合物の含有率を、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0056】
工程(b2)におけるエッチング液は、Li含有化合物を含んでいればよく、エッチング液のその他の構成は特に限定されず、既知の条件を採用することができる。例えば上記工程(b1)で述べた通り、F-を更に含むエッチング液を用いて実施され得、例えば、フッ酸を用いた方法、フッ化リチウムおよび塩酸の混合液を用いた方法、これらに更にリン酸等を含むエッチング液を用いた方法が挙げられる。これらの方法では、溶媒として例えば純水との混合液を用いた方法が挙げられる。上記エッチング処理により得られたエッチング処理物として例えばスラリーが挙げられる。
【0057】
第1製造方法と第2製造方法のうち、第1製造方法の通り、工程(b1)エッチング処理の工程と工程(c)Liインターカレーション処理の工程とを分けた製造方法によれば、MXeneをより単層化しやすいため好ましい。
【0058】
・工程(d)
第1製造方法におけるLiインターカレーション処理により得られたLiインターカレーション処理物、または第2製造方法におけるエッチングおよびLiインターカレーション処理により得られた(エッチング+Liインターカレーション)処理物を、遠心分離し、上澄み液を廃棄後に残りの沈殿物を水で洗浄する工程を含む、デラミネーション処理を行う。デラミネーション処理の条件は特に限定されず、既知の方法で行うことができる。例えば下記に示す方法で行うことが挙げられる。
【0059】
例えばスラリー状のLiインターカレーション処理物または(エッチング+Liインターカレーション)処理物を、遠心分離して上澄み液を廃棄後、残りの沈殿物を水で洗浄する工程として(i)上澄み液を廃棄後の残りの沈殿物に、純水を追加して撹拌、(ii)遠心分離し、(iii)上澄み液を回収する。この(i)~(iii)の操作を、1回以上、好ましくは2回以上、10回以下繰り返して、デラミネーション処理物として、酸処理前の単層・少層MXene含有上澄み液を得ることが挙げられる。または、この上澄み液を遠心分離して、遠心分離後の上澄み液を廃棄し、デラミネーション処理物として、酸処理前の単層・少層MXene含有クレイを得てもよい。
【0060】
・工程(e)
前記デラミネーション処理して得られた、デラミネーション処理物(単層・少層MXene含有上澄み液または単層・少層MXene含有クレイ)と、酸溶液とを、混合して撹拌する工程を含む、酸処理を行う。上記酸処理に用いる酸は限定されず、例えば鉱酸等の無機酸、および/または有機酸を用いることができる。前記酸は、好ましくは無機酸のみ、または無機酸と有機酸の混合酸である。前記酸は、より好ましくは無機酸のみである。上記無機酸として例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、フッ酸等のうちの1以上を用いることができる。好ましくは、塩酸、硫酸のうちの1以上である。上記有機酸として例えば、酢酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、ソルビン酸などが挙げられる。デラミネーション処理物と混合させる酸溶液の濃度は、処理対象となるデラミネーション処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。
【0061】
上記デラミネーション処理物と酸溶液を混合させて撹拌する。撹拌方法として、ハンドシェイク、オートマチックシェイカー、シェアミキサー、ポットミルなどを用いた撹拌が挙げられる。撹拌速度、撹拌時間等の撹拌の程度は、処理対象となるデラミネーション処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。
【0062】
上記酸溶液を混合して撹拌時、加熱の有無は問わない。酸溶液を混合し、加熱を行わずに撹拌してもよいし、液温が80℃以下となる範囲で加熱しながら撹拌してもよい。
【0063】
上記撹拌後は、例えば遠心分離を行い、上澄み液を除去し、スラリーとして酸処理物を得ることができる。上記酸溶液と混合させて撹拌する操作は1回以上行えばよい。MXene粒子中のLi含有率をより少なくする観点からは、上記酸溶液と混合させて撹拌する操作を2回以上、例えば10回以下の範囲内で行うことが好ましい。上記酸溶液と混合させて撹拌する操作を複数回行う態様として、(i)(デラミネーション処理物または下記(iii)で得られた残りの沈殿物と)酸溶液とを混合して撹拌する、(ii)撹拌物を遠心分離する、(iii)遠心分離後に上澄み液を廃棄する、の工程(i)~(iii)を2回以上、例えば10回以下の範囲内で行うことが挙げられる。
【0064】
