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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240702BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240702BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02K11/33
B60K1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023510769
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2022010190
(87)【国際公開番号】W WO2022209656
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2021059967
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 盛生
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-044987(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030322(WO,A1)
【文献】特開2016-220385(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069774(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/179218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02K 11/33
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、
ケースと、を備え、
前記インバータ装置は、直流電源に接続される電源接続端子を備え、
前記ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に接合されたカバー部材と、を備え、
前記ケース本体は、前記回転電機を収容する第1収容室と、前記インバータ装置を収容する第2収容室とを形成するように一体形成され、
前記ケース本体は、予め規定された第1方向に沿って前記第2収容室から前記ケースの外部に向かって開口すると共に前記インバータ装置を挿通可能な第1開口部を備え、
前記ケース本体は、前記第1開口部を囲むように前記第1方向に沿って配置された包囲壁部と、前記包囲壁部に形成されて前記直流電源と前記電源接続端子とを電気的に接続する電源ケーブルが挿通される第2開口部と、を更に備え、
前記カバー部材は、前記第1開口部を覆うように、前記第1開口部の開口縁に沿って互いに離間して配置された複数の締結部材により前記包囲壁部に固定され、
前記電源接続端子は、前記直流電源の正極に接続される正極接続端子と、前記直流電源の負極に接続される負極接続端子と、を含み、
前記正極接続端子と前記負極接続端子とは前記第1方向に沿って並ぶように配置され、
前記第2開口部が開口する方向を第2方向として、
前記第2方向に沿う第2方向視で、前記第2開口部における前記第1方向の開口幅である第1開口幅よりも、前記第2開口部における前記第1方向に直交する方向の開口幅である第2開口幅の方が小さく、
一対の前記締結部材が、前記第2開口部を挟んで両側に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1開口幅は、一対の前記締結部材同士の間隔よりも小さい、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、平板状部分を有する、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第2開口部が、前記第2方向視で楕円形状に形成されている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第2開口部の内周面に、前記電源ケーブルのコネクタの外周面が嵌合されている、請求項1から4の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記第1方向に沿う第1方向視と前記第2方向視との双方で、前記第1開口部の開口縁である第1開口縁部と、前記第2開口部の開口縁である第2開口縁部とが重複している、請求項1から5の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機とこの回転電機を駆動制御するインバータ装置とケースとを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2013/069774号には、車両の駆動力源としてのモータ(11)と、モータ(11)を駆動するインバータ(12)と、モータ(11)の回転を減速して車輪(9)に伝達する減速機(13)とを備えた車両用駆動装置(モータパワーユニット(4))が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。このモータパワーユニット(4)は、モータ(11)を収容するモータケース(15)と、インバータ(12)を収容するインバータ収納ケース(16)と、減速機(13)を収容する減速機ケース(17)とが一体化されたケースを備えている。インバータ(12)とモータ(11)とは、この一体化されたケースの内部において、電気的に接続される。
【0003】
モータケース(15)とインバータ収納ケース(16)とは、互いに共通するカバー部材としての着脱可能なエンドカバー(18)を有している。また、インバータ収納ケース(16)は、エンドカバー(18)とは別に独立したカバー部材として、インバータ収納ケース(16)の上面を覆って着脱可能な上面カバー(19)を有している。インバータケース(16)は、直方体状の収納空間を有するように形成されている。インバータ収納ケース(16)は、円筒状のモータケース(15)の胴部外周面の上方側に、モータケース(15)の側から延長するようにして一体的に直立形成された3面の側壁部(16a)を備えている。また、側壁部(16a)に囲まれた内周側の下方には、インバータ(12)が載置される棚状の台座部(24)が配置されている。エンドカバー(18)も、モータケース(15)に取り付けられた状態において、モータケース(15)の上方側に、モータケース(15)の側から延長するようにして一体的に形成された延長部(18a)を備えており、この延長部(18a)が、直方体状の収納空間を有するインバータ収納ケース(16)の側壁部の残りの一面を形成している。
