(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 5/02 20060101AFI20240702BHJP
B02C 17/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E01C5/02
B02C17/04 B
(21)【出願番号】P 2020202365
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】394022738
【氏名又は名称】株式会社請川窯業
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】請川 和英
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-276074(JP,A)
【文献】特開2004-346580(JP,A)
【文献】特開平09-070748(JP,A)
【文献】特開昭63-032044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 5/02
B02C 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃瓦(1)を所定面積の面形状を維持した形態に粗破砕する廃瓦粗破砕工程と、廃瓦を粗破砕して得られた面状破砕瓦(2)の外周縁(20)にある角部(21)と該面状破砕瓦(2)の破断面(22)にあるエッジ部(23)をそれぞれ丸く削り取る角取り工
程を備えた廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法
であって、
上記角取り工程は、面取り加工装置のドラム内に所定量の上記面状破砕瓦(2)と廃瓦を粒状に細破砕した所定量の粒状瓦片(4)を収容した状態で当該面取り加工装置のドラムを回転させて上記面状破砕瓦(2)の角部(21)とエッジ部(23)に上記粒状瓦片(4)を衝突させることにより、上記面状破砕瓦(2)の角部(21)とエッジ部(23)をそれぞれ丸く削り取ることを特徴とする廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法に関するものである。尚、本願でいう地表敷設材は、人が通行する地表(例えば庭園内の歩道)に敷設する敷石や舗装用タイル等として機能させ得るものである。
【背景技術】
【0002】
屋根瓦の葺き替えの際、あるいは家屋(屋根瓦使用)の取り壊しの際等には、廃棄すべき瓦(廃瓦)が大量に発生するが、この廃瓦は、ほとんどが再利用することなくそのまま産業廃棄物として廃棄処理されているのが現状である。従って、産業廃棄物の廃棄業者は、廃瓦の廃棄にコストがかかるとともに、廃瓦の廃棄場所を確保するのに苦労している。尚、本願で使用する廃瓦は、屋根瓦として使用済みの瓦のほかに、製造後に不良品とされた瓦も含むものである。
【0003】
ところで、近年、環境問題に対する社会的な意識の高まり等から、廃瓦についてもリサイクルする試みがなされている。例えば、特許文献1に示されるように廃瓦を細かく(粒状に)破砕した廃瓦破砕物をモルタルに混入することでコンクリート製品(舗装用ブロック体)の骨材として利用したものが知られている。
【0004】
ところが、特許文献1のように、廃瓦を細かく破砕してコンクリート製品(舗装用ブロック体)の骨材として利用するものでは、当該廃瓦を細かく破砕する工程、および他のコンクリート材料との混合・成形・乾燥等の各種の工程が必要であり、廃瓦を細かく破砕した骨材をコンクリート材料の一部として再利用するには、多くの工程(時間)と多大なコストがかかるという問題があった(費用対効果の面で採算が合わない)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、廃瓦をかなり大きな面積の面形状を維持した形態に破砕した状態(本願では面状破砕瓦と称している)で、地表に敷設する地表敷設材(敷石や舗装用タイル等)として利用できるようにすると、廃瓦についても比較的手間をかけずに且つ安価に有効利用(リサイクル)できると考えられる。
【0007】
ところが、廃瓦を単に面形状を維持した形態に破砕しただけでは、その面状破砕瓦に尖った角部や鋭利なエッジ部(稜線)が現出するので、そのまま地表敷設材として利用した場合は、上記尖った角部や鋭利なエッジ部が路面に露出し、歩行者に対する安全性が確保できない(鋭利なエッジ部等に引っ掛かって怪我をする危険がある)。従って、現状では、上記した面状破砕瓦の形態で地表敷設材(敷石や舗装用タイル等)として使用したものは見受けられない。
