(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】複合フィルタ、及びフィルタユニット
(51)【国際特許分類】
B01D 46/52 20060101AFI20240702BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240702BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B01D46/52 B
A61L9/014
A61L9/16 F
(21)【出願番号】P 2020066441
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594142090
【氏名又は名称】日本シール精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 英樹
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167584(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/167585(WO,A1)
【文献】特開2000-117021(JP,A)
【文献】特開2000-153131(JP,A)
【文献】特開2018-204890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0286163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00-9/22
B01D39/00-39/20
B01D46/00-46/90
F24F8/00-8/99
F24F13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭フィルタと除塵フィルタとを組み合わせた複合フィルタであって、
前記脱臭フィルタは、空気流れ方向に開口するように脱臭機能材によって区画形成される複数の空気流通路を有し、
前記除塵フィルタは、通過する空気中の塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有し、
前記脱臭フィルタ、及び前記除塵フィルタは、一体でそれぞれ空気流れに沿って配置され
、
前記複数の空気流通路は、前記脱臭機能材によって構成されるコルゲートフィルタの集合体であるコルゲート状構造体で形成され、
前記塵埃捕捉部は、山折り部と谷折り部とが交互に位置するシート状の除塵機能材で構成され、
前記山折り部、及び前記谷折り部の各々の折目が延在する方向と、前記コルゲートフィルタが延在する方向とが一致し、
前記コルゲートフィルタは、前記山折り部、及び前記谷折り部の各々の折目が延在する方向に波形状に延在するコルゲート状部と、前記山折り部、及び前記谷折り部の各々の折目が延在する方向に板状に延在する帯板状部とにより構成され、
前記山折り部のピッチ(B)と前記帯板状部のピッチ(A)との比率(B/A)が、0.2~2.0である複合フィルタ。
【請求項2】
当該複合フィルタにおける前記コルゲートフィルタが延在する方向の側面に、空気調和装置に押し込み装着する際の押し位置を示すマーク及び/又は文字が付されている
請求項1に記載の複合フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合フィルタが保持体に保持されてなるフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭フィルタと除塵フィルタとを組み合わせた複合フィルタ、及びフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に装着されている自動車用空気調和装置(以下、「カーエアコン」と称する。)は、エアコン本体と、車外又は車内の空気をエアコン本体へと導くエアダクトとを備えている。エアダクトには、車外から車内に取り込む空気に含まれる塵埃や、車内の空気に含まれる塵埃を捕捉するためのフィルタが着脱可能に装着されている。
【0003】
カーエアコンにおいては、空気中の塵埃の除去と併せて、空気中の臭気成分に対しても除去の要望が高まっている。臭気成分及び塵埃の両方を除去する場合には、脱臭フィルタと除塵フィルタとを組み合わせて使用することになる(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-319445号公報
【文献】実開平5-63608号公報
【0005】
特許文献1には、光触媒を用いた空気清浄装置が開示されている。この空気清浄装置は、一方向に長い直方体に形成されたケーシングを備え、脱臭フィルタ(光触媒担持体)と集塵フィルタとがケーシングの長手方向に並ぶように配設されている。
