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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】斜面保護構造及び斜面保護方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
E02D17/20 102C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020172464
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2021076001
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019199488
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年10月1日 香川県丸亀市綾歌町岡田上2312番地7綾歌森林公園にて、日本植生株式会社は、斜面保護構造及び斜面保護方法について、その性能の検証のため試験施工を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】000231431
【氏名又は名称】日本植生株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】大倉 卓雄
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 泰良
(72)【発明者】
【氏名】小田 高史
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198050(JP,A)
【文献】特開平07-119154(JP,A)
【文献】特開平08-053845(JP,A)
【文献】特開2018-059337(JP,A)
【文献】特開昭63-110321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面上において等高線に沿うように延び、吸水又は吸湿により硬化する硬化材料を水と混合することなく収容し、等高線と直交する方向に間隔をおいて配される複数の長尺状の硬化袋と、
水を通過させ、セメント粒子を通過させない素材によって構成され、複数の前記硬化袋に跨る注入型枠とを具備し、
前記注入型枠は、その内部に少なくともセメントと水とを含むセメント流動物流し込みにより収容され、該注入型枠から排出された余剰水によって前記硬化材料が硬化するようにしてある斜面保護構造。
【請求項2】
前記注入型枠を地山に固定する固定部材を、前記注入型枠と前記硬化袋とを共に貫通する位置に打設してあるか、前記注入型枠を貫通し、前記硬化袋を貫通せずにその下方から支持可能な位置に打設してある請求項1に記載の斜面保護構造。
【請求項3】
斜面上において等高線に沿うように延び、等高線と直交する方向に間隔をおいて配され、その内部に空隙を生じる材料を収容した複数の長尺状の消耗袋を具備し、前記注入型枠は複数の前記消耗袋にも跨る請求項1または2に記載の斜面保護構造。
【請求項4】
前記注入型枠は、平面視において複数の硬化袋を縦断するように延びる縦流路部と、該縦流路部に連通する状態で該縦流路部から離間する方向に延びる横流路部とを有する請求項1~3の何れか一項に記載の斜面保護構造。
【請求項5】
前記硬化袋は、保持部材の袋状、筒状あるいはポケット状の収容部に挿入され、保持部材は、ネット状、シート状又はマット状のもの、又は、これらの複数を組み合わせたものである請求項1~4の何れか一項に記載の斜面保護構造。
【請求項6】
等高線に沿うように延び、各注入型枠の下端部を支持する支持体を設けてある請求項1~5の何れか一項に記載の斜面保護構造。
【請求項7】
等高線に沿うように延び、吸水又は吸湿により硬化する硬化材料を水と混合することなく収容した長尺状の硬化袋を等高線に直交する方向に間隔をおいて斜面上に複数配する際あるいは配した後に、水を通過させ、セメント粒子を通過させない素材によって構成された注入型枠が、複数の前記硬化袋に跨るようにし、かつ、その内部に少なくともセメントと水とを含むセメント流動物を流し込みにより収容した状態とし、該注入型枠から排出された余剰水によって前記硬化材料を硬化させる斜面保護方法。
【請求項8】
斜面上に前記硬化袋を配置した後、複数の前記硬化袋に跨るように前記注入型枠を配し、該注入型枠内にセメント流動物流し込みにより注入する請求項7に記載の斜面保護方法。
【請求項9】
斜面上への前記硬化袋の配置は、複数の前記硬化袋を予め保持した保持部材を斜面に敷設することによって行うか、あるいは斜面に敷設した後の前記保持部材に前記硬化袋を保持させることによって行う請求項7又は8に記載の斜面保護方法。
