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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】シート状物の欠陥検査装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023065109
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2019160027の分割
【原出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2023089140
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-04-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-332950(JP,A)
【文献】特開2008-180706(JP,A)
【文献】特開2019-138849(JP,A)
【文献】特開2010-281772(JP,A)
【文献】特開2005-62119(JP,A)
【文献】特開平7-55721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0137407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物の欠陥検査装置であって,
前記シート状物の被検査部位の一方面側に配置され,当該被検査部位の表面を撮影する撮影装置と,
前記被検査部位の前記一方面側に配置され,当該被検査部位の表面上における前記撮影装置の撮影範囲を照明し,かつ前記シート状物の長手方向において前記撮影装置を挟むように配置された複数の光源と,
前記被検査部位の他方面側で,前記撮影範囲と少なくとも部分的に重なる位置に配置されたCIE-L 表色系におけるL 値が70以上の白色部材と,を備え,
前記白色部材は,前記被検査部位と接触する白色の曲面部を含む固定された断面円弧状の板状のプレートである
欠陥検査装置。
【請求項2】
シート状物を得る工程と,
前記シート状物の欠陥の有無を,請求項1に記載の欠陥検査装置を用いて検査する工程と,を含む,
シート状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,衛生用紙などのシート状物の欠陥検査装置や,それを用いたシート状物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,例えばトイレットペーパーやティッシュペーパーのような家庭用の衛生用紙に関し,その製造過程で生じた欠陥(穴や,汚れ,スジ,異物等)を検査する手法として,衛生用紙の原紙をローラなどによって高速で搬送しつつ,その搬送中に紙面をカメラで撮影することにより,紙面上に生じた欠陥を検出することが知られている。
【0003】
例えば紙・フィルム等のようなシート状物の被検査体の欠陥検査技術に関し,特許文献1には,被検査体に照明光を当てて表面上に影を作り,この影内における正反射または乱反射の像を暗視野感度領域においてカメラで撮像し,得られた撮像画像の画像信号を画像処理して欠陥を検出する装置が開示されている。このように,照明から照射され紙面上で反射した反射光をカメラで検出する検査手法は,「反射方式」とも呼ばれる。
【0004】
また,特許文献1及び特許文献2には,検出された欠陥の種別を判別する機能を備えた欠陥検査装置が開示されている。例えば,これらの特許文献では,撮影画像を所定数の画素行列からなるブロック(格子)に切り分けて,各ブロック内の濃度情報(つまり明度情報)に基いて検出された欠陥の種別(穴や汚れなど)を判別することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-21003号公報
【文献】特開平08-145907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,特許文献1に記載の欠陥検査装置ように,検査対象となるシート状物の一方面側に撮影装置と光源を配置する「反射方式」の装置では,シート状物に付着した汚れが例えば図8に示すような状態で映り込むこととなる。すなわち,シート状物がほぼ白色のものであることを想定したときに,汚れ(煤汚れや機械油が付着したシミなど)はシート状物の紙面よりも明度の低い暗色に写る。ここで,反射方式では,シート状物の紙面もある程度低い明度で撮影画像中に写ることとなるが,シート状物に付着した汚れが比較的薄い色のものである場合,紙面と汚れのコントラスト(明暗差)が小さくなり,紙面上に付着した汚れを検出できない場合がある。一方で,コントラストの小さい汚れを正確に検出しようとすると,例えば,性能の高い撮影装置が必要となって設備コストの増加に繋がったり,本来欠陥として検出する必要のない塵芥や紙粉が紙面上に落した影などを欠陥として検出してしまうといったエラーが発生するおそれもある。
