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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240702BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02G3/04
H02G3/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023036222
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2019167251の分割
【原出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2023076478
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆祐
(72)【発明者】
【氏名】水下 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050196(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038259(WO,A1)
【文献】特開平02-012713(JP,A)
【文献】特開2014-087191(JP,A)
【文献】特開2016-081823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシート部材と、カバーシート部材とを含むベース部材と、
前記ベース部材に固定された線状伝送部材と、
を備え、
前記線状伝送部材が前記ベース部材に溶着固定されて一定の経路に沿った状態に保たれており、
前記カバーシート部材は、前記線状伝送部材を覆った状態で、前記ベースシート部材に重ねられ、
前記ベースシート部材の両側部と前記カバーシート部材の両側部とのそれぞれが接合部を介して接合されており、
前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁が、前記接合部よりも外側に位置しており、
前記接合部から外方に延出するようにして接合加工によって生じる突出部が形成されており、
前記突出部が前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁内に収っている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外側に位置している、配線部材。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材であって、
前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの前記一方は、他方よりも柔らかい、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記カバーシート部材は、前記ベースシート部材の延在方向全体に亘って前記ベースシート部材に重ねられている、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記突出部が前記ベースシート部材及び前記カバーシート部材の少なくとも一方に接合されている、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記ベース部材は、その側部の一部が他の部分よりも凹む凹み側部を含み、
前記接合部は、前記凹み側部に対応する部分において、他の部分よりも細幅に形成されており、
前記凹み側部に対応する部分において、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁が、前記接合部よりも外側に位置している、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電線が2つのシート材に挟まれて全体としてフラットに形成されたワイヤーハーネスを開示している。2つのシート材の両側縁部同士は、溶着等によって固定されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-004679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線部材において、バリ等、加工による突出部が目立たないようにすることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、配線部材の側部において、加工による不要な突出部が目立ち難くなるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、ベースシート部材と、カバーシート部材とを含むベース部材と、前記ベース部材に固定された線状伝送部材と、を備え、前記カバーシート部材は、前記線状伝送部材を覆った状態で、前記ベースシート部材に重ねられ、前記ベースシート部材の側部と前記カバーシート部材の側部とが接合部を介して接合されており、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁が、前記接合部よりも外側に位置している、配線部材である。
【0007】
また、本開示の配線部材は、ベースシート部材と、カバーシート部材とを含むベース部材と、前記ベース部材に固定された線状伝送部材と、を備え、前記カバーシート部材は、前記線状伝送部材を覆った状態で、前記ベースシート部材に重ねられ、前記ベースシート部材の側部と前記カバーシート部材の側部とが初期重なり接合部を介して接合されており、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの一方に、前記初期重なり接合部から外方に向かう突出部が形成され、前記突出部が前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの他方の縁の内側において前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの前記他方に接合された状態となっている、配線部材である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、配線部材の側部において、加工による突出部が目立ち難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施形態に係る配線部材を示す平面図である。
