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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ジエステル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/353 20060101AFI20240702BHJP
   C07C 69/50 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240702BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240702BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240702BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C07C69/353
C07C69/50 CSP
C08L101/00
C08K5/10
C08K3/013
C08K5/00
H01L23/30 R
H01L23/12 501P
C08J5/24
H05K1/03 610H
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2023509145
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012803
(87)【国際公開番号】W WO2022202703
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2021048899
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小椋 一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直哉
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-100541(JP,A)
【文献】特開平02-006553(JP,A)
【文献】特開昭51-143634(JP,A)
【文献】特表平01-500198(JP,A)
【文献】米国特許第04512927(US,A)
【文献】国際公開第2018/235424(WO,A1)
【文献】特開昭63-174945(JP,A)
【文献】特開2015-207007(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086324(WO,A1)
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,1994年,203(3),P.1463-1470
【文献】Science (Washington, DC, United States),2021年,2020,P.917-921
【文献】Journal of Peptide Science,2012年,18(4),P.261-269
【文献】Polymer,1992年,33(10),P.2031-2035
【文献】Macromolecules,1994年,27(19),P.5263-5270
【文献】Polymeric Materials Science and Engineering,1989年,60,P.639-641
【文献】European Polymer Journal,2006年,42(10),P.2617-2622
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/
C08L 101/
C08K 5/
C08K 3/
H01L 23/
C08J 5/
H05K 1/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(X)で表される、ジエステル化合物。
【化1】
(式中、
coreは、炭素原子数6のアルキレン基を示し、
end及びX endは、それぞれ独立に、炭素原子数2~20の不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される置換基を有していてもよい芳香環を示し、かつ、X end及びX endの少なくとも一方が、炭素原子数2~20の不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である。)
【請求項2】
end及びX endが、それぞれ独立に、炭素原子数2~20の不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される置換基を有していてもよい芳香族炭素環である、請求項に記載のジエステル化合物
【請求項3】
end及びX endが、それぞれ独立に、炭素原子数2~20の不飽和脂肪族炭化水素基、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される置換基を有していてもよい芳香族炭素環である、請求項又はに記載のジエステル化合物
【請求項4】
end及びX endの両方が、炭素原子数2~20の不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である、請求項1~3の何れか1項に記載のジエステル化合物。
【請求項5】
end及びX endにおいて、不飽和脂肪族炭化水素基がアリル基である、請求項1~4の何れか1項に記載のジエステル化合物。
【請求項6】
end及びX endにおいて、芳香環が炭素原子数6~14の芳香族炭素環である、請求項1~の何れか1項に記載のジエステル化合物。
【請求項7】
25℃で液状である、請求項1~6の何れか1項に記載のジエステル化合物。
【請求項8】
25℃での粘度が300mPa・s以下である、請求項1~の何れか1項に記載のジエステル化合物。
【請求項9】
下記式(C)で表される、請求項1~8の何れか1項に記載のジエステル化合物。
【化2】
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のジエステル化合物を含む、エポキシ樹脂架橋剤。
【請求項11】
請求項1~9の何れか1項に記載のジエステル化合物と熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
さらに無機充填材を含む、請求項11又は12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
さらに有機溶媒を含む、請求項1113の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
半導体封止用である、請求項1114の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1114の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項1116の何れか1項に記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
【請求項18】
シート状繊維基材に、請求項1116の何れか1項に記載の樹脂組成物を含浸させてなる、プリプレグ。
【請求項19】
請求項1116の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項20】
請求項1115の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含む、半導体チップパッケージ。
【請求項21】
ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである、請求項20に記載の半導体チップパッケージ。
【請求項22】
請求項111416の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項23】
請求項20若しくは21に記載の半導体チップパッケージ又は請求項22に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエステル化合物に関する。さらには、当該ジエステル化合物を用いて得られる、樹脂架橋剤、樹脂組成物、樹脂シート、プリプレグ、硬化物、半導体チップパッケージ、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂等の架橋性樹脂とその架橋剤(硬化剤)を含む樹脂組成物は、絶縁性、耐熱性、密着性などに優れる硬化物をもたらすことから、半導体パッケージやプリント配線板などの電子部品材料として広く使われてきた。
【0003】
一方、第5世代移動通信システム(5G)などの高速通信では、高周波環境で作動させる際の伝送損失が問題になる。そのため誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に優れた絶縁材料が必要となる。また、電子機器のさらなる小型化、高集積度化及び多機能化に伴い、多ピン化によるバンプの小径化、狭ピッチ化及び狭ギャップ化が進んでいる。これにより、封止成形時の封止材の流動経路はより複雑化し半導体封止材にはよりいっそう良好な流動性が必要となっており、用いられる架橋剤についても低粘度化が求められている。
【0004】
誘電特性に優れる樹脂材料として、例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂の架橋剤として、芳香族性ジ酸クロリド類と芳香族性ヒドロキシ化合物との反応物である活性エステル樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/235424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の活性エステル樹脂は、従来のフェノール系架橋剤などと比較すると誘電特性に優れるが、低粘度化には改善の余地があり、該活性エステル樹脂と架橋性樹脂とを含む樹脂組成物の流動性は満足できる水準にはない。
【0007】
また、低誘電正接の硬化物を得る観点、封止成形後の耐熱性や耐湿性を向上する観点、ウェハレベルパッケージ(WLP)のように大面積を封止成形する際の低反り性を実現する観点、パワー半導体など高発熱デバイスにおいて良好な放熱性を実現する観点などから、無機充填材の含有量の高い樹脂組成物を用いる場合もあるが、斯かる場合には成形温度における流動性が悪化し、フローマークの発生や、未充填部の発生といった問題が生じ易い。
【0008】
本発明の課題は、架橋性樹脂との組み合わせにおいて、優れた流動性を呈する樹脂組成物をもたらす、低粘度のジエステル化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来、架橋性樹脂の架橋剤としてエステル化合物を用いる場合、架橋特性を発現するには、該エステル化合物は、エステル結合部として、特許文献1に記載があるような芳香族炭素-エステル結合-芳香族炭素の構造を有するものに限定されると考えられてきた。しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、脂肪族炭素-エステル結合-芳香族炭素の構造にあっても、脂肪族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有するエステル結合部に関しては架橋特性を発現することを見出した。そして斯かる脂肪族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有するジエステル化合物につき検討を進める過程において、下記構成を有するジエステル化合物によれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 下記式(X)で表される、ジエステル化合物。
【化1】
(式中、
coreは、2価脂肪族基を示し、
end及びX endは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環を示し、かつ、X end及びX endの少なくとも一方が、不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上を置換基として有する芳香環である。)
[2] Xcoreにおいて、2価脂肪族基の炭素原子数が6以上である、[1]に記載のジエステル化合物。
[3] Xcoreにおいて、2価脂肪族基がアルキレン基である、[1]又は[2]に記載のジエステル化合物。