【0008】
そこで、本願発明は、廃瓦を使用したものであっても、敷石や舗装用タイル等として簡単に且つ安全に利用できるようにした地表敷設材の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法を対象にしたものである。
【0010】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、廃瓦を使用した地表敷設材を対象にしている。そして、本願請求項1の発明の廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法は、廃瓦(1)を所定面積の面形状を維持した形態に粗破砕する廃瓦粗破砕工程と、廃瓦を粗破砕して得られた面状破砕瓦(2)の外周縁(20)にある角部(21)と該面状破砕瓦(2)の破断面(22)にあるエッジ部(23)をそれぞれ丸く削り取る角取り工程を備えた廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法であって、上記角取り工程は、面取り加工装置のドラム内に所定量の上記面状破砕瓦(2)と廃瓦を粒状に細破砕した所定量の粒状瓦片(4)を収容した状態で当該面取り加工装置のドラムを回転させて上記面状破砕瓦(2)の角部(21)とエッジ部(23)に上記粒状瓦片(4)を衝突させることにより、上記面状破砕瓦(2)の角部(21)とエッジ部(23)をそれぞれ丸く削り取ることを特徴としている。
【0011】
この発明における上記廃瓦粗破砕工程は、例えばクラッシャーのような粗破砕装置を用いて廃瓦を粗破砕することができる。又、この廃瓦粗破砕工程は、廃瓦をハンマーにより手動で叩き割ることでも行える。
【0012】
この発明における上記角取り工程は、面取り加工装置のドラム内に所定量の面状破砕瓦と廃瓦を粒状に細破砕した所定量の粒状瓦片とを収容した状態でドラムを回転させて面状破砕瓦の角部やエッジ部に粒状瓦片を衝突させることで、面状破砕瓦の角部とエッジ部とをそれぞれ丸く削り取るようにしている。
【0013】
このように、この発明の廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法では、それぞれ比較的簡単な廃瓦粗破砕工程と角取り工程により、面状破砕瓦の外周縁にある角部と破砕面にあるエッジ部をそれぞれ丸く角取りした滑らかな曲面部の地表敷設材を得ることができる。
【0014】
この発明の上記角取り工程で使用する上記粒状瓦片は、廃瓦を小砂利程度の大きさ(例えば直径が10mm~20mm程度の大きさ)の粒状に細破砕したものである。
【0015】
そして、この粒状瓦片と本願の加工の主体となる面状破砕瓦とをドラム内で撹拌すると、多数の粒状瓦片が面状破砕瓦の角部やエッジ部の広範囲の部分に均一に且つ繰り返して衝突するが、そのとき粒状瓦片が面状破砕瓦に対する研摩材として機能し、面状破砕瓦の角部やエッジ部をそれぞれ効率よく且つきれいに丸く削り取ることができる。
【0016】
ところで、上記粒状瓦片も元の材料は廃瓦であるが、できればこの粒状瓦片も例えば路面に敷き詰める小砂利等として有効利用することが望まれる。しかし、廃瓦を細破砕したままの粒状瓦片では、小さいながらも尖った角部や鋭利なエッジ部が残っており、この粒状瓦片をそのまま路面に敷き詰めると歩行者に危険を及ぼすことがあるので、該粒状瓦片をそのまま利用できる用途は少ない。
【0017】
そこで、この発明の製造方法では、上記粒状瓦片と面状破砕瓦とをドラム内に収容して撹拌するようにしている。その結果、粒状瓦片が研摩材となって面状破砕瓦の角部やエッジ部を効率よく丸く削り取ることができる一方、各粒状瓦片自体も尖った角部や鋭利なエッジ部が丸く削られるようになる。
【0018】
このように、各粒状瓦片の角部やエッジ部が丸く削られると、外面に角のない滑らかな形状の小粒体となり、例えば路面に敷き詰める小砂利として利用可能な副産物に生成できる。
【0019】
この発明において地表敷設材として使用する廃瓦としては、平面形状部分が多い平瓦や熨斗瓦が好ましいが、曲面部分がある桟瓦でも部位によっては本願発明の地表敷設材用として使用できる。
【0020】
