(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】封止シート及び、樹脂組成物層を有するディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20240702BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240702BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240702BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240702BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L33/00 H
G09F9/33
G09F9/30 309
B32B27/00 B
C09K3/10 B
(21)【出願番号】P 2023202350
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤美
(72)【発明者】
【氏名】南方 克哉
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-116799(JP,A)
【文献】特開2023-012051(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038918(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0078395(US,A1)
【文献】特表2021-521655(JP,A)
【文献】特開2021-163963(JP,A)
【文献】特開2021-111774(JP,A)
【文献】国際公開第2022/025214(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/186728(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0105998(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 23/28 - 23/31
C09K 3/10 - 3/12
B32B 27/00 - 27/42
G09F 9/30 - 9/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロLEDを光源とするディスプレイに使用するマイクロLEDを封止するための封止シートであって、
前記封止シートは、第一フィルムと樹脂組成物層と第二フィルムとがこの順に配置されており、
前記第一フィルムは、前記樹脂組成物層と対向する面に剥離層を有しており、
前記樹脂組成物層の厚さTaは、2~100μmであり、
前記第二フィルムの厚さThは、12~188μmであり、
TaとThは、式(1)を満たし、
前記樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接の-50~80℃の範囲における最大値が0.6~2.2である封止シート。
式(1) 0.1≦Ta/Th≦2
【請求項2】
前記第二フィルムのヤング率は、1~6GPaである請求項1に記載の封止シート。
【請求項3】
前記第一フィルムの前記樹脂組成物層と接する面におけるISO 25178で規定された二乗平均平方根高さSqの、前記樹脂組成物層の厚さTaに対する割合が30%以下である請求項1に記載の封止シート。
【請求項4】
前記樹脂組成物層の鉛筆硬度が5B~2Hである請求項1に記載の封止シート。
【請求項5】
前記樹脂組成物層は、樹脂(A)を含み、
前記樹脂(A)は、アクリル樹脂(a1)、ウレタン樹脂(a2)および、エポキシ樹脂(a3)からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1~4いずれかに記載の封止シート。
【請求項6】
前記樹脂組成物層が着色剤(B)を含む、請求項5に記載の封止シート。
【請求項7】
前記樹脂組成物層が重合開始剤(C)を含む、請求項6に記載の封止シート。
【請求項8】
請求項5に記載の封止シートの樹脂組成物層を有するマイクロLEDを光源とするディスプレイ。
【請求項9】
以下の工程(1)~(6)を備える、マイクロLEDを光源とするディスプレイの製造方法。
(1)第一フィルムと封止層形成用の樹脂組成物層と第二フィルムとがこの順に配置されている、請求項1~4記載の封止シートを用意する工程、
(2)基板の一方の面に、複数のマイクロLEDが互いに間隔をあけて配置されている、封止対象を用意する工程、
(3)前記封止シートから第一フィルムを剥がし、封止層形成用の樹脂組成物層を露出する工程、
(4)前記複数のマイクロLEDを覆うように、露出した封止層形成用の樹脂組成物層を載置する工程、
(5)前記複数のマイクロLED同士の間に、封止層形成用の樹脂組成物層を流動させ充填する工程、
(6)第二フィルムを剥がす工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封止シートに関するものであり、詳しくはマイクロLEDを光源とするディスプレイに使用するマイクロLEDを封止するための樹脂組成物層を含む封止シート並びに前記樹脂組成物層が搭載されたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイはさらなる高性能化に向け、様々な発光素子を用いた開発が盛んに行われている。
具体的には、液晶や量子ドットなどを用いたバックライト式ディスプレイ、ミニ/マイクロLEDや有機ELなど自発光素子を用いたディスプレイ、プラズマディスプレイ、電気泳動ディスプレイなど、様々なディスプレイ仕様が研究されており、サイネージやテレビなどの大型ディスプレイ用途から、タブレット、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、ウェアラブル機器等の小型サイズまで幅広く活用が検討されている。特に、LEDを用いたディスプレイ開発は、日増しに進められており、特許文献1、2にはLED素子を封止する熱硬化性樹脂組成物が記載されている。特許文献3には、バリア層を加圧することで変形させ、マイクロLEDを封止するマイクロLED発光装置の製造方法が記載されている。次世代ディスプレイ技術として最も注目されているのがマイクロLEDディスプレイである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-12051号公報
【文献】国際公開第2021/200035号
【文献】特開2021-111774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年小型化が進んでいるLED素子においては、LED素子間の間隔や基板との距離がより狭くなりっており、特許文献1、2に記載される光半導体素子を封止するための樹脂シートは、耐熱性や取り扱い性に優れる一方で、樹脂の流動性が不足しており、マイクロサイズのLED素子に追従して空域を埋めること(埋め込み性)が十分ではない。LED素子と封止用樹脂組成物との間に空隙がある場合、空隙部にて光が屈折・反射し、光が混合することによってディスプレイの視認性に悪影響を及ぼす。
一方、特許文献3に記載の封止シートを用いてマイクロLEDを埋め込む場合、樹脂の不均一な流動によりマイクロLEDの一方向に応力がかかり、マイクロLEDが基板から動いてしまう位置ずれ(ダイシフト)が発生する。ダイシフトが発生した場合、マイクロLEDは発光不良となり、不良部分をリペアする工程が必要になるため、生産時間とコストが増加することが問題となっている。
【0005】
本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、マイクロLEDを光源とするディスプレイに適用した場合においても、埋め込み性とダイシフトの抑制(ダイシフト性)に優れる封止シート及び樹脂組成物層を有するディスプレイを提供することを課題とする。
また、更なる課題として、光の屈折・反射によってディスプレイの視認性低下を防ぐために光制御性に優れる封止シート及び樹脂組成物層を有するディスプレイの提供が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下に示す封止シートにより上記課題を解決できることを見出し、下記[1]~[8]の本発明を完成するに至った。
[1]:マイクロLEDを光源とするディスプレイに使用するマイクロLEDを封止するための封止シートであって、前記封止シートは、第一フィルムと樹脂組成物層と第二フィルムとがこの順に配置されており、前記第一フィルムは、前記樹脂組成物層と対向する面に剥離層を有しており、前記樹脂組成物層の厚さTaは、2~100μmであり、前記第二フィルムの厚さThは、12~188μmであり、TaとThは、式(1)を満たし、前記樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接の-50~80℃の範囲における最大値が0.6~2.2である封止シート。
式(1) 0.1≦Ta/Th≦2
[2]: 前記第二フィルムのヤング率は、1~6GPaである[1]に記載の封止シート。
[3]:前記第一フィルムの前記樹脂組成物層と接する面におけるISO 25178で規定された二乗平均平方根高さSqの、前記樹脂組成物層の厚さTaに対する割合が30%以下である[1]に記載の封止シート。
[4]:前記樹脂組成物層の鉛筆硬度が5B~2Hである[1]に記載の封止シート。
[5]: 前記樹脂組成物層は、樹脂(A)を含み、
前記樹脂(A)は、アクリル樹脂(a1)、ウレタン樹脂(a2)、エポキシ樹脂(a3)からなる群より選択される少なくとも1つを含む[1]~[4]いずれかに記載の封止シート。
[6]:前記樹脂組成物層が着色剤(B)を含む、[5]に記載の封止シート。
[7]:前記樹脂組成物層が重合開始剤(C)を含む、[6]に記載の封止シート。
[8]:[5]に記載の封止シートの樹脂組成物層を有するマイクロLEDを光源とするディスプレイ。
【発明の効果】
【0007】
本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、マイクロLEDを光源とするディスプレイに適用した場合においても、埋め込み性とダイシフトの抑制に優れる封止シート及び樹脂組成物層を有するディスプレイを提供することが可能となった。
また、本開示により、上記に加え、光の屈折・反射によってディスプレイの視認性低下を防ぐために光制御性に優れる封止シート及び樹脂組成物層を有するディスプレイの提供することも可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】封止シートの積層構成例を示す模式的断面図。
【
図2】発光素子を有する基板上の発光素子を封止する工程を示す模式的断面図。
【
図3】マイクロLEDの基板を模した試験基板の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の一例を説明するものである。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において実施される変形例も含まれる。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値、および上限値の範囲として含むものとする。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸をいう。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独でも2種以上を併用してもよい。なお、2種以上を併用する場合、含有率は合計値を用いる。