【0006】
特許文献2には、粉塵の除去と脱臭とを1枚のシートで行うようにした脱臭用濾材が開示されている。この脱臭用濾材は、活性炭素粒をバインダで固持させた脱臭用不織布と、除塵用のエレクトレット化不織布とを備え、脱臭用不織布とエレクトレット化不織布とを融着用シートを介して重ね合わせて接合したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る空気清浄装置では、脱臭フィルタと集塵フィルタとがケーシングの長手方向に独立して並ぶように配設されているため、脱臭フィルタ及び集塵フィルタの設置スペースを大きくとる必要があり、装置の大型化を招いてしまう。逆に、限られたスペース内に脱臭フィルタ及び集塵フィルタを設置しようとすると、それぞれのフィルタサイズを小さくするしかなく、脱臭性能及び除塵性能の低下を招くことになる。
【0008】
特許文献2に係る脱臭用濾材では、脱臭用不織布とエレクトレット化不織布とを融着用シートを介して重ね合わせて接合しているため、脱臭や除塵の処理対象となる空気が、脱臭用濾材に対して直交する方向で処理される。このため、圧力損失が高くなる。脱臭性能は、脱臭用不織布に含まれる脱臭剤の量によって左右される。脱臭性能を向上させるために脱臭剤の含有量を増やすと、脱臭用不織布での圧力損失が増えてしまい、エレクトレット化不織布での除塵性能が低下してしまう。このように、脱臭性能と除塵性能とはトレードオフの関係にある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、圧力損失を低く抑えつつ脱臭性能及び除塵性能を十全に発揮することができ、且つコンパクトに構成することができる複合フィルタ、及びフィルタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る複合フィルタの特徴構成は、
脱臭フィルタと除塵フィルタとを組み合わせた複合フィルタであって、
前記脱臭フィルタは、空気流れ方向に開口するように脱臭機能材によって区画形成される複数の空気流通路を有し、
前記除塵フィルタは、通過する空気中の塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有し、
前記脱臭フィルタ、及び前記除塵フィルタは、一体でそれぞれ空気流れに沿って配置されていることにある。
【0011】
本構成の複合フィルタにおいては、脱臭フィルタに設けられる複数の空気流通路に空気が流れる際、脱臭機能材によって区画形成される空気流通路の構成壁に空気中の臭気成分が接触する。これにより、空気中の臭気成分が除去される。脱臭フィルタに設けられる空気流通路は、空気流れ方向に開口している。このため、圧力損失は低く抑えられることになる。また、本構成の複合フィルタにおいては、空気が除塵フィルタを通過する際、除塵フィルタの塵埃捕捉部によって空気中の塵埃が捕捉される。これにより、空気中の塵埃が除去される。さらに、本構成の複合フィルタにおいては、脱臭フィルタ及び除塵フィルタが一体でそれぞれ空気流れに沿って配置されている。これにより、複合フィルタをコンパクトに構成することができる。従って、本構成の複合フィルタによれば、圧力損失を低く抑えつつ脱臭性能及び除塵性能を十全に発揮することができ、且つコンパクトに構成することができる。
【0012】
本発明に係る複合フィルタにおいて、
前記複数の空気流通路は、前記脱臭機能材によって構成されるコルゲートフィルタの集合体であるコルゲート状構造体で形成されていることが好ましい。
【0013】
本構成の複合フィルタによれば、脱臭フィルタに設けられる複数の空気流通路が、脱臭機能材によって構成されるコルゲートフィルタの集合体であるコルゲート状構造体で形成されているので、空気流通路の構成壁に対する空気中の臭気成分の接触面積を大幅に増加させることができ、脱臭性能をより向上させることができる。
【0014】
本発明に係る複合フィルタにおいて、
前記塵埃捕捉部は、山折り部と谷折り部とが交互に位置するシート状の除塵機能材で構成され、
前記山折り部、及び前記谷折り部の各々の折目が延在する方向と、前記コルゲートフィルタが延在する方向とが一致することが好ましい。
【0015】
本構成の複合フィルタによれば、山折り部と谷折り部とが交互に位置するシート状の除塵機能材で塵埃捕捉部が構成されるので、空気中の塵埃を捕捉するために機能する塵埃捕捉部の面積を大幅に増加させることができ、除塵性能をより向上させることができる。また、塵埃捕捉部における山折り部、及び谷折り部の各々の折目が延在する方向と、コルゲート状構造体におけるコルゲートフィルタが延在する方向とが一致しているので、塵埃捕捉部、及びコルゲート状構造体を通過する空気が整流され、圧力損失をより低く抑えることができる。