この発明における地表敷設材は、原材料としての廃瓦(原型のままの瓦でも割れた瓦でもよい)を粗破砕した所定面積を有する面状破砕瓦を用いるが、この面状破砕瓦は、廃瓦を不定形で所定面積を有した面形状に分断したものである。尚、以下の説明では、この発明の地表敷設材に加工する前の面状破砕瓦のことを中間加工材ということがある。
【0021】
この発明の地表敷設材を形成するための中間加工材である面状破砕瓦の大きさは、特に限定するものではないが、直径が10~15cm程度のものが好ましい。粗破砕加工において、製品となる地表敷設材として許容すべき大きさより小さく破砕されたものは、選別して廃棄するかあるいは他の用途として利用(例えば後述する小砂利として利用)することもできる。又、粗破砕加工において、製品となる地表敷設材として許容すべき大きさより大きいものは、再度粗破砕して許容範囲内の大きさに分断して使用する。
【0022】
又、廃瓦を単に粗破砕しただけの面状破砕瓦(中間加工材)では、その外周縁にある角部や破断面にあるエッジ部が鋭く尖っており、該面状破砕瓦をそのまま地表敷設材として地表に敷設した場合には、鋭く尖っている角部やエッジ部が地表に露出するので、該角部やエッジ部で歩行者が傷つくおそれがある。従って、廃瓦を粗破砕した面状破砕瓦(中間加工材)のままでは、地表敷設材として使用できない。
【0023】
そのため、この発明の製造方法では、上記粗破砕したままの面状破砕瓦における鋭く尖っている角部やエッジ部等を、それぞれ丸く角取りして滑らかな曲面部(曲面膨出部、曲面稜線部)に成形している。このように、面状破砕瓦の角部やエッジ部を滑らかな曲面部に加工した地表敷設材では、外面に鋭く尖った部分が無いので、歩道の地表に敷設しても、歩行者に危険を及ぼすような尖った部分が露出することがない。
【0024】
又、この発明における地表敷設材では、廃瓦を粗破砕した多数の面状破砕瓦を材料としているが、この各面状破砕瓦はそれぞれ不定形(不揃い)であるので、歩道の地表に敷設するときのデザインを多様化することができ、景観的に優れた形態の歩道面に仕上げることができる。
【0025】
さらに、この発明における地表敷設材のように、廃瓦をかなり大きな面積を維持した面形状に粗破砕することは、上記特許文献1のようにコンクリート製品に混入させるために細かな粒状に細破砕する場合より簡単で作業時間も短くて済むので、廃瓦をリサイクルするのに加工時間の短縮や加工コストの低減等の面で多くの利点がある。
【0026】
ところで、「いぶし瓦」(無釉薬瓦)は別として、一般的な瓦は、表面(おもてめん)に適宜色彩(黒色系、青色系、オレンジ色系が多い)の釉薬が塗布されているが、裏面は無釉薬で一般に茶色系又は灰色系の色彩のものが多い。そして、この発明のように廃瓦を使用した地表敷設材の多くは、1枚で表面側の釉薬を塗布している色彩と裏面側の無釉薬の色彩の2つの色彩をもっていて、歩道の地表に敷設する際に表面に露出する面を釉薬付きの面にするか無釉薬の面にするかを選択することができるので、歩道面として色彩面でのデザインの選択幅を拡大できる。
【0027】
尚、上記「いぶし瓦」は、表面と裏面が同色であるので、色彩面でデザインを選択するには適さないが、「いぶし瓦」であっても上記他の機能は充足できるので、この発明の地表敷設材の原材料として使用可能である。
【発明の効果】
【0028】
上述のように、本願発明に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法は、その基本となる構成として、廃瓦を所定面積の面形状を維持した形態に粗破砕する廃瓦粗破砕工程と、廃瓦を粗破砕して得られた面状破砕瓦の角部とエッジ部をそれぞれ丸く削り取る角取り工程との2つの工程を備えており、これら2つの工程により地表敷設材を製造するようにしている。
【0029】
上記廃瓦粗破砕工程及び上記角取り工程は、何れも廃瓦を加工する工程としては比較的簡単に行える工程である。従って、この発明の地表敷設材の製造方法では、ほとんどが廃棄処理される廃瓦を比較的簡単な2つの工程(廃瓦粗破砕工程と角取り工程)で目的とする地表敷設材に加工できるので、その地表敷設材の製造が簡単に行えるという効果がある。
【0030】
そして、本願発明に係る地表敷設材の製造方法では、特に上記角取り工程において、面取り加工装置のドラム内に面状破砕瓦と廃瓦を細破砕した粒状瓦片とを収容した状態でドラムを回転させることにより、面状破砕瓦の角部とエッジ部をそれぞれ丸く削り取るようにしている。
【0031】
