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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】薬剤放散器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A01M1/20 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021005083
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109661
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正木 奈穂
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-18034(JP,A)
【文献】特開2014-135910(JP,A)
【文献】特開2003-104384(JP,A)
【文献】特開2003-267466(JP,A)
【文献】特開2012-157264(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0194368(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発する薬剤を保持した薬剤保持体と、該薬剤保持体を収容する容器とを備え、該容器に形成された薬剤放散用の開口部から薬剤を外部に放散させるように構成された薬剤放散器本体と、
前記薬剤放散器本体を、水平方向に延びる回動中心線周りに回動操作されるドアノブに吊り下げ可能にするための吊り下げ部材とを備えた薬剤放散器において、
前記吊り下げ部材は、前記容器における水平方向に離れた部分からそれぞれ上方へ突出して縦方向に延びる第1縦方向部及び第2縦方向部と、前記第1縦方向部及び前記第2縦方向部の上部同士を接続するように前記第1縦方向部の上部から前記第2縦方向部の上部まで延びる接続部と、前記回動中心線の径方向のうち、水平方向両側から前記ドアノブに当接する第1当接部及び第2当接部とを有していることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤放散器において、
前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記回動中心線の径方向のうち、水平方向両側から前記ドアノブを挟持することを特徴とする薬剤放散器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薬剤放散器において、
前記吊り下げ部材は、前記第1縦方向部から前記第2縦方向部へ接近する方向へ突出する第1突出部と、前記第2縦方向部から前記第1縦方向部へ接近する方向へ突出する第2突出部とを有しており、
前記第1突出部の突出方向先端部及び前記第2突出部の突出方向先端部は、前記第1縦方向部及び前記第2縦方向部の離間方向に離れて配置されるとともに、それぞれ前記ドアノブに当接する前記第1当接部及び前記第2当接部とされていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項4】
請求項3に記載の薬剤放散器において、
前記第1突出部は、突出方向先端部に近づくほど上に位置するように形成され、
前記第2突出部は、突出方向先端部に近づくほど上に位置するように形成されていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項5】
請求項2または3に記載の薬剤放散器において、
前記第1当接部及び前記第2当接部は上方へ延びるように形成されるとともに、互いに対向するように配置されていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項6】
請求項3から4のいずれか1つに記載の薬剤放散器において、
前記第1突出部及び前記第2突出部は、上下方向に撓む可撓性を有していることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の薬剤放散器において、
前記吊り下げ部材は、ドアノブに上方から当接する第3当接部を有していることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項8】
請求項7に記載の薬剤放散器において、