上記酸処理して得られた酸処理物のpHは、2.5以下であることが好ましい。該pHは、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.2以下である。なお、pHの下限は特に限定されないが、おおよそ1.0程度となる。酸処理物のpHがこのように十分低くなると、MXene粒子の分散性が低下し、その後の工程でMXene粒子が取り扱い難くなるが、本実施形態によれば、非特許文献1と異なり、次工程で水洗浄を行うことにより該問題が解消される。
【0065】
本発明では、上記非特許文献1と異なり、上記の通り酸処理を行って積極的にLiを除去しているため、MXene粒子中のLi含有率をより少なくすることができる。
【0066】
・工程(f)
酸処理して得られた酸処理物を、水で洗浄して導電性2次元粒子を得る。酸処理物と混合させる水の量や洗浄方法は特に限定されない。例えば水を加えて撹拌、遠心分離等を行うことが挙げられる。撹拌方法として、ハンドシェイク、オートマチックシェイカー、シェアミキサー、ポットミルなどを用いた撹拌が挙げられる。撹拌速度、撹拌時間等の撹拌の程度は、処理対象となる酸処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。前記水での洗浄は1回以上行えばよい。好ましくは水での洗浄を複数回行うことである。例えば具体的に、(i)(酸処理物または下記(iii)で得られた残りの沈殿物に)水を加えて撹拌、(ii)撹拌物を遠心分離する、(iii)遠心分離後に上澄み液を廃棄する、の工程(i)~(iii)を2回以上、例えば10回以下の範囲内で行うことが挙げられる。
【0067】
酸処理物を水で洗浄後は、pHが4以上で、例えば7以下であることが好ましい。本実施形態によれば、水洗浄により、例えばpHが4以上に高まることで、上述したMXene粒子の分散性を確保でき、例えば導電性膜を容易に形成することができる。
【0068】
本実施形態の製造方法では、エッチング後にデラミネーションとして超音波処理を行わない。前述の通り、超音波処理を行わないため粒子破壊が生じ難く、2次元面の大きい単層・少層MXeneを含む導電性2次元粒子を得ることができる。2次元面の大きい単層・少層MXeneを含む導電性2次元粒子は、バインダーを使用せずにフィルムを形成でき、得られたフィルムは高い導電率を示す。
【0069】
(実施形態3:導電性膜(導電性フィルム))
本実施形態の導電性膜として、本実施形態の導電性2次元粒子を含有する導電性膜が挙げられる。
図3を参照して、本実施形態の導電性膜30aは、
図3(a)に示す通り所定の層状材料の導電性2次元粒子10を含む。
図3(b)は、導電性膜30aに含まれるMXene粒子の概略模式斜視図である。
図4を参照して、本実施形態の別の導電性膜30bを説明する。
図4では導電性2次元粒子10のみが積層して得られた導電性フィルム30bを例示している。本実施形態の導電性膜はこれらに限定されない。
【0070】
導電性フィルムは、ポリマー(樹脂)をさらに含む導電性複合材料フィルム(導電性複合材料膜)であってもよい。前記ポリマーは、例えば、フィルム形成時に添加されるバインダー等の添加物として含まれていてもよいし、強度またはフレキシブル性を具備させるために添加されたものであってもよい。前記導電性複合材料フィルムの場合、前記ポリマーは、導電性複合材料フィルム(乾燥時)に占める割合で、0体積%超であって、好ましくは30体積%以下とすることができる。前記ポリマーの割合は、更には10体積%以下、より更には5体積%以下としてもよい。言い換えると、導電性複合材料フィルム(乾燥時)に占める導電性2次元粒子(層状材料の粒子)の割合は、70体積%以上とすることが好ましく、更には90体積%以上、より更には95体積%以上としてもよい。導電性膜は、前記導電性2次元粒子の割合が異なる2以上の導電性複合材料フィルムの積層膜であってもよい。
【0071】
前記ポリマーとして、例えば、親水性ポリマー(疎水性ポリマーに親水性助剤が配合されて親水性を呈するものと、疎水性ポリマー等の表面を親水化処理したものを含む)が挙げられ、親水性ポリマーとして、ポリスルホン、セルロースアセテート、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸系水溶性ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアニリンスルホン酸、およびナイロンからなる群より選択される1以上をより好ましくは含むことが挙げられる。
【0072】
前記親水性ポリマーとして、極性基を有する親水性ポリマーであって、前記極性基が、前記層の修飾または終端Tと水素結合を形成する基であるものがより好ましい。前記ポリマーとして例えば、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸系水溶性ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアニリンスルホン酸、およびナイロンよりなる群から選択される1種類以上のポリマーが好ましく用いられる。
【0073】