【0010】
[封止シートの形態]
本開示の封止シートは、
図1に示すように、は第一フィルムと樹脂組成物層と第二フィルムがこの順に配置されている。樹脂組成物層は複数設けることができる。
図1に示す3層構造をとる場合、第二フィルムに樹脂組成物層を形成した後、第一フィルムを貼り合わせる製造方法が好ましい。
封止シートを製造後、または封止シートを製造しながら、巻芯に封止シートをロール状に巻回することにより封止シートロールが得られる。巻き取りの長さは用途により設計し得る。生産性を高める観点からは50m以上であることが好ましく、100m以上であることがさらに好ましい。巻き取りの長さは、製造歩留まりの観点から10000m以下とすることが好ましい。封止シートをロール形態とする場合には、第一フィルム巻外側に設けることが好ましい。
【0011】
本開示の封止シートは、マイクロLEDを光源とするディスプレイに使用するマイクロLEDを封止するために用いる。
樹脂組成物層は、直接マイクロLEDに密着させて封止することが好ましい。マイクロLEDは、特に制限されないが、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、エポキシ、ポリイミド、ガラス、紙、布、アルミニウム、セラミックまたはポリエチレンテレフタレートなどの基板上に配置され、電極部位を有することが好ましい。マイクロLEDは単独または複数配置される。
【0012】
樹脂組成物層は、凹凸面に対する高い追従性を有しているため、マイクロLEDに追従してマイクロLEDの間を充填する使用方法が好適である。マイクロLED間に樹脂組成物層を充填することで、樹脂組成物層からなる封止層を形成する。封止層は隣接するマイクロLEDを固定し、落脱が発生することを防ぐ機能を持つ。特に、樹脂組成物層をマイクロLEDディスプレイパネルの封止層として使用することがさらに好ましい。
マイクロLEDとは、50μmもしくは100μm以下の微細なLED素子(チップ)である。このマイクロLEDを配線や回路を形成した基板に複数実装することで複数の光半導体素子を光源とするディスプレイが形成される。マイクロLEDは、GaAs、GaP、AlGaInP、InGaN等のLED素子、これを封止する封止樹脂、パッケージ基板、電極等から形成され、動作温度は25~60℃である。
以下、封止層を形成する工程の一例を、
図2を用いて説明する。
【0013】
工程(a):封止シートの載置工程
図2(a)に示すように、封止シートから第一フィルムを剥離し、樹脂組成物層を露出させてから、マイクロLEDを有する基板上に封止シートの樹脂組成物層を、マイクロLEDを直接覆うように載置する。
本明細書において、マイクロLEDの数は特に限定されない。ディスプレイ用途においては、ディスプレイサイズや画素数によって使用されるマイクロLEDの数が決定される。
また、マイクロLEDの発光色は特に限定されず、発色は例えば、赤色、緑色、青色が挙げられる。
マイクロLEDの大きさは、厚さが100μm以下、平面視の面積が40,000μm
2以下のものが好ましく、厚さが50μm以下、平面視の面積が10,000μm
2以下のものがより好ましく、厚さが20μm以下、平面視の面積が2,500μm
2以下のものがさらに好ましい。
基板上に載置するマイクロLED同士の間隔は、例えば、10~5,000μmである。赤色、緑色、青色のマイクロLEDをセットで1画素として基板上に載置する場合、画素同士の間隔は例えば10~2,000μmであって、20~1,800μmが好ましく、500~1,500μmがより好ましい。1画素中におけるマイクロLED同士の間隔は、例えば、10~200μmであって、10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。
【0014】
工程(b):プレス工程
図2(b)に示すように、プレスによって樹脂組成物層を流動させ、マイクロLEDの周囲や、マイクロLED間に充填する。マイクロLEDの周囲や、マイクロLED間に充填した樹脂組成物層は封止層となる。プレス方法は特に限定されないが、熱プレス、真空プレスが好ましい。プレス時の温度は、樹脂組成物層の充填性の観点から、20~200℃が好ましく、30~150℃がより好ましく、40~130℃がさらに好ましく、60~110℃が最も好ましい。
マイクロLEDや被着体との密着性を高めるために、プレス後、さらに加熱エージングしてもよい。加熱温度は40~250℃が好ましく、80~220℃がより好ましく、100~190℃がさらに好ましい。加熱時間は30~300分が好ましく、60~240分がより好ましく、90~180分がさらに好ましい。上記の加熱温度、加熱時間とすることで、樹脂組成物層の残留応力を取り除き、密着面を平滑化することができる。加熱エージングは後述する工程(c)の後に実施してもよい。第二フィルムは、加熱エージング前に剥がしても良く、加熱エージング後に剥がしても良い。
【0015】
工程(c):エッチング工程
工程(c)では必要に応じてエッチングを行い、光半導体素子上の封止層を取り除く、または、薄膜化しても良い。工程(c)を行う場合は、第二フィルムを剥離した後に行うことが好ましい。過剰な封止層を取り除くことによって、マイクロLEDの輝度を向上し、発光時の視認性を確保する。エッチング後の封止層の厚さは、
図2(c-1)に示すようにマイクロLEDの厚さと同程度か、
図2(c-2)に示すようにマイクロLEDの厚さ以下が好ましい。なお、マイクロLED上から封止層を完全に除去せずとも、実質的に取り除けていればよく、多少の薄膜が残存した状態でもよい。尚、輝度が十分確保可能な場合は工程(c)を省いても良い。
エッチング方法は、特に限定されないが、薬剤を用いた化学的研摩などのウェットエッチング法や、研磨材を用いた物理的研摩、レーザエッチング、アルゴンプラズマや酸素プラズマを利用したプラズマエッチング、イオンビームエッチングなどのドライエッチング法が好ましい例として挙げられる。表面の凹凸を減少させる観点から、プラズマエッチングや、ウェットエッチング法とドライエッチング法を併用することが好ましい。
また、プラズマエッチングの条件としては、例えば、異方性プラズマ装置にて、CF
4/O
2/N
2の混合ガスを用い、出力1500~3000W、180~600秒の条件でドライエッチングすればよい。この際、CF
4のガス供給量としては、例えば50~100sccmであり、O
2のガス供給量としては、例えば500~1000sccm、N
2のガス供給量としては、例えば50~100sccmとすればよい。
【0016】
上記の通り工程(a)~(c)を経て、本開示の封止シートは樹脂組成物層から封止層を形成できる。
次に、本開示の封止シートの構成成分について、好ましい例を挙げながら詳細に説明する。
【0017】
[第一フィルム]
第一フィルムは特に制限はされないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。ハンドリングの観点から、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムが好ましい。
【0018】
第一フィルムは、前記樹脂組成物層と対向する面に剥離層を有している。剥離層は、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂などの剥離剤をフィルムに塗布して形成することが好ましく、ハンドリング(泣き別れ防止)の観点からシリコーン樹脂を用いた剥離層がより好ましい。
第一フィルムの剥離力Plは、0.1~3gf/20mmが好ましく、0.3~2gf/20mmがより好ましく、0.5~1gf/20mmがさらに好ましい。
第一フィルムの剥離力Plは、剥離層の離型処理により調整することができる。例えば、剥離剤の種類、剥離剤の塗布量、離型層の表面粗さにより調整することができる。剥離力の値を小さくしたい場合には、表面粗さを粗くする、剥離剤の塗布量を多くする等の処理が有効であり、剥離力の値を大きくしたい場合には、その逆に調整すればよい。
第一フィルムの剥離力Plは、例えば封止シートの第二フィルムをSUS板に貼付し、当該樹脂組成物層から第一フィルムを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離することで測定できる。
第一フィルムは、剥離層の他に機能層を有していてもよい。機能層としては、具体的に帯電防止層、ブロッキング防止層などが例示できる。
【0019】
第一フィルムの厚さTlは2~250μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~60μmがさらに好ましい。第一フィルムに剥離層や機能層を設けた場合、厚さTlは剥離層と剥離層を含む値である。上記範囲とすることで、第一フィルムのうねりを樹脂組成物層に転写することを制御し、均一な樹脂組成物層を形成することができる。
第一フィルムは、樹脂組成物層と直接積層されていることが好ましい。第一フィルムが樹脂組成物層と直接積層されている場合、第一フィルムの樹脂組成物層と接する面において、ISO 25178に準じた面粗さの二乗平均平方根高さSqの、樹脂組成物層の厚さTaに対する割合が30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、7.5%以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、樹脂組成物層に転写される表面粗さを制御し、後述するプレス工程にて樹脂組成物層が十分に平滑化することで、ダイシフト性と密着性が良好となる。前記二乗平均平方根高さSqは、例えば後述する実施例記載の方法で測定することができる。
二乗平均平方根高さSq値は0.01~2μmが好ましく、0.04~1.5μmがより好ましく、0.1~1.5μmがさらに好ましい。
また、前記二乗平均平方根高さSqは、第一フィルムの剥離層面の離型処理により調整することができる。例えば、剥離剤の種類、剥離剤の塗布量、剥離剤の塗布方法により調整することができる。二乗平均平方根高さSqの値を大きくしたい場合には、剥離剤の塗布量を減らす、剥離剤塗布後の乾燥を速める、剥離剤にフィラーを含有させる等の処理が有効であり、二乗平均平方根高さSqの値を小さくしたい場合には、その逆に調整すればよい。また、所定の二乗平均平方根高さSqを有するフィルムやキャリア材を用いて凹凸を転写する方法も適用することができる。
【0020】
[第二フィルム]
第二フィルムは特に制限はされないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。ハンドリングの観点から、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムが好ましい。
第二フィルムは、樹脂組成物層と直接積層されていることが好ましい。
第二フィルムのヤング率は、1~6GPaであることが好ましく、2~5GPaであることがより好ましく、3~5GPaであることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、後述するプレス工程にて樹脂組成物層に均一に圧力を加えながら樹脂組成物層の流動を制御し、埋め込み性が良好となる。
第二フィルムのヤング率は結晶状態と配向方向によって調整することができ、結晶化度を高くすることや、ランダム非晶鎖を配向非晶鎖へ転換することで、高いヤング率を発現ことができる。ヤング率を低くする場合はその逆に調整すればよい。ヤング率を上記範囲とする際、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムを用いることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましい。