[4] X end及びX endの両方が、不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である、[1]~[3]の何れかに記載のジエステル化合物。
[5] X end及びX endにおいて、不飽和脂肪族炭化水素基がアリル基である、[1]~[4]の何れかに記載のジエステル化合物。
[6] X end及びX endにおいて、芳香環が炭素原子数6~14の芳香族炭素環である、[1]~[5]の何れかに記載のジエステル化合物。
[7] 25℃で液状である、[1]~[6]の何れかに記載のジエステル化合物。
[8] 25℃での粘度が300mPa・s以下である、[1]~[7]の何れかに記載のジエステル化合物。
[9] 下記式(X)で表されるジエステル化合物を含む、樹脂架橋剤。
【化2】
(式中、
coreは、2価脂肪族基を示し、
end及びX endは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環を示す。)
[10] ジエステル化合物が、[1]~[8]の何れかに記載のジエステル化合物である、[9]に記載の樹脂架橋剤。
[11] ジエステル化合物(X)と架橋性樹脂(Y)とを含む樹脂組成物であって、
ジエステル化合物(X)が、下記式(X)で表される、樹脂組成物。
【化3】
(式中、
coreは、2価脂肪族基を示し、
end及びX endは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環を示す。)
[12] ジエステル化合物(X)が、[1]~[8]の何れかに記載のジエステル化合物である、[11]に記載の樹脂組成物。
[13] 架橋性樹脂(Y)が、熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂からなる群から選択される1種以上である、[11]又は[12]に記載の樹脂組成物。
[14] さらに無機充填材を含む、[11]~[13]の何れかに記載の樹脂組成物。
[15] さらに有機溶媒を含む、[11]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物。
[16] 半導体封止用である、[11]~[15]の何れかに記載の樹脂組成物。
[17] プリント配線板の絶縁層用である、[11]~[15]の何れかに記載の樹脂組成物。
[18] 支持体と、該支持体上に設けられた[11]~[17]の何れかに記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
[19] シート状繊維基材に、[11]~[17]の何れかに記載の樹脂組成物を含浸させてなる、プリプレグ。
[20] [11]~[17]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[21] [11]~[16]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含む、半導体チップパッケージ。
[22] ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである、[21]に記載の半導体チップパッケージ。
[23] [11]~[15]、[17]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
[24] [21]若しくは[22]に記載の半導体チップパッケージ又は[23]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、架橋性樹脂との組み合わせにおいて、優れた流動性を呈する樹脂組成物をもたらす、低粘度のジエステル化合物を提供することができる。
【0012】
本発明のジエステル化合物によれば、無機充填材の含有量が高い場合であっても、成形温度において良好な流動性を呈する樹脂組成物をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a図1aは、実施例1におけるジエステル化合物(A)のGPCチャートを示す。
図1b図1bは、実施例1におけるジエステル化合物(A)のIRチャートを示す。
図2a図2aは、実施例2におけるジエステル化合物(B)のGPCチャートを示す。
図2b図2bは、実施例2におけるジエステル化合物(B)のIRチャートを示す。
図3a図3aは、実施例3におけるジエステル化合物(C)のGPCチャートを示す。
図3b図3bは、実施例3におけるジエステル化合物(C)のIRチャートを示す。
図4a図4aは、実施例4におけるジエステル化合物(D)のGPCチャートを示す。
図4b図4bは、実施例4におけるジエステル化合物(D)のIRチャートを示す。
図5a図5aは、実施例5におけるジエステル化合物(E)のGPCチャートを示す。
図5b図5bは、実施例5におけるジエステル化合物(E)のIRチャートを示す。
図6a図6aは、比較例1におけるジエステル化合物(F)のGPCチャートを示す。
図6b図6bは、比較例1におけるジエステル化合物(F)のIRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<用語の説明>
本明細書において、化合物又は基についていう「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換基」という用語は、特に説明のない限り、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカポリエニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基、アルキリデン基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びオキソ基を意味する。なお、アルケニル基、アルキニル基、アルカポリエニル基、シクロアルケニル基のように不飽和結合を有する脂肪族炭化水素基を総称して、「不飽和脂肪族炭化水素基」ともいう。
【0016】
置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0017】
置換基として用いられるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられる。
【0018】
置換基として用いられるアルケニル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~14、さらに好ましくは2~12、さらにより好ましくは2~6、特に好ましくは2又は3である。該アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、ブテニル基、sec-ブテニル基、イソブテニル基、tert-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、及びデセニル基が挙げられる。
【0019】
置換基として用いられるアルキニル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルキニル基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~14、さらに好ましくは2~12、さらにより好ましくは2~6、特に好ましくは2又は3である。該アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、sec-ブチニル基、イソブチニル基、tert-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、及びデシニル基が挙げられる。
【0020】
置換基として用いられるアルカポリエニル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、二重結合の数は好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、さらにより好ましくは2である。該アルカポリエニル基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~14、さらに好ましくは3~12、さらにより好ましくは3~6である。
【0021】
置換基として用いられるシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
置換基として用いられるシクロアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0023】
置換基として用いられるアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~6である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、及びデシルオキシ基が挙げられる。
【0024】
置換基として用いられるシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0025】
置換基として用いられるアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基である。置換基として用いられるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。
【0026】
置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、及び2-ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0027】
置換基として用いられるアリールアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7~25、より好ましくは7~19、さらに好ましくは7~15、さらにより好ましくは7~11である。該アリールアルキル基としては、例えば、フェニル-C~C12アルキル基、ナフチル-C~C12アルキル基、及びアントラセニル-C~C12アルキル基が挙げられる。
【0028】
置換基として用いられるアリールアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは7~25、より好ましくは7~19、さらに好ましくは7~15、さらにより好ましくは7~11である。該アリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル-C~C12アルコキシ基、及びナフチル-C~C12アルコキシ基が挙げられる。
【0029】
置換基として用いられる1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。該1価の複素環基の炭素原子数は、好ましくは3~21、より好ましくは3~15、さらに好ましくは3~9である。該1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基(ヘテロアリール基)も含まれる。該1価の複素環としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。
【0030】
置換基として用いられるアルキリデン基とは、アルカンの同一の炭素原子から水素原子を2個除いた基をいう。該アルキリデン基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。該アルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、sec-ブチリデン基、イソブチリデン基、tert-ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、ノニリデン基、及びデシリデン基が挙げられる。
【0031】
置換基として用いられるアシル基は、式:-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシル基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。該アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
【0032】
置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。該アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0033】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0034】
