(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システムおよびワイヤロープ検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/82 20060101AFI20240702BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20240702BHJP
B66B 7/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N27/82
B66B5/02 C
B66B7/12 Z
(21)【出願番号】P 2023520856
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010633
(87)【国際公開番号】W WO2022239440
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2021082475
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】岸田 拓郎
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-164412(JP,A)
【文献】特開2020-034509(JP,A)
【文献】特開2017-133835(JP,A)
【文献】特開2004-126796(JP,A)
【文献】米国特許第5821430(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
B66B 5/02
B66B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に励磁され、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルと、
前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら、前記励磁コイルによって周期的に磁界が印加された前記ワイヤロープの磁束の変化を検知する検知部と、
前記励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている制御部とを備える、ワイヤロープ検査装置。
【請求項2】
スイッチング素子をさらに備え、
前記励磁コイルには、前記スイッチング素子を介して、電力が供給されるように構成されており、
前記制御部は、前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルの励磁の各周期内における前記スイッチング素子のスイッチングによる前記電圧調整制御をPWM制御によって行うように構成されている、請求項1に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記励磁コイルの励磁の各周期内において、前記PWM制御における制御パルス波のデューティ比が一定になるように制御するとともに、前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルの励磁の周期毎の前記デューティ比を設定する前記電圧調整制御を行うように構成されている、請求項2に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、予め設定された目標電流値と、前記励磁コイルの励磁の際に前記電流検出部によって検出される検出電流値とに基づいて、前記励磁コイルの励磁の周期毎の前記デューティ比を設定して、前記PWM制御による前記電圧調整制御を行うように構成されている、請求項3に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記目標電流値と、前記励磁コイルに流れる電流が飽和状態の前記検出電流値である飽和電流値との比較に基づいて、前記励磁コイルの励磁の周期毎の前記デューティ比を設定して、前記PWM制御による前記電圧調整制御を行うように構成されている、請求項4に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子と、前記励磁コイルとの間に設けられ、前記励磁コイルの励磁の周期毎に前記制御部によって前記PWM制御により前記電圧調整制御された電圧を平滑化する平滑回路をさらに備える、請求項2~5のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項7】
前記励磁コイルは、複数の前記ワイヤロープに対して共通に設けられており、
前記制御部は、前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、複数の前記ワイヤロープに対して磁界を印加する前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する前記電圧調整制御を行うように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【請求項8】
ワイヤロープ検査装置と、
前記ワイヤロープ検査装置が検知した検知信号を取得して処理する処理装置とを備え、
前記ワイヤロープ検査装置は、
周期的に励磁され、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルと、
前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら、前記励磁コイルによって周期的に磁界が印加された前記ワイヤロープの磁束の変化を検知する検知部と、
前記励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている制御部とを備える、ワイヤロープ検査システム。
【請求項9】
ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルの励磁を周期的に行う励磁ステップと、
前記励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出ステップと、
前記電流検出ステップにおける検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行う電圧調整制御ステップと、
前記ワイヤロープを相対的に移動させながら、前記励磁コイルによって周期的に磁界が印加された前記ワイヤロープの磁束の変化を検知する検知ステップとを備える、ワイヤロープ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システムおよびワイヤロープ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検知コイルと、励磁コイルとを備える磁性体検査装置(ワイヤロープ検査装置)が知られている。このようなワイヤロープ検査装置は、たとえば、国際公開第2019/171667号に開示されている。
【0003】
上記国際公開第2019/171667号には、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルと、検知コイルとを備えるワイヤロープ検査装置が開示されている。このワイヤロープ検査装置では、検知コイルが検出するワイヤロープの磁界に基づく検知信号によって、ワイヤロープの状態の判定を行うように構成されている。
【0004】