【0016】
本発明に係る複合フィルタにおいて、
前記複数の空気流通路は、前記脱臭機能材によって構成されるハニカム状構造体で形成されていることが好ましい。
【0017】
本構成の複合フィルタによれば、脱臭フィルタに設けられる複数の空気流通路が、脱臭機能材によって構成されるハニカム状構造体で形成されているので、空気流通路の構成壁に対する空気中の臭気成分の接触面積を大幅に増加させることができ、脱臭性能をより向上させることができる。
【0018】
本発明に係る複合フィルタにおいて、
当該複合フィルタにおける前記コルゲートフィルタが延在する方向の側面に、空気調和装置に押し込み装着する際の押し位置を示すマーク及び/又は文字が付されていることが好ましい。
【0019】
本構成の複合フィルタにおいては、当該複合フィルタにおけるコルゲートフィルタが延在する方向の側面がそのコルゲートフィルタによって剛性が高められる。空気調和装置に押し込み装着する際の押し位置を示すマーク及び/又は文字が、剛性が高められている当該複合フィルタの側面に付されている。このため、空気調和装置への押し込み装着時には、剛性が高められた当該複合フィルタの側面が押されることになる。従って、空気調和装置への押し込み装着時に、当該複合フィルタにおける剛性が相対的に低い側面を押してしまって、当該複合フィルタが変形することを確実に防ぐことができる。
【0020】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るフィルタユニットの特徴構成は、
上記複合フィルタの何れか一つの複合フィルタが保持体に保持されてなることにある。
【0021】
本構成のフィルタユニットによれば、複合フィルタが保持体に保持されているので、複合フィルタの形体を保持体によって安定的に保つことができ、複合フィルタの交換時に複合フィルタを変形させることなく、容易にフィルタ交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合フィルタが装備されるカーエアコンの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る複合フィルタを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【
図3】
図3は、フィルタユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、別実施形態に係る複合フィルタの空気流通路の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、
図1~
図4を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、カーエアコンに装着される複合フィルタ、及びフィルタユニットを例に挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合フィルタが装備されるカーエアコンの概略構成を示す模式図である。
【0025】
<カーエアコンの概略構成>
図1に示されるカーエアコン1は、エアコン本体2と、車外又は車内の空気をエアコン本体2へと導くエアダクト3とを備えている。
【0026】
エアコン本体2は、主として、エバポレータ4、ヒーターコア5、及びエアーミックスダンパ6を備えている。エバポレータ4は、エアダクト3によって導かれる空気を冷凍サイクル7の作用によって冷やす働きをする。ヒーターコア5は、エバポレータ4の空気流れ下流側に配されている。ヒーターコア5は、エアダクト3によって導かれる空気を、エンジン8の冷却水の熱を利用して暖める働きをする。エアーミックスダンパ6は、ヒーターコア5を通過する空気の量を調節する働きをする。
【0027】
エアダクト3には、空気流れの上流側から下流側に向けて順に、切替フラップ11、フィルタ装着部12、及びブロアファン13がそれぞれ配設されている。切替フラップ11は、エアコン本体2へと導入される車外又は車内の空気を切り替える働きをする。フィルタ装着部12には、複合フィルタ20が着脱可能に装着されている。複合フィルタ20については、後に詳述する。ブロアファン13は、車外又は車内の空気をエアコン本体2へと送る働きをする。
【0028】
カーエアコン1において、車内を冷房する際には、ブロアファン13の作動にて取り込んだ車内又は車外の空気を、複合フィルタ20で脱臭及び除塵した後に、エバポレータ4を通過させて冷めたい空気へと変化させ、冷風として車内に吹き出すようにされる。一方、車内を暖房する際には、エアーミックスダンパ6によってヒーターコア5を通過する風量を変化させることにより、求められた温度設定に合致した温風を車内に吹き出すようにされる。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係る複合フィルタを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【0030】