本明細書において、「脂肪族基」という用語は、脂肪族化合物の脂肪族炭素に結合した水素原子を1個以上除いた基をいう。詳細には、1価脂肪族基とは、脂肪族化合物の脂肪族炭素に結合した水素原子を1個除いた基をいい、2価脂肪族基とは、脂肪族化合物の脂肪族炭素に結合した水素原子を2個除いた基をいう。2価脂肪族基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいシクロアルケニレン基が挙げられる。本明細書において、脂肪族基の炭素原子数は、特に記載のない限り、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、4以上、5以上又は6以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、20以下、18以下、16以下、14以下又は12以下である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0035】
本明細書において、「芳香環」という用語は、環上のπ電子系に含まれる電子数が4p+2個(pは自然数)であるヒュッケル則に従う環を意味し、単環式の芳香環、及び2個以上の単環式の芳香環が縮合した縮合芳香環を含む。芳香環は、環構成原子として炭素原子のみを有する芳香族炭素環、又は環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する芳香族複素環であり得る。本明細書において、芳香環の炭素原子数は、特に記載のない限り、好ましくは3以上、より好ましくは4以上又は5以上、さらに好ましくは6以上であり、その上限は、好ましくは24以下、より好ましくは18以下又は14以下、さらに好ましくは10以下である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式芳香環;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式芳香環が縮合した縮合芳香環が挙げられる。
【0036】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0037】
[ジエステル化合物]
本発明のジエステル化合物は、
2価脂肪族基からなるコアユニットと、
該コアユニットにエステル結合を介して結合した第1及び第2の封鎖ユニットと
を含み、第1及び第2の封鎖ユニットが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環であることを特徴とする。
【0038】
本発明のジエステル化合物において、コアユニットと封鎖ユニットはエステル結合(-C(=O)-O-)を介して結合されている。詳細には、カルボニル基(-C(=O)-)がコアユニットと、オキシ基(-O-)が封鎖ユニットと結合するように、コアユニットと封鎖ユニットはエステル結合を介して結合されている。これにより、本発明のジエステル化合物は、エステル結合部として、脂肪族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有する。本発明は、後述のとおり、斯かる脂肪族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有するエステル結合部が架橋特性を発現することを見出したことに基づくものであり、従来の技術認識からは予測だにしなかった知見に端を発する。
【0039】
したがって、コアユニットをXcore、第1及び第2の封鎖ユニットをそれぞれX end及びX endとしたとき、本発明のジエステル化合物は、下記式(X)で表すことができる。
【0040】
【化4】
(式中、
coreは、2価脂肪族基を示し、
end及びX endは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環を示す。)
【0041】
-コアユニット(Xcore)-
コアユニットXcoreは、2価脂肪族基からなる。
【0042】
2価脂肪族基からなるコアユニットを有することにより、本発明のジエステル化合物は、低粘度特性を発現することができる。また、架橋性樹脂と組み合わせた場合に、靭性・柔軟性に富む硬化物を得ることができる。
【0043】
架橋性樹脂の架橋剤としてエステル化合物を用いる場合、架橋特性を発現するには、活性なエステル結合を形成すべく、エステル結合部は芳香族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有する必要があるとされてきた。これに対し、2価脂肪族基からなるコアユニットを含む本発明のジエステル化合物は、脂肪族炭素-C(=O)-O-芳香族炭素の構造を有する。本発明者らは、斯かる特定のエステル結合部構造を有するジエステル化合物が、良好な低粘度特性を発現すると共に架橋性樹脂の架橋剤として機能することを見出したものである。
【0044】
コアユニットXcoreにおいて、2価脂肪族基の炭素原子数は、より低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上又は8以上である。よって好適な一実施形態において、コアユニットXcoreにおいて、2価脂肪族基の炭素原子数は6以上である。該2価脂肪族基の炭素原子数の上限は、特に限定されず、先述の範囲から適宜決定してよい。なお、該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0045】
コアユニットXcoreにおいて、2価脂肪族基は、より低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は、置換基を有していてもよいアルケニレン基であり、置換基を有していてもよいアルキレン基が特に好適である。コアユニットにおけるアルキレン基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。よって好適な一実施形態において、コアユニットXcoreにおいて、2価脂肪族基はアルキレン基である。
【0046】
コアユニットにおけるアルキレン基やアルケニレン基が有していてもよい置換基は先述のとおりである。中でも、該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基及びアルケニル基から選択される1種以上が好ましく、フッ素原子及び炭素原子数1~6のアルキル基から選択される1種以上がより好ましい。
【0047】
-第1及び第2の封鎖ユニット(X end及びX end)-
第1及び第2の封鎖ユニットX end及びX endは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香環である。
【0048】
第1及び第2の封鎖ユニットとして、置換基を有していてもよい芳香環を有することにより、本発明のジエステル化合物は、架橋性樹脂の架橋剤として樹脂組成物に配合して用いることができる。
【0049】
封鎖ユニットX end及びX endにおいて、芳香環は、本発明の効果をより享受し得る観点から、芳香族炭素環であることが好ましい。該芳香族炭素環の炭素原子数は、好ましくは6~14、より好ましくは6~10である。よって、好適な一実施形態において、封鎖ユニットにおいて、芳香環は炭素原子数6~14の芳香族炭素環である。
【0050】
封鎖ユニットにおける芳香環が有していてもよい置換基は先述のとおりである。中でも、より低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上が好ましく、炭素原子数2~20の不飽和脂肪族炭化水素基、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される1種以上がより好ましい。封鎖ユニットにおける芳香環が置換基を有する場合、第1及び第2の封鎖ユニットX end及びX endの一方のみが置換基を有していてもよく、それらの両方が置換基を有していてもよい。一実施形態において、第1及び第2の封鎖ユニットX end及びX endの少なくとも一方が、置換基を有する芳香環であり、好適な一実施形態において、第1及び第2の封鎖ユニットX end及びX endの少なくとも一方が、不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される1種以上を置換基として有する芳香環である。X end及びX endが置換基を有していない芳香環の場合、結晶性が強く、常温で液状化しにくい傾向がある。一方、X end及びX endが置換基を有している芳香環の場合、結晶性が弱く、常温で液状化しやすく流動性や作業性に優れる。
【0051】
中でも、第1及び第2の封鎖ユニットX end及びX endの少なくとも一方が、不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である場合、特に低粘度のジエステル化合物を実現できるため好適である。よって好適な一実施形態において、第1及び第2の封鎖ユニットX end及びX endの少なくとも一方は、不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である。第1及び第2の封鎖ユニットの両方が、不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である場合、とりわけ低粘度、例えば常温(25℃)で液状のジエステル化合物を実現できる。ここで、本明細書において、ジエステル化合物についていう「常温(25℃)で液状」とは、ジエステル化合物の25℃における粘度が3,000mPa・s以下であることを意味する。よって好適な一実施形態において、第1及び第2の封鎖ユニットX end及びX endの両方が、不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である。
【0052】
よりいっそう低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、封鎖ユニットにおける芳香環が置換基として有していてもよい不飽和脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~14、2~12、2~10又は2~6である。よりいっそう低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、該不飽和脂肪族炭化水素基は、好ましくはアルケニル基、又は、アルキニル基であり、より好ましくはアルケニル基である。中でも、封鎖ユニットにおける芳香環が置換基として有していてもよい不飽和脂肪族炭化水素基は、炭素原子数2~10のアルケニル基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニル基がより好ましく、アリル基がさらに好ましい。よって好適な一実施形態において、封鎖ユニットX end及びX endにおいて、芳香環が置換基として有していてもよい、不飽和脂肪族炭化水素基はアリル基である。
【0053】
一実施形態において、本発明のジエステル化合物は、下記式(X1)で表される。
【0054】
【化5】
(式中、
coreは、2価脂肪族基からなるコアユニットを示し、
環Arは、それぞれ独立に、芳香環を示し、
は、それぞれ独立に、不飽和脂肪族炭化水素基を示し、
は、それぞれ独立に、置換基を示し、
n11及びn12は、それぞれ独立に、0~2の整数を示し、
m11及びm12は、環Arの置換可能な水素原子の数をp個としたとき、0≦m11≦(p-n11)及び0≦m12≦(p-n12)を満たす整数を示す。)
【0055】
式(X1)中、Xcoreは、2価脂肪族基からなるコアユニットを示す。該コアユニットに関しては、その好適な例を含め、先述のとおりである。好適な一実施形態において、Xcoreは、炭素原子数6以上の2価脂肪族基であり、より好適には置換基を有していてもよい炭素原子数6以上のアルキレン基である。置換基の好適な例も、先述のとおりである。
【0056】
式(X1)中、環Arは、それぞれ独立に、芳香環を示す。該芳香環は、第1及び第2の封鎖ユニットにおける芳香環に対応し、その好適な例を含め、先述のとおりである。好適な一実施形態において、環Arは、それぞれ独立に、炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、より好適にはベンゼン環又はナフタレン環である。
【0057】
