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特許7513118パーソナライズ化されたeラーニング用のシステム、装置、方法、およびプログラム
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  • 特許-パーソナライズ化されたeラーニング用のシステム、装置、方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】パーソナライズ化されたeラーニング用のシステム、装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20240702BHJP
   G09B 7/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G06Q50/20
G09B7/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022571359
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2020022473
(87)【国際公開番号】W WO2021250725
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】カンデルワル カニシュク
(72)【発明者】
【氏名】玉野 浩嗣
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0333400(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0232318(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0294133(US,A1)
【文献】米国特許第08175511(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
G09B1/00-9/56
G09B17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナライズ化されたeラーニング用のシステムであって、
前記システムは、
下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)モデル部を含み、
前記下位レベルモデルは、
学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、
知識状態の推定値を使用して学習範囲内の質問に答える確率を予測し、
前記上位レベルモデルは、
新しいセッションが開始すると前記下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新する
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
予測確率に基づく可能性があるeラーニング計画に従って学習者に質問または概念を配信するコンテンツ配信モデル部を含む
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
質問を解決している間の学習者のやり取りに関する特徴であって、eラーニングアプリケーションから利用可能である特徴を入力された質問応答データに追加するデータ処理部を含む
請求項1または請求項2記載のシステム。
【請求項4】
新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける学習者の以前のセッションに関する前記eラーニングアプリケーションから利用可能な特徴を、上位レベルモデルによる更新ステップの前の最後のセッションの終了時の下位レベルモデルの知識状態の推定値に追加するセッション間データ処理部を含む
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
セッション間データ処理部は、新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける2つの連続するセッション間の学習者の活動に関して前記eラーニングアプリケーションから、またはユーザにより利用可能な特徴を、上位レベルモデルによる更新ステップの前の2つの連続するセッションの前のセッションの終了時の下位レベルモデルの知識状態の推定値に追加する
請求項4記載のシステム。
【請求項6】
セッション間データ処理部は、
学習者のセッション中にHKTモデル部から特徴を抽出し、
上位レベルモデルによる更新ステップの前の次のセッションの開始時に下位レベルモデルの知識状態の推定値に抽出された特徴を追加する
請求項4または請求項5記載のシステム。
【請求項7】
解決された質問の数、質問の頻度、またはセッション中の演習時間のうちの少なくとも1つを表す特徴が、入力データから下位レベルモデルへ抽出される
請求項6記載のシステム。
【請求項8】
パーソナライズ化されたeラーニング用の装置であって、
前記装置は、
下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)モデル部を含み、
前記下位レベルモデルは、
学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、
知識状態の推定値を使用して学習範囲内の質問に答える確率を予測し、
前記上位レベルモデルは、
新しいセッションが開始すると前記下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新する
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
コンピュータが、
下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)プロセスを実行し、
前記下位レベルモデルは、
学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、
知識状態の推定値を使用して学習範囲内の質問に答える確率を予測し、
前記上位レベルモデルは、
新しいセッションが開始すると前記下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
ンピュータに、
下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡プロセスを実行させ、
前記下位レベルモデルは、
学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、
知識状態の推定値を使用して学習範囲内の質問に答える確率を予測し、
前記上位レベルモデルは、
新しいセッションが開始すると前記下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新す
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナライズ化されたeラーニング用のシステム、装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年に渡って、eラーニングシステムは、学習目的で従来の教室をサポート/代替するインフラストラクチャとして登場した。eラーニングシステムは、学習者とシステムとのやり取りから得られたデータを使用して、学習者の知識/スキルの状態を特定し、追跡できる。その結果、eラーニングシステムは、学習者にパーソナライズ化された学習体験をもたらす可能性を提供する。
【0003】
知識追跡(KT)モデルは、eラーニングシステムの一種であるIntelligent Tutoring Systems(ITS)で一般的に使用され、学習者の知識/スキルの状態を経時的に追跡する。KTモデルは、将来の評価において学習者の成績を予測するために使用可能である。さらに、KTモデルは、学習者に次に提供する質問や学習内容を決定するために使用可能であり、学習体験をパーソナライズ化することができる。学習者の貴重な時間の学習成果に直接影響するため、知識追跡モデルで学生の学習状態を正確に表現することの維持は重要である。
【0004】
文献では、知識追跡に対する様々なアプローチが提案されている。vanilla Bayesian knowledge tracing(BKT)モデルは、各概念における学習者のスキルを個別にモデル化できる。推定されたスキルレベルは、概念をさらに演習/学習するか、新しい概念に切り替えるかを決定するために使用可能である。最近、深層学習ベースのモデルであるDeep knowledge tracing(DKT)が、複数の概念における学習者のスキルレベルを同時にモデル化するために提案された。BKTとDKTの両方のモデルは、eラーニングシステムと学習者とのやり取りのシーケンスを利用する。シーケンス内の各項目は、学習者が回答した質問に対する回答の正しさ(1が正解、0が不正解)とそれに関連する概念である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Chen, Yuying, et al., "Tracking knowledge proficiency of students with educational priors," Proceedings of the 2017 ACM on Conference on Information and Knowledge Management, 2017.
【文献】Zachary A. Pardos, et al., "Effective Skill Assessment Using Expectation Maximization in a Multi Network Temporal Bayesian Network," The Young Researchers Track at the 20th International Conference on Intelligent Tutoring Systems, 2008.
【文献】Haiqin Yang, and Lap Pong Cheung, "Implicit heterogeneous features embedding in deep knowledge tracing," Cognitive Computation 10.1 (2018): 3-14.
