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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】加圧送水装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20240702BHJP
   E03B 5/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B01J4/00 103
E03B5/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019228553
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094540
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】301050186
【氏名又は名称】ポエック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】来山 哲二
(72)【発明者】
【氏名】村本 修
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-173817(JP,A)
【文献】特開2004-052541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00- 7/02
E03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な電磁弁を備えた複数の高圧ガス容器と、該複数の高圧ガス容器内のガスを集合管を介して集合させ、送水に適した圧力に調整して圧力水槽内に供給する給気管と、用途に応じた所望の量の水を貯留し、上記給気管を介して導入される上記複数の高圧ガス容器からのガス圧力に応じて送水管を介して送水する圧力水槽とを備えてなる加圧送水装置であって、
上記給気管には、上記集合管と上記圧力水槽側に設けた給気弁との間に位置して、上記複数の高圧ガス容器とは別のテスト用の高圧ガスが充填された予備高圧ガス容器を接続するための分岐管が設けられ、該分岐管の高圧ガス容器接続部に対して上記予備高圧ガス容器が着脱可能に接続されるようになっていると共に、上記給気管と上記分岐管との間に位置して、上記圧力水槽に対して上記複数の高圧ガス容器と上記予備高圧ガス容器との接続状態を選択的に切り換える切換手段が設けられていることを特徴とする加圧送水装置。
【請求項2】
圧力水槽内の圧力を検出する圧力検知手段と、該圧力検知手段により検知された圧力に応じて複数の高圧ガス容器の電磁弁を開閉し、送水圧よりも高い高圧ガスを圧力水槽内に供給する制御手段を設け、
上記圧力水槽からの送水の必要がない待機中は、規定設定圧力の上限で上記複数の高圧ガス容器の電磁弁を閉じることによって高圧ガスの供給を停止する一方、送水時には、送水管に設けた流水状態検知手段による流水状態の検知に応じて上記複数の高圧ガス容器の電磁弁を開いて高圧ガスを供給するようにしたことを特徴とする請求項1記載の加圧送水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高圧ガス容器内に充填した高圧ガスの圧力を利用して圧力水槽内に貯留した水を外部に送水するガス圧式の加圧送水装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧ガス容器内に充填した高圧ガスの圧力を利用して圧力水槽内に貯留した水を外部に送水するガス圧式の加圧送水装置は、すでに知られている(たとえば、特許文献1の加圧送水装置を参照)。この加圧送水装置は、高圧ガスを充填した高圧ガス容器、高圧ガス容器内のガスを送水に適した圧力に調整して圧力水槽内に供給する給気管、送水用途に応じた所望の量の水を貯留し、上記給気管を介して導入される高圧ガス容器からのガス圧力に応じて送水管を介して外部に送水する圧力水槽により構成されており、構造もシンプルで、設置場所の制約が少なく、電源等の動力源が不要であるために、消火用の送水装置や非常用の飲料水給水装置等として、その有用性が評価されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-173817号公報(図1図7の記載)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成の加圧送水装置の場合、当然ながら、上記高圧ガス容器内には常時規定の値を満たす容量の高圧ガスが充填されており、圧力水槽内に必要な送水圧以上の圧力が作用するように維持管理されていることが求められる。そうでなければ、いざという時に必要な送水圧、送水量を得ることができない。
【0005】
ところが、上記従来の加圧送水装置(特許文献1の加圧送水装置)の場合、設置完了後の試運転やその後の定期点検時に、上記高圧ガス容器内の充填ガスを使用して試運転、点検がなされていた。その結果、試運転、点検に使用される高圧ガス量だけ上記高圧ガス容器内のガス容量、ガス圧力が低下し、そのままでは信頼に足る使用を継続することができない問題が生じる。
【0006】