また、上記国際公開第2019/171667号には明記されていないが、上記国際公開第2019/171667号のような従来のワイヤロープ検査装置では、ワイヤロープに対して磁界を印加するために、スイッチのオンオフを切り替えて、定電圧回路から励磁コイルへの電力の供給を周期的に切り替えることによって、励磁コイルの励磁を周期的に行っている。そして、上記国際公開第2019/171667号のような従来のワイヤロープ検査装置では、周期的に励磁される励磁コイルによって、磁界が印加されたワイヤロープの磁束の変化を検知コイルが検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、定電圧回路によって、励磁コイルに一定の電圧を周期的に印加しても、励磁コイルの温度や環境温度の変化に起因する励磁コイルの抵抗値の変化によって、励磁コイルを流れる電流が飽和状態となる電流値(励磁コイルを流れる電流の波形のピーク)が周期毎に変化する。これにより、励磁コイルの温度や環境温度の変化に起因して、励磁コイルを流れる電流(励磁電流)の波形が周期毎に変動するので、励磁コイルによって発生する磁界における磁束(発生磁束)も周期毎に変動してしまう。そして、このような励磁コイルによって発生する磁界における磁束(発生磁束)の周期毎の変動は、ワイヤロープの磁束の変化を検知する検知コイルの検知結果に影響を及ぼしてしまう。そのため、励磁コイルの温度や環境温度によらず、励磁コイルによって発生する磁界における磁束(発生磁束)を再現性よく発生させることが可能なワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システムおよびワイヤロープ検査方法が望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、励磁コイルの温度や環境温度によらず、励磁コイルによって発生する磁界における磁束(発生磁束)を再現性よく発生させることが可能なワイヤロープ検査装置、ワイヤロープ検査システムおよびワイヤロープ検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面におけるワイヤロープ検査装置は、周期的に励磁され、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルと、ワイヤロープに対して相対的に移動しながら、励磁コイルによって周期的に磁界が印加されたワイヤロープの磁束の変化を検知する検知部と、励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部による検出結果に基づいて、励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、励磁コイルの励磁の周期毎に、励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている制御部とを備える。
【0009】
この発明の第2の局面におけるワイヤロープ検査システムは、ワイヤロープ検査装置と、ワイヤロープ検査装置が検知した検知信号を取得して処理する処理装置とを備え、ワイヤロープ検査装置は、周期的に励磁され、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルと、ワイヤロープに対して相対的に移動しながら、励磁コイルによって周期的に磁界が印加されたワイヤロープの磁束の変化を検知する検知部と、励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部による検出結果に基づいて、励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、励磁コイルの励磁の周期毎に、励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている制御部とを備える。
【0010】
この発明の第3の局面におけるワイヤロープ検査方法は、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルの励磁を周期的に行う励磁ステップと、励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出ステップと、電流検出ステップにおける検出結果に基づいて、励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、励磁コイルの励磁の周期毎に、励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行う電圧調整制御ステップと、ワイヤロープを相対的に移動させながら、励磁コイルによって周期的に磁界が印加されたワイヤロープの磁束の変化を検知する検知ステップとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の局面におけるワイヤロープ検査装置、第2の局面におけるワイヤロープ検査システムおよび第3の局面におけるワイヤロープ検査方法では、上記のように、励磁コイルに流れる電流の検出結果に基づいて、励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、励磁コイルの励磁の周期毎に、励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行う。これにより、励磁コイルの温度や環境温度が変化した場合でも、検出した励磁コイルに流れる電流に基づいて、励磁コイルの励磁の周期毎に、励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うことによって、励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値(励磁コイルを流れる電流の波形のピーク)を励磁の各周期において揃えることができる。その結果、励磁コイルの温度や環境温度によらず、励磁コイルによって発生する磁界における磁束(発生磁束)を再現性よく発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態によるワイヤロープ検査装置のエレベータへの取り付け位置の一例を示した模式図である。
【
図2】第1実施形態によるワイヤロープ検査システムの全体構成を示したブロック図である。
【
図3】Z方向における検知コイルおよび励磁部の配置を示した模式図である。
【
図4】
図3の300―300線に沿った断面における検知コイルおよび励磁コイルの配置を示した模式図である。
【
図7】第1実施形態による励磁回路の一例を示した図である。
【
図8】マイコンが生成するPWM波形および励磁コイルに流れる電流の波形の一例を示した図である。
【
図9】マイコンによる処理の一例を示した図である。
【
図10】検出電流値の平均値に基づく制御を行う場合における検出電流値の検出のタイミングを示した図である。
【
図11】第2実施形態による励磁回路の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1~
図7を参照して、第1実施形態によるワイヤロープ検査システム100(ワイヤロープ検査装置101)の構成について説明する。なお、以下の説明において、「直交」とは、90度および90度近傍の角度をなして交差することを意味する。
【0015】
(ワイヤロープ検査システムの構成)
ワイヤロープ検査システム100は、検査対象物であり磁性体であるワイヤロープWの素線断線および錆などの劣化(異常)を検査するためのシステムである。ワイヤロープ検査システム100は、全磁束法によってワイヤロープWの異常の有無を判定することにより、目視により確認しにくいワイヤロープWの劣化(異常)を確認可能なシステムである。ワイヤロープWに素線断線および錆などの劣化(異常)が含まれる場合には、劣化(異常)部分における磁束が正常部分とは異なる。全磁束法は、ワイヤロープWの表面の劣化(異常)部分などからの漏洩磁束を測定する方法と異なり、ワイヤロープWの内部の素線断線および錆などの劣化(異常)をも測定可能な方法である。