【請求項10】
前記注入型枠を地山に固定する固定部材を、前記注入型枠と前記硬化袋とを共に貫通する位置に打設するか、前記注入型枠を貫通し、前記硬化袋を貫通せずにその下方から支持可能な位置に打設するのであり、この打設は、前記注入型枠内のセメント流動物が固化しきる前に行う請求項7~9の何れか一項に記載の斜面保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、山間部に道路を造成するため切り土が施された法面や、河川、湖沼、ダム等の岸辺の法面(堤体の法面、河川の低水位敷き等)である斜面を保護するための斜面保護構造及び斜面保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切り土法面保護工や護岸工として、長尺状の硬化袋と、この硬化袋が複数装着されるネット状部材とで構成される斜面保護用具を斜面に設置する斜面保護工が実施されている(例えば特許文献1)。
【0003】
この斜面保護工では、硬化袋が等高線に沿うように斜面保護用具を配し、硬化袋が流亡土砂、周囲からの木の葉等を堰き止めるようにしておく。これにより、やがて硬化袋の山側には小段状の植生基盤が形成されて、この小段において植物が生長し易くなるいわゆる小段効果が発揮されることになる。すなわち、ここでいう小段効果とは、土砂等が堆積することにより斜面よりも勾配が緩い生育基盤層が小段状に形成され、この小段において植物が生長し易くなる効果をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-56606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の斜面保護工では、例えば雨水等が斜面と硬化袋との間に浸入した際、土の粒子間の摩擦抵抗が減少して土砂の移動が起こり、これに伴い、硬化袋の下ずれ(谷側へのずり落ち)が生じることがある。こうした下ずれは、硬化袋による斜面の侵食防止効果の低減を招来する。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、硬化袋を用いた斜面の侵食防止効果を高めることができる斜面保護構造及び斜面保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る斜面保護構造は、斜面上において等高線に沿うように延び、吸水又は吸湿により硬化する硬化材料を水と混合することなく収容し、等高線と直交する方向に間隔をおいて配される複数の長尺状の硬化袋と、水を通過させ、セメント粒子を通過させない素材によって構成され、複数の前記硬化袋に跨る注入型枠とを具備し、前記注入型枠は、その内部に少なくともセメントと水とを含むセメント流動物流し込みにより収容され、該注入型枠から排出された余剰水によって前記硬化材料が硬化するようにしてある(請求項1)。
【0008】
上記斜面保護構造において、前記注入型枠を地山に固定する固定部材を、前記注入型枠と前記硬化袋とを共に貫通する位置に打設してあるか、前記注入型枠を貫通し、前記硬化袋を貫通せずにその下方から支持可能な位置に打設してあってもよい(請求項2)。
【0009】
上記斜面保護構造が、斜面上において等高線に沿うように延び、等高線と直交する方向に間隔をおいて配され、その内部に空隙を生じる材料を収容した複数の長尺状の消耗袋を具備し、前記注入型枠は複数の前記消耗袋にも跨るようにしてもよい(請求項3)。
【0010】
上記斜面保護構造において、前記注入型枠は、平面視において複数の硬化袋を縦断するように延びる縦流路部と、該縦流路部に連通する状態で該縦流路部から離間する方向に延びる横流路部とを有していてもよい(請求項4)。前記硬化袋は、保持部材の袋状、筒状あるいはポケット状の収容部に挿入され、保持部材は、ネット状、シート状又はマット状のもの、又は、これらの複数を組み合わせたものであってもよく(請求項5)、等高線に沿うように延び、各注入型枠の下端部を支持する支持体を設けてあってもよい(請求項6)。
【0011】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る斜面保護方法は、等高線に沿うように延び、吸水又は吸湿により硬化する硬化材料を水と混合することなく収容した長尺状の硬化袋を等高線に直交する方向に間隔をおいて斜面上に複数配する際あるいは配した後に、水を通過させ、セメント粒子を通過させない素材によって構成された注入型枠が、複数の前記硬化袋に跨るようにし、かつ、その内部に少なくともセメントと水とを含むセメント流動物を流し込みにより収容した状態とし、該注入型枠から排出された余剰水によって前記硬化材料を硬化させる(請求項7)。
【0012】