【0007】
そこで,本発明は,シート状物に色の薄い異物が付着している場合であっても,当該異物を効率的に検出することのできる欠陥検査装置や方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は,上記した従来技術の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,シート状物の一方面側に撮影装置と光源が配置された「反射方式」の欠陥検査装置において,シート状物の他方面側に白色部材を設けることにより,シート状物に付着した異物と紙面のコントラストが大きくなり,シート状物に色の薄い異物が付着している場合でも,それを効果的に検出できるようになるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば従来技術の問題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成・工程を有する。
【0009】
本発明の第1の側面は,シート状物の欠陥検査装置に関する。本発明に係る欠陥検査装置は,撮影装置と,一又は複数の光源と,白色部材とを備える。撮影装置は,シート状物の被検査部位の一方面側に配置され,当該被検査部位の表面を撮影して当該シート状物の画像を得る。光源は,被検査部位の一方面側に配置(すなわち撮影装置と同じ側)に配置され,当該被検査部位の表面上における撮影装置の撮影範囲を照明する。白色部材は,記被検査部位の他方面側で,撮影装置の撮影範囲と少なくとも部分的に重なる位置に配置される。なお,本願明細書において,「白色」とは,CIE-L表色系におけるL値が60以上の色を意味する。特に,白色部材は,L値が70以上であることが好ましく,80以上であることがより好ましく,85以上であることが更に好ましい。白色部材は,検査対象となるシート状物と異素材のものであってもよいし同素材のものであってもよい。例えばシート状物が白色である場合には,シート状物の被検査部位に当該シート状物の別部位を重ねて白色部材として利用することとしてもよいし,シート部材の被検査部位に別のシート状物を重ねて白色部材として利用することとしてもよい。このように,反射方式の欠陥検査装置において,シート状物の被検査部位の裏面側に白色部材を配置しておくことで,撮影画像中において被検査部位の紙面とそこに付着した異物のコントラストが大きくなるため,異物の検出感度を高めることができる。
【0010】
本発明に係る欠陥検査装置において,白色部材は,シート状物の被検査部位と平行に形成された白色の平面部を含むプレートであることとしてもよい。この場合に,プレートの平面部は,被検査部位から一定間隔離れた位置に配置されていることが好ましい。なお,プレート(白色部材)をシート状物に対して非接触で配置する場合,プレートとシート状物の距離は近いことが好ましく,例えば20cm以内又は10cm以内とすることが好ましく,5cm以内であることが特に好ましい。このように,プレートをシート状物に対して非接触とすることで,プレートを配置しやすくなる。また,プレートとシート状物の接触によって静電気が発生することや,シート状物にシワが形成されることを回避できる。
【0011】
本発明に係る欠陥検査装置において,白色部材は,シート状物の被検査部位と接触する白色の曲面部を含むプレートであることとしてもよい。このように,曲面部を含むプレートをシート状物に接触した状態で配置することで,シート状物の紙面とそこに付着した異物のコントラストをより大きくすることができる。さらに,プレートとシート状物が常に接触していることで,プレート上に紙粉等が堆積しにくくなる。
【0012】
本発明に係る欠陥検査装置において,白色部材は,シート状物の被検査部位と接触する白色の周面を含むローラであることとしてもよい。このようにローラを利用することで,シート状物を搬送しつつ,そのローラとシート状物の接触箇所において,異物等の付着を効率的に検査できる。また,シート状物に接触するローラの周面を白色とすることで,シート状物の紙面とそこに付着した異物のコントラストをより大きくすることができる。
【0013】
