(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】モータ、及びドライバ
(51)【国際特許分類】
H02P 25/16 20060101AFI20240702BHJP
H02K 11/21 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
H02P25/16
H02K11/21
(21)【出願番号】P 2023503862
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008609
(87)【国際公開番号】W WO2022186199
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2021034684
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021200829
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220094(JP,A)
【文献】特開2002-136057(JP,A)
【文献】特開2016-045951(JP,A)
【文献】特開2021-027659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/16
H02K 11/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のドライバから動力線を介して電力が供給されるモータであって、
前記ドライバから前記モータに供給された電力の一部を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された電力を外部装置に供給する供給部と、
前記ドライバから前記動力線を介して、モータ内部の巻線部に電力が入力される電力入力部と、を備
え、
前記抽出部は、前記巻線部における電力の一部を抽出する、
モータ。
【請求項2】
外部のドライバから動力線を介して電力が供給されるモータであって、
前記ドライバから前記モータに供給された電力の一部を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された電力を外部装置に供給する供給部と、
前記ドライバから前記動力線を介して、モータ内部の巻線部に電力が入力される電力入力部と、を備
え、
前記抽出部は、前記巻線部に対して該巻線部における電力の一部がその一次コイルに入力されるように配置されたトランス構造が形成されるように配置され、該トランス構造を介して前記電力の一部を抽出するように構成される、
モータ。
【請求項3】
前記トランス構造は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分に対して、該トランス構造の一次コイル側を直列に接続し、且つ、該トランス構造の二次コイル側を前記供給部に接続して配置される、
請求項
2に記載のモータ。
【請求項4】
前記トランス構造は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分に対して、該トランス構造の一次コイル側を並列に接続し、且つ、該トランス構造の二次コイル側を前記供給部に接続して配置される、
請求項
2に記載のモータ。
【請求項5】
前記抽出部は、前記巻線部に対して該巻線部における電力の一部がその一次コイルに入力されるように配置されたトランス構造が形成されるように配置され、該トランス構造を
介して前記電力の一部を抽出するように構成され、
前記トランス構造は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分を一次コイルとして有し、且つ、その二次コイルを、前記モータにおいて前記巻線部分とともに巻き込み前記供給部に接続して配置される、
請求項
1に記載のモータ。
【請求項6】
前記トランス構造は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分同士の間に、該トランス構造の一次コイル側を接続し、且つ、該トランス構造の二次コイル側を前記供給部に接続して配置される、
請求項
2に記載のモータ。
【請求項7】
前記抽出部は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分の間で、該巻線部における電力の一部を抽出するように構成される、
請求項
1又は請求項
2に記載のモータ。
【請求項8】
前記供給部は、前記抽出部により抽出された電力を蓄電する二次電池を有し、該二次電池から前記外部装置に電力を供給する、
請求項1から請求項
7の何れか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記抽出部は、更に、前記モータとドライバとを繋ぐ動力線を流れる駆動電流に所定信号を重畳し、又は該動力線を流れる駆動電流から該所定信号を抽出することが可能となるように構成され、
前記抽出部は、
前記外部装置との間で、所定信号の送信又は受信の少なくとも一方が可能に構成される第1通信部と、
前記ドライバとの間で、前記所定信号に関連する所定通信を前記動力線を介して実行可能に構成される第2通信部と、
を有する、請求項1から請求項
8の何れか1項に記載のモータ。
【請求項10】
請求項
1から請求項
7の何れか1項に記載のモータに対して、駆動電流を供給するドライバであって、
前記巻線部に接続され、該巻線部に前記駆動電流を供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に対して直列又は並列になるように前記巻線部に接続され、該巻線部を流れる前記駆動電流に電力を重畳させる重畳部と、
を備える、ドライバ。
【請求項11】
前記外部装置は、前記モータに取り付けられたエンコーダである、
請求項1から請求項
9の何れか1項に記載のモータ。
【請求項12】
前記外部装置は、前記モータに取り付けられたエンコーダであって、
前記トランス構造を介して、前記巻線部と前記エンコーダとの間で所定信号の授受を可能とする信号交換部を、更に備える、
請求項
2から請求項
6の何れか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、及びドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な目的で負荷を駆動するためのモータにとって、その制御を正確に実行するためにはモータの状態を把握する必要であり、一般にはエンコーダ等の検出装置が利用されている。エンコーダを駆動するためには電力を供給しなければならないが、一般には、サーボシステム(例えば、ドライバ)等とエンコーダとをケーブルで結び、そのケーブルを介して電力供給を行う場合がある。また、別法として、特許文献1では、サーボシステムとは異なる構成の電源からエンコーダに電力供給が行われる構成が開示されている。すなわち、何らかの理由でシステム側からエンコーダに供給される電力が低下した場合に稼働する、エンコーダ用の補助電源が開示されている。
【0003】
また、エンコーダへの電力供給に関する他の形態として、特許文献2には、サーボシステム側と無線通信を行うエンコーダに対して、その電力を外部から無線で供給する構成が開示されている。更に、特許文献3には、サーボシステム側と無線通信を行うエンコーダに対して、その電力は外部から有線で供給される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-251817号公報
【文献】特開2001-297389号公報
【文献】特開2002-197581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータに取り付けられるエンコーダで消費される電力は、モータでの消費電力と比べると小さいものの、駆動するモータの状態を常にモニターする必要があるため、安定した電力供給が求められる。有線ケーブルでエンコーダとモータのドライバをつなぐことで電力供給を行うのが一般であるが、その場合、モータの動力線に加えて、エンコーダに関するケーブルを配線する必要があり、配線の作業負荷の増加やケーブルに起因するコスト増加等が生じ得る。
【0006】