【0004】
インバータ(12)を台座部(24)に載置し、エンドカバー(18)を取り付けると、インバータ収納ケース(16)は、下方、並びに側方が覆われる。さらに、インバータ収納ケース(16)の側壁の上端部(3面の側壁部(16a)の上方側の端部、及びエンドカバー(18)の延長部(18a)の上方側の端部)に上面カバー(18)を当接させ、締結固定することで、インバータ(12)は、インバータ収納ケース(16)の内部に閉塞されて収納される。上述したように、モータパワーユニット(4)のケースは、モータケース(15)と、インバータ収納ケース(16)と、減速機ケース(17)とが一体化されたケースであるから、上述したように、当該ケースの内部においてモータ(11)とインバータ(12)とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/069774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インバータ(12)は、直流電源(リチウムイオンバッテリ(2))から電源ケーブルを介して供給される直流電力を交流電力に変換してモータ(11)を駆動する。また、インバータ(1)は、車輪(9)の回転により発生する運動エネルギーによってモータ(11)が生成した交流電力を直流電力に変換し、電源ケーブルを介して直流電源を充電する。一般的に、車両の駆動力源となるモータ(11)を駆動するための直流電源の電圧は、数十ボルトから数百ボルトの大電圧であり、供給される電流も数アンペアから数十アンペアと大電流である。このため、電源ケーブルは、一般的に太く重いものとなる。
【0007】
国際公開第2013/069774号に例示されたモータパワーユニット(4)のケースは、モータケース(15)と、インバータ収納ケース(16)と、減速機ケース(17)とが一体化されたケースである。従って、上述したように、当該ケースの内部においてモータ(11)とインバータ(12)とが電気的に接続される。しかし、直流電源(リチウムイオンバッテリ(2))は、モータパワーユニット(4)の外部に備えられており、インバータ(12)と、直流電源とは、上述したような電源ケーブルによって接続される。そして、この接続のためには、インバータ収納ケース(16)の側壁に相当する側壁部(16a)又はエンドカバー(18)の延長部(18a)に、開口部が形成される場合が多い。
【0008】
車両用駆動装置は、それ自体の駆動や車両の走行により振動する。振動が発生すると、重い物体には慣性力によって比較的大きな力が掛かることになる。電源ケーブルは、ケース、具体的にはインバータ収納ケース(16)に機械的に接続されて、インバータ(12)と電気的に接続される。ケースや、ケースと電源ケーブルとの接続箇所の剛性が不足していると、例えばインバータ収納ケース(16)の側壁(側壁部(16a)や延長部(18a))に形成された開口部を変形させるおそれもある。開口部の変形は、インバータ収納ケース(16)の側壁にも影響し、例えば、インバータ収納ケース(16)の側壁と、上面カバー(18)とが当接する箇所において浮きを生じさせる場合もある。つまり、インバータ収納ケース(16)の閉塞性が損なわれる場合がある。
【0009】
上記背景に鑑みて、インバータを収納するケースの閉塞性が損なわれないように、ケースの剛性を確保しつつ、電源ケーブルを適切に接続することができる車両用駆動装置の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑みた車両用駆動装置は、回転電機と、前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、ケースと、を備え、前記インバータ装置は、直流電源に接続される電源接続端子を備え、前記ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に接合されたカバー部材と、を備え、前記ケース本体は、前記回転電機を収容する第1収容室と、前記インバータ装置を収容する第2収容室とを形成するように一体形成され、前記ケース本体は、予め規定された第1方向に沿って前記第2収容室から前記ケースの外部に向かって開口すると共に前記インバータ装置を挿通可能な第1開口部を備え、前記ケース本体は、前記第1開口部を囲むように前記第1方向に沿って配置された包囲壁部と、前記包囲壁部に形成されて前記直流電源と前記電源接続端子とを電気的に接続する電源ケーブルが挿通される第2開口部と、を更に備え、前記カバー部材は、前記第1開口部を覆うように、前記第1開口部の開口縁に沿って互いに離間して配置された複数の締結部材により前記包囲壁部に固定され、前記電源接続端子は、前記直流電源の正極に接続される正極接続端子と、前記直流電源の負極に接続される負極接続端子と、を含み、前記正極接続端子と前記負極接続端子とは前記第1方向に沿って並ぶように配置され、前記第2開口部が開口する方向を第2方向として、前記第2方向に沿う第2方向視で、前記第2開口部における前記第1方向の開口幅である第1開口幅よりも、前記第2開口部における前記第1方向に直交する方向の開口幅である第2開口幅の方が小さく、一対の前記締結部材が、前記第2開口部を挟んで両側に配置されている。
【0011】
インバータ装置を挿通可能な第1開口部を囲む包囲壁部に電源ケーブルが挿通される第2開口部が形成されている場合、当該第2開口部が包囲壁部の剛性低下の要因となる可能性がある。包囲壁部の剛性が不足して、例えば第1開口部の開口縁が変形すると、第1開口部を覆うように配置されたカバー部材が第1開口部から浮いて隙間が生じる可能性がある。本構成によれば、このような第2開口部が形成されている場合であっても、第2開口部の第2開口幅が、第1開口幅よりも小さいため、第1開口部の開口縁の変形を小さく抑えやすい。また、第1開口部の開口縁に沿って配置された複数の締結部材の内の一対が、第2開口部を挟んで第2開口部の両側に配置されているため、第2開口部の近傍においてカバー部材が包囲壁部に締結固定される。従って、第2開口部による第1開口部の開口縁の変形を小さく抑え易く、カバー部材が第1開口部の開口縁から浮くことも適切に抑制することができる。このように、本構成によれば、インバータを収納するケースの閉塞性が損なわれないように、ケースの剛性を確保しつつ、電源ケーブルを適切に接続することができる車両用駆動装置を提供することができる。