式(X1)中、Rは、それぞれ独立に、不飽和脂肪族炭化水素基を示す。Rは、第1及び第2の封鎖ユニットにおける芳香環が置換基として有していてもよい不飽和脂肪族炭化水素基に対応し、その好適な例を含め、先述のとおりである。好適な一実施形態において、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数2~20の不飽和脂肪族炭化水素基であり、より好適には炭素原子数2~20(好ましくは2~10又は2~6)のアルケニル基、又は、炭素原子数2~20(好ましくは2~10又は2~6)のアルキニル基であり、さらに好適にはアリル基である。
【0058】
式(X1)中、Rは、それぞれ独立に、置換基を示す。Rは、第1及び第2の封鎖ユニットにおける芳香環が有していてもよい置換基に対応し、その好適な例を含め、先述のとおりである。好適な一実施形態において、Rは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択され、より好適にはフッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数6~10のアリール基から選択される。
【0059】
式(X1)中、n11及びn12は、それぞれ独立に、0~2の整数を示す。第1及び第2の封鎖ユニットについて説明したとおり、特に低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、n11及びn12の少なくとも一方は1以上であることが好ましい。好適な一実施形態において、n11及びn12は、それぞれ独立に、1又は2であり、より好適には、n11及びn12の両方が1である。
【0060】
n11又はn12が1以上である場合、環Arに対するRの結合位置は、特に限定されないが、より低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、エステル結合のオキシ基の結合位置との関係においてオルト位又はメタ位であることが好ましく、オルト位であることがより好ましい。
【0061】
式(X1)中、m11及びm12は、環Arの置換可能な水素原子の数をp個としたとき、0≦m11≦(p-n11)及び0≦m12≦(p-n12)を満たす整数を示す。環Arの置換可能な水素原子の数pに、エステル結合のオキシ基との結合部位は含めない。例えば、環Arがベンゼン環である場合、置換可能な水素原子の数pは5であり、環Arがナフタレン環である場合、置換可能な水素原子の数pは7である。
【0062】
好適な一実施形態において、本発明のジエステル化合物は、下記式(X2)又は下記式(X3)で表される。
【0063】
【化6】
(式中、
core、R及びRは先述のとおりであり、
n21及びn22は、それぞれ独立に、0~2の整数を示し、
m21及びm22は、0≦m21≦(5-n21)及び0≦m22≦(5-n22)を満たす整数を示す。)
【0064】
【化7】
(式中、
core、R及びRは先述のとおりであり、
n31及びn32は、それぞれ独立に、0~2の整数を示し、
m31及びm32は、0≦m31≦(7-n31)及び0≦m32≦(7-n32)を満たす整数を示す。)
【0065】
式(X2)、式(X3)の別を問わず、Xcore、R及びRは先述のとおりであり、それらの好適な例も先に説明したとおりである。
【0066】
式(X2)中、n21及びn22は、それぞれ独立に、0~2の整数を示す。特に低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、n21及びn22の少なくとも一方は1以上であることが好ましい。好適な一実施形態において、n21及びn22は、それぞれ独立に、1又は2であり、より好適には、n21及びn22の両方が1である。
【0067】
n21又はn22が1以上である場合、ベンゼン環に対するRの結合位置は、特に限定されないが、より低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、エステル結合のオキシ基の結合位置との関係においてオルト位又はメタ位であることが好ましく、オルト位であることがより好ましい。
【0068】
式(X2)中、m21及びm22は、0≦m21≦(5-n21)及び0≦m22≦(5-n22)を満たす整数を示す。
【0069】
式(X3)中、n31及びn32は、それぞれ独立に、0~2の整数を示す。特に低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、n31及びn32の少なくとも一方は1以上であることが好ましい。好適な一実施形態において、n31及びn32は、それぞれ独立に、1又は2であり、より好適には、n31及びn32の両方が1である。
【0070】
n31又はn32が1以上である場合、ナフタレン環に対するRの結合位置は、特に限定されないが、より低粘度のジエステル化合物を実現する観点から、エステル結合のオキシ基の結合位置との関係においてオルト位又はメタ位であることが好ましく、オルト位であることがより好ましい。
【0071】
式(X3)中、m31及びm32は、0≦m31≦(7-n31)及び0≦m32≦(7-n32)を満たす整数を示す。
【0072】
好適な一実施形態において、式(X2)中、
i)Xcoreが、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上のアルキレン基であり、
ii)(a)n21及びn22の少なくとも一方が1又は2であり、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数2~20のアルケニル基、又は、炭素原子数2~20のアルキニル基であり、m21及びm22が、それぞれ独立に、0~2の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される、又は、(b)n21及びn22が0であり、m21及びm22が、それぞれ独立に、0~5の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される。
【0073】
より好適な一実施形態において、式(X2)中、
i)Xcoreが、ハロゲン原子、アルキル基及びアルケニル基から選択される1以上の置換基を有していてもよい炭素原子数6以上のアルキレン基であり、
ii)(a)n21及びn22の少なくとも一方が1又は2であり、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数2~10のアルケニル基であり、m21及びm22が、それぞれ独立に、0~2の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される、又は、(b)n21及びn22が0であり、m21及びm22が、それぞれ独立に、0~5の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される。
【0074】
好適な一実施形態において、式(X3)中、
i)Xcoreが、置換基を有していてもよい炭素原子数6以上のアルキレン基であり、
ii)(a)n31及びn32の少なくとも一方が1又は2であり、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数2~20のアルケニル基、又は、炭素原子数2~20のアルキニル基であり、m31及びm32が、それぞれ独立に、0~2の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される、又は、(b)n31及びn32が0であり、m31及びm32が、それぞれ独立に、0~7の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される。
【0075】
より好適な一実施形態において、式(X3)中、
i)Xcoreが、ハロゲン原子、アルキル基及びアルケニル基から選択される1以上の置換基を有していてもよい炭素原子数6以上のアルキレン基であり、
ii)(a)n31及びn32の少なくとも一方が1又は2であり、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数2~10のアルケニル基であり、m31及びm32が、それぞれ独立に、0~2の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される、又は、(b)n31及びn32が0であり、m31及びm32が、それぞれ独立に、0~7の整数であり、かつ、Rが、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される。
【0076】
本発明のジエステル化合物において、オキシカルボニル基の当量(活性エステル当量)は、好ましくは150g/eq.以上、より好ましくは160g/eq.以上、さらに好ましくは180g/eq.以上、200g/eq.以上である。該オキシカルボニル基の当量の上限は、例えば、1000g/eq.以下、750g/eq.以下、700g/eq.以下、600g/eq.以下又は500g/eq.以下などとし得る。
【0077】
本発明のジエステル化合物の分子量(分布を有する場合は数平均分子量Mn)は、架橋性樹脂の架橋剤として樹脂組成物に配合して用いる観点から、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下、さらに好ましくは1400以下、1200以下又は1000以下である。該分子量の下限は、特に限定されず、例えば、300以上、320以上などとし得る。該分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0078】
以下、本発明のジエステル化合物の合成手順について一例を示す。
【0079】
一実施形態において、本発明のジエステル化合物は、
(A)2価脂肪族カルボン酸化合物又は2価脂肪族カルボン酸ハライド化合物と、
(B)置換基を有していてもよい1価芳香族ヒドロキシ化合物と
を縮合反応させて得られる。
【0080】
-(A)2価脂肪族カルボン酸(ハライド)化合物-
(A)成分は、2価脂肪族カルボン酸化合物又は2価脂肪族カルボン酸ハライド化合物であり、下記式(X4)で表される。
【0081】
【化8】
(式中、Xcoreは先述のとおりであり、Zはヒドロキシ基又はハロゲン原子を示す。)
【0082】
(A)成分としては、目的とするコアユニットXcoreに応じて、任意の2価脂肪族カルボン酸(ハライド)化合物を用いてよい。Xcoreの好適な例は先述のとおりである。例えば、目的とするコアユニットXcoreが炭素原子数6の直鎖アルキレン基である場合、スベリン酸(クロリド)を用いればよく、炭素原子数8の直鎖アルキレン基である場合、セバシン酸(クロリド)を用いればよい。
【0083】
-(B)置換基を有していてもよい1価芳香族ヒドロキシ化合物-
(B)成分は、置換基を有していてもよい1価芳香族ヒドロキシ化合物であり、下記式(X5)で表される。
【0084】
【化9】
(式中、
環Ar、R及びRは先述のとおりであり、
nは0~2の整数を示し、
mは、環Arの置換可能な水素原子の数をp個としたとき、0≦m≦(p-n)を満たす整数を示す。)
【0085】
(B)成分としては、目的とする封鎖ユニットに応じて、任意の芳香族モノオールを用いてよい。環Ar、R及びRは先述のとおりである。例えば、斯かる芳香族モノオールとしては、目的とする封鎖ユニットが炭素原子数2~6のアルケニル基を置換基として1つ有するベンゼン環である場合、nが1であり且つRが炭素原子数2~6のアルケニル基であるフェノール化合物、例えば、ビニルフェノール、アリルフェノール、1-プロペニルフェノール、ブテニルフェノール、ペンテニルフェノール、ヘキセニルフェノール等を用いればよい。また、目的とする封鎖ユニットがフッ素原子を置換基として有するベンゼン環である場合、mが1~5であり且つRがフッ素原子であるフェノール化合物、例えば、ペンタフルオロフェノール、テトラフルオロフェノール、トリフルオロフェノール等を用いればよい。
【0086】
縮合反応は、溶媒を使用せずに無溶媒系で進行させてもよいし、有機溶媒を使用して有機溶媒系で進行させてもよい。縮合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
縮合反応においては、塩基を用いてもよい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)や水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)等の第3級アミン類等が挙げられる。塩基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