上記斜面保護方法において、斜面上に前記硬化袋を配置した後、複数の前記硬化袋に跨るように前記注入型枠を配し、該注入型枠内にセメント流動物流し込みにより注入してもよい(請求項8)。
【0013】
上記斜面保護方法において、斜面上への前記硬化袋の配置は、複数の前記硬化袋を予め保持した保持部材を斜面に敷設することによって行うか、あるいは斜面に敷設した後の前記保持部材に前記硬化袋を保持させることによって行うとしてもよ(請求項9、前記注入型枠を地山に固定する固定部材を、前記注入型枠と前記硬化袋とを共に貫通する位置に打設するか、前記注入型枠を貫通し、前記硬化袋を貫通せずにその下方から支持可能な位置に打設するのであり、この打設は、前記注入型枠内のセメント流動物が固化しきる前に行ってもよい(請求項10)。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、硬化袋を用いた斜面の侵食防止効果を高めることができる斜面保護構造及び斜面保護方法が得られる。
【0015】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の斜面保護構造及び斜面保護方法では、硬化袋を跨ぐ注入型枠が硬化袋をその場から動かないように保持する状態(いわば抱きかかえる状態もしくは斜面に押圧する状態)となり、硬化袋と注入型枠との間の摩擦もある分、硬化袋は下ずれし難くなり、ひいては斜面の侵食防止効果、表層崩壊や硬化袋のはらみ出しの抑制効果を高めることが可能となる。
【0016】
請求項2に係る発明の斜面保護構造では、硬化袋の固定に用いるアンカーピン等の固定部材の数を減らすことが可能であるだけでなく、布製型枠と硬化袋と法面の一体化や、布製型枠と法面に対する硬化袋の下方向へのずれ防止を図ることができる。
【0017】
請求項3に係る発明の斜面保護構造では、注入型枠が、硬化袋と消耗袋とに跨るようにしてあり、施工後において、硬化袋の形状は殆ど変化しないのに対し、消耗袋は内容物の流出等によって萎んでいき、この萎みに伴い、注入型枠の重量は相対的に硬化袋に大きく掛かるようになり、これにより、注入型枠が硬化袋を保持する力(特に押圧力や摩擦力)は増大していくので、上記斜面の侵食防止効果等は経時的に向上することになる。
【0018】
請求項4に係る発明の斜面保護構造では、例えば隣り合う注入型枠どうしを連結して簡易的な法枠を構成し、斜面保護の向上を図ることが可能となる。
【0019】
請求項8に係る発明の斜面保護方法では、斜面上に先に硬化袋を配置した後、注入型枠を設けるのであり、この順を逆にすると、注入型枠が硬化袋の配置の邪魔になるが、そうした不都合が生じず、効率の良い施工を行うことが可能となる。
【0020】
請求項9に係る発明の斜面保護方法では、保持部材を用いて硬化袋を設置するので、硬化袋の設置の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る斜面保護構造の構成を示す斜視図、(B)は前記斜面保護構造の要部の構成を示す斜視図である。
図2】前記斜面保護構造の構成を示す縦断面図である。
図3】前記斜面保護構造の保持部材の構成を示す斜視図である。
図4】(A)は前記斜面保護構造の注入型枠の一例を概略的に示す説明図、(B)及び(C)はそれぞれ前記注入型枠の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0023】
図1(A)に示す斜面保護構造は、斜面の一例である法面N(図2参照)の保護及び緑化を図るため、法面N上に構築されるものである。
【0024】
斯かる本例の斜面保護構造は、図1(A)に示すように、法面N上において等高線に沿うように延び、法面Nの傾斜方向(等高線と直交する方向)に間隔をおいて配される複数の長尺状のモルタル袋(硬化袋の一例)1及び基材袋(消耗袋の一例)2と、各袋1,2に跨って法面Nの傾斜方向に延びる複数の布製型枠(注入型枠の一例)3とを具備する。
【0025】
モルタル袋1は、図3に示すように、長尺状(細長い筒状)の袋状体1aに、吸水により硬化するドライモルタル(吸水又は吸湿により硬化する硬化材料の一例)1bを収容した後、袋状体1aの両端を閉塞した状態として得たものであり、袋状体1a内に空隙を生じる材料(例えば肥料成分の溶出等によって経時的に目減りする基材のような材料)は収容していないので、高強度化を図ることができる。なお、本例のドライモルタル1bは、セメントに粒状の砂を骨材として混合したものであるが、ドライモルタル1bを構成する骨材には、砂に限らずバーミキュライトやパーライト(軽石)等を用いることができる。袋状体1aへの収容物は、吸水または吸湿により硬化する硬化材料か、または前記硬化材料を骨材と混合して収容することで、強度の高い硬化袋とすることができる。また、ドライモルタルに例えばスチールファイバー等の補強材を混合し、硬化後のモルタル袋1の強度向上効果が得られるようにしてもよい。