【文献】Lap Pong Cheung, and Haiqin Yang, "Heterogeneous features integration in deep knowledge tracing," International Conference on Neural Information Processing, Springer, Cham, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
学習者は、eラーニングシステムを数日、数か月、さらには数年間使用できる。学習者とのやり取りの時間は、通常eラーニングシステムで収集される。eラーニングシステムと学習者との間のやり取りは、セッションで発生する。セッションは、時間枠内で発生するeラーニングシステムで連続的に発生する一連のやり取りのグループとみなすことが可能である。その結果、学習者とシステムとの相互作用データは、それぞれがセッションに対応するグループに分割可能である。学習者が別々の2つの機会にそれぞれ1時間ずつシステムを利用したとする。この場合、学習者はシステム上で2つのセッションを受けたと言え、彼/彼女の相互作用データは、それぞれがセッションに対応する2つのグループに分割可能である。
【0007】
一般的なモデルとその提案された拡張機能は、相互作用データを1つの大きなセッションからの1つのシーケンスとみなす。これらのKTアプローチは、モデリングの観点から、学習者のデータ内のセッション構造を明示的に考慮していない。
【0008】
それに対応して、以前のKTアプローチは、単一のモデルを使用して学習者の知識状態のセッション内およびセッション間のダイナミクスを取得しようとするため、性能が低下する可能性がある。例として、eラーニングシステムを使用して新しい単語を学習する学習者は、オンライン(セッション中)とオフライン(システム外)で異なる学習行動を示す場合がある。学習者がオンラインの場合、モデルは、作業記憶の影響を受ける可能性がある彼/彼女の急速な学習/忘却行動を反映する必要がある。しかし、学習者がオフラインの場合、モデルは、長期記憶の影響を受ける可能性がある長期忘却を捉えることができるはずである。セッション内および2つのセッションに渡る学習者の変化する知識状態を別々にモデル化すると、KTモデルの性能が向上することが期待される。
【0009】
非特許文献1、2は、モデル化の観点からデータ内のセッション構造を利用した。これらのアプローチは、学習者の知識状態がセッションごとに変化することを前提としている。ただし、これらのモデルは、学習者の知識状態がセッション内で変化しないことを前提としている。その結果、これらのモデルは純粋なKTアプローチではなく、セッション内の学習者の学習体験をパーソナライズ化するために使用することができない。
【0010】
eラーニングシステムでは、通常学習者に関する追加データ、学習者とシステムとのやり取り、および学習者の環境も収集される。この追加データを利用してKTタスクの性能を向上させるために、BKTモデルおよびDKTモデルに対して様々な拡張機能が提案されている。非特許文献3、4は、項目レベルで追加機能を利用することを提案している。非特許文献3、4は、学習者に与えられた次の問題の正しさを予測するタスクで、一般的なモデルよりも性能が向上したことを報告している。
【0011】
eラーニングシステムで収集された追加データの一部は、やり取りの項目の特徴である場合もあれば、セッション全体の特徴である場合もあり得る。例えば、所要時間、ヒントの使用の有無等は項目レベルのデータであるが、セッションでスキップされた質問の数、デバイスの種類(モバイルまたはデスクトップ)、場所(自宅または教室)はセッションレベルのデータである。従来のKTアプローチは、2つの異なる特徴の種類を別々に考慮するためのフレームワークを提供できていない。
【0012】
さらに、概念の学習は、eラーニングシステムの2つの連続するセッションの間に発生する場合がある。オフライン学習(eラーニングシステムで提供されるビデオ、テキスト等のソースからの学習、または外部ソースからの学習)、生徒や教師との社会的なやり取り、自己学習等、生徒の学習に影響を与える多くの外的要因が存在する可能性がある。外的要因による学習に関する情報がeラーニングシステムで利用可能な場合、次のセッションが始まる前に学習者の知識状態を更新するためにその情報を利用する必要がある。
【0013】
本発明の目的の一つは、セッション内および2つのセッションに渡って変化する学習者の知識状態を個別にモデル化できるパーソナライズ化されたeラーニング用のシステム、装置、方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるシステムは、パーソナライズ化されたeラーニング用のシステムであって、システムは、下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)モデル部を含み、下位レベルモデルは、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に学習者の質問応答データから学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測し、上位レベルモデルは、新しいセッションが開始すると下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新することを特徴とする。
【0015】
本発明による装置は、パーソナライズ化されたeラーニング用の装置であって、装置は、下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)モデル部を含み、下位レベルモデルは、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に学習者の質問応答データから学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測し、上位レベルモデルは、新しいセッションが開始すると下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新することを特徴とする。
【0016】
本発明による方法は、パーソナライズ化されたeラーニング用の方法であって、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に学習者の質問応答データから学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測し、新しいセッションが開始すると知識状態の推定値を更新することを特徴とする。
【0017】
本発明によるプログラムは、パーソナライズ化されたeラーニング用のプログラムであって、コンピュータに、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に学習者の質問応答データから学習者の知識状態を推定および推定値を更新する処理、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測する処理、および新しいセッションが開始すると知識状態の推定値を更新する処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、セッション内および2つのセッションに渡って変化する学習者の知識状態を個別にモデル化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態の環境1000の例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態の環境1001の例を示すブロック図である。
図3図3は、学習者がセッション内でスキルを習得する(すなわち、スキルレベルが0から1になる)ために取り得る2つの学習軌跡の例を示す説明図である。
図4図4は、逐次モデリングにバニラRNNを使用したニューラルネットワークを使用して実装された階層型KTモデルの例を示す説明図である。