複数の前記第3当接部は前記第1縦方向部及び前記第2縦方向部の離間方向に離れて設けられていることを特徴とする薬剤放散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアノブに吊り下げて使用可能な薬剤放散器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、蒸発する薬剤を保持した薬剤保持体と、該薬剤保持体を収容する容器とを備えた薬剤放散器本体を、長尺状の吊り下げ部材を利用してドアノブ等に吊り下げて使用する場合がある。特許文献1の吊り下げ部材は、可撓性を有するとともに、薬剤放散器本体から上方へ突出するように設けられ、かつ、上方へ向けて湾曲した形状を有しており、しかも、上下方向の寸法を任意に調整できるように構成されている。これにより、薬剤放散器本体の設置自由度が向上し、例えば設置高さを任意に調整することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-129513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、玄関等のドアに取り付けられているドアノブは、一般的な握り玉タイプのほかにも、レバー式のもの、バー式のものなど様々な形状のものがあるが、吊り下げ式の薬剤放散器は、どのような形状のドアノブにも吊り下げできることが望ましい。
【0005】
この点、特許文献1の吊り下げ部材は、可撓性を有するとともに寸法調整ができるので、握り玉タイプのドアノブに吊り下げること、レバー式のドアノブに吊り下げること、及びバー式のドアノブに吊り下げることが可能である。
【0006】
ところが、本願発明者らが様々な形状のドアノブに吊り下げてみたところ、特許文献1のように上方へ向けて湾曲した吊り下げ部材は、特定の形状のドアノブに吊り下げた場合、薬剤放散器が風であおられた場合などに、吊り下げ部材がドアノブから抜けて薬剤放散器が落下するおそれがあることが分かった。すなわち、レバー式のドアノブは、付け根部分がドアの表面から突出しており、この付け根部分の先端部から略直角に折れ曲がって水平方向へ延びるレバー部を有している。このようなレバー式のドアノブに吊り下げ部材を掛ける際には、付け根部分に吊り下げ部材が位置するように配置することで、吊り下げ部材が付け根部分の先端部へ向けて移動したとしても、水平方向に延びるレバー部に引っ掛かって薬剤放散器の脱落は抑制されると思われる。しかしながら、薬剤放散器本体が受ける風は突然向きを変えたり、強弱を繰り返したりすることがあり、その風の影響により、吊り下げ部材が付け根部分からレバー部まで移動してしまい、その後、レバー部の端まで水平方向に移動し、その結果、薬剤放散器が落下してしまうことがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レバー式のドアノブに吊り下げた場合であっても不意の脱落を抑制できる薬剤放散器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の開示は、蒸発する薬剤を保持した薬剤保持体と、該薬剤保持体を収容する容器とを備え、該容器に形成された薬剤放散用の開口部から薬剤を外部に放散させるように構成された薬剤放散器本体と、前記薬剤放散器本体を、水平方向に延びる回動中心線周りに回動操作されるドアノブに吊り下げ可能にするための吊り下げ部材とを備えた薬剤放散器を前提とすることができる。そして、前記吊り下げ部材は、前記容器における水平方向に離れた部分からそれぞれ上方へ突出して縦方向に延びる第1縦方向部及び第2縦方向部と、前記第1縦方向部及び前記第2縦方向部の上部同士を接続するように前記第1縦方向部の上部から前記第2縦方向部の上部まで延びる接続部と、前記回動中心線の径方向のうち、水平方向両側から前記ドアノブに当接する第1当接部及び第2当接部とを有している。
【0009】
この構成によれば、薬剤放散器本体の容器から上方へ突出するように長尺状の吊り下げ部材が設けられているので、当該吊り下げ部材によって薬剤放散器本体をレバー式のドアノブに吊り下げた状態にして薬剤放散器を使用することが可能になる。このとき、吊り下げ部材をドアノブの付け根部分に配置しておくと、吊り下げ部材の第1当接部及び第2当接部がドアノブの付け根部分に対してその径方向両側から当接する。
【0010】
この状態で、例えば薬剤放散器本体が様々な方向から風を受けた場合を想定すると、その風の力によっては吊り下げ部材がドアノブのレバー部へ向けて移動しようとすることがある。ところが、ドアノブの付け根部分とレバー部とは略直交する関係で一体化されており、その付け根部分に対して吊り下げ部材の第1当接部及び第2当接部が径方向両側から当接しているので、レバー部へ向けての移動が第1当接部及び第2当接部によって抑制される。その結果、薬剤放散器がドアノブから落下し難くなる。
【0011】
第2の開示では、前記第1当接部及び前記第2当接部が前記ドアノブを前記水平方向両側から挟持するように形成されているので、吊り下げ部材のドアノブに対する変位を抑制することができ、薬剤放散器のドアノブからの落下抑制効果がより一層高まる。
【0012】
第3の開示では、前記吊り下げ部材は、前記第1縦方向部から前記第2縦方向部へ接近する方向へ突出する第1突出部と、前記第2縦方向部から前記第1縦方向部へ接近する方向へ突出する第2突出部とを有しており、前記第1突出部の突出方向先端部及び前記第2突出部の突出方向先端部は、前記第1縦方向部及び前記第2縦方向部の離間方向に離れて配置されるとともに、それぞれ前記ドアノブに当接する前記第1当接部及び前記第2当接部とされているものである。
【0013】