そのため、上記試運転や点検に使用した高圧ガス容器を取り外して、別途新たに正規の高圧ガス容器を取付けるか、または非常時に備えて所定ガス充填圧用の仮の高圧ガス容器を取り付けておき、ガス圧力の低下した高圧ガス容器に高圧ガスを補充する必要があった。
【0007】
しかし、高圧ガス容器内のガス圧が規定圧より低下しているとはいえ、まだ一部の充填ガスしか使用していない高圧ガス容器を取り外して、新たに正規の高圧ガス容器に交換するのはコスト的に非常に負担が大きい。また、仮の高圧ガス容器を取り付けておき、その間にガス圧力の低下した高圧ガス容器に高圧ガスを補充するのは一見効率的に思えるが、仮の高圧ガス容器が必要になることに加え、ガス圧力の低下した高圧ガス容器に高圧ガスを補充するのは容易ではない。なぜなら、高圧ガス容器への高圧ガスの充填は、高圧ガス保安法に定められた特定の事業所において行う必要があるため、そこまで高圧ガス容器を運搬しておこなわなければならないからである。
【0008】
さらに、上記のような加圧送水装置の場合、屋外に設置されるのが一般的であり、上記高圧ガスが導入される圧力水槽は、炎天下において太陽熱により加熱され、温度が上昇する。その結果、圧力水槽の上層部に導入されている高圧ガスの温度が上昇し、圧力水槽内の圧力が圧力調整器で設定されている規定設定圧(送水圧の120~125%)を超える可能性がある。そこで、このような場合を想定して、上記圧力水槽の上部には安全弁が設けられており、圧力水槽内の高圧ガス圧力が上記圧力調整器で設定されている規定設定圧を超えると、安全弁を開いて圧力水槽内上部の高圧ガスを圧力水槽外(大気中)に放出するようになっている。そして、それにより圧力水槽内の圧力が圧力調整器で設定されている規定設定圧よりも低くなると、安全弁を閉じて高圧ガスの放出を停止する。一方、圧力水槽内の圧力が圧力調整器で設定されている規定設定圧よりも低くなると、それに対応して高圧ガス容器側の仕切り弁が開かれ、圧力調整器を備えた給気管を介して新たなガスが規定設定圧になるまで補充される。したがって、この安全弁の開閉作用の繰り返しによっても、上記高圧ガス容器内の高圧ガスが減少し、上記試運転の場合と同様に高圧ガスの充填が必要になる。
【0009】
このように上記ガス圧式の加圧送水装置では、本来の加圧送水作業以外の事情によって高圧ガス容器内の高圧ガスの充填量が低下するケースがあり、これらの各ケースに対応して、上述のような問題のない適切な対応措置が求められている。
【0010】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、前者の問題に対しては、送水用の高圧ガス容器とは別に試運転および点検専用の高圧ガス容器を取り付け可能とすることにより、また、後者の問題に対しては、給気管の圧力調整器により、少なくとも待機状態においては圧力水槽内の圧力が規定設定圧を超えることがないように減圧調整し、安全弁の作動を抑制することにより、それぞれ本来の送水作業以外の事情では高圧ガス容器内の高圧ガス充填量を減少させないようにした加圧送水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0012】
(1)本願請求項1の発明の課題解決手段
本願請求項1の発明の課題解決手段は、開閉可能な電磁弁を備えた複数の高圧ガス容器と、該複数の高圧ガス容器内のガスを集合管を介して集合させ、送水に適した圧力に調整して圧力水槽内に供給する給気管と、用途に応じた所望の量の水を貯留し、上記給気管を介して導入される上記複数の高圧ガス容器からのガス圧力に応じて送水管を介して送水する圧力水槽とを備えてなる加圧送水装置であって、
上記給気管には、上記集合管と上記圧力水槽側に設けた給気弁との間に位置して、上記複数の高圧ガス容器とは別のテスト用の高圧ガスが充填された予備高圧ガス容器を接続するための分岐管が設けられ、該分岐管の高圧ガス容器接続部に対して上記予備高圧ガス容器が着脱可能に接続されるようになっていると共に、上記給気管と上記分岐管との間に位置して、上記圧力水槽に対して上記複数の高圧ガス容器と上記予備高圧ガス容器との接続状態を選択的に切り換える切換手段が設けられていることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、装置設置後の試運転やその後の定期点検に際しては、本来の送水に使用される送水用の高圧ガス容器内に充填されている高圧ガスを使用することなく、給気管から分岐された分岐管に設けられたテスト用の予備高圧ガス容器の接続部に対して、テスト用の高圧ガスが充填されたテスト用の予備高圧ガス容器を着脱可能に接続し、同接続されたテスト用予備高圧ガス容器内のテスト用の高圧ガスを使用して試運転、定期点検を行うことが可能となる。
【0014】
したがって、従来のように、本来の送水に使用される送水用の複数の高圧ガス容器内に充填されている高圧ガスが減少し、当該高圧ガス容器を交換、又は当該高圧ガス容器を取り外して高圧ガスを充填補充するなどの必要がなくなり、非常に便利になる。
【0015】
すなわち、本来の送水作業以外の事情で複数の高圧ガス容器内の高圧ガス充填量を減少させないようにすることができる。
【0016】
また、同構成の場合、給気管と分岐管との間に位置して、圧力水槽に対して複数の高圧ガス容器と予備高圧ガス容器との接続状態を選択的に切換える切換手段が設けられており、同切換手段により圧力水槽に対する複数の高圧ガス容器と予備高圧ガス容器との接続状態を切り換えることにより、容易に試運転、定期点検を行うことができる。