図5図5は、本発明の実施形態のユーザデバイス100およびサーバ300の動作の例を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態のユーザデバイス2000およびサーバ4000の動作の例を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施形態の上位レベルモデル364の動作の例を示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の実施形態の上位レベルモデル4520の動作の例を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態のコンテンツ配信モデル340の動作の例を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態のコンピュータの構成例を示す概略ブロック図である。
図11図11は、本発明のシステムの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態は、下位レベルモデルおよび上位レベルモデルで構成される2レベルの階層型KTモデルを対象とする。下位レベルモデルは、セッション内の学習者の知識状態を追跡する役割を担い、上位レベルモデルは、セッション間の知識状態のダイナミクスをモデル化する役割を担い、次のセッションの最初に知識状態を正確に表すためにセッションの最後に学習者の知識状態を更新する。
【0021】
下位レベルモデルは、学習者がeラーニングシステムでアクティブである間の学習者の知識状態を追跡するKTモデルである。下位レベルモデルは、セッション内の学習者の知識状態を推定し続ける。さらに、システム上の学習者とのやり取りでは、下位レベルモデルは、学習者が試みた質問、それに対する応答、およびシステムで利用可能ないくつかの追加の項目レベルの機能で構成される学習者の対応する相互作用データを入力として受け取る。下位レベルモデルは、このデータを使用して、学習者の知識状態の推定値を更新する。更新された知識状態は、学習者が次の質問に正しく答える確率を予測するために使用可能である。これらの確率は、学習者の学習計画をパーソナライズ化するために使用可能である。例えば、確率が最も低い質問が次に提示されると、習熟度へのより迅速な道筋が促進され得る。このようにして、下位レベルモデルは、学習者がシステムでアクティブになるまで、学生の知識状態を追跡する。
【0022】
上位レベルモデルは、下位レベルモデル(そのまままたは変換後)からのセッション終了時の知識状態を入力として受け取り、それを更新して、次のセッション開始時の学習者の知識状態を表す。上位レベルモデルは、下位レベルモデルおよび/またはセッションレベル特徴および/またはセッション間特徴からのいくつかの集約されたセッション情報を追加の入力として受け取ってもよい。それぞれの例は、セッション内のスキップの総数、セッションで使用されたデバイスの種類、2つのセッション間でそれぞれ消費された学習コンテンツであり得る。他の学習可能な要素と共に、上位レベルモデルおよび下位レベルモデルで構成される階層型モデルは、学習目標を達成するためにeラーニングシステムを使用した学習者のデータを使用して訓練される。
【0023】
知識追跡は、学習者の知識状態を経時的にモデル化するプロセスとして定義される。一般的に言えば、KTモデルは、スキルレベルの証拠として、eラーニングシステムを介して順次尋ねられる質問に対する学習者の応答データを利用し、それに応じて学習者の知識状態の推定値を更新する。この推定値は、その後の評価で学習者の成績を予測するために使用可能である。例えば、モデルは、将来与えられた質問に正しく答える確率を予測できる。
【0024】
Bayesian Knowledge Tracing(BKT)は、KTタスク用に提案された最初のモデルであった。BKTは、各質問に対応するスキル/知識要素/概念が関連付けられていると想定している。BKTは、単一のスキルモデルであり、モデルは各スキルに個別に適用される必要がある。BKTは、学習者のスキル状態が二値(すなわち、マスターされているか否か)のみであると想定している。BKTモデルは、スキル状態が二値でしかないという仮定が現実に上手く当てはまらないため、実際の設定では上手く機能しない。さらに、BKTは、スキルの相関関係や、あるスキルの学習が他のスキルにどのように影響するかを想定していない。
【0025】
最近、多くの深層学習(DL)ベースのアプローチがKTタスクに対して提案されており、実際のデータセットでの性能が大幅に向上している。提案されたDLアプローチの殆どは、KTタスクの順次応答データで訓練される、Long-Short Term Model(LSTM)/Gated Recurrent Unit(GRU)/Recurrent Neural Network(RNN)等の順次モデルを利用する。モデル内の隠れベクトルは、システムとの新しいやり取りごとに更新される学習者の知識状態ベクトルとして解釈可能である。線形変換と非線形変換の組み合わせを隠れベクトルに適用して、モデル化された領域で問題を正しく解決する確率を予測できる。
【0026】
実際の設定では、学習者は、通常セッションごとに学習システムにアクセスする。セッションは、時間枠内で発生する相互作用のグループとして定義可能である。学習行動におけるこのようなセッション構造は、記録された応答データ内に階層パターンを誘発する。システムで5つのセッションを持つ学習者の場合、学習者のデータは、長さ5のセッションのシーケンスに編成可能である。シーケンス内の各要素は、それ自体が応答のシーケンスである。
【0027】
殆どの場合、eラーニングシステムは、ユーザとシステムとのやり取りのタイムスタンプを記録する。学習コンテンツにアクセスするために、学習者は、システムにログインするように求められることがある。その結果、データ内のセッション構造を理解することがかなり簡単になる。一連の応答を使用して知識状態を推定するため、一連のセッションに関する情報を利用すると、推定値を改善することに役立つ。従って、2レベルモデル、すなわち階層的に配置された2つの連続モデルを備えたシステムは、セッション内およびセッション間の学習ダイナミクスを個別に捉えることができるため、KTモデリングタスクに適している可能性がある。
【0028】
次の例は、セッションシーケンス情報を使用してセッション間のダイナミクスをモデル化することの重要性を強調している。学習システムがこのスキルに関連する質問を訓練することによって単一のスキルを学習するために構築され、セッション構造を無視し、やり取りの完全なシーケンスが単一のセッションからのものであるかのように仮定する従来のKTアプローチのいずれかを採用するとする。学習者が1回のセッションで複数の問題を解決し、採用されたKTモデルが、学習者がスキルを習得したと推定するシナリオAを考える。また、同じシステムを利用する同じ学習者が、1週間に渡る複数のセッションを実行した後、KTモデルに従ってスキルの習得を達成するシナリオBを考える。ここで、一定時間後にこのスキルで学習者の成績を予測するようにモデルに依頼すると、両方のシナリオで、学習者がシステムを使用したり、外部ソースから学習したりすることが許可されなくなった場合、KTモデルの予測は同じになるであろう。これは、学習者が両方のシナリオで同じであり、KTが学習者の同じ忘却行動を想定するためである。ただし、現実の世界では、実際の確率は等しくない場合がある。スペーシング効果は、学習イベントがすぐに連続して集中するよりも、時間的に間隔を空けて配置されると、長期記憶が強化されるという発見を指す。その結果、シナリオBのモデルによる予測は高くなるはずである。従って、従来のKTアプローチには、セッション間のダイナミクスのモデル化に関して欠点がある。
【0029】
従って、本発明の実施形態は、下位レベルモデルが一連のやり取りによる知識状態の変化を考慮に入れる一方で、上位レベルモデルが知識状態に関してセッションレベルの振る舞いの影響を考慮に入れる、2レベルの階層型KTモデルを対象とする。