そして、その場合において、廃瓦を細破砕した粒状瓦片が面状破砕瓦の角部やエッジ部を丸く削り取るための研摩材として機能する一方、粒状瓦片に元々あった尖った角部や鋭利なエッジ部も丸く削られる。
【0032】
従って、本願発明に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法では、次のような効果がある。即ち、粒状瓦片が面状破砕瓦に対する研摩材として機能することで、面状破砕瓦の角部やエッジ部をきれいに丸く削り取ることができる。又、研摩材として機能する粒状瓦片が廃瓦製であって安価に入手できるので、全体の加工コストを低く押さえることができる。さらに、粒状瓦片が研摩材として機能した後、粒状瓦片自体の角部やエッジ部が丸く削り取られて丸みをもった曲面部になっているので、使用後の粒状瓦片を有益な副産物(例えば路面に敷き詰める小砂利等)に生成できる。
【0033】
これらの結果、本願発明に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法により製造された地表敷設材によると、次のような効果を得ることができる。
【0034】
(1)廃瓦を使用した地表敷設材であるので、従来、ほとんどが廃棄処理されていた廃瓦を地表敷設材(敷石や舗装用タイル等)として有効利用できる。
【0035】
(2)原材料が廃棄される廃瓦であり、且つ比較的大面積のままで利用できるので、地表敷設材にするための製作コストが非常に安価である。
【0036】
(3)面状破砕瓦の角部やエッジ部を丸く滑らかな曲面部に成形しているので、この地表敷設材を歩道の地表に敷設しても、歩行者に危険を及ぼすような尖った部分が露出することがない。従って、本願発明の製造方法により製造された地表敷設材は、廃瓦製であってもリサイクル品として安全に使用できる。
【0037】
(4)各地表敷設材が不定形であり、且つ一般的な(表面に釉薬付きの)廃瓦を使用した地表敷設材では表面と裏面で色彩が異なっており、この地表敷設材を地表に敷設する際にデザイン的に色々な配置ができるので、景観材として使用形態の選択幅が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本願
発明の実施形態
に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法により製造される地表敷設材の原材料となる廃瓦(平瓦)の
一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の廃瓦を不定形の面状破砕瓦に粗破砕した状態の斜視図である。
【
図3】
図2の面状破砕瓦群から一部(サンプル例3個)を取り出した各面状破砕瓦の拡大斜視図である。
【
図5】本願
発明の実施形態
に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法により製造された地表敷設材(サンプル例3個)の斜視図である。
【
図7】本願
発明の実施形態
に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法により製造された地表敷設材(不定形の多数のサンプル)を敷設した歩道の斜視図である。
【
図9】本願
発明の実施形態
に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法における第1の製造工程を示すフローチャートである。
【
図10】本願
発明の実施形態
に係る廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法における第2の製造工程を示すフローチャートである。
【
図11】
図10の
第2の製造工程で使用する粒状瓦片の原形を示すサンプル図である。
【
図12】
図11の粒状瓦片を研摩材として使用した後の
当該粒状瓦片の形態
の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、
図1~
図12を参照して本願発明の実施形態に係る廃瓦を使用した地表敷設
材の製造方法を説明する。
【0040】
本願実施形態の地表敷設材3の原材料となる廃瓦1(例えば
図1のもの)は、実際に屋根瓦として使用済みの瓦のほかに、製造完了時点で不良品となった瓦も含むものである。
【0041】
「いぶし瓦」(無釉薬瓦)は別にして一般的な廃瓦1(例えば