これらの中でも、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、およびアルギン酸ナトリウムよりなる群から選択される1種類以上のポリマーがより好ましい。前記ポリマーとして、水素結合ドナー性と水素結合アクセプター性の両方の性質を持つウレタン結合を有するポリマーが好ましく、その観点から、前記水溶性ポリウレタンが特に好ましい。
【0074】
前記導電性膜の膜厚は、0.5μm以上、20μm以下であることが好ましい。前記導電性膜の膜厚を厚くすることによって、粒界の接触抵抗が小さくなり導電率が高くなりやすいため、0.5μm以上とすることが好ましい。前記膜厚は、より好ましくは1.0μm以上である。導電性の観点からは膜厚は厚いほど好ましいが、フレキシブル性等が求められる場合、前記膜厚は好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。前記導電性膜の膜厚は、例えばマイクロメーターでの測定、走査型電子顕微鏡(SEM)、マイクロスコープ、またはレーザー顕微鏡などの方法による断面観察により測定することができる。
【0075】
本実施形態の導電性膜は、例えば、前記導電性2次元粒子で形成された膜厚が5μmのシート状であるときに、好ましくは2000S/cm以上の導電率を維持する。前記導電率は、より好ましくは2500S/cm以上、更に好ましくは3000S/cm以上の導電率を維持できる。導電性膜の導電率の上限は特に存在しないが、例えば10000S/cm以下であり得る。導電率は次のようにして求めることができる。すなわち、表面抵抗率は4探針法により測定し、厚み[cm]と表面抵抗率[Ω/□]をかけた値が、体積抵抗率[Ω.cm]となり、その逆数として、導電率[S/cm]を求めることができる。
【0076】
(導電性膜(導電性フィルム)の製造方法)
上記の通り生成されたMXene粒子(導電性2次元粒子)を用いて、本実施形態の導電性膜を製造する方法は特に限定されない。例えば次に例示する通り、導電性膜を形成することができる。
【0077】
まず前述の通り調製したMXene粒子を媒体液に存在させた、MXene分散体を用意する。上記媒体液として、水系媒体液、有機系媒体液が挙げられる。上記MXene分散体の媒体液は、代表的には水であり、場合により、水に加えて他の液状物質を比較的少量(全体基準で例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下)で含んでいてもよい。
【0078】
乾燥させる前に、前記MXene分散体を用い、導電性膜の前駆体(「前駆体膜」とも言う)を形成してもよい。前駆体膜の形成方法は特に限定されず、例えば吸引ろ過、塗工、スプレーなどを利用できる。
【0079】
より詳細には、MXene分散体として、例えば導電性2次元粒子を含む上澄み液を、適宜調整(例えば水系媒体液で希釈)して、ヌッチェなどに設置したフィルター(導電性膜と共に所定の部材を構成するものであっても、最終的に導電性膜から分離されてもよい)を通じて吸引ろ過し、水系媒体液を少なくとも部分的に除去することによって、該フィルター上に前駆体膜を形成することができる。フィルターは、特に限定されないが、メンブレンフィルターなどを使用し得る。上記吸引ろ過することで、前記バインダー等を使用せずに導電性フィルムを作製することができる。本実施形態の導電性2次元粒子を用いれば、この様にバインダー等を使用せずに導電性フィルムを作製することができる。
【0080】
または、MXene分散体をそのままで、または適宜調整(例えば水系媒体液で希釈、またはバインダーを添加)して、基材に塗布してもよい。塗布方法として、例えば、1流体ノズル、2流体ノズル、エアブラシ等のノズルを用いて、スプレー塗布を行う方法、テーブルコーター、コンマコーター、バーコーターを用いたスリットコート、スクリーン印刷、メタルマスク印刷等の方法、スピンコート、ディップコート、滴下等が挙げられる。前記基材として、例えば生体信号センシング電極に適した金属材料、樹脂等で形成された基板を適宜採用することができる。任意の適切な基材(導電性膜と共に所定の部材を構成するものであっても、最終的に導電性膜から分離されてもよい)上に塗工することにより、該基材上に前駆体膜を形成することができる。
【0081】
次に、上記で形成した前駆体膜を乾燥させて、例えば、前記
図4に模式的に示す通り導電性膜30を得ることができる。本発明において「乾燥」は、前駆体中に存在し得る水系媒体液を除去することを意味する。
【0082】
乾燥は、自然乾燥(代表的には常温常圧下にて、空気雰囲気中に配置する)や空気乾燥(空気を吹き付ける)などのマイルドな条件で行っても、温風乾燥(加熱した空気を吹き付ける)、加熱乾燥、および/または真空乾燥などの比較的アクティブな条件で行ってもよい。前記乾燥は、例えば、常圧オーブンあるいは真空オーブンを用いて400度以下の温度で行ってもよい。
【0083】