【0012】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両用駆動装置の軸方向視の外観側面図
図2】車両用駆動装置の外観斜視図
図3】車両用駆動装置のスケルトン図
図4】車両用駆動装置の軸方向断面図
図5】回転電機を駆動する電気系統の模式的回路ブロック図
図6】電源ケーブルを取り付けた状態のケースの部分拡大側面図
図7】電源接続用開口部の近傍の断面斜視図
図8】電源ケーブルを取り付けた状態の電源接続用開口部の近傍の軸方向部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図3のスケルトン図、図4の軸方向断面図等に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機MGと、回転電機MGを駆動制御するインバータ装置INVと、ケース1とを備えている。図1の外観側面図、図2の外観斜視図等に示すように、ケース1は、ケース本体2と、ケース本体2に接合されたカバー部材(軸方向第1カバー11、軸方向第2カバー12、上面カバー13(カバー部材))とを備えている。ケース本体2は、少なくとも回転電機MGを収容する第1収容室5と、インバータ装置INVを収容する第2収容室3とを形成するように一体形成されている。ここで、「一体形成」とは、例えば1つの金型鋳造品(die casting)として、共通の材料により形成された一体部材のことを言う。ケース本体2は、第1収容室5と第2収容室3とを区画する区画壁部4を備えている。即ち、ケース1は、少なくとも回転電機MGを収容する第1収容室5と、インバータ装置INVを収容し第1収容室5とは区画壁部4によって区画された第2収容室3とを内部に有して一体形成されている。
【0015】
車両用駆動装置100は、第1軸A1上に配置された回転電機MGと、第2軸A2上に配置されて一対の車輪Wに駆動連結される一対の出力部材OUTと、回転電機MGと出力部材OUTとの間で駆動力を伝達する伝達機構TMと、回転電機MGを駆動制御するインバータ装置INVとを備えている。回転電機MGは、一対の車輪Wの駆動力源である。伝達機構TMには、カウンタギヤ機構CG、差動歯車機構DF(出力用差動歯車装置)を含む。差動歯車機構DFは、回転電機MGから伝達される駆動力を一対の車輪Wに分配する。詳細は後述するが、差動歯車機構DFの一対のサイドギヤ(第1サイドギヤS1、第2サイドギヤS2)は、一対の出力部材OUTに相当する。本実施形態では、車両用駆動装置100には、動力発生装置としての回転電機MGと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に、回転電機MGの側から順に、伝達機構TM(動力伝達装置)として、カウンタギヤ機構CG、差動歯車機構DFが設けられている。
【0016】
回転電機MGの軸心(第1軸A1)と差動歯車機構DFの軸心(第2軸A2)とは、互いに平行な別軸に配置されている。カウンタギヤ機構CGの軸心(第3軸A3)は、第1軸A1及び第2軸A2に平行に配置されている。即ち、第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置されている。
【0017】
以下の説明では、上記の軸(A1~A3)に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおける一方側(本実施形態では、差動歯車機構DFに対して回転電機MGが配置される側、図3及び図4等参照)を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。また、上記の第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。尚、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。また、車両用駆動装置100が車両に取り付けられた状態で鉛直方向に沿う方向を「上下方向V」とする。また、本実施形態では、上下方向Vの一方側である上下方向第1側V1が上方であり、他方側である上下方向第2側V2が下方である。水平面に平行な状態で車両用駆動装置100が車両に取り付けられる場合には、径方向Rの1方向と上下方向Vとが一致する。また、軸方向L及び上下方向Vに直交する方向を「幅方向H」と称する。また、幅方向Hの一方側を幅方向第1側H1、他方側を幅方向第2側H2と称する。上下方向Vと同様に、径方向Rの1方向と幅方向Hとも一致する。尚、以下の説明では、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。また、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。尚、本実施形態では、上下方向Vが第1方向に相当し、軸方向Lが第2方向に相当する。
【0018】
ケース1に形成された第1収容室5は、回転電機MG、カウンタギヤ機構CG、差動歯車機構DFを囲むように形成された周壁部29を備えている。ケース1における第1収容室5は、上下方向V及び幅方向Hを周壁部29によって囲われており、軸方向Lの両側が開口している。ここで、第1収容室5の軸方向第1側L1の開口部を軸方向第1開口部21と称し、第1収容室5の軸方向第2側L2の開口部を軸方向第2開口部22と称する。軸方向第1開口部21は、周壁部29の軸方向第1側L1の端部に接合される軸方向第1カバー11によって塞がれる。軸方向第2開口部22は、周壁部29の軸方向第2側L2の端部に接合される軸方向第2カバー12によって塞がれる。即ち、第1収容室5は、周壁部29と、軸方向第1カバー11と軸方向第2カバー12とによって囲まれた空間として形成されている。
【0019】
周壁部29の一部は、第1収容室5と第2収容室3とを区画する区画壁部4として機能する。周壁部29からは、上下方向Vに沿って延びる包囲壁部30が形成されている。包囲壁部30は、上下方向Vに直交する方向からインバータ装置INVを包囲して第2収容室3を形成する。包囲壁部30の上下方向第1側V1(上方)における端部は開放されており、第2収容室3からケース1の外部に向かって開口する開口部(上下方向開口部(第1開口部23))が形成されている。インバータ装置INVは、この第1開口部23から第2収容室3に収容される。即ち、ケース本体2は、予め規定された第1方向(上下方向V)に沿って第2収容室3からケース1の外部に向かって開口すると共にインバータ装置INVを挿通可能な第1開口部23を備えている。上面カバー13(カバー部材)は、第1開口部23を覆うように配置され、第1開口部23は、包囲壁部30の端部に接合される上面カバー13によって塞がれる。図2に示すように、上面カバー13は、第1開口部23の開口縁である第1開口縁23eに沿って互いに離間して配置された複数の締結部材33により、包囲壁部30に固定されている。即ち、第2収容室3は、区画壁部4(周壁部29)と、包囲壁部30と、上面カバー13とによって囲まれた空間として形成されている。
