(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】容器および容器群および容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/24 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B65D1/24 110
(21)【出願番号】P 2020155138
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 香奈
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-287722(JP,A)
【文献】特開2000-072126(JP,A)
【文献】特開2002-240817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0314675(US,A1)
【文献】実開昭49-043304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を構成する底壁構成部と,前記底壁構成部の縁辺の上方に設けられた側壁部とを有する樹脂性の容器であって,
前記底壁構成部は,その下面の全体が,平置状態で接地する接地面となっているものであり,
前記底壁構成部の上方で前記側壁部の内側の収容空間を,個々の収容物を収容する収容部に区画する仕切り壁を有し,
前記底壁構成部の一部が,前記仕切り壁により区画された前記収容部内に位置する載置部となっており,
前記底壁構成部と前記側壁部と前記仕切り壁とが全体として一体成形品であり,
前記仕切り壁は,
上方から見て,前記底壁構成部と前記仕切り壁との連結領域からはみ出ない形状に形成されている
とともに,
複数の前記収容部を形成するとともに各前記収容部を個別に囲むように配置されており,
隣接する前記収容部の前記仕切り壁同士の間に隙間があり,
前記仕切り壁における前記収容部に対面しない外側面が,垂直面もしくは上方ほど前記収容部に接近する向きの傾斜面であり,
前記仕切り壁における前記収容部に対面する内側面と前記底壁構成部の上面とに連結して前記収容部の縁辺に離散的に設けられたガイド部を有し,
前記ガイド部における前記収容部側の辺が上方ほど前記収容部から離隔する傾斜辺となっているものである容器。
【請求項2】
底壁を構成する底壁構成部と,前記底壁構成部の縁辺の上方に設けられた側壁部とを有する樹脂性の容器であって,
前記底壁構成部は,その下面の全体が,平置状態で接地する接地面となっているものであり,
前記底壁構成部は,
前記側壁部から内側に離れた位置に配置された円環形状の部位である複数の環状部と,
前記環状部のうち一部のものと前記側壁部とを連結する連絡部と,
前記連絡部のうち一部のものの中腹箇所と,前記側壁部または他の前記連絡部とを繋ぐ補強部とを有し,
前記
環状部の上方で前記側壁部の内側の収容空間を,個々の収容物を収容する収容部に区画する仕切り壁を有し,
前記
環状部の一部が,前記仕切り壁により区画された前記収容部内に位置する載置部となっており,
前記底壁構成部と前記側壁部と前記仕切り壁とが全体として一体成形品であり,
前記仕切り壁は,上方から見て,前記
環状部と前記仕切り壁との連結領域からはみ出ない形状に形成されているものである容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の容器であって,
前記底壁構成部に上下方向に貫通する貫通孔が形成されており,
前記貫通孔の壁面は,垂直面もしくは上方ほど広がる向きの傾斜面で構成されており下方ほど広がる向きの傾斜面を含まない容器。
【請求項4】
請求項3に記載の容器のうち請求項
1に係るものであって,
前記仕切り壁の外面同士,または,前記仕切り壁の外面と前記側壁部とを繋ぐ連絡部と,
前記連絡部のうち前記仕切り壁の外面と前記側壁部とを繋ぐものの中腹箇所と,前記側壁部または他の前記連絡部とを繋ぐ補強部とを有し,
前記連絡部および前記補強部がいずれも,前記底壁構成部の一部として形成されている容器。
【請求項5】
複数の
樹脂性の容器からなり各前記容器がいずれも
,
底壁を構成する底壁構成部と,前記底壁構成部の縁辺の上方に設けられた側壁部とを有し,
前記底壁構成部は,その下面の全体が,平置状態で接地する接地面となっているものであり,
前記底壁構成部の上方で前記側壁部の内側の収容空間を,個々の収容物を収容する収容部に区画する仕切り壁を有し,