【0030】
下位レベルモデルは、セッションの開始からセッションの終了まで、学習者の知識状態を追跡する。推定された知識状態を使用して、学習者が質問に正しく答える予測確率を出力できる。これらの確率は、学習者のeラーニング計画をパーソナライズ化するために使用可能である。例えば、事前に設定された閾値を適用して、いつ次の質問タイプに進むか、次の質問タイプは何にするか、学習計画から特定の質問をいつ削除するか等を決定できる。
【0031】
学習者が質問に答えると、このやり取りが下位レベルモデルにフィードバックされ、学習者の知識状態が更新される。更新プロセスでは、下位レベルモデルが学習者の最後のやり取りの表現を入力として受け入れ、学習者の現在の知識状態にアクセスし、学習者の更新された知識状態をさらに出力する。
【0032】
新しいセッションが始まると、上位レベルモデルは、学習者の現在の知識状態をより適切に表すために、最後のセッションで下位レベルモデルから取得した知識状態を更新する。新しいセッションは、システムへの単純なアクセス/ログインの後に、eラーニングアプリケーションでの学習者による活動(質問の解決等)が続く場合と、そうでない場合がある。
【0033】
従って、本明細書で説明する実装は、学習者が特定の質問に正しく答える可能性をモデル化する、深層学習ベースの知識追跡ツールを提供する。実装は、複数の学習者の応答データを使用してモデルを訓練し、2つのモデルの最適な重みとパラメータを取得する、機械学習ベースのモデルに基づいている。
【0034】
<階層型モデルによるeラーニングシステムの例>
図1は、本発明の実施形態の環境1000の例を示すブロック図である。ここで図1を参照すると、基本的な階層型KTモデルに基づくパーソナライズ化されたeラーニングに適した例示的な環境1000のブロック図が示されている。環境1000は、eラーニングアプリケーション110を有するユーザデバイス100を含む。一般的に、eラーニングアプリケーション110は、パーソナライズ化されたeラーニング環境をユーザに提供し、クイズまたは課題等の定期的な評価を容易にする。ユーザデバイス100は、定期的な評価を容易にすることができる任意の種類のコンピューティングデバイスであり得る。実施形態では、ユーザデバイス100は、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップコンピュータ、ワークステーション、モバイルコンピューティングデバイス、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等であり得る。
【0035】
環境1000は、階層型KTモデル360を含むサーバ300を含む。この実施形態では、サーバ300は、ネットワーク200を介してKTモデル360へのアクセスを提供する。サーバ300は、知識追跡のモデリングを容易にすることができる任意の種類のコンピューティングデバイスであり得る。実施形態では、サーバ300は、PC、ラップトップコンピュータ、ワークステーション、モバイルコンピューティングデバイス、PDA、携帯電話等であり得る。環境1000の構成要素は、1つまたは複数のローカルエリアネットワーク(LAN)および/またはワイドエリアネットワーク(WAN)を際限無く含むネットワーク200を介して互いに通信してもよい。このようなネットワーク環境は、オフィス、企業全体のコンピュータネットワーク、イントラネット、およびインターネットでは一般的である。
【0036】
図1に示す実施形態では、ユーザデバイス100は、eラーニングアプリケーション110を含み、その多くの機能のうちの1つは、ユーザに質問を示し、場合によっては応答を選択するためのいくつかの可能なオプションとともに示すことである。eラーニングアプリケーション110の別の重要な機能は、学習者の相互作用データをサーバ300に送信することである。
【0037】
同様に、この実施形態では、サーバ300は、KTモデル360、コンテンツバンク370、学習者データバンク310、入力データ処理部350、コンテンツ配信モデル340、知識状態バンクとして、階層型KTモデル360における下位レベルモデル362と上位レベルモデル364それぞれに関する下位レベル状態バンク320および上位レベル状態バンク330を含む。サーバ300の構成要素は、サーバ300の一部として(例えば、サーバ300にインストールまたは組み込まれて)示されているが、いくつかの実施形態では、これらの構成要素のいくつかまたは全てが、またはその一部が、サーバ300が存在する分散コンピューティング環境等で、ユーザデバイス100等の他の場所に配置可能である。
【0038】
図1に示す実施形態では、サーバ300は、コンテンツ配信モデル340を含む。このモデルは、通常学習者のeラーニング計画に基づいて学習者に提供する質問(または場合によっては学習教材)を決定する。この決定を容易にするために、コンテンツ配信モデル340は、下位レベル状態バンク320から学習者の知識状態を取り込み、下位レベルモデル362と通信する。一般的に、下位レベルモデルは、学習範囲内で正しく問題を解決する学習者の確率を予測できる。コンテンツ配信モデル340は、この情報を利用して、パーソナライズ化されたeラーニング計画に従ってコンテンツバンク370からコンテンツを配信できる。
【0039】
階層型KTモデル360は、知識追跡をモデル化する。一般的な問題として、時間Tまでの学習者のやり取りは、セッションの集合S = {S1, S2,・・・, SN}で表すことができる。ここで、Ss = {xs,1, xs,2, xs,3,・・・, xs,T}である。ここで、各Ssは、学習者のセッションsからの相互作用データの集合であり、各相互作用xs,t(s = 1,・・・, N、およびt = 1,・・・, T)は、特定の学習者の相互作用タプル{qs,t, rs,t}を表すことができる符号である。相互作用タプル{qs,t, rs,t}は、試行された特定の質問の識別子qs,tと、学習者の応答の正しさを符号化するバイナリ指示記号rs,tとを含む。また、Q = {qs,t}を、一連の異なる質問とする。
【0040】
一般的に、下位レベルモデルは、入力xs,tを取り、下位レベル状態バンク320で利用可能な知識状態hs,t-1の推定値を、知識状態hs,tの新しい推定値に更新し、下位レベル状態バンク320に格納し戻す。一般的に、下位レベルモデル362は、学習者が質問qs,t+1に正しく答える確率、すなわちProb(rs,t+1 = 1| qs,t+1, S)を予測する。一般的に、上位レベルモデル364は、学習者が行った最後のセッションの終了時の知識状態の推定値に対応する可能性がある下位レベル状態バンク320で利用可能な学習者の知識状態を、新しいセッションの開始時の状態に対応する可能性がある新しい知識状態に変換し、下位レベル状態バンク320に格納する。また、上位レベルモデル364は、更新ステップからの出力を上位レベル状態バンク330に格納する。
【0041】
いくつかの実施形態では、階層型KTモデル360は、教師あり学習、およびベイジアンモデル、ニューラルネットワーク等の機械学習モデルの階層を使用して、このタスクを実行する。
【0042】
図2は、本発明の実施形態の環境1001の例を示すブロック図である。環境1001は、eラーニングアプリケーションを有するユーザデバイス2000を含む。さらに、環境1001は、階層型KTモデル4500を含むサーバ4000を含む。この実施形態では、サーバ4000は、ネットワーク3000を介してKTモデル4500へのアクセスを提供する。
【0043】
さらに、サーバ4000は、KTモデル4500、コンテンツバンク4300、学習者データバンク4100、セッションバンク4200、コンテンツ配信モデル4400、知識状態バンクとして、階層型KTモデル4500における下位レベルモデル4510と上位レベルモデル4520それぞれに関する下位レベル状態バンク4600および上位レベル状態バンク4700を含む。
【0044】