縮合反応においてはまた、縮合剤や層間移動触媒を用いてよい。これらは、エステル化反応において用いることのできる従来公知の任意のものを用いてよい。
【0089】
縮合反応における反応温度は、縮合反応が進行する限り特に限定されず、例えば、0~80℃の範囲としてよい。また縮合反応における反応時間は、目的とするジエステル化合物の構造が達成される限り特に限定されず、例えば、30分間~8時間の範囲としてよい。
【0090】
縮合反応後にジエステル化合物を精製してもよい。例えば、縮合反応後、副生塩や過剰量の出発原料を系内から除去するために、水洗や精密濾過などの精製工程を施してもよい。詳細には、縮合反応後、副生塩を溶解するに必要な量の水を添加して、静置分液して水層を棄却する。さらに必要に応じて酸を添加し中和して水洗を繰り返す。その後、薬剤或いは共沸による脱水工程を経て精密濾過し不純物を除去精製した後に、必要に応じて、有機溶媒を蒸留除去することにより、ジエステル化合物を得ることができる。有機溶媒を完全に除去しないでそのまま樹脂組成物の溶剤に使用してもよい。
【0091】
本発明のジエステル化合物は、低粘度であるという特徴を呈する。例えば、後述する(加温時の粘度測定条件)欄に記載のように振動式粘度計で測定した場合、本発明のジエステル化合物の75℃における粘度は、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは300mPa・s以下、200mPa・s以下、150mPa・s以下、100mPa・s以下、80mPa・s以下、60mPa・s以下又は50mPa・s以下となり得る。
【0092】
第1及び第2の封鎖ユニットの少なくとも一方(好ましくは両方)が、不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である好適な一実施形態では、特に低粘度を呈することができる。斯かる好適な一実施形態において、本発明のジエステル化合物は、常温(25℃)で液状である。例えば、後述する(粘度測定条件)欄に記載のようにE型粘度計(100rpm)で測定した場合、本発明のジエステル化合物の25℃における粘度は、好ましくは2000mPa・s以下、より好ましくは1500mPa・s以下、さらに好ましくは1000mPa・s以下、800mPa・s以下、600mPa・s以下、500mPa・s以下又は400mPa・s以下となり得る。第1及び第2の封鎖ユニットの両方が、不飽和脂肪族炭化水素基を置換基として有する芳香環である特に好適な一実施形態においては、本発明のジエステル化合物はより低粘度を呈することができ、25℃における粘度は、例えば、300mPa・s以下、250mPa・s以下、200mPa・s以下、150mPa・s以下又は100mPa・s以下にまで低くすることも可能である。よって好適な一実施形態において、本発明のジエステル化合物の25℃における粘度は、300mPa・s以下である。
【0093】
本発明のジエステル化合物は、架橋性樹脂との組み合わせにおいて、優れた誘電特性を呈する硬化物をもたらすというエステル化合物の利点はそのままに、低粘度であり、架橋性樹脂との組み合わせにおいて流動性の良好な樹脂組成物を実現することができ、ひいては封止成形等の成形時にフローマークや未充填部が発生することを抑制することができる。また、本発明のジエステル化合物は、架橋性樹脂との組み合わせにおいて、靭性・柔軟性に富む硬化物をもたらすことができる。さらには、無機充填材の含有量が高い場合であっても、成形温度において良好な流動性を呈する樹脂組成物をもたらすことができ、耐熱性や耐湿性に優れ、より誘電正接が低く、低反り性、放熱性も良好な硬化物を実現することができる。したがって好適な一実施形態において、本発明のジエステル化合物は、樹脂架橋剤として好適に用いることができる。
【0094】
[樹脂組成物]
本発明のジエステル化合物を用いて樹脂組成物を製造することができる。本発明は、斯かる樹脂組成物も提供する。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、ジエステル化合物(X)と、架橋性樹脂(Y)とを含み、該ジエステル化合物(X)が本発明のジエステル化合物、すなわち上記式(X)で表されるジエステル化合物であることを特徴とする。
【0096】
コアユニットや第1及び第2の封鎖ユニットの好適な例、一般式の好適な態様をはじめ、ジエステル化合物(X)の詳細は、上記[ジエステル化合物]欄にて説明したとおりである。
【0097】
本発明の樹脂組成物において、架橋性樹脂(Y)としては、ジエステル化合物(X)との組み合わせにおいて架橋することができる限り、その種類は特に限定されない。ジエステル化合物(X)との組み合わせにおいて、優れた誘電特性を呈する硬化物をもたらすと共に成形時には良好な流動性を呈することができる観点から、架橋性樹脂(Y)は、熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0098】
熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂としては、プリント配線板や半導体チップパッケージの絶縁層を形成する際に使用される公知の樹脂を用いてよい。以下、架橋性樹脂(Y)として用いることのできる熱硬化性樹脂及びラジカル重合性樹脂について説明する。
【0099】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ジエステル化合物(X)との組み合わせにおいて、成形時には良好な流動性を呈し、硬化後には優れた誘電特性をもたらすことができる観点から、架橋性樹脂(Y)は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0100】
エポキシ樹脂は、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のエポキシ基を有する限り、その種類は特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。ジエステル化合物(X)を含む本発明の樹脂組成物によれば、エポキシ樹脂の種類によらず、成形時には良好な流動性を呈し、硬化後には優れた誘電特性をもたらすことができる。
【0101】
エポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)に分類し得るが、本発明の樹脂組成物は、架橋性樹脂(Y)として、液状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでもよい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含む場合、配合割合(液状:固体状)は質量比で20:1~1:20の範囲(好ましくは10:1~1:10、より好ましくは3:1~1:3)としてよい。
【0102】
エポキシ樹脂のエポキシ基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ基当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
【0103】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。エポキシ樹脂のMwは、GPC法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0104】
ラジカル重合性樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル重合性不飽和基を有する限り、その種類は特に限定されない。ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基として、マレイミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する樹脂が挙げられる。中でも、ジエステル化合物(X)との組み合わせにおいて、成形時には良好な流動性を呈し、硬化後には優れた誘電特性をもたらすことができる観点から、架橋性樹脂(Y)は、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0105】
マレイミド樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する限り、その種類は特に限定されない。マレイミド樹脂としては、例えば、「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもデジクナーモレキュールズ社製)などの、ダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格を含むマレイミド樹脂;発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
【0106】
(メタ)アクリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、その種類は特に限定されない。ここで、「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。メタクリル樹脂としては、例えば、「A-DOG」(新中村化学工業社製)、「DCP-A」(共栄社化学社製)、「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」(何れも日本化薬社製)などの、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0107】
スチリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のスチリル基又はビニルフェニル基を有する限り、その種類は特に限定されない。スチリル樹脂としては、例えば、「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(何れも三菱ガス化学社製)などの、スチリル樹脂が挙げられる。
【0108】
本発明の樹脂組成物は、架橋性樹脂(Y)として、熱硬化性樹脂のみ含んでもよく、ラジカル重合性樹脂のみ含んでもよく、熱硬化性樹脂とラジカル重合性樹脂を組み合わせて含んでもよい。
【0109】
本発明の樹脂組成物において、架橋性樹脂(Y)に対するジエステル化合物(X)の質量比((X)/(Y))は、好ましくは0.8以上としてよく、より好ましくは0.9以上、1以上、1.1以上又は1.2以上としてよい。該質量比((X)/(Y))の上限は、例えば、2以下、1.9以下、1.8以下などとしてよい。したがって一実施形態において、架橋性樹脂(Y)に対するジエステル化合物(X)の質量比((X)/(Y))は、0.8~2.0である。
【0110】
本発明の樹脂組成物は、さらに無機充填材を含んでもよい。無機充填材を含有させることにより、線熱膨張率や誘電正接をさらに低下させることができる。また、高熱伝導率の無機充填材を含有させることにより、放熱性に優れる硬化物を実現することができる。
【0111】
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、具体的用途に応じて選択してよい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の市販品としては、例えば、「UFP-30」(電化化学工業社製);「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SC4050-SX」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC-C2」(何れもアドマテックス社製);「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」(トクヤマ社製)、「DAW-0525」(デンカ社製)等が挙げられる。
【0112】
無機充填材の平均粒径は、具体的用途に応じて好適な範囲を決定してよい。例えば、プリント配線板の層間絶縁層や半導体チップパッケージの再配線形成層を形成する場合には、硬化物(絶縁層)表面が低粗度となり、微細配線形成を容易にする観点から、無機充填材の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。また、半導体チップパッケージの封止層を形成する場合には、封止成形時の流動性を向上させる観点から、無機充填材の平均粒径は、好ましくは15μm以下、より好ましくは14μm以下、さらに好ましくは12μm以下、10μm以下又は8μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されず、具体的用途に応じて決定してよく、例えば0.01μm以上、0.02μm以上、0.03μm以上、0.05μm以上又は0.1μm以上などとし得る。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製LA-950等を使用することができる。