【0017】
(2)本願請求項2の発明の課題解決手段
本願請求項2の発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、圧力水槽内の圧力を検出する圧力検知手段と、該圧力検知手段により検知された圧力に応じて複数の高圧ガス容器の電磁弁を開閉し、送水圧よりも高い高圧ガスを圧力水槽内に供給する制御手段を設け、
上記圧力水槽からの送水の必要がない待機中は、規定設定圧力の上限で上記複数の高圧ガス容器の電磁弁を閉じることによって高圧ガスの供給を停止する一方、送水時には、送水管に設けた流水状態検知手段による流水状態の検知に応じて上記複数の高圧ガス容器の電磁弁を開いて高圧ガスを供給するようにしたことを特徴としている。
【0018】
このように、少なくとも圧力水槽からの送水の必要がない待機状態においては、規定設定圧力の上限で複数の高圧ガス容器の電磁弁を閉じることによって高圧ガスの供給を停止するようにすると、夏季の直射日光により高圧ガス容器内のガスの温度が上昇した場合にも安全弁の作動を抑制して高圧ガスの放出を回避することができる。
【0019】
また、送水時には、送水管に設けた流水状態検知手段による流水状態の検知に応じて複数の高圧ガス容器の電磁弁を開いて高圧ガスを供給するようにすると、複数の高圧ガス容器内の高圧ガスの圧力を規定設定圧力に減圧して送水することできる。
【0020】
したがって、本来の送水作業以外の事情で複数の高圧ガス容器内の高圧ガス充填量を減少させないようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の結果、本願発明によると、送水に使用される複数の高圧ガス容器内に充填されている高圧ガスが、点検等で減少した場合にも、当該高圧ガス容器を交換、又は当該高圧ガス容器を取り外して高圧ガスを充填補充するなどの必要がなくなり、非常に便利になる。
【0022】
また、待機状態における複数の高圧ガス容器内に充填されている高圧ガス量の減少を可及的に低減することができ、充填頻度を少なくすることができる。
【0023】
したがって、本来の送水作業以外の事情で複数の高圧ガス容器内の高圧ガス充填量を減少させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願発明の第1実施形態のガス圧式加圧送水装置全体の正面図である。
図2図1の背面相当図である。
図3図1のIII-III断面相当図である。
図4図1のガス圧式加圧送水装置における送水待機状態での全体系統図である。
図5図1のガス圧式加圧送水装置における試験送水を行う際の切換手段の操作説明図(図6の一部拡大図)である。
図6図5の試験送水操作を行ったときのガス圧式加圧送水装置の全体系統図である。
図7図1のガス圧式加圧送水装置における送水操作を行ったときの全体系統図である。
図8】本願発明の第2実施形態のガス圧式加圧送水装置における送水休止状態での全体系統図である。
図9図8のガス圧式加圧送水装置に使用されている切換手段(方向切換弁)の構造説明図である。
図10図8のガス圧式加圧送水装置における試験送水操作を行ったときの全体系統図である。
図11図8のガス圧式加圧送水装置における異常時送水操作を行ったときの全体系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図1図11を参照して本願発明の実施の形態に係るガス圧式加圧送水装置の構成及び同装置を使用して行う送水方法について、詳細に説明する。
まず図1図7は本願発明の第1実施形態のガス圧式加圧送水装置を示し、図8図11は本願発明の第2実施形態のガス圧式加圧送水装置を示している。なお、以下の説明において、異常時送水とは火災消火時等に行う長時間送水を意味し、試験送水とは試運転時や点検運転時に行う短時間送水を意味している。
【0026】
図1図7に示す第1実施形態>
図1は第1実施形態のガス圧式加圧送水装置の正面図を示し、図2は同装置の背面図を示し、図3は同装置の右側面図を示し、図4は同送水装置における送水待機時(非送水時)の全体系統図を示している。
【0027】
そして、この第1実施形態のガス圧式加圧送水装置は、一例として火災消火用(例えば屋内消火栓設備やスプリンクラー設備等)の加圧送水装置として使用されるものであって、以下の説明でも、この実施形態のガス圧式加圧送水装置を火災消火用の加圧送水装置として説明する。なお、本願発明のガス圧式加圧送水装置は、火災消火用以外の用途として、例えば非常用飲料水供給装置としても利用できるものである。
【0028】
図1図4に示す第1実施形態のガス圧式加圧送水装置は、所定容量の密閉水槽1と、密閉水槽1内の水を火災消火用として異常時送水(長時間送水)するための主高圧ガス容器2,2・・と、密閉水槽1内の水を試運転又は点検運転用として試験送水(短時間送水)するための予備高圧ガス容器3と、主高圧ガス容器2,2・・及び予備高圧ガス容器3からの高圧ガスを密閉水槽1内に導入するためのガス配管(給気管)21と、密閉水槽1内の水を外部に送水するための送水通路(送水管)4と、異常時送水状態と試験送水状態とを選択するための切換手段5と、密閉水槽1内に水を補給するための給水装置6と、各種計器や各種電磁弁に対して電気信号を授受するための制御盤(CPU)7とを基本構成としている。
【0029】