【0020】
本実施形態では、上面カバー13は、平板状部分を有している。第1開口縁23eは、1つの平面に位置しており、上面カバー13の平板状部分も1つの平面に位置している。第1開口縁23eに上面カバー13の平板状部分を当接させることによって、第1開口部23を上面カバー13によって塞ぐことができる。このように、上面カバー13が平板状部分を備えていると、第1開口部23の第1開口縁23eと上面カバー13とを当接させて締結部材33によって締結し易い。但し、第1開口部23(第1開口縁23e)が変形し易いと、第1開口縁23eに対して上面カバー13が浮くおそれがある。詳細は後述するが、本実施形態では、第1開口縁23eと上面カバー13とを容易に締結可能な構造を有しつつ、上面カバー13の浮きも適切に抑制することができる構造を備えている。
【0021】
回転電機MGは、複数相の交流(例えば3相交流)により動作する回転電機(Motor/Generator)であり、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機MGは、図5を参照して後述するように、高圧バッテリBH(直流電源(後述する低圧バッテリBLと区別する場合は「高圧直流電源」))から電力の供給を受けて力行し、又は、車両の慣性力により発電した電力を高圧バッテリBHに供給する(回生する)。
【0022】
図4図5に示すように、回転電機MGは、ケース1などに固定されたステータ81と、当該ステータ81の径方向内側に回転自在に支持されたロータ82とを有する。ステータ81は、ステータコアとステータコアに巻き回されたステータコイル83とを含み、ロータ82は、ロータコアとロータコアに配置された永久磁石とを含む。回転電機MGのロータ82は、ロータ軸82a及び入力部材INを介して入力ギヤG1(図3図4参照)に駆動連結されている。
【0023】
入力ギヤG1は、カウンタギヤ機構CGに駆動連結されている。本実施形態では、カウンタギヤ機構CGは、軸部材によって連結された2つのギヤ(第1カウンタギヤG2、第2カウンタギヤG3)を有する。第1カウンタギヤG2は入力ギヤG1に噛み合い、第2カウンタギヤG3は、差動歯車機構DFの差動入力ギヤG4に噛み合っている。差動歯車機構DFは、出力軸OXを介して車輪Wに駆動連結されている。差動歯車機構DFは、互いに噛合する複数の傘歯車を含んで構成されている。本実施形態では、軸方向第1側L1の第1サイドギヤS1が連結軸JTを介して一方の出力軸OXに連結され、軸方向第2側L2の第2サイドギヤS2が他方の出力軸OXに連結される。差動入力ギヤG4に入力される回転及びトルクは、それぞれ第1サイドギヤS1及び第2サイドギヤを介して2つの出力軸OX(即ち2つの車輪W)に分配して伝達される。これにより、車両用駆動装置100は、回転電機MGのトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
【0024】
図5に示すように、回転電機MGは、インバータ装置INVにより駆動制御される。インバータ装置INVは、直流電力と複数相の交流電力との間で電力を変換するインバータ回路60を備えている。本実施形態では、交流の回転電機MG及び高圧バッテリBHに接続されて、複数相(ここではU相、V相、W相の3相)の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路60を例示する。インバータ回路60は、複数のスイッチング素子を有して構成され、高圧バッテリBHに接続されると共に、交流の回転電機MGに接続されて直流と複数相の交流(ここでは3相交流)との間で電力を変換する。高圧バッテリBHは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。回転電機MGが、車両の駆動力源の場合、高圧バッテリBHは、大電圧大容量の直流電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400ボルトである。詳細は、後述するが、高圧バッテリBHとインバータ装置INVとは、電源ケーブル7によって電気的に接続されている。
【0025】
インバータ回路60の直流側には、インバータ回路60の直流側の正極電源ラインPと負極電源ラインNとの間の電圧(直流リンク電圧)を平滑する直流リンクコンデンサ64(平滑コンデンサ)が備えられている。インバータ回路60は、上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路により構成された交流1相分のアームを複数本(ここでは3本)備えている。スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。図5に示すように、本実施形態では、スイッチング素子としてIGBTが用いられる形態を例示している。本実施形態では、フリーホイールダイオードも含め、インバータ回路60が1つのパワーモジュールに一体化されてスイッチング素子モジュールが構成されている。
【0026】
図5に示すように、インバータ回路60は、インバータ制御装置65(M-CTRL)により制御される。インバータ制御装置65は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。インバータ制御装置65は、回転電機MGの目標トルクに基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路60を介して回転電機MGを制御する。回転電機MGの目標トルクは、例えば、車両内の上位の制御装置の1つである車両制御装置91(VCL-CTRL)等の他の制御装置等から要求信号として提供される。回転電機MGの各相のステータコイル83を流れる実電流は電流センサ84により検出される。また、回転電機MGのロータの各時点での磁極位置は、例えばレゾルバなどの回転センサ85により検出される。
【0027】