<複合フィルタ>
図2に示される複合フィルタ20は、空気流れに沿って配置される脱臭フィルタ21、及び除塵フィルタ22が互いの空気通過面を向い合せた状態で一体化するように接合して構成されている。本例では、脱臭フィルタ21が空気流れの下流側に配され、除塵フィルタ22が空気流れの上流側に配されているが、脱臭フィルタ21が空気流れの上流側に、除塵フィルタ22が空気流れの下流側に配される場合もある。
【0031】
<脱臭フィルタ>
脱臭フィルタ21は、帯板状の縦桟部材31及び横桟部材32を矩形状に組んでなる枠体30と、枠体30内に組み込まれるコルゲート状構造体35とを備えている。
【0032】
[コルゲート状構造体]
コルゲート状構造体35は、脱臭機能材から作製される複数のコルゲートフィルタ40を多段に積層して構成されている。コルゲートフィルタ40は、コルゲート状部41と帯板状部42とにより構成されている。
【0033】
コルゲート状部41は、枠体30における対向する一対の縦桟部材31の間において、横桟部材32の長手方向に沿って波形状に延在する形状に形成されている。一方、帯板状部42は、一対の縦桟部材31の間において、横桟部材32の長手方向に沿って細長く真っ直ぐな板状に延在する形状に形成されている。
【0034】
[空気流通路]
コルゲート状部41と帯板状部42との間には、空気流れ方向に開口する複数の空気流通路45が、コルゲート状部41、及び帯板状部42によって区画形成されている。コルゲート状構造体35においては、多数の空気流通路45内を空気が通過する間に、空気流通路45の構成壁に接触される空気に含まれる臭気成分が脱臭機能材によって吸着される。これにより、空気中の臭気成分が除去される。
【0035】
上記のように、複数の空気流通路45は、脱臭機能材によって構成されるコルゲートフィルタ40の集合体であるコルゲート状構造体35で形成されている。これにより、空気流通路45の構成壁に対する空気中の臭気成分の接触面積を大幅に増加させることができ、脱臭性能をより向上させることができる。
【0036】
[脱臭機能材]
脱臭機能材の基材の材質は、通気性を有し且つ空気中の塵埃を捕捉できれば特に限定されるものではなく、各種の紙、不織布、織布等が挙げられるが、不織布が好ましい。
【0037】
不織布の原材料としては、有機合成繊維、半合成繊維、再生繊維等が例示される。有機合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらのコポリマー等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル、モダクリル等のアクリル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ウレタン繊維、フェノール繊維芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリベンザゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン等のエンプラ繊維等、半合成繊維としてはトリアセテート繊維、ジアセテート繊維等、再生繊維としてはビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックレーヨン、リヨセル等の再生セルロース系繊維、コラーゲン、アルギン酸、キチン質などを溶液にして紡糸したものが挙げられる。また、不織布の原材料としては、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、活性炭素繊維等の無機繊維、木材パルプ、竹パルプ、麻パルプ、ケナフパルプ、藁パルプ、バガスパルプ、コットンリンターパルプ、木綿、羊毛、絹等の天然繊維、古紙再生パルプ、レーヨン等の再生セルロース繊維やコラーゲン等のタンパク質、アルギン酸、キチン、キトサン、澱粉のような多糖類等を原料とした再生繊維等、あるいはこれらの繊維に親水性や難燃性等の機能を付与した繊維等を単独又は組み合わせたものが挙げられる。これらの繊維に樹脂(バインダー)を付与し、乾式レジンボンド法、乾式法、湿式抄造法、メルトブローン法、スパンボンド法等の各種方法によって不織布が製造される。樹脂としては、エチレン酢酸ビニル・塩化ビニル供重合体樹脂、スチレン・アクリル酸エステル共重合体樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂等が挙げられる。不織布を製造する際には、ハロゲン化合物や臭素化合物の難燃剤、消臭剤、抗菌剤等を添加することも可能である。