【0016】
ワイヤロープ検査システム100は、ワイヤロープWの磁束を計測するワイヤロープ検査装置101(
図1参照)と、ワイヤロープ検査装置101が検知した検知信号を取得して処理する処理装置102(
図1参照)とを備えている。処理装置102は、ワイヤロープ検査装置101によるワイヤロープWの磁束の計測結果、および、ワイヤロープ検査装置101によるワイヤロープWの磁束の計測結果に基づく解析結果(検査結果)の表示などを行うように構成されている。処理装置102は、たとえばタブレットPC(Personal Computer)などのタブレット端末である。なお、処理装置102は、ノートPCでもよいし、ネットワークを介して接続されたサーバなどでもよい。
【0017】
ユーザ(作業者)は、ワイヤロープ検査システム100を用いてワイヤロープWの異常を検査することにより、目視により確認しにくいワイヤロープWの劣化(異常)を確認可能である。
図1では、ワイヤロープ検査装置101が、エレベータ900のかご901の移動に用いられるワイヤロープWを検査する例を示している。
【0018】
図1に示すように、エレベータ900は、かご901、シーブ(滑車)902、シーブ903、および、ワイヤロープWを備える。エレベータ900は、巻き上げ機に設けられたシーブ902が回動してワイヤロープWを巻き上げることによって、人および積み荷などを積載するかご901を上下方向(鉛直方向)に移動させるように構成されている。なお、エレベータ900は、ダブルラップ方式(フルラップ方式)のロープ式エレベータであってもよいし、シングルラップ方式のロープ式エレベータであってもよい。ワイヤロープ検査装置101は、ワイヤロープWに対して移動しないように固定された状態で、巻き上げ機のシーブ902により移動させられるワイヤロープWの異常を検査する。
【0019】
ワイヤロープWは、磁性を有する素線材料である複数のストランドをより合わせることにより形成されており、Z方向に沿って延びる長尺材からなる磁性体である。なお、ストランドは、複数本の素線がより合わさって構成されている。ワイヤロープWは、劣化による切断が生じることを未然に防ぐために、ワイヤロープ検査装置101により検査されている。ワイヤロープWの磁束の計測の結果、劣化(異常)の程度が決められた基準を超えたと判断されるワイヤロープWは、ユーザ(作業者)により交換される。
【0020】
ワイヤロープ検査装置101は、ワイヤロープWの表面に沿って、ワイヤロープWに対して相対的に移動しながら、ワイヤロープWの磁束を計測する。エレベータ900に使用されるワイヤロープWのように、ワイヤロープW自体が移動する場合には、ワイヤロープ検査装置101に対してワイヤロープWを移動させながら、ワイヤロープ検査装置101によるワイヤロープWの磁束の計測が行われる。これにより、ワイヤロープWの長尺方向の各位置における磁束を計測することができるので、ワイヤロープWの長尺方向の各位置における劣化(異常)を検査可能である。
【0021】
(ワイヤロープ検査装置の構成)
図2に示すように、ワイヤロープ検査装置101は、励磁コイル11を含む励磁部10と、検知部20と、電流検出部30と、マイコン(マイクロコントローラ:Microcontroller)40とを備える。なお、マイコン40は、請求の範囲の「制御部」の一例である。また、ワイヤロープ検査装置101は、スイッチング素子50を備える。たとえば、スイッチング素子50は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。なお、スイッチング素子50は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0022】
励磁コイル11は、周期的に励磁され、ワイヤロープWに対して磁界を印加するように構成されている。具体的には、励磁コイル11は、周期的に電流が流れることにより、内部(コイルの内側)に磁界を発生させるとともに、周期的に発生させた磁界を内部に配置されたワイヤロープWに印加する。すなわち、励磁コイル11は、ワイヤロープWの磁化の状態を励振させるように構成されている。また、励磁コイル11は、ワイヤロープWに対して相対的に移動するように構成されている。なお、励磁コイル11の詳細な説明は、後述する。
【0023】
検知部20は、ワイヤロープWに対して相対的に移動しながら、励磁コイル11によって周期的に磁界が印加されたワイヤロープWの磁束の変化を検知するように構成されている。検知部20は、検知コイル21を含み、検知コイル21が、ワイヤロープWに対して相対的に移動しながら、ワイヤロープWの磁束の変化を検知するように構成されている。また、検知コイル21は、第1検知コイル21aと第2検知コイル21bとを含む。すなわち、第1検知コイル21aおよび第2検知コイル21bが、ワイヤロープWに対して相対的に移動しながら、励磁コイル11により周期的に磁界が印加されたワイヤロープWの磁束の変化を検知(計測)するように構成されている。
【0024】
検知コイル21は、検知したワイヤロープWの磁束に応じた検知信号(差動信号)を送信する。第1実施形態では、検知コイル21は、全磁束法によってワイヤロープWの内部の磁束を検知するように構成されている。なお、検知コイル21の詳細な説明は、後述する。
【0025】
電流検出部30は、励磁コイル11に流れる電流を検出するように構成されている。電流検出部30は、たとえば、電流検出用の抵抗である。
【0026】
マイコン40は、電流検出部30による検出結果に基づいて、励磁コイル11に流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、励磁コイル11の励磁の周期毎に、励磁コイル11に印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている。
【0027】
マイコン40は、CPU(Central Processing Unit)およびROM(Read Only Memory)を含む。マイコン40は、内蔵されたROMに、後述するマイコン40による電圧の制御に用いられる目標電流値を記憶(格納)している。なお、目標電流値は、マイコン40外部のメモリ(ROM、フラッシュメモリなど)に記憶(格納)されていてもよい。なお、後述する電圧の制御を行うためのプログラムは、マイコン40内部のROMに記憶(格納)されていてもよいし、マイコン40外部のメモリ(ROM、フラッシュメモリなど)に記憶(格納)されていてもよい。
【0028】
また、マイコン40は、ADコンバータ41を含み、電流検出部30によって検出された検出値(検出電流値)をADコンバータ41において、デジタル変換している。なお、マイコン40において、ADコンバータ41は、マイコン40の内部回路として機能的に構成(マイコン40の機能ブロックとして構成)されている。
【0029】
スイッチング素子50には、マイコン40によって生成された制御信号(ゲート信号)が入力される。そして、スイッチング素子50は、入力された制御信号(ゲート信号)に基づいて、励磁コイル11に対する電力の供給を制御する。
【0030】
また、ワイヤロープ検査装置101は、磁界印加部60と、処理部71と、受信I/F(インターフェース)72と、電源回路73と、記憶部74と、通信部75とを備える。
【0031】
磁界印加部60は、ワイヤロープWが検知コイル21を通過する前に予めワイヤロープWに磁界を印加し、磁性体であるワイヤロープWの磁化の方向を整える(整磁する)ように構成されている。なお、磁界印加部60の詳細な説明は、後述する。
【0032】