また、電力を無線でエンコーダに供給する技術についても従来から提案はされているが、実用的な場面での実現は容易ではない。一般に、モータは設備装置の駆動軸の動力源であるため、当該設備装置内に組み込まれる。そのため、エンコーダに対して無線で電力供給を行おうとしても、その無線の送信設備(アンテナ)とエンコーダとの間には一定の距離が生じてしまい、有線での供給と比べると電力の供給効率が著しく低下する。また、設備装置そのものが移動する装置である場合(ロボット等)、障害物によって無線による電力伝送が妨げられたり、設備装置の位置や姿勢によって受信を好適に行えなかったりする恐れがあり、エンコーダへの安定した電力供給を十分に担保し得ない。また、モータの周囲には、センサ装置等の、電力を要する様々な装置が配置される。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、モータに関連する外部装置への安定した電力供給を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るモータは、外部のドライバから動力線を介して電力が供給されるモータであって、前記ドライバから前記モータに供給された電力の一部を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された電力を外部装置に供給する供給部と、を備える。上記モータは、単相の交流モータでもよく三相の交流モータでもよい。また、モータの巻線部でのコイルの結線態様は、いわゆるデルタ結線でもよくスター結線(もしくはY結線)でもよい。また、モータのステータに対する巻線部のコイルの巻き方については、分布巻きでも集中巻きでもよい。すなわち、本発明のモータにおいて、巻線部の具体的な形成については、特段に制限する意図は無い。また、上記モータは、前記ドライバから前記動力線を介して、モータ内部の巻線部に電力が入力される電力入力部を、更に備えてもよく、その場合、前記抽出部は、前記巻線部における電力の一部を抽出してもよく、別法として、前記抽出部は、前記動力線における電力の一部を抽出してもよい。
【0009】
そして、上記モータにおいて、前記抽出部は、前記巻線部に対して該巻線部における電力の一部がその一次コイルに入力されるように配置されたトランス構造が形成されるように配置され、該トランス構造を介して前記電力の一部を抽出するように構成されてもよい。この場合、上記モータでは、モータの巻線部に対して配置されたトランス構造を利用して、動力線を介してモータに供給された駆動電力の一部を外部装置の電力として抽出部が抽出する。ここで、トランス構造は、巻線部を流れる交流電流の一部がその一次コイル側に入力されるようにモータ内に形成される。トランス構造は、単巻型の変圧器、複巻型の変圧器のいずれでもよい。なお、単巻型の変圧器の場合、二次コイルは、一次コイルの一部を両者で共有する部分のコイルをいう。一般に、モータのステータコアにコイルが巻かれている場合、そのコイルエンドには、一定の高さのコイルがステータコアから飛び出した状態になるため、そのコイルエンドにある巻線部に対して、トランス構造を形成することもできる。別法としては、ステータコアにコイルが巻かれる空間に、トランス構造の二次コイルも一緒に巻くようにしてもよい。
【0010】
そして、トランス構造の二次コイルからは、一次コイルを流れる交流電流およびトランス構造による巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)に応じた交流電流が抽出される。そして、供給部が抽出された交流電流を整流して外部装置に供給する。なお、供給部は、必要に応じて、整流後の電圧を、外部装置の駆動に適した電圧に変圧しても構わない。また、供給部は、整流後の電力を二次電池に蓄電しておくことで、外部装置に、より安定した電力供給を行うことができる。
【0011】
このように、動力線を介してモータに供給される電力の一部を、外部装置の電力として抽出しそれを外部装置に供給する構成を採用することで、モータの位置や姿勢にかかわらず安定して外部装置に電力供給することが可能となるとともに、外部装置への電力供給のためのケーブル配線を行う必要がないため、その作業負荷を大きく軽減することができる。なお、外部装置は、前記モータに取り付けられたエンコーダであってもよく、別法として、モータの内部や外部に配置された、温度センサや振動センサ等のセンサ装置であってもよい。
【0012】
また、上記のモータにおけるトランス構造について、具体的な態様を例示する。第1に、前記トランス構造は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分に対して、該トランス構造の一次コイル側を直列に接続し、且つ、該トランス構造の二次コイル側を前記供給部に接続して配置されてもよい。第2に、前記トランス構造は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分に対して、該トランス構造の一次コイル側を並列に接続し、且つ、該トランス構造の二次コイル側を前記供給部に接続して配置されてもよい。第3に、前記トランス構造は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分を一次コイルとして有し、且つ、その二次コイルを、前記モータにおいて前記巻線部分とともに巻き込み前記供給部に接続して配置されてもよい。トランス構造は、上述の態様以外の態様も採用することができる。
【0013】
また、上記のモータにおいて、上記のトランス構造が配置されない場合、前記抽出部は、前記巻線部に含まれる一部又は全部の相の巻線部分に対して並列となるように形成され、且つ、前記供給部に接続されてもよい。すなわち、この形態における抽出部は、巻線部分における電力の一部を、トランス構造を介さずに、換言すれば、当該巻線部分から直接的にエンコーダ用の電力として抽出する。このような場合でも、安定してエンコーダに電力供給することが可能となり、以て、エンコーダへの電力供給のためのケーブル配線を行う必要がないため、その作業負荷を大きく軽減することができる。
【0014】
ここで、上述までのモータにおいて、前記トランス構造を介して、前記巻線部と前記エンコーダとの間で所定信号の授受を可能とする信号交換部を、更に備えてもよい。すなわち、これは、トランス構造の動作を、エンコーダとモータの巻線部との間の所定信号の授受にも利用するものである。モータの巻線部は、動力線を介して外部のドライバに接続されているので、信号交換部による所定信号の授受を経て、エンコーダとドライバが通信を行うことが可能になる。
【0015】
また、本発明を、上述までのモータに対して駆動電流を供給するドライバの側面から捉えることができる。当該ドライバは、前記供給部により供給される電力を算出し、該算出された電力が、前記エンコーダの駆動に要する電力に関連する閾値より低い場合には、前記モータの駆動電流においてd軸電流値を増加させて、該モータへ供給される電力を増加させるように構成されてもよい。モータの駆動制御において、特に、モータの駆動電流が低い領域では、d軸電流はモータが発揮するトルクに寄与しない電流である。そして、このような低電流領域では抽出部により抽出される電力も低くなり、エンコーダの駆動のために十分な電力に至らない可能性がある。そこで、上記のように、推測されるエンコーダへの供給電力が閾値より低い場合には、モータの駆動電流においてd軸電流値を増加させることで、モータの動作に大きな影響を及ぼすことなく、エンコーダに十分な電力を供給することが可能となる。
【0016】
また、別法として、本発明のドライバは、前記モータが停止している場合、q軸電流値を、該モータを停止させるのに必要な一定値とした状態でd軸電流値が時間経過とともに変動するように該モータに電力供給を行うように構成されてもよい。当該構成によれば、モータが停止している場合、もしくはモータを停止させなければならない場合でも、エンコーダに十分な電力を供給することが可能となる。なお、上記の場合のd軸電流値の推移として、正弦波形状の推移、矩形波形状の推移、三角波形状の推移等を採用することができる。
【0017】
また、別法として、本発明のドライバは、前記巻線部に接続され、該巻線部に前記駆動電流を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路に対して並列になるように前記巻線部に接続され、該巻線部を流れる前記駆動電流に電力を重畳させる重畳部と、を備えてもよい。このような構成により、外部装置への電力供給に適した交流電力をモータの巻線部に送り込むことができる。
【0018】