前駆体膜の形成および乾燥は、所望の導電性膜厚さが得られるまで適宜繰り返してもよい。例えば、スプレーと乾燥との組み合わせを複数回繰り返して実施してもよい。
【0084】
本実施形態の導電性複合材料がシート状の形態を有する場合、例えば次に例示する通り、前記導電性2次元粒子とポリマーを混合し、塗膜を形成することができる。
【0085】
まず上記導電性2次元粒子(MXene粒子)を媒体液(水系媒体液、または有機系媒体液)中に存在させたMXene分散体、またはMXene粉末と、ポリマーとを混合すればよい。上記MXene分散体の媒体液は、代表的には水であり、場合により、水に加えて他の液状物質を比較的少量(全体基準で例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下)で含んでいてもよい。
【0086】
上記導電性2次元粒子(MXene粒子)とポリマーの撹拌は、ホモジナイザー、プロペラ撹拌機、薄膜旋回型撹拌機、プラネタリーミキサー、機械式振とう機、ボルテックスミキサーなどの分散装置を用いて行うことができる。
【0087】
上記MXene粒子とポリマーの混合物であるスラリーを、基材(例えば基板)に塗布すればよいが、塗布方法は限定されない。例えば、1流体ノズル、2流体ノズル、エアブラシ等のノズルを用いて、スプレー塗布を行う方法、テーブルコーター、コンマコーター、バーコーターを用いたスリットコート、スクリーン印刷、メタルマスク印刷等の方法、スピンコート、ディップコート、滴下による塗布方法が挙げられる。上記基材は、前述の通り、例えば生体信号センシング電極に適した金属材料、樹脂等で形成された基板を適宜採用することができる。
【0088】
上記塗布および乾燥は、所望の厚みの膜が得られるまで、必要に応じて複数回繰り返し行ってもよい。乾燥および硬化は、例えば、常圧オーブンあるいは真空オーブンを用いて400度以下の温度で行ってもよい。
【0089】
(実施形態4:導電性ペースト)
本実施形態の導電性2次元粒子を用いたその他の用途として、前記導電性2次元粒子を含有する導電性ペーストが挙げられる。該導電性ペーストとして、例えば、導電性2次元粒子(所定の層状材料の粒子)と、媒体との混合物が挙げられる。前記媒体として、水系媒体液、有機系媒体液、ポリマー、金属粒子、セラミックス粒子等が挙げられ、これらのうちの1以上を含むものが挙げられる。導電性ペーストに占める導電性2次元粒子(層状材料の粒子)の質量割合は、例えば50%以上であることが挙げられる。
【0090】
上記導電性ペーストを用い、例えば、基材等に塗布し、乾燥させて導電性膜を形成すること等が用途の一例として挙げられる。
【0091】
(実施形態5:導電性複合材料)
本実施形態の導電性2次元粒子を用いたその他の用途として、前記導電性2次元粒子とポリマーを含有する導電性複合材料が挙げられる。該導電性複合材料は、上述した導電性複合材料フィルム(導電性複合材料膜)の形状に限定されない。該導電性複合材料の形状は、前記フィルム形状以外に、厚みを有するもの、直方体、球体、多角形体等であってもよい。
【0092】
上記ポリマーとして、前記導電性複合材料フィルム(導電性複合材料膜)に使用のポリマーと同様のポリマーを用いることができる。例えば、成形のためのバインダー等の添加物として含まれていてもよいし、強度またはフレキシブル性を具備させるために添加されたものであってもよい。前記ポリマーは、導電性複合材料(乾燥時)に占める割合で、0体積%超であって、好ましくは30体積%以下とすることができる。前記ポリマーの割合は、更には10体積%以下、より更には5体積%以下としてもよい。言い換えると、導電性複合材料(乾燥時)に占める層状材料の粒子の割合は、70体積%以上とすることが好ましく、更には90体積%以上、より更には95体積%以上としてもよい。
【0093】
前記ポリマーとして、例えば、親水性ポリマー(疎水性ポリマーに親水性助剤が配合されて親水性を呈するものと、疎水性ポリマー等の表面を親水化処理したものを含む)が挙げられ、親水性ポリマーとして、ポリスルホン、セルロースアセテート、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸系水溶性ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアニリンスルホン酸、およびナイロンからなる群より選択される1以上をより好ましくは含むことが挙げられる。
【0094】
前記親水性ポリマーとして、極性基を有する親水性ポリマーであって、前記極性基が、前記層の修飾または終端Tと水素結合を形成する基であるものがより好ましい。該ポリマーとして例えば、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸系水溶性ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアニリンスルホン酸、およびナイロンよりなる群から選択される1種類以上のポリマーが好ましく用いられる。