図2図2図1の部分平面図である。
図3図3図2のIII-III線断面図である。
図4図4図2のIV-IV線断面図である。
図5図5は変形例に係る配線部材を示す断面図である。
図6図6は他の変形例に係る配線部材の接合前の状態を示す断面図である。
図7図7は他の変形例に係る配線部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0012】
(1)ベースシート部材と、カバーシート部材とを含むベース部材と、前記ベース部材に固定された線状伝送部材と、を備え、前記カバーシート部材は、前記線状伝送部材を覆った状態で、前記ベースシート部材に重ねられ、前記ベースシート部材の側部と前記カバーシート部材の側部とが接合部を介して接合されており、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁が、前記接合部よりも外側に位置している、配線部材である。接合のための加工によって、接合部から外方にはみ出る突出部が生じる場合がある。この場合、当該突出部が、接合部から延出して形成されたとしても、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁内には収り易い。
【0013】
(2)前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外側に位置していてもよい。突出部が前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの他方の縁よりはみ出たとしても、一方の縁内には収り易い。このため、配線部材の側部において、加工による突出部が目立ち難くなる。
【0014】
(3)前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの前記一方は、他方よりも柔らかくてもよい。ここで、前記接合部の外側において、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外側に位置している。このため、柔らかい方の縁が硬い方の縁よりも外側に位置することになり、配線部材が触られた場合に、柔らかい触感を与えることができる。
【0015】
(4)前記カバーシート部材は、前記ベースシート部材の延在方向全体に亘って前記ベースシート部材に重ねられていてもよい。この場合、カバーシート部材は、ベースシート部材の延在方向全体に亘って線状伝送部材を保護することができる。
【0016】
(5)前記接合部から外方に延出するように接合加工によって生じる突出部が形成されていてもよい。この場合、前記接合部から外方にはみ出るように接合加工によって生じる突出部が形成されたとしても、当該突出部は、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの一方の縁内に収り易い。このため、配線部材の側部において、加工による突出部が目立ち難くなる。
【0017】
(6)前記突出部が前記ベースシート部材及び前記カバーシート部材の少なくとも一方に接合されていてもよい。接合面積が大きくなり、接合強度が大きくなる。
【0018】
(7)前記ベース部材は、その側部の一部が他の部分よりも凹む凹み側部を含み、前記接合部は、前記凹み側部に対応する部分において、他の部分よりも細幅に形成されており、前記凹み側部に対応する部分において、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁が、前記接合部よりも外側に位置していてもよい。この場合、凹み側部に対応する部分において、接合部が細幅に形成されていると、接合部から外方にはみ出る突出部が生じ易い。このような突出部が目立ち難くなる。
【0019】
(8)ベースシート部材と、カバーシート部材とを含むベース部材と、前記ベース部材に固定された線状伝送部材と、を備え、前記カバーシート部材は、前記線状伝送部材を覆った状態で、前記ベースシート部材に重ねられ、前記ベースシート部材の側部と前記カバーシート部材の側部とが初期重なり接合部を介して接合されており、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの一方に、前記初期重なり接合部から外方に向かう突出部が形成され、前記突出部が前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの他方の縁の内側において前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの前記他方に接合された状態となっている、配線部材である。初期重なり接合部から突出部が延出して形成されたとしても、前記ベースシート部材と前記カバーシート部材とのうちの少なくとも一方の縁内には収り易い。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。図1は配線部材10を示す平面図である。図2図1の部分平面図である。図3図2のIII-III線断面図である。図4図2のIV-IV線断面図である。配線部材10は、ベース部材20と、複数の線状伝送部材30とを備える。
【0022】
ベース部材20は、ベースシート部材24と、カバーシート部材26とを含み、全体として扁平な形状に形成されている。複数の線状伝送部材30は、電気又は光等を伝送する線状の部材である。複数の線状伝送部材30がベース部材20に固定されることによって、配線部材10が扁平な形態に保たれる。
【0023】