更に、本発明を、外部から供給された電力の一部を抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された電力を外部装置に供給する供給部と、を備えるモータに対して、駆動電力を供給するドライバの側面から捉えることもできる。なお、当該モータについては、上述までに示した技術思想を適用することができる。ここで、当該ドライバは、前記モータの駆動に必要な駆動電力に、前記外部装置に供給する第1電力を重畳させて、該モータに出力する出力部を備えてもよく、その場合、前記出力部は、前記モータの駆動電流におけるd軸電流値を制御することで前記第1電力として重畳される電力を調整してもよい。更には、出力部は、前記d軸電流値に加えて、前記モータの駆動電流におけるq軸電流値も制御して、前記第1電力を生成してもよい。 本願開示において、当該d軸電流値及びq軸電流値の制御には、増加及び減少の概念が含まれる。モータの種類(例えば、SPM、IPM等)によっては、d軸電流値、q軸電流値の増減の組合せによって重畳される第1電力を調整することができる。ドライバがこのような構成を有することで、モータへの駆動電力の供給に合わせて、抽出部および供給部を介した外部装置への電力供給を実現することができる。このことは、外部装置への電力供給に要する電源や配線等の構成を単純化することに資するものである。
【0019】
そして、上記ドライバにおいて、前記出力部は、前記ドライバから前記モータに出力が許容される許容電流の範囲内で、前記d軸電流値を制御して前記第1電力を生成してもよい。このようにd軸電流を好適に利用することで、モータの安定的な駆動と外部装置への好適な電力供給の両立を図ることができる。
【0020】
ここで、上記のドライバにおいて、前記出力部は、前記モータの駆動回転数に基づいて、前記モータの駆動電流におけるd軸電流値を制御してもよい。モータが有する抽出部における電力の抽出効率が、モータの駆動回転数と関連する、その駆動電流の電気角周波数に依存する場合がある。例えば、抽出部が上記のトランス構造によって電力抽出を実現する場合、駆動電流の電気角周波数が高いほどその抽出効率は高くなる傾向がある。したがって、このような電力抽出の特性を考慮して、出力部がd軸電流値を制御することで、外部装置への好適な電力供給を実現することができる。
【0021】
例えば、前記出力部は、前記モータの駆動回転数が所定の閾値より高いときに、前記d軸電流値が時間経過とともに変動しない方式で該d軸電流値を制御して前記第1電力を生成し、前記モータの駆動に必要な駆動電力に重畳させてもよい。所定の閾値は、抽出部における電力抽出の効率が比較的高くなる、駆動電流の電気角周波数に対応するモータの駆動回転数である。したがって、モータの駆動回転数が所定の閾値より高いには、抽出部における電力抽出の効率が比較的高く見込まれるため、d軸電流値が時間経過とともに変動しない方式で制御すればよい。
【0022】
一方で、前記出力部は、前記モータの駆動回転数が所定の閾値以下であるときには、抽出部における高効率の電力抽出が見込まれにくいため、前記d軸電流値が時間経過とともに変動する方式で該d軸電流値を制御して前記第1電力を生成し、前記モータの駆動に必要な駆動電力に重畳させてもよい。また、前記d軸電流値が時間経過とともに変動する方式の一例として、前記出力部は、前記モータの駆動回転数に対応する電気角周波数より高い周波数で変動させればよい。なお、d軸電流値が時間経過とともに変動する推移として、正弦波形状の推移、矩形波形状の推移、三角波形状の推移等を採用することができる。
【0023】
また、上記ドライバにおいて、前記出力部は、前記供給部により供給される電力が、前記外部装置の駆動に要する電力に関連する閾値より低い場合には、前記モータの駆動電流においてd軸電流値を制御して前記第1電力を生成し、該モータに出力してもよい。
【0024】
また、上記ドライバにおいて、前記モータが停止している場合、前記出力部は、q軸電流値を、該モータを停止させるのに必要な一定値とした状態で、d軸電流値が時間経過とともに変動させて前記第1電力を生成し、該モータに出力してもよい。当該構成によれば、モータが停止している場合、もしくはモータを停止させなければならない場合でも、抽出部と供給部を介して、外部装置に好適に電力を供給することができる。
【0025】
そして、上述までのドライバにおいて、前記出力部は、前記モータの前記抽出部により抽出された電力と、前記外部装置に供給すべき電力とに基づいて、前記d軸電流値をフィードバック制御してもよい。このような構成により、モータの抽出部及び供給部を介した外部装置への電力供給をより好適に実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
モータに関連する外部装置への安定した電力供給を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】モータを駆動制御する制御システムの概略構成を示す図である。
【
図3】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられたトランス構造の配置を模式的に示す第1の図である。
【
図4】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられたトランス構造の配置を模式的に示す第2の図である。
【
図5】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられたトランス構造の配置を模式的に示す第3の図である。
【
図6】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられたトランス構造の配置を模式的に示す第4の図である。
【
図7】モータの巻線部、および巻線部に対して設けられたトランス構造の配置を模式的に示す第5の図である。
【
図8】ドライバによるモータへの電力供給制御の流れを示すフローチャートである。
【
図9】モータの駆動回転数とドライバにより印加される電流との相関を示す図である。
【
図10】電力供給のためのd軸電流値の増加形態を示す第1の図である。
【
図11】電力供給のためのd軸電流値の増加形態を示す第2の図である。
【
図13】モータの回路方程式を検証するための回路モデルの概略構成を示す図である。
【
図14】変形例に係るモータの概略構成を示す第1の図である。
【
図15】変形例に係るモータの概略構成を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施例1>
図1は、モータの駆動制御を行う制御システムの概略構成を示す図である。先ず、制御システムについて説明する。制御システムは、PLC(Programmable Logic Controller)5が、上位コントローラとしてネットワーク1に接続されている。そして、そのネットワーク1には、複数台のサーボドライバ4が接続され、PLC5との信号の授受が可能となるように構成されている。なお、
図1においては、1台のサーボドライバ4について、代表的にその機能的な構成を詳細に記載しているが、他のサーボドライバ4a、4bについてもサーボドライバ4と同等の機能的構成を有している。また、モータ2は、サーボドライバ4と動力線11で接続され、駆動電力の供給を受けている。同じように、モータ2a、2bは、それぞれ動力線11a、11bを介してサーボドライバ4a、4bから駆動電力の供給を受けている。以降、モータおよびサーボドライバの構造については、代表的にモータ2およびサーボドライバ4に基づいて説明する。
【0029】
ここで、モータ2は、所定の負荷装置を駆動するために、PLC5からの指令に従って駆動制御される。一例として、負荷装置としては、各種の機械装置(例えば、産業用ロボットのアームや搬送装置)が例示でき、モータ2はその負荷装置を駆動するアクチュエータとして装置内に組み込まれている。また、モータ2は、ACサーボモータである。別法として、モータ2は誘導モータやDCモータであってもよい。モータ2は、コイルがステータコアに巻かれて形成された巻線部を含むステータと、永久磁石が組み込まれたロータとを有するモータ本体21と、当該ロータの回転に連動して回転する検出円盤を有し、ロータの回転状態を検出可能なエンコーダ22を備える。エンコーダ22による回転検出は、インクリメンタル方式であってもよく、アブソリュート方式であってもよい。
【0030】