【0095】
これらの中でも、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、およびアルギン酸ナトリウムよりなる群から選択される1種類以上のポリマーがより好ましい。前記ポリマーとして、水素結合ドナー性と水素結合アクセプター性の両方の性質を持つウレタン結合を有するポリマーが好ましく、その観点から、前記水溶性ポリウレタンが特に好ましい。
【0096】
以上、本発明の実施形態における導電性2次元粒子、該導電性2次元粒子の製造方法、導電性膜、導電性ペーストおよび導電性複合材料について詳述したが、種々の改変が可能である。なお、本発明の導電性2次元粒子は、上述の実施形態における製造方法とは異なる方法によって製造されてもよく、また、本発明の導電性2次元粒子の製造方法は、上述の実施形態における導電性2次元粒子を提供するもののみに限定されないことに留意されたい。
【実施例】
【0097】
〔単層MXeneの作製〕
[実施例1~4]
実施例1~4では、以下に詳述する、(1)前駆体(MAX)の準備、(2)前駆体のエッチング、(3)エッチング後の洗浄、(4)Liのインターカレーション、(5)デラミネーション、(6)酸処理、および(7)水洗浄を順に実施して、単層・少層MXene含有試料を作製した。
【0098】
(1)前駆体(MAX)の準備
TiC粉末、Ti粉末およびAl粉末(いずれも株式会社高純度化学研究所製)を2:1:1のモル比で、ジルコニアボールを入れたボールミルに投入して24時間混合した。得られた混合粉末をAr雰囲気下にて1350℃で2時間焼成した。これにより得られた焼成体(ブロック状MAX)をエンドミルで最大寸法40μm以下まで粉砕した。これにより、前駆体(粉末状MAX)としてTi3AlC2粒子を得た。
【0099】
(2)前駆体のエッチング
上記方法で調製したTi3AlC2粒子(粉末)を用い、下記エッチング条件でエッチングを行って、Ti3AlC2粉末に由来する固体成分を含む固液混合物(スラリー)を得た。
(エッチング条件)
・前駆体:Ti3AlC2(目開き45μmふるい通し)
・エッチング液組成:49%HF 6mL
H2O 18mL
HCl(12M) 36mL
・前駆体投入量:3.0g
・エッチング容器:100mLアイボーイ
・エッチング温度:35℃
・エッチング時間:24h
・スターラー回転数:400rpm
【0100】
(3)エッチング後の洗浄
上記スラリーを2分割して、50mL遠沈管2本にそれぞれ挿入し、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄した。各遠沈管中の残りの沈殿物に純水40mLを追加し、再度3500Gで遠心分離を行って上澄み液を分離除去する操作を11回繰り返した。最終遠心分離後に、上澄み液を廃棄し、Ti3C2Ts-水分媒体クレイを得た。
【0101】
(4)Liのインターカレーション
上記方法で調製したTi3C2Ts-水分媒体クレイに対し、下記条件の通り、Li含有化合物としてLiClを用い、20℃以上25℃以下で12時間撹拌して、Liのインターカレーションを行った。
(Liのインターカレーションの条件)
・Ti3C2Ts-水分媒体クレイ(洗浄後MXene):固形分0.75g
・LiCl:0.75g
・インターカレーション容器:100mLアイボーイ
・温度:20℃以上25℃以下(室温)
・時間:12h
・スターラー回転数:800rpm
【0102】
(5)デラミネーション
Liのインターカレーションを行って得られたスラリーを、50mL遠沈管に投入し、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄した。次いで、(i)残りの沈殿物に純水40mLを追加してからシェーカーで15分間撹拌後に、(ii)3500Gで遠心分離し、(iii)上澄み液を単層・少層MXene含有液として回収した。この(i)~(iii)の操作を、合計4回繰り返して、単層・少層MXene含有上澄み液を得た。さらに、この上澄み液を、遠心分離機を用いて4300G、2時間の条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄し、単層・少層MXene含有クレイを得た。
【0103】
(6)酸処理
上記の単層・少層MXene含有クレイに、(i)1.8Mの塩酸を35mL追加してからシェーカーで5分間撹拌後に、(ii)3500Gで遠心分離を行い、(iii)上澄み液を廃棄した。この(i)~(iii)の操作を合計5回繰り返した。
【0104】
(7)水洗浄
上記酸処理後の単層・少層MXene含有クレイに、(i)水を35mL追加してからシェーカーで5分間撹拌後に、(ii)3500Gで遠心分離を行い、(iii)上澄み液を廃棄した。この(i)~(iii)の操作を合計5回繰り返して、単層・少層MXene含有試料として単層・少層MXene含有クレイを得た。上記上澄み液は最終的にpHが4以上になっていることを確認した。