処理部71は、ワイヤロープ検査装置101の各部を制御するように構成されている。処理部71は、CPUなどのプロセッサ、メモリ、ADコンバータなどを含んでいる。受信I/F72は、検知コイル21の検知信号(差動信号)を受信(取得)して、処理部71に送信する。受信I/F72は、増幅器を含んでいる。受信I/F72は、増幅器により検知コイル21の検知信号を増幅して、処理部71に送信する。
【0033】
電源回路73は、外部から電力を受け取って、励磁コイル11などのワイヤロープ検査装置101の各部に電力を供給する。記憶部74は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、ワイヤロープWの計測結果(計測データ)などの情報を記憶(保存)する。通信部75は、通信用のインターフェースであり、ワイヤロープ検査装置101と処理装置102とを通信可能に接続する。
【0034】
(処理装置の構成)
処理装置102(タブレット端末)は、ワイヤロープ検査装置101とは別個に設けられている。処理装置102は、
図2に示すように、通信部121と、処理部122と、記憶部123と、ディスプレイ部124とを備えている。処理装置102は、検知コイル21の検知信号に基づいて、複数のワイヤロープWの劣化状態(異常の有無)を判定するように構成されている。
【0035】
通信部121は、通信用のインターフェースであり、ワイヤロープ検査装置101と処理装置102とを通信可能に接続する。処理装置102は、通信部121を介して、ワイヤロープ検査装置101によるワイヤロープWの計測結果(検知コイル21により検知された検知信号のデータ)を受信する。
【0036】
処理部122は、処理装置102の各部を制御するように構成されている。処理部122は、CPUなどのプロセッサ、メモリなどを含んでいる。処理部122は、通信部121を介して受信したワイヤロープWの計測結果に基づいて、素線断線および錆などのワイヤロープWの劣化(異常)を解析する。すなわち、処理部122は、検知コイル21により検知された検知信号に基づいて、ワイヤロープWの劣化(異常)を解析(劣化状態を判定)するように構成されている。
【0037】
記憶部123は、たとえばフラッシュメモリを含む記憶媒体であり、ワイヤロープWの計測結果(検知コイル21により検知された検知信号のデータ)、処理部122による解析結果(ワイヤロープWの計測結果に基づく解析結果)などのデータを記憶(保存)する。
【0038】
ディスプレイ部124は、たとえば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイを含むタッチパネルディスプレイであり、ワイヤロープWの計測結果、処理部122による解析結果(ワイヤロープWの計測結果に基づく解析結果)などの情報を表示する表示部であるとともに、ユーザ(作業者)の操作を受け付ける操作部である。
【0039】
ワイヤロープ検査システム100(処理装置102の処理部122)は、過去の検査時における検知信号(生信号)と現在(最新)の検査時における検知信号(生信号)との比較、または、過去の検査時における検知信号(生信号)に微分処理など信号処理を行ったデータと現在(最新)の検査時における検知信号(生信号)に微分処理など信号処理を行ったデータとの比較に基づいて、ワイヤロープWの劣化状態の判定(異常の有無の判定)を行うように構成されている。
【0040】
すなわち、ワイヤロープ検査システム100(処理装置102の処理部122)は、現在と過去との差分データに基づいて、素線断線および錆などのワイヤロープWの劣化状態を判定するように構成されている。なお、検知信号(生信号)への信号処理および差分データの取得(算出)は、処理装置102に設けられた処理部122にて行われてもよいし、ワイヤロープ検査装置101に設けられた処理部71で行われてもよい。また、過去の検査時における検知信号(生信号)、または、過去の検査時における検知信号(生信号)に微分処理など信号処理を行ったデータは、ワイヤロープ検査装置101の記憶部74に記憶(保存)されていてもよいし、処理装置102の記憶部123に記憶(保存)されていてもよい。
【0041】
ワイヤロープ検査装置101では、検知コイル21によって磁束の変化を検出するので、このように、現在と過去との差分データに基づいて素線断線および錆などのワイヤロープWの劣化状態を判定する場合には、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)が検査毎に変動してしまうと、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)の変動がノイズとなってしまう。そのため、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)の繰り返し再現性が重要になる。したがって、現在と過去との差分データに基づいてワイヤロープWの劣化状態を判定する場合には、励磁コイル11に流れる電流の波形を再現性よく制御することは、特に重要になる。
【0042】
なお、ワイヤロープ検査システム100(処理装置102の処理部122)は、検知コイル21により取得(検知)された検知信号(生信号)、または、検知信号(生信号)に微分処理などの信号処理を行ったデータに基づいて、劣化状態の判定を行うように構成されてもよい。すなわち、ワイヤロープ検査システム100(処理装置102の処理部122)は、過去のデータを用いずに現在のデータに基づいて、素線断線および錆などのワイヤロープWの劣化状態の判定を行ってもよい。また、このような場合においても、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)の励磁の周期毎における変動がノイズとなるので、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)の繰り返し再現性を確保すること(励磁コイル11に流れる電流の波形を再現性よく制御すること)は重要である。
【0043】
また、エレベータ900には、
図3に示すように、ワイヤロープWが複数設けられている。複数のワイヤロープWは、各々の長手方向(Z方向)に直交する方向(X方向)に並ぶように(互いに平行に)設けられている。そして、検知コイル21は、複数のワイヤロープWが延びるZ方向に沿って相対的に移動するとともに、ワイヤロープWの磁束の変化を検知するように構成されている。
【0044】
(励振コイルおよび検知コイルに関する構成)
ワイヤロープWは、
図4に示すように、検知コイル21および励磁コイル11の内部(内側)を通過する。そして、検知コイル21は、
図4に示すように、励磁コイル11の内側に配置される。第1実施形態では、検知コイル21は、
図4に示すように、複数のワイヤロープWに対応して複数設けられている。すなわち、検知コイル21は、複数のワイヤロープWの本数と同数設けられている。たとえば、
図4に示すように、ワイヤロープWが6本の場合には、検知コイル21は、6つ設けられる。
【0045】
また、
図4に示すように、検知コイル21は、複数のワイヤロープWと検知部20とが対向する方向(Y方向)において、複数のワイヤロープWの一方側(Y1方向側)に配置される第1検知コイル21aと、複数のワイヤロープWの他方側(Y2方向側)に配置される第2検知コイル21bとに分割可能に構成されている。
【0046】
第1検知コイル21aおよび第2検知コイル21bは、
図4に示すように、Z方向(Z1方向側またはZ2方向側)から見て、ワイヤロープWから離間する方向に凸のU字状(鞍型形状)に配置(形成)されている。なお、第1検知コイル21aおよび第2検知コイル21bは、Z方向(Z1方向側またはZ2方向側)から見て、ワイヤロープWから離間する方向に凸の半円状になるように配置(形成)されてもよい。また、Z方向(Z1方向側またはZ2方向側)から見て、検知コイル21(第1検知コイル21aと第2検知コイル21bと合わせた形状)が、矩形状に配置(形成)されていてもよい。