【0038】
不織布の目付は、10~300g/m2が好ましく、より好ましくは、30~240g/m2であり、さらに好ましくは、50~220g/m2である。
【0039】
不織布の厚みは、0.3~2.0mmが好ましく、より好ましくは、0.5~1.5mmであり、さらに好ましくは0.7~1.2mmである。
【0040】
脱臭機能材に含まれる臭気吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、シリガゲル等の吸着性物質が好ましいが特にこれらに限定されるものではない。臭気吸着剤の形状としては繊維状、粒状、粉末状のいずれの形態も使用可能である。粒状、粉末状の場合、その粒度は0.1μm~1mm程度のものが使用可能であるが、臭気除去効率、及び加工性を向上するには0.1~500μm程度であるのが好ましい。
【0041】
臭気吸着剤の配合量は、脱臭機能材の基材が例えば上記の不織布である場合、当該不織布100質量部に対して、臭気吸着剤が10~80質量部が好ましく、より好ましくは、20~60質量部であり、さらに好ましくは35~45質量部である。
【0042】
上記臭気吸着剤を含むシート状の脱臭機能材に加工する方法としては、繊維状の臭気吸着剤はそのまま不織布として使用可能である。また、繊維状、粒状、粉末状の臭気吸着剤は湿式又は乾式法によりシートに加工して使用することができる。シートを形成する方法としては、湿式抄紙法により臭気吸着剤を抄紙する方法、有機系繊維不織布、無機系繊維不織布、フィルム又はアルミ箔の様な基材シートに臭気吸着剤をコーティングする方法、熱溶融性を有する繊維と共に不織布状に加工する方法等があるが、特にこれらに限定されるものではなく、臭気吸着剤を含んでコルゲート状や帯板状に加工できるシート状のものであればこの限りではない。また、繊維状、粒状の臭気吸着剤はそのまま通気性のある不織布等に挟み込んで臭気成分吸着シートとして使用することもできる。
【0043】
臭気吸着剤をシート状に加工する場合に使用するバインダとしては、熱膨潤性繊維、熱溶融性樹脂、アルミナ系の無機系バインダ、二酸化珪素系の無機系バインダ、エマルジョン系接着剤、ホットメルト系接着剤等が適宜使用可能であるが、特にこれらに限定されるものではない。また、湿式法で抄紙する場合はフィブリル化した繊維パルプも使用可能である。
【0044】
コルゲート状構造体35のサイズは、例えば、カーエアコン1に用いられる場合、140~260mm(縦)×150~280mm(横)×12~23mm(厚さ)程度である。
【0045】
単段のコルゲートフィルタ40のサイズは、例えば、カーエアコン1に用いられる場合、150~280mm(長さ)×12~23mm(幅)×2~10mm(高さ)、セルサイズピッチが3~15mm程度である。
【0046】
<除塵フィルタ>
除塵フィルタ22は、枠体30内に塵埃捕捉部50が組み込まれて構成されている。
【0047】
[塵埃捕捉部]
塵埃捕捉部50は、山折り部51と谷折り部52とが交互に位置するようにシート状の除塵機能材をひだ折りして構成され、その稜線方向(山折り部51、及び谷折り部52の各々の折目が延在する方向)に対して垂直に空気が流れるように枠体30内に配置されている。こうして、空気中の塵埃を捕捉するために機能する塵埃捕捉部50の面積を大幅に増加させることができ、除塵性能を向上させることができる。
【0048】
また、塵埃捕捉部50は、枠体30における対向する一対の縦桟部材31の間において、横桟部材32の長手方向に沿って山折り部51、及び谷折り部52の各々の折目が延在するように枠体30内に配置されている。これにより、塵埃捕捉部50における山折り部51、及び谷折り部52の各々の折目が延在する方向と、コルゲート状構造体33におけるコルゲートフィルタ40が延在する方向とが一致する。これにより、塵埃捕捉部50、及びコルゲート状構造体35を通過する空気が整流され、圧力損失をより低く抑えることができる。
【0049】
[除塵機能材]
除塵機能材の基材の材質は、通気性を有し且つ空気中の塵埃を捕捉できれば特に限定されるものではなく、各種の紙、不織布、織布等が挙げられるが、不織布が好ましい。
【0050】
除塵機能材で使用される不織布としては、上記脱臭機能材で使用される不織布と同様のものが挙げられる。また、不織布の目付や厚みについても、上記脱臭機能材で使用される不織布と同様である。
【0051】
塵埃捕捉部50においては、空気との接触面積を大きくするために、除塵機能材に対して、例えばレシプロ折り機にて折り高さ(山折り部51の高さ)が10~30mmのプリーツ加工を施し、ピッチ(隣り合う山折り部51の頂点間の距離)が3~12mmとなるようにひだ折り加工を施すのが好ましい。
【0052】