エンコーダ22による検出信号は、後述するサーボドライバ4が有する通信部42を介して、無線でサーボドライバ4に送信される。送信された検出信号は、同じく後述するサーボドライバ4が有する制御部41におけるサーボ制御に供される。エンコーダ22による検出信号は、例えば、モータ2の回転軸の回転位置(角度)についての位置情報、その回転軸の回転速度の情報等を含む。
【0031】
ここで、サーボドライバ4は、制御部41、通信部42、電力変換部43を有する。制御部41は、PLC5からの指令に基づいたモータ2のサーボ制御を司る機能部である。制御部41は、ネットワーク1を介してPLC5からモータ2の動作(モーション)に関する動作指令信号とエンコーダ22から出力された検出信号を受けとって、モータ2の駆動に関するサーボ制御、すなわち、モータ2の動作に関する指令値を算出する。制御部41は、位置制御器、速度制御器、電流制御器を利用したフィードバック制御等を実行する。また、制御部41は、サーボドライバ4で行われる、モータ2のサーボ制御以外の制御も司るように構成される。
【0032】
通信部42は、エンコーダ22とサーボドライバ4との間の無線通信を司る機能部である。サーボドライバ4の通信部42は、無線通信を開始するに当たり、自己の通信対象となるエンコーダを識別する処理により、エンコーダ22が無線通信の対象であることを特定している。したがって、通信部42は、モータ2aのエンコーダやモータ2bのエンコーダと混線して無線通信を行うことはない。同様に、モータ2aのエンコーダ、モータ2bのエンコーダは、それぞれ、サーボドライバ4a、4bとのみ無線通信を行う。電力変換部43は、制御部41で算出されたモータ2の動作に関する指令値に基づいて、モータ2に駆動電力を、動力線11を介して供給する。なお、この供給電力の生成には、交流電源7からサーボドライバ4に対して送られる交流電力が利用される。本実施例では、サーボドライバ4は三相交流を受けるタイプのものであるが、単相交流を受けるタイプのものでもよい。別法として、サーボドライバ4は直流を受けるタイプのものでもよい。
【0033】
次に、モータ2の概略構成について、
図2に基づいて説明する。モータ2は、三相(U相、V相、W相)の交流モータであり、モータ本体21とエンコーダ22を有する。モータ本体21には、ロータ212とステータ213が含まれる。ロータ212には永久磁石が組み込まれ、回転可能に支持されている。ステータ213には、電磁鋼板で形成されたステータコアにコイルが巻かれ、巻線部25が形成されている。本実施形態では、巻線部25における各相の結線態様はY結線であるが、それに代えてデルタ結線であっても構わない。また、ステータコアに対するコイルの巻き方は、本実施形態では分布巻き、集中巻きのどちらであっても構わない。
図2に示す構成はあくまでも概略的なものであり、本発明の技術思想は、モータの具体的な構成にかかわらず適用することが可能である。
【0034】
サーボドライバ4から駆動電力を供給するための動力線11は、コネクタ211に接続される。コネクタ211は、本発明の電力入力部に相当する。コネクタ211は、巻線部25の各相に接続されている。そして、モータ2においては、巻線部25に対してトランス構造(
図3~
図5に示す53、63、73を参照。詳細は後述する。)が配置され、そのトランス構造を利用して、巻線部25のコイルに供給された駆動電力の一部をエンコーダの電力として抽出する抽出部214が設けられている。すなわち、抽出部214は、モータ本体21の巻線部25に流れている交流電流をトランス構造の一次コイル側に流すことで、二次コイル側にエンコーダ22の駆動電流として利用できる電流を抽出する。なお、
図3および
図4に示す形態では、トランス構造はステータ213のコイルエンドにある巻線部25に対して形成され、
図5に示す形態では、ステータコアに巻かれる巻線部25のコイルとともに、当該ステータコアに対してトランス構造の一次コイルを巻くようにしてトランス構造が形成される。トランス構造については、コイルエンドに形成される形態以外の形態を採用しても構わない。
【0035】
抽出部214は、トランス構造の2次コイルから出力される交流電流による電力を、エンコーダ22のための電力として抽出する。そこで、供給部215によって整流され、必要に応じて供給部215が有するDC―DCコンバータによってエンコーダ22の駆動に適した直流電圧に昇降圧される。供給部215は、エンコーダ22がモータ本体21に取り付けられた状態で、直流電力をエンコーダ22側に、特に、ロータ212の回転の検出処理を行う処理部221に供給可能となるように、エンコーダ22に対して電気的に接続された状態が形成される。また、供給部215は、整流後の直流電力を蓄電できる二次電池を有していてもよい。その場合、巻線部25に駆動電流が流れない期間や、もしくは駆動電流が極めて低い期間においても、エンコーダ22に対して電力を供給することができる。
【0036】
また、本実施形態のモータ2では、抽出部214による抽出処理を利用して、モータ本体21の巻線部25とエンコーダ22の処理部221との間で所定信号の授受が可能となるように構成される。当該所定信号の授受は、信号交換部216により、上記のトランス構造を利用して実現される。巻線部25から処理部221に所定信号を送る場合には、巻線部25のコイルに所定信号を重畳させた電流を流すとともに当該電流がトランス構造の一次コイル側を流れることで、抽出部214がトランス構造の二次コイル側において所定信号に対応する電流を生成することができる。そして、信号交換部216により、この抽出された対応電流が処理部221に渡される。この場合、所定信号の持つ情報を正確に伝えるために、信号交換部216は、抽出部214によって抽出された対応電流に対して整流処理は行わない。一方で、抽出された対応電流が微弱な場合には、信号交換部216は所定の増幅処理を行ってもよい。
【0037】
また、処理部221から巻線部25に所定信号を送る場合には、信号交換部216を介してトランス構造の二次コイル側に所定信号を含む電流を流すことで、抽出部214がトランス構造の一次コイル側に所定信号に対応する電流を生成し、それを巻線部25のコイルに流すことができる。なお、この場合も、信号交換部216によって所定信号に対して所定の増幅処理を行ってもよい。巻線部25のコイルは、動力線11を介してサーボドライバ4に電気的に接続されているため、処理部221から出された所定信号に対応する電流を介して、エンコーダ22からサーボドライバ4に対して所定信号を送信することができる。上述したように、エンコーダ22とサーボドライバ4との間には、通信部42を介した無線通信が可能となるように構成されているが、信号交換部216を介した所定信号の授受は、当該無線通信が可能となる前の状態等、一定の条件の下で有用な通信形態である。
【0038】
次に、モータ本体21の巻線部25、および巻線部25に対して設けられたトランス構造の配置について、複数の形態を例示する。先ず、第1の形態について、
図3に基づいて説明する。巻線部25には、U相、V相、W相の三相の巻線部分L5、L6、L7が含まれている。各相の巻線部分の結線態様はY結線であり、各巻線部分の接合箇所が中性点とされる。U相の巻線部分L5について、
図3においては、そのインダクタンス成分が51で示され、抵抗成分が52で示される。同じように、V相の巻線部分L6について、そのインダクタンス成分が61で示され、抵抗成分が62で示され、更に、W相の巻線部分L7について、そのインダクタンス成分が71で示され、抵抗成分が72で示される。
【0039】
そして、各相において抽出部214を形成するトランス構造が配置されている。具体的には、U相においては、巻線部分L5に対してU相のトランス構造53の一次コイル531が直列に接続され、V相においては、巻線部分L6に対してV相のトランス構造63の一次コイル631が直列に接続され、W相においては、巻線部分L7に対してW相のトランス構造73の一次コイル731が直列に接続される。そして、U相のトランス構造53の二次コイル532と、V相のトランス構造63の二次コイル632と、W相のトランス構造73の二次コイル732は、供給部215に接続される。更に、各二次コイル532、632、732は、信号交換部216にも接続される。
【0040】
なお、各相のトランス構造の巻線比(一次コイルの巻線数に対する二次コイルの巻線数の比)は、基本的には同じであるが、異なっていても構わない。また、