さらに、下位レベルモデル4510は、セッション内データ処理部4512、更新部4514、および予測部4516を含み、上位レベルモデル4520は、セッション間データ処理部4522、更新部4524、およびセッション初期化部4526を含む。
【0045】
ここで図2を参照すると、モデル化の柔軟性を高め、環境1001で時々利用可能な追加情報を利用するために、図1と比較していくつかの追加部を含む例示的な環境1001のブロック図が示されている。
【0046】
eラーニングシステムでは、通常学習者に関する追加データ、学習者とシステムとのやり取り、および学習者の環境も収集される。その結果、相互作用タプルxs,tには、質問を試みるためにかかった時間、質問の種類、質問に含まれる概念等、環境で収集された項目レベルの追加情報os,tを含めることができる。セッション内データ処理部4512は、この追加情報を処理し、使用されている下位レベルモデル用の読み取り可能なフォーマットに変換できる。場合によっては、学習者の知識状態の推定を改善し、成績予測を改善することが示されている。
【0047】
eラーニングシステムで収集された追加データの一部は、相互作用の項目の特徴であり得るが、セッション全体の特徴でもあり得る。例えば、セッションでスキップされた質問の数、eラーニングアプリケーションへのアクセスに使用されるデバイスの種類(モバイルまたはデスクトップベース)、学習者の感情状態等は、セッション全体の学習に影響を与える。下位レベルモデル4510のセッション内データ処理部4512は、そのようなセッションレベル特徴(ls)を識別し、lsの変換されたモデル可読バージョンをセッションバンク4200に格納できる。
【0048】
さらに、セッション中に発生した入力と知識状態の値からセッションレベルの特徴を生成すると便利な場合がある。図3は、学習者がセッション内でスキルを習得する(すなわち、スキルレベルが0から1になる)ために取り得る2つの学習軌跡の例を示す説明図である。2つの軌跡は、eラーニング計画の違いが原因である可能性がある、異なる学習パターンによって特徴付けられる。学習者であるユーザ1はより多くの演習を試みたため、学習者に観察された長期的な忘却は2つのシナリオで異なる可能性がある。
【0049】
その結果、セッション内の演習と学習のダイナミクスを表すいくつかの特徴を生成すると便利な場合がある。例として、差分系列Ds = {ds,t+1 | ds,t+1 = hs,t+1 - hs,t ; t = 0,・・・, N-1}を考える。差分系列の平均(Ds)や分散(Ds)等の統計は、セッション中の学習者の学習状態の変化の割合とジッタを表すことに役立ち得る。さらに、下位レベルモデル4510のセッション内データ処理部4512に入力された相互作用は、一緒にプールされて、学習者の学習パターンを表すことができる。例えば、次のプーリングアプローチは、入力された相互作用の頻度とタイミングを捉える。
【数1】
なお、式(1)におけるインデックスjに渡る合計は、セッション内の個別の質問を表すために使用される。また、式(1)におけるtは、質問試行からの経過時間を表し、式(1)におけるbおよびdは、個別の質問のパラメータである。
【0050】
そのような入力されたセッションおよび知識状態データから抽出された特徴(es)は、それぞれセッション内データ処理部4512および更新部4514によってセッションバンク4200に格納される。
【0051】
さらに、いくつかのセッション間特徴(ps)は、2つのセッション間の時間、学習者が質問応答システムから離れている間に学習された概念等の環境で利用できる。学習者は、いくつかの外部学習に起因する知識状態における変化を経験してもよい。従って、学習者データバンク4100で利用可能なそのようなセッション間特徴は、上位レベルモデル4520が次のセッションの開始時に学習者の知識状態の良好な推定値を生成することに役立ち得る。
【0052】
セッション間データ処理部4522は、下位レベル状態バンク4600から入力された下位レベル知識状態、および/または学習者データバンク4100からセッション間特徴(ps)、および/またはセッションバンク4200からセッションレベル特徴(ls)、および/またはセッションバンク4200から抽出されたセッション特徴(es)を受け取ることができる。
【0053】
上位レベルモデル4520の更新部4524は、セッション間データ処理部4522から集約されたデータを取得し、上位レベルの隠れ状態HsをHs+1に更新し、上位レベル状態バンク4700に格納する。セッション初期化部4526は、線形変換と非線形変換の組み合わせを使用して、Hs+1から正確なhs+1,0を取得するために使用可能である。
【0054】
図4は、逐次モデリングにバニラRNNを使用したニューラルネットワークを使用して実装された階層型KTモデルの例を示す説明図である。図4に示す例示的な階層型KTモデルは、図2に示すKTモデル4500に対応できる。一般的に、階層型KTモデルは、初期化フェーズ、下位レベル更新フェーズ、予測フェーズ、および上位レベル更新フェーズの4つのフェーズで動作する。
【0055】
学習者がeラーニングシステムでセッションを開始すると、セッション初期化10でHsから取得されたhs,0を使用して、下位レベルのセッションRNNが以下のように初期化される。
【数2】
なお、式(2)におけるWiは線形変換であり、式(2)におけるBiはバイアスベクトルである。
【0056】
セッションがアクティブである間、システムは、通常下位レベル更新フェーズと予測フェーズを交互に繰り返す。
【0057】
下位レベル更新フェーズでは、下位レベルモデルは入力xs,t-1を受け入れ、下位更新20-20で下位レベルの隠れ状態hs,t-1をhs,tに以下のように更新する。
【数3】
なお、式(3)におけるWlh、Wlxは線形変換であり、式(3)におけるBlhはバイアスベクトルであり、式(3)におけるgllは非線形変換である。
【0058】
予測フェーズでは、下位レベルモデルが各質問(または概念)を解決する確率を予測する。下位レベルモデル4510の予測部4516(予測30-30も)は、下位レベル知識状態の推定値(hs,t)を入力として受け取り、確率Ys,t = {ys,t,1,・・・,ys,t,M}を以下のように予測する。ここで、各ys,t,mは0から1の間の実数値であり、m(=|Q|)は範囲内の個別の質問/概念の総数である。
【数4】
なお、式(4)におけるWlyは線形変換であり、式(4)におけるBlyはバイアスベクトルである。
【0059】
上位レベル更新フェーズは、上位レベルモデル4520で発生する。セッション間データ処理部4522は、下位レベル状態hs,tを他の特徴(ps、es、ls等)と共に入力として受け取り、更新部4524(上位更新50も)にとって読み取り可能な形式でそれらを以下のように処理する。なお、処理は、ベクトルvsを形成する連結40のような単純な連結でもよい。
【数5】
【0060】
さらに、上位更新50において、上位レベル状態Hsは、上位レベル状態Hs+1に以下のように更新される。
【数6】
なお、式(6)におけるWhh、Whvは線形変換であり、式(6)におけるBhhはバイアスベクトルであり、式(6)におけるghlは非線形変換である。このようにして、個人指導システム等のeラーニングアプリケーションの使用を通じて、学生の知識が追跡される。
【0061】
バックプロパゲーション、勾配降下法、ミニバッチ学習等の標準的な学習技術を使用して、複数の学習者の利用可能な訓練データでモデルを訓練可能である。訓練されたモデルは、図2に示すシステム(図1に示す単純なモデル)に配備され、eラーニングアプリケーションでの個別学習を可能にする。
【0062】
<フロー図の例>
図5~9を参照すると、図1および図2のシステムを使用してeラーニングのパーソナライズ化を可能にする方法を示すフロー図が提供されている。
【0063】
図5は、本発明の実施形態のユーザデバイス100およびサーバ300の動作の例を示すフローチャートである。図5は、ユーザデバイス100で、学習者が新しい質問を試み、新しい相互作用データを生成する応答を提供するとき、図1に示すシステムによって学習者の知識状態(下位レベル状態バンク320に格納されている)の推定値を更新する方法を示す。