第二フィルムのヤング率は、例えば後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0021】
第二フィルムは、前記樹脂組成物層と対向する面に剥離層を有することが好ましい。剥離層は、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂などの剥離剤をフィルムに塗布して形成することが好ましく、ハンドリング(泣き別れ防止)の観点からシリコーン樹脂を用いた剥離層がより好ましい
第二フィルムの剥離力Phは、0.5~5gf/20mmが好ましく、0.8~4gf/20mmがより好ましく、1.0~3gf/20mmがさらに好ましい。
第二フィルムの剥離力Phは、剥離層の離型処理により調整することができる。例えば、剥離剤の種類、剥離剤の塗布量、離型層の表面粗さにより調整することができる。剥離力の値を小さくしたい場合には、表面粗さを粗くする、剥離剤の塗布量を多くする等の処理が有効であり、剥離力の値を大きくしたい場合には、その逆に調整すればよい。
第二フィルムの剥離力Phは第一フィルムの剥離力Plより大きいことが好ましい。具体的には、Ph/Plの値が1.1~11であることがより好ましく、1.1~6であることがさらに好ましい。
第二フィルムの剥離力Phは、例えば、封止シートから第一フィルムを剥離した後に、露出した前記樹脂組成物層をSUS板に貼付し、当該樹脂組成物層から更に前記第二フィルムを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離することで測定できる。
第二フィルムは、剥離層の他に機能層を有していてもよい。機能層としては、具体的に帯電防止層、ブロッキング防止層などが例示できる。
第二フィルムの厚さThは12~188μmであり、12~100μmがより好ましく、20~60μmがさらに好ましい。第二フィルムに剥離層や機能層を設けた場合、厚さThは剥離層と機能層を含む値である。上記範囲とすることで、後述するプレス工程にて樹脂組成物層に加わる圧力伝達を制御し、樹脂組成物層が均一に流動することで、埋め込み性とダイシフト性と密着性が良好となる。
【0022】
[樹脂組成物層]
樹脂組成物層は、樹脂(A)を含有することが好ましく、着色剤(B)および/または重合開始剤(C)を含有することがより好ましく、その他成分を含有しても良い。
本開示において、樹脂(A)とは、バインダーとして物と物を接着し、固定する機能を持った物質である。具体例として、マイクロLEDを有する基板やマイクロLEDに接着し、固定する機能が挙げられる。
【0023】
本開示の樹脂組成物層は、動的粘弾性測定により得られる損失正接の-50~80℃の範囲における最大値(tanδ最大値)が0.6~2.2であり、0.9~1.7がより好ましく、1.1~1.5がさらに好ましい。
tanδ最大値は、例えばtanδ曲線が極大となるときの損失正接(tanδ)の値が挙げられる。なお、極大値が2つ以上ある場合も最も大きい損失正接(tanδ)の値のことを示す。
tanδ最大値が0.6以上の場合、プレス工程において樹脂組成物層にかかる圧力の伝達性が良好となり、マイクロLEDにかかる応力が小さくなるため、ダイシフト性が向上する。tanδ最大値が2.2以下の場合、プレス工程において樹脂組成物層にかかる圧力の吸収性が良好となり、マイクロLEDの凹凸に追従して埋め込み性が向上する。
なお、本開示のtanδ最大値は、樹脂(A)の種類や組成、着色剤(B)の種類、分散状態や含有量、重合開始剤(C)の種類や含有量、その他成分である架橋剤やモノマーの種類や含有量によって調整することができる。
樹脂(A)として(メタ)アクリル樹脂(a1)を含有する場合、ウレタン樹脂(a2)を含有する場合よりtanδ最大値を高くすることができるが、樹脂組成によってはこの限りでない。樹脂(A)が(メタ)アクリル樹脂(a1)を含有する場合、メタクリル酸メチルなどメタクリル酸アルキルエステルの含有量を増やすことで、tanδ最大値を低くすることができ、tanδ最大値を高くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
着色剤(B)としてカーボンブラックを含有する場合、金属酸化物顔料を含有する場合よりtanδ最大値を低くすることができるが、粒子の分散状態によってはこの限りでない。着色剤(B)がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量を増やすことで、tanδ最大値を低くすることができ、tanδ最大値を高くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
重合開始剤(C)として熱重合開始剤を含有する場合、含有量を増やすことでtanδ最大値を高くすることができ、tanδ最大値を低くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
樹脂組成物層がその他成分として、架橋剤を含有する場合、含有量を増やすことでtanδ最大値を高くすることができ、tanδ最大値を低くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
粘度の低いモノマーの含有量を増やすことで、tanδ最大値を低くすることができ、tanδ最大値を高くしたい場合には、その逆に調整すればよい。粘度の低いモノマーの具体例としては1,6-ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。
【0024】
また、本開示の樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる40℃の損失正接(tanδ40)が0.6~2.0であることが好ましく、0.8~1.9であることがより好ましく、1.1~1.5であることがさらに好ましい。tanδ40を上記範囲とすることで、プレス工程において樹脂組成物層にかかる圧力が適度に伝達し、埋め込み性とダイシフト性が向上する。
プレス工程の好ましい温度帯である20~200℃の範囲における樹脂組成物層にかかる圧力の拡散性を制御するために、40℃の損失正接(tanδ40)を上記範囲に調節することで、20~40℃の損失正接と40~200℃の損失正接を偏りなくバランスをとることができる。
tanδ40は、樹脂(A)の種類や組成、着色剤(B)の種類や分散状態によって調整することができる。具体的にはtanδピーク強度と同様の調整方法が挙げられる。
【0025】
また、本開示の樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接のピークトップ温度(tanδピーク温度)とは、tanδ曲線が極大となるときの温度のことであり、ピークが2つ以上ある場合は最も低温側のピーク温度のことを示す。tanδピーク温度は-30~70℃であることが好ましく、-20~50℃であることがより好ましく、-10~30℃であることがさらに好ましく、-10~10℃であることが最も好ましい。
tanδピーク温度が上記範囲にあることで、加熱エージング工程にて樹脂の残留応力が十分に取り除くことができるため、被着体に対する密着性が向上する。
なお、本開示のtanδピーク温度は、樹脂(A)の種類や組成によって調整することができる。樹脂(A)が(メタ)アクリル樹脂(a1)を含有する場合、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が高いモノマーの含有量を増やすことで、tanδピーク温度を高くすることができ、tanδピーク温度を低くしたい場合には、その逆に調整すればよい。本開示におけるホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、POLYMER HANDBOOK, 1999, FOURTH EDITIONに記載の値を用いることができる。
【0026】
上述の損失正接(tanδ)は、周波数10Hz、-50~150℃における引張モードの動的粘弾性測定により得られる損失弾性率/貯蔵弾性率の比である。
本開示における動的粘弾性と損失正接(tanδ)は、後述する実施例記載の方法にて測定した。なお、樹脂組成物層が重合開始剤(C)、架橋剤のいずれかを含む場合、測定時の重合/架橋反応は未完了状態である。また、上記測定は、厚さ50μm以上のシートを測定することが好ましく、これに満たないシートを測定する場合は、第一フィルムを有さない封止シート2組を用意し、樹脂組成物層同士をラミネーターで貼り合わせ、第二フィルム/樹脂組成物層/第二フィルムの積層体を作製し、さらに前述の積層体の一方面の第二フィルムを剥離して、封止シートの樹脂組成物層を繰り返し貼り合わせることで、50μm以上となるように積層した後に、動的粘弾性を測定してもよい。
【0027】
樹脂組成物層の厚さTaは、埋め込み性とダイシフト性の観点から、2~100μmであり、5~60μmが好ましく、10~40μmがより好ましく、10~30μmがさらに好ましく、遮光性の観点から、13~30μmが最も好ましい。
樹脂組成物層の厚さTaを上記範囲とすることで、プレス工程において樹脂組成物層に加えられた圧力を適度に分散し十分に均一化するため、埋め込み性とダイシフト性が向上する。樹脂組成物層は単層でも、2層以上の積層のいずれの形態でもよく、2層以上の場合は合計の厚さのことを指す。
樹脂組成物層の厚さTaは、後述する樹脂組成物層の形成方法によって調整することができる。
本開示における厚さTaは、後述する実施例記載の方法にて測定する。
【0028】
樹脂組成物層の厚さTaは、第二フィルムの厚さThに対する比率を表す式(1)0.1≦Ta/Th≦2を満たし、0.2≦Ta/Th≦1.5がより好ましく、0.2≦Ta/Th≦1.2がさらに好ましい。
上記範囲とすることで、後述するプレス工程にて樹脂組成物層に加わる圧力伝達を制御し、樹脂組成物層が均一に流動することで、埋め込み性とダイシフト性が良好となる。
【0029】
樹脂組成物層の鉛筆硬度は、埋め込み性とダイシフト性の観点から、5B~2Hが好ましく、4B~Hがより好ましく、3B~Fがさらに好ましい。樹脂組成物層の鉛筆硬度を上記範囲とすることで、プレス工程において樹脂組成物層に加えられた圧力を適度に分散し十分に均一化するため、埋め込み性とダイシフト性が向上する。
樹脂組成物層の鉛筆硬度は、樹脂(A)の種類や、重合開始剤(C)の含有量、モノマーの含有量によって調整することができる。重合開始剤(C)の含有量を増やすと硬くすることができ、モノマーの含有量を増やすと柔らかくすることができる。
本開示における樹脂組成物層の鉛筆硬度は、後述する実施例記載の方法によって測定した。なお、樹脂組成物層が重合開始剤(C)、架橋剤のいずれかを含む場合、測定時の重合/架橋反応は未完了状態である。
【0030】
[樹脂組成物層の形成方法]
樹脂組成物層の形成方法は、特に限定されないが、好適な例として樹脂組成物層を構成する成分に任意の溶剤を添加した樹脂組成物を塗工して樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。溶剤の添加は塗工に適した粘度水準に調整することと、膜厚を調整することを目的とする。