密閉水槽1は、内部が密閉された鋼製の容器で、用途(使用施設の規模等)に応じた各種容量のものが採用される。通常使用される密閉水槽1の容量は、例えば、小規模施設用として1200L(L=リットルで、以下同じ)程度の小容量のものから、大規模施設用として20000L程度の大容量のものまでの、大小10種類前後の大きさのものがある。また、容量が3200Lまでの密閉水槽は縦置き型のものが多く、容量が4000L超の密閉水槽は横置き型のものが多い。なお、この実施形態では、密閉水槽1として、容量が6000L程度で、地上に横置き状態で設置されるものを採用している。
【0030】
密閉水槽1内の水位は水位計11によって検出されており、運転状態では、該水位計11で検出された水位データを制御盤7に常時送信(信号線S1)している。なお、密閉水槽1内に貯留される水は、図4において、L0の高さが満水水位であり、L1の高さが補給を要する減水水位であり、L2の高さが送水を停止する渇水水位である。
【0031】
そして、後述するように、水位計11で検出された水位データに基いて、制御盤7からの信号により、給水装置6の給水弁(電磁式)64を開閉制御したり、ガス配管21中の給気弁(電磁式)25を開閉制御したりし得るようになっている。
【0032】
密閉水槽1に付属するその他の構成として、密閉水槽1の上部には排気弁12と安全弁13が設けられており、密閉水槽1の下部には止水弁15付きの排水管14が設けられており、密閉水槽1の側面には密閉水槽1内への出入口となるマンホール16が設けられている。なお、制御盤7は、密閉水槽1の側面に固定状態で設置されている。
【0033】
異常時送水するための主高圧ガス容器2及び試験送水するための予備高圧ガス容器3は、同じ高圧ガス容器が使用されている。この各高圧ガス容器2,3は、容積が47L程度の大きさ(この大きさは特に限定しない)で、充填ガスとして窒素ガスが使用されている。なお、他の実施形態では、高圧ガス容器に充填されるガスとして、窒素ガスに代えてヘリウムガス又はアルゴンガスを使用してもよい。
【0034】
この各高圧ガス容器2,3は、当初のガス圧力として例えば14~15Mpa程度(特に限定するものではない)に設定されたものが使用されるが、各高圧ガス容器2,3内への高圧ガスの充填は、高圧ガス保安法に定められた事業所において行われる。なお、各高圧ガス容器2,3をガス圧式加圧送水装置にセットするまでは、それぞれ容器弁(元栓)2a,3aを閉じておく。
【0035】
主高圧ガス容器2,2・・の使用本数は、密閉水槽1の容量に応じて設定されるが、この実施形態では、密閉水槽1として容量が6000L程度のものを採用している関係で、主高圧ガス容器2,2・・の使用本数として該密閉水槽1の容量に見合った10本としている。このように異常時送水用に合計10本の主高圧ガス容器2,2・・を使用すると、例えば、時間当たりの放水量が毎分300Lで20分間継続して送水できる。なお、この各主高圧ガス容器2,2・・は、地上に横置き状態で設置された密閉水槽1の側面近傍位置に縦向き姿勢で並置されている。
【0036】
他方、予備高圧ガス容器3は、試運転や点検運転等の試験送水時に使用されるものであるが、試験送水の場合は比較的短時間送水でよいので、この予備高圧ガス容器3は少数本でよい(図示の例では1本であるが2~3本程度の複数本でもよい)。なお、この予備高圧ガス容器3も、密閉水槽1の側面近傍位置に縦向き姿勢で設置される。
【0037】
ガス配管21は、各主高圧ガス容器2,2・・からの各高圧ガスを集合させる集合管22と、該集合管22と密閉水槽1とを接続している主給気管23と、主給気管23にそれぞれ設置された仕切弁(高圧仕切弁)24、給気弁25、圧力調整器(減圧弁)26、仕切弁(低圧仕切弁)27からなるメイン(異常時送水用)のガス経路と、主給気管23から分岐した仕切弁32付きの分岐給気管31からなるサブ(試験送水用)のガス経路とを有している。
【0038】
主給気管23に設けた2つの仕切弁(高圧仕切弁24と低圧仕切弁27)は、それぞれ人手で開閉される手動弁である。また、主給気管23に設けた圧力調整器(減圧弁)26も、人手で開閉される手動弁であるが、この圧力調整器26は弁開度を調整することで密閉水槽1内に導入するガスの圧力を減圧し得るようになっている。
【0039】
主給気管23に設けた給気弁25は、制御盤7からの信号(信号線S2)で開閉される電磁弁である。そして、この電磁式の給気弁25は、制御盤7に設けた送水開始スイッチ7aをONにすると、制御盤7から開弁信号(信号線S2)が送信されて開弁するが、送水開始スイッチ7aがOFFのままでは該給気弁25は閉止状態に維持されている。
【0040】
集合管22には、仕切弁29を介して下限接点付きの圧力計28が接続されている。そして、圧力計28が集合管22内の設定下限圧力を検出したときには、その下限圧力検出信号(信号線S3)を制御盤7に送信するようになっている。なお、この圧力計28から下限圧力検出信号(信号線S3)が出力されると、制御盤7から所定の報知器(図示省略)に向けて報知信号が発せられる。
【0041】
分岐給気管31は、主給気管23における集合管22に近い側の仕切弁(高圧仕切弁)24の設置位置より密閉水槽側位置(高圧仕切弁24と給気弁25との間)に接続したものである。この分岐給気管31に設けた仕切弁(高圧仕切弁)32も、人手で開閉される手動弁である。そして、該仕切弁32の閉止状態では、分岐給気管31の管路を完全に遮断している。