【0064】
最初に、ステップS210において、ユーザ応答データが、ユーザデバイス100からネットワーク200を介して、KTシステムが実装されているサーバ300に受信される。受信されたデータを格納し、前処理する方法は、ステップS220およびステップS230のように行われる。具体的には、受信されたデータは、学習者データバンク310に格納される(ステップS220)。次いで、入力データ処理部350は、受信されたデータを処理する(ステップS230)。
【0065】
続いて、ステップS240~S260のように、下位レベル状態の更新および格納が行われる。具体的には、下位レベルモデル362は、下位レベル状態バンク320から下位レベル状態を取得し(ステップS240)、下位レベル状態を更新し(ステップS250)、更新された状態を下位レベル状態バンク320に格納し(ステップS260)、動作を終了する。新たに格納された下位レベル状態は、システムによる学習者の知識状態の推定値を表す。
【0066】
同様に、図6は、図2に示すシステムによる学習者の知識状態の推定値(下位レベル状態バンク4600に格納)の更新方法を示す。図6は、本発明の実施形態のユーザデバイス2000およびサーバ4000の動作の例を示すフローチャートである。
【0067】
最初に、ユーザ応答データが、ネットワーク3000を介してユーザデバイス2000から受信される(ステップS2100)。受信されたデータは、学習者データバンク4100に格納される(ステップS2200)。次いで、セッション内データ処理部4512は、学習者データバンク4100からデータを取得して処理し(ステップS2300)、セッションレベル特徴および項目情報をセッションバンク4200に格納する(ステップS2400)。
【0068】
次いで、更新部4514は、下位レベル状態バンク4600から下位レベルモデルの隠れ状態を取得し(ステップS2500)、セッション内データ処理部4512からの入力を用いて隠れ状態を更新する(ステップS2600)。最後に、更新部4514は、隠れ状態を下位レベル状態バンク4600に格納し(ステップS2700)、セッション隠れ状態をセッションバンク4200に格納し(ステップS2800)、動作を終了する。
【0069】
次に、図7および図8は、学習者が新しいセッションのためにeラーニングアプリケーションにアクセスするときに、推定された学習者の知識状態を更新するために、それぞれ図1および図2に示すシステムで使用される方法を示す。上位レベル状態および下位レベル状態を受信し、上位レベル状態バンクおよび下位レベル状態バンクに格納し戻すことによって上位レベル状態を更新するプロセスは、図1に示すシステムの上位レベルモデル364と図2に示すシステムの上位レベルモデル4520によって有効になる。
【0070】
図7は、本発明の実施形態の上位レベルモデル364の動作の例を示すフローチャートである。最初に、上位レベルモデル364は、上位レベル状態バンク330から上位レベルモデルの隠れ状態を受け取り(ステップS110)、下位レベル状態バンク320から下位レベルモデルの隠れ状態を受け取る(ステップS120)。
【0071】
次いで、上位レベルモデル364は、上位レベルモデルの隠れ状態を更新し(ステップS130)、更新された隠れ状態を下位レベル状態バンク320と上位レベル状態バンク330に格納し(ステップS140~S150)、動作を終了する。
【0072】
図8は、本発明の実施形態の上位レベルモデル4520の動作の例を示すフローチャートである。最初に、上位レベルモデル4520のセッション間データ処理部4522は、下位レベル状態バンク4600から下位レベルモデルの隠れ状態を受け取り(ステップS1100)、学習者データバンク4100およびセッションバンク4200からセッション情報を受け取る(ステップS1200)。次いで、セッション間データ処理部4522は、受け取られた入力を処理し、更新部4524に送る(ステップS1300)。
【0073】
次いで、上位レベルモデル4520の更新部4524は、上位レベル状態バンク4700から上位レベルモデルの隠れ状態を受け取り(ステップS1400)、受け取った入力に応じて隠れ状態を更新し(ステップS1500)、更新された隠れ状態を上位レベル状態バンク4700に格納する(ステップS1600)。
【0074】
次いで、上位レベルモデル4520のセッション初期化部4526は、更新部4524から隠れ状態を受け取り、セッション開始時の下位レベルモデルの知識状態に変換し(ステップS1700)、変換された隠れ状態を下位レベル状態バンク4600に格納し(ステップS1800)、動作を終了する。
【0075】
次に、図9は、図1に示すシステムがeラーニングアプリケーション110を用いて学習者に次の質問(内容)を配信する方法を示す(図2に示すシステムでも同様の方法が用いられる)。
【0076】
図9は、本発明の実施形態のコンテンツ配信モデル340の動作の例を示すフローチャートである。最初に、コンテンツ配信モデル340は、下位レベル状態バンク320から下位レベルモデルの隠れ状態を受け取る(ステップS310)。
【0077】
次のステップでは、下位レベルモデルの隠れ状態がコンテンツの予測のために送られ、予測はコンテンツ配信モデル340に受け戻される。具体的には、コンテンツ配信モデル340は、予測を行うために隠れ状態を下位レベルモデル362に送り(ステップS320)、下位レベルモデル362から予測を受け取る(ステップS330)。
【0078】
ただし、予測ステップはオプションである。例えば、BKTでは、知識状態は、スキルが習得されているか否かを表す。従って、コンテンツ配信モデル340は、知識状態を直接使用可能である。
【0079】
さらに、コンテンツ配信モデル340は、コンテンツを決定し、それをネットワークを介してユーザに送信する。具体的には、コンテンツ配信モデル340は、ユーザに配信するコンテンツを決定し(ステップS340)、ネットワーク200を介してコンテンツバンク370からユーザデバイス100にコンテンツを送信し(ステップS350)、動作を終了する。
【0080】
なお、図2に示すコンテンツ配信モデル4400は、図9に示す動作と同様の動作を実行する。
【0081】
パーソナライズ化されたeラーニング用のサーバ4000は、下位レベルモデル4510と上位レベルモデル4520とで構成される2つの連続したモデルを含むKTモデル4500を含む。下位レベルモデル4510は、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に、学習者の質問応答データから学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測する。新しいセッションが開始すると、上位レベルモデル4520は、下位レベルモデル4510の知識状態の推定値を更新する。
【0082】
さらに、サーバ4000は、予測確率に基づく可能性があるeラーニング計画に従って学習者に質問または概念を配信するコンテンツ配信モデル4400を含む。
【0083】
さらに、下位レベルモデル4510は、質問を解決している間の学習者のやり取りに関する特徴であって、eラーニングアプリケーションから利用可能である特徴を入力された質問応答データに追加するセッション内データ処理部4512を含む。
【0084】
さらに、上位レベルモデル4520は、新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける学習者の以前のセッションに関するeラーニングアプリケーションから利用可能な特徴を、上位レベルモデル4520による更新ステップの前の最後のセッションの終了時の下位レベルモデル4510の知識状態の推定値に追加するセッション間データ処理部4522を含む。
【0085】