前記底壁構成部の一部が,前記仕切り壁により区画された前記収容部内に位置する載置部となっており,
前記底壁構成部と前記側壁部と前記仕切り壁とが全体として一体成形品であり,
前記仕切り壁は,上方から見て,前記底壁構成部と前記仕切り壁との連結領域からはみ出ない形状に形成されており,
前記底壁構成部に上下方向に貫通する貫通孔が形成されており,
前記貫通孔の壁面は,垂直面もしくは上方ほど広がる向きの傾斜面で構成されており下方ほど広がる向きの傾斜面を含まない
ものである容器群であって,
各前記容器を上方から見たときの全体形状がいずれも同じであり,
前記収容部の配置またはサイズが前記容器によって異なっていることがあり,
各前記容器は,前記底壁構成部の下面に,成形時に樹脂の注入を受けた痕跡である注入痕を有しており,
いずれの各前記容器でも,前記注入痕が,前記底壁構成部の下面における同一の位置に配置されている容器群。
【請求項6】
底壁を構成する底壁構成部と,前記底壁構成部の縁辺の上方に設けられた側壁部とを有し,
前記底壁構成部は,その下面の全体が,平置状態で接地する接地面となっているものであり,
前記底壁構成部の上方で前記側壁部の内側の収容空間を,個々の収容物を収容する収容部に区画する仕切り壁を有し,
前記底壁構成部の一部が,前記仕切り壁により区画された前記収容部内に位置する載置部となっており,
前記底壁構成部と前記側壁部と前記仕切り壁とが全体として一体成形品であり,
前記仕切り壁は,上方から見て,前記底壁構成部と前記仕切り壁との連結領域からはみ出ない形状に形成されており,
前記底壁構成部に上下方向に貫通する貫通孔が形成されており,
前記貫通孔の壁面は,垂直面もしくは上方ほど広がる向きの傾斜面で構成されており下方ほど広がる向きの傾斜面を含まない
樹脂性の容器を製造する容器の製造方法であって,
前記底壁構成部の下面を形成する下面形成面を有する第1金型と,
前記容器における前記側壁部の少なくとも内面および前記底壁構成部の上面を形成するとともに,
前記仕切り壁を形成する仕切り壁形成部と,
型締め状態にて前記下面形成面に接触して前記貫通孔を形成する貫通孔形成部とを有する複数の第2金型からなる第2金型群とを用い,
前記第2金型群に属する各前記第2金型では,
形成する前記側壁部の内面の,形成後の前記容器を上方から見たときの全体形状に相当する形状がいずれも同じであるとともに,
前記仕切り壁形成部の形状が互いに異なっており,
前記第1金型には,前記下面形成面における,いずれの前記第2金型に対しても型締め状態で前記貫通孔形成部と接触しない位置に,樹脂の注入口が形成されており,
前記第1金型と,前記第2金型群から選択した1つの前記第2金型とを型締めした状態で前記注入口から樹脂を注入することで容器を製造する容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は,樹脂性の容器およびその群および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,全体が上方に開口した箱状でありその中の収容空間が仕切り壁で仕切られている構造の樹脂性の容器が知られている。その一例として,特許文献1に記載されている「瓶類運搬箱」を挙げることができる。特許文献1に記載されている瓶類運搬箱は,箱体の底部に縦横のリブによる網状の底部を形成し,底部より上方の空間を「枠体」で区画したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の容器には次のような問題点があった。この種の容器では,収容しようとする収容物のサイズや,1つの容器に収容したい収容物の個数が必ずしも一定でない。このため,容器の全体形状はそのままにして内部の仕切り方を変更した姉妹品の容器を製造しようとする場合がある。この場合には,全体形状が同一であっても,上側の金型と下側の金型との両方を新たに作り直す必要があった。従来の容器では,容器内の仕切り部分を成形するのに,上側と下側との両方の金型が関与するからである。
【0005】
本開示技術は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためのものである。すなわちその課題とするところは,多品種への対応をしやすい構造の樹脂性の容器およびその群および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術に係る容器は,底壁を構成する底壁構成部と,底壁構成部の縁辺の上方に設けられた側壁部とを有する樹脂性のものであって,底壁構成部は,その下面の全体が,平置状態で接地する接地面となっているものであり,底壁構成部の上方で側壁部の内側の収容空間を,個々の収容物を収容する収容部に区画する仕切り壁を有し,底壁構成部の一部が,仕切り壁により区画された収容部内に位置する載置部となっており,底壁構成部と側壁部と仕切り壁とが全体として一体成形品であり,仕切り壁は,上方から見て,底壁構成部と仕切り壁との連結領域からはみ出ない形状に形成されているものである。