この構成によれば、第1当接部の突出方向先端部と、第2当接部の突出方向先端部との間にドアノブの一部を配置することで、第1当接部及び第2当接部をドアノブの一部に確実に当接させることが可能になる。
【0014】
第4の開示では、前記第1突出部は、突出方向先端部に近づくほど上に位置するように形成され、前記第2突出部は、突出方向先端部に近づくほど上に位置するように形成されているものである。
【0015】
この構成によれば、吊り下げ部材によって薬剤放散器本体を吊り下げる際に、第1突出部及び第2突出部の下方にドアノブの一部が位置付けられるように吊り下げ部材を配置した後、その吊り下げ部材を下ろしていくと、ドアノブの一部が第1突出部や第2突出部に下から当たることがある。このとき、第1突出部及び第2突出部は、突出方向先端部に近づくほど上に位置するように形成されているので、その形状によってドアノブの一部を第1突出部の突出方向先端部と、第2突出部の突出方向先端部との間に導くことができる。これにより、第1突出部の突出方向先端部及び第2突出部の突出方向先端部、即ち、第1当接部及び第2当接部をドアノブの一部の確実に当接させることができる。
【0016】
第5の開示では、前記第1当接部及び前記第2当接部は上方へ延びるように形成されるとともに、互いに対向するように配置されているものである。この構成によれば、第1当接部及び第2当接部の上下方向の寸法が長くなるので、様々な形状のドアノブに確実に当接させることができる。
【0017】
第6の開示では、前記第1突出部及び前記第2突出部が上下方向に可撓する可撓性を有しているものである。この構成によれば、例えばドアノブが太い場合には第1突出部及び第2突出部を上方へ撓ませることによって第1当接部と第2当接部との間隔を広げ、太いドアノブに対応する間隔にすることができる。
【0018】
第7の開示では、前記吊り下げ部材がドアノブに上方から当接する第3当接部を有しているので、例えば第1当接部及び第2当接部を径方向両側から当接させることができないような形状のドアノブであっても、第3当接部をそのドアノブの上方から当接させることで、吊り下げ部材が安定し、ひいては薬剤放散器本体も安定させることができる。
【0019】
第8の開示では、複数の前記第3当接部が前記第1縦方向部及び前記第2縦方向部の離間方向に離れて設けられているので、吊り下げ部材をより一層安定させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本開示によれば、吊り下げ部材の第1当接部及び第2当接部をドアノブに対して径方向両側から当接させるようにしたので、吊り下げ部材をレバー式のドアノブに吊り下げて使用する場合であっても、薬剤放散器のドアノブからの落下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る薬剤放散器を正面側から見た斜視図である。
図2】上記薬剤放散器の正面図である。
図3】上記薬剤放散器の右側面図である。
図4】上記薬剤放散器を背面側から見た斜視図である。
図5】上記薬剤放散器の分解斜視図である。
図6図2におけるVI-VI線断面図である。
図7】上記薬剤放散器を握り玉タイプのドアノブに吊り下げて使用する場合を示す斜視図である。
図8】上記薬剤放散器を握り玉タイプのドアノブに吊り下げて使用する場合を示す側面図である。
図9図8におけるXI-XI線断面図である。
図10】上記薬剤放散器をレバー式のドアノブに吊り下げて使用する場合を示す斜視図である。
図11】吊り下げ部材の当接部がドアノブに干渉してドアノブから抜けるのが抑制される様子を示す図10相当図である。
図12】比較例に係り、吊り下げ部材がドアノブから抜ける様子を示す図である。
図13】上記薬剤放散器をバー式のドアノブに吊り下げて使用する場合を示す斜視図である。
図14】上記薬剤放散器をバー式のドアノブに吊り下げて使用する場合を示す側面図である。
図15図14におけるXV-XV線断面図である。
図16】実施形態の変形例1に係る吊り下げ部材の上側部分を示す正面図である。
図17】実施形態の変形例2に係る吊り下げ部材の上側部分を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る薬剤放散器1を示すものである。薬剤放散器1は、薬剤放散器本体10と、薬剤放散器本体10を吊り下げるための長尺状吊り下げ部材40とを備えている。薬剤放散器本体10は、蒸発する薬剤を保持した薬剤保持体11と、該薬剤保持体11を収容する容器20とを備えており、容器20に形成された多数の薬剤放散用の開口部21a及び開口部22a(図4に示す)から薬剤を容器20の外部に放散させるように構成されている。尚、吊り下げ部材40は薬剤放散器本体10に対して取り外し可能に設けられている。
【0024】
この実施形態の説明では、使用状態における薬剤放散器1の正面側を前側とし、背面側を後側とし、使用状態の薬剤放散器1を正面から見たときの左側を薬剤放散器1の左側とし、右側を薬剤放散器1の右側とする。従って、薬剤放散器1の幅方向は左右方向となる。この方向の定義は説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用時にどちら側が右であってもよい。