【0026】
ここで、袋状体1aは、ドライモルタル1b(硬化材料)を通さず、透水性を有するシート状体を用いて形成することができ、その素材としては、例えば、不織布、フェルト、布(織布)、編織物、ジュート布、水分解性プラスチック、薄綿などが挙げられる。
【0027】
また、袋状体1aは、一重構造、多重構造のいずれでもよい。多重構造の具体例としては、例えば、上記素材からなる内袋及び外袋の間に、高強度繊維(産業資材用として高強力となるように製造されたポリエチレン、ポリエステルなどの合成繊維や高強力のガラス繊維、炭素繊維など)を配し、袋状体1aの長手方向の強度が増すようにした三重構造としたり、この三重構造から、内袋または外袋のいずれか一方を無くした二重構造としたりすること等が考えられる。
【0028】
基材袋2は、図3に示すように、長尺状(細長い筒状)の袋状体2aに、基材2bを収容した後、袋状体2aの両端を閉塞した状態として得たものである。袋状体2aは、基材2bを通さず、透水性を有するシート状体を用いて形成することができ、その素材には、袋状体1aと同じ素材を用いることができる。基材2bは、例えば緑化用植物の種子(植生種子)、生育補助材(保水材、肥料等)または土壌改良材等から適宜に選択されたものを含む植生基材であってもよいし、その他の通常基材であってもよく、さらに、植生基材および通常基材を混合したものであってもよく、いずれにしても、経時的に目減りし、袋状体2aの内部に空隙を生じる材料である。前記植生基材としては、例えば、バーミキュライトを主体として配合され植生種子を含んでいるものや、表土シードバンクを含み、具体的には、斜面保護対象地(緑化対象地)の近傍の地山や森林等の植生種子を含んでいる表土にピートモス、バーク堆肥や保水材など生育補助材を適宜混合してなるものが挙げられる。この場合、確実に筋状に植物を導入可能となる。また、前記通常基材としては、ウッドチップ、農水産廃棄物(貝殻、蟹殻、果実屑など)、製紙スラッジ等の植生に害を及ぼすことの無い材料から適宜に選択されたものを含む基材が挙げられる。
【0029】
そして、図3に示すように、モルタル袋1及び基材袋2は、略矩形状を呈するネット状の保持部材(ネット状又はシート状又はマット状の保持部材の一例)4に保持(装着)される。保持部材4は、長手方向に適宜間隔で収容部5を有し、本例の保持部材4は、例えば横幅が1m、縦の長さが5~10mの部材であり、収容部5は縦方向に約30cm間隔で設けられている。すなわち、図3には、保持部材4の一部が表れている。そして、各収容部5には、モルタル袋1又は基材袋2が単独で収容される。図1図3に示す例では、三つに一つの割合で(二つ置きに)収容部5にモルタル袋1を収容し、残りの収容部5には基材袋2を収容してある。なお、収容部5は、モルタル袋1又は基材袋2を収容することができる程度の大きさを有する袋状、筒状あるいはポケット状に形成され、各袋1,2は収容部5の一端側からその内部に挿入され、これにより、各袋1,2は保持部材4によって保持されることになる。
【0030】
ここで、保持部材4は、耐久性に富む繊維(例えばナイロンやポリエステル、アラミド、カーボン、ガラス、ポリアセタール等の繊維)あるいは腐食性繊維(例えば椰子等の繊維)を用いて、目合い5~10mm程度に成形したものであってもよいし、これら両者(耐久性に富む繊維と腐食性繊維)を重ね合わせたものとしてもよい。さらに、強度向上のために、保持部材4に金網(例えば、亀甲金網やラス金網)を重ね合わせてもよい。
【0031】
一方、布製型枠3は、水(又は空気)を通過させ、セメント粒子を通過させない目合いを有する織布によって構成され、柔軟性を有し、その内部は、セメント流動物を流通させるための流路部となっている。その織布には、炭素繊維等、引張強度の強い繊維を使用し、セメント粒径が20μmであるのに対して、概ね0.001μm(1nm)の目合い(セメント粒径の約1/20000の大きさの目合い)を有する織布を用いるのが好ましい。
【0032】
以下、本例の斜面保護構造の説明を兼ねて、この斜面保護構造を構築するための工程(1)~(6)を実施する斜面保護方法について説明する。
【0033】
(1)まず、予め表面を整地した法面N上に、モルタル袋1、基材袋2及び保持部材4を具備する複数の斜面保護用具D(図3参照)を縦横に敷き並べた状態とする。
【0034】
この敷設(法面Nへの各袋1,2の配置)は、各袋1,2が収容部5に収容されて予め一体化された保持部材4を、図外のアンカーピン等の固定部材の打設によって法面Nに敷設して行ってもよいし、保持部材4のみを先に法面Nに敷設した後、この保持部材4の収容部5に各袋1,2を収容し、一体化することによって行ってもよい。