より具体的には、複数の線状伝送部材30は、幹線部31から枝線部32が分岐する態様で、ベース部材20に固定されている。幹線部31は、複数の線状伝送部材30の全部又は一部が最も多い本数となるように集約される部分である。枝線部32は、幹線部31の端部又は延在方向中間部から少なくとも1本の線状伝送部材30が分岐した部分である。ここでは、幹線部31から複数の枝線部32が延出している。枝線部32の端部にはコネクタ48が設けられる。このコネクタ48が相手側部品にコネクタ接続されることで、線状伝送部材30が相手側部品に接続される。つまり、本配線部材10は、車両等において各種部品同士を電気的に(或は光通信可能に)接続する配線部材として用いられる。コネクタは、ベース部材20に固定されていてもよい。
【0024】
複数の線状伝送部材30は、車両における部品同士を接続する線状伝送部材であることが想定される。幹線部31に対する枝線部32の分岐位置及び枝線部32の延出方向は、当該枝線部32の接続先となる部品の位置等に応じて設定される。複数の線状伝送部材30がベース部材20に固定されることによって、複数の線状伝送部材30がそれぞれの接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿った状態に保たれる。
【0025】
より具体的には、線状伝送部材30は、上記したように、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材30は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0026】
電気を伝送する線状伝送部材30としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0027】
また、線状伝送部材30は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0028】
ここでは、線状伝送部材30が電線であることを想定した説明がなされる。
【0029】
ベースシート部材24にカバーシート部材26が重ねられることによって、ベースシート部材24が構成される。ベースシート部材24は、樹脂シートであってもよい。例えば、ベースシート部材24は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂によって形成されていてもよい。また、ベースシート部材24は、不織布又は発泡シート等であることも考えられる。また、ベースシート部材24は、1層構造を有していてもよく、複数層構造を有していてもよい。また、ベースシート部材24は、金属層を有していてもよい。
【0030】
カバーシート部材26は、ベースシート部材24に対して全体的に重ねられる。カバーシート部材26は、ベースシート部材24とは反対側から線状伝送部材30を覆う。換言すれば、ベースシート部材24とカバーシート部材26との間に複数の線状伝送部材30が設けられる。
【0031】
カバーシート部材26は、樹脂シートであってもよい。例えば、カバーシート部材26は、ベースシート部材24と同様に、PVC、PE、PP、PET等の樹脂によって形成されていてもよい。ベースシート部材24及びカバーシート部材26の一方は、他方よりも柔らかくてもよい。ここでの柔らかさ、逆にいえば、硬さは、例えば、ロックウェル硬さによって評価されてもよい。ここでは、ベースシート部材24は、カバーシート部材26よりも柔らかい例が説明される。例えば、カバーシート部材26は、ナイロン、PET、PPなどの材料によって形成され、ベースシート部材24が軟質PVCによって形成されたシート状部材とPETによって形成された不織布とが積層された柔らかい部材であってもよい。
【0032】
ベース部材20は、幹線固定部21と、枝線固定部22とを含む。ここでは、幹線固定部21は、真っ直ぐ延在する帯状に形成されている。幹線固定部21は、途中で曲っていてもよい。この幹線固定部21に複数の線状伝送部材30のうちの幹線部31が固定される。ここで、線状伝送部材30が幹線固定部21に沿った形態に保たれていればよく、幹線固定部21に対する線状伝送部材30の固定構造は特に限定されない。枝線固定部22は、幹線固定部21の端部又は延在方向中間部から外方に向けて延出している。ここでは、枝線固定部22は複数設けられている。複数の枝線固定部22は、方形状又は細長い帯状に形成されている。枝線固定部22は、途中で曲っていてもよい。ここで、線状伝送部材30が枝線固定部22に沿った形態に保たれていればよく、枝線固定部22に対する線状伝送部材30の固定構造は特に限定されない。
【0033】
ベースシート部材24は、幹線固定部21から複数の枝線固定部22が延出する形状に形成されている。カバーシート部材26も、幹線固定部21から複数の枝線固定部22が延出する形状に形成されている。カバーシート部材26は、線状伝送部材30を覆った状態で、ベースシート部材24に重ねられる。つまり、ベースシート部材24とカバーシート部材26との間に線状伝送部材30が配置された状態で、線状伝送部材30がベース部材20に固定される。
【0034】
ここで、線状伝送部材30は、ベース部材20に固定されればよく、ベース部材20に対する線状伝送部材30の固定構造は特に限定されない。
【0035】
例えば、線状伝送部材30はベースシート部材24に対して固定されている。かかる固定態様としては、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、線状伝送部材30とベースシート部材24とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様であり、例えば、縫糸、カバーシート部材26、粘着テープなどが、線状伝送部材30をベースシート部材24に向けて押え込んだり、線状伝送部材30とベースシート部材24とを挟み込んだりして、その状態に維持するものである。以下では、線状伝送部材30とベースシート部材24とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。