【0042】
分岐給気管31の先端には、予備高圧ガス容器3のガス管34の先端が継手a,bを介して着脱自在に接続されている。なお、予備高圧ガス容器3を分岐給気管31から分離する場合は、該予備高圧ガス容器3の容器弁(元栓)3aを閉じておく。
【0043】
この予備高圧ガス容器3は、分岐給気管31に対して常時接続しておいてもよいが、その場合、予備高圧ガス容器3の高圧ガスによる試験送水を行わないときには分岐給気管31の仕切弁32を閉じておく。
【0044】
この第1実施形態では、主給気管23に設けた仕切弁24と分岐給気管31に設けた仕切弁32とで、密閉水槽1に対して主高圧ガス容器2からの高圧ガスと予備高圧ガス容器3からの高圧ガスとを選択して導入させ得る切換手段5を構成しているが、この切換手段5(各仕切弁24,32)の操作方法及び機能については後述する。
【0045】
送水通路4は、密閉水槽1内に設置されていて密閉水槽1内の底部付近に取水口を有した汲上管40と、密閉水槽1の外側の中央高さ付近に横向き姿勢で設置された主送水管41と、該主送水管41の基端寄り位置から分岐された分岐送水管51とを有している。なお、主送水管41は火災消火用の異常時送水時に使用するものであり、分岐送水管51は試運転や点検運転等の試験送水時に使用するものである。
【0046】
送水通路4の主送水管41部分には、その基端側から順に圧力検知器42と圧力計43と止水弁44と流水スイッチ45と逆止弁46とが設けられている。
【0047】
圧力検知器42は、主送水管41内の水圧を検出するもので、該圧力検知器42で検出した水圧データは制御盤7に送信(信号線S4)される。また、流水スイッチ45は、主送水管41内に水が流れているかどうかを検出するためのもので、該流水スイッチ45による流水検出信号(信号線S5)も制御盤7に送信される。
【0048】
主送水管41の先端には、継手c,dを介して可撓管47が着脱自在に接続される。また、該可撓管47の先端には、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備等の消火設備48が接続される。なお、主送水管41部分の継手c,dは、異常時送水時(火災消火時)に接続されるものであるが、常時接続しておいてもよい。
【0049】
送水通路4の分岐送水管51部分には、止水弁52と流量計53が設けられている。また、分岐送水管51の先端には、継手e,fを介して排水管55が着脱自在に接続される。なお、分岐送水管51部分の継手e,fは、試験送水時に接続されるものであるが、常時接続しておいてもよい。
【0050】
給水装置6は、補給水源61からの水を給水管62を通して密閉水槽1内に補給するためのものである。給水管62には、元栓となる止水弁63と、制御盤7からの信号(信号線S6)で開閉する電磁式の給水弁64と、ボール弁65とが設けられている。
【0051】
電磁式の給水弁64は、上記水位計11が満水水位L0を検出しているときには制御盤7からの信号(信号線S6)でOFF(閉)になり、該水位計11が減水位置L1を検出したときには制御盤7からの信号(信号線S6)でON(開)になる。そして、給水弁64がONのときに補給水源61からの水が給水管62を通って密閉水槽1内に給水される一方、給水弁64がOFFになることで給水停止されるので、密閉水槽1内の水位は、自動的に満水水位L0と減水位置L1との間に維持される。
【0052】
本願発明の第1実施形態(図1図4)のガス圧式加圧送水装置の構成は上記の通りであるが、次に図5図7を併用して、上記ガス圧式加圧送水装置の使用方法及び機能について説明する。
【0053】
図1図4には、各種機器を密閉水槽1に組付けたガス圧式加圧送水装置の設置初期状態(送水待機状態)を示している。この設置初期状態では、各主高圧ガス容器2,2・・はガス配管21を介して密閉水槽1に接続されているが、分岐給気管31部分の継手a,bと主送水管41部分の継手c,dと分岐送水管51部分の継手e,fはそれぞれ分離している。
【0054】
この設置初期状態において、送水通路4側では、主送水管41の止水弁44及び分岐送水管51の止水弁52はそれぞれ閉じているので、密閉水槽1内の水が送水通路(主送水管41、分岐送水管51)を通って不用意に流出することはない。他方、ガス配管21側では、分岐給気管31の仕切弁32が閉じ、主給気管23に設けた給気弁25も制御盤7の送水開始スイッチ7aがOFFであることで閉じているので、各主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスは主給気管23の上流域(集合管22部分)で封止されている。なお、このとき、給気弁25が閉じているので、主給気管23の仕切弁24(一方の切換手段5となる)は開状態でもよいが、二重の安全のために該仕切弁24を閉止しておいてもよい。
【0055】
ガス圧式加圧送水装置の初期設置後は、各種機器が正常に作動するかどうか試運転する必要があるが、その際の試運転(試験送水)操作は次のように行う。
【0056】
今、図4の設置初期状態において、まず圧力調整器26にて密閉水槽1内に導入するガス圧力を所定圧力に減圧するように設定しておく。そして、図4の設置初期状態から図5及び図6に示すように、主給気管23の仕切弁24(一方の切換手段5となる)を閉じ、分岐給気管31側の継手aに予備高圧ガス容器3のガス管34側の継手bを接続し、分岐給気管31の仕切弁32(他方の切換手段5となる)を開き、予備高圧ガス容器3の容器弁(元栓)3aを開いておく。