【0035】
この際、各袋1,2に適宜の柔軟性を持たせておき、各袋1,2が自重により法面Nに隙間無く密着し、かつ、等高線に沿うようにすることが、上記小段効果が得られる点で望ましく、さらに、景観向上の点でも望ましい。なお、各基材袋2については、その長手方向に適宜の間隔で止め釘等の固定部材6(図2参照)を打設して法面Nに固定するのであり、モルタル袋1についても同様に、例えば異形棒鋼を用いたアンカーピン等の固定部材(図示していない)の打設によって法面Nに固定する。
【0036】
また、図2に示すように、本例では、保持部材4の下側に、水及び植物の芽や根を通すように構成されたシート状部材7を貼着等適宜の手段により設ける。このシート状部材7は、例えばスフ薄綿、パルプ繊維、合成樹脂等の生分解性素材、可溶性素材または水解性素材を用いて形成すればよく、下面に、植生種子、肥料、土壌改良材、保水材等から適宜に選択されたものを含む植生基材を水溶性糊材によって付着し、これにより、シート状部材7が前記植生基材を担持した状態(少なくとも植物種子を分散保持した状態)となるように構成することが望ましい。シート状部材7は、レーヨン製の薄綿を薄く延ばして形成することもできる。
【0037】
ここで、シート状部材7と保持部材4とは貼着等によって直接固定してあってもよいが、例えば、シート状部材7と保持部材4とを法面N上に積層状態で配置した後、アンカーピン等の固定部材(図示していない)の打設を行うことにより、両者を法面Nに敷設固定してもよい。
【0038】
(2)法面Nの傾斜方向(等高線に略直交する方向)に間隔をおいて並ぶ袋1,2を全て跨いだ状態となるように、該傾斜方向に延びる一繋ぎの布製型枠3を配し、かつ、この一繋ぎの布製型枠3を等高線に略沿う方向に間隔をおいて複数設ける。
【0039】
ここで、「一繋ぎの布製型枠3」とは、当初より一本の(比較的長い)布製型枠3でもよいし、何本かの(比較的短い)布製型枠3を任意の長さとなるように一本に連結したものであってもよい。なお、後者の場合、布製型枠3の端部どうしを連結することになるが、この連結は、布製型枠3の端部の一方を他方に挿入した状態で行うこともできるし、適宜の連結管(例えば、塩化ビニル管)等を用いて行うこともでき、いずれにしても、後の工程で布製型枠3内を流通することになるセメント流動物がその連結部から漏れ出さないようにするのが望ましい。
【0040】
また、一繋ぎの布製型枠3の配置は、例えばロール状に巻かれた一繋ぎの布製型枠3の端部(上端部)を適宜の固定部材の打設により法面Nに固定した後、谷側に向かってこのロール状の布製型枠3を展開する、といった方法によって行うことが考えられる。そして、本例では、布製型枠3が各斜面保護用具D(図3参照)の左右方向中央を通るように配する(図1(B)参照)。
【0041】
(3)各一繋ぎの布製型枠3の上方(山側)の端部(開口)から、セメント流動物を流し込み、各布製型枠3内に充填する。
【0042】
この際、一繋ぎの布製型枠3の下方(谷側)の端部が開口している場合は予め閉塞しておく。この閉塞は、例えば適宜の部材や装置を用いた縫合、圧着、緊縛等によって行うことができる。
【0043】
セメント流動物は、W/C比が10~800%程度のセメントミルク(水とセメント及び必要に応じてセメント混和剤からなるもの)若しくはモルタル(少なくとも水とセメントと細骨材を含むもの)であり、法面Nの凹凸への馴染み易さ、流動性を考慮して状況に応じて適宜のものが用いられ、上記の範囲に限定されるものではない。そして、このセメント流動物は、例えば圧送用ポンプ(例えば毎分30L以上の吐出能力を有するモルタル圧送用ポンプ)によりホース内を圧送し、ホースの先端のノズルから布製型枠3内に充填すればよい。
【0044】
(4)セメント流動物を収容した各布製型枠3から、重力により余剰水がある程度自動的に排出される(布製型枠3が目減りする)のを待って、再度、セメント流動物を布製型枠3内に充填する、という手順を、各布製型枠3が目減りしなくなるまで繰り返す。
【0045】
すなわち、上述したように、布製型枠3は、水を通過させ、セメント粒子を通過させない目合いを有する織布からなるため、セメント流動物を収容した各布製型枠3から余剰水は排出されるが、セメント粒子は布製型枠3内に残留することになる。
【0046】
布製型枠3から排出される余剰水は、布製型枠3が跨いでいるモルタル袋1に供給され、モルタル袋1は法面Nからの吸水・吸湿や降雨を待たずに硬化することになるので、本工程は、法面Nの早期安定化にも資することになる。
【0047】