【0047】
第1検知コイル21aと第2検知コイル21bとは、直列接続されており、磁束の変化に対し、互いに逆方向に電流が流れるように構成されている。検知コイル21は、第1検知コイル21aにより得られた信号と第2検知コイル21bにより得られた信号との差動信号を検知信号として出力するように設けられている。
【0048】
また、励磁コイル11は、
図4に示すように、複数のワイヤロープWを取り囲むように設けられている。すなわち、励磁コイル11は、複数のワイヤロープWに対して共通に設けられている。励磁コイル11は、複数のワイヤロープWの磁化の状態を同時に励振するように構成されている。具体的には、励磁コイル11に電流が流されることにより、励磁コイル11の内部において、電流に基づいて発生する磁界(磁束)が複数のワイヤロープWに対して周期的に印加されるように構成されている。
【0049】
第1実施形態では、電流検出部30(
図2参照)による検出結果に基づいて、励磁コイル11に流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、複数のワイヤロープWに対して磁界を印加する励磁コイル11の励磁の周期毎に、マイコン40による励磁コイル11に印加する電圧を制御する電圧調整制御が行われる。また、
図4に示すように、励磁コイル11は、複数の検知コイル21に対しても共通に設けられている。
【0050】
励磁部10は、
図5に示すように、プリント基板12aおよび12bを含む。励磁コイル11は、
図5に示すように、プリント基板12aに形成された第1導線部11aと、プリント基板12bに形成された第2導線部11bとを含む。また、第1導線部11aと第2導線部11bとは、電気的に接続されている。
【0051】
なお、検知コイル21および励磁コイル11の配置は前述した構成に限られない。
図3および
図4に示した検知コイル21と
図4および
図5に示した励磁コイル11とは、概略的に図示したものであり、実際の配置(構成)とは異なる場合がある。
【0052】
(磁界印加部の構成)
磁界印加部60は、
図6に示すように、磁界印加部61および62を含む。磁界印加部61および62は、ワイヤロープWに対して予め磁界を印加し、磁性体であるワイヤロープWの磁化の大きさおよび方向を整えるように構成されている。磁界印加部61および62は、Z方向において、励磁コイル11および複数の検知コイル21を挟むように配置されている。
【0053】
図6に示すように、磁界印加部61および62は、検査対象物であるワイヤロープWに対して予めY方向から磁界を印加し磁性体であるワイヤロープWの磁化の大きさおよび方向を整える(整磁する)ように構成されている。また、磁界印加部61は、磁石61aおよび61bを含み、磁界印加部62は、磁石62aおよび62bを含んでいる。
【0054】
磁界印加部61(磁石61aおよび61b)は、
図6に示すように、検知コイル21および励磁コイル11に対して、ワイヤロープWの延びる方向の一方側(Z1方向側)に配置されている。そして、ワイヤロープWがZ2方向に移動する際には、検知コイル21の内部(内側)へ入る前に、ワイヤロープWが磁界印加部61の内側(磁石61aおよび61bの間)を通過する。これにより、ワイヤロープWがZ2方向に移動する際には、検知コイル21の内部(内側)へ入る前に磁界印加部61(磁石61aおよび61b)によって、ワイヤロープWに対して予め磁界が印加され、ワイヤロープWの磁化の大きさおよび方向が整えられる(整磁される)。
【0055】
また、磁界印加部62(磁石62aおよび62b)は、
図6に示すように、検知コイル21および励磁コイル11に対して、ワイヤロープWの延びる方向の他方側(Z2方向側)に配置されている。そして、ワイヤロープWがZ1方向に移動する際には、検知コイル21の内部(内側)へ入る前に、ワイヤロープWが磁界印加部62の内側(磁石62aおよび62bの間)を通過する。これにより、ワイヤロープWがZ1方向に移動する際には、検知コイル21の内部(内側)へ入る前に磁界印加部62(磁石62aおよび62b)によって、ワイヤロープWに対して予め磁界が印加され、ワイヤロープWの磁化の大きさおよび方向が整えられる(整磁される)。
【0056】
すなわち、磁界印加部61および62は、ワイヤロープWが検知コイル21の内部(内側)へ入る前に、ワイヤロープWが延びるZ方向(長尺材の長手方向)と複数のワイヤロープWが隣り合うX方向とに直交するY方向から磁界を予め印加するように構成されている。また、
図6では、磁石61aおよび61bの各々のN極同士が対向するように配置されるとともに、磁石62aおよび62bの各々のS極同士が対向するように配置される磁界印加部60の例を示したが、磁界印加部60では、磁石61aおよび61bの各々のS極同士が対向するように配置されるとともに、磁石62aおよび62bの各々のN極同士が対向するように配置されてもよい。
【0057】
(励磁回路の構成)
図7に示すように、第1実施形態における励磁コイル11の励磁回路は、励磁コイル11に、スイッチング素子50を介して、定電圧電源80からの電力が供給されるように構成されている。第1実施形態における励磁コイル11の励磁回路は、スイッチング素子50を用いたパルス励磁方式の回路である。また、定電圧電源80は、電源回路73(
図2参照)が外部から受け取った電力を励磁コイル11に供給する際の出力電圧を一定に制御する電源回路である。また、励磁コイル11と定電圧電源80との間には、電流検出部30が設けられている。電流検出部30によって、検出された励磁コイル11を流れる電流は、マイコン40に入力され、マイコン40による電圧調整制御(スイッチング素子50のスイッチング制御)に用いられる。第1実施形態における励磁コイル11の励磁回路では、デジタル式のパルス制御回路がマイコン40によって構成されている。
【0058】
マイコン40は、電流検出部30による検出結果に基づいて、励磁コイル11の励磁の各周期内におけるスイッチング素子50のスイッチングによる電圧調整制御をPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって行うように構成されている。なお、第1実施形態における励磁コイル11の励磁回路では、励磁コイル11自体がPWM制御された電圧を平滑化する構成となっている。
【0059】
(マイコンによる電圧調整制御)
ここで、励磁コイル11に流れる電流(励磁電流)の波形は、たとえば、
図8の下の図に示すような波形になる。なお、励磁電流の印加による(励磁電流ON時における)過渡変化の際に、励磁コイル11に流れる電流(励磁電流)の値I
onは、下記の式(1)によって表される。
I
on=V/R(1-e
-Rt/L)・・・式(1)
また、飽和状態の励磁コイル11に流れる電流(励磁電流)の値(飽和電流値I
sat)は、下記の式(2)によって表される。
I
sat=V/R・・・式(2)
また、励磁電流の印加の停止による(励磁電流OFF時における)過渡変化の際に、励磁コイル11に流れる電流(励磁電流)の値I
offは、下記の式(3)によって表される。
I
off=I
sate
-Rt/L・・・式(3)
そして、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)は、下記の式(4)によって表される。
B=μ
0nI・・・式(4)
なお、式(1)~(3)において、Vは電源電圧、Rは励磁コイル11の直流抵抗値、Lはコイル(励磁コイル11)のインダクタンス値である。そして、式(4)において、Bは発生磁束、μ