インバータ制御装置65は、電流センサ84及び回転センサ85の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。インバータ制御装置65は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。電流フィードバック制御については、公知であるのでここでは詳細な説明は省略する。
【0028】
車両制御装置91やインバータ制御装置65は、その中核となるマイクロコンピュータ等の動作電圧が、例えば5ボルトや3.3ボルトであり、高圧バッテリBHよりも低電圧(例えば12~24ボルト)の低圧バッテリBL(低圧直流電源)から電力を供給されて動作する低圧系回路である。このため、インバータ制御装置65には、各スイッチング素子に対するスイッチング制御信号(IGBTの場合、ゲート駆動信号)の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて中継する駆動回路が備えられている。インバータ回路60を構成する各スイッチング素子の制御端子(は、駆動回路を介してインバータ制御装置65の中核となるマイクロコンピュータ等に接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。インバータ制御装置65は、1枚、又は複数の基板に回路部品が実装されて構成されている。
【0029】
インバータ装置INVは、上述したようなインバータ制御装置65、直流リンクコンデンサ64、インバータ回路60(パワーモジュール)を含んだユニットとして構成されている。ユニットとしてのインバータ装置INVは、ケース1内部の第2収容室3に配置され、ボルト等の締結部材によってケース1に固定されている。
【0030】
図5に示すように、インバータ装置INVと回転電機MGのステータコイル83とは、交流バスバー50によって電気的に接続されている。交流バスバー50は、インバータ側交流バスバー51、交流バスバーコネクタ52、回転電機側交流バスバー53を含む。第1収容室5と第2収容室3との間には、区画壁部4を貫通するように、交流バスバーコネクタ52が配置されている。交流バスバーコネクタ52の一端と、インバータ側交流バスバー51とは、第2収容室3の内部で電気的に接続される。また、交流バスバーコネクタ52の他端と、回転電機側交流バスバー53とは、第1収容室5の内部で電気的に接続される。
【0031】
上述したように、高圧バッテリBHとインバータ装置INVとは、電源ケーブル7によって電気的に接続されている。電源ケーブル7の先端には、電源コネクタ70が配置されており、この電源コネクタ70がケース1に取り付けられる(図6図8等を参照)。電源コネクタ70には、電源ケーブル7と電気的に接続された電源端子(第1電源端子71、第2電源端子72)が備えられている。また、インバータ装置INVは、高圧バッテリBHに接続される電源接続端子Tを備えている。電源接続端子Tは、インバータ装置INVの直流バスバー55(正極バスバー54、負極バスバー56:図5参照)と一体的に設けられている、或いは直流バスバー55に電気的に接続された別部材として設けられている。電源コネクタ70の電源端子(第1電源端子71、第2電源端子72)と、電源接続端子T(第1接続端子T1、第2接続端子T2)とが電気的に接続されることによって、高圧バッテリBHとインバータ装置INV(インバータ回路60)とが電気的に接続される。
【0032】
図1及び図2に示すように、ケース本体2は、第1開口部23を囲むように上下方向V(第1方向)に沿って配置された包囲壁部30と、包囲壁部30に形成されて高圧バッテリBHと電源接続端子Tとを電気的に接続する電源ケーブル7が挿通される電源接続用開口部(第2開口部25)とを備えている。図1図7等に示すように、電源接続端子Tは、高圧バッテリBHの正極に接続される正極接続端子と、高圧バッテリBHの負極に接続される負極接続端子とを含む。例えば、第1接続端子T1が負極接続端子の場合には第2接続端子T2が正極接続端子であり、第1接続端子T1が正極接続端子の場合には第2接続端子T2が負極接続端子である。そして、正極接続端子と負極接続端子とは、上下方向Vに沿って並ぶように配置されている。つまり、第1接続端子T1と第2接続端子T2とは、上下方向Vに沿って並ぶように配置されている。
【0033】
電源接続端子Tと、電源コネクタ70の電源端子とは、後述するように、例えば端子接続部材73によって接続される。インバータ装置INVが、第1開口部23から第2収容室3に挿通されて第2収容室3に少なくとも配置された状態で、好ましくはさらに第2収容室3内に固定された状態で、第2開口部25から第2収容室3に電源コネクタ70挿通されて、電源接続端子Tと電源コネクタ70の電源端子とが接続される(上面カバー13は接合されていなくてよい、或いは上面カバー13は接合されていない方が好ましい。)。このため、上下方向Vに沿って並ぶように配置されている第1接続端子T1及び第2接続端子T2は、図1に示すように、軸方向Lに沿う軸方向視でケース1の外部から視認可能な位置に配置されている。本例では、第2開口部25は、包囲壁部30に設けられている。そして、第2開口部25は、軸方向視で上下方向V(第1方向)に長い形状に形成されている。換言すれば、軸方向視で、第2開口部25における上下方向Vの開口幅である第1開口幅Y1よりも、第2開口部25における上下方向Vに直交する方向(幅方向H:上下方向V(第1方向)及び軸方向L(第2方向)に直交する方向)の開口幅である第2開口幅Y2の方が小さい。
【0034】
インバータ装置INVを挿通可能な第1開口部23を囲む包囲壁部30に電源ケーブル7が挿通される第2開口部25が形成されている場合、当該第2開口部25が包囲壁部30の剛性低下の要因となる可能性がある。包囲壁部30の剛性が不足して、例えば第1開口部23の開口縁である第1開口縁23eが変形すると、第1開口部23を覆うように配置された上面カバー13(カバー部材)が第1開口部23から浮いて隙間が生じる可能性がある。本形態によれば、このような第2開口部25が形成されている場合であっても、第2開口部25の第2開口幅Y2が、第1開口幅Y1よりも小さいため、第1開口縁23eの変形を小さく抑えやすい。また、第1接続端子T1と第2接続端子T2とが上下方向Vに沿って並ぶように配置されているため、これらに接続される電源ケーブル7も、幅方向Hの幅が上下方向Vの幅よりも小さくなり易い。従って、このような第2開口部25の開口幅の設定となっている場合でも、電源ケーブル7を適切に挿通することができる。
【0035】