【0025】
薬剤放散器1は、風が吹くところで使用するのが好ましいが、ほぼ無風下で使用することもできる。なお、薬剤放散気1はドアノブ等に吊り下げて使用することを想定しており(後述)、その後ろ側にはドアが位置する。従って、風が吹くところで使用する場合、薬剤放散器1の前側から風が当たることが通常の使用態様となる。この実施形態では、薬剤放散器1の前側を空気流れ方向上流側とし、薬剤放散器1の後側を空気流れ方向下流側とする。自然条件下では風向きが常に一定ではないので、薬剤放散器1の前側から風が当たることもあれば、斜め前方や左右から当たることもある。
【0026】
(薬剤保持体11の構成)
薬剤保持体11は、例えば不織布等の布材や網状の部材、スポンジ状の部材等で構成することができ、厚み方向(表裏方向)に通気性を有している。薬剤保持体11は、例えば平坦な形状であってもよいし、図5に示すようにプリーツ状をなすように折曲げ成形された形状であってもよい。また、薬剤保持体11の外形状は、矩形状や三角形状等の多角形状であってもよいし、円形状や楕円形状であってもよい。1つの容器20に複数の薬剤保持体11を収容することもできる。この場合、複数の薬剤保持体11を厚み方向に重ねて収容してもよいし、上下方向や左右方向に並べて収容してもよい。
【0027】
この実施形態では、薬剤保持体11は、プリーツ状をなすように折り曲げ成形されている。プリーツの山と谷の連続する方向は容器20の左右方向(幅方向)である。薬剤保持体11には、常温で徐々に揮発する性質(常温揮散性)を有する薬剤を含浸させている。
【0028】
常温揮散性とは、常温(例えば25℃)において空気中に揮散する性質のことであり、例えば、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上0.1Pa以下の薬剤を挙げることができる。この薬剤の種類は特に限定されないが、例えば虫忌避剤、殺虫剤、消臭剤、除菌剤、芳香剤、抗ウイルス剤(ウイルス不活性化剤)等を挙げることができ、これらのうち1種のみであってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。具体的には、ピレスロイド系化合物からなる殺虫剤としては、例えばトランスフルトリン、メトフルトリン等を挙げることができ、これらピレスロイド系化合物については、各種の光学異性体または幾何異性体が存在するが、いずれの異性体類も使用することができ、また、単独で使用するだけなく、2種以上を併用することもできる。また、上記薬剤は、エステル化合物等であってもよい。また、上記薬剤は、例えば、ディート(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、イカリジン(2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボン酸 1-メチルプロピル)等であってもよい。上記薬剤の複数種混合して使用することもできる。
【0029】
薬剤には、殺虫成分や虫忌避成分を溶解する溶剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、共力剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネート等の抗菌剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール等の防カビ剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、ヒバ油、ヒノキ油、竹エキス、ヨモギエキス、キリ油、緑茶精油、リモネン等の芳香剤や消臭剤が含有されていてもよい。
【0030】
薬剤は、薬剤保持体11に含浸させることができる。薬剤の揮散量は、気温が25℃、薬剤保持体11に吹き付けられる空気の流速が0.1~1.5m/秒の時に、1時間あたり0.01~0.6mg程度に設定することができるが、これは一例であり、この範囲外であってもよい。薬剤の揮散量は、溶剤の種類や、薬剤保持体11の構造や大きさ、表面積、薬剤保持体11を構成する素材、目付量等で変更することができる。
【0031】
また、薬剤は、薬剤保持体11に塗布したり、噴霧することによって付着させることができ、これによっても薬剤を薬剤保持体11に保持させることができる。薬剤保持体11を構成する材料に薬剤を練り込むことによっても、薬剤を薬剤保持体11に保持させることができる。薬剤を薬剤保持体11に保持させる方法はどのような方法であってもよい。
【0032】
(容器20の構成)