図3に示す形態では、三相の全てにトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続しているが、三相のうち一部の相にのみトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続してもよい。別法として、三相の全てにトランス構造を配置し、その一部のトランス構造の二次コイルを供給部215に接続し、残りのトランス構造の二次コイルを信号交換部216に接続してもよい。この場合、供給部215に接続されエンコーダ22への電力供給を司るトランス構造の巻線比と、信号交換部216に接続されエンコーダ22との所定信号の授受を司るトランス構造の巻線比は、それぞれの目的に応じて好適に設定すればよい。
【0041】
このように構成される巻線部25とトランス構造53、63、73を採用することで、動力線11を介してモータ2に供給された電力の一部を抽出部214によってエンコーダ22の駆動電力として抽出することができる。当該構成によれば、モータ2が駆動している場合は、常に安定してエンコーダ22の電力も供給されることになり、またそのためにエンコーダ22に対して配線するケーブルを必要としないため、ケーブルの配線作業が大きく軽減されそのコストも抑制できる。なお、第1の形態では、各相のトランス構造は、ステータ213のコイルエンドを利用して配置されるのが好適である。
【0042】
次に、第2の形態について、
図4に基づいて説明する。モータ本体21の巻線部25の構成については、上記の第1の形態と同じであるためその詳細な説明は割愛する。第2の形態では、三相それぞれの巻線部分L5、L6、L7に対して、U相に対応するトランス構造53の一次コイル531が並列に接続され、且つ、V相に対応するトランス構造63の一次コイル631が並列に接続され、且つ、W相に対応するトランス構造73の一次コイル731が並列に接続される。詳細には、一次コイル531を含むラインL50と、一次コイル631を含むラインL60と、一次コイル731を含むラインL70はY結線されるとともに、他端はそれぞれU相の巻線部分L5、V相の巻線部分L6、W相の巻線部分L7に接続されている。そして、トランス構造53の二次コイル532と、V相のトランス構造63の二次コイル632と、W相のトランス構造73の二次コイル732は、供給部215に接続される。更に、各二次コイル532、632、732は、信号交換部216にも接続される。
【0043】
なお、第2の形態においても、各相のトランス構造の巻線比は、基本的には同じであるが、異なっていても構わない。また、
図4に示す形態では、三相の全てに対応するトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続しているが、三相のうち一部の相にのみに対応するようにトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続してもよい。別法として、三相の全てに対応するトランス構造を配置し、その一部のトランス構造の二次コイルを供給部215に接続し、残りのトランス構造の二次コイルを信号交換部216に接続してもよい。この場合、供給部215に接続されエンコーダ22への電力供給を司るトランス構造の巻線比と、信号交換部216に接続されエンコーダ22との所定信号の授受を司るトランス構造の巻線比は、それぞれの目的に応じて好適に設定すればよい。
【0044】
このように構成される巻線部25とトランス構造53、63、73を採用することで、動力線11を介してモータ2に供給された電力の一部を抽出部214によってエンコーダ22の駆動電力として抽出することができる。当該構成によれば、モータ2が駆動している場合は、常に安定してエンコーダ22の電力も供給されることになり、またそのためにエンコーダ22に対して配線するケーブルを必要としないため、ケーブルの配線作業が大きく軽減されそのコストも抑制できる。なお、第2の形態でも、第1の形態と同様に、各相のトランス構造は、ステータ213のコイルエンドを利用して配置されるのが好適である。
【0045】
次に、第3の形態について、
図5に基づいて説明する。モータ本体21の巻線部25の構成については、上記の第1の形態と同じであるためその詳細な説明は割愛する。ただし、第3の形態では、各相の巻線部分L5、L6、L7のコイル成分51、61、71を、各相に対応するトランス構造53、63、73の一次コイル531、631、731として利用する。詳細には、U相においては、コイル成分51を一次コイル531としてトランス構造53を形成し、V相においては、コイル成分61を一次コイル631としてトランス構造63を形成し、W相においては、コイル成分71を一次コイル731としてトランス構造73を形成する。したがって、第3の形態では、各相のトランス構造53、63、73の二次コイル532、632、732は、一次コイルでもある巻線部の主要なコイルとともにステータコアに対して巻かれることで、各相のトランス構造53、63、73が形成されることになる。そして、トランス構造53の二次コイル532と、V相のトランス構造63の二次コイル632と、W相のトランス構造73の二次コイル732は、供給部215に接続される。更に、各二次コイル532、632、732は、信号交換部216にも接続される。
【0046】
なお、第3の形態においても、各相のトランス構造の巻線比は、基本的には同じであるが、異なっていても構わない。また、
図5に示す形態では、三相の全てに対応するトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続しているが、三相のうち一部の相にのみに対応するようにトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続してもよい。別法として、三相の全てに対応するトランス構造を配置し、その一部のトランス構造の二次コイルを供給部215に接続し、残りのトランス構造の二次コイルを信号交換部216に接続してもよい。この場合、供給部215に接続されエンコーダ22への電力供給を司るトランス構造の巻線比と、信号交換部216に接続されエンコーダ22との所定信号の授受を司るトランス構造の巻線比は、それぞれの目的に応じて好適に設定すればよい。
【0047】
このように構成される巻線部25とトランス構造53、63、73を採用することで、動力線11を介してモータ2に供給された電力の一部を抽出部214によってエンコーダ22の駆動電力として抽出することができる。当該構成によれば、モータ2が駆動している場合は、常に安定してエンコーダ22の電力も供給されることになり、またそのためにエンコーダ22に対して配線するケーブルを必要としないため、ケーブルの配線作業が大きく軽減されそのコストも抑制できる。また、第3の形態では、各トランス構造の二次コイルをステータコアに巻きつけるため、ステータ213のコイルエンドをコンパクトに形成することができる。
【0048】
更に、
図3から
図5に示したトランス構造53、63、73は、複巻型のトランス構造であるが、その変形例として、単巻型のトランス構造を採用することもできる。例えば、
図5に示す形態に単巻型のトランス構造を採用した場合、モータ2の巻線部25を一次コイルとし、且つ、巻線部25の一部を二次コイルとすることで、トランス構造53、63、73が形成される。すなわち、巻線部25における二次コイル部分は、一次側と二次側とで共有されることになる。
【0049】
また、
図4に示した形態の変形例について
図6に基づいて説明する。
図4に示す形態では、上記の通り、三相それぞれの巻線部分L5、L6、L7に対してトランス構造53、63、73が並列に配置されている。その形態に変えて、各相の巻線部分L5、L6、L7の間から電力を抽出し、その抽出された電力が、それぞれ整流回路、平滑回路、DC-DCコンバータによる昇降圧回路に送られるように回路を構成してもよい。このような形態では、抽出部214が、巻線部25からトランス構造を介した電力の抽出構成ではなく、巻線部25から直接的に電力を抽出する構成となるが、これも本願発明の範疇に属するものである。
【0050】
次に、第4の形態について、
図7に基づいて説明する。モータ本体21の巻線部25の構成については、上記の第1の形態と同じであるためその詳細な説明は割愛する。第4の形態では、U相とV相の巻線部分L5とL6に対して並列になるようにU相とV相の間にトランス構造53の一次コイル531が接続され、V相とW相の巻線部分L6とL7に対して並列になるようにV相とW相の間にトランス構造63の一次コイル631が接続され、W相とU相の巻線部分L7とL5に対して並列になるようにW相とU相の間にトランス構造73の一次コイル731が接続される。そして、トランス構造53の二次コイル532と、トランス構造63の二次コイル632と、トランス構造73の二次コイル732は、供給部215に接続される。更に、各二次コイル532、632、732は、信号交換部216にも接続される。