【0105】
[比較例1,2]
比較例1,2では、(1)前駆体(MAX)の準備を実施例1~4と同様に行った後、非特許文献1に記載の方法を参考に、下記(2)~(5)の工程を順に実施して単層・少層MXene含有試料を得た。
(1)前駆体(MAX)の準備:実施例1~4と同じ
(2)前駆体のエッチング
上記方法で調製したTi3AlC2粒子(粉末)を用い、下記エッチング条件でエッチングを行って、Ti3AlC2粉末に由来する固体成分を含む固液混合物(スラリー)を得た。
・前駆体:Ti3AlC2(目開き45μmふるい通し)
・エッチング液組成:LiF 2.4g
HCl(9M) 30mL
・前駆体投入量:1.5g
・エッチング容器:100mLアイボーイ
・エッチング温度:25℃
・エッチング時間:36h
・スターラー回転数:400rpm
【0106】
(3)エッチング後の洗浄
上記スラリーを50mL遠沈管に挿入し、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄した。遠沈管中の残りの沈殿物に(i)純水40mLを追加し、(ii)再度3500Gで遠心分離を行って(iii)上澄み液を分離除去した。この(i)~(iii)の操作を合計10回繰り返し、10回目の上澄み液のpHが5超であることを確認し、上澄み液を廃棄し、Ti3C2Ts-水分媒体クレイを得た。
【0107】
(4)デラミネーション
Ti3C2Ts-水分媒体クレイに200mLの純水を添加し、超音波バス(超音波洗浄器(ASUシリーズ)、品番1-2160-03)にて、10℃以下で15分間の超音波処理を行った。その後、遠心分離機を用いて2000Gで20分間の条件で遠心分離後、上澄み液を回収した。
【0108】
(5)pH調整
比較例1では、上記上澄み液59.0mLに対して、6.0M塩酸を1mL、比較例2では、上記上澄み液59.2mLに対して、6.0M塩酸を0.8mL滴下した。その後、上記(4)デラミネーションと同様に超音波バスにて、10℃以下で10分間の超音波処理を行って、単層・少層MXene含有試料として単層・少層MXene含有クレイを得た。
【0109】
[比較例3]
比較例3では、(1)前駆体(MAX)の準備を上記実施例1~4と同様に行った後、非特許文献2に記載の方法を参考に、下記(2)~(6)の工程を順に実施して単層・少層MXene含有試料を得た。
【0110】
(1)前駆体(MAX)の準備:実施例1~4と同じ
(2)前駆体のエッチング
上記方法で調製したTi3AlC2粒子(粉末)を用い、下記エッチング条件でエッチングを行って、Ti3AlC2粉末に由来する固体成分を含む固液混合物(スラリー)を得た。
(エッチング条件)
・前駆体:Ti3AlC2(目開き45μmふるい通し)
・エッチング液組成:49%HF 6mL
H2O 54mL
・前駆体投入量:3.0g
・エッチング容器:100mLアイボーイ
・エッチング温度:20℃以上25℃以下(室温)
・エッチング時間:24h
・スターラー回転数:400rpm
【0111】
(3)エッチング後の洗浄
上記スラリーを2分割して、50mL遠沈管2本にそれぞれ挿入し、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄した。各遠沈管中の残りの残差物に(i)純水40mLを追加し、(ii)再度3500Gで遠心分離を行って(iii)上澄み液を分離除去した。この(i)~(iii)の操作を合計11回繰り返した。最終遠心分離後に、上澄み液を廃棄し、残りの沈殿物としてTi3C2Ts-水分媒体クレイを得た。
【0112】
(4)TMAOHのインターカレーション
上記方法で調製したTi3C2Ts-水分媒体クレイに対し、下記条件の通り、インターカレーターとしてTMAOHを用い、20℃以上25℃以下で12時間撹拌して、TMAOHのインターカレーションを行った。
(TMAOHのインターカレーションの条件)
・Ti3C2Ts-水分媒体クレイ(洗浄後MXene):固形分1.0g
・TMAOH・5H2O:1.98g
・純水:100mL
・インターカレーション容器:250mLアイボーイ
・温度:20℃以上25℃以下(室温)
・時間:12h
・スターラー回転数:800rpm
【0113】
(5)デラミネーション
TMAOHのインターカレーションを行って得られたスラリーを2分割して、50mL遠沈管2本にそれぞれ挿入し、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行って上澄み液を回収した。各遠沈管中の残りの沈殿物に(i)純水40mLを追加し、(ii)再度3500Gで遠心分離を行って(iii)上澄み液を回収した。この(i)~(iii)の操作を合計2回繰り返して、単層・少層MXene含有上澄み液を得た。
【0114】
(6)単層・少層MXene含有クレイの回収