本発明に係る欠陥検査装置において,検査対象となるシート状物は,ロール状に巻回されたものであってもよい。この場合に,撮影装置等によるシート状物の被検査部位は,ロール状に巻回されたシート状物の最外層に位置ことが好ましい。また,白色部材は,被検査部位の内層側に位置するシート状物の別層であることが好ましい。このように,シート状物のロール体の最外層を被検査部位とすることで,その内層側に位置する別層を白色部材として利用することもできる。これにより,上記のようなプレートやローラといった装置を利用しなくても,シート状物の紙面とそこに付着した異物のコントラストを簡単に大きくすることができる。また,シート状物の製造過程においては,その搬送方向に沿って略直線的な煤汚れなどが紙面に筋状に付着することが多い。このような筋状の汚れが付着したシート状物をロール状に巻き取ると,複数層に亘って筋状の汚れが重なることとなる。このように汚れが重なっている状態において,シート状物のロール体の最外層を被検査部位とすることで,撮影画像中には汚れの色がより濃く写りこむため,紙面と汚れのコントラストをさらに大きくすることができる。
【0014】
本発明の第2の側面は,シート状物の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は,シート状物を得る工程と,このシート状物の欠陥の有無を上記した第1の側面に係る欠陥検査装置を用いて検査する工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,シート状物に色の薄い異物が付着している場合であっても,当該異物を効率的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は,抄紙機の構成の一例を示している。
図2図2は,第1の実施形態に係る欠陥検査装置の構成例を示している。
図3図3は,欠陥検査装置の機能構成例を示したブロック図である。
図4図4は,本発明に係る欠陥検査装置で取得した撮影画像の一例を模式的に示している。
図5図5は,第2の実施形態に係る欠陥検査装置の構成例を示している。
図6図6は,第3の実施形態に係る欠陥検査装置の構成例を示している。
図7図7は,第4の実施形態に係る欠陥検査装置の構成例を示している。
図8図8は,従来の「反射方式」の欠陥検査装置で取得した撮影画像の一例を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
なお,本願明細書において,「A~B」というときは「A以上B以下」であることを意味する。
【0018】
[1.第1の実施形態]
図1から図4を参照して,本発明の第1の実施形態について説明する。本発明は,シート状物の欠陥検査装置や,その欠陥検査装置を用いてシート状物を製造する方法に関する。シート状物の例としては,紙製やプラスチック製のものを挙げることができる。特に,シート状物は,ティシュペーパーやトイレットペーパーとして利用される家庭用の衛生用紙であることが好ましい。「衛生用紙」とは,JISの「紙・板紙及びパルプ用語」(JISP 0001)で定義された「衛生用紙」を意味する。「衛生用紙」には,タオル,生理用紙,ティシュペーパー,トイレットペーパー,ちり紙が含まれる。本発明によって製造される衛生用紙は,坪量が10~25g/mの範囲にある薄葉紙であることが好ましい。また,衛生用紙は,1枚からなる1プライの製品であってもよいし,2枚又は3枚以上を重ね合わせた2プライ又は3プライ以上の製品であってもおよい。特に,本発明において,シート状物は,CIE-L表色系におけるL値が60以上,70以上,80以上,又は85以上の白色であることが好ましい。以下では,シート状物として,1プライの白色の衛生用紙を例に挙げて説明を行う。
【0019】
衛生用紙の製造方法は,基本的に,原料パルプ繊維の懸濁液である抄紙原料(パルプスラリー)を得る調製工程と,抄紙原料から原料パルプ繊維を抄いて繊維ウェブを形成し乾燥させる抄紙工程を含む。
【0020】
調整工程では,衛生用紙の原料となる抄紙原料(パルプスラリー)を調整する。抄紙原料は,パルプを主原料としている。原料パルプとしては,例えば,広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP); サルファイトパルプ(SP)やソーダパルプ(AP)等の化学パルプ; セミケミカルパルプ(SCP)やケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ; 砕木パルプ(GP)やサーモメカニカルパルプ(TMP,BCTMP)等の機械パルプ; あるいは,楮,三椏,麻,ケナフ等を原料とする非木材パルプ,コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ,古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。抄紙原料は,薄葉紙の用途や要求される性能に応じて,1種類の原料パルプを使用してもよく,又は複数種類の原料パルプを任意の比率で使用してもよい。原料パルプは,未叩解パルプであってもよく,全体または一部が叩解されていてもよい。