【0007】
上記の容器では,収容物を収容部に収容することで,収容物の収容空間内での移動が仕切り壁により規制される状態となる。このため収容している収容物の配置が安定する。底壁構成部の下面の全体が接地面であることと,収容空間を収容部に区画している仕切り壁が上方に向かって広がらない形状であることから,この容器の形成のための下面側の金型(第1金型)は,底壁構成部の下面を形成する平坦な面(下面形成面)を有するだけでよい。仕切り壁等の構成部分は上側の金型(第2金型)のみによって形成されることとなる。このため,容器における仕切り壁の配置について種々の変形例を作る場合に,第1金型については変形例間で共用できる。
【0008】
本開示技術の一態様における容器ではさらに,仕切り壁が,複数の収容部を形成するとともに各収容部を個別に囲むように配置されており,隣接する収容部の仕切り壁同士の間に隙間があり,仕切り壁における収容部に対面しない外側面が,垂直面もしくは上方ほど収容部に接近する向きの傾斜面であり,仕切り壁における収容部に対面する内側面と底壁構成部の上面とに連結して収容部の縁辺に離散的に設けられたガイド部を有し,ガイド部における収容部側の辺が上方ほど収容部から離隔する傾斜辺となっている。
【0009】
この態様の容器では,収容部同士の間に隙間があることとなるため,収容されている収容物同士も互いに間隔を置いて配置されることとなる。仕切り壁の内面側にはガイド部が設けられているので,その傾斜面により,収容物は各収容部の中心付近に寄せられて位置することとなる。また,仕切り壁の外面は垂直面もしくは上方ほど収容部に接近する向きの傾斜面であるため,製造時の型抜きには問題がない。ガイド部は離散的に設けられているので,仕切り壁に特段の厚肉部分はなく,必要な樹脂の量はそれほど多くない。
【0010】
本開示技術の別の態様における容器では,底壁構成部は,側壁部から内側に離れた位置に配置された円環形状の部位である複数の環状部と,環状部のうち一部のものと側壁部とを連結する連絡部と,連絡部のうち一部のものの中腹箇所と,側壁部または他の連絡部とを繋ぐ補強部とを有している。前記一態様における容器でもさらに,仕切り壁の外面同士,または,仕切り壁の外面と側壁部とを繋ぐ連絡部と,連絡部のうち仕切り壁の外面と側壁部とを繋ぐものの中腹箇所と,側壁部または他の連絡部とを繋ぐ補強部とを有し,連絡部および補強部がいずれも,底壁構成部の一部として形成されていることが望ましい。連絡部のうち仕切り壁の外面と側壁部とを繋ぐものには,かなり長いものがある場合がある。そのようなものの中腹部に補強部を繋げることで,長い連絡部を強度的に補強できる。また,連絡部と補強部とがいずれも底壁構成部の一部であることで,それらの下面が同一面(接地面)となる。これにより,長い連絡部に多少歪みが生じたとしても,搬送時に引っ掛かりを起こすことがない。
【0011】
上記のいずれかの態様の容器ではまた,底壁構成部に上下方向に貫通する貫通孔が形成されており,貫通孔の壁面は,垂直面もしくは上方ほど広がる向きの傾斜面で構成されており下方ほど広がる向きの傾斜面を含まないことが望ましい。底壁構成部に貫通孔を形成しておくことで,洗浄時の水捌け性について利点がある。貫通孔の壁面が下方ほど広がる向きの傾斜面を含んでいなければ,製造時に貫通孔を形成するための形状は上側の金型(第2金型)のみに存在していればよい。
【0012】
本開示技術の別の一態様における容器群は,複数の容器からなり各容器がいずれも底壁構成部に上記の貫通孔がある態様のものである容器群であって,各容器を上方から見たときの全体形状がいずれも同じであり,収容部の配置またはサイズが容器によって異なっていることがあり,各容器は,底壁構成部の下面に,成形時に樹脂の注入を受けた痕跡である注入痕を有しており,いずれの各容器でも,注入痕が,底壁構成部の下面における同一の位置に配置されているものである。このような容器群では,容器の製造の際に,どの容器であっても下面側の金型(第1金型)として同一のものを用いることができる。
【0013】