0は磁気定数、nはコイル(励磁コイル11)の巻き数、Iは励磁ピーク時(飽和状態時)におけるコイル電流(励磁コイル11を流れる電流)である。
【0060】
また、励磁コイル11のような空芯コイルの場合、形状が一定であれば、Lの値(励磁コイル11のインダクタンス値)は一定である。そのため、励磁コイル11によって発生する磁界(磁場)の波形(励磁電流の波形)に関与する要素は、Vの値(電源電圧の値)、および、Rの値(励磁コイル11の抵抗値)である。
【0061】
第1実施形態におけるワイヤロープ検査装置101では、励磁周期毎(励磁ON周期毎)に励磁コイル11に加える電圧を定電圧制御することによって、励磁コイル11の励磁の際の飽和電流値I
sat(
図8参照)を一定の範囲に揃えることが可能である。
【0062】
マイコン40は、電流検出部30による検出結果に基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のPWM制御における制御パルス波のデューティ比を設定する電圧調整制御を行うように構成されている。なお、第1実施形態のマイコン40による電圧調整制御では、ひとつの励磁周期中においては、デューティ比の変更は行わない。すなわち、マイコン40は、
図8の上の図に示すように、励磁コイル11の励磁の各周期内において、PWM制御における制御パルス波のデューティ比が一定になるように制御する。すなわち、マイコン40による電圧調整制御は、励磁電流を流した際の過渡変化時(励磁電流の波形の立ち上がり時)など、各周期(1周期)内において随時制御を行う定電流回路と異なり、各周期(1周期)内では、励磁コイル11に印加する電圧を変動させない。
【0063】
第1実施形態によるワイヤロープ検査装置101では、励磁コイル11に流れる電流を電流検出部30(
図7参照)が検出する。そして、電流検出部30の検出結果に基づいて、励磁コイル11に印加する電圧を制御する電圧調整制御が行われる。ワイヤロープ検査装置101では、電圧調整制御は、励磁コイル11に流れる電流の飽和状態における電流値(飽和電流値I
sat)が励磁の各周期において揃うように(飽和電流値I
satが一定になるように)、励磁コイル11の励磁の周期毎に行われる。
【0064】
図9を参照して、マイコン40による処理(電圧調整制御)の一例を説明する。第1実施形態では、マイコン40は、予め設定された目標電流値(飽和電流設定値)と、励磁コイル11の励磁の際に電流検出部30によって検出される検出電流値とに基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比を設定して、PWM制御による電圧調整制御を行う。
【0065】
励磁コイル11に印加する電圧の制御では、マイコン40内部において、ADコンバータ41(
図2参照)によって変換された検出電流値と、目標電流値(飽和電流設定値)とが、所定のタイミングで比較された後、PID演算が行われることによって、PWM制御におけるデューティ比が設定(決定)される。具体的には、マイコン40は、電流検出部30によって検出された検出電流値が、飽和状態の検出電流値(飽和電流値I
sat)である時に、検出電流値と、目標電流値(飽和電流設定値)とを比較し、PID演算を行うことよって、PWM制御におけるデューティ比を設定(決定)する。そして、設定(決定)されたデューティ比のPWM波形(PWM信号)が生成され、生成されたPWM波形(PWM信号)がスイッチング素子50に入力される。
【0066】
すなわち、マイコン40は、目標電流値と、飽和電流値Isat(励磁コイル11に流れる電流が飽和状態の検出電流値)との比較に基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比を設定して、PWM制御による電圧調整制御を行う。
【0067】
なお、目標電流値(飽和電流設定値)は、検知コイル21に関するパラメータ(検知コイル21の形状、巻き数、および、ワイヤロープWとのクリアランスなど)、および、ワイヤロープWに関するパラメータ(ワイヤロープWの本数、直径、材質、ストランドの数、および、素線の数など)などに基づいて、予め設定される値である。
【0068】
マイコン40は、励磁コイル11に印加する電圧の制御において、たとえば、10周期に1回、検出電流値と目標電流値との比較を行い、次の10周期の各周期内における電圧の制御に反映(フィードバック)するように制御を行う。また、マイコン40は、
図10に示すように、10周期中の各周期内において同じタイミング(t1、t2、・・・、tn)で取得した検出電流値の平均値と、目標電流値とを比較して、次の10周期の各周期内における電圧の制御に反映(フィードバック)するように制御してもよい。
【0069】
また、マイコン40は、各周期において(1周期毎に)、検出電流値と目標電流値との比較を行い、次の周期における電圧の制御に反映(フィードバック)するように制御してもよい。すなわち、マイコン40は、各周期において(1周期毎に)、PWM制御のデューティ比を設定する制御を行ってもよい。
【0070】
前述したような電圧調整制御を行うことにより、ワイヤロープ検査装置101では、ワイヤロープWに対して磁界を印加する励磁コイル11に周期的な励磁が行われる。そして、ワイヤロープ検査装置101は、ワイヤロープWを相対的に移動させながら、励磁コイル11によって周期的に磁界が印加されたワイヤロープWの磁束の変化を検知する。
【0071】
なお、ワイヤロープ検査装置101は、励磁コイル11に印加する電圧の制御にデジタル制御を用いるので、温度変化の時定数、制御定数、励磁周期に対するADコンバータ41による変換のタイミング、および、制御量などを柔軟に最適化可能である。
【0072】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態によるワイヤロープ検査装置101(ワイヤロープ検査システム100)およびワイヤロープ検査方法では、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
第1実施形態では、上記のように、励磁コイル11に流れる電流の検出結果(電流検出部30による検出結果)に基づいて、励磁コイル11に流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、励磁コイル11の励磁の周期毎に、励磁コイル11に印加する電圧を制御する電圧調整制御を行う。これにより、励磁コイル11の温度や環境温度が変化した場合でも、検出した励磁コイル11に流れる電流に基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎に、励磁コイル11に印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うことによって、励磁コイル11に流れる電流の飽和状態における電流値(励磁コイル11を流れる電流の波形のピーク)を励磁の各周期において揃えることができる。その結果、励磁コイル11の温度や環境温度によらず、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)を再現性よく発生させることができる。
【0074】
また、第1実施形態によるワイヤロープ検査装置101では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0075】
