(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】脱脂炉
(51)【国際特許分類】
F27B 17/00 20060101AFI20240702BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240702BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240702BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F27B17/00 C
F27D17/00 104G
F27D7/02 A
F27D7/06 C
(21)【出願番号】P 2023502057
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037379
(87)【国際公開番号】W WO2022180918
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021029663
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】田中 優
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/047207(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/053647(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124761(WO,A1)
【文献】特開2017-119587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00
F27D 7/02
F27D 7/06
F27D 17/00-99/00
F25B 39/04
C04B 35/638
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被脱脂物を脱脂する脱脂炉であって、
前記被脱脂物を収容する炉本体と、
前記炉本体のガスを排気しながら燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器から排気されたガスを冷却し、凝縮させる凝縮器と、
前記燃焼器の排気口につながる第1ダクトと、
前記凝縮器が備えられ、環状になっており、前記第1ダクトからガスが入れられる第2ダクトと、
前記第2ダクトの中でガスを流すためのファンと、
前記第2ダクトから該第2ダクトの外部にガスを排気するための第3ダクトと、
前記第2ダクトの下部に設けられ、前記凝縮器でガスが凝縮される際に発生した液体を前記第2ダクトから排水するためのパイプと、を含む脱脂炉。
【請求項2】
前記第1ダクトの一部が第2ダクトの中に入っている請求項
1の脱脂炉。
【請求項3】
前記第2ダクトに設けられ、該第2ダクトの外部から該第2ダクトの中に空気を取り込むための開閉部を含む請求項
1または
2の脱脂炉。
【請求項4】
前記凝縮器が配管を備え、該配管に凝縮器でガスが凝縮されたときに生じる液体が流れる請求項1
または2の脱脂炉。
【請求項5】
前記凝縮器でガスが凝縮されたときに生じる液体を溜めるタンクを備えた請求項1
または2の脱脂炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱脂炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックスからなる被脱脂物が脱脂炉で脱脂されている。たとえば、下記の特許文献1の炉は、被脱脂物を収納する炉本体、被脱脂物を加熱する加熱手段を備える。特許文献1の炉は脱脂後のガスを加熱して有機物を分解している。その後、ガスの流路内で水を噴霧し、ガスの温度を下げることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開番号 WO2005/047207(段落0042)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、処理ガスに水を噴霧することで、ガスの流路に水が溜まるおそれがある。その水がガスに対して負荷になり、ガスをうまく排気できないおそれがある。
【0005】
そこで本発明の目的は、排気されるガスの負荷を低減した脱脂炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決すべく、本発明に係る脱脂炉は、以下に述べるような構成を有する。
【0007】