本開示技術の別の一態様における容器の製造方法は,底壁構成部に上記の貫通孔がある態様の容器を製造する製造方法であって,底壁構成部の下面を形成する下面形成面を有する第1金型と,容器における側壁部の少なくとも内面および底壁構成部の上面を形成するとともに,仕切り壁を形成する仕切り壁形成部と,型締め状態にて前記下面形成面に接触して貫通孔を形成する貫通孔形成部とを有する複数の第2金型からなる第2金型群とを用い,第2金型群に属する各前記第2金型では,形成する側壁部の内面の,形成後の容器を上方から見たときの全体形状に相当する形状がいずれも同じであるとともに,仕切り壁形成部の形状が互いに異なっており,第1金型には,下面形成面における,いずれの第2金型に対しても型締め状態で貫通孔形成部と接触しない位置に,樹脂の注入口が形成されており,第1金型と,第2金型群から選択した1つの第2金型とを型締めした状態で注入口から樹脂を注入する方法がある。これにより,多様なバリエーションの容器を製造するに際しても同一の第1金型を共用できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示技術によれば,多品種への対応をしやすい構造の樹脂性の容器およびその群および製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1の容器を逆さに伏せた状態で示す斜視図である。
【
図3】
図1の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図7】
図1の容器の底壁付近をその製造時の金型とともに示す端面図である。
【
図8】
図7の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図9】ガイド部付近をその製造時の金型とともに示す断面図である。
【
図10】ガイド部のない箇所における
図9に相当する断面図である。
【
図11】(比較例)仕切り壁を傾斜状にすることでガイド部を全周に設けた場合における
図9に相当する断面図である。
【
図12】
図1の容器およびその製造用の金型の断面図である。
【
図14】実施の形態の変形例に係る容器を示す斜視図である。
【
図15】
図14の容器を逆さに伏せた状態で示す斜視図である。
【
図18】
図14の容器およびその製造用の金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本開示技術を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,
図1および
図2に示す容器1について本開示技術を適用したものである。
図2では,
図1の容器1を逆さにして示している。
図1の一部を拡大して
図3に示す。容器1は,底壁2と側壁部3とを有している。容器の平面図および底面図を
図4に示す。
図4の左半分が平面図で右半分が底面図である。
図4に示されるように,容器1は全体として上方から見て略長方形である。側壁部3は,底壁2の縁辺の上方に設けられている。側壁部3には,窓18が形成されている。容器1は,樹脂性の一体成形品である。
【0017】
図3に示されるように,底壁2には,多数の貫通孔4が設けられている。貫通孔4は,底壁2を上下方向に貫通している。底壁2は実際には,多数のリブ状の部位で構成されている。底壁2を構成するリブ状の部位には,環状部5,連絡部6,連絡部7,放射状部8,副環状部9,がある。さらに載置部10もある。これらが,底壁2を構成する底壁構成部である。
【0018】
環状部5は,側壁部3から内側に離れた位置に配置された円環形状の複数個の部位である。連絡部6は,環状部5同士を連結するリブである。連絡部7は,環状部5のうちの一部のものと側壁部3とを連結するリブである。放射状部8は,各環状部5の内側に放射状に設けられているリブである。各環状部5の円形の中心には,載置部10が設けられている。載置部10は,放射状部8により環状部5に連結されている。載置部10も,底壁2を構成する部位に含まれる。副環状部9は,両端が連絡部7または側壁部3に繋がっている略半円形の部位である。副環状部9はまた,一部の連絡部7の中腹部にも繋がっている。副環状部9は,長めの連絡部7の中腹部に繋がって補強する補強部であるとともに,後述するように搬送性を改善する機能をも有する。
【0019】
各環状部5から上方に向けて,仕切り壁11が形成されている。各仕切り壁11は,略円筒状をなしている。ただしその全高は,側壁部3の全高より低い。容器1の収容空間すなわち底壁2の上方で側壁部3の内側の空間のうち,各仕切り壁11により区画された領域が,個々の収容物を収容する収容部である。容器1の全体としてみると仕切り壁11は,複数の収容部を形成するとともに各収容部を個別に囲むように配置されている。容器1における収容部同士は,互いに離隔して配置されている。つまり,隣接する収容部の仕切り壁11同士の間には隙間がある。円筒状の仕切り壁11の内面は収容部に面しており,外面は収容部に面していない。