【0113】
無機充填材は、アミノシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、スチリルシラン系カップリング剤、アクリレートシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してその耐湿性、分散性を向上させたものが好ましい。
【0114】
本発明の樹脂組成物が無機充填材を含む場合、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、5質量%以上、10質量%以上であり、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。2価脂肪族基からなるコアユニットを有するジエステル化合物(X)を含む本発明の樹脂組成物によれば、成形時における良好な流動性を担保させつつ、さらに無機充填材の含有量を高めることができる。樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、例えば、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上又は80質量%以上にまで高めてもよい。これにより本発明の樹脂組成物は、狭ギャップ充填性を満足させつつ、誘電正接が一際低く、耐熱性や耐湿性、低反り性に優れ、また、無機充填材の種類によっては高い放熱性を有する硬化物を実現することができる。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば95質量%以下、90質量%以下などとし得る。
【0115】
本発明の樹脂組成物は、さらにジエステル化合物(X)以外の樹脂架橋剤を含んでもよい。
【0116】
ジエステル化合物(X)以外の樹脂架橋剤としては、「TD2090」、「TD2131」(DIC社製)、「MEH-7600」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」(明和化成社製)、「NHN」、「CBN」、「GPH-65」、「GPH-103」(日本化薬社製)、「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、「LA7052」、「LA7054」、「LA3018」、「LA1356」(DIC社製)などのフェノール系硬化剤;「F-a」、「P-d」(四国化成社製)、「HFB2006M」(昭和高分子社製)などのベンゾオキサジン系架橋剤;メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物などの酸無水物系架橋剤;PT30、PT60、BA230S75(ロンザジャパン社製)などのシアネートエステル系架橋剤;ベンゾオキサジン系架橋剤などが挙げられる。
【0117】
本発明の樹脂組成物がジエステル化合物(X)以外の樹脂架橋剤を含む場合、樹脂組成物中の該樹脂架橋剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、下限は、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上などとし得る。
【0118】
本発明の樹脂組成物は、さらに架橋促進剤を含んでもよい。架橋促進剤を含むことにより、架橋時間及び架橋温度を効率的に調整することができる。
【0119】
架橋促進剤としては、例えば、「TPP」、「TPP-K」、「TPP-S」、「TPTP-S」(北興化学工業社製)などの有機ホスフィン化合物;「キュアゾール2MZ」、「2E4MZ」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「Cl1Z-A」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2PHZ」(四国化成工業社製)などのイミダゾール化合物;ノバキュア(旭化成工業社製)、フジキュア(富士化成工業社製)などのアミンアダクト化合物;1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7,4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4-ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物;コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の有機金属錯体又は有機金属塩等が挙げられる。
【0120】
本発明の樹脂組成物が架橋促進剤を含む場合、樹脂組成物中の架橋促進剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、下限は、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上などとし得る。
【0121】
本発明の樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。斯かる添加剤の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよい。
【0122】
本発明の樹脂組成物は、揮発性成分として、さらに有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶媒;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
本発明の樹脂組成物が有機溶媒を含む場合、樹脂組成物中の有機溶媒の含有量は、樹脂組成物に要求される特性に応じて決定してよいが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下などとし得る。
【0124】
ここで、樹脂組成物の粘度を低減させるために、希釈剤として有機溶媒を添加して樹脂組成物を調製することがなされてきた。斯かる樹脂組成物を用いて半導体チップパッケージやプリント配線板の絶縁層を形成する場合、成膜工程や封止成形工程においてボイドが発生したり、有機溶媒のための大掛かりな廃棄設備が必要となったり、得られる絶縁層に有機溶媒が残存したりするなどの不具合を生じる。これに対し、2価脂肪族基からなるコアユニットを有するジエステル化合物(X)を含む本発明の樹脂組成物によれば、有機溶媒の含有量が低い場合でも或いは有機溶媒を含まない場合であっても、成形時に良好な流動性を呈することができるため好ましい。本発明の樹脂組成物中の有機溶媒の含有量は、例えば、10質量%未満、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、2質量%以下、1質量%以下又は0.5質量%以下にまで低くしてよく、0質量%(無溶媒系)であってもよい。
【0125】
本発明の樹脂組成物は、上記の成分のうち必要な成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。
【0126】
ジエステル化合物(X)と架橋性樹脂(Y)を組み合わせて含む本発明の樹脂組成物は、成形時に良好な流動性を呈すると共に、硬化後には優れた誘電特性をもたらすことができる。
【0127】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電率(Dk)が低いという特徴を呈する。例えば、後述する[誘電特性]欄に記載のように5.8GHz、23℃で測定した場合、本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電率(Dk)は、好ましくは3.3以下、3.2以下、3.1以下、3.0以下、2.9以下又は2.8以下となり得る。
【0128】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電正接(Df)が低いという特徴を呈する。例えば、後述する[誘電特性]欄に記載のように5.8GHz、23℃で測定した場合、本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接(Df)は、好ましくは0.01以下、0.008以下、0.007以下、0.006以下、0.005以下又は0.004以下となり得る。
【0129】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、熱伝導率が高いという特徴を呈する。例えば、後述する[熱伝導率]欄に記載のようにホットディスク法により測定した場合、本発明の樹脂組成物の硬化物の熱伝導率は、好ましくは2.5W/mK以上、2.6W/mK以上、2.8W/mK以上、3W/mK以上、3.1W/mK以上又は3.2W/mK以上となり得る。
【0130】
本発明の樹脂組成物は、半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体封止用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、半導体チップパッケージにおいて再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶層間縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0131】
[シート状積層材料(樹脂シート、プリプレグ)]
本発明の樹脂組成物は、そのまま使用することもできるが、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いてもよい。
【0132】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0133】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物の層(以下、単に「樹脂組成物層」という。)とを含み、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0134】
樹脂組成物層の厚さは、用途によって好適値は異なり、用途に応じて適宜決定してよい。例えば、樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板や半導体チップパッケージの薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下又は50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上などとし得る。
【0135】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0136】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0137】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0138】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0139】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0140】
支持体としてはまた、薄い金属箔に剥離が可能な支持基材を張り合わせた支持基材付き金属箔を用いてよい。一実施形態において、支持基材付き金属箔は、支持基材と、該支持基材上に設けられた剥離層と、該剥離層上に設けられた金属箔とを含む。支持体として支持基材付き金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、金属箔上に設けられる。
【0141】
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材として、銅箔を用いる場合、電解銅箔、圧延銅箔であってよい。また、剥離層は、支持基材から金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
【0142】