塵埃捕捉部50のサイズは、例えば、カーエアコン1に用いられる場合、140~260mm(縦)×150~280mm(横)×12~23mm(厚さ)程度である。
【0053】
<押し位置を示すマーク及び文字>
図2(b)に示されるように、複合フィルタ20におけるコルゲートフィルタ40が延在する方向の側面を構成する縦桟部材31の外表面には、カーエアコン1のフィルタ装着部12に押し込み装着する際の押し位置を示す楕円形のマーク55と、押すことを明示する「PUSH」の文字56とが縦桟部材31の長手方向両端部にそれぞれ位置するように付されている。ここでは、楕円形のマーク55の内部に「PUSH」の文字56が印字されて両者が一体化され、一体化されたマーク55及び文字56が、縦桟部材31に対しコルゲートフィルタ40が接合される部分53に配置されている。なお、マーク55は、楕円形以外に、丸形や、三角形、四角形等の多角形、星形、指の形等の種々の形状のものが挙げられ、位置を特定できるものであれば特に形状は限定されるものでない。文字についても、特定位置を押すことを明示できれば、日本語や、「PUSH」の意味に相当する英語以外の外国語であってもよい。
【0054】
さらに、縦桟部材31の外表面には、空気流れの方向を示す矢印57が、二つのマーク55の間であって、縦桟部材31の長手方向中間部に位置するように付されている。
【0055】
複合フィルタ20において、縦桟部材31に対しコルゲートフィルタ40が接合される部分53は、コルゲート状部41、及び帯板状部42が補強ウェブ材として機能するため、より剛性が高められる。上記のマーク55、及び文字56を当該部分53に設けることにより、カーエアコン1のフィルタ装着部12への複合フィルタ20の押し込み装着時に、剛性がより高められたその部分53が押されることになる。従って、フィルタ装着部12への押し込み装着時に、剛性が相対的に低い側面を押してしまって、複合フィルタが変形してしまうといった不具合の発生を確実に防ぐことができる。
【0056】
図2(b)に示されるように、コルゲート状構造体35における帯板状部42のピッチ(A)は、1~5mmに設定することが好ましく、塵埃捕捉部50における山折り部51のピッチ(B)は、0.2~10mmに設定することが好ましい。また、塵埃捕捉部50における山折り部51のピッチ(B)とコルゲート状構造体35における帯板状部42のピッチ(A)との比率(B/A)は、0.2~2.0であることが好ましく、より好ましくは、0.3~1.8であり、さらに好ましくは0.4~1.5である。なお、ピッチ(A)は、コルゲート状部41の配置のピッチでもある。
【0057】
次に、以上に述べたように構成される複合フィルタ20の除塵及び脱臭作用について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0058】
図1に示されるブロアファン13の作動により、車内又は車外の空気(以下、「被処理空気」と称する。)がエアダクト3内に取り込まれる。エアダクト3内に取り込まれた被処理空気は、
図2に示される複合フィルタ20における塵埃捕捉部50を通過した後に、コルゲート状構造体35を通過する。
【0059】
被処理空気が塵埃捕捉部50を通過する際には、塵埃捕捉部50によって被処理空気中の塵埃が捕捉される。これにより、被処理空気中の塵埃が除去される。次いで、塵埃が除去された後の被処理空気がコルゲート状構造体35を通過する際に、空気流通路45の構成壁に被処理空気が接触する。これにより、被処理空気中の臭気成分が除去される。
【0060】
空気流通路45は、被処理空気の流れ方向に開口している。このため、空気流通路45の構成壁に沿って被処理空気が流れながら接触することになり、圧力損失を低く抑えることができる。
【0061】
さらに、複合フィルタ20においては、脱臭フィルタ21及び除塵フィルタ22が一体でそれぞれ空気流れに沿って配置されている。これにより、複合フィルタ20をコンパクトに構成することができる。
【0062】
<フィルタユニット>
図3は、フィルタユニットの分解斜視図である。上記実施形態においては、カーエアコン1のフィルタ装着部12に対し複合フィルタ20を直接的に装着する例を示したが、これに限定されるものではなく、
図3のフィルタユニットの分解斜視図に示されるようなフィルタユニット60をフィルタ装着部12に装着する態様もある。
【0063】
フィルタユニット60は、複合フィルタ20と、複合フィルタ20を保持する保持体61とにより構成されている。ここで、保持体61は、保持枠62とブランクプレート63とを備えている。
【0064】
保持枠62は、複合フィルタ20における一対の縦桟部材31、及び一方の横桟部材32を受け止め可能にそれぞれ対応して設けられる一対の縦桟部材64、及び一方の横桟部材65を有している。