塗工には、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、リップコーター、リバースコーター、グラビアコーター、バーコーター、カーテンコーター、ディップコーティング、スピンコーティング、シルクスクリーン、キャスティングなどの公知の塗工機や手法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる溶剤は、塗工後、乾燥工程により除去することができる。
好ましい実施形態としては、樹脂組成物を第一フィルム、第二フィルムなどの支持体に塗布した後、塗布膜を熱風オーブン、赤外線ヒーターなどを用いて加熱乾燥することで、支持体の一方の面上に樹脂組成物層を形成することができる。さらに、樹脂組成物層の架橋密度を上げるために、例えば特定の温度条件下にて静置するようなエージング処理や、UV等を照射することが好ましい。また、塗工後に第一フィルム、第二フィルム、基材などの別の支持体にラミネーターを用いて転写しても良い。
【0031】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、溶剤と樹脂組成物層を構成する成分とを攪拌しながら混合して得ることができる。
樹脂組成物層を構成する成分としては、樹脂(A)を含有することが好ましく、着色剤(B)および/または重合開始剤(C)を含有することがより好ましく、その他成分を含有しても良い。任意の溶剤は、樹脂組成物層を構成する成分を混合する際に、粘度など加工適正を調整する目的で用いる。例えば、エステル系、エーテルエステル系、エーテル系、アルコール系、芳香族系など樹脂(A)を相溶可能なものを適宜用いることができる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、N-メチル-2-ピロリドンなどが好適例として挙げられる。
攪拌は、公知の攪拌装置を使用でき、ディスパー、ミキサー、シェイカー、ホモジナイザーなどが好ましい。
樹脂組成物を得るために、第一に、樹脂(A)や任意の溶剤に着色剤(B)を混合した混合物を作製し、第二に、樹脂(A)、重合開始剤(C)、その他成分を必要に応じて添加する二段階以上の製造工程を取っても良い。
【0032】
[樹脂(A)]
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は100万以下が好ましい。30万以下がより好ましく、15万以下がさらに好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を100万以下とすることで、加熱エージング工程における分子鎖の絡まりがほぐれやすくなり、密着性が向上する。
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の下限は特に限定されないが、400以上であることが好ましく、900以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましく、5000以上であることがより一層好ましく、1万以上であることが最も好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を400以上とすることで、樹脂組成物層の塗膜強度が向上する。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。本開示における重量平均分子量(Mw)とは、後述する実施例記載の方法にて測定した。
【0033】
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~80℃が好ましく、-20℃~60℃がより好ましく、-15℃~40℃がさらに好ましく、-10℃~20℃がより一層好ましく、-10℃~10℃が最も好ましい。上記範囲とすることで、プレス工程後の樹脂(A)の残留応力が少なくなるため、密着性が好適になる。
本開示における樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂(A)が熱や光による重合/架橋反応が起こる場合、測定時の重合/架橋反応は未完了状態である。本開示における樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載の方法で測定したものである。
【0034】
樹脂(A)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂(A)の含有率は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、10~98質量%であることが好ましく、25~95質量%であることがより好ましく60~90質量%であることがさらに好ましい。樹脂(A)を2種類以上含む場合は、いずれの樹脂(A)も含有率が5質量%以上であることが好ましく、合計の含有率が上記の範囲であることが好ましい。
樹脂(A)の含有率を上記範囲とすることで、着色剤(B)との相溶性が良好となり、遮光性が向上する。
【0035】
樹脂(A)の好適例は、(メタ)アクリル樹脂(a1)、ポリウレタン樹脂やポリウレタンウレア樹脂などのウレタン樹脂(a2)、エポキシ樹脂(a3)、マレイン酸樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、縮合型ポリエステル樹脂、付加型ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ビニル系樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)等が挙げられる。埋め込み性の観点から、(メタ)アクリル樹脂(a1)、ウレタン樹脂(a2)、エポキシ樹脂(a3)のうちの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。さらに、密着性の観点から、(メタ)アクリル樹脂(a1)を含んでいることがより好ましい。
【0036】
樹脂(A)は、熱や光による重合/架橋反応に利用できる官能基を1以上有することが好ましい。官能基は、 樹脂(A)同士や、後述する重合開始剤(C)、架橋剤との反応性により適宜選択すれば良く、自己架橋可能な官能基であっても良い。
官能基は、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シラノール基、(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等が挙げられる。ラジカル重合性官能基である(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基が好ましい。
【0037】
[(メタ)アクリル樹脂(a1)]
本開示において、(メタ)アクリル樹脂(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合して得られるアクリル共重合体であり、2~20,000個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの好適例として(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが例示できる。重合/架橋反応に利用できる官能基を導入する場合には、官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合して得られる(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
なお、本開示の(メタ)アクリル樹脂(a1)について、1分子中にウレタン結合を2つ以上含む化合物と、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物は除く。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸をエステル化してアルキル基またはシクロアルキル基を導入した化合物であり、アルキル基またはシクロアルキル基は、直鎖、分岐鎖、または環状の飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。飽和脂肪族炭化水素基は炭素数1~20の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらの中でも特に、着色剤(B)の分散性の観点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルを用いることが特に好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルを用いることが最も好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル樹脂(a1)100質量%に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構造単位は、密着性の観点から1~100質量%であることが好ましく、20~99.5質量%であることがより好ましく、80~99%であることがさらに好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル樹脂(a1)は官能基含有モノマーに由来する構造単位、及び/又は不飽和結合を有することが好ましい。
官能基含有モノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマーが例示できる。官能基含有モノマーを含有することにより樹脂(A)の凝集力が向上し、強靱な樹脂組成物層が得られる。特に、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。
【0041】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸p-カルボキシベンジル、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸およびイソクロトン酸が例示できる。これらの中でも、密着性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0042】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレートが例示できる。これらの中でも、密着性の観点から、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルがより好ましい。
【0043】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルが例示できる。
【0044】
(メタ)アクリル樹脂(a1)に不飽和結合を導入することを目的として、エポキシ基含有モノマーも用いることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが例示できる。これらの中でも、反応性の観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルを含むことが好ましい。さらに、エポキシ基含有モノマーのエポキシ基と(メタ)アクリル酸などのカルボキシ基含有モノマーのカルボキシ基を反応させて(メタ)アクリル樹脂(a1)に(メタ)アクリロイル基などの不飽和結合を導入することが好ましい。このとき、エポキシ基は1分子中に1個以下であり、エポキシ基は残存していないことが好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル樹脂(a1)100質量%に対し、官能基含有モノマー由来の構造単位の合計は、0.1~20質量%であることが好ましい。前記範囲とすることにより、凝集力を調整することができる。