この工程を完了した時点で、布製型枠3と法面Nとの間になるべく隙間が生じないように、布製型枠3をモルタル袋1、基材袋2の外面に密着させておくのが好ましい。なお、布製型枠3は織布なので変形し易い上、その中に入れるセメント流動物に適宜の流動性を持たせておけば、これらが相俟って布製型枠3は法面Nの凹凸に沿った施工が行い易いものとなり、ひいては表層崩壊防止機能に優れたものとなる。
【0048】
ここで、セメント成分はpH12.5の強アルカリ性であり、布製型枠3から排出された余剰水が植生に影響を及ぼし得る。また、降雨等によるモルタル袋1への水分の供給に伴って、モルタル袋1からアルカリ性のモルタルが流出する恐れもある。そこで、こうした余剰水やモルタルによる影響を抑えるためには、その中和を図るのが好ましく、具体的には、例えば、中和剤を収容した長尺状の中和袋(消耗袋の一例)を収容部5に収容するなどして保持部材4に保持させる、中和剤をセメント流動物に混合する、布製型枠3に担持させる、法面Nに散布する、といった方法をとることができる。
【0049】
(5)布製型枠3内のセメント流動物が固化しきる前もしくは後に、布製型枠3の例えば中央に直接アンカーピン等の固定部材8を打設する(図1(B)参照)。
【0050】
特に、布製型枠3に対する固定部材8の打設のタイミングを、布製型枠3内のセメント流動物が固化しきる前とすれば、固定部材8の打設自体はセメント流動物から大きな抵抗を受けることなく簡単に行え、かつ、布製型枠3中のセメント流動物が固化した後に布製型枠3とこれに打設した固定部材8は強固に一体化した構造となる。また、このような固定部材8の打設を行っても布製型枠3からのセメント流動物の漏出を防止可能であることを発明者らは確認している。
【0051】
そして、布製型枠3を法面N(地山)に固定する固定部材8を、布製型枠3とモルタル袋1とを共に貫通する位置に打設してあるか、あるいは、図2に示すように、布製型枠3を貫通し、モルタル袋1を貫通せずにその下方(谷側)から支持可能な位置に打設すれば、モルタル袋1の固定に用いる固定部材の数を減らすことが可能であるだけでなく、布製型枠と硬化袋と法面の一体化や、布製型枠と法面に対する硬化袋の下方向へのずれ防止を図ることができる。
【0052】
(6)各布製型枠3の内部空間に収容されたセメント流動物が固化すれば、斜面保護構造が法面N上に築造された状態となるのであり、これにより、斜面保護方法が完了する。
【0053】
以上のようにして構築される本例の斜面保護構造では、モルタル袋1を跨ぐ布製型枠3がモルタル袋1をその場から動かないように保持する状態(いわば抱きかかえる状態もしくは斜面に押圧する状態)となり、モルタル袋1と布製型枠3との間の摩擦もある分、モルタル袋1は下ずれし難くなり、ひいては法面Nの侵食防止効果、表層崩壊やモルタル袋1のはらみ出しの抑制効果を高めることが可能となる。
【0054】
また、本例では、布製型枠3が、モルタル袋1と基材袋2とに跨るようにしてあり、施工後において、モルタル袋1の形状は殆ど変化しないのに対し、基材袋2は内容物の流出等によって目減りし、萎んでいく。そのため、施工時に、布製型枠3の重量がモルタル袋1と基材袋2とにほぼ均等に掛かるようにしてあっても、基材袋2が萎むにつれ、布製型枠3の重量は相対的にモルタル袋1に大きく掛かるようになり、これにより、布製型枠3がモルタル袋1を保持する力(特に押圧力や摩擦力)は増大していくので、上記斜面の侵食防止効果等は経時的に向上することになる。
【0055】
しかも、本例では、図2に示すように、モルタル袋1を基材袋2よりも上下に厚くしてあるので、布製型枠3の重量は相対的にモルタル袋1に大きく掛かり易く、これによっても、布製型枠3がモルタル袋1を保持する力は増大し、ひいては上記斜面の侵食防止効果等が高まることになる。
【0056】
仮にモルタル袋1が下ずれした場合、この下ずれに伴う振動等により、モルタル袋1の山側に堆積する植生基盤が崩れ、この植生基盤による小段効果が損なわれかねないが、本例ではモルタル袋1の下ずれが防止されるので、モルタル袋1の山側に堆積する植生基盤による小段効果(緑化)の確実化も期待できる。
【0057】
さらに、セメント流動物を収容した各布製型枠3から余剰水を排出することができる本斜面保護方法では、セメント流動物の固化後の布製型枠3の強度低下防止、ひいては高強度化を図ることができるだけでなく、布製型枠3内に充填(収容)するまでのセメント流動物の水セメント比を高くしておいてその流動性を上げ、セメント流動物を布製型枠3に充填するスピードを高めれば、施工の短期化をも図ることが可能となる。
【0058】
併せて、本例の布製型枠3を使用すれば、セメントミルクの水セメント比(W/C)に拘わらず、40%以上の余剰水は全て型枠外へ排出されるため、布製型枠3内に留まるセメントミルクの水セメント比は、自動的に水和反応に必要な35%を若干上回る40%程度に調整され、今までの実験の結果、容易に4週圧縮強度が80N/mm以上の発現が可能となることが確認されている。こうした4週圧縮強度の高さは、中性化に至るまでの所要時間の飛躍的な伸びに繋がるのであって、維持補修に至るまでの時間も長期化させることが可能となり、その飛躍的な高寿命化を図ることも可能となる。