図1の平瓦)は、表面(おもてめん)1aに適宜色彩(黒色系、青色系、オレンジ色系が多い)の釉薬が塗布されているが、裏面1bは無釉薬で一般に茶色系又は灰色系の色彩のものが多い。
【0042】
図5~
図6には、本願発明の実施形態に係る
廃瓦を使用した地表敷設材の製造方法により製造された地表敷設材3が示されているが、この地表敷設材3は、
図7に示すように人が歩く歩道10の地表11に敷石や舗装用タイル等として敷設するためのものである。
【0043】
この地表敷設材3は、
図9に示す第1の製造工程(請求項2の地表敷設材製造方法に対応している)又は
図10に示す第2の製造工程(請求項3の地表敷設材製造方法に対応している)を行って製造されるが、まずその第1及び第2の各製造工程の概略について説明しておく。
【0044】
図9に示す地表敷設材の第1の製造工程では、ステップS1で例えば
図1に示すような廃瓦1を所定量収集し(廃瓦収集工程)、次にステップS2でその収集した廃瓦1を
図2に示すような所定面積の面形状を維持した形態の面状破砕瓦2に粗破砕し(廃瓦粗破砕工程)、次にステップS3で粗破砕した面状破砕瓦(サンプル例として
図3、
図4の符号2A,2B,2C)の外周縁にある角部21と破断面22にあるエッジ部23をそれぞれ丸く削り取る(角取り工程)、ことで、ステップS4に示す最終製品となる地表敷設材3を完成させるようにしている。
【0045】
他方、
図10に示す第2の製造
工程では、ステップS11で例えば
図1に示すような廃瓦1を所定量収集し(廃瓦収集工程)、次にステップS12でその収集した廃瓦1を
図2に示すような所定面積の面形状を維持した形態の面状破砕瓦2に粗破砕する(廃瓦粗破砕工程)一方、それとは別にステップ13で廃瓦を
図11に示すように所定小粒径(例えば直径が10mm~20mm程度)の粒状に細破砕する(廃瓦細破砕工程)。
【0046】
次に廃瓦粗破砕工程(ステップ12)で粗破砕した所定量の面状破砕瓦2(2A,2B,2C)と廃瓦細破砕工程(ステップ13)で細破砕した所定量の粒状瓦片4(
図11)とを面取り加工装置のドラム内に収容し(ステップ14の混合工程)、続いてステップ15でドラムを回転させることでドラム内の面状破砕瓦2と粒状瓦片4を撹拌する(撹拌工程)。
【0047】
この撹拌工程(ステップ15)では、ドラム内で面状破砕瓦2と粒状瓦片4とが衝突することにより、面状破砕瓦2(
図3、
図4)の尖った角部21と鋭利なエッジ部23が丸く削り取られる一方(
図5、
図6参照)、粒状瓦片4(
図11)の尖った角部41と鋭利なエッジ部43も丸く削り取られる(
図12参照)。
【0048】
従って、この撹拌工程(ステップ15)は
図9のステップ3と同様の角取り工程に相当する。そして、ステップ15の撹拌工程(角取り工程)が完了すると、ステップ16に示すように最終製品となる地表敷設材3(
図5、
図6)が完成する一方、粒状瓦片4が
図12に示すように外面が滑らかな曲面状になった副産物(小粒体5)に加工される(ステップ17の副産物の生成)。
【0049】
以下、本願実施形態の地表敷設材3の構成について、その製造方法(
図9、
図10)と関連付けながら詳細に説明する。
【0050】
図5、
図6に例示する本願実施形態の地表敷設材(サンプル例として符号3A,3B,3Cを付している)は、原材料として廃棄される廃瓦1を使用する。この廃瓦1としては、例えば
図1に示すような平瓦や熨斗瓦等の平面形状のものが好ましいが、曲面部分がある桟瓦でも部位によっては地表敷設材の原材料として使用できる。
【0051】
廃瓦1(
図1)は、予め所要量(個数)を収集しておき(
図9のステップS1、
図10のステップ11)、その各廃瓦1を
図2に示すように所定面積の面形状を維持した形態に粗破砕して不定形な複数個の面状破砕瓦2に加工する(
図9のステップS2、
図10のステップ12)。尚、この粗破砕した面状破砕瓦2は、サンプル例の符号2A,2B,2Cのものを主体に説明する。又、この実施形態の説明でも、地表敷設材3(
図5、
図6参照)に最終加工する前の面状破砕瓦(サンプル例の2A,2B,2Cで説明する)のことを中間加工材ということがある。
【0052】
地表敷設材3を形成するための中間加工材となる面状破砕瓦(サンプル例の符号2A,2B,2Cで説明する)の大きさは、特に限定するものではないが、直径が10~15cm程度のものが好ましい。尚、廃瓦粗破砕工程(
図9のステップ2、
図10のステップ12)において、本願製品である地表敷設材3として許容すべき大きさより小さく破砕されたものは、