(メタ)アクリル樹脂(a1)100質量%に対し、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は0.1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで密着性を高めることができる。
(メタ)アクリル樹脂(a1)100質量%に対し、水酸基含有モノマー由来の構成単位は0.1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで密着性を高めることができる。
【0046】
(メタ)アクリル樹脂(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能基含有モノマーと共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位が含まれていてもよい。例えば、アルキレンオキシ基を有するモノマー、その他ビニルモノマーが挙げられる。例えば、メトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリルアミドが例示できる。前記その他のモノマーに由来する構造単位は、(メタ)アクリル共重合体100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル樹脂(a1)は、アクリルモノマー混合物を重合することにより得られる。重合時には、必要に応じて重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の含有率は、モノマー混合物100質量%に対して例えば0.01~10質量%とする。重合方法は限定されない。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合により重合することができ、重合制御の容易さから溶液重合が最も好ましい。溶液重合で用いる溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコールが例示できる。重合温度は例えば60~120℃、重合時間は2~12時間程度とすることができる。
【0048】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、過酸化物およびアゾ化合物が好適である。後述する熱ラジカル重合開始剤のいずれも用いることができ、具体的には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)が好ましい。
【0049】
[ウレタン樹脂(a2)]
本開示において、ウレタン樹脂(a2)とは、1分子中にウレタン結合を2つ以上含む化合物である。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させて得ることができる。
ポリイソシアネートは1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するものであればよく、着色剤(B)の分散性の点から、ジイソシアネートまたはトリイソシアネートが好ましく、ジイソシアネートがより好ましい。ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートのような公知の脂肪族ジイソシアネートや、ベンゼン-1,3-ジイソシアネートなどの公知の芳香族ジイソシアネートの中から、適宜選択して用いることができる。また、ポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーをウレタン樹脂の中間体として用いてもよい。
ポリオールは1分子中に2つ以上の水酸基を有するものであればよく、着色剤(B)の分散性の点から、ジオールまたはトリオールが好ましく、ジオールがより好ましい。ジオールとしてはエチレングリコールなどの公知の脂肪族ジオールや、ベンゼンジオールなどの公知の芳香族ジオールの中から、適宜選択して用いることができる。また、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのプレポリマーを用いてもよい。
【0050】
ウレタン樹脂(a2)は、更にウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂であってもよい。ポリウレタンウレア樹脂は、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂に、ポリアミンを反応させることで合成できる。
ポリアミンは1分子中に2つ以上のアミノ基を有するものであればよく、着色剤(B)の分散性の点から、ジアミンまたはトリアミンが好ましく、ジアミンがより好ましい。ジアミンとしてはエチレンジアミンなどの公知の脂肪族ジアミンや、フェニレンジアミンなどの公知の芳香族ジアミンの中から、適宜選択して用いることができる。
【0051】
ウレタン樹脂(a2)は、着色剤(B)の分散性の観点から、更に官能基としてラジカル重合性官能基である(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有することがさらに好ましい。具体的には、前述のポリオール、ジイソシアネートまたはトリイソシアネートと水酸基を有するアクリレートと付加反応させることで(メタ)アクリロイル基を導入することができる。
【0052】
[エポキシ樹脂(a3)]
本開示において、エポキシ樹脂(a3)とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ樹脂(a3)は、さらに官能基に付加させた化合物も含む。官能基として、ラジカル重合性官能基である(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有することがさらに好ましい。
エポキシ樹脂(a3)の性状としては、液状を用いることで密着性を良化することができ、固形状を用いることで樹脂組成物層の成膜性を良化することができる。
エポキシ樹脂(a3)としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂、グリジシルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂等が好ましい。また、エポキシ樹脂(a3)はビスフェノール型エポキシ樹脂、高純度水添エポキシ樹脂であることが密着性の観点からより好ましい。
1個以上のエポキシ基に官能基として、ラジカル重合性官能基を付加させた化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルジアクリレートが好ましい。
【0053】
グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ系樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンが挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ系樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミンが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ系樹脂としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
環状脂肪族(脂環型)エポキシ系樹脂としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ架橋剤、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等が挙げられる。特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が密着性の観点から好ましい。
水添ビスフェノール型エポキシ系樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。特に水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が密着性の観点から好ましい。
【0054】
[着色剤(B)]
着色剤(B)は、無機顔料、有機顔料、染料のいずれも用いることができ、混合系によって調色することもできる。色味は特に限定されないが、遮光性の観点から黒色が好ましい。混合系着色剤は、複数の顔料を減色混合することで黒色を得ることができる。分散性の観点から黒色顔料がより好ましい。
黒色顔料は、例えばカーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、ペリレンブラック、チタンブラック、鉄黒、アニリンブラック、アセチレンブラック、クロム酸化鉄等が挙げられる。密着性の観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0055】
本開示に使用されるカーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等公知のカーボンブラックを用いることができる。
カーボンブラックの具体例としては、ビルラ・カーボン社製「Raven3500、1180、1080Ultra、1060Ultra、1040」、東海カーボン社製「TOKABLACK#8300、#7360SB」、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製「Special Black350、250、100、550、5、4、4A、6」「Nipex160IQ、170IQ」、「PrintexU、V、140U、140V、95、90、85、80、75、55、45、P、60、L6、L、300、30、3、35、25、A、G」「ColorBlackFW200、FW2、S170」、キャボット社製「REGAL400R、330R、250R」「MOGUL E、L」「MONARCH1300、280」、三菱化学社製「MA7、8、11、14、77、100、100R、100S、220、230」「#2650、#2600、#2350、#2300、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750B、#650B、#52、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#95、」等が挙げられる。
カーボンブラックは、分散性の観点から、BET法による比表面積が50~400m2/g、揮発分が0.1~10重量%、pH値が2~10の特性を有するものが好適であり、pH3~8の特性を有するものがより好適であり、pH3~6の特性を有するものがさらに好適である。
【0056】
着色剤(B)は、平均一次粒子径(以下粒子径)が10~100nmであることが好ましい。粒子径を10nm以上にすることで樹脂組成物の粘度を塗工に適した水準に維持しやすい。また粒子径を100nm以下にすることで黒色度が向上し、高い遮光性能を発現する。なお、着色剤(B)の粒子形状が、1.5以上の平均アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)を有する場合、粒子径は、長軸長さを平均して求める。
なお、着色剤(B)の粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)により5万倍~100万倍程度に拡大した画像から観察できる20個程度の一次粒子の平均値から求めることができる。
【0057】