【0057】
その状態で、制御盤7の送水開始スイッチ7aをONにすると、制御盤7からの信号(信号線S2)で主給気管23の給気弁25が開放されることで、予備高圧ガス容器3内の高圧ガスが矢印G1で示すように分岐給気管31及び主給気管23を通って密閉水槽1内に導入されて、該密閉水槽1内の空気溜まり部分を所定の高圧状態にする。なお、このとき、主送水管41の止水弁44は閉状態であり、分岐送水管51の止水弁52もまだ閉状態であるので、密閉水槽1内の水は何れの送水管41,51にも流れることはない。
【0058】
その後、試験送水するには、図6に示すように、分岐送水管51側の継手e,fを接続し、分岐送水管51の止水弁52を開くことにより、予備高圧ガス容器3からの高圧ガスで密閉水槽1内の水を矢印W1で示すように汲上管40、主送水管41の基端部、分岐送水管51を通して排水管55の出口から流出させることができる。
【0059】
そして、このとき分岐送水管51に設けた流量計53により、設定された所定流量で流出しているかどうか(正常がどうか)を確認する。なお、正常かどうかの確認後は、分岐送水管51の止水弁52を閉じ、制御盤7の送水開始スイッチ7aをOFFにする(主給気管23の給気弁25が自動的に閉止される)ことで、試験送水を終了させることができる。
【0060】
なお、このガス圧式加圧送水装置を設置した後にも、定期的に点検運転を行うことがあるが、この点検運転時の試験送水も上記試運転時の操作と同様に行われる。
【0061】
この試験送水は、各種機器が正常に作動するかどうかを確認するだけでよいので、短時間送水でよく、従って予備高圧ガス容器3の本数が少なくても(例えば1本だけでも)試験送水には十分対応できる。また、このように、試験送水では、主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスを使用することなく予備高圧ガス容器3の高圧ガスのみで行うので、試験送水を繰り返して行ったとしても、上記主高圧ガス容器2,2・・側のガス圧力は低下することがない。
【0062】
なお、予備高圧ガス容器3の高圧ガスによる試験送水を行うことで、該予備高圧ガス容器3のガス圧力が基準圧力以下まで低下すると、その減圧した予備高圧ガス容器3を高圧ガス充填事業所に運んで高圧ガスを充填するが、その間も主高圧ガス容器2,2・・はガス圧式加圧送水装置にセットされたままであるので、保安上、何ら問題はない。
【0063】
他方、火災消火のための異常時送水は、比較的長時間継続して送水する必要があるが、その異常時送水(長時間送水)は、多数本の主高圧ガス容器2,2・・を用いて次のように行う。
【0064】
この第1実施形態のガス圧式加圧送水装置において、火災消火のための異常時送水を行うには、図4の設置初期状態から図7に示す状態で行う。
【0065】
まず、送水通路4側の初期操作として、主送水管41側の継手c,dを接続し、分岐送水管51の止水弁52を閉じておく。なお、主送水管41の止水弁44は、当初は閉じているが後で(送水時に)開放する。
【0066】
他方、ガス配管21側の操作として、分岐給気管31の仕切弁32(他方の切換手段5となる)を閉じ、主給気管23の仕切弁24(一方の切換手段5となる)を開いておく。このとき、予備高圧ガス容器3側の継手a,bは、接続状態のままでもよいが、図7に示すように分離させておいてもよい。なお、この状態では、制御盤7の送水開始スイッチ7aはまだOFFであるので、電磁式の給気弁25は閉のままである。
【0067】
その状態で、制御盤7の送水開始スイッチ7aをONにすると、主給気管23の給気弁25が開放されることで、各主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスが集合管22から主給気管23を通って密閉水槽1内に導入されて、該密閉水槽1内の空気溜まり部分を所定の高圧状態にする。
【0068】
その後、異常時送水するには、図7に示すように、主送水管41側の止水弁44を開放する。すると、各主高圧ガス容器2,2・・からの高圧ガスで密閉水槽1内の水を、矢印W2で示すように汲上管40、主送水管41、可撓管47を通して消火設備48まで送水でき、その消火設備48からの放水で消火が行われる。
【0069】
火災消火には、消火設備48からかなり長時間継続して放水する必要があるが、主高圧ガス容器2,2・・を多数本(この実施形態では10本)使用していることにより、必要な連続放水時間(例えば20分間以上)を確保できる。
【0070】
この第1実施形態のガス圧式加圧送水装置、及びこの装置を使用して行う送水方法では、試運転や点検運転を行うときの試験送水用の高圧ガスとして、火災消火用の主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスを使用しないで予備高圧ガス容器3からの高圧ガスのみで行えるので、試験送水を行っても火災消火用の主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスは全く消費されない。
【0071】