【0020】
収容部内には,底壁2のうち前述の載置部10および放射状部8が存在している。収容部に収容された収容物は,載置部10および放射状部8の上に載りつつ,仕切り壁11により横方向の移動が阻止されることとなる。収容部に収容された収容物が環状部5の上に載ることがあってもかまわない。つまり載置部10ばかりでなく放射状部8や環状部5も,収容物を載置する役割を果たすことがあってもよい。前述のことから,仕切り壁11の収容部に対する外面同士が連絡部6により連結されている。また,一部の仕切り壁11の外面と側壁部3とが連絡部7により連結されている。さらに,連絡部6および連絡部7は,仕切り壁11程ではないがある程度の高さ方向の寸法を持っている。副環状部9の外周寄りの縁辺もそうである。
【0021】
容器1における底壁2についてさらに説明する。底壁2のすべての部分において,その下面12(
図2参照)は接地面,つまり平置状態で接地する面となっている。つまり容器1には,下面12よりさらに低い箇所はない。また,底壁2の下面12には段差がない。言い替えると,容器1のうち側壁部3より内側の領域では,その最低の高度の箇所は,貫通孔4となっている部分を除いてすべて底壁2の下面12である。
【0022】
下面12について
図5,
図6によりさらに説明する。
図5は,容器1を上方から見て短辺と平行な方向(
図4中の上下方向)の垂直面で切断して見た断面図である。
図6は,容器1を長辺と平行な方向(
図4中の左右方向)の垂直面で切断して見た断面図である。
図5,
図6中に現れている容器1の断面はいずれも,収容部の中心の載置部10を通る位置での断面である。
【0023】
図5中に見えている側壁部3は,その短辺の部分の内面である。
図5の断面図では,載置部10の断面や仕切り壁11の内面に加えて,連絡部6や連絡部7がある程度の面積をもって現れている。
図5に現れている断面は,連絡部6や連絡部7のうち短辺と平行なものを厚さ方向に二分する位置の断面だからである。
図5において,底壁2の下面12の高さは,環状部5,連絡部6,連絡部7,放射状部8のいずれの部分についても同じである。
【0024】
図6中に見えている側壁部3は,その長辺の部分の内面である。
図6の断面図における連絡部6は,その厚に相当するごく狭い範囲のみで現れている。
図6に現れている断面は,連絡部6のうち短辺と平行なものと交差する位置の断面だからである。連絡部7は
図6には現れていない。
図6においても上記と同様,底壁2の下面12の高さは,環状部5,連絡部6,放射状部8のいずれの部分についても同じである。
図5,
図6に付番してはいないが副環状部9の部分についても同じである。側壁部3に形成されている窓18はいずれも,仕切り壁11の最上部よりも上に位置している。
【0025】
図7に,容器1における仕切り壁11および底壁2の箇所の端面図を示す。
図7中には成形時の金型も現れているがこれらについては後述する。
図7中に現れている仕切り壁11の断面を拡大して
図8に示す。
図8に示されるように,底壁2における貫通孔4に面する端部の下端(矢印A,仕切り壁11の外面側,環状部5の内周側とも)は,下面12側の面取面が形成されていないエッジ状となっている。
図8には示していないが
図7中に現れている載置部10の端部や連絡部6の端部も同様である。
図7中にも現れていないが連絡部7,放射状部8,副環状部9の端部も同様である。
【0026】
言い替えると,底壁2における貫通孔4の壁面は,基本的に垂直面で構成されている。壁面のうち上端寄りの一部または全部が上方ほど広がる向きの傾斜面で構成されることは許容されるが,下方ほど広がる向きの傾斜面は許容されない。このことは,底壁2の部分に限らず,仕切り壁11や連絡部6,連絡部7のうち底壁2より上方に盛り上がっている部分においても同様である。このことを
図8に示される環状部5(底壁2)と仕切り壁11との関係において言い替えれば,仕切り壁11は,上方から見て,底壁2と仕切り壁11との連結領域からはみ出ない形状である,ということである。これは,容器1の成形後における可動金型13と容器1との分離が可能であるために必要なことである。
【0027】