着色剤(B)の含有率は、遮光層の全量(100質量%)を基準として、5~45質量%含有することが好ましく、15~35質量%含有することがより好ましく、20~30質量%含有することがさらに好ましい。着色剤(B)の含有率を上記範囲とすることで、遮光性が優れた水準となるためである。
【0058】
着色剤(B)は樹脂(A)に分散処理し、分散体として使用することが樹脂組成物層の成膜性と遮光性を調整する観点から好ましい。分散処理として、機械的解砕に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミルおよびナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミルおよびコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
【0059】
本開示では、分散体の保存安定性の観点から、着色剤(B)の分散処理に分散剤を使用することが好ましい。本開示において、分散剤は、前述の分散処理を経て分割された粒子が再び凝集しないように粒子間に斥力を付与する機能を持っている。
分散剤としては、従来既知の化合物を使用することでき、例えば、カチオン性またはアニオン性またはノニオン系界面活性剤、カチオン性またはアニオン性またはノニオン系高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤が挙げられ、分散体の保存安定性の観点から、顔料誘導体型分散剤が好ましい。
【0060】
顔料誘導体型分散剤は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。例えば、スルホ基、カルボキシル基、またはリン酸基などの酸性置換基を有する化合物、ならびにこれらのアミン塩、スルホンアミド基、アミド基、または末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。有機色素は、例えばフタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ顔料等が挙げられる。
これらの顔料分散剤を使用することで、樹脂組成物内に含まれる着色剤(B)の経時凝集を防ぎ、遮光性を良好に保つことが可能となる。
【0061】
顔料分散剤の含有率(2種以上を含む場合は合計の含有率)は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。顔料分散剤を0.01質量%以上含有することで、遮光性が良好になり、10質量%以下であることで黒色分散体の粘度が好適な範囲となり、塗工適正が良好になる。
【0062】
[重合開始剤(C)]
本実施の形態において、光重合開始剤と熱重合開始剤とのいずれも用いることができ、樹脂組成物層の成膜性と密着性の観点から熱重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤と熱重合開始剤とのいずれかを用いる場合、樹脂(A)は官能基としてラジカル重合性官能基を1分子中に1つ以上有することが好ましい。ラジカル重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等が挙げられる。
【0063】
光重合開始剤としては、トリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤は、加熱エージング工程時に黄変が少ないことから好ましい。
光重合開始剤の含有率は、黄変の観点から、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.5~10質量%含有することが好ましく、0.5~5質量%含有することがより好ましい。
【0064】
本実施の形態において、熱重合開始剤として熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。樹脂組成物層の保存安定性の観点から熱ラジカル重合開始剤が好ましい。
熱カチオン重合開始剤は、熱によりイオンを発生させる機能を有している。熱カチオン重合開始剤としては、カチオン成分としてスルホニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、ヨードニウムカチオンなどが挙げられる。アニオン成分としては6フッ化アンチモンアニオン、6フッ化リンアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートアニオン、トリフルオロメタンスルフォン酸などが挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤は、熱によりラジカルを発生させる機能を有している。熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物重合開始剤やアゾ熱重合開始剤が挙げられる。
【0065】
有機過酸化物重合開始剤としては、例えば、ジアセチルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、(2-エチルヘキサノイル)(t-ブチル) パーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;
ジプロピオニルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-アミルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-2-エチルヘキサノイルパーオキシヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートなどのパーオキシエステル;
メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルベンゾエイト、ピバロイルt-ブチルパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ペンタン酸ブチルなどのパーオキシケタール;
t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ジベンゾイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、m-トルイルベンゾイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボキシロキシ)ヘキサンなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
保存安定性の観点からジアルキルパーオキサイド類が好ましく、ジ-t-ブチルパーオキサイドがより好ましい。
【0066】
アゾ熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)などの2,2’-アゾビスプロピオンアミド;
その他、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]フォルムアミドなどが挙げられる
また、カルボキシル基や水酸基を有するアゾ化合物は、例えば4,4’-アジビス(4-シアノペンタン酸)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-(カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン)テトラハイドレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
保存安定性の観点から2,2’-アゾビスプロピオンアミド類が好ましく、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)がより好ましい。
【0067】
熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は60~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましく、100~150℃がさらに好ましく、105~130℃が最も好ましい。60℃以上にすることで、樹脂組成物層の保存安定性を向上することができ、200℃以下にすることで封止層の加熱エージング工程を短縮することができる。
【0068】
10時間半減期温度は、熱重合開始剤が熱分解によって10時間後に初期値の半分まで減少する温度である。具体的には、熱重合開始剤のラジカルに対して、不活性な溶媒を用いて熱重合開始剤溶液を調製し、窒素置換を行ったガラス管中に密閉する。これを所定温度にセットした恒温層に10時間浸し熱分解させて、残った熱重合開始剤の量を測定する。これらの一連の作業を何点かの温度で実施し、プロットして得られた直線から半減期を求めることができる。
【0069】
熱ラジカル重合開始剤の含有率は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~20質量%を使用することが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで、密着性を好適に調整できる。
【0070】
[その他成分]
本開示の樹脂組成物層には、本開示の目的を損なわない範囲で、その他成分を含有しても良い。例えば、架橋剤、モノマー、無機フィラー、表面調整添加剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、軟化剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、密着性改良剤などを添加することができる。
樹脂組成物層の成膜性の制御の観点から、架橋剤、モノマーを含むことが好ましい。
【0071】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、タルク、カオリナイト、マイカ、塩基炭酸マグネシウム、セリサイト、モンモロリナイト、カオリナイト、ベントナイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機化合物が挙げられる。これらの中でも、引っ掻き傷対する塗膜耐性の観点から、酸化チタン、窒化チタン、シリカ、酸化ジルコニウムが好ましい。
【0072】
硬化促進剤は、本開示の樹脂組成物層の架橋速度を調整するために含有しても良い。硬化促進剤は特に限定されず、適宜選択できる。硬化促進剤の具体例としては、例えば、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が挙げられる。
【0073】
[架橋剤]
本開示の樹脂組成物層は、架橋剤を含有しても良い。架橋剤は、プレス工程における熱プレスや加熱エージング時に、樹脂(A)の反応性官能基と架橋反応することでマ樹脂組成物層の凝集力を高め、密着性を向上させる。架橋剤は、樹脂(A)の官能基と反応可能な官能基を複数有している。架橋剤は、例えばシランカップリング剤、酸無水物基含有化合物、イミダゾール化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物の公知の化合物が挙げられる。樹脂組成物層の損失正接(tanδ)を調整する観点から、シランカップリング剤、アジリジン化合物、イミダゾール化合物が好ましい。
【0074】
アジリジン化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス[3-(アジリジン-1-イル)プロピオナート]、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0075】
イミダゾール化合物は、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した化合物が挙げられる。