【0036】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、線状伝送部材30とベースシート部材24とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどを介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、線状伝送部材30とベースシート部材24とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば線状伝送部材30とベースシート部材24とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0037】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0038】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材30とベースシート部材24とは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材30とベースシート部材24とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。
【0039】
以下では、線状伝送部材30とベースシート部材24とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明する。なお、幹線固定部21及び枝線固定部22の両方において、線状伝送部材30がベースシート部材24に対して同じ態様で固定されている必要は無い。幹線固定部21においては線状伝送部材30が溶着等によって接触部位直接固定の態様で固定され、枝線固定部22においては、線状伝送部材30がベースシート部材24とカバーシート部材26との間に挟み込まれて固定されてもよい。
【0040】
カバーシート部材26のうちの少なくとも一部の側部が接合部28を介してベースシート部材24の側部に接合されている。ここでは、幹線固定部21において、カバーシート部材26は、ベースシート部材24の延在方向全体に重なっている。幹線固定部21において、カバーシート部材26の延在方向全体の両側部が、ベースシート部材24の延在方向全体の両側部に対して、接合部28を介して接合されている。それぞれの枝線固定部22において、カバーシート部材26は、ベースシート部材24の延在方向全体に重なっている。それぞれの枝線固定部22において、カバーシート部材26の延在方向全体の両側部が、ベースシート部材24の延在方向全体の両側部に対して、接合部28を介して接合されている。
【0041】
本実施形態では、カバーシート部材26が、ベースシート部材24の延在方向全体に亘ってベースシート部材24に重ねられる例が示される。カバーシート部材26がベースシート部材24の全体に重なっている必要はなく、幹線固定部21及び枝線固定部22の延在方向中間部、枝線固定部22端部等において、カバーシート部材26がベースシート部材24に重ならず、線状伝送部材30が露出していてもよい。また、カバーシート部材26がベースシート部材24の全体に重なって領域の全てにおいて、カバーシート部材26の側部がベースシート部材24に接合されている必要は無い。
【0042】
接合部28は、ベースシート部材24とカバーシート部材26とを接合した際に、外方にはみ出る突出部29pが生じる可能性がある接合方法によって接合された部分である。接合部28は、例えば、溶着、接着等によってなされる。溶着は、超音波溶着であってもよいし、加熱溶着であってもよい。ベースシート部材24とカバーシート部材26とを加圧等した状態でそれらを溶着すると、ベースシート部材24とカバーシート部材26との少なくとも一方が溶けた部分が、突出部29p(いわゆるバリ)となって接合部28から外方にはみ出て形成される恐れがある。また、ベースシート部材24とカバーシート部材26とを接着剤等で接合すると、接着剤がベースシート部材24とカバーシート部材26との間からはみ出て、突出部29pとなって接合部28から外方にはみ出て形成される恐れがある。図3では、ベースシート部材24の側部とカバーシート部材26の側部とが、超音波エネルギー付与用のチップ110と、アンビル112との間に挟まれて超音波溶着されている様子が示される。
【0043】
本実施形態において、接合部28は、ベースシート部材24の側部とカバーシート部材26の側部とを接合している。換言すれば、接合部28とは、ベースシート部材24の側部とカバーシート部材26の側部との重なり部分において、ベースシート部材24の側部とカバーシート部材26の側部とが離れないように両者をくっつけている部分である。
【0044】
接合部28は、ベース部材20の側部に沿って連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。上記ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの少なくとも一方の縁が、接合部28よりも外側に位置している。ここで、縁が接合部よりも外側に位置しているとは、縁が接合部よりも間隔をあけて外側に位置している場合をいう。ここでは、ベースシート部材24の縁が接合部28よりも外側に位置している。カバーシート部材26は、接合部28の外側境界上に位置している。また、本実施形態では、上記接合部28の外側(ベース部材20の幅方向における外側)において、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外側に位置している。ここでは、ベースシート部材24の縁がカバーシート部材26の縁よりも外側に位置している例が示される。
【0045】
本実施形態では、ベースシート部材24の両側部の全ての縁が、接合部28よりも外側に位置している例が示される。また、ベースシート部材24の両側部の全ての縁が、カバーシート部材26の縁よりも外側に位置している例が示される。ベースシート部材24の両側部の一部の縁が、接合部28の境界上又は接合部28に重なって位置していてもよい。ベースシート部材24の両側部の一部の縁が、カバーシート部材26の縁よりも外側に位置していてもよい。