【0021】
調整工程で調整された抄紙原料は,抄紙工程において抄紙され衛生用紙となる。抄紙工程は,抄紙機100を利用して行うことができる。図1に示されるように,抄紙機1000は,ワイヤパート110,プレスパート120,ドライパート130,カレンダパート140,及びリールパート150を含む。
【0022】
ワイヤパート110は,パルプスラリーに含まれる水分を搾水し,薄層状の湿紙を形成する部分である。ワイヤパート110は,抄き網を環状の無限軌道ベルトに構成した一対の上下2枚のワイヤ111と,パルプスラリーを2枚のワイヤ111の間に噴き付けるヘッドボックス112とを備える。ヘッドボックス112は,ワイヤ111のニップ部に向かってパルプスラリーを薄く噴き付ける。パルプスラリーに含まれる水分は,フォーミングロール113からの圧力で相互に圧着される2枚のワイヤ111の網目から搾水される。ワイヤ111は,駆動ロールとして機能するフォーミングロール113とドライブロール14によって走行させる。フォーミングロール113及びドライブロール114はワイヤ111と当接するように配置されており,フォーミングロール113及びドライブロール114の回転力がワイヤ111に伝達されることでワイヤ111に推進力が付与されている。
【0023】
プレスパート120は,ワイヤパート110で形成された薄層状の湿紙の水分を更に除去する部分である。プレスパート120は,フェルトを環状の無限軌道ベルトに構成したドライヤフェルト121と,このドライヤフェルト121に当接してドライヤフェルトの走行とともに回転する、複数のフェルトロール122とを備える。プレスパート120においては,ワイヤパート110ら送り込まれた湿紙をドライヤフェルト121の表面に載置し,繊維状のドライヤフェルト121を透過させて湿紙に含まれる水分を更に除去する。
【0024】
ドライパート130は,プレスパート120で水分の除去された湿紙を更に乾燥する部分である。ドライパート130は,加熱可能な円柱状のヤンキードライヤ131と,熱風の噴射口を有するフード132とを備える。ドライパート130においては,内部に蒸気を吹き込み加熱状態としたヤンキードライヤ131の外周面に湿紙を圧着させ,更にフード132内部に設置された噴射口からヤンキードライヤ131の外周側に熱風を噴き付けることによって湿紙を乾燥させる。また,ヤンキードライヤシリンダ131の表面に形成された乾燥した原紙をドクターブレード133によりクレープを付けながら引き剥がす。原紙のクレープ率は,例えば15~45%又は20~38%とすることが好ましい。なお,なお,クレープ率とは,[(ヤンキードライヤの周速)-(リールドラムの周速))/(ヤンキードライヤの周速)]×100(%)で算出される値である。
【0025】
カレンダパート140は,ドライパート130で乾燥させた原紙に対してカレンダー加工を施す部分である。カレンダパート140は,カレンダロール141と受けロール142を備える。カレンダパート140においては,原紙をカレンダロール141と受けロール142の間に挟みこんで押圧することで,原紙表面の平滑化,組織の緻密化,紙厚の均一化,及び光沢の付与等を行う。カレンダロール141や受けロール142の種類は特に限定されないが,例えば金属製のものを好適に用いることができる。
【0026】
リールパート150は,カレンダー加工を施した原紙を巻き取る部分である。リールパート150は,リールドラム151を備える。リールパート150においては,リールドラム151に巻芯152を固定した上で,原紙を巻芯152に巻き付け,リールドラム151を回転させることで原紙を巻芯152に巻き取る。これにより,原紙がロール状に巻取られた原反ロールを得ることができる。
【0027】