したがって、異常時送水用(火災消火用)の主高圧ガス容器2,2・・のガス圧力を長期に亘って(半永久的に)火災消火のための必要圧力以上に維持できるので、試験送水に異常時送水用の高圧ガス容器からの高圧ガスを使用する従来の装置(特許文献1)のように、減圧した高圧ガス容器の充填作業(密閉水槽からの高圧ガス容器の取外し、高圧ガス充填事業所への運搬、高圧ガスの充填、再セット等の作業)を不要にできるという大きなメリットがある。
【0072】
ところで、上記のようなガス圧式加圧送水装置の場合、屋外に設置されるのが一般的であり、上記高圧ガスが導入される密閉水槽(圧力水槽)1は、炎天下において太陽熱により加熱され、相当に温度が上昇する。その結果、密閉水槽1の上層部に導入されている高圧ガスの温度が上昇し、密閉水槽1内の圧力が圧力調整器(減圧弁)26で設定されている規定設定圧(送水圧の120~125%)を超える可能性がある。
【0073】
そこで、このような場合を想定して、上記密閉水槽1の上部には安全弁13が設けられており、密閉槽1内の高圧ガス圧力が上記圧力調整器26で設定されている規定設定圧を超えると、同安全弁13を開いて密閉槽1内上部の高圧ガスを密閉槽1外(大気中)に放出するようになっている。そして、それにより密閉槽1内の圧力が圧力調整器26で設定されている規定設定圧よりも低くなると、安全弁13を閉じて高圧ガスの放出を停止する。一方、密閉槽1内の圧力が圧力調整器26で設定されている規定設定圧よりも低くなると、それに対応して主高圧ガス容器2,2・・側の仕切り弁27が開かれ、圧力調整器26を備えた主給気管23を介して新たなガスが規定設定圧になるまで補充される。
【0074】
したがって、この安全弁の開閉作用の繰り返しによっても、上記主高圧ガス容器2,2・・内の高圧ガスが減少し、上記試運転の場合と同様に高圧ガスの充填が必要になる。
【0075】
このように上記ガス圧式の加圧送水装置では、本来の加圧送水作業以外の事情によって主高圧ガス容器2,2・・内の高圧ガスの充填量が低下するケースがあり、これらの各ケースに対応して、前述のような問題のない適切な対応措置が求められる。
【0076】
このため、この発明の実施の形態では、上記密閉槽1からの送水の必要がない待機中は、設定圧力の上限(上限圧力)で上記主高圧ガス容器2,2・・の給気弁(電磁弁)25を閉じることによって高圧ガスの供給を停止する一方、送水時には、上記主送水管41に設けた流水スイッチ(流水状態検知手段)45による流水状態の検知に応じて上記主高圧ガス容器2,2・・の給気弁(電磁弁)25を開いて高圧ガスを供給するようにしている。
【0077】
このように、圧力水槽で或る密閉槽1からの送水の必要がない待機状態においては、設定圧力の上限(上限圧力)で上記主高圧ガス容器2,2・・の給気弁25を閉じることによって高圧ガスの供給を停止するようにすると、夏季の直射日光により主高圧ガス容器2,2・・内のガスの温度が上昇した場合にも、安全弁13の作動を抑制して可及的に高圧ガスの放出を回避することができる。
【0078】
また、送水時には、主送水管41に設けた流水スイッチ45による流水状態の検知に応じて主高圧ガス容器2,2・・の給気弁25を開いて高圧ガスを供給するようにすると、主高圧ガス容器2,2・・内の高圧ガスの圧力を設定圧力に減圧して送水することできる。
【0079】
したがって、本来の送水作業以外の事情では、上記主高圧ガス容器2,2・・内の高圧ガスの充填量を減少させなくて済むようになる。
【0080】
図8図11の第2実施形態>
次に、図8図11に本願発明の第2実施形態に係るガス圧式加圧送水装置の構成を示している。このガス圧式加圧送水装置は、上記第1実施形態(図1図7)のガス圧式加圧送水装置における切換手段5の構成を変更したものである。
【0081】
すなわち、上記第1実施形態(図1図7)の構成では、切換手段5として、主給気管23に設けた仕切弁24と分岐給気管31に設けた仕切弁32との2つの仕切弁を用いていたが、この第2実施形態(図8図11)では、切換手段5として、主給気管23における分岐給気管31の分岐位置に、密閉水槽1に対して主高圧ガス容器2,2・・との接続と予備高圧ガス容器3との接続とを選択して切換え得る1つの方向切換弁35を設けたものを採用している。なお、この方向切換弁35は、手動式のものである。
【0082】
図9では、この第2実施形態で採用している方向切換弁35をシンボル的に表示しているが、この方向切換弁35は、閉弁位置となる符号35aの弁室と、予備高圧ガス容器3と密閉水槽1とを接続させる符号35bの弁室と、主高圧ガス容器2と密閉水槽1とを接続させる符号35cの弁室との、3つの弁室を有する3位置切換弁を採用している。
【0083】
この第2実施形態(図8図11)のガス圧式加圧送水装置におけるその他の構成は、上記第1実施形態(図1図7)のものと同じであるので、その第1実施形態の説明を援用する。
【0084】
また、図8には、この第2実施形態のガス圧式加圧送水装置の設置初期状態を示しているが、この設置初期状態での各種の接続状態は、上記第1実施形態(図4)での説明と同じであるので、その説明を援用する。なお、この設置初期状態では、方向切換弁35は図9に示す閉弁状態に維持させている。
【0085】
そして、この第2実施形態のガス圧式加圧送水装置においても、予備高圧ガス容器3の高圧ガスによる試験送水と、各主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスによる異常時送水とを、切換手段5(方向切換弁35)の切換によって以下のように選択することができる。