【0046】
接合部28は、ベースシート部材24の側部とカバーシート部材26の側部との重なり部分に形成されることから、ベースシート部材24の縁よりも内側の領域に形成される。上記したように、接合加工によって生じる突出部29pは、接合部28から外方にはみ出るようにして形成される。このため、突出部29pは、カバーシート部材26の縁からベースシート部材24の縁に向けて、ベースシート部材24の側部上に広がるように形成される。突出部29pの突出量によっては、突出部29pは、ベースシート部材24の縁からさらに外方にはみ出ることもあり得る。
【0047】
また、本実施形態では、ベース部材20は、その側部の一部が他の部分よりも凹む凹み側部20gを含む。ここでは、幹線固定部21の延在方向中間部の両側部に、凹み側部20gが形成される。かるか凹み側部20gは、例えば、配線部材10の組込箇所の途中に、周辺部材100が存在する場合において、配線部材10と周辺部材100との接触を回避する目的等で設けられる。
【0048】
ベースシート部材24における幹線固定部21のうち、凹み側部20gが形成された部分の幅W1は、その他の部分(凹み側部20gが形成されていない部分)の幅W2よりも小さい。また、ベースシート部材24の側部が凹む寸法に応じて、カバーシート部材26の側部も凹んでいる。
【0049】
ここで、ベースシート部材24の側部及びカバーシート部材26の側部の接合を、効率的に行うため、接合のための工具(例示したチップ110及びアンビル112参照)として同じのものを用いて、同一条件で行うことが想定される。この場合、接合部28のうち凹み側部20gが形成された部分の幅W3(例えば3.5mm)は、他の部分の幅W4(例えば5mm)と比較して小さくなってしまうことが考えられる。すると、凹み側部20gが形成された部分で、接合部28から外方にはみ出す突出部29pが形成され易い。そこで、凹み側部20gに対応する部分において、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外側に位置している構成とすれば、突出部29pが目立ち難い。ここでは、凹み側部20gに対応する部分において、ベースシート部材24の縁がカバーシート部材26の縁よりも外側に位置している。
【0050】
このように構成された配線部材10によると、接合のための加工によって、接合部28から外方にはみ出る突出部29pが生じる可能性がある。本配線部材10では、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの少なくとも一方の縁が、接合部28よりも外側に位置している。このため、突出部29pが接合部28から突出して形成されたとしても、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの少なくとも一方の縁内に収って配置され易い。
【0051】
特に、本配線部材10では、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外側に位置している。このため、接合部28は、より確実にベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの一方の縁よりも内側に形成される。そして、突出部29pは、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの他方の縁よりはみ出したとしても、一方の縁内に収って配置され易い。このため、配線部材10の側部において、加工による突出部29pが目立ち難くなる。
【0052】
特に、カバーシート部材26がベースシート部材24の延在方向全体に亘って設けられていれば、カバーシート部材26がベースシート部材24の延在方向全体に亘って線状伝送部材30を保護できる。かかる構成において、ベース部材20の側部において突出部29pが目立ち難くなる。
【0053】
また、ベースシート部材24とカバーシート部材26のうち、側部が外側に位置するものは、側部が内側に位置するものより柔らかい。ここでは、ベースシート部材24の側部がカバーシート部材26の側部よりも外側に位置する。このため、ベースシート部材24は、カバーシート部材26より柔らかい。このため、ベース部材20のうち幅方向外側には、柔らかいベースシート部材24の側部が存在している。このため、作業者等が配線部材10の両側部を把持した場合に、作業者の手は主として柔らかいベースシート部材24に接する。これにより、配線部材10が把持等のために触られた場合に、作業者に対して柔らかい触感を与えることができる。
【0054】
また、凹み側部20gに対応する部分において、接合部28が細幅に形成されていると、接合部28から外方にはみ出る突出部29pが生じ易い。凹み側部20gに対応する領域において、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外方に位置していると、突出部29pが目立ち難くなる。
【0055】
[変形例]
なお、ベース部材20及び線状伝送部材30が枝線部分を有していることは必須ではない。ベース部材及び線状伝送部材は、1本の線状に延在するように形成されていてもよい。
【0056】
凹み側部20gに対応する部分のみにおいて、ベースシート部材24とカバーシート部材26とのうちの一方の縁が他方の縁よりも外方に位置しており、凹み側部20gが設けられていない部分では、ベースシート部材24の縁とカバーシート部材26の縁とが一致した位置に存在してもよい。
【0057】
図5に示す変形例のように、ベースシート部材124の縁とカバーシート部材126の縁とが一致していてもよい。この場合、接合部128よりも外側に、ベースシート部材124の縁とカバーシート部材126の縁とが位置していればよい。これにより、接合部128から延出する突出部129pが形成されたとしても、当該突出部129pは、接合部128の外側であってベースシート部材124とカバーシート部材126との間に収り、それらの縁から外方にはみ出ないことが期待される。