【0059】
一方、本例の斜面保護方法では、法面N上に先にモルタル袋1及び基材袋2を配置した後、布製型枠3を設けるのであり、この順を逆にすると、布製型枠3が各袋1,2の配置の邪魔になるが、そうした不都合が生じず、効率の良い施工を行うことが可能となる。
【0060】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0061】
上記実施形態における斜面保護構造及び斜面保護方法は、法面Nに限らず、平地等において使用・施工してもよい。
【0062】
上記実施形態では、袋状体1aにドライモルタル1bを収容したモルタル袋1を用いているが、これに限らず、例えば骨材を含まないドライセメント等のセメント系資材や石膏等、他の硬化材料を袋状体1aに収容してなる袋(硬化袋)をモルタル袋1に替えて用いてもよい。
【0063】
布製型枠3内に収容するセメント流動物に、減水剤を混和させてあってもよい。また、セメント流動物に、アラミド繊維、ナノセルロース等の混和剤を混入させてもよく、この場合、布製型枠3の引張強度は飛躍的に向上する。
【0064】
セメント流動物として、少なくとも水とセメントと粗骨材を含むコンクリートを用いても良い。また、上記実施形態では、布製型枠3内に収容するセメントに、少なくとも水とセメントを含むセメント流動物の形態をとらせているが、これに限らず、布製型枠3内に収容する際のセメントに、例えば乾燥粉末セメント、ドライモルタル(セメントに粒状の砂、バーミキュライト、パーライト(軽石)等の骨材を混合したもの)、粒状セメントといった形態をとらせ、布製型枠3内への収容後に布製型枠3への散水もしくは降雨等による自然吸水・吸湿によりセメントを硬化させるようにしてもよい。
【0065】
セメントミルク(セメント流動物)の布製型枠3内への流し込みは、圧送用ポンプを用いるものに限らず、例えば布製型枠3の山側でセメントミルク(セメント流動物)を作製し、自重によってセメントミルクを布製型枠3内に流し込むようにしてもよい。
【0066】
図1(B)の例では、布製型枠3が各斜面保護用具Dの左右方向中央を通るように配してあるが、これに限らず、例えば、布製型枠3が各斜面保護用具Dの左右方向のいずれか一端側を通るように配してもよい。この場合、左右に隣り合う斜面保護用具Dの重なり部分を布製型枠3によって押さえつけ、その部分の捲れ防止を図ることができるようになる。ここで、左右に隣り合う斜面保護用具Dのモルタル袋1どうしは、一方のモルタル袋1の端部が他方のモルタル袋1の端部の山側に重なるようにしても上側に重なるようにしてもよい。このことは、基材袋2どうしについても同様である。
【0067】
また、各斜面保護用具Dに対して、その上に配する布製型枠3の数は一つに限らず、二つ以上としてもよく、あるいは、その上に布製型枠3が配されない斜面保護用具Dを設けるようにしてもよい。
【0068】
上記実施の形態における布製型枠3は、図4(A)に示すように、平面視において斜面保護用具Dを縦断する(複数のモルタル袋1を縦断する)ように延びる縦流路部3aを有するが、これに限らず、例えば、図4(B)に示すように、平面視において斜面保護用具Dを縦断する(複数のモルタル袋1を縦断する)ように延びる縦流路部3aと、縦流路部3aに連通する状態で縦流路部3aから離間する方向(左右)に延びる横流路部3bとを有するようにしてもよく、この場合、左右に隣り合う布製型枠3の各横流路部3bどうしを連結し、連結した布製型枠3が格子状を呈するようにしてもよい(図4(A)及び(B)では、各袋1,2の図示を省略してある)。なお、布製型枠3をなるべく法面Nに密着させるという点から、横流路部3bはモルタル袋1及び基材袋2を避けた位置に設けるのが望ましい。また、例えば法面Nが急こう配である場合には、固定前の布製型枠3のずり下がり防止のために、適宜の箇所を釘止め等により仮止めしてもよい。
【0069】
また、布製型枠3の縦流路部3aは、法面Nの傾斜方向に対し、斜めに伸びていてもよい。また、布製型枠3の横流路部3bは、等高線に沿うように延ばしてもよいし、縦流路部3aから離れるにつれて谷側(下側)に位置するように延ばしてもよく、後者の場合、横流路部3bに対するセメント流動物の充填をより容易に行える。
【0070】
このように、布製型枠3に設ける縦流路部3a、横流路部3bの数や配置、太さや間隔(ピッチ)、方向は種々に変更可能であり、例えば布製型枠3が縦流路部3aを有する場合、この縦流路部3aをジグザグ状等としてもよい。
【0071】