上記単層・少層MXene含有上澄み液を、遠心分離機を用いて3500Gで1時間遠心分離を行い、単層・少層MXeneを沈降させて、単層・少層MXene含有試料として単層・少層MXene含有クレイを得た。
【0115】
[比較例4]
比較例4では、(1)前駆体(MAX)の準備を上記実施例1~4と同様に行った後、下記の通り(2)前駆体のエッチングとLiのインターカレーション、(3)洗浄、および(4)デラミネーションを行い、(5)酸処理と(6)水洗浄は行わずに、単層・少層MXene含有試料を作製した。
【0116】
(1)前駆体(MAX)の準備:実施例1~4と同じ
(2)前駆体のエッチングとLiのインターカレーション
・前駆体:Ti3AlC2(目開き45μmふるい通し)
・エッチング液組成:LiF 3g
HCl(9M) 30mL
・前駆体投入量:3g
・エッチング容器:100mLアイボーイ
・エッチング温度:35℃
・エッチング時間:24h
・スターラー回転数:400rpm
【0117】
(3)洗浄
上記スラリーを50mL遠沈管2本に2分割して挿入し、遠心分離機を用いて3500Gの条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄した。各遠沈管中の残りの沈殿物に(i)純水40mLを追加し、(ii)再度3500Gで遠心分離を行って(iii)上澄み液を分離除去した。この(i)~(iii)の操作を合計10回繰り返し、10回目の上澄み液のpHが5超であることを確認し、上澄み液を廃棄し、Ti3C2Ts-水分媒体クレイを得た。
(4)デラミネーション
上記Ti3C2Ts-水分媒体クレイに(i)純水40mLを追加してからシェーカーで15分間撹拌後に、(ii)3500Gで遠心分離し、(iii)上澄み液を単層MXene含有液として回収した。この(i)~(iii)の操作を、合計4回繰り返して、単層MXene含有上澄み液を得た。さらに、この上澄み液を、遠心分離機を用いて4300G、2時間の条件で遠心分離を行った後、上澄み液を廃棄し、単層・少層MXene含有試料として単層・少層MXene含有クレイを得た。
【0118】
〔評価〕
上記実施例1~4および比較例1~4で得られた単層・少層MXene含有試料を用い、MXene粒子中のLi含有率、MXene粒子の2次元面の長径と厚みの測定を行った。また、各単層・少層MXene含有試料を用いてMXene膜を形成し、抵抗変化の評価のためのR0/Rと初期導電率を求めた。更にはMXene膜を用いて、MXene層間距離の測定を行った。各測定方法の詳細について下記に示す。
【0119】
(MXene粒子中のLi含有率の測定)
MXeneをアルカリ溶融法により溶液化し、誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いたICP-AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のiCAP7400を使用)でLi含有率を測定した。その結果を表3に示す。
【0120】
(MXene粒子の2次元面の長径と厚みの測定)
実施例1で得られたMXeneの2次元面の長径(フレークサイズ)をSEMで測定した。詳細には、アルミナポーラス基板にMXeneスラリーを塗布して乾燥させ、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影して測定を行った。詳細には、倍率2,000倍で、1視野サイズが45μm×45μmの1つまたは複数のSEM画像の視野(おおよそ1視野~3視野)において、目視で確認できる80粒子以上のMXene粒子を対象とした。基板にポーラス基板を用いた場合、顕微鏡写真における微細な黒点は基板由来である場合がある。バックグラウンドのポーラスの部分を画像処理で消して、その後に、SEM画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用いて画像解析を行った。画像解析では、各MXene粒子を楕円形状に近似したときの長径を求め、その個数平均を、2次元面の長径の平均値(平均粒径)とした。実施例2~4、比較例3および比較例4についても、実施例1と同様にして2次元面の長径の平均値(平均粒径)を求めた。表2に上記測定結果を示す。また
図5に、実施例1のSEM写真を示す。
図5において、黒色の粒子がMXene粒子である。
【0121】
また、一部の実施例のMXene粒子の厚みを、Burker社製Dimensin FastScanの原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した。詳細には、シリコン基板にMXeneスラリーを塗布して乾燥させ、原子間力顕微鏡(AFM)写真を撮影し、その画像から厚みを求めた。その結果を表2に示す。
【0122】
表2から実施例1~4のMXene粒子はいずれも、平均粒径が比較例と比較して大きいことがわかる。
【0123】