【0065】
ブランクプレート63は、複合フィルタ20における他方の横桟部材32に対応して設けられ、フィルタユニット60をフィルタ装着部12に装着した際に、そのフィルタ装着部12の開口部を塞ぐことができるような形状・大きさに設定されている。ブランクプレート63には、フィルタ装着部12の開口部に対しフィルタユニット60を抜き差し操作する際に手指で摘まんで操作できるように操作部66が突設されている。
【0066】
保持枠62における一対の縦桟部材64の間には、所要の筋交い部材67や、補強横桟部材68が架設されている。筋交い部材67とブランクプレート63との間には、所要の補強縦桟部材69が架設されている。
【0067】
フィルタユニット60においては、保持枠62における一対の縦桟部材64、及び一方の横桟部材65、及びブランクプレート63によって複合フィルタ20の外側面が取り囲まれるとともに、複合フィルタ20の
図3において下面側の要所が、所要の筋交い部材67や補強横桟部材68、補強縦桟部材69によって空気流れの妨げにならないように受け止められる。これにより、複合フィルタ20の形体を安定的に保つことができる。従って、複合フィルタ20の交換時に、複合フィルタ20を変形させることなく、容易にフィルタ交換を行うことができる。
【0068】
以上、本発明の複合フィルタ、及びフィルタユニットについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。具体的な別実施形態は以下のとおりである。
【0069】
(別実施形態1)
図4(a)は、別実施形態1に係る複合フィルタの空気流通路の部分拡大図であって、山形のコルゲート状部と帯状板部とで空気流通路が形成される例を示す図である。上記実施形態において、コルゲート状部41は、枠体30における対向する一対の縦桟部材31の間において、横桟部材32の長手方向に沿って波形状に延在する形状に形成されている。このようなコルゲート状部41に代えて、
図4(a)に示されるようなコルゲート状部71を採用してもよい。この
図4(a)に示されるコルゲート状部71は、枠体30における対向する一対の縦桟部材31の間において、横桟部材32の長手方向に沿って山折り部73と谷折り部74とが交互に繰り返して延在するような形状となるようにシート状の脱臭機能材をひだ折りにして形成されている。
【0070】
(別実施形態2)
図4(b)は、別実施形態2に係る複合フィルタの空気流通路の部分拡大図であって、ハニカム状構造体で空気流通路が形成される例を示す図である。上記実施形態において、コルゲート状構造体35は、コルゲートフィルタ40を多段に積層して構成されている。このようなコルゲート状構造体35に代えて、
図4(b)に示されるようなハニカム状構造体75を採用してもよい。この
図4(b)に示されるハニカム状構造体75は、複数の多角形筒体76を一体的に並設してハニカム形状構造としたものである。複数の多角形筒体76のそれぞれは、断面形状が六角形(正六角形)となるように6つの矩形壁を一体的に組み合わせて構成され、空気流れ方向に開口する空気流通路77を形成する。そして、ハニカム状構造体75においても、多数の空気流通路77内を空気が通過する間に、空気流通路77の構成壁(多角形筒体76を構成する矩形壁)に接触する空気に含まれる臭気成分が脱臭機能材によって吸着される。これにより、空気中の臭気成分が除去される。このようなハニカム状構造体75によっても、空気流通路77の構成壁に対する空気中の臭気成分の接触面積を大幅に増加させることができ、脱臭性能をより向上させることができる。なお、多角形筒体76の横断面形状として、六角形状以外に、三角形や四角形、五角形、七角形以上の多角形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の複合フィルタ、及びフィルタユニットは、空気調和装置において、被処理空気の脱臭及び除塵の用途において利用可能である。特に、本発明の複合フィルタ、及びフィルタユニットは、圧力損失を低く抑えることができるという特性を備えていることから、ブロアファンを駆動するための電力を大幅に抑えることができ、バッテリの消耗を抑える観点から、ガソリン自動車やディーゼル自動車に装備されるカーエアコンは勿論のこと、電気自動車に装備されるカーエアコンにおいても好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 カーエアコン(空気調和装置)
20 複合フィルタ
21 脱臭フィルタ
22 除塵フィルタ
35 コルゲート状構造体
40 コルゲートフィルタ
45 空気流通路
50 塵埃捕捉部
51 山折り部
52 谷折り部
55 マーク
56 文字
60 フィルタユニット
61 保持体
75 ハニカム状構造体