また、図2を参照して上述したように、上面カバー13は、第1開口部23の開口縁である第1開口縁23eに沿って互いに離間して配置された複数の締結部材33により、包囲壁部30に固定されている。そして、その内、一対の締結部材33(33a,33b)が、第2開口部25を挟んで両側に配置されている。具体的には、図2に示すように、第1締結部材33aと第2締結部材33bとが、第2開口部25を挟んで第2開口部25の両側に配置されている。第2開口部25の近傍において、上面カバー13が包囲壁部30に締結固定されるので、第2開口部25による第1開口縁23eの変形を小さく抑え易く、上面カバー13が第1開口縁23eから浮くことも適切に抑制することができる。
【0036】
換言すれば、第1開口幅Y1は、第2開口部25を挟んで第2開口部25の両側に配置されている一対の締結部材33同士の間隔X(第1締結部材33aと第2締結部材33bとの間隔X)よりも小さい。当該一対の締結部材33によって、適切に第2開口部25を挟んで上面カバー13が包囲壁部30に締結固定されるので、第2開口部25による第1開口縁23eの変形を小さく抑え易く、上面カバー13が第1開口縁23eから浮くことも適切に抑制することができる。
【0037】
当然ながら、第1開口縁23eの変形や上面カバー13の第1開口縁23eから浮きが充分に抑制できる剛性が確保されていれば、第2開口部25の何れか一方側のみに締結部材33が配置されていてもよい。
【0038】
また、第2開口部25は、軸方向視で、図1等に示すような楕円形状に形成されていると好適である。第1開口幅Y1と第2開口幅Y2との関係を満足させる場合、軸方向視における第2開口部25の形状は、長方形状や、六角形状、八角形状などの多角形状とすることもできる。しかし、本実施形態のように、第2開口部25の形状を、楕円形状とすると、多角形状の場合に比べて角部がなくなるため、第2開口部25の周囲における包囲壁部30の剛性を確保し易い。当然ながら、包囲壁部30の剛性が充分に確保されている場合には、第2開口部25が多角形状に形成されることを妨げるものではない。尚、本実施形態における「楕円形状」には、陸上競技のトラックのような長円形状や卵形状などのような、おおよそ楕円状である形状も含む。
【0039】
尚、本実施形態では、図2及び図7等に示すように、上下方向Vに沿う上下方向視と軸方向視との双方で、第1開口部23の開口縁である第1開口縁23eと、第2開口部25の開口縁である第2開口縁25eとが重複している。つまり、本実施形態では、第1開口部23と第2開口部25とが近接して形成され、第1開口縁23eと第2開口縁25eとが近接して配置されていることになる。その場合、第1開口縁23eは変形が生じ易くなる。しかし、本実施形態によれば、上述したような、第1開口幅Y1と第2開口幅Y2との関係、第2開口部25の形状、締結部材33の配置等により、第1開口部23の剛性の低下が抑制され、また、第1開口部23の変形や上面カバー13の浮きが抑制される。また、後述するように、本実施形態では、第2開口部25に電源コネクタ70が嵌合されるため、これによっても第1開口部23の剛性の低下が抑制され、第1開口部23の変形や上面カバー13の浮きが抑制される。
【0040】
尚、当然ながら、上下方向視及び軸方向視の何れか一方においてのみ、第1開口縁23eと第2開口縁25eとが重複している場合や、上下方向視及び軸方向視の何れにおいても第1開口縁23eと第2開口縁25eとが重複していない場合であっても、上述したような、第1開口幅Y1と第2開口幅Y2との関係、第2開口部25の形状、締結部材33の配置、電源コネクタ70の第2開口部25への嵌合等により、第1開口部23の剛性が確保されていると好適である。尚、本実施形態において「開口縁」とは、開口を囲む枠状の部分のことを指す。より具体的には、第1開口縁23eは、第1開口部23を囲むように設けられ、上面カバー13(カバー部材)が接合される接合面を形成する部分である。図示の例では、第1開口縁23eは、包囲壁部30から第1開口部23の外側へ向かって突出するように形成されたフランジ状の部分を含んでいる。また、第2開口縁25eは、第2開口部25を囲むように設けられ、包囲壁部30から軸方向Lに突出するように形成された枠状の部分である。
【0041】
上述したように、電源接続端子Tと電源コネクタ70の電源端子とが接続されることによって、高圧バッテリBHとインバータ装置INV(インバータ回路60)とが電気的に接続される。電源コネクタ70の電源端子(第1電源端子71、第2電源端子72)は、インバータ装置INVの直流バスバー55(正極バスバー54、負極バスバー56)と一体的に設けられた、或いは直流バスバー55に電気的に接続された電源接続端子T(第1接続端子T1、第2接続端子T2)に電気的に接続される。例えば、図8に示すように、第1電源端子71と第1接続端子T1とが端子接続部材73によって締結固定され、第2電源端子72と第2接続端子T2とが端子接続部材73によって締結固定される。ここでは端子接続部材73として締結部材(ネジ)を例示しているが、リベット等であってもよい。
【0042】
電源ケーブル7の先端(高圧バッテリBHに接続される側とは反対側の先端)には、電源コネクタ70が配置されている。電源コネクタ70は、硬質の樹脂により形成され、その内部に導線及び電源端子が備えられている。電源コネクタ70は、図6に示すように、第2開口部25を覆うようにケース1に取り付けられる。この際、図8に示すように、第2開口部25の内周面25aに、電源コネクタ70の外周面70aが嵌合される。電源コネクタ70が第2開口部25に嵌合されることによって、第2開口部25を補強する効果が得られ、第2開口部25の変形を抑制し易くなる。そして、これにより、第1開口縁23eの変形も小さく抑え易い。
【0043】
また、詳細な図示は省略するが、電源コネクタ70は、本体部と蓋部とを有していてもよい。本体部に蓋部を取り付けていない状態で、端子接続部材73によって第1電源端子71と第1接続端子T1とを締結すると共に第2電源端子72と第2接続端子T2とを締結し、その後、蓋部を本体部に取り付ける構造であってもよい。
【0044】