本発明の脱脂炉は、被脱脂物を脱脂する脱脂炉であって、前記被脱脂物を収容する炉本体と、前記炉本体のガスを排気しながら燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器から排気されたガスを冷却し、凝縮させる凝縮器とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、凝縮器でガスを凝縮させ、その際発生した液体を排水することで、ガスの排気経路が液体でふさがれることなく、従来に比べてガスの負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】凝縮器、ダクトおよびファンを示す図である。
【
図3】第1ダクトが第2ダクトの中に入っている構成を示す図である。
【
図4】凝縮器の配管を示す図であり、(a)は第1配管を示し、(b)は第2配管を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の脱脂炉について図面を参照して説明する。複数の実施形態を説明するが、異なる実施形態であっても同じ手段には同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0011】
[実施形態1]
図1に示す本願の脱脂炉10は、被脱脂物12が収容される炉本体14、飽和蒸気の飽和蒸気生成装置18、過熱蒸気を生成する過熱器20を備える。
【0012】
[被脱脂物]
被脱脂物12はセラミックス成形体を含む。セラミックスは窒化物系セラミックス(窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)、炭化物系セラミックス(炭化ケイ素、炭化ホウ素など)、酸化物系セラミックス(アルミナ、ジルコニウムなど)を含む。被脱脂物12にバインダーが含まれる。バインダーは被脱脂物12を成形するときにセラミックスに混合されるものである。被脱脂物12が昇温されることで、被脱脂物12からバインダーがガスとして放出される。バインダーには樹脂としてポリブチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、酢酸ビニル、ポリエチレングリコールなどが用いられ、その他滑剤、可塑剤、分散剤が用いられる。
【0013】
[炉本体]
炉本体14はSUS310SまたはSUS316Lなどの耐熱性材料で構成されている。炉本体14は容器状になっており、その内部空間22に被脱脂物12が収容される。炉本体14の任意の位置に扉が設けられており、被脱脂物12の出し入れの時にその扉が開閉される。炉本体14の内部空間22に被脱脂物12を配置するための棚24を備えてもよい。炉本体14は供給口26および排気口28が形成されている。過熱蒸気が供給口26から炉本体14の内部空間22に供給される。炉本体14のガスは排気口28から排気され、そのガスには被脱脂物12が脱脂された際に発生した成分が含まれる。
【0014】
[飽和蒸気生成装置]
過熱器20に飽和蒸気を供給する飽和蒸気生成装置18を備える。飽和蒸気生成装置18は純水などの液体を沸騰させて飽和蒸気を生成するボイラーを含む。
【0015】
[過熱器]
過熱器(superheater)20は飽和蒸気から過熱蒸気を生成するための装置である。過
熱器20として接触過熱器、放射過熱器、つり下げ過熱器、板形過熱器、横置き過熱器などが挙げられる。過熱器20は長管を備え、その中を飽和蒸気が流れる。長管の中を流れる飽和蒸気が加熱され、過熱蒸気となる。生成された過熱蒸気が炉本体14に供給される。この時の過熱蒸気は常圧で100℃の飽和蒸気をさらに高温にした無色透明の水(H2O)からなる気体である。過熱蒸気の温度は200℃以上、好ましくは500℃以上、さらに好ましくは600~1200℃である。
【0016】
炉本体14と過熱器20、飽和蒸気発生装置18と過熱器20は配管30、32で接続されている。配管30に高温の過熱蒸気が流れるため、配管30は耐熱材で構成されることが好ましい。各配管30、32にバルブを取り付け、バルブの開閉によって飽和蒸気および過熱蒸気の流量を制御してもよい。
【0017】
[温度計]
本願は炉本体14の内部空間22の雰囲気温度を計測するための温度計36を備える。温度計36は熱電対温度計を利用する。炉本体14のどの位置の温度を計測するかは設計によって決定され、設計に応じて温度計36の数が決定される。計測された温度によって、過熱蒸気の炉本体14への供給が制御される。そのため、本願は過熱器20および飽和蒸気生成装置18を制御するための制御装置38を備える。
【0018】
[制御装置]