本実施形態では,抄紙機100のカレンダパート140とリールパート150の間に,欠陥検査装置200が備え付けられている。欠陥検査装置200は,衛生用紙の原紙の一面側(表面側)に紙面と対面するように設置された撮影装置211(カメラ)と,この撮影装置211と有線又は無線で接続された画像解析装置220を備える。さらに,欠陥検査装置200は,撮影装置211とともに衛生用紙の原紙の一方面側(表面側)に配置された複数の光源212,213と,衛生用紙の原紙の他方面側(裏面側)に配置された白色部材214を備える。抄紙機100は,カレンダパート140からリールパート150の間,特に撮影装置211と原紙が対面している部分において,この原紙を一定速度で一定方向に向かって搬送している。また,原紙の一方面側(表面側)は光源212,213によって照明されており,紙面上で反射した光が撮影装置211に導入される。このように,撮影装置211は,光源212,213からの照射光のうち原紙の紙面で反射した光を撮像することで,撮影画像を取得する。撮影装置211によって取得された衛生用紙の撮影画像は,画像解析装置220に入力され,この画像解析装置220において衛生用紙の紙面上に欠陥が生じているかどうかの解析が実行される。また,画像解析装置220は,撮影画像に含まれる紙面上の欠陥の種別を判定する処理を行う。
【0028】
図2は,第1の実施形態に係る欠陥検査装置200について,撮影装置211,光源212,213,及び白色部材214の配置例を示している。図2に示されるように,衛生用紙Sの表面側(一方面側)に,撮影装置211及び複数の光源212,213が配置され,衛生用紙の裏面側(他方面側)に,白色部材214が配置される。また,図2では,衛生用紙S上に生じた欠陥を符号Dで示している。欠陥の例としては,汚れ,穴や,スジ,異物等など,衛生用紙の販売に適さない品質上の欠陥が挙げられる。
【0029】
撮影装置211は,静止画又は動画の画像データを取得するためのカメラである。撮影装置211によって取得された画像データは,画像解析装置220(図3参照)へと送信され欠陥検出のための所定の画像解析が行われる。カメラは,例えば,レンズ,メカシャッター,シャッタードライバ,CCDイメージセンサユニットやCMOSイメージセンサユニットといった光電変換素子,光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP),ICメモリなどで実現される。なお,カメラは,静止画を撮影するものであってもよいし,所定のフレームレートの動画を撮影するものであってもよい。
【0030】
撮影装置211は,その撮像面(レンズ)が衛生用紙Sの紙面に対してほぼ平行に配置されることが好ましい。このため,撮影装置211の撮像面から垂直に直線を引くと,その直線は紙面に対してほぼ垂直に交差する。これにより,撮影装置211によって衛生用紙Sの紙面を歪みなく撮影することができる。図2では,撮影装置211の撮影範囲を破線で示している。
【0031】
光源212,213は,撮影装置211によって撮影される衛生用紙Sの撮影範囲を照明するライトである。光源212,213は,白色光を照射するものであることが好ましい。光源212,213の例としては,蛍光灯,LED(発光ダイオード),OLED(有機発光ダイオード),ランプ,アーク灯,白熱電球などが挙げられる。また,光源212,213は,スポット光源,平行光源(面光源),又は点光源を採用することができるが,その照明範囲(スッポットサイズ)や光軸を制御しやすいスポット光源を採用することが最も好ましい。スポット光源を利用すれば,光源から限定された方向と範囲に光を照射することができる。図2では,各光源212,213の照明範囲を破線で示し,各光源212,213の光軸を一点鎖線で示している。なお,「光軸」とは,光源の発光部分の中心を通り,発光面に対して垂直な直線を意味する。図2等で示した例では,各光源212,213としては,光軸を中心として照明範囲(直径)がテーパー状に広がるスポット光源が採用されている。なお,スポット光源としては,照明範囲が無限遠に同一のものを用いることもできる。
【0032】
図2に示されるように,各光源212,213は,撮影装置211の撮影範囲を含む範囲を照明するように配置されている。すなわち,本実施形態において,撮影装置211は,衛生用紙Sの表面の被検査部位を撮影し,各光源212,213は,撮影装置211が撮影している衛生用紙Sの表面の被検査部位を照明する。このため,光源212,213から照射されて衛生用紙Sの表面で反射した光が撮影装置211に導入されるようになっている。このようにして,撮影装置211は,「光反射方式」で衛生用紙Sの撮影画像を取得する。
【0033】
また,図2に示されるように,衛生用紙Sの長手方向断面視において,各光源212,213から射出された光の光軸は,衛生用紙Sの紙面に対して所定角度θで傾斜している。主光源212,213の光軸の傾斜角度θは,例えば30度~90度,35度~85度,又は45度~80度であることが好ましい。なお,図2に示した例では,第1の光源212と第2の光源213の光軸の傾斜角度を等角としているが,それぞれの光源の光軸の傾斜角度は異なっていてもよい。
【0034】