ただし、合理的な斜面保護の観点から、布製型枠3の左右方向(等高線の延びる方向)に隣り合う縦流路部3aの間隔は、50cm~5mが好ましく、1m~2mがより好ましい。また、布製型枠3の上下及び左右の厚みは3cm~20cmが好ましく、5cm~10cmがより好ましい。
【0072】
また、各布製型枠3の下端(谷側端)が勾配の緩やかな法尻に至らないような場合、図4(C)に示すように、等高線に沿うように延び、各布製型枠3の下端部(谷側端部)を支持する支持体9を設けることにより、各布製型枠3のずれ防止を図ることができる(図4(C)では、各袋1,2の図示を省略してある)。なお、図4(C)に示す支持体9は、例えば縦流路部3aを有する布製型枠3の一つを等高線に沿うように横にして用いるようにしたものであるが、これに限らず、例えば基材袋2その他の長尺状の消耗袋によって支持体9を構成してもよいし、各布製型枠3の下端部の左右に横流路部3bを設け、隣り合う布製型枠3の横流路部3bどうしを連結して形成してもよい。
【0073】
セメント流動物注入前の布製型枠3が斜面保護用具Dの一部となるように、この布製型枠3を保持部材4、モルタル袋1又は基材袋2に一体化してあってもよい。この一体化の方法としては、例えば、縫着、接着剤・接着テープ等を用いた接着、圧着、紐状体その他の適宜の部材を用いた結束・連結等が考えられる。
【0074】
上記各袋1,2を保持する保持部材4は、ネット状のものに限らず、シート状やマット状の部材でもよく、これらの部材の複数を積層等により組み合わせたものでもよいのであって、例えば、上記実施の形態では、図2に示したシート状部材7を保持部材4とは別のものとして説明し、シート状部材7を「保持部材」としては説明していないが、このシート状部材7と保持部材4とが各袋1,2を保持する一つの「保持部材」を構成していると捉えることも可能である。
【0075】
また、上記工程(1)では、保持部材4を用いて各袋1,2を設置するので、各袋1,2の設置の簡略化を図ることができるが、これに限らず、保持部材4を用いずに各袋1,2をそれぞれ個別に法面Nに設置するようにしてもよい。
【0076】
図3に示す保持部材4には収容部5を設けているが、収容部5を設けず、例えば各袋1,2をロープや針金等で保持部材4に縛り付けるようにしてもよい。
【0077】
図3に示す例では、三つに一つの収容部5にモルタル袋1が収容され、残りの収容部5に基材袋2が収容されているが、これに限らず、二つに一つの収容部5にモルタル袋1を収容し、残りの収容部5に基材袋2を収容したり、基材袋2を用いず全ての収容部5にモルタル袋1を収容したりするなど、モルタル袋1及び基材袋2を収容する比率は適宜変更可能である。
【0078】
上記実施の形態では、一つの収容部5に収容するモルタル袋1または基材袋2の数を一つに限ってあるが、その収容数を二つ以上としてもよい。そして、この場合、一つの収容部5に複数種類の袋を自由に組み合わせて収容するようにしてもよく、例えば、モルタル袋1の山側に形成される植生基盤における植物の生長促進のために、モルタル袋1を収容する収容部5内においてモルタル袋1の山側となる位置に肥料袋(消耗袋の一例。図示していない)や基材袋2を配置(収容)してもよい。この肥料袋は、例えば基材袋2の収容物を肥料に特化したものとすることができる。
【0079】
ここで、一つの収容部5に硬化袋(例えばモルタル袋1)、消耗袋(例えば基材袋2、中和袋、肥料袋)といった袋を複数収容する場合、各袋を止め釘やアンカーピン等の固定部材で個別に法面Nに固定してもよいし、一部の袋のみを固定するようにしてもよい。
【0080】
上記実施形態における固定部材6,8等は、表層崩壊の状況に応じて長さを変えて使用することもあり、例えば、地山において通常のアンカーピンではやや届かない深さの位置に不動層があれば、それに届くような長さのアンカーピン(あるいはアンカー)を使用することも考えられる。
【0081】
上記斜面保護方法では、工程(5)において、布製型枠3に固定部材8を打設して法面Nに固定しているが(図1(B)参照)、これに限らず、例えば、上記工程(2)において、一繋ぎの布製型枠3の配置後、次工程(3)の前に、例えば一繋ぎの布製型枠3の左右に貫通孔(図示していない)を有する張り出し部を設けておき、その貫通孔を貫くようにアンカーピン等の固定部材を打設し、布製型枠3を法面Nに固定するようにしてもよい。
【0082】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 モルタル袋
1a 袋状体
1b ドライモルタル
2 基材袋
2a 袋状体
2b 基材
3 布製型枠
3a 縦流路部
3b 横流路部
4 保持部材
5 収容部
6 固定部材
7 シート状部材
8 固定部材
9 支持体
D 斜面保護用具
N 法面
図1
図2
図3
図4