さらに、セッション間データ処理部4522は、新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける2つの連続するセッション間の学習者の活動に関してeラーニングアプリケーションから、またはユーザにより利用可能な特徴を、上位レベルモデル4520による更新ステップの前の2つの連続するセッションの前のセッションの終了時の下位レベルモデル4510の知識状態の推定値に追加する。
【0086】
さらに、セッション間データ処理部4522は、学習者のセッション中にKTモデル4500から特徴を抽出し、上位レベルモデル4520による更新ステップの前の次のセッションの開始時に下位レベルモデル4510の知識状態の推定値に抽出された特徴を追加する。
【0087】
さらに、解決された質問の数、質問の頻度、またはセッション中の演習時間のうちの少なくとも1つを表す特徴が、入力データから下位レベルモデル4510へ抽出される。
【0088】
さらに、特徴は、eラーニングアプリケーションから利用可能な質問応答データとは別の追加データから抽出される。
【0089】
さらに、特徴は、下位レベルモデル4510の状態のダイナミクスを表す学習セッション中に、下位レベルモデル4510の状態から抽出される。
【0090】
さらに、上位レベルモデル4520は、上位レベルモデル4520の更新ステップ後の上位レベルモデル4520の状態を、ユーザが新しいセッションで質問を解決することを開始する前の下位レベルモデル4510の状態に非線形的または線形的に変換するセッション初期化部4526を含む。
【0091】
本実施形態では、学習システムに関する学習者のセッション内(オンライン)およびセッション間(オフライン)の行動を考慮して知識追跡をモデル化する技法が説明されている。学習システムでのアクティブなセッション中、学生の知識状態を維持するためにセッション内モデルが使用される。学習者が質問とやり取りすると、やり取りが符号化されてこのモデルに提供され、進行中のセッション中に学習者の知識状態が更新される。セッションが終了すると、セッション間モデルが使用されて、学習者の知識状態の推定値が更新される。学習者の知識状態を正確に推定することは、学習者にパーソナライズ化された学習計画を届けることに役立つ。
【0092】
また、図10は、本発明の実施形態のコンピュータの構成例を示す概略ブロック図である。コンピュータ900は、中央処理装置(CPU)901と、主記憶装置902と、補助記憶装置903と、インタフェース904と、表示装置905と、入力装置906とを含む。
【0093】
上述した実施形態に係るサーバは、コンピュータ900で実現されてもよい。この場合、各サーバの動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に格納されてもよい。CPU901は、補助記憶装置903からプログラムを読み出して主記憶装置902にプログラムを展開し、プログラムに従って実施形態に係る所定の処理を実行する。なお、CPU901は、プログラムに従って動作する情報処理装置の一例であり、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、MCU(Memory Control Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU以外のものが含まれていてもよい。
【0094】
補助記憶装置903は、非一時的な有形媒体の一例である。非一時的な有形媒体の他の例として、インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、コンパクト・ディスク・リード・オンリ・メモリ(CD-ROM)、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。このプログラムが通信回線を介してコンピュータ900に配布される場合、配布を受けたコンピュータ900は、プログラムを主記憶装置902に展開し、本実施形態に係る所定の処理を実行してもよい。
【0095】
プログラムは、上述した本実施形態に係る所定の処理の一部を実現するためのプログラムであってもよい。また、プログラムは、補助記憶装置903に既に格納されている他のプログラムと組み合わせて、本実施形態に係る所定の処理を実現する差分プログラムであってもよい。
【0096】
インタフェース904は、他の装置との間で情報を送受信する。表示装置905は、ユーザに情報を提示する。入力装置906は、ユーザから情報の入力を受け付ける。
【0097】
実施形態に係る処理の内容によっては、コンピュータ900の一部の構成要素が省略され得る。例えば、コンピュータ900がユーザに情報を提示しない場合、表示装置905は省略可能である。例えば、コンピュータ900がユーザから情報を受信しない場合、入力装置906は省略可能である。
【0098】
上述した本実施形態に係る各構成要素の一部または全部は、汎用回路または専用回路、プロセッサ等、またはそれらの組み合わせによって実装される。これらは単一のチップで構成されてもよいし、バスを介して接続されている複数のチップで構成されてもよい。上述した本実施形態に係る各構成要素の一部または全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0099】
上述した本実施形態に係る各構成要素の一部または全部が、複数の情報処理装置または回路の部品等によって実現される場合、複数の情報処理装置または回路の部品等は、集中して配置されてもよいし、分散して配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路の部品等は、クライアント・サーバシステムやクラウドコンピューティングシステム等の通信ネットワークを介して相互に接続された形式で実現されてもよい。
【0100】
次に、本発明の概要を説明する。図11は、本発明のシステムの概要を示すブロック図である。図11は、パーソナライズ化されたeラーニング用のシステム80を示す。システム80は、下位レベルモデル(例えば、下位レベルモデル4510)と上位レベルモデル(例えば、上位レベルモデル4520)とで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)モデル部81(例えば、KTモデル4500)を含み、下位レベルモデルは、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に学習者の質問応答データから学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測し、上位レベルモデルは、新しいセッションが開始すると下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新する。
【0101】
そのような構成により、システムは、セッション内および2つのセッションに渡って変化する学習者の知識状態を個別にモデル化できる。
【0102】
さらに、システム80は、予測確率に基づく可能性があるeラーニング計画に従って学習者に質問または概念を配信するコンテンツ配信モデル部(例えば、コンテンツ配信モデル4400)を含んでもよい。
【0103】
そのような構成により、システムは、予測確率に基づいて質問または概念を配信できる。
【0104】
さらに、システム80は、質問を解決している間の学習者のやり取りに関する特徴であって、eラーニングアプリケーションから利用可能である特徴を入力された質問応答データに追加するデータ処理部(例えば、セッション内データ処理部4512)を含んでもよい。
【0105】
そのような構成により、システムは、セッション内で変化する学習者の知識状態をより正確にモデル化できる。
【0106】
さらに、システム80は、新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける学習者の以前のセッションに関するeラーニングアプリケーションから利用可能な特徴を、上位レベルモデルによる更新ステップの前の最後のセッションの終了時の下位レベルモデルの知識状態の推定値に追加するセッション間データ処理部(例えば、セッション間データ処理部4522)を含んでもよい。