第1実施形態では、上記のように、マイコン40(制御部)は、電流検出部30による検出結果に基づいて、励磁コイル11の励磁の各周期内におけるスイッチング素子50のスイッチングによる電圧調整制御をPWM制御によって行うように構成されている。これにより、PWM制御によるスイッチング素子50のスイッチングによって、励磁コイル11に印加される電圧を制御することができるので、電圧調整制御(励磁コイル11に印加する電圧の制御)を容易に行うことができる。したがって、励磁コイル11に流れる電流の制御を容易に行うことができる。その結果、励磁コイル11に流れる電流の飽和状態における電流値を励磁の各周期において容易に揃えることができるので、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)を容易に再現性よく発生させることができる。
【0076】
また、第1実施形態では、上記のように、マイコン40(制御部)は、励磁コイル11の励磁の各周期内において、PWM制御における制御パルス波のデューティ比が一定になるように制御するように構成されている。そして、マイコン40は、電流検出部30による検出結果に基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比を設定する電圧調整制御を行うように構成されている。これにより、電流検出部30による検出結果に基づいて設定された励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比が、励磁の各周期内において変更されないので、各周期内において励磁コイル11に印加される電圧は一定になる。すなわち、各周期(1周期)内では、マイコン40は、励磁コイル11に印加する電圧を変動させない。その結果、励磁電流を流した際の過渡変化時(励磁電流の波形の立ち上がり時)など、各周期(1周期)内における励磁電流の変化に応じて、励磁コイル11に印加する電圧または電流の制御を、各周期(1周期)内において随時行う場合に比べて、電圧調整制御(励磁コイル11に印加する電圧の制御)を容易に行うことができる。
【0077】
また、第1実施形態では、上記のように、マイコン40(制御部)は、予め設定された目標電流値と、励磁コイル11の励磁の際に電流検出部30によって検出される検出電流値とに基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比を設定して、PWM制御による電圧調整制御を行うように構成されている。これにより、目標電流値と、検出電流値とに基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比を設定して、PWM制御による電圧調整制御を行うことによって、各周期における検出電流値が、目標電流値に近づくように、励磁コイル11に印加される電圧を制御することができる。その結果、励磁コイル11に流れる電流(励磁電流)を励磁の各周期において容易に揃えることができる。
【0078】
また、第1実施形態では、上記のように、マイコン40(制御部)は、目標電流値と、励磁コイル11に流れる電流が飽和状態の検出電流値である飽和電流値Isatとの比較に基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比を設定して、PWM制御による電圧調整制御を行うように構成されている。これにより、目標電流値と、飽和電流値Isat(励磁コイル11に流れる電流が飽和状態の検出電流値)との比較に基づいて、励磁コイル11の励磁の周期毎のデューティ比を設定して、PWM制御による電圧調整制御を行うことによって、各周期における飽和電流値Isatが、目標電流値に近づくように、励磁コイル11に印加される電圧を制御することができる。その結果、飽和電流値Isat(励磁コイル11に流れる電流が飽和状態の検出電流値)を励磁の各周期において容易に揃えることができる。
【0079】
また、第1実施形態では、上記のように、励磁コイル11は、複数のワイヤロープWに対して共通に設けられている。これにより、複数のワイヤロープWに対して、励磁コイル11が共通に磁界の印加を行うことができるので、複数のワイヤロープWに対応して、励磁コイル11を複数設ける場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができる。そして、マイコン40(制御部)は、電流検出部30による検出結果に基づいて、励磁コイル11に流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、複数のワイヤロープWに対して磁界を印加する励磁コイル11の励磁の周期毎に、励磁コイル11に印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている。これにより、マイコン40が、複数のワイヤロープWに対応して設けられた複数の励磁コイル11の各々に対して、印加する電圧の制御を行う場合に比べて、複数のワイヤロープWに対して、電圧調整制御(励磁コイル11が印加する電圧の制御)を容易に行うことができる。
【0080】
[第2実施形態]
図11を参照して、第2実施形態によるワイヤロープ検査装置201の構成について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0081】
第2実施形態によるワイヤロープ検査装置201は、励磁コイル11自体がPWM制御された電圧を平滑化する構成と異なり、励磁コイル11の励磁の周期毎にマイコン40によってPWM制御により電圧調整制御された電圧を平滑化する平滑回路290を備える。平滑回路290は、スイッチング素子50と、励磁コイル11との間に設けられている。平滑回路290は、ダイオード素子およびリアクトルを含む。
【0082】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0083】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態によるワイヤロープ検査装置201では、以下のような効果を得ることができる。
【0084】
第2実施形態によるワイヤロープ検査装置201では、上記第1実施形態と同様に、励磁コイル11の温度や環境温度によらず、励磁コイル11によって発生する磁界における磁束(発生磁束)を再現性よく発生させることができる。
【0085】
また、第2実施形態によるワイヤロープ検査装置201では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0086】
また、第2実施形態では、上記のように、ワイヤロープ検査装置201は、スイッチング素子50と、励磁コイル11との間に設けられ、励磁コイル11の励磁の周期毎にマイコン40によってPWM制御により電圧調整制御された電圧を平滑化する平滑回路290を備える。これにより、平滑回路290が、マイコン40によってPWM制御により電圧調整制御された電圧を平滑化するので、励磁コイル11自体がPWM制御により電圧調整制御された電圧を平滑化する場合と異なり、励磁コイル11のインダクタンスによらずに、マイコン40(制御部)によってPWM制御により電圧調整制御する際のパルス波形の周波数を変更(設定)することができる。その結果、平滑回路290を備えない場合に比べて、電圧調整制御(励磁コイル11に印加する電圧の制御)するためのマイコン40によるPWM制御を容易に行うことができる。