温度計36の温度が入力され、炉本体14に供給する過熱蒸気の供給量および過熱蒸気の温度を制御する制御装置38を備える。制御装置38はCPU(Central Processing Unit)またはPLC(Programmable Logic Controller)などの演算回路が含まれる。制御装置38は飽和蒸気生成装置18および過熱器20を制御したり、配管30、32のバルブを制御したりする。
【0019】
[燃焼器]
本願の脱脂炉10は炉本体14のガスの通路になっており、ガスを燃焼する燃焼器40を備える。燃焼器40が炉本体14の排気口28に接続されている。燃焼器40は断熱体42で形成された通路44および加熱装置(図示省略)を備える。その加熱装置は、電気ヒーター、ガスバーナーまたは重油バーナーなどである。被脱脂物12から放出されたガスが炉本体14から通路44に入り、通路44を通過する。加熱装置がそのガスを加熱し、分解または二酸化炭素などのガスに変換する。
【0020】
[ダクト]
本願の脱脂炉10は燃焼器40を通過したガスを流し、排気するダクト46を備える(
図2)。ダクト46は燃焼器40の排気口48につながった第1ダクト50、環状になった第2ダクト52、ガスを排気するための第3ダクト54が備えられる。各ダクト50、52、54は筒状になっており、それらの中をガスが流れる。
【0021】
第1ダクト50は燃焼器40から第2ダクト52にガスを流すための通路である。第2ダクト52は4つの筒体をつなげて環状になっており、第2ダクト52の中でガスは矢印wの方向に流れる。第3ダクト54は第2ダクト52につなげられ、ガスを排気するための通路である。
【0022】
第1ダクト50の一部が第3ダクト54から第2ダクト52の内方に入り込むことで(
図3)、燃焼器40から第1ダクト50を介して第2ダクト52にガスが導かれる。第1ダクト50の外面と第2ダクト52の内面の間は隙間64を有している。方形状になった第2ダクト52の角の部分に第1ダクト50の一部が配置される。第2ダクト52を循環したガスが第1ダクト50の一部に当たり、そのガスの一部が第1ダクト50から第2ダクト52に入るガスに巻き込まれ、再び第2ダクト52を循環する。第1ダクト50から出たガスが第2ダクト52を循環したガスと混ざり、第2ダクト52を循環する全ガスの温度を下げることができる。後述する凝縮器56でガスを凝縮しやすくなる。
【0023】
第3ダクト54は第2ダクト52につなげられている。そのつなげられる部分は、第1ダクト50が第2ダクト52に入り込む位置である。第1ダクト50におけるガスの流れと反対方向を向くように第3ダクト54が取り付けられている。第2ダクト52を巡回し、第1ダクト50に当たったガスは、一部は再び第2ダクト52を巡回し、残りは第3ダクト54に導かれて排気される。一部のガスを排気することで、炉本体14および燃焼器40の圧力が低下することを防止する。
【0024】
[凝縮器]
本願は凝縮器56を備える。凝縮器56は第2ダクト52に備えられ、第2ダクト52を流れるガスを冷却し、凝縮する。凝縮器56は、第2ダクトの中に配置されたらせん状の第1配管60(
図4(a))、第2ダクト52の外面に取り付けられたU字形状の第2
配管62(
図4(b))、それらの配管60、62に冷却用の液体を流すポンプ(図示省略)を備える。第1配管60と第2配管62の中を冷却用の液体が流れる。第1配管60はガスを直接冷却する。第2配管62は第2ダクト52を冷却し、第2ダクト52の内面に接したガスが冷却される。燃焼器40を通過した後の高温のガスは凝縮器56によって冷却され、凝縮される。ガスの中に含まれる水分が凝縮器56の配管60の表面および第2ダクト52の内面に露として現れる。なお、ガスを凝縮できるのであれば、第1配管60と第2配管62の数と形状は限定されない。
【0025】
[ファン]
ダクト46におけるガスの流れを制御するファン58を備える。ファン58はシロッコファンを使用する。ファン58は第2ダクト52のガスの流れにおける凝縮器56よりも下流側に配置される。凝縮器56でガスの温度が下がるため、ファン58に高温のガスが当たらず、ファン58を保護できる。
【0026】
[タンク]
本願の脱脂炉10は、凝縮器56でガスを凝縮した際に発生した液体を溜めるタンク66を備える。第2ダクト52の下部にパイプ68が設けられている。液体は第2ダクト52の下部からパイプ68を通ってタンク66に流れる。第2ダクト52から液体を排水することで、液体が第2ダクト52を流れるガスの負荷にならない。
【0027】
[脱脂方法]
次に脱脂炉10を用いた脱脂方法について説明する。(1)被脱脂物12を炉本体14の内部空間22に収容する。たとえば被脱脂物12は窒化物系セラミックスからなる成形品である。
【0028】