【0107】
さらに、セッション間データ処理部は、新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける2つの連続するセッション間の学習者の活動に関してeラーニングアプリケーションから、またはユーザにより利用可能な特徴を、上位レベルモデルによる更新ステップの前の2つの連続するセッションの前のセッションの終了時の下位レベルモデルの知識状態の推定値に追加してもよい。
【0108】
そのような構成により、システムは、2つのセッションに渡って変化する学習者の知識状態をより正確にモデル化できる。
【0109】
さらに、セッション間データ処理部は、学習者のセッション中にHKTモデル部81から特徴を抽出し、上位レベルモデルによる更新ステップの前の次のセッションの開始時に下位レベルモデルの知識状態の推定値に抽出された特徴を追加してもよい。
【0110】
さらに、解決された質問の数、質問の頻度、またはセッション中の演習時間のうちの少なくとも1つを表す特徴が、入力データから下位レベルモデルへ抽出されてもよい。
【0111】
さらに、特徴は、eラーニングアプリケーションから利用可能な質問応答データとは別の追加データから抽出されてもよい。
【0112】
さらに、特徴は、下位レベルモデルの状態のダイナミクスを表す学習セッション中に、下位レベルモデルの状態から抽出されてもよい。
【0113】
そのような構成により、システムは、2つのセッションに渡って変化する学習者の知識状態をより正確にモデル化できる。
【0114】
さらに、システム80は、上位レベルモデルの更新ステップ後の上位レベルモデルの状態を、ユーザが新しいセッションで質問を解決することを開始する前の下位レベルモデルの状態に非線形的または線形的に変換するセッション初期化部(例えば、セッション初期化部4526)を含んでもよい。
【0115】
そのような構成により、システムは、上位レベルモデルの隠れ状態を下位レベルモデルの知識状態に変換できる。
【0116】
なお、上記実施形態は、以下の付記のようにも記載することができる。
【0117】
(付記1)パーソナライズ化されたeラーニング用のシステムであって、前記システムは、下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)モデル部を含み、前記下位レベルモデルは、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測し、前記上位レベルモデルは、新しいセッションが開始すると前記下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新することを特徴とするシステム。
【0118】
(付記2)予測確率に基づく可能性があるeラーニング計画に従って学習者に質問または概念を配信するコンテンツ配信モデル部を含む付記1記載のシステム。
【0119】
(付記3)質問を解決している間の学習者のやり取りに関する特徴であって、eラーニングアプリケーションから利用可能である特徴を入力された質問応答データに追加するデータ処理部を含む付記1または付記2記載のシステム。
【0120】
(付記4)新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける学習者の以前のセッションに関する前記eラーニングアプリケーションから利用可能な特徴を、上位レベルモデルによる更新ステップの前の最後のセッションの終了時の下位レベルモデルの知識状態の推定値に追加するセッション間データ処理部を含む付記1から付記3のうちのいずれかに記載のシステム。
【0121】
(付記5)セッション間データ処理部は、新しいセッションが開始すると、eラーニングアプリケーションにおける2つの連続するセッション間の学習者の活動に関して前記eラーニングアプリケーションから、またはユーザにより利用可能な特徴を、上位レベルモデルによる更新ステップの前の2つの連続するセッションの前のセッションの終了時の下位レベルモデルの知識状態の推定値に追加する付記4記載のシステム。
【0122】
(付記6)セッション間データ処理部は、学習者のセッション中にHKTモデル部から特徴を抽出し、上位レベルモデルによる更新ステップの前の次のセッションの開始時に下位レベルモデルの知識状態の推定値に抽出された特徴を追加する付記4または付記5記載のシステム。
【0123】
(付記7)解決された質問の数、質問の頻度、またはセッション中の演習時間のうちの少なくとも1つを表す特徴が、入力データから下位レベルモデルへ抽出される付記6記載のシステム。
【0124】
(付記8)特徴は、eラーニングアプリケーションから利用可能な質問応答データとは別の追加データから抽出される付記6または付記7記載のシステム。
【0125】
(付記9)特徴は、下位レベルモデルの状態のダイナミクスを表す学習セッション中に、前記下位レベルモデルの状態から抽出される付記6から付記8のうちのいずれかに記載のシステム。
【0126】
(付記10)上位レベルモデルの更新ステップ後の前記上位レベルモデルの状態を、ユーザが新しいセッションで質問を解決することを開始する前の下位レベルモデルの状態に非線形的または線形的に変換するセッション初期化部を含む付記1から付記9のうちのいずれかに記載のシステム。
【0127】
(付記11)パーソナライズ化されたeラーニング用の装置であって、前記装置は、下位レベルモデルと上位レベルモデルとで構成される2つの連続したモデルを含む階層型知識追跡(HKT)モデル部を含み、前記下位レベルモデルは、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測し、前記上位レベルモデルは、新しいセッションが開始すると前記下位レベルモデルの知識状態の推定値を更新することを特徴とする装置。
【0128】
(付記12)パーソナライズ化されたeラーニング用の方法であって、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新し、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測し、新しいセッションが開始すると知識状態の推定値を更新することを特徴とする方法。
【0129】
(付記13)パーソナライズ化されたeラーニング用のプログラムであって、コンピュータに、学習者がeラーニングアプリケーションでアクティブ(セッション中)である間に前記学習者の質問応答データから前記学習者の知識状態を推定および推定値を更新する処理、知識状態の推定値を使用して範囲内の質問に答える確率を予測する処理、および新しいセッションが開始すると知識状態の推定値を更新する処理を実行させるためのプログラム。
【0130】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0131】
80 システム
81 階層型知識追跡(HKT)モデル部
100、2000 ユーザデバイス
110 eラーニングアプリケーション
200、3000 ネットワーク
300、4000 サーバ
310、4100 学習者データバンク
320、4600 下位レベル状態バンク
330、4700 上位レベル状態バンク
340、4400 コンテンツ配信モデル
350 入力データ処理部
360、4500 知識追跡(KT)モデル
362、4510 下位レベルモデル
364、4520 上位レベルモデル
370、4300 コンテンツバンク
900 コンピュータ
901 中央処理装置(CPU)
902 主記憶装置
903 補助記憶装置
904 インタフェース
905 表示装置
906 入力装置
1000、1001 環境
4200 セッションバンク
4512 セッション内データ処理部
4514、4524 更新部
4516 予測部
4522 セッション間データ処理部
4526 セッション初期化部
図1
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図11