図2に示すように、容器20は、全体として上下方向の寸法が幅方向の寸法よりも長い縦長形状とされている。容器20の厚みは、幅方向の寸法よりも短く設定されており、これにより、容器20は、厚肉な板状となっている。薬剤保持体11は、容器20内において上下方向に延びる姿勢で収容されている。薬剤保持体11の外形状と、容器20の内側の形状とは、略一致しているか、もしくは略相似である。容器20の内側の大部分に薬剤保持体11が存在している。容器20の厚み(表裏方向の寸法)は、薬剤保持体11の厚みと略等しいか、もしくは容器20の厚みの方が厚くなっている。薬剤保持体11がプリーツ状である場合には、薬剤保持体11の厚みが厚くなるので、そのことに対応するように容器20の厚みも厚くすることができる。また、薬剤保持体11は、容器20に保持することができる。尚、図示しないが、容器20は、左右方向に長い横長形状であってもよいし、正方形状であってもよいし、例えば五角形以上の多角形状であってもよい。
【0033】
図5に示すように、容器20は、前側部材21と後側部材22とを備えており、前側部材21と後側部材22とを組み合わせて一体化することで、容器20を得ることができる。前側部材21と後側部材22とは、例えば係合爪を用いた方法や溶着法等の周知の結合方法によって一体化した状態を保持できる。尚、容器20は、1つの部材で構成されていてもよいし、3つ以上の部材で構成されていてもよい。
【0034】
前側部材21と後側部材22とは、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン等の硬質樹脂材で構成されており、具体的には薬剤保持体11を構成する部材よりも硬く、変形し難い材料ならなるものである。前側部材21と後側部材22とは同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0035】
前側部材21は、前側枠状部21bと、複数の前側ルーバー部21cとを有している。前側枠状部21bは上下方向に長くなっており、薬剤保持体11の周囲を囲む形状とされている。前側枠状部21bの上部には、左側切欠部21eと右側切欠部21fとが互いに左右方向に間隔をあけて形成されている。すなわち、前側枠状部21bの上部は左右方向に延びていて、容器20の上壁部の一部を構成する部分であり、当該容器20の外部に臨んでいる。この前側枠状部21bの上部における左右方向中央部よりも左側に左側切欠部21eが形成され、前側枠状部21bの上部における左右方向中央部よりも右側に右側切欠部21fが形成されている。図示しないが、左側切欠部21e及び右側切欠部21fの代わりに、例えば孔部、貫通孔等を形成してもよい。
【0036】
前側ルーバー部21cは、左右方向に延びており、前側枠状部21bと一体成形されている。前側ルーバー部21cの左端部が前側枠状部21bの左側部と接続され、前側ルーバー部21cの右端部が前側枠状部21bの右側部と接続されている。図3及び図6に示すように、複数の前側ルーバー部21cは互いに上下方向に間隔をあけて設けられており、上下方向に隣り合う前側ルーバー部21c、21cの間に薬剤放散用の開口部21aが開口している。前側ルーバー部21cが左右方向に長い形状であることから、薬剤放散用の開口部21aも左右方向に長いスリット形状になる。
【0037】
前側ルーバー部21cの向きは任意に設定することができる。この実施形態では、前側部材21の上下方向中央部よりも上に位置する前側ルーバー部21cは下向きとされ、前側部材21の上下方向中央部よりも下に位置する前側ルーバー部21cは上向きとされている。図示しないが、前側ルーバー部21cは上下方向に延びていてもよいし、斜め方向に延びていてもよい。また、前側部材21にはルーバーを形成することなく、薬剤放散用の開口部21aを開口させてもよい。
【0038】
図4及び図5に示すように、後側部材22は、後側枠状部25と、複数の後側ルーバー部26とを有している。後側枠状部25と複数の後側ルーバー部26は一体成形されている。後側枠状部25は、上下方向に長くなっており、前側部材21と後側部材22とを一体化した状態で前側枠状部21bの後側に重ねて配置される。
【0039】
後側ルーバー部26は、左右方向に延びており、後側枠状部25と一体成形されている。後側ルーバー部26の左端部が後側枠状部25の左側部と接続され、後側ルーバー部26の右端部が後側枠状部25の右側部と接続されている。複数の後側ルーバー部26は互いに上下方向に間隔をあけて設けられており、上下方向に隣り合う後側ルーバー部26、26の間に薬剤放散用の開口部22aが開口している。この開口部22aは、容器20におけるドア100の表面と対向する部分に形成されることになる。後側ルーバー部26が左右方向に長い形状であることから、薬剤放散用の開口部22aも左右方向に長いスリット形状になる。
【0040】
後側ルーバー部26の向きは任意に設定することができる。この実施形態では、後側部材22の上下方向中央部よりも上に位置する後側ルーバー部26は上向きとされ、後側部材22の上下方向中央部よりも下に位置する後側ルーバー部26は下向きとされている。図示しないが、後側ルーバー部26は上下方向に延びていてもよいし、斜め方向に延びていてもよい。また、後側部材22にはルーバーを形成することなく、薬剤放散用の開口部22aを開口させてもよい。
【0041】