【0051】
なお、第4の形態においても、各相のトランス構造の巻線比は、基本的には同じであるが、異なっていても構わない。また、
図7に示す形態では、三相間の全てに対応するトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続しているが、三相間のうち一部にのみに対応するようにトランス構造を配置し、その二次コイルを供給部215と信号交換部216に接続してもよい。別法として、三相間の全てに対応するトランス構造を配置し、その一部の相間のトランス構造の二次コイルを供給部215に接続し、残りの相間のトランス構造の二次コイルを信号交換部216に接続してもよい。この場合、供給部215に接続されエンコーダ22への電力供給を司るトランス構造の巻線比と、信号交換部216に接続されエンコーダ22との所定信号の授受を司るトランス構造の巻線比は、それぞれの目的に応じて好適に設定すればよい。
【0052】
このように構成される巻線部25とトランス構造53、63、73を採用することで、動力線11を介してモータ2に供給された電力の一部を抽出部214によってエンコーダ22の駆動電力として抽出することができる。当該構成によれば、モータ2が駆動している場合は、常に安定してエンコーダ22の電力も供給されることになり、またそのためにエンコーダ22に対して配線するケーブルを必要としないため、ケーブルの配線作業が大きく軽減されそのコストも抑制できる。なお、第4の形態でも、第1の形態と同様に、各相のトランス構造は、ステータ213のコイルエンドを利用して配置されるのが好適である。
【0053】
<電力供給制御>
上述の第1~第3の形態の巻線部25およびトランス構造を有するモータ2を採用することで、エンコーダ22の電力をモータ2へ供給される駆動電力から抽出することが可能となるが、例えば、モータ2が低速軽負荷運転される場合など、モータ2へ供給される駆動電力が低い場合には、エンコーダ22の駆動に十分な電力を供給部215から供給することが困難となる恐れがあり、エンコーダ22の作動に影響を及ぼし得る。そこで、このようにエンコーダ22への電力供給が不安定化するのを回避するために、
図8に示す電力供給制御が行われる。
【0054】
図8に示す電力供給制御は、サーボドライバ4の制御部41により繰り返し実行される、モータ2への電力供給に関する制御である。なお、モータ2への電力供給は、公知のベクトル制御を利用して実現されるため、ベクトル制御の詳細についてはその説明を割愛する。先ず、S101では、供給部215によりエンコーダ22へ供給される電力が算出される。当該供給電力は、実際にモータ2に動力線11を介して供給される電力の一部が抽出された電力であるから、具体的には、各相に印加される電圧、モータ本体21の誘起電圧やインピーダンス、トランス構造のインピーダンス等を考慮して算出することができる。
【0055】
そして、S102では、S101で算出された供給電力が、エンコーダ22の駆動に要する電力に関連する閾値より低いか否かが判定される。当該閾値は、エンコーダ22の動作により変動する駆動電力の変動幅のうちの最大値とすることができるが、それ以外の値(変動幅の最小値や中間値)であっても構わない。S102で肯定判定されると、処理はS103へ進む。S103では、モータ2への電力供給のためのベクトル制御においてd軸電流値を増加させる処理が行われる。d軸電流値はもともとモータ2のトルクに寄与しない電流であり、また、モータ2への供給電流が少ない場合、制御部41による電流制御の余地もあるため、S103の処理によりd軸電流値を増加させてもモータ2の駆動に大きな影響は及びにくい。なお、d軸電流値の増加量は、S101で算出された供給電力と上記閾値との差分が大きいほどd軸電流値の増加量を大きくするように調整すればよい。また、S102で否定判定されると、本制御を終了する。
【0056】
図8に示す電力供給制御によれば、モータ2の運転状態にかかわらずエンコーダ22に対して適切な電力供給を実現することができる。
【0057】
<電力供給制御の変形例1>
ここで、
図9~
図11に基づいて、d軸電流値を介した電力供給制御の詳細について説明する。当該変形例では、サーボドライバ4は、モータ2の駆動に必要な駆動電力に、エンコーダ22の駆動に必要な第1電力を重畳させて、該モータ2に出力する出力部を備える。当該出力部は、
図1に示す電力変換部43に相当し、又は電力変換部43の一部に組み込まれる機能部であって、モータ2の駆動電流におけるd軸電流値を制御することで第1電力としてモータ2の駆動電力に重畳される電力を調整する。以下に、当該第1電力の重畳を中心に説明する。
【0058】
図9は、モータ2の駆動回転数とサーボドライバ4により印加される電流との相関を示す図である。モータ2の低速領域(例えば、駆動回転数がV0以下の領域)では、その駆動制御においてd軸電流は印加されておらず、その駆動電流は実質的にq軸電流のみである。そして、モータ2の高速領域(例えば、駆動回転数がV0を超える領域)では、駆動回転数が高くなるに従いd軸電流値が大きくなるように駆動電流が印加される。したがって、モータ2のトルクに実質的に寄与する最大電流は線L100で表され、その内側(原点を含む側)で且つ低速側の領域R2における電流の上限値は概ね定格電流Irと一定となり、高速側の領域R1における電流の上限値は駆動回転数の増加に従って低下していく。なお、線L100の外側は、サーボドライバ4からモータ2に対して駆動電流を印加することが認められない又は印加することができない領域R0とされる。したがって、d軸電流値を介した上記電力供給制御は、領域R1及び領域R2内で行わなければならない。
【0059】
ここで、モータ2の状態が領域R1内の点P1で表される状態における電力供給制御について、
図10に基づいて説明する。点P1の状態では、
図10(a)に示すように、サーボドライバ4からモータ2に対してq軸電流値がIq1(線L102)、d軸電流値がId1(線L101)である駆動電流が出力されている。この状態では、仮にモータ2の駆動状態が変化しなければ、q軸電流値及びd軸電流値は時間経過とともに変動しない。そして、エンコーダ22の駆動に要する電力(第1電力)をモータ2の駆動に必要な電力に重畳させてモータ2に対して出力する場合、q軸電流値はIq1に維持したまま、d軸電流値をId1からId1’(線L101’)を上限として増加させる。d軸電流値Id1’は、
図10(b)に示すように、q軸電流値がIq1の場合に、モータ2に出力する電流が
図9の線L100上の点P1’に到達する、増加可能なd軸電流値の上限値になる。
図10(b)の円は、半径が定格電流Irの円である。
【0060】
そして、モータ2の駆動回転数が比較的高い場合、すなわち駆動回転数がV0を超える場合、モータ2の巻線を流れる電流の電気角周波数が相対的に高くなるため、上述した抽出部214のトランス構造での電力の抽出効率が高くなる。そこで、このような場合は、
図10(a)に示すように、d軸電流値が時間経過とともに変動しない方式でd軸電流値をId1から最大でId1’まで増加して、エンコーダ22の駆動に必要な電力(第1電力)をモータ2の駆動電力に重畳させ、それをサーボドライバ4からモータ2に出力する。出力された電力のうち一部、すなわち上記のd軸電流値の増加分に対応する電力は抽出部214によって抽出されてエンコーダ22側に供給される。
【0061】
次に、モータ2の状態が領域R2内の点P2で表される状態における電力供給制御について、
図11に基づいて説明する。点P2の状態では、
図11(a)に示すように、サーボドライバ4からモータ2に対してq軸電流値がIq1(線L102)、d軸電流値がId1(線L101で表されるが、Id1=0)である駆動電流が出力されている。この状態では、仮にモータ2の駆動状態が変化しなければ、q軸電流値及びd軸電流値は時間経過とともに変動しない。
【0062】
ここで、モータ2の駆動回転数が比較的低い場合、すなわち駆動回転数がV0以下である場合、モータ2の巻線を流れる駆動電流の電気角周波数が低くなるため、上述したトランス構造での電力の抽出効率が相対的に低くなる。そこで、エンコーダ22の駆動に要する電力(第1電力)をモータ2の駆動に必要な電力に重畳させてモータ2に対して出力する場合、q軸電流値はIq1に維持したまま、d軸電流値をId1からId1’に増加させるが、