【0058】
また、図6及び図7に示す変形例のように、突出部229pがベースシート部材224及びカバーシート部材226の少なくとも一方に接合される場合もあり得る。
【0059】
例えば、ベースシート部材224の縁に対してカバーシート部材226の縁が内側に位置した状態で、ベースシート部材224の側部とカバーシート部材226の側部とがチップ110及びアンビル112で加圧されて超音波溶着されるとする。この場合、接合部228は、接合前におけるベースシート部材224とカバーシート部材226との重なり部分に形成される。この接合部228は、ベースシート部材224の側部とカバーシート部材226の側部とを接合する接合部の一例である。
【0060】
また、本変形例における接合部228は、ベースシート部材224とカバーシート部材226との初期重なり部分において、ベースシート部材224の少なくとも一部の側部をカバーシート部材226に接合している。このため、接合部228は、初期重なり接合部228と把握されてもよい。なお、ベースシート部材224とカバーシート部材226との初期重なり部分とは、接合前の状態において、ベースシート部材224とカバーシート部材226とが重なっている部分をいう。初期重なり接合部228は、そのような初期重なり部分において、ベースシート部材224とカバーシート部材226とが接合された部分である。
【0061】
チップ110及びアンビル112の加圧条件、加圧面形状によっては、ベースシート部材224とカバーシート部材226の一方が押し延されて、初期重なり接合部228から外方に突出する突出部229pが形成されることがあり得る。また、この突出部229pがベースシート部材224とカバーシート部材226の他方の縁の内側に収った状態で、ベースシート部材224とカバーシート部材226の他方に超音波溶着されることがあり得る。突出部229pは、追加的な接合部であるともいえる。図7では、カバーシート部材226が押し延されて、初期重なり接合部228から外方に突出する突出部229pが形成される例が示される。また、この突出部229pがベースシート部材224の縁の内側でベースシート部材224に超音波溶着される例が示される。
【0062】
本変形例において、初期重なり接合部228よりも外側にベースシート部材224の縁が存在しているため、突出部229pが、初期重なり接合部228から外方に延出するように形成されてもベースシート部材224の縁内に収り易い。このため、ベースシート部材224の縁とカバーシート部材226の縁のうち外側に位置する縁から突出部229pがはみ出難い。また、ベースシート部材224とカバーシート部材226との接合領域を大きくすることができるため、接合強度が強くなる。
【0063】
本実施形態は、ベースシート部材とカバーシート部材とを接合する際に、それらの縁の少なくとも一方よりも間隔を隔てて内側の領域を接合して配線部材を製造する製造方法に関する開示を含む。この場合において接合方法は、特に問わないが、接合によって変形して突出部が形成される接合方法、例えば、溶着(超音波溶着、熱溶着等)を含む。
【0064】
以上の実施形態及び変形例からして、接合によって加工された部分(接合部及び接合後に延びた突出部を含む)が、ベースシート部材の縁及びカバーシート部材の縁のうち外側にあるものと同じ位置又は内側に存在すれば、特許請求の範囲に含まれる。ベースシート部材の縁とカバーシート部材の縁とが内外にずれている場合、ベースシート部材とカバーシート部材とが重なっている領域は、必然的にベースシート部材の縁とカバーシート部材の縁とのうち外側に存在する縁より内側に位置する。従って、この場合、ベースシート部材とカバーシート部材とが重なっている領域内において、いずれの領域に接合部が形成されたとしても、突出部は外側の縁内に収り得る。
【0065】
また、ベースシート部材の縁及びカバーシート部材の縁が同じ位置にある場合において、接合後にベースシート部材の縁及びカバーシート部材の縁から突出部が生じないように、接合の領域を縁よりも内側に配置する場合も、特許請求の範囲に含まれる。例えば、ベースシート部材の縁とカバーシート部材の縁とが同じ位置である場合、両者を超音波溶着すると、超音波溶着した位置(超音波振動を付与した位置)が接合部として把握され得る。超音波溶着した位置は、その痕跡から把握され得る。例えば、ベースシート部材とカバーシート部材との総厚みが薄くなる位置が接合部として把握されてもよい。
【0066】
なお、接合部は、ベースシート部材の縁とカバーシート部材の縁とのうち外側にある縁から突出部が生じない程度に内側に配置されていればよい。例えば、接合部は接合前にベースシート部材とカバーシート部材の縁から突出部が生じない程度に内側に配置されており、接合後にベースシート部材とカバーシート部材の縁の内側に突出部が収まる構成であればよい。
【0067】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。図5又は図6及び図7に示す変形例は、上記実施形態で説明されたように、凹み側部20gに対応する領域に対して適用されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 配線部材
20 ベース部材
20g 凹み側部
21 幹線固定部
22 枝線固定部
24 ベースシート部材
26 カバーシート部材
28 接合部
29p 突出部
30 線状伝送部材
31 幹線部
32 枝線部
48 コネクタ
100 周辺部材
110 チップ
112 アンビル
124 ベースシート部材
126 カバーシート部材
128 接合部
129p 突出部
224 ベースシート部材
226 カバーシート部材
228 初期重なり接合部(接合部)
229p 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7