図9に示す第1の製造工程では廃棄されるが、
図10の第2の製造工程では
図10の廃瓦細破砕工程(ステップ13)において粒状瓦片4に細破砕される。又、許容すべき大きさより大きいものは再度粗破砕して許容範囲内の大きさの面状破砕瓦に分断する。
【0053】
この廃瓦1の粗破砕作業は、例えばクラッシャーのような粗破砕装置を用いて廃瓦を粗破砕することができるが、廃瓦をハンマーにより手動で叩き割ることでも行える。
【0054】
ところで、廃瓦1を単に粗破砕しただけの面状破砕瓦では、
図3および
図4に示すように、各面状破砕瓦2A,2B,2Cの外周縁に尖った角部21が現出している一方、各面状破砕瓦2A,2B,2Cの破断面22の表裏各側に鋭利なエッジ部(稜線)23が現出している。そして、廃瓦1を粗破砕しただけの面状破砕瓦2A,2B,2Cでは、そのまま歩道用の敷設材(敷石や舗装用タイル等)として使用した場合に、尖った角部21や鋭利なエッジ部23で歩行者が怪我をするおそれがあるので、そのままでは使用できないものである。
【0055】
そこで、本願実施形態の地表敷設材3では、
図3および
図4に示す面状破砕瓦2A,2B,2Cの尖った角部21や鋭利なエッジ部23を、
図5および
図6に示すようにそれぞれ丸く角取り加工(
図9のステップS3、
図10のステップ15)して滑らかな曲面部(曲面膨出部31、曲面稜線部33)に成形している。
【0056】
図9の第1の製造工程では、上記角部21やエッジ部23の角取り加工は、ロータリーミルやバレル研磨機等と称される面取り加工装置を用い、同面取り加工装置のドラム内に適数量(個数)の面状破砕瓦(2A,2B,2C)を収容してドラムを回転させることで、各面状破砕瓦同士の衝突やドラム内面(撹拌羽根)との衝突により、鋭利に尖った角部やエッジ部を丸く削り取る。
【0057】
他方、
図10の第2の製造工程では、廃瓦粗破砕工程(ステップ12)とは別に、ステップ13に示す廃瓦細破砕工程を行って、廃瓦を
図11に示す小粒の粒状瓦片4,4・・に加工しておく。尚、この廃瓦細破砕工程(ステップ13)で使用する廃瓦は、廃瓦粗破砕工程(ステップ12)において面状破砕瓦2として許容大きさより小さく分断された屑瓦片も使用することができる。
【0058】
そして、
図10の第2の製造工程では、混合工程(ステップ14)において、中間加工材のドラム内に所定量の面状破砕瓦2(
図3、
図4)と所定量の粒状瓦片4(
図11)を収容し、続いて撹拌工程(ステップ15)において面状破砕瓦2粒状瓦片4を収容したドラムを回転させて該面状破砕瓦2と粒状瓦片4を撹拌する(両者を衝突させる)ことで、面状破砕瓦2及び粒状瓦片4の角部21,41やエッジ部23,43を丸く削り取る。尚、この撹拌工程(ステップ15)は
図9のステップ3と同様の角取り工程に相当する。
【0059】
又、
図9の第1の製造工程及び
図1の第2の製造工程において、必要に応じてドラム内に硬質の研摩材を収容して撹拌することができ、その場合は面状破砕瓦2や粒状瓦片4の角部21,41やエッジ部23,43を効率よく且つきれいな形態で角取りすることができる。
【0060】
尚、撹拌工程完了後は、ドラム内の加工品(地表敷設材3、小粒体5)を取り出すが、そのとき小粒体5が通過するような粗い目の篩を通すことで、地表敷設材3と小粒体5とを確実に選別することができる。
【0061】
面状破砕瓦2A,2B,2Cの角部21やエッジ部23を角取りすると、
図5、
図6に示す最終形態の地表敷設材(サンプル例として3A,3B,3C)に加工できるが、この地表敷設材では、面状破砕瓦(
図3)の外周縁にあった角部21が丸みをもった曲面膨出部31(
図5)となる一方、破断面22にあった表裏各側のエッジ部23,23が共に丸みをもった曲面稜線部33,33(
図5、
図6参照)となる。
【0062】
そして、このように
して製
造した地表敷設材3(
図5、
図6)では、
図7に示すように歩道10の地表11に敷設した際に、
図8に示すように地表11から露出する部分の外周縁は全周に亘って丸みをもった曲面膨出部31(
図5)や曲面稜線部33となっている。
【0063】
この実施形態の地表敷設材3(およびサンプル例の3A,3B,3C)は、次のような有効な機能を有している。
【0064】
図7に示すように、この地表敷設材3,3A,3B,3Cを歩道10の地表11に敷設した状態では、