図3に戻って,前述の収容部についてさらに述べる。各収容部の中,すなわち各仕切り壁11の内面側には,ガイド部14が設けられている。ガイド部14は,仕切り壁11における収容部に対面する内側面と底壁2(環状部5)の上面とに連結して形成されたリブ状の部位である。ガイド部14は,各収容部の周囲の複数箇所に離散的に配置されている。各ガイド部14の収容部側の辺は,上方ほど収容部から離隔する傾斜辺となっている。ガイド部14も,上方から見て,底壁2とガイド部14との連結領域からはみ出ない形状である。ガイド部14は,各収容部に収容される収容物を,収容部内で片寄らせずに中心付近に位置させるための部位である。また,各収容部を補強する効果も事実上有する。
【0028】
ガイド部14について
図9によりさらに述べる。
図9には,ガイド部14の断面が,成形時の金型とともに描かれている。ガイド部14の収容部側の辺15の前述の傾斜は,容器1の成形後における可動金型13と容器1との分離が可能であるために必要なことである。同じ目的から,仕切り壁11の外面16(収容部に対面しない外側面)は垂直面もしくは上方ほど収容部に接近する向きの傾斜面とされている。仕切り壁11における収容部に対面する内側であってガイド部14でない内側面は,垂直面もしくは上方ほど広がる向きの傾斜面で構成されている。
【0029】
前述のようにガイド部14は離散的に設けられているだけなので,ガイド部14のない箇所が存在する。ガイド部14のない箇所の断面図は
図10のようになる。このようにガイド部14は周方向に対して部分的に存在しているだけであるため,ガイド部14のために仕切り壁11の全体が厚肉になっているということはない。これにより,必要な樹脂の量を過大にしないようにしている。仮にガイド部(辺15)を全周にわたって設けたとしても,
図11に示すように仕切り壁11の外面を逆傾斜面17とすることで,厚肉部分が存在しないようにすることはできる。しかしそれでは,成形後の型抜きに支障がある。本形態(
図9,
図10)では,ガイド部(辺15)の存在と厚肉部分が存在しないこととを両立している。
【0030】
容器1におけるさらなる特徴点について説明する。容器1における各仕切り壁11のうち側壁部3に対して最近接のものは,実は完全な円形にはなっていない。当該仕切り壁11における側壁部3に隣接する2箇所に,側壁部3との間の連絡部28が設けられている。連絡部28と連絡部28との間の区間では仕切り壁11が途切れている。これにより,仕切り壁11と側壁部3との近接区間が厚肉部分となることが防止されている。このことも樹脂の必要量の節減に貢献している。仕切り壁11が途切れている区間は短いので,収容部への収容物の収容に支障が出ることはない。
【0031】
本形態の容器1では収容物を,各収容部に1つずつ載置することになる。載置された各収容物の下方にはそれぞれ,底壁2の一部分である載置部10が存在している。容器1の全体としてみると,複数の収容物が,収容部の配置に従い規則的に配置された状態で収容されていることになる。容器1では,ガイド部14が設けられていることにより,収容物が収容部内の中心付近に位置することになる。ガイド部14の傾斜辺の作用による。容器1ではまた,貫通孔4や窓18が設けられているので,水洗時の水捌けがよい。
【0032】
容器1ではまた,搬送されるときの搬送性がよいという利点がある。容器1は,収容物を収容した状態または空荷状態で,水平方向のスライド移動により搬送台の上を搬送されることがある。容器1の前述の連絡部7には,
図3中に見るようにかなり長いものがある。この長めの連絡部7は,それと交差する方向に搬送される場合に,搬送台との引っ掛かりの原因となる場合がある。新品時はともかく,古くなると歪みが出る場合があるためである。連絡部7の中腹部分が歪みにより下向きに出っ張ると,搬送時に搬送台に引っ掛かる可能性がある。
【0033】
しかしながら本形態では前述のように,副環状部9を設けている。長めの連絡部7の中腹部分には副環状部9が繋がっている。連絡部7と副環状部9とはどちらも底壁2の一部分であり,その下面12は一つの平坦面をなしている。このため少々歪みが出ても副環状部9の部分の下面12が傾斜面状に繋がっている状態となるため,引っ掛かりが防止される。
【0034】
さらに本形態の容器1は,その製造過程における柔軟性に利点を有するものである。すなわち,容器1においては,収容部の個数,配置,形状について種々のバリエーション展開をすることができる。容器1の製造過程は基本的に,2つの金型による樹脂の成形であるが,その下面側の金型は,上記のバリエーションに関わらず同一のものでよいのである。以下,このことを説明する。
図12に,容器1を製造するための金型の断面図を示す。