【0076】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、およびヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0077】
シランカップリング剤は、メトキシ基、エトキシ基などの加水分解性基と、エポキシ基等の官能基がアルキレン基を介して、Si原子に結合している化合物である。
シランカップリング剤は、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を1個有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
密着性の観点からアルコキシシラン化合物が好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0078】
架橋剤の含有率は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~30質量%であることが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで密着性を好適に調整できる。
【0079】
[モノマー]
本実施の形態において、モノマーとはポリマーを構成するための最小構成単位のラジカル重合性官能基を有する化合物を意味する。ラジカル重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等が挙げられる。また、モノマーは、単官能モノマーであっても、多官能モノマーであってもよい。なお、本明細書における「単官能」とは、1分子中にラジカル重合性官能基を1つのみ有する化合物を指し、「2官能」及び「3官能」は、それぞれ、1分子中にラジカル重合性官能基を2つ及び3つ有する化合物を指す。なお本明細書では、2官能以上を総称して「多官能」とも呼称する。モノマーを含有することで、樹脂組成物層の成膜性を調整し、密着性が良好となる。
【0080】
モノマーとして具体的には、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内にN-ビニル基を1個有する単官能ビニルモノマー、分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に(メタ)アクリロイル基とアリル基とを1個ずつ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に(メタ)アクリロイル基を3個有する3官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内にアクリロイル基を4個有する4官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に(メタ)アクリロイル基を5個有する5官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に(メタ)アクリロイル基を6個有する6官能(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
中でも、密着性の観点から、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン含むことが好ましい。
【0082】
モノマーの含有率は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~30質量%を使用することが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましく、0.1~15質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで密着性を好適に調整できる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例および比較例により本開示を具体的に説明するが、本開示は実施例に特に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」および「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0084】
(a)測定方法
本実施例で求めた数値は、以下の方法により得られた値である。
【0085】
[重量平均分子量(Mw)]
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質として換算することにより重量平均分子量(Mw)を求めた。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
【0086】
[固形分]
精密天秤でアルミカップの質量(W0)を計量した。次いで、アルミカップに試料を1g程度入れ、精密天秤でアルミカップ入り試料質量(W1)を計量した。アルミカップ入り試料を150℃オーブンで120分加熱した後、オーブンから取出し常温に戻した。加熱後のアルミカップ入り試料について精密天秤にて残留質量(W2)を計量した。そして、(W2-W0)/(W1-W0)×100(%)の式にて固形分を算出した。
【0087】
[封止シートの厚さTt、樹脂組成物層の厚さTa、第一フィルムの厚さTl、第二フィルムの厚さTh]
10cm×10cmサイズに裁断した封止シートの幅方向の端部から他端部まで等間隔となる10箇所を決め、その10箇所の厚さを測定し、その平均値を封止シートの厚さTtとした。次いで、封止シートから第一フィルムを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した第一フィルムの厚さを測定した。その平均値をTlとする。その後、更に、樹脂組成物層から第二フィルムを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した第二フィルムの厚さを測定した。その平均値をThとする。樹脂組成物層の厚さTaは、Ta=Tt-Tl-Thの式により求めた。なお、厚さはMH-15M(ニコン社製)を用いて測定した。
【0088】
[樹脂組成物層の損失正接(tanδ)]
樹脂組成物層の厚さTaが50μmになるように作成した封止シートを、0.5cm×2cmサイズに裁断し、第一フィルムと第二フィルムを剥がし、得られた樹脂組成物層を動的粘弾性測定装置DVA-200/L2(アイティー計測制御社製)を用いて、周波数10Hz、測定温度範囲-50~150℃、昇温速度5℃/分、引張モードにて、動的粘弾性を測定し損失正接(tanδ)をプロットした。得られたグラフから損失正接(tanδ)の最大値(tanδ最大値)、40℃の損失正接(tanδ40℃)、損失正接のピークトップ温度(tanδピーク温度)を読み取った。
【0089】
[第二フィルムのヤング率]
第二フィルムを、23℃、相対湿度50%環境下、引張り速度50mm/分および標線間25mmの条件で引張試験機「EZテスター」(島津製作所社製)により応力― ひずみ曲線を測定し、ひずみ(伸び)が0.1~0.3%の領域の線形回帰(傾き)をヤング率とした。
【0090】
[鉛筆硬度]
封止シートの第一フィルム剥がし、露出した樹脂組成物層表面をJIS K 5600-5-4の試験方法に則り測定した。使用鉛筆は鉛筆硬度試験用鉛筆(三菱鉛筆社製)とした。
【0091】
(b)樹脂(A)の溶液の製造
[(メタ)アクリル樹脂(a1)(A-1)溶液の製造例]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、酢酸エチル80部、アクリル酸n-ブチル13部、メタクリル酸n-ブチル85部、メタクリル酸2部、開始剤として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を65℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して、重量平均分子量(Mw):10万、固形分:25%の(メタ)アクリル樹脂(a1)(A-1)の溶液を得た。
【0092】
[(メタ)アクリル樹脂(a1)(A-2)の溶液の製造例]]
モノマーの配合量をアクリル酸n-ブチル20部、メタクリル酸n-ブチル70部、メタクリル酸5部、メタクリル酸グリシジルに変更した以外は、(メタ)アクリル樹脂(a1)(A-1)の製造と同様の方法によって、(メタ)アクリル樹脂(a1)(A-2)を製造した。なお、重量平均分子量(Mw):13万、固形分:25%であった。
【0093】
[(メタ)アクリル樹脂(a1)(A-3)の溶液の製造例]]
KRM8912(ダイセル・オルネクス社製)を酢酸エチルで希釈して、(メタ)アクリル樹脂(a1)(A-3)を製造した。なお、重量平均分子量(Mw):1,000、固形分:25%であった。
【0094】
[ウレタン樹脂(a2)(A-4)の溶液の製造例]]
ART RESIN UN-9000PEP(根上工業社製)を酢酸エチルで希釈して、ウレタン樹脂(a2)(A-4)を製造した。なお、重量平均分子量(Mw):5,000、固形分:25%であった。
【0095】
[エポキシ樹脂(a3)(A-5)の溶液の製造例]]
jER256B40(三菱ケミカル社製)を酢酸エチルで希釈して、エポキシ樹脂(a3)(A-5)を製造した。なお、重量平均分子量(Mw):45,000、固形分:25%であった。
(c)着色剤(B)の分散体の製造
【0096】
[着色剤(B)の分散体(D-1)の製造例]
樹脂(A-1)の溶液:800部、着色剤(B-1)としてカーボンブラックMA100(三菱ケミカル社製):800部、溶剤としてメチルエチルケトン:400部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径1.0mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、分散体(D-1)とした。
【0097】
[着色剤(B)の分散体(D-2)の製造例]
樹脂(A-2)の溶液:800部、着色剤(B-1)としてカーボンブラックMA100(三菱ケミカル社製):800部、溶剤としてメチルエチルケトン:400部、顔料誘導体型分散剤としてSolsperse5000(ルーブリゾール社製):2部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径1.0mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、分散体(D-2)とした。
【0098】
[着色剤(B)の分散体(D-3)の製造例]
樹脂(A-1)の溶液:800部、着色剤(B-2)として金属酸化物顔料のBlack6340(アサヒ化成工業社製):800部、溶剤としてメチルエチルケトン:400部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径1.0mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、分散体(D-3)とした。
【0099】
(d)樹脂組成物の製造
[実施例1の樹脂組成物の製造例]
分散体(D-1):60部(着色剤(B-1)24部、樹脂(A-1)6部、溶剤30部)、樹脂(A-1)の溶液:276部(樹脂(A-1)69部、溶剤207部)、その他成分としてアジリジン化合物のケミタイトPZ-33(日本触媒社製):1部、溶剤としてトルエン:63部をディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで撹拌した。次いで、孔径10μmのメンブランフィルターで濾過を行い、塗工むらの原因となる粗大異物を除去し、不揮発分:33%の樹脂組成物を得た。なお、その他成分は固形分換算量とした。