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
【0143】
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、10μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましい。また、金属箔の厚さは、例えば、0.1μm~10μmの範囲としてよい。
【0144】
一実施形態において、樹脂シートは、必要に応じて、任意の層をさらに含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0145】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0146】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0147】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0148】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0149】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0150】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板や半導体チップパッケージの薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0151】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0152】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0153】
本発明のシート状積層材料は、半導体チップを封止するため(半導体封止用)に好適に使用することができ、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用に好適に使用することができる。本発明のシート状積層材料はまた、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶層間縁層用)により好適に使用することができる。
【0154】
[半導体チップパッケージ]
本発明の半導体チップパッケージは、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる封止層を含む。本発明の半導体チップパッケージはまた、先述のとおり、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる、再配線層を形成するための絶縁層(再配線形成層)を含んでもよい。
【0155】
半導体チップパッケージは、例えば、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて、下記(1)乃至(6)の工程を含む方法により製造することができる。工程(3)の封止層あるいは工程(5)の再配線形成層を形成するために、本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いればよい。以下、樹脂組成物や樹脂シートを用いて封止層や再配線形成層を形成する一例を示すが、半導体チップパッケージの封止層や再配線形成層を形成する技術は公知であり、当業者であれば、本発明の樹脂組成物や樹脂シートを用いて、公知の技術に従って半導体パッケージを製造することができる。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0156】
-工程(1)-
基材に使用する材料は特に限定されない。基材としては、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板(例えばFR-4基板);ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)からなる基板などが挙げられる。
【0157】
仮固定フィルムは、工程(4)において半導体チップから剥離することができると共に、半導体チップを仮固定することができれば材料は特に限定されない。仮固定フィルムは市販品を用いることができる。市販品としては、日東電工社製のリヴァアルファ等が挙げられる。
【0158】
-工程(2)-
半導体チップを、その電極パッド面が仮固定フィルムと接合するように、仮固定フィルム上に仮固定する。半導体チップの仮固定は、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の公知の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体パッケージの生産数等に応じて適宜設定することができ、例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に整列させて仮固定することができる。
【0159】
-工程(3)-
本発明の樹脂組成物を半導体チップ上に塗布し、又は、本発明の樹脂シートの樹脂組成物層を半導体チップ上に積層し、硬化(例えば熱硬化)させて封止層を形成する。
【0160】
2価脂肪族基からなるコアユニットを有するジエステル化合物(X)を含む本発明の樹脂組成物を用いることにより、樹脂組成物をそのまま塗布する場合であっても樹脂シートの形態で樹脂組成物層を積層する場合であっても、封止成形時に良好な流動性を呈することができる。
【0161】
例えば、樹脂シートの形態で用いる場合、半導体チップと樹脂シートの積層は、樹脂シートの保護フィルムを除去した後、支持体側から樹脂シートを半導体チップに加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを半導体チップに加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、半導体チップの表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。半導体チップと樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してもよく、その積層条件は、プリント配線板の製造方法に関連して後述する積層条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0162】
積層の後、樹脂組成物を熱硬化させて封止層を形成する。熱硬化の条件は、プリント配線板の製造方法に関連して後述する熱硬化の条件と同様である。
【0163】
樹脂シートの支持体は、半導体チップ上に樹脂シートを積層し熱硬化した後に剥離してもよく、半導体チップ上に樹脂シートを積層する前に支持体を剥離してもよい。
【0164】
本発明の樹脂組成物を塗布して封止層を形成する場合、その塗布条件としては、本発明の樹脂シートに関連して説明した樹脂組成物層を形成する際の塗布条件と同様としてよい。本発明の樹脂組成物を用いることにより、塗布・成形温度において良好な流動性を実現できる。
【0165】
-工程(4)-
基材及び仮固定フィルムを剥離する方法は、仮固定フィルムの材質等に応じて適宜変更することができ、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法、及び基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法等が挙げられる。
【0166】
仮固定フィルムを加熱、発泡(又は膨張)させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100~250℃で1~90秒間又は5~15分間である。また、基材側から紫外線を照射させ、仮固定フィルムの粘着力を低下させ剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm~1000mJ/cmである。
【0167】
-工程(5)-
再配線形成層(絶縁層)を形成する材料は、再配線形成層(絶縁層)形成時に絶縁性を有していれば特に限定されず、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂、熱硬化性樹脂が好ましい。本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて再配線形成層を形成してもよい。
【0168】
再配線形成層を形成後、半導体チップと後述する導体層を層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。ビアホールは、再配線形成層の材料に応じて、公知の方法により形成してよい。
【0169】
-工程(6)-
再配線形成層上に形成する導体層の材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0170】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0171】
導体層の厚さは、所望の半導体チップパッケージのデザインによるが、一般に1μm~35μm、好ましくは1μm~20μmである。
【0172】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により再配線形成層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0173】
まず、再配線形成層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層(再配線層)を形成することができる。
【0174】
なお、工程(5)及び工程(6)を繰り返し行い、導体層(再配線層)及び再配線形成層(絶縁層)を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0175】
半導体チップパッケージを製造するにあたって、(7)導体層(再配線層)上にソルダーレジスト層を形成する工程、(8)バンプを形成する工程、(9)複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程をさらに実施してもよい。これらの工程は、半導体チップパッケージの製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0176】
以上は、最初に半導体チップを設け、その電極パッド面に再配線層を形成する工法、すなわちチップ1st(Chip-1st)工法で製造する場合の一例である。本発明の半導体チップパッケージは、斯かるチップ1st工法のほか、最初に再配線層を設け、該再配線層に、その電極パッド面が再配線層と電気接続し得るような状態にて、半導体チップを設け、封止する工法、すなわち再配線層1st(RDL-1st)工法で製造してもよい。狭ギャップ充填性に優れる本発明の樹脂組成物、樹脂シートは、Chip-1st工法及びRDL-1st工法の別を問わず、5G用途で要求される伝送損失の極めて少ない半導体チップパッケージを実現することができる。
【0177】
成形時には良好な流動性を呈し、硬化後には優れた誘電特性をもたらす本発明の樹脂組成物、樹脂シートを用いて封止層、再配線形成層を形成することにより、半導体パッケージが、ファンイン(Fan-In)型パッケージであるかファンアウト(Fan-Out)型パッケージであるかの別を問わず、フローマークや未充填部、反りが発生することを抑制しつつ伝送損失の極めて少ない半導体チップパッケージを実現することができる。一実施形態において、本発明の半導体チップパッケージは、ファンアウト(Fan-Out)型パッケージである。本発明の樹脂組成物、樹脂シートは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)の別を問わず、適用できる。一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)である。他の一実施形態において、本発明の半導体パッケージは、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)である。
【0178】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0179】
プリント配線板は、例えば、上記の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0180】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0181】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