本実施形態では、高圧バッテリBHは200~400ボルトの大電圧である。そして、消費電流も数アンペアから数十アンペアと大きい。このため、電源ケーブル7は、比較的太く重い部材となる。電源コネクタ70によって電源ケーブル7がケース1に取り付けられると、電源ケーブル7の荷重が第2開口部25にも掛かることになる。そして、車両の走行による振動や、車両用駆動装置100の駆動に伴う振動などが生じると、電源ケーブル7に慣性力が働き、第2開口部25にさらに荷重が掛かる場合がある。従って、第2開口部25及び第1開口部23の剛性は、静的な状態における剛性のみではなく、動的な状態における剛性も考慮されると好適である。本実施形態によれば、第1開口幅Y1に対して第2開口幅Y2の方が小さいため、車両において比較的大きな加速度の振動が生じやすい上下方向Vに沿った方向の力が第2開口部25に作用した場合であっても、第2開口部25の変形を小さく抑え易く、延いては第1開口部23の変形も小さく抑え易い。
【0045】
尚、本実施形態では、電源コネクタ70が硬質の樹脂により形成されている形態を例示したが、電源コネクタ70は、軟質樹脂により形成されていても良く、或いはシート状に形成された樹脂カバーによって第2開口部25を塞ぐ形態であってもよい。この場合、電源コネクタ70の第2開口部25への嵌合によって第2開口部25の剛性を高めることはできないが、第2開口部25の剛性が充分である場合には、このような形態も妨げるものではない。
【0046】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0047】
(1)上記においては、第2開口部25が軸方向Lに開口している形態を例示した。つまり、第2方向が軸方向Lである場合を例示して説明した。しかし、第2方向は幅方向Hに沿う方向であってもよい。或いは、第2方向は、軸方向L及び幅方向Hに対して傾斜した方向であってもよい。また、上記においては、第1開口部23が上下方向第1側V1に向けて開口している形態を例示して説明した。つまり、第1方向が上下方向Vに沿う方向である形態を例示して説明した。しかし、第1開口部23は、上下方向Vに交差する方向に向かけて開口していても良く、例えば、幅方向第2側H2に向けて開口していてもよい。また、本実施形態においては、軸方向視において幅方向Hの位置によって第1収容室5の上下方向Vの高さが異なる形態を例示したが、第1収容室5の上下方向Vの高さがほぼ一定で、第1収容室5の上下方向第1側V1に第2収容室3が配置されるような場合には、幅方向第1側H1に向けて第1開口部23が開口していてもよい。この場合、第1方向は幅方向Hであり、第2方向は軸方向L又は上下方向Vとなる。また、同様に、第1開口部23は、軸方向Lに開口していてもよい。この場合、第1方向は軸方向Lであり、第2方向は幅方向H又は上下方向Vとなる。
【0048】
(2)上記においては、区画壁部4によって第1収容室5と第2収容室3とが区画されている形態を例示した。しかし、ケース本体2が第1収容室5と第2収容室3とを形成するように一体形成されていれば、ケース本体2に区画壁部4が備えられていなくてもよい。
【0049】
(3)上記においては、車輪Wの駆動力源として回転電機MGを備えた車両用駆動装置100を例示して説明したが、車両用駆動装置100は、車両の車輪Wの駆動力源として内燃機関及び回転電機MGの双方を備えたハイブリッド駆動装置(例えば、いわゆる1モータパラレル方式や2モータスプリット式等の各種形式のハイブリッド駆動装置)であってもよい。
【0050】
(4)上記においては、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3の3軸が平行に配置された3軸の車両用駆動装置100を例示して説明したが、車両用駆動装置100は、第1軸A1、第2軸A2の2軸が平行に配置された2軸であってもよい。また、車両用駆動装置100は、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3とは異なる1つの軸以上がさらに配置され、4軸以上が配置された構成であってもよい。またこれらの場合において、一部の軸が他の軸に対して平行ではない方向に沿って配置されていても良い。
【0051】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について簡単に説明する。
【0052】
1つの態様として、車両用駆動装置(100)は、回転電機(MG)と、前記回転電機(MG)を駆動制御するインバータ装置(INV)と、ケース(1)と、を備え、前記インバータ装置(INV)は、直流電源(BH)に接続される電源接続端子(T)を備え、前記ケース(1)は、ケース本体(2)と、前記ケース本体(2)に接合されたカバー部材(13)と、を備え、前記ケース本体(1)は、前記回転電機(MG)を収容する第1収容室(5)と、前記インバータ装置(INV)を収容する第2収容室(3)とを形成するように一体形成され、前記ケース本体(1)は、予め規定された第1方向(V)に沿って前記第2収容室(3)から前記ケース(1)の外部に向かって開口すると共に前記インバータ装置(INV)を挿通可能な第1開口部(23)を備え、前記ケース本体(2)は、前記第1開口部(23)を囲むように前記第1方向(V)に沿って配置された包囲壁部(30)と、前記包囲壁部(30)に形成されて前記直流電源(BH)と前記電源接続端子(T)とを電気的に接続する電源ケーブル(7)が挿通される第2開口部(25)と、を更に備え、前記カバー部材(13)は、前記第1開口部(23)を覆うように、前記第1開口部(23)の開口縁(23e)に沿って互いに離間して配置された複数の締結部材(33)により前記包囲壁部(30)に固定され、前記電源接続端子(T)は、前記直流電源(BH)の正極に接続される正極接続端子(T1又はT2)と、前記直流電源(BH)の負極に接続される負極接続端子(T2又はT1)と、を含み、前記正極接続端子(T1又はT2)と前記負極接続端子(T2又はT1)とは前記第1方向(V)に沿って並ぶように配置され、前記第2開口部(25)が開口する方向を第2方向(L)として、前記第2方向(L)に沿う第2方向(L)視で、前記第2開口部(25)における前記第1方向(V)の開口幅である第1開口幅(Y1)よりも、前記第2開口部(25)における前記第1方向(V)に直交する方向(H)の開口幅である第2開口幅(Y2)の方が小さく、一対の前記締結部材(33(33a,33b))が、前記第2開口部(25)を挟んで両側に配置されている。
【0053】