図10(a)に示す形態と異なり、
図11(a)に示すように、所定の直流成分のオフセットとともにd軸電流値が時間経過とともに変動する方式でd軸電流値をId1’まで増加させる。すなわち、増加後のd軸電流値は、一定値ではなく、時間経過とともに一定の振幅及び一定の周波数で変動する値となる。その結果、
図11(b)に示すように、その増加後のd軸電流値を実効値で表すと、モータ2に出力する電流が
図9の線L100上の点P2’に到達する。なお、時間変化するd軸電流Id1’を
図11(b)に重ねて表すと、ΔIdの幅で変化することになる。
【0063】
なお、増加後のd軸電流値の変動に関し、その変動は所定の周波数で振動する正弦波の形態が好ましく、例えば、所定の周波数は、モータ2の駆動回転数に関連する駆動電流の電気角周波数よりも高い周波数である。また、増加後のd軸電流値は、矩形波形状や三角波形状の変動であってもよい。また、上記の直流成分のオフセット量は、エンコーダ22に供給すべき電力を踏まえて、適宜調整することができる。
【0064】
このように、モータ2の駆動状態が領域R2内にある場合は、d軸電流値が時間経過とともに変動する方式でd軸電流値をdI1から最大でdI1’まで増加して、エンコーダ22の駆動に必要な電力(第1電力)をモータ2の駆動電力に重畳させ、それをサーボドライバ4からモータ2に出力する。これにより、モータ2の駆動電流の電気角周波数が低い場合でも、出力された電力のうち一部、すなわち上記のd軸電流値の増加分に対応する電力が、抽出部214によって好適に抽出されてエンコーダ22側に供給される。
【0065】
なお、上述までのd軸電流値の制御については、モータ2の抽出部214により実際に抽出された電力と、エンコーダ22に供給すべき電力とに基づいてフィードバック制御が実行されるのが好ましい。当該フィードバック制御において、抽出部214により実際に抽出された電力に関する情報とエンコーダ22に供給すべき電力に関する情報は、無線によりモータ2側からサーボドライバ4側に送信される。別法として、エンコーダ22に供給すべき電力に関する情報については、既定の情報をサーボドライバ4が有していても構わない。
【0066】
以上より、本変形例は、抽出部214のトランス構造における電力抽出の効率を踏まえて、モータ2の駆動回転数に基づいて、エンコーダ22の駆動に必要な電力(第1電力)を重畳するためのd軸電流の制御を行う形態を示すものである。なお、本変形例では、高速領域と低速領域の境界となる駆動回転数をV0としているが、当該V0は、線L100で示される電流の境界値の変化点(駆動回転数の増加とともに電流の低下が開始される点)に必ずしも合わせる必要はなく、トランス構造における電力の抽出効率を踏まえて適宜設定してもよい。
【0067】
また、上記のd軸電流値の制御による、重畳される第1電力の生成については、d軸電流を増加することで第1電力の生成量の増加を図っているが、モータの種類(例えば、SPM、IPM等)によっては、d軸電流値、q軸電流値の増減の組合せによって重畳される第1電力を調整することができる。したがって、d軸電流値に加えてq軸電流値も制御して、更には各電流値を適宜、増加又は減少させて、第1電力の生成量を調整してもよい。
【0068】
<電力供給制御の変形例2>
モータ2が停止している場合(モータ2のロータ212が停止している場合)、もしくはモータ2を停止させなければいけない場合、一般的には、モータ2への電力供給は行われない。そのため、エンコーダ22への電力供給が困難となる。そこで、本変形例では、モータ2の停止時において、q軸電流値を、モータを停止させるのに必要な一定値とした状態でd軸電流値が時間経過とともに変動するように、例えば、d軸電流値が正弦波形状で推移するように、モータ2への電力供給を行う。このような電力供給を行った場合、q軸電流値がモータを停止させるのに必要な一定値であるため、モータ2は回転せずに停止した状態となる。一般的に、停止時にモータ2に掛かる外力が略零の場合はq軸電流値は零とし、偏荷重など何らかの外力が掛かっている場合には、その外力に抗するトルクを発揮する電流値をq軸電流値に設定すればよい。
【0069】
その上で、時間的な変動を伴うd軸電流を流すことで、モータ2を停止させながら、トランス構造を利用してモータ2に供給された電力の一部をエンコーダ22に供給することができる。なお、d軸電流値の推移として、正弦波形状の推移の他に、矩形波形状の推移、三角波形状の推移等を採用でき、これら以外の推移を伴うd軸電流を流すようにしてもよい。
【0070】
ここで、
図3に示す形態のモータ2においてトランス構造として単相変圧器を採用した場合の、モータ2の回路方程式について検討する。各相のトランス構造の特性は同一とする。なお、以下に示す数式において、電圧Vu、Vv、Vw、電流Iu、Iv、Iwは、ドライバ4の各相の出力電圧と電流を表し、Lu、Lv、Lwは、モータ2の各相の自己インダクタンスを表し、Muv、Mvw、Mwuは、モータ2の相間の相互インダクタンスを表している。また、ωeは電気角周波数を表し、Φuvwは電機子巻線最大鎖交磁束数を表し、Rは巻線抵抗を表し、Keは誘起電圧定数を表しており、sは微分演算子である。また、電圧Vux2、Vvx2、Vwx2、電流Iux2、Ivx2、Iwx2は、トランス構造の二次側の出力電圧と電流を表し、Lx1、Lx2、Mxは、それぞれ、トランス構造の一次側インダクタンス、二次側インダクタンス、相互インダクタンスを表し、Rx1、Rx2は、トランス構造の一次側と二次側の巻線抵抗を表している。また、θeは電気角である。
【0071】
モータ2の回路方程式は、以下の式1及び式2で表される。
【数1】
・・・(式1)
【数2】
・・・(式2)
【0072】
更に、UVWの三相からdqの2相への変換処理、及び固定座標系から回転座標系への変換処理を施すことで、以下の式3及び式4で示される回路方程式が得られる。
【数3】
・・・(式3)
【数4】
・・・(式4)
【0073】
ここで、上記式3および式4の妥当性を検証する。
図13にその検証のために用いる回路モデルの概略をその上段(a)に示す。直流電源より電力供給されるインバータ(ドライバ4に相当)によって、動力線を経由して駆動電流が供給されることで、モータ2が駆動される。
図13のモデルにおいては、動力線とモータ本体の間にトランス構造(変圧器)を配置し、その二次側に負荷RL(例えば、センサ等)を実装する。インバータの三相出力のそれぞれに単相変圧器となるトランス構造が含まれ、その次段にモータをつなぎ、インバータからの駆動電流によりモータを電流制御と速度制御で駆動する。当該電流制御等には、モータの特性に関連付けられたパラメータが適宜インバータへフィードバックされ、インバータはそのパラメータを利用して駆動電流の生成を行う。また、
図13の下段(b)には、トランス構造内部の単相変圧器と負荷の構成が示される。回路モデルにおけるモータ及びトランス構造の各パラメータは、それぞれ下記の表1及び表2に示す。
【0074】
モータに関するパラメータである。
【表1】
トランス構造に関するパラメータである。
【表2】
【0075】
ここで、
図13(a)の3点Pa、Pb、Pcは、三相の電圧と電流の測定点を示す。回路モデルを用いたシミュレーションでは、測定点Pa、Pb、Pcの三相電圧と電流の計測と、その計測値に基づいたdq軸の電圧と電流の算出を行う。測定点Paで算出されるのは、モータの端子電圧と電流であり、測定点Pbで算出されるのはインバータの出力電圧と電流であり、測定点Pcで算出されるのは、トランス構造の出力電圧と電流である。そして、上述した回路方程式に従って算出された各測定点でのd軸電圧とq軸電圧とを比較する。なお、算出、比較に当たっては、モータの回転速度を一定速度とした。
【0076】
比較結果を以下の表3~表5に示す。
測定点Paの比較結果である。
【表3】
測定点Pbの比較結果である。
【表4】
測定点Pcの比較結果である。
【表5】
【0077】
上記の比較結果を踏まえると、回路方程式に従った算出結果と回路モデルに従った算出結果との間の誤差は1%以内に収まっていることが分かる。したがって、上記の式3及び式4の回路方程式の妥当性は確認された。また、電力を抽出するためのトランス構造をモータに組み込むことで、電流制御や速度制御に好ましくない影響を及ぼす可能性は極めて低いことが明白となり、以て、上記回路方程式を利用してトランス構造を組み込んだモータの設計が可能と言える。