【0100】
(e)封止シートの製造
[実施例1の封止シートの製造例]
樹脂組成物を、厚さ50μmの第二フィルム(H-2)としてSP-PET-O3-BU(三井化学東セロ社製)の離型層上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで3分間乾燥することで、樹脂組成物層を形成した。次いで、露出した樹脂組成物層に厚さ25μmの第一フィルムとして(L-2)SP-PET-O1-T(三井化学東セロ社製)の離型層側を貼り合わせ、0℃にて7日間エージングし、第一フィルム/樹脂組成物層/第二フィルムの順に積層された実施例1の封止シートを得た。なお、tanδピーク温度は29℃であった。
【0101】
(f)封止シートの評価方法
[埋め込み性]
マイクロLED基板の凹凸を模した、試験基板(サイズ25mm×25mmのガラス板の一方面に、凹部の幅200μm、凸部の高さ5μm、凸部の幅200μmが形成された板)を用意した。試験基板の模式的断面図を
図3に示す。
封止シートを30mm×30mmサイズに裁断し、第一フィルムを剥がして樹脂組成物層を露出させ、樹脂組成物層を試験基板の凹凸部が形成された面に載置した。その後、第二フィルムの上にクッション材として、厚さ50μmのTPX(オピュランX-44B、三井化学東セロ社製)と、厚さ2.0mmの塩ビフィルム(セレブT、オカモト社製)を、順に積層し、さらに張り付き防止のためボール紙を積層した。ガラス基板/樹脂組成物層/第二フィルム/クッション材(TPX/塩ビフィルム)/ボール紙からなる積層体に上方から基板面に対し5MPa、100℃の条件で20分間、プレスし、試験基板の凹部に樹脂組成物層を充填することで、封止層を形成した。プレス後、クッション材とボール紙を剥離した。
得られた封止層付試験基板から側面にはみ出した封止層を、カッターを用いて大まかに除去し、さらにやすりがけすることで封止層付試験基板の側面に残存する封止層を取り除き、試験基板の側面を露出させることで、凹凸部分が観察できる状態にした。任意の15か所の試験基板の凹部について、顕微鏡で観察することにより、埋め込み性を評価した。試験基板の凹部において、封止層と試験基板の最大隙間が1μm以下である場合を溝が埋め込まれているとした。評価基準は下記の通りとした。
A:埋め込まれた溝が14か所以上
B:埋め込まれた溝が13か所以下、11か所以上
C:埋め込まれた溝が10か所以下、8か所以上
D:埋め込まれた溝が7か所以下
【0102】
[ダイシフト性]
配線付きLED(SMD、0402、外寸1.0×0.5mm)をガラスエポキシ製のユニバーサル基板(幅32mm×奥行53mm×厚さ1.2mm、ピッチ2.54mm)に配置した。LEDへの通電を確認し、試験基板とした。
封止シートを60mm×60mmサイズに裁断し、第一フィルムを剥がして樹脂組成物層を露出させ、樹脂組成物層と試験基板に配置されたLEDが接するように載置した。その後、第二フィルムの上にクッション材として、厚さ50μmのTPX(オピュランX-44B 、三井化学東セロ社製)と、厚さ2.0mmの塩ビフィルム(セレブT、オカモト社製)を、順に積層し、さらに張り付き防止のためボール紙を積層した。積層体は、ガラス基板/樹脂組成物層/第二フィルム/クッション材(TPX/塩ビフィルム)/ボール紙の構成となった。次に、試験片の上方から基板面に対し5MPa、100℃の条件で20分間、プレスし、LEDの周囲に樹脂組成物層を充填することで、封止層を形成した。プレス後、クッション材とボール紙を剥離した。得られたプレス後試験片に対して、通電テスターを用いてLEDの通電を確認した。通電しないものは埋め込み時のダイシフトによって配線のずれが生じたと考え、配線ずれありと評価した。本評価は10回実施し、評価基準は下記の通りとした。
A:配線ずれありが0~1回
B:配線ずれありが2回
C:配線ずれありが3回
D:配線ずれありが4~10回
【0103】
[遮光性]
封止シートの第一フィルムと第二フィルムを剥離し、樹脂組成物層を露出させた。樹脂組成物層の光学濃度(ビジュアル)を光学濃度計(361T卓上式透過濃度計、X-RITE社製)を用いて測定した。評価基準は下記の通りとした。
A:光学濃度が6以上
B:光学濃度が4以上、6未満
C:光学濃度が4未満
【0104】
[密着性]
封止シートを25mm×100mmに裁断したものを1枚用意し、第一フィルムを剥がして樹脂組成物層を露出させ、ガラス板(25mm×100mm×1.1mm、青板ガラス、河村久蔵商店社製)の上に載置した。その後、第二フィルムの上にクッション材として、厚さ50μmのTPX(オピュランX-44B 、三井化学東セロ社製)と、厚さ2.0mmの塩ビフィルム(セレブT、オカモト社製)を、順に積層し、さらに張り付き防止のためボール紙を積層した。ガラス板/樹脂組成物層/第二フィルム/クッション材(TPX/塩ビフィルム)/ボール紙からなる積層体に上方から基板面に対し5MPa、100℃の条件で20分間、プレスし、ガラス板と樹脂組成物層を圧着し、ガラス板の上に封止層を形成した。プレス後、クッション材、ボール紙、第二フィルムを剥離した。ガラス板と封止層からなる試験片を180℃条件下で120分間静置することで、ガラス板と封止層を密着させた試験片を作製した。
JIS K 5600-5-6(クロスカット法)に準じ、クロスカットガイドとカッターナイフを用いて、試験片の封止層に1mm角の直角の格子パターン(25マス)を作成し、粘着テープ(CT1835、ニチバン社製)を格子カットした部分に貼り、封止層としっかり密着させた。付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5~1.0秒で引き離した。剥がれた封止層の様子を観察し、密着性を評価した。評価基準は下記の通りとした。また、第二フィルムを剥離する際に封止層とガラス板が剥離した場合は、C評価とした。
A:剥がれたマスが0個
B:剥がれたマスが1~2個
C:剥がれたマスが3~25個
【0105】
上述したいずれの評価も、最も秀でた評価をA、次に優れた評価をB、続いて良好な評価をC、目標性能未達の評価をDとした。なお、各性能評価が全てA~Cであるものが本開示に該当する。
【0106】
[実施例2~25]、[比較例1~8]
表1~3に示した含有率と厚さTaに変更した以外は実施例1と同様の方法によって封止シートを作成し、同様に評価した。なお、いずれのその他成分も同時に添加した。
表1~3中、樹脂(A)、着色剤(B)、重合開始剤(C)その他成分は固形分換算の量であり、空欄は配合しないことを表す。なお、実施例2のtanδピーク温度は22℃であった。
【0107】
表中の略号は以下の通りである。
C-1:ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD、日油社製)
C-2:2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(VAm-110、富士フイルム和光純薬社製)
O-1:架橋剤としてアジリジン化合物(ケミタイトPZ-33、日本触媒社製)
O-2:架橋剤としてシランカップリング剤(KBE-403、信越シリコーン社製)
O-3:架橋剤として2-フェニルイミダゾール(キュアゾール2PZ、四国化成工業社製)
O-4:モノマーとしてEO変性(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(MiramerM3130、MIWON社製、3官能)
O-5:モノマーとして3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBE-503、信越シリコーン社製、単官能)
L-1:厚さ10μmの第一フィルム(マットフィルム(タイプM3)、アイム社製、Sq:1.5μm)
L-2:厚さ25μmの第一フィルム(SP-PET-O1-T、三井化学東セロ社製、Sq:0.2μm)
L-3:厚さ50μmの第一フィルム(マットフィルム(タイプM3)、アイム社製、Sq:1.5μm)
L-4:厚さ100μmの第一フィルム(SP-PET-O1-T、三井化学東セロ社製、Sq:0.2μm)
H-1:厚さ12μmの第二フィルム(トレファンハイエンドOPPフィルム、東レ社製、ヤング率:3.5GPa)
H-2:厚さ50μmの第二フィルム(SP-PET-O3-BU、三井化学東セロ社製、ヤング率:4.7GPa)
H-3:厚さ100μmの第二フィルム(リリースフィルムPE、アイム社製、ヤング率:1.1GPa)
H-4:厚さ188μmの第二フィルム(コスモピールE7004、東洋紡社製、ヤング率:5.9GPa)
H-5:厚さ6μmの第二フィルム(ルミラーF53、東レ社製、ヤング率:4.4GPa)
H-6:厚さ250μmの第二フィルム(ルミラーT60、東レ社製、ヤング率:4.8GPa)
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
本開示において、樹脂組成物層の厚さTaが2~100μmの範囲外であり、Taと第二フィルムの厚さThが0.1≦Ta/Th≦2の関係式を満たさない封止シートの場合、比較例1~2に示すように、埋め込み性とダイシフト性に課題があることが分かる。
また、第二フィルムの厚さThが12~188μmの範囲外であり、0.1≦Ta/Th≦2の関係式を満たさない封止シートの場合、比較例3~4に示すように、埋め込み性とダイシフト性に課題があることが分かる。
また、0.1≦Ta/Th≦2の関係式を満たさない封止シートの場合、比較例5~6に示すように、埋め込み性とダイシフト性のいずれか1つ以上に課題があることが分かる。
また、樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接の-50~80℃の範囲における最大値(tanδ最大値)が0.6~2.2の範囲外である場合、比較例7~8に示すように、埋め込み性とダイシフト性のいずれか1つに課題があることが分かる。
表3に示した通り、比較例1~8の封止シートは、埋め込み性とダイシフト性をバランスよく高レベルで満足することはできなかった。
これに対し、実施例1~25によれば、本開示の封止シートは、表1~3に記載の通り、優れた埋め込み性を発現しており、ダイシフト性にも優れている。さらに、本開示の封止シートは、遮光性や密着性にも優れることから、遮光力不足によって生じた光漏れや、密着不良によって生じた封止層の隙間からの光漏れを防ぎ、ディスプレイの視認性を確保した光制御性に優れる封止シートであると判明した。
【符号の説明】
【0112】
1:封止シート
2:樹脂組成物層
3:第一フィルム
4:第二フィルム
5:発光素子
6:基板
7:ガラス基板
【要約】
【課題】
マイクロLEDを光源とするディスプレイのマイクロLEDの封止に適用した場合において、埋め込み性とダイシフトの抑制に優れる封止シートを提供することを課題とする。
【解決手段】
第一フィルムと樹脂組成物層と第二フィルムがこの順に配置されており、前記第一フィルムは前記樹脂組成物層と対向する面に剥離層を有しており、記樹脂組成物層の厚さTaが2~100μmであり、前記第二フィルムの厚さThが12~188μmであり、TaとThが0.1≦Ta/Th≦2の関係式を満たし、前記樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接の-50~80℃の範囲における最大値(tanδ最大値)が0.6~2.2であり、マイクロLEDを光源とするディスプレイに使用するマイクロLEDを封止するための封止シート。
【選択図】
図1