インバータ装置(INV)を挿通可能な第1開口部(23)を囲む包囲壁部(30)に電源ケーブル(7)が挿通される第2開口部(25)が形成されている場合、当該第2開口部(25)が包囲壁部(30)の剛性低下の要因となる可能性がある。包囲壁部(30)の剛性が不足して、例えば第1開口部(23)の開口縁(23e)が変形すると、第1開口部(23)を覆うように配置されたカバー部材(13)が第1開口部(23)から浮いて隙間が生じる可能性がある。本構成によれば、このような第2開口部(25)が形成されている場合であっても、第2開口部(25)の第2開口幅(Y2)が、第1開口幅(Y1)よりも小さいため、第1開口部(23)の開口縁(23e)の変形を小さく抑えやすい。また、電源接続端子(T)の正極接続端子(T1又はT2)と負極接続端子(T2又はT1)とが第1方向(V)に沿って並ぶように配置されているため、これらに接続される電源ケーブル(7)も、第1方向(V)に直交する方向(H)の幅が第1方向(V)の幅よりも小さくなり易い。従って、このような第2開口部(25)の開口幅の設定となっている場合でも、電源ケーブル(7)を適切に挿通することができる。また、第1開口部(23)の開口縁(23e)に沿って配置された複数の締結部材(33)の内の一対(33a,33b)が、第2開口部(25)を挟んで第2開口部(25)の両側に配置されているため、第2開口部(25)の近傍においてカバー部材(13)が包囲壁部(30)に締結固定される。従って、第2開口部(25)による第1開口部(23)の開口縁(23e)の変形を小さく抑え易く、カバー部材(13)が第1開口部(23)の開口縁(23e)から浮くことも適切に抑制することができる。このように、本構成によれば、インバータ(INV)を収納するケース(1)の閉塞性が損なわれないように、ケース(1)の剛性を確保しつつ、電源ケーブル(7)を適切に接続することができる車両用駆動装置(100)を提供することができる。
【0054】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第1開口幅(Y1)が、一対の前記締結部材(33(33a,33b))同士の間隔(X)よりも小さいと好適である。
【0055】
この構成によれば、当該一対の締結部材(33(33a,33b))によって、適切に第2開口部(25)を挟んでカバー部材(13)が包囲壁部(30)に締結固定される。従って、第2開口部(25)による第1開口部(23)の開口縁(23e)の変形を小さく抑え易く、カバー部材(13)が第1開口部(23)の開口縁(23e)から浮くことも適切に抑制することができる。
【0056】
また、車両用駆動装置(100)は、前記カバー部材(13)が、平板状部分を有すると好適である。
【0057】
カバー部材(13)が平板状部分を備えていると、第1開口部(23)の開口縁(23e)とカバー部材(13)とを当接させて締結部材(33)によって締結し易い。この場合、第2開口部(25)の剛性が低いと、第1開口部(23)も変形し易く、第1開口部(23)の開口縁(23e)に対してカバー部材(13)が浮くおそれがある。しかし、第2開口部(25)の変形が抑制されていることによって、第1開口部(23)の開口縁(23e)とカバー部材(13)とを容易に締結可能な構造を有しつつ、カバー部材(13)の浮きも適切に抑制することができる。
【0058】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第2開口部(25)が、前記第2方向(L)視で楕円形状に形成されていると好適である。
【0059】
第1開口幅(Y1)と第2開口幅(Y2)との関係を満足させる場合、第2方向(L)視における第2開口部(25)の形状は、長方形状や、六角形状、八角形状などの多角形状とすることもできる。しかし、本構成のように、第2開口部(25)の形状を、楕円形状とすると、多角形状の場合に比べて角部がなくなるため、第2開口部(25)の周囲における包囲壁部(30)の剛性を確保し易い。尚、「楕円形状」には、陸上競技のトラックのような長円形状や卵形状などのような、おおよそ楕円状である形状も含む。
【0060】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第2開口部(25)の内周面(25a)に、前記電源ケーブル(7)のコネクタ(70)の外周面(70a)が嵌合されていると好適である。
【0061】
一般的に、電源ケーブル(7)のコネクタ(70)は、硬質の樹脂により形成され、その内部に導線及び端子が備えられている。そのようなコネクタ(70)が第2開口部(25)に嵌合されることによって、第2開口部(25)を補強する効果が得られ、第2開口部(25)の変形を抑制し易くなる。そして、これにより、第1開口部23の開口縁(23e)の変形も小さく抑え易い。
【0062】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第1方向(V)に沿う第1方向(V)視と前記第2方向(L)視との双方で、前記第1開口部(23)の開口縁である第1開口縁部(23e)と、前記第2開口部(25)の開口縁である第2開口縁部(25e)とが重複していると好適である。
【0063】
この構成によれば、第1開口部(23)と第2開口部(25)とが近接して形成され、第1開口縁(23e)と第2開口縁(25e)とが近接して配置されていることになる。その場合、第1開口縁(23e)は変形が生じ易くなる。このような構成において上述したような車両用駆動装置(100)の種々の態様は有用である。即ち、上述したような、第1開口幅(Y1)と第2開口幅(Y2)との関係、第2開口部(25)の形状、締結部材(33)の配置等により、第1開口部(23)の剛性の低下が抑制され、また、第1開口部(23)の変形やカバー部材(13)の浮きが抑制される。また、第2開口部(25)に電源コネクタ(70)が嵌合される場合には、これによっても第1開口部(23)の剛性の低下が抑制され、第1開口部(23)の変形や上面カバー(13)の浮きが抑制される。
【符号の説明】
【0064】
1:ケース、2:ケース本体、3:第2収容室、5:第1収容室、7:電源ケーブル、13:上面カバー(カバー部材)、23:第1開口部、23e:第1開口縁、25:第2開口部、25a:内周面、25e:第2開口縁、30:包囲壁部、33:締結部材、33a,33b:一対の締結部材、70:電源コネクタ(電源ケーブルのコネクタ)、70a:外周面、100:車両用駆動装置、BH:高圧バッテリ(直流電源)、H:幅方向(第2開口部における第1方向に直交する方向)、INV:インバータ装置、L:軸方向(第2方向)、MG:回転電機、T:電源接続端子、T1:第1接続端子(負極接続端子、又は、正極接続端子)、T2:第2接続端子(正極接続端子、又は、負極接続端子)、V:上下方向(第1方向)、X:一対の締結部材同士の間隔、Y1:第1開口幅、Y2:第2開口幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8