【0182】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0183】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0184】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0185】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。なお、支持体として、金属箔を使用した場合、支持体を剥離することなく、該金属箔を用いて導体層を形成してよい。また、支持体として、支持基材付き金属箔を使用した場合、支持基材(と剥離層)を剥離すればよい。そして、金属箔を用いて導体層を形成することができる。
【0186】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0187】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは180℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。
【0188】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0189】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0190】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0191】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0192】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去(デスミア)も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0193】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0194】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0195】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0196】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0197】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。工程(V)は、半導体チップパッケージの製造方法に関連して説明した工程(6)と同様に実施してよい。
【0198】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0199】
導体層はまた、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0200】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0201】
あるいは、樹脂シートの支持体として、金属箔や、支持基材付き金属箔を使用した場合、該金属箔を用いて導体層を形成してよいことは先述のとおりである。
【0202】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる層を含む。本発明の半導体装置は、本発明の半導体チップパッケージ又はプリント配線板を用いて製造することができる。
【0203】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0204】
<実施例1>ジエステル化合物(A)の合成
攪拌装置、温度計、滴下漏斗、窒素ガス吹込み口が装着された2リットル四つ口丸フラスコに、アリルフェノール268g(2.00モル)、セバシン酸ジクロリド239g(1.00モル)及びメチルイソブチルケトン500gを計りとり、攪拌しながら30℃まで昇温して内容物を均一に溶解させた。そこにトリエチルアミン231g(2.20モル)を滴下した。トリエチルアミンの滴下は、内容物の温度が30℃で滴下開始し、発熱に注意しながら、滴下終了後に液温が60~70℃になるように昇温カーブで1時間要して滴下した。さらに60~70℃で1時間攪拌を続けた後に、蒸留水200gを添加して、副生有機塩を完全に溶解した。その後、その液を分液漏斗に移して下層(水層)を静置分液した。次いで蒸留水200gとリン酸第二ナトリウム10gを添加して、激しく浸透させた後に静置分液して下層(水層)を棄却した。さらに蒸留水200gを用いた水洗を3回繰り返した。水洗した反応液に硫酸マグネシウム(脱水剤)を適量添加して激しく振とうさせて脱水し、脱水した反応液を精密ろ過した。最後にロータリーエバポレーター等を用いて濾液から反応溶媒を高真空で減圧蒸留回収(最高温度120℃)して液状化合物としてジエステル化合物(A)405gを得た。
【0205】
得られたジエステル化合物(A)について、下記の測定条件に基づきE型粘度計(25℃粘度について)及び振動式粘度計(75℃粘度について)を用いて粘度の測定を行った。該ジエステル化合物(A)の25℃における粘度は72mPa・s、75℃における粘度は12mPa・sであった。
【0206】
(粘度測定条件)
測定装置:E型粘度計(東機産業株式会社製「RE-80U」)
コーンプレート:半径24mm、角度1.34°
回転数:100rpm
温度:25℃
【0207】
(加温時の粘度測定条件)
測定装置:振動式粘度計(株式会社セコニック社製「VM―10A-L」)
温度:75℃
【0208】
また、得られたジエステル化合物(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法及び赤外分光分析(IR)法による測定を行った。該化合物のGPCチャートを図1aに、IRチャートを図1bに示す。またマススペクトルでは、目的物質の分子量に相当するm/z=434のスペクトルが観察された。その結果、得られたジエステル化合物(A)は、以下に示す目的の分子構造を有するものであることが確認された。
【0209】
【化10】
【0210】
<実施例2>ジエステル化合物(B)の合成
アリルフェノールに代えてフェノール188g(2.00モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形化合物としてジエステル化合物(B)325gを得た。
【0211】
得られたジエステル化合物(B)の融点は60℃であった。また実施例1と同様に振動式粘度計を用いて粘度の測定を行ったところ、該化合物の75℃における粘度は17mPa・sであった。該化合物のGPCチャートを図2aに、IRチャートを図2bに示す。またマススペクトルでは、目的物質の分子量に相当するm/z=354のスペクトルが観察された。その結果、得られたジエステル化合物(B)は、以下に示す目的の分子構造を有するものであることが確認された。
【0212】
【化11】
【0213】
<実施例3>ジエステル化合物(C)の合成
セバシン酸ジクロリドに代えてスベリン酸ジクロリド211g(1.00モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして、液状化合物としてジエステル化合物(C)370gを得た。
【0214】
得られたジエステル化合物(C)について、実施例1と同様にE型粘度計及び振動式粘度計を用いて粘度の測定を行ったところ、25℃における粘度は68mPa・s、75℃における粘度は12mPa・sであった。該化合物のGPCチャートを図3aに、IRチャートを図3bに示す。またマススペクトルでは、目的物質の分子量に相当するm/z=406のスペクトルが観察された。その結果、得られたジエステル化合物(C)は、以下に示す目的の分子構造を有するものであることが確認された。
【0215】
【化12】
【0216】
<実施例4>ジエステル化合物(D)の合成
アリルフェノールに代えて1-ナフトール288g(2.00モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形化合物としてジエステル化合物(D)418gを得た。
【0217】
得られたジエステル化合物(D)の融点は68℃であった。また実施例1と同様に振動式粘度計を用いて粘度の測定を行ったところ、該化合物の75℃における粘度は76mPa・sであった。該化合物のGPCチャートを図4aに、IRチャートを図4bに示す。またマススペクトルでは、目的物質の分子量に相当するm/z=454のスペクトルが観察された。その結果、得られたジエステル化合物(D)は、以下に示す目的の分子構造を有するものであることが確認された。
【0218】
【化13】
【0219】
<実施例5>ジエステル化合物(E)の合成
アリルフェノールに代えてペンタフルオロフェノール368g(2.00モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして、固形化合物としてジエステル化合物(E)505gを得た。
【0220】
得られたジエステル化合物(E)の融点は61℃であった。また実施例1と同様に振動式粘度計を用いて粘度の測定を行ったところ、75℃における粘度は19mPa・sであった。該化合物のGPCチャートを図5aに、IRチャートを図5bに示す。またマススペクトルでは、目的物質の分子量に相当するm/z=534のスペクトルが観察された。その結果、得られたジエステル化合物(E)は、以下に示す目的の分子構造を有するものであることが確認された。
【0221】
【化14】
【0222】
<比較例1>ジエステル化合物(F)の合成
セバシン酸ジクロリドに代えてイソフタル酸ジクロリド203g(1.00モル)を使用した以外は、実施例1と同様にして、液状化合物としてジエステル化合物(F)240gを得た。
【0223】
得られたジエステル化合物(F)について、実施例1と同様にE型粘度計及び振動式粘度計を用いて粘度の測定を行ったところ、25℃における粘度は6000mPa.s、75℃における粘度は85mPa・sであった。該化合物のGPCチャートを図6aに、IRチャートを図6bに示す。またマススペクトルでは、目的物質の分子量に相当するm/z=398のスペクトルが観察された。その結果、得られたジエステル化合物(F)は、以下に示す分子構造を有するものであることが確認された。
【0224】
【化15】
【0225】
<実施例6~20及び比較例2~4>
(1)樹脂組成物の調製
合成したジエステル化合物(A)~(F)を用いて、下記表1~3に示す組成で80℃に加温しながら撹拌・混合し、樹脂組成物を調製した。
【0226】
(2)硬化物の製造
調製した樹脂組成物を2枚のガラス板の隙間に注型注ぎ込み、熱循環オーブンを用いて180℃にて90分間加熱して硬化させ、厚さ約1mmの硬化物を得た。
【0227】
得られた硬化物、樹脂組成物を用いて下記要領で評価試験を行った。結果を表1~3に示す。
【0228】
[誘電特性]
硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断し、空洞共振器摂動法誘電率測定装置(関東応用電子開発社製「CP521」)及びネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製「E8362B」)を使用して、空洞共振法で測定周波数5.8GHz、23℃にて比誘電率と誘電正接の測定を行った。各硬化物について、2本の試験片について測定を行い(n=2)、平均値を算出した。
【0229】
[靭性評価]
硬化物を、幅30mm、長さ80mmの試験片に切断し、長辺方向へ半分に180°折り曲げた際の状態を目視で確認した。
〇:硬化物に亀裂、破壊が見られない
×:硬化物に亀裂、破壊が見られる
【0230】
[熱伝導率]
各樹脂組成物を所定容器に入れ、熱循環オーブンを用いて180℃にて90分間加熱して硬化させ、厚さ10mm×直径φ36mmの円筒状硬化物を作製した。得られた円筒状硬化物を、測定温度25℃、40%RHの恒温環境下、熱物性測定装置(京都電子工業社製「TPS-2500」)を用いて、ホットディスク法により熱伝導率を測定した。
【0231】
【表1】
【0232】
【表2】
【0233】
【表3】
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b