図8に示すように各地表敷設材(サンプル例の3A,3B,3C)の地表露出部分に尖った部分が全く無いので、歩行者に危険を及ぼすことがない。従って、この実施形態の地表敷設材3(3A,3B,3C)は、一般に廃棄処分されていた廃瓦をリサイクル品として有効利用できる。
【0065】
又、この地表敷設材3,3A,3B,3Cは、廃瓦を粗破砕した多数の面状破砕瓦(中間加工材)2を材料としているが、この各面状破砕瓦2はそれぞれ不定形(不揃い)であるので、歩道10に敷設するときのデザイン(配置例)を多様化することができ、景観的に優れた形態の歩道面に仕上げることができる。
【0066】
さらに、この地表敷設材3,3A,3B,3Cのように、廃瓦1をかなり大きな面積を維持した面形状に粗破砕することは、特許文献1のようにコンクリート製品に混入させるために細かな粒状に細破砕する場合より簡単で作業時間も短くて済むので、廃瓦をリサイクルするのに加工時間の短縮や加工コストの低減等の面で多くの利点がある。
【0067】
又、地表敷設材の原材料となる廃瓦としては、「いぶし瓦」も使用可能であるが、一般に釉薬付きの廃瓦が多く用いられる。そして、原材料となる廃瓦として釉薬付きのものを使用した地表敷設材(3,3A,3B,3C)では、表面(おもてめん)3aの釉薬による色彩部分(黒色系、青色系、オレンジ色系が多い)と裏面3bの無釉薬による色彩部分(茶色系が多い)の、1枚で2つの色彩をもっている。そして、この地表敷設材3,3A,3B,3Cを地表11に敷設する際に上面側に露出する面を釉薬付きの面3aにするか無釉薬の面3bにするかを選択することができる。
【0068】
例えば、
図8の敷設例では、左側の地表敷設材3Aと右側の地表敷設材3Cとはそれぞれ表面(釉薬塗布面)3aが上面に露出するように設置している一方、中間の地表敷設材3Bは裏面(無釉薬面)3bが上面に露出するように設置している。このように、1枚の地表敷設材について、表裏どちらの面を上面側に露出させるかによって、歩道面のデザイン色の選択幅が大きくなる。
【0069】
尚、上記「いぶし瓦」は、表面と裏面が同色であるので、上記のように表裏異色色彩によるデザイン色の選択はできないが、地表敷設材としての上記他の機能は十分に充足できるので、「いぶし瓦」の廃材であっても、本願の地表敷設材の原材料として使用することができる。
【0070】
他方、本願実施形態の地表敷設材製造方法において、
図9に示す第1の製造工程では、主として廃瓦1を所定面積の面形状を維持した形態に粗破砕する廃瓦粗破砕工程(ステップS2)と、廃瓦を粗破砕して得られた面状破砕瓦2の角部21とエッジ部23をそれぞれ丸く削り取る角取り工程(ステップS3)とを行うことで、廃瓦1から地表敷設材3を製造するようにしているが、上記廃瓦粗破砕工程と上記角取り工程とは廃瓦を加工する工程としては比較的簡単に行える工程である。
【0071】
従って、
図9に示す第1の製造工程では、ほとんどが廃棄処理される廃瓦1を比較的簡単な2つの工程(廃瓦粗破砕工程と角取り工程)のみで廃瓦1を地表敷設材3に加工できるので、その地表敷設材の製造が簡単に行える。
【0072】
又、本願実施形態の地表敷設材製造方法において、
図10に示す第2の製造工程では、ステップ13の廃瓦細破砕工程で予め粒状瓦片4(
図11)を作成しておく必要があるが、この粒状瓦片4は面状破砕瓦2に対して研摩材としての機能を有するので、ステップ15の撹拌工程(角取り工程)において面状破砕瓦2の角部21およびエッジ部23をきれいに且つ確実に丸く削り取ることができる。
【0073】
又、この第2の製造工程の場合、研摩材として機能させた粒状瓦片4(
図11)の外面に元々あった角部41やエッジ部43が無くなって
図12に示すように曲面膨出部51や曲面稜線部53となり、表面全体が滑らかな小粒体5に加工される。
【0074】
この小粒体5(
図12)は、粒状瓦片4を研摩材として機能させた後に、路面(例えば
図7における各地表敷設材3,3・・間)に敷き詰める小砂利等の用途として有益な副産物となるもので、他の用途の物品として有効利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1は廃瓦、2,2A,2B,2Cは面状破砕瓦、3,3A,3B,3Cは地表敷設材、3aは表面(釉薬塗布面)、3bは裏面(無釉薬面)、4は粒状瓦片、5は副産物となる小粒体、10は歩道、11は地表11、20は外周縁、21は角部、22は破断面、23はエッジ部、31は曲面膨出部、33は曲面稜線部である。