なお比較例1,2の平均粒径と平均厚みは測定しなかったが、後記の通りMXeneフィルム(導電性膜)を形成して測定した初期導電率が高いことから、これらの平均粒径と平均厚みは、実施例1等と同レベルであると思われる。
【0124】
【0125】
〔MXeneフィルムの作製〕
各例の単層・少層MXene含有試料を吸引ろ過した。ろ過後は80℃で24時間の真空乾燥を行ってMXeneフィルムを作製した。吸引ろ過のフィルターには、メンブレンフィルター(メルク株式会社製、デュラポア、孔径0.45μm)を用いた。上記上澄み液中には、MXene粒子の固形分で0.05g、純水40mL含まれていた。得られたMXeneフィルムの抵抗率を以下の通り測定し、R0/Rと初期導電率を求めた。
【0126】
(MXeneフィルムのR0/Rおよび初期導電率の測定)
得られたMXeneフィルムの初期導電率を求めた。1サンプルにつき3箇所で、まず表面抵抗率を測定し、これをR0(Ω)とした。表面抵抗率の測定には、簡易型低抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリティック製、ロレスタAX MCP-T370)を用いてフィルムの表面抵抗を4端子法にて測定した。また1サンプルにつき3箇所で、厚み(μm)を測定した。厚み測定には、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、MDH-25MB)を用いた。上記表面抵抗率とフィルム厚みから体積抵抗率を求め、その値の逆数を取ることで初期導電率(S/cm)を算出した。上記3箇所の初期導電率の平均値を採用した。その結果を表3に示す。
【0127】
また、上記MXeneフィルムを、非特許文献1の
図5cに示された試験装置と同様に、密閉されたデシケーターの底部に少量の水を入れ、該水と直接接触させないよう上記MXeneフィルムを載置し、室温かつ湿度が飽和した湿潤環境下で14日間保持し、その後、上記と同様に、1サンプルにつき3箇所で、表面抵抗率を測定し、これをR(Ω)とした。そして、上記3箇所のR
0/Rを求めた。その結果を表3に示す。
【0128】
【0129】
(MXene層間距離の測定)
MXeneの層間距離は、導電性2次元粒子を用いても測定できるが、本実施例では、MXeneフィルムを用いて測定した。より詳細には、下記条件により、実施例1、比較例3および比較例4のMXeneフィルムのXRD測定を行って、MXeneフィルムの2次元X線回折像を得た。そしてXRDプロファイルにおいて(002)面のピーク位置を求めた。その結果を
図6に示す。
【0130】
(XRD測定条件)
・使用装置:株式会社リガク製 MiniFlex600
・条件
光源:Cu管球
特性X線:CuKα=1.54Å
測定範囲:3度-20度
ステップ:50step/度
サンプル:濾過フィルム
【0131】
図6において、実施例1は、Liを除去する処理を行い、MXene粒子中のLiを十分低減したため、(002)面のピークが高角側にあり、層間が狭まった。これに対して、比較例3はLiを含有していないがTMAOH(有機分散剤)が含まれているため、(002)面のピークが低角側にあり、層間が広くなった。また比較例4は、実施例1の様にLiを除去する処理を行っておらず、Liが多く残存したままであるため、ピークが実施例1よりも低角側にあり、層間が広がった。
【0132】
上記表3および
図6の結果より、MXene粒子中のLi含有率を0.0020質量%以下とすることによって、抵抗変化が大幅に小さくなり、抵抗変化率が10%以下であった。その結果、耐吸湿性が大幅に改善されたといえる。また本実施形態の導電性2次元粒子は、2次元面の長径の平均値が1.0μm以上であり、該導電性2次元粒子で形成された導電性膜は、導電率が2000S/cm以上であり、高導電率を示した。導電性2次元粒子の製造にあたり、インターカレーションとして用いるLi含有化合物の量が少ないと、MXeneの単層化が困難であるが、本実施形態の導電性2次元粒子の製造方法によれば、十分量のLi含有化合物でMXeneの単層化を行った後、該Li含有化合物を十分除去しているため、MXeneの単層化に支障をきたすことなく、抵抗変化の十分に小さいMXene粒子を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の導電性2次元粒子および導電性膜は、任意の適切な用途に利用され得、例えば電気デバイスにおける電極等として好ましく使用され得る。
【0134】
本出願は、日本国特許出願である特願2020-173896号を基礎出願とする優先権主張を伴う。特願2020-173896号は参照することにより本明細書に取り込まれる。
【符号の説明】
【0135】
1a、1b 層本体(MmXn層)
3a、5a、3b、5b 修飾または終端T
7a、7b MXene層
10、10a、10b MXene粒子(導電性2次元粒子、層状材料の粒子)
20 チタン原子
21 酸素原子
30a、30b 導電性膜(導電性フィルム)