また,衛生用紙Sの長手方向断面視において,第1の光源212と第2の光源213は,撮影装置211を挟むように配置されている。すなわち,撮影装置211は,衛生用紙の搬送方向において,第1の光源212と第2の光源213の間に位置している。また,撮影装置211は,各光源212,213よりも高い位置に設置される。すなわち,撮影装置211から衛生用紙Sの紙面までの距離は,各光源212,213から衛生用紙Sの紙面までの距離よりも離れていることとなる。
【0035】
このように,「光反射方式」で衛生用紙Sの紙面を撮影する場合,上記のように複数の光源212,213を配置することで,衛生用紙Sの紙面と撮影装置211の間に存在する浮遊物(例えば紙粉)を複数の方向から照らすことができるため,紙面上に投影される浮遊物の影の色を薄くすることができる。これにより,撮影装置211によって取得した撮影画像を解析して,紙面上に付着した欠陥をより明確に検出することができる。
【0036】
図2に示されるように,白色部材214は,撮影装置211と光源212,213とは反対面側(裏面側)に配置される。白色部材214は,撮影画像中における衛生用紙Sの紙面の明度を高くすることを目的として,白色の衛生用紙Sの裏面側に配置される。具体的には,光源212,213からの照射光は衛生用紙Sの紙面を部分的に透過することになるが,その透過光は衛生用紙Sの裏面側に配置されている白色部材214に到達する。白色部材214は,少なくともその衛生用紙S側の表面が白色であるため,透過光の全周波数成分を反射する。このため,白色部材214が裏面側に配置された衛生用紙Sの被検査部位は撮影画像中における明度が高くなる。本実施形態では,白色部材214として,衛生用紙Sの紙面と平行な面を有する板状の部材が用いられている。白色部材214を構成する材料は特に限定されず,紙製,プラスチック製,金属製のいずれであってもよい。
【0037】
また,図2に示した実施形態において,白色部材214は,衛生用紙Sの紙面に対して平行に形成された白色の平面部を含み,この平面部は,シート状物から一定間隔Gだけ離れた位置に位置している。白色部材214の平面部と衛生用紙Sの紙面の間の間隔Gは,白色部材214が衛生用紙の搬送を阻害しない程度になるべく近い間隔であることが好ましい。具体的に説明すると,図2では,衛生用紙Sが存在しないことを想定した場合に,撮影装置211による白色部材214の平面部上の撮影範囲を符号Pで示し,また,第1の光源212と第2の光源213からの照射光が白色部材214の平面部上で重なる範囲を符号Lで示している。このとき,衛生用紙Sの搬送方向(図の左右方向)において,照射光が重なる範囲Lの長さは,撮影範囲Pの長さに対して,80%以上又は90%以上であることが好ましく,100%以上であることが特に好ましい。つまり,範囲Lの長さは撮影範囲Pの長さ以上(L≧P)であることが特に好ましい。このような条件を満たすように,白色部材214と衛生用紙Sの間隔Gを設定すればよい。例えば間隔Gは,1cm~20cm又は2~10cmとすることが好ましい。このように,白色部材214の平面部上において,光源212,213からの照射光が重なる範囲を撮影装置211によって撮影することで,撮影画像に写る衛生用紙Sの紙面の明度を効果的に高くすることができる。なお,このようなプレート状の白色部材214は,シート状物と接触するもの(すなわち間隔Gがゼロ)であっても構わない。この場合,シート状物がプレート状の白色部材214に接触した際に破れたり皺が寄ったりしないように,白色部材214のうちのシート状物に接触する部位を丸めたり滑らかな材質で構成すればよい。
【0038】
また,図示は省略するが,欠陥検査装置200は,白色部材214の平面部に付着する塵芥(例えば紙粉など)を除去する除去手段をさらに備えていてもよい。除去手段としては,衛生用紙の紙面と白色部材214の平面部の間に連続的又は断続的に空気を送り込む送風装置や,白色部材214の平面部を自動又は手動で拭掃するブラシやワイパーを用いることができる。
【0039】
図3は,撮影装置211に接続された画像解析装置220の機能構成例を示している。画像解析装置220は,前述した構成によって撮影装置211によって取得された衛生用紙の画像を解析して,当該衛生用紙の欠陥の有無を検査する。画像解析装置220には一般的なコンピュータを用いればよい。画像解析装置220は,撮影装置用のインターフェースを備えており,撮影装置211が取得した画像データが入力される。画像解析装置220は,制御演算部221,記憶部222,操作部223,及び表示部224を備える。制御演算部221は,各要素222~224を制御するとともに,記憶部222に記憶されている欠陥検査用のコンピュータプログラムに従って,撮影装置211から取得した画像データの画像解析処理を行う。