(2)飽和蒸気生成装置18が液体を加熱して飽和蒸気を生成し、その飽和蒸気を過熱器20に供給する。過熱器20は飽和蒸気から過熱蒸気を生成する。過熱蒸気は炉本体14に供給される。過熱蒸気によって被脱脂物12が脱脂される。
【0029】
(3)被脱脂物12を脱脂した際に生じたガスは、排気口28から燃焼器40に供給され、燃焼されて二酸化炭素などになる。
【0030】
(4)ガスは燃焼器40から第1ダクト50を通って第2ダクト52に流れる。ファン58が回転することで、第2ダクト52に入ったガスは第2ダクト52を流れ、その途中にある凝縮器56で冷やされ、凝縮される。凝縮器56で発生した液体は重力に従って第2ダクト52の下部に流れ、パイプ68を通ってタンク66に溜められる。タンク66に溜められた液体は排水するようにする。
【0031】
(5)第2ダクト52を流れたガスは第2ダクト52の内部に入った第1ダクト50の一部に当たる。ガスの一部は第1ダクト50から第2ダクト52に入るガスと混ざり、再び第2ダクト52を流れる。残りのガスは第2ダクト52から第3ダクト54に入り、排気される。
【0032】
以上のように、本願は排気されるガスを凝縮器56によって凝縮させ、発生した液体をタンク66に溜めることで、排気経路に液体が溜まらず、ガスの流れの邪魔にならない。排気がうまくできることで、炉本体14の内部空間22のガスの状態をコントロールしやすくなり、所望の状態に脱脂しやすくなる。
【0033】
[実施形態2]
第2ダクト52は内部と外部をつなげるための開閉部70を備えてもよい(
図2、
図3)。開閉部70が開けられると第2ダクト52の内部が外部に対して開放される。第2ダクト52を流れるガスに外気を加えることができる。第2ダクト52を流れるガスの温度を下げ、凝縮しやすくできる。開閉部70の開閉面積は適宜調整できるようにしてもよい。第2ダクト52に流入させる外気の量を調整できる。
【0034】
開閉部70は第2ダクト52における第1ダクト50の排気口72の付近かつ排気口7
2の下流側に設ける(
図3)。第1ダクト50から第2ダクト52にガスが入り、そのガスの流れに巻き込まれるようにして外気が開閉部70を通って第2ダクトに入る。
【0035】
[実施形態3]
飽和蒸気生成装置18は凝縮器56で生成された液体を利用して飽和蒸気を生成してもよい。タンク66が飽和蒸気生成装置18につなげられる。凝縮器56で生成された液体がタンク66で溜められ、飽和蒸気生成装置18はその液体を利用して飽和蒸気を生成する。また、飽和蒸気生成装置18はタンク66の液体が不足すれば、他の装置から液体を補充できるようにしてもよい。タンク66を用いず、凝縮器56で生成された液体が飽和蒸気生成装置18に直接供給されるようにしてもよい。
【0036】
飽和蒸気生成装置18に供給される液体は上記した液体に限定されない。水道を流れる液体、井戸などの液体をフィルターでろ過した液体など、種々の液体を使用することができる。
【0037】
[実施形態4]
凝縮器56はタンク66に溜められた液体を配管60、62に流すようにしてもよい。凝縮器56に含まれるポンプがタンク66に溜められた液体を配管60、62に流す。配管60、62に流す液体がタンク66の液体で足りなければ、別途液体を追加できるようにしてもよい。
【0038】
[実施形態5]
飽和蒸気生成装置18は凝縮器56の配管60、62を流れた液体を利用して飽和蒸気を生成してもよい。液体は凝縮器56の配管60、62を流れたときに温度上昇しており、飽和蒸気生成装置18に飽和蒸気を生成しやすくなっている。
【0039】
[実施形態6]
第2ダクト52のガスの温度を計測する温度計を備えてもよい。温度計の温度を制御装置38に入力してもよい。制御装置38はファン58の回転数を制御したり、凝縮器56のポンプを制御して配管60、62に流れる液体の流量を制御したりしてもよい。ガスの凝縮を制御でき、ガスが高温のまま第3ダクト54に流れて冷やされ、第3ダクト54で凝縮されることを防止できる。
【0040】
第1ダクト50、第3ダクト54の少なくとも1つにも温度計を備え、ガスの温度を計測してもよい。計測された温度は制御装置38に入力し、制御装置38がファン58および凝縮器56のポンプを制御してもよい。
【0041】
また、配管60、62に流れる液体の温度を計測する温度計を備えてもよい。温度計で測定された温度は制御装置38に入力される。液体の温度が所定値よりも高くなれば、制御装置38は脱脂炉10を停止するようにしてもよい。配管60、62などを保護する。
【0042】
[実施形態7]
凝縮器56は液体による冷却を用いていたが、追加で第2ダクト52の外面に送風をおこなうファンを設けてもよい。
【0043】
[実施形態8]
液体は第2ダクト52から直接排水されてもよい。第2ダクト52に液体が溜まらなければ、タンク66の有無はいずれであってもよい。