【0087】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0088】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、マイコン40(制御部)がスイッチング素子50をPWM制御することによって、電流検出部30による検出結果に基づいて、励磁コイル11に印加する電圧を制御する電圧調整制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、PWM制御を用いずに、電圧調整制御を行ってもよい。たとえば、制御部は、リニアレギュレータを用いて、電流検出部30による検出結果に基づいて、電圧調整制御を行ってもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、励磁コイル11は、複数のワイヤロープWに対して共通に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のワイヤロープに対応して、励磁コイルが複数設けられてもよい。また、ワイヤロープ検査装置(ワイヤロープ検査システム)によって検査されるワイヤロープは、1本のみであってもよい。
【0091】
また、上記第1および第2実施形態では、検知コイル21は、複数のワイヤロープWに対応して複数設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検知コイルは、複数のワイヤロープWに対して共通に設けられてもよい。
【0092】
また、上記第1および第2実施形態では、検知コイル21を用いて全磁束法によるワイヤロープWの磁束の検知を行い、ワイヤロープWの外表面(外部)および内部の劣化(異常)を検査するワイヤロープ検査方法の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検知コイルを用いてワイヤロープの外表面からの漏洩磁束を検知し、外表面のみの劣化(異常)が検査されてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、
図6に示すように、磁界印加部60として、検知コイル21(励磁コイル11)に対してZ1方向側に配置される磁界印加部61(磁石61aおよび61b)と、検知コイル21(励磁コイル11)に対してZ2方向側に配置される磁界印加部62(磁石62aおよび62b)とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁界印加部60は、検知コイル21(励磁コイル11)に対して、Z1方向側に配置される磁界印加部61(磁石61aおよび61b)のみを含む構成でもよい。この場合、磁石61aおよび61bは、N極同士が対向するように配置してもよいし、S極同士が対向するように配置してもよい。また、磁界印加部60は、検知コイル21(励磁コイル11)に対して、Z2方向側に配置される磁界印加部62(磁石62aおよび62b)のみを含む構成でもよい。この場合、磁石62aおよび62bは、S極同士が対向するように配置してもよいし、N極同士が対向するように配置してもよい。また、磁界印加部60は、磁石61a、61b、62aおよび62bのうち、いずれか1つのみが設けられる構成でもよい。
【0094】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0095】
(項目1)
周期的に励磁され、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルと、
前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら、前記励磁コイルによって周期的に磁界が印加された前記ワイヤロープの磁束の変化を検知する検知部と、
前記励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている制御部とを備える、ワイヤロープ検査装置。
【0096】
(項目2)
スイッチング素子をさらに備え、
前記励磁コイルには、前記スイッチング素子を介して、電力が供給されるように構成されており、
前記制御部は、前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルの励磁の各周期内における前記スイッチング素子のスイッチングによる前記電圧調整制御をPWM制御によって行うように構成されている、項目1に記載のワイヤロープ検査装置。
【0097】
(項目3)
前記制御部は、前記励磁コイルの励磁の各周期内において、前記PWM制御における制御パルス波のデューティ比が一定になるように制御するとともに、前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルの励磁の周期毎の前記デューティ比を設定する前記電圧調整制御を行うように構成されている、項目2に記載のワイヤロープ検査装置。
【0098】
(項目4)
前記制御部は、予め設定された目標電流値と、前記励磁コイルの励磁の際に前記電流検出部によって検出される検出電流値とに基づいて、前記励磁コイルの励磁の周期毎の前記デューティ比を設定して、前記PWM制御による前記電圧調整制御を行うように構成されている、項目3に記載のワイヤロープ検査装置。
【0099】
(項目5)
前記制御部は、前記目標電流値と、前記励磁コイルに流れる電流が飽和状態の前記検出電流値である飽和電流値との比較に基づいて、前記励磁コイルの励磁の周期毎の前記デューティ比を設定して、前記PWM制御による前記電圧調整制御を行うように構成されている、項目4に記載のワイヤロープ検査装置。
【0100】
(項目6)
前記スイッチング素子と、前記励磁コイルとの間に設けられ、前記励磁コイルの励磁の周期毎に前記制御部によって前記PWM制御により前記電圧調整制御された電圧を平滑化する平滑回路をさらに備える、項目2~5のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0101】
(項目7)
前記励磁コイルは、複数の前記ワイヤロープに対して共通に設けられており、
前記制御部は、前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、複数の前記ワイヤロープに対して磁界を印加する前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する前記電圧調整制御を行うように構成されている、項目1~6のいずれか1項に記載のワイヤロープ検査装置。
【0102】
(項目8)
ワイヤロープ検査装置と、
前記ワイヤロープ検査装置が検知した検知信号を取得して処理する処理装置とを備え、
前記ワイヤロープ検査装置は、
周期的に励磁され、ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルと、
前記ワイヤロープに対して相対的に移動しながら、前記励磁コイルによって周期的に磁界が印加された前記ワイヤロープの磁束の変化を検知する検知部と、
前記励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部による検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行うように構成されている制御部とを備える、ワイヤロープ検査システム。
【0103】
(項目9)
ワイヤロープに対して磁界を印加する励磁コイルの励磁を周期的に行う励磁ステップと、
前記励磁コイルに流れる電流を検出する電流検出ステップと、
前記電流検出ステップにおける検出結果に基づいて、前記励磁コイルに流れる電流の飽和状態における電流値が励磁の各周期において揃うように、前記励磁コイルの励磁の周期毎に、前記励磁コイルに印加する電圧を制御する電圧調整制御を行う電圧調整制御ステップと、
前記ワイヤロープを相対的に移動させながら、前記励磁コイルによって周期的に磁界が印加された前記ワイヤロープの磁束の変化を検知する検知ステップとを備える、ワイヤロープ検査方法。
【符号の説明】
【0104】
11 励磁コイル
20 検知部
30 電流検出部
40 マイコン(制御部)
50 スイッチング素子
100 ワイヤロープ検査システム
101、201 ワイヤロープ検査装置
102 処理装置
290 平滑回路
W ワイヤロープ