制御演算部221は,CPU又はGPUといったプロセッサにより実現できる。記憶部222は,HDD又はSDDといった不揮発性メモリや,RAM又はDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。操作部223は,マウス,キーボード,タッチパネル,マイクなどの入力装置により構成され,人による操作情報を受け付ける。表示部224は,液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような表示装置であって,撮影装置211から取得した画像データを表示することとしてもよい。なお,表示部224は,操作部223と一体となってタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。
【0040】
画像解析装置220の制御演算部221は,基本的に,撮影装置211によって取得された撮影画像を解析して,衛生用紙の表面上に欠陥があるか否かを判断する。例えば,画像解析装置220は,衛生用紙の画像データの画素又は画素群ごとに明度(濃度)を測定し,正常な明度範囲よりも暗い部分(又は明るい部分)があったときに,その画像データの衛生用紙に欠陥があると判断する。例えば,衛生用紙に異物(例えば煤汚れや油汚れ)が付着している場合,その異物部分については明度が暗く表れる。このように,制御演算部221は画像データの明度に異常が発生している部位を,衛生用紙の欠陥部位であると判断する。
【0041】
例えば,図4に示されるように,衛生用紙の紙面上に汚れ等の異物が付着している場合,その異物が付着した領域は明度が低くなる。このように,紙面の通常の明度と比較して,それよりも明度が低い部位に欠陥が付着していると判断することができる。例えば,紙面の明度と同程度の明度範囲を正常とし,この正常な明度範囲を下回る明度の欠陥を異物と判断すればよい。
【0042】
図8に示したように,従来の反射方式(衛生用紙の裏面側に白色部材が配置されていない場合)で撮影した撮影画像でも,衛生用紙がほぼ白色のものであることを想定したときに,汚れは衛生用紙よりも明度の低い暗色に写る。ただし,従来の反射方式では,衛生用紙に付着した汚れが比較的薄い色のものである場合,紙面と汚れのコントラスト(明暗差)が小さくなり,紙面上に付着した汚れを検出できない場合がある。一方で,図4に示したように,本発明の反射方式(衛生用紙の裏面側に白色部材を配置した場合)では,従来の反射方式(図8)に比べて,衛生用紙の紙面の明度を高くすることができる。このため,衛生用紙上の正常部位と汚れが付着した部位のコントラストが大きくなるため,その汚れの色が比較的薄い場合でっても,汚れが付着していることをより確実に検出することが可能となる。なお,衛生用紙が白色であり,光源212,213から白色光を照射する場合に,ここで説明した本発明の効果はより顕著なものとなる。
【0043】
[2.第2の実施形態]
図5は,第2の実施形態に係る欠陥検査装置200を示している。以下の実施形態については,前述した第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し,異なる構成について説明する。
【0044】
第2の実施形態では,白色部材214として,衛生用紙の搬送方向における断面が曲面状に形成された白色の曲面部を含むものが用いられている。また,白色部材214の曲面部は,衛生用紙の裏面に接触している。このため,衛生用紙は,その一部(具体的には被検査部位)が常に白色部材214の曲面部に接しながら長手方向に搬送されることとなる。なお,曲面部を有する白色部材214は,図5に示されるように断面が円弧状の板状部材であってもよいし,断面円形状の部材や,断面半円形状の部材,又は断面円筒形状の部材であってもよい。
【0045】
また,第2の実施形態では,複数の光源212,213がそれぞれ,衛生用紙と白色部材214の接触部位を照明するように配置されている。また,撮影装置211も同様に,衛生用紙と白色部材214の接触部位を撮影するように配置されている。これにより,撮影装置211は,「反射方式」で衛生用紙と白色部材214の接触部位の撮影画像を取得することができる。
【0046】
図5に示されるように,衛生用紙Sと白色部材214が密着しているため,衛生用紙Sの正常な紙面と汚れ等が付着した欠陥部位Dのコントラストをより高めることができる。また,白色部材214と衛生用紙が常に接触していることで,白色部材214の反射面に紙粉等が堆積しにくくなる。これにより,白色部材214の反射面が常にきれいな状態に保たれ,反射光の強度が維持される。
【0047】
[3.第3の実施形態]