【0044】
[実施形態9]
上記実施形態では過熱蒸気を利用した脱脂炉であったが、本願の脱脂炉10は過熱蒸気を利用する構成に限定されない。たとえば、炉本体14に過熱蒸気を入れる前に不活性ガスを炉本体に入れ、予備加熱できる構成であってもよい。そのため、不活性ガスのガス源を備え、不活性ガスが過熱器20で温度上昇されるようにしてもよい。不活性ガスで被脱脂物12の温度上昇させた後、過熱蒸気を炉本体14に入れる。脱脂当初、被脱脂物12の温度が低いため、最初に過熱蒸気を入れると被脱脂物12の表面が結露し、被脱脂物12を劣化させるおそれがある。過熱蒸気の前に温度上昇した不活性ガスを炉本体14に入れて被脱脂物12を予備加熱しておくことで、過熱蒸気を入れたときに被脱脂物12の表面が結露せず、所望の脱脂がおこなえる。
【0045】
[実施形態10]
制御装置38に入力された温度計36の温度、制御装置38がおこなう過熱器20などの制御状況などをネットワークを介して所定のコンピュータに送信してもよい。脱脂の状況を遠隔で確認することができる。また、制御装置38から送信されたデータをサーバーに記録してもよい。
【0046】
(第1項)一態様に係る脱脂炉は、被脱脂物を脱脂する脱脂炉であって、前記被脱脂物を収容する炉本体と、前記炉本体のガスを排気しながら燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器から排気されたガスを冷却し、該ガスを凝縮させる凝縮器とを含む。
【0047】
第1項に記載の脱脂炉によれば、凝縮器がガスを凝縮させることで、排気途中のガスが結露し、排気経路の負荷となることを防止できる。
【0048】
(第2項)前記燃焼器の排気口につながる第1ダクト、前記凝縮器が備えられ、環状になっており、前記第1ダクトからガスが入れられる第2ダクトと、前記第2ダクトの中でガスを流すためのファンと、前記第2ダクトから該第2ダクトの外部にガスを排気するための第3ダクトとを含む。
【0049】
第2項に記載の脱脂炉によれば、ファンによって第2ダクトでガスを循環させながら、ガスを凝縮することができる。
【0050】
(第3項)前記第1ダクトの一部が第2ダクトの中に入っている。
【0051】
第3項に記載の脱脂炉によれば、第1ダクトが第2ダクトの中に入ることで、循環するガスを第1ダクトに当てることができ、一部のガスを再び循環させることができる。第2ダクトを流れるガスの温度を下げることができ、凝縮しやすくなっている。
【0052】
(第4項)前記第2ダクトに設けられ、該第2ダクトの外部から該第2ダクトの中に空気を取り込むための開閉部を含む。
【0053】
第4項に記載の脱脂炉によれば、開閉部によって外部から第2ダクトの中に外気を入れることができ、ガスの温度を下げて凝縮しやすくなっている。
【0054】
(第5項)前記凝縮器でガスが凝縮されたときに生じる液体を使用して飽和蒸気を生成する飽和蒸気生成装置と、前記飽和蒸気を過熱し、炉本体に入れる過熱蒸気を生成する過熱器とを含む。
【0055】
第5項に記載の脱脂炉によれば、凝縮で生じた液体を再び過熱蒸気の生成に利用することで、液体を循環させることができ、環境負荷を小さくできる。
【0056】
(第6項)前記凝縮器が配管を備え、該配管に凝縮器でガスが凝縮されたときに生じる液体が流れる。
【0057】
第6項に記載の脱脂炉によれば、凝縮器で生じた液体を凝縮器の配管で流すことで、環境負荷を小さくできる。
【0058】
(第7項)前記凝縮器でガスが凝縮されたときに生じる液体を溜めるタンクを備える。
【0059】
第7項に記載の脱脂炉によれば、凝縮によって生じた液体をタンクに溜めることができ、溜めた液体を種々利用することができる。
【0060】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。説明した各実施形態は独立したものではなく、当業者の知識に基づき適宜組み合わせて実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、排気されるガスの負荷を低減した脱脂炉を提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
10:脱脂炉
12:被脱脂物
14:炉本体
18:飽和蒸気発生装置
20:過熱器
22:炉本体の内部空間
24:棚
26:供給口
28:排気口
30、32:配管
36:温度計
38:制御装置
40:燃焼器
42:断熱体
44:通路
46:ダクト
48:燃焼器の排気口
50、52、54:ダクト
56:凝縮器
58:ファン
60、62:配管
64:第1ダクトの外面と第2ダクトの内面の間は隙間
66:タンク
68:パイプ
70:開閉部
72:排気口