【0086】
すなわち、まず図8の設置初期状態から、予備高圧ガス容器3の高圧ガスによる試験送水をするには、図10に示すように、分岐送水管51側の継手e,fを接続し、分岐給気管31側の継手aに予備高圧ガス容器3のガス管34側の継手bを接続し、予備高圧ガス容器3の容器弁(元栓)3aを開き、方向切換弁35を予備高圧ガス容器3を接続する弁室35b(図9)側に切換えておく。
【0087】
この状態で、制御盤7の送水開始スイッチ7aをONにすると、図10に示すように制御盤7からの信号(信号線S2)で主給気管23の給気弁25が開放されることで、予備高圧ガス容器3内の高圧ガスが、矢印G1で示すように分岐給気管31及び主給気管23を通って密閉水槽1内に導入されて、該密閉水槽1内の空気溜まり部分を所定の高圧状態にする。なお、このとき、主送水管41の止水弁44と分岐送水管51の止水弁52は何れも閉状態であるので、密閉水槽1内の水は何れの送水管41,51にも流れることはない。
【0088】
その後、試験送水するには、図10に示すように、分岐送水管51側の継手e,fを接続し、分岐送水管51の止水弁52を開くことで、予備高圧ガス容器3からの高圧ガスで密閉水槽1内の水を矢印W1で示すように汲上管40、主送水管41の基端部、分岐送水管51を通して排水管55から流出させることができる。そして、このとき分岐送水管51に設けた流量計53により、設定された所定流量で流出しているかどうか(正常がどうか)を確認する。なお、正常かとうかの確認後は、分岐送水管51の止水弁52を閉じ、制御盤7の送水開始スイッチ7aをOFFにする(主給気管23の給気弁25が自動的に閉止される)ことで、試験送水を終了させることができる。
【0089】
他方、第2実施形態のガス圧式加圧送水装置において、火災消火のための異常時送水を行うには、図8の設置初期状態(送水待機状態)から、図9図10の状態を経た図11の状態(送水状態)で行う。
【0090】
まず、送水通路4側の初期操作として、主送水管41側の継手c,dを接続し、分岐送水管51の止水弁52を閉じておく。なお、主送水管41の止水弁44は、当初は閉じているが後で(送水時に)開放する。
【0091】
ガス配管21側の操作として、各主高圧ガス容器2,2・・の容器弁(元栓)2aを開き、方向切換弁35を主高圧ガス容器2を接続する弁室35c(図9)側に切換える。このとき、予備高圧ガス容器3側の継手a,bは、接続状態のままでもよいが、図11に示すように分離させておいてもよい。なお、この状態では、制御盤7の送水開始スイッチ7aはまだOFFであるので、電磁式の給気弁25は閉のままである。
【0092】
そして、この状態で制御盤7の送水開始スイッチ7aをONにすると、給気弁25が開放されることで、各主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスが集合管22から矢印G2で示すように主給気管23を通って密閉水槽1内に導入されて、該密閉水槽1内の空気溜まり部分を所定の高圧状態にする。
【0093】
その後、異常時送水するには、図11に示すように、主送水管41側の止水弁44を開放する。すると、各主高圧ガス容器2,2・・からの高圧ガスで密閉水槽1内の水を、矢印W2で示すように汲上管40、主送水管41、可撓管47を通して消火設備48まで送水でき、その消火設備48からの放水で消火が行われる。
【0094】
火災消火時には、消火設備48からかなり長時間継続して放水する必要があるが、主高圧ガス容器2,2・・を多数本(この実施形態では10本)使用していることにより、必要な連続放水時間(例えば20分間以上)を確保することができる。
【0095】
この第2実施形態のガス圧式加圧送水装置、及びこの装置を使用して行う送水方法でも、上述した第1実施形態の場合と同様に、試運転や点検運転を行うときの試験送水用の高圧ガスとして、火災消火用の主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスを使用しないで予備高圧ガス容器3からの高圧ガスのみで行えるので、試験送水を行っても火災消火用の主高圧ガス容器2,2・・の高圧ガスは全く消費されない。
【0096】
したがって、異常時送水用(火災消火用)の主高圧ガス容器2,2・・のガス圧力を長期に亘って(半永久的に)火災消火のための必要圧力以上に維持できるので、試験送水に異常時送水用の高圧ガス容器からの高圧ガスを使用する従来(特許文献1)の装置および方法のような、減圧した高圧ガス容器の充填作業(密閉水槽からの高圧ガス容器の取外し、高圧ガス充填事業所への運搬、高圧ガスの充填、再セット等の作業)を不要にできるというメリットがある。
【0097】
また、この第2実施形態では、切換手段5として1つの方向切換弁35のみで構成しているので、第1実施形態のように仕切弁(24と32)を2箇所に設けたものに比べて構成も簡単となる。
【符号の説明】
【0098】
1は密閉水槽、2は主高圧ガス容器、3は予備高圧ガス容器、4は送水通路、5は切換手段、7は制御盤、21はガス配管、22は集合管、23は主給気管、24は仕切弁、26は圧力調整器(減圧弁)、31は分岐給気管、32は仕切弁、35は方向切換弁、41は主送水管、51は分岐送水管である。
図1
図2
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図11