【0078】
更に、
図3に示す形態のモータ2においてトランス構造として三相変圧器を採用した場合の、モータ2の回路方程式を、以下の式5及び式6に示す。これらの式もモータの設計に適用可能である。
【数5】
・・・(式5)
【数6】
・・・(式6)
【0079】
更に、
図5に示す形態のモータ2においてトランス構造を採用した場合の、モータ2の回路方程式を、以下の式7及び式8に示す。これらの式もモータの設計に適用可能である。
【数7】
・・・(式7)
【数8】
・・・(式8)
【0080】
<ドライバ4の変形例>
上述までの実施形態では、モータ2の巻線部25への電力供給は、ドライバ4の電力変換部43内のインバータ回路を介して行われる。すなわち、インバータ回路で生成された駆動電流がモータ2の巻線部25に供給され、その電力の一部が、抽出部214によってエンコーダ22のための電力として抽出される。一方で、本変形例では、
図12に示すように、電力変換部43内に、インバータ回路431とは別に形成された電力重畳部432による電力供給が可能とされる。なお、
図12に示す巻線部25は、
図5に示す形態のものであるが、それに代えて
図3や
図5に示す形態のものに対しても本変形例は適用できる。
【0081】
インバータ回路431は、プラス側の電力線とマイナス側の電力線との間に、U相用のレグ、V相用のレグ及びW相用のレグを並列接続した構成を有し、各相のレグの出力がモータ2の各相の巻線部分と動力線で接続されている。その上で、電力変換部43内において、インバータ回路431に対して並列になるように動力線に接続され、該動力線を経て巻線部25を流れるモータ2の駆動電流に電力を重畳させる電力重畳部432が設けられている。電力重畳部432は、U相、V相、W相の各相においてトランス構造を介して高周波の電力重畳を可能とする。このような構成により、モータ2の動作と区別して、エンコーダ22への電力供給に適した交流電力を抽出部214に送り込むことができる。なお、別法として、電力重畳部432は、インバータ回路431に対して直列になるように接続されてもよい。
【0082】
<抽出された電力が供給される装置に関する変形例>
上述までの実施形態では、抽出部214により抽出された電力はエンコーダ22に対して供給されているが、当該抽出された電力は、エンコーダ22以外の装置に対しても供給することができる。例えば、モータ2の内部やその外側に配置されているセンサ装置(例えば、温度センサや振動センサ等)に対して電力供給を行ってもよい。その場合、電力供給に適した、センサとのケーブルの接続口になるポートが、モータ本体21に設けられてもよい。
【0083】
<電力抽出に関する変形例>
本変形例について、
図14に基づいて説明する。
図14は、本変形例に関する、モータ2の概略構成を示した図である。なお、本形態のモータ2は、
図2に示す形態と同じように、巻線部25に対してトランス構造を有する抽出部214が設けられている。抽出部214のトランス構造は、
図3、
図4、
図7に示す構造と実質的に同じ構造を採用することができる。更に、本変形例では、コネクタ211に接続された動力線11に対しても、電力抽出が実現可能な抽出部214bが設けられている。抽出部214bによる電力抽出も、
図3、
図4に示すトランス構造と電気的に同一のトランス構造が動力線11に組み込まれることで実現される。
【0084】
抽出部214bによって抽出された電力は、所定の整流処理等が施されて、モータ2の外部に配置されている温度センサや振動センサ等の装置の電力として供給することができる。また、当該抽出された電力は二次電池に蓄電されることで、温度センサ等に安定的な電力を供給することができる。なお、
図14に示すモータ2では抽出部214で抽出された電力がエンコーダ22に供給されているが、それに代えて抽出部214bで抽出された電力がエンコーダ22に供給されてもよく、もしくは、抽出部214、214bの両者で抽出された電力がエンコーダ22に供給されてもよい。また、モータ2において、抽出部214は設けられず、エンコーダ22は内蔵する電池から電力供給を受けたり、サーボドライバ4から電力供給を受けたりしてもよい。
【0085】
このように、本開示のモータ2においては、その巻線部25だけではなく動力線11からも電力を抽出し、エンコーダ22や外部のセンサ等に電力を供給することが可能となり、以て、サーボシステムでの電力供給のための配線負荷を大きく軽減することができる。
【0086】
<電力供給と信号中継に関する変形例>
本変形例について、
図15に基づいて説明する。
図15は、本変形例に関する、モータ2の概略構成を示した図である。なお、本形態では、
図14に示す抽出部214bが、更に、エンコーダ22の処理部221と通信可能に構成される。なお、処理部221との通信は無線通信であり、そのための電力として、抽出部214bによって動力線11から抽出された電力が使用される。また、エンコーダ22の処理部221への電力としては、抽出部214で抽出された電力が供給部215を介してモータ本体21側から供給される。
【0087】
本形態の抽出部214bは、第1通信部2141、第2通信部2142を有している。第1通信部2141は、処理部221と無線通信が可能であり、エンコーダ22からの検出信号が無線通信によって入力され、また、第1通信部2141からエンコーダ22に対して信号を送信することも可能である。第1通信部2141による無線通信の方式は特定のものに限定されない。また、抽出部214bは、上述したように電力抽出のためのトランス構造を有しており、第2通信部2142は、当該トランス構造を用いて、サーボドライバ4と通信するためのインターフェイスとして機能する。例えば、第2通信部2142は、第1通信部2141を介して受け取ったエンコーダ22からの検出信号を、動力線11を流れる電流に重畳させることができる。すなわち、第2通信部2142は、第2通信部2142から動力線11に信号を重畳させる場合には、上記トランス構造における二次コイル側に信号を送り込むことで、一次コイル側での出力を、動力線11を流れる電流に重畳させる。このように、第2通信部2142によって、動力線11とエンコーダ22の処理部221との間で信号の授受が可能となるように構成され、当該信号を、動力線11を介してサーボドライバ4へと送り出す。
【0088】
また、第2通信部2142は上記トランス構造を介してサーボドライバ4から所定の信号を受け取り、それを第1通信部2141に渡し、第1通信部2141がそれを、無線通信を介してエンコーダ22の処理部221に送信することもできる。すなわち、抽出部214bと処理部221との間では、相互に通信可能とされる。
【0089】
このような構成により、モータ2に取り付けられるエンコーダ22の電力は、動力線11から供給される電力の一部が供給されるとともに、モータ2が、サーボドライバ4とエンコーダ22との間の情報の中継装置としても機能することになる。抽出部214bは、動力線11のうちエンコーダ22と無線通信が可能な位置に設置すればよい。一般的には、エンコーダ22も動力線11もモータ本体21の近くに配置されるものであるから、抽出部214bの設置は容易である。そして、
図15に示す形態では、エンコーダ22への電力供給や信号送信のための配線作業を行う必要がなくなるため、サーボシステムの構成に要する作業負担が大きく軽減される。
【0090】
また、更なる変形例として、抽出部214bは、電力供給先の温度センサや振動センサ等による検出信号を無線通信で第1通信部2141で受信し、それを第2通信部2142によって動力線11に重畳させて、サーボドライバ4に送信するように構成されてもよい。また、抽出部214bは、上記のセンサとエンコーダ22との両者を中継して、それぞれの検出信号をサーボドライバ4に送信するように構成されてもよい。また、第1通信部2141とエンコーダ22やセンサ等とは有線通信を行ってもよい。
【0091】
<付記1>
外部のドライバ(4)から動力線(11)を介して電力が供給されるモータ(2)であって、
前記ドライバ(4)から前記モータ(2)に供給された電力の一部を抽出する抽出部(214)と、
前記抽出部(214)により抽出された電力を外部装置(22)に供給する供給部(215)と、
を備える、モータ。
【符号の説明】
【0092】
2 モータ
4 サーボドライバ
22 エンコーダ
25 巻線部
53、63、73 トランス構造
211 コネクタ(電力入力部)
214 抽出部
251 供給部