図12に示されているのは,
図5と平行な断面である。
図12には,容器1の断面も描かれている。
図12に現れている断面は,
図5と同じ切断位置でのものである。
【0035】
容器1を製造する金型は,固定金型(第1金型)19と可動金型(第2金型)13とにより構成されている。固定金型19は,容器1の下面12を形成する型である。可動金型13は,容器1の内面20を形成する型である。固定金型19には,スライド型21が退避可能に取り付けられている。スライド型21は,容器1の側壁部3の外面を形成する型である。
図12中におけるスライド型21は退避状態である。
図13に,固定金型19および可動金型13の型締め状態を示す。固定金型19には樹脂注入口22が設けられている。
図13の状態にて,固定金型19と可動金型13との間のキャビティ23に対して樹脂注入口22から樹脂を注入して充填・固化させることで,一体成形品である容器1が製造される。
【0036】
固定金型19には,容器1の下面12を形成する下面形成面24が設けられている。下面形成面24は,起伏のない平坦面である。固定金型19は,下面形成面24の他には,縁辺部25を有している。縁辺部25は,下面形成面24より少し高い部位である。固定金型19は,下面形成面24および縁辺部25以外には,容器1の形成のための面を有していない。
【0037】
可動金型13には,容器1の内面20を形成するための種々の形状部が設けられている。前述の底壁2(環状部5,連絡部6,連絡部7,放射状部8,副環状部9,載置部10),仕切り壁11,ガイド部14はいずれも,可動金型13におけるこれらの形状部により形成される。これらの形状部として例えば
図7には,仕切り壁11を形成する仕切り壁形成部30,環状部5を形成する環状部形成部31,載置部10を形成する載置部形成部32,連絡部6を形成する連絡部形成部33,が現れている。
図9には,ガイド部14を形成するガイド部形成部34が現れている。
【0038】
可動金型13にはさらに,貫通孔4を形成する貫通孔形成部26が設けられている。貫通孔形成部26は,可動金型13の中では,
図12中で最も低い部位である。貫通孔形成部26は,
図13の型締め状態にて下面形成面24と隙間なく密着する部位である。このため貫通孔形成部26のある場所では,型締め状態でもキャビティ23が形成されず,容器1における貫通孔4となる。可動金型13のうち貫通孔4以外の部位により,前述の底壁2等の各部位が形成される。
【0039】
図12中には,
図7,
図9,
図10に示した形状と全く同じ形状の部位が含まれていない。しかしこれは断面図の切断位置の違いによるものである。実際の可動金型13にはむろん,
図7,
図9,
図10に示した形状の部位が含まれている。
【0040】
固定金型19における樹脂注入口22は,可動金型13のうち貫通孔形成部26と対向しない位置に配置されている。もし樹脂注入口22が貫通孔形成部26と対向して配置されていると,キャビティ23への樹脂の注入ができないからである。これにより,容器1の下面12における樹脂注入口22と対面していた位置には,注入痕29が存在している。注入痕29は,成形時に樹脂注入口22から樹脂の注入を受けた痕跡形状である。注入痕29は,そこに特に着目すれば肉眼でも存在が分かるという程度の形状であり,前述の搬送時の引っ掛かりの原因となるほど顕著な凹凸ではない。
【0041】
スライド型21は,側壁部3の外面を形成する外面形成面27を有している。容器1が外面低部の水平リブを有しない形状のものである場合には,スライド型21を有さず,固定金型19そのものに外面形成面27を備える構成とすることもできる。
【0042】
上記より固定金型19は,容器1の内面20の形成には関与しない。このことは,容器1を同一の外寸にて種々の内部形状を選択できるようにバリエーション展開した場合でも,バリエーションに応じてそれぞれ用意する必要があるのは可動金型13だけであるということである。固定金型19は同一のものでよい。スライド型21も同一のものでよい。
【0043】
このような容器1のバリエーションの一例として,
図14~
図17の容器101を示す。
図14は
図1に,
図15は
図2に,
図16は
図4に,
図17は
図5に,それぞれ相当する。容器101は,上方から見たときの全体形状については容器1と同じである。容器101では,仕切り壁111が十字状に形成されている。これにより容器101の収容空間は4つの収容部に区画されている。容器101では,底壁2のほぼ全体が載置部110であるといえる。容器101にもガイド部14が設けられている。容器101のガイド部14も,仕切り壁111の側面と底壁2(載置部110)の上面とに連結して形成されている。容器101も,容器1について