図6は,第3の実施形態に係る欠陥検査装置200を示している。第3の実施形態では,白色部材214として,白色の周面を持つローラを採用している。ローラは,白色の周面が衛生用紙Sの裏面に接触し,この衛生用紙Sの搬送方向と同じ方向に回転する。このため,衛生用紙は,その一部(具体的には被検査部位)が常にローラの白色の周面に接しながら長手方向に搬送されることとなる。なお,ローラは,モータ等の駆動装置を備えて自らが能動的に回転する駆動ローラであってもよいし,衛生用紙Sの搬送に伴って受動的に回転する従動ローラであってもよい。また,第3の実施形態においても,複数の光源212,213がそれぞれ,衛生用紙とローラの接触部位を照明するように配置されている。また,撮影装置211も同様に,衛生用紙とローラの接触部位を撮影するように配置されている。これにより,撮影装置211は,「反射方式」で衛生用紙とローラ(白色部材214)の接触部位の撮影画像を取得することができる。
【0048】
[4.第4の実施形態]
図7は,第4の実施形態に係る欠陥検査装置200を示している。第4の実施形態において,欠陥検査装置200に含まれる撮影装置211と光源212,213は,リールドラム151に巻き取られている衛生用紙の最外層の一部を被検査部位とするように配置されている。すなわち,衛生用紙は,リールドラム151に取り付けられた巻芯152に巻き付けられてロール状に巻回されるものであり,その積層数は順次増加していく。撮影装置211は,順次拡径するロール状の衛生用紙の最外層の紙面の一部を撮影可能な位置に配置されており,光源212,213は,その撮影装置211の撮影範囲を照明可能な位置に配置されている。
【0049】
このようにして撮影装置211と光源212,213を配置することにより,図7の拡大図部分に示されるように,ロール状の衛生用紙の最外層の一部が被検査部位となる。また,ロール状の衛生用紙は,複数層に亘って白色の紙面が積層された状態となっている。このため,最外層の被検査部位の直下(内層側)に位置する一層又は複数層に亘る白色の紙面は,被検査部位の明度を高めるための「白色部材214」として機能する。つまり,衛生用紙をロール状に巻回してその最外層を被検査部位に設定することにより,異物付着等の検査対象である衛生用紙自身を白色部材214として利用することができる。
【0050】
また,衛生用紙は,図7に示した抄紙機100のように,その製造工程において一方向に搬送されることが一般的である。このため,例えば図4に例示したように,煤汚れや機械油の付着によって生じたシミなど異物は,衛生用紙の搬送方向に沿っておよそ直線状に付着しやすいという性質がある。このように汚れ等がおよそ直線状に付着している場合に,リールドラム151によって衛生用紙を巻き取ると,ロール状となった衛生用紙においては汚れ等が積層方向に重なることとなる。つまり,衛生用紙の最外層の紙面に汚れが付着している場合に,その下層の紙面にも同じ様な汚れが付着している場合が多く,汚れが上下層に亘って重なることとなる。そうすると,衛生用紙の最外層の被検査部位を撮影装置211によって撮影した場合に,撮影画像中には,複数層に亘って重なった汚れ等が色濃く映り込む。つまり,撮影画像中の紙面の正常な部位については,白色の紙面が複数層に亘って重なることで比較的明度が高くなり,撮影画像中の汚れが付着した部位については,有色の汚れが複数層に亘って重なることで比較的明度が低くなる。これにより,本実施形態によれば,衛生用紙の紙面におよそ直線状に付着した汚れ等の異物とそれ以外の正常部位とのコントラストがより大きくなるため,紙面上の汚れをより確実に検出することができる。特に,衛生用紙の一層のみでは検出しにくい薄い色の汚れであっても,それが複数層に亘って積層されることで撮影画像中の色の濃度が濃くなるため,異物として検出しやすくなる。
【0051】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0052】
100…抄紙機 110…ワイヤパート
111…ワイヤ 112…ヘッドボックス
113…フォーミングロール 114…ドライブロール
120…プレスパート 121…ドライヤフェルト
122…フェルトロール 130…ドライパート
131…ヤンキードライヤ 132…フード
133…ドクターブレード 140…カレンダパート
141…カレンダロール 142…受けロール
150…リールパート 151…リールドラム
152…巻芯 200…欠陥検査装置
211…撮影装置 212…第1の光源
213…第2の光源 214…白色部材
220…画像解析装置 221…制御演算部
222…記憶部 223…操作部
224…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8