図7等を用いて説明した貫通孔4の壁面についての特徴を備えている。
【0044】
容器101では,容器1と異なり,収容部同士が隙間なく隣接して配置されている。したがって仕切り壁111の側面は両面ともに収容部に面しており,内面,外面の区別はない。仕切り壁111の両側面にガイド部14が設けられている。容器101では,容器1における連絡部6に相当する部位はない。
【0045】
図18に,容器101を製造するための金型の断面図を示す。
図18には,容器101の断面も描かれている。
図18は,容器1についての
図12に相当する断面図である。型締め状態を
図19に示す。
図18および
図19の金型は,固定金型19と可動金型113とにより構成されている。可動金型113は容器101の内面120を形成するものである。
図18および
図19の切断箇所では可動金型113に外面形成面が現れていないが実際には,
図14等に見る貫通孔4に相当する箇所には当然,外面形成面が形成されている。
【0046】
可動金型113は容器1の可動金型13とは別物であるが,固定金型19(スライド型21を含む)は容器1用でも容器101用でも同じものである。このため
図15,
図16に見られるように,容器101の下面12にも注入痕29が存在している。容器1と容器101とでは,下面12の全体寸法に対する注入痕29の位置が同じである。可動金型113と可動金型13とでは,形成する容器の側壁部3の内面の,形成後の容器を上方から見たときの全体形状に相当する形状がいずれも同じである。
【0047】
容器1および容器101を,上方から見たときの全体形状がいずれも同じであり,前述の収容部の配置またはサイズが異なっている一群の容器群と見ることができる。容器群には,さらなる別のバリエーションを含むことができる。この容器群について,次のような運用が考えられる。まず容器のユーザー側での運用としては,保有している容器群の中から,収容物に応じて容器を選択して使用することになる。
【0048】
容器を提供する事業者側での運用としては,多様なバリエーションを含む容器群を用意しておいてユーザーからの注文に応じて提供することの他に,製造段階で特にメリットがある。すなわち,可動金型については多様なバリエーションを含む可動金型群を用意しておく必要があるが,固定金型19については1種類でよいのである。容器を製造するときには,可動金型群から1つの可動金型を選択し,固定金型19と選択した可動金型とを用いて製造を行うことになる。新たなバリエーションの容器を作製する場合には,可動金型のみ新たに作製し,既存の固定金型19とともに使用すればよい。
【0049】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,容器1および容器101における収容空間内の各部分(仕切り壁11,連絡部6,連絡部7,ガイド部14)について,それらの下面12を接地面と同一面として形成するとともに,上に向かって太くまたは厚くなることがない形状としている。このためこれらの部分には,下方から見て上方に向かって凹んだオーバーハング部分がない。これにより製造時に,バリエーションに関わらず固定金型19として同一のものを使用することができる。こうして,多品種への対応をしやすい構造の樹脂性の容器およびその群を実現している。
【0050】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,底壁2に貫通孔4が形成されていることは必須ではない。側壁部3に窓18が形成されていることも必須ではない。1つの容器に形成されている複数の収容部は,全部同じ形および同じサイズでなければならないという訳でもない。
図3中の副環状部9の両端は,他の連絡部7を介して間接的に側壁部3の内面に繋がっているが,他の連絡部7を介さず直接に側壁部3の内面に繋げてもよい。また,2つの金型を上下方向に型締めして容器を成形するようにしているが,水平方向に型締めするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,101 容器
2 底壁
3 側壁部
4 貫通孔
5 環状部
6,7,28 連絡部
9 副環状部(補強部)
10,110 載置部
11,111 仕切り壁
12 下面
13 可動金型
14 ガイド部
15 辺
16 外面
19 固定金型
20 内面
22 樹脂注入口
24 下面形成面
26 貫通孔形成部
29 注入痕
30 仕切り壁形成部