後側枠状部25の左側部には、前側へ向けて突出して上下方向に延びる左外側板部23が形成されている。また、後側枠状部25の右側部には、前側へ向けて突出して上下方向に延びる右外側板部24が形成されている。また、後側枠状部25の下部には、前側へ向けて突出して左右方向に延びる下板部27が形成されている。下板部27の左端部は左外側板部23の下端部と連続し、下板部27の右端部は右外側板部24の下端部と連続している。さらに、後側枠状部25の上部には、前側へ向けて突出して左右方向に延びる上板部28が形成されている。左外側板部23、右外側板部24、下板部27及び上板部28は、前側部材21の前側枠状部21bの内側に嵌合するようになっている。
【0042】
また、後側枠状部25の左側部には、左外側板部23よりも右側に左内側板部30が形成されている。この左内側板部30は、前側へ向けて突出し、左外側板部23の延びる方向と同方向(上下方向)に延びている。左外側板部23と左内側板部30との間には、吊り下げ部材40の一部(後述する左側縦方向部41)を収容可能な空間が上下方向に長く形成されている。左外側板部23と左内側板部30との間の空間の上部は、前側部材21の左側切欠部21eと連通しており、左側切欠部21eを介して上方に開放されている。
【0043】
後側枠状部25の右側部には、右外側板部24よりも左側に右内側板部31が形成されている。この右内側板部31は、前側へ向けて突出し、右外側板部24の延びる方向と同方向(上下方向)に延びている。右外側板部24と右内側板部31との間にも、吊り下げ部材40の一部(後述する右側縦方向部42)を収容可能な空間が上下方向に長く形成されている。右外側板部24と右内側板部31との間の空間の上部は、前側部材21の右側切欠部21fと連通しており、右側切欠部21fを介して上方に開放されている。
【0044】
(吊り下げ部材40の構成)
図7図8図10図11図13図15に示すように、吊り下げ部材40は、薬剤放散器本体10を各種ドアノブ101、102、103に吊り下げ可能にするための長尺状の部材である。吊り下げ部材40は、容易に変形可能であり、可撓性を有するとともに柔軟性も有している。さらに、吊り下げ部材40は、長さ調整も可能になっている。吊り下げ部材40を構成する材料としては、軟質樹脂(例えばポリプロピレン等)を挙げることができる。尚、吊り下げ部材40は、長尺状以外の形状であってもよい。
【0045】
ここでドアノブ101、102、103について説明する。図7及び図8に示すドアノブ101は、いわゆる握り玉タイプのドアノブであり、ドア100の表面(または裏面)から水平方向に突出した円柱状または球状に近い形状の握り玉101aを有している。この握り玉101aを握り、水平方向に延びる回動中心線X(図8に示す)周りに回動操作することで、ドア100を開けることができる。
【0046】
図10及び図11に示すドアノブ102は、いわゆるレバー式のドアノブである。レバー式のドアノブ102は、ドア100の表面(または裏面)から水平方向に突出した付け根部分102aと、付け根部分102aの先端部から略直角に折れ曲がって水平方向へ延びるレバー部102bとを有している。レバー部102bを持って水平方向に延びる回動中心線X(図10に示す)周りに回動操作することで、ドア100を開けることができる。
【0047】
図13図15に示すドアノブ103は、いわゆるバー式のドアノブである。バー式のドアノブ103は、ドア100の表面(または裏面)から水平方向に突出した上側支持部103a及び下側支持部103bと、上側支持部103aから下側支持部103bまで延びる操作バー103cとを有している。操作バー103cを持って手前側に引っ張るように操作することで、ドア100を開けることができる。
【0048】
吊り下げ部材40を使用することで、上述したどのドアノブ101、102、103にも薬剤放散器本体10を吊り下げることができる。また、上述したドアノブ101、102、103以外のドアノブにも薬剤放散器本体10を吊り下げることができる。
【0049】
図5に示すように、吊り下げ部材40は、上下方向に延びる左側縦方向部(第1縦方向部)41及び右側縦方向部(第2縦方向部)42と、左側縦方向部41の上部から右側縦方向部42の上部まで延び、左側縦方向部41及び右側縦方向部42の上部同士を接続する接続部43とを有している。左側縦方向部41と右側縦方向部42とは左右方向に互いに間隔をあけて配置される。左側縦方向部41、右側縦方向部42及び接続部43は一体成形することができるが、それぞれ別部材で構成することもでき、別部材で構成した場合には互いに接続することで1つの吊り下げ部材40とすることができる。
【0050】
左側縦方向部41の上側部分は下側部分に比べて幅広に形成された左側幅広部41aとされている。左側縦方向部41の左側幅広部41aよりも下側部分は、前側部材21の左側切欠部21eから後側部材22の左外側板部23と左内側板部30との間に挿入される部分である。左側縦方向部41の左側幅広部41aよりも下側部分には、左側へ突出する複数の左側突起41bが上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。各左側突起41bは、前側部材21の左側切欠部21eの左縁部に下方から引っ掛かって係合する。
【0051】
また、右側縦方向部42の上側部分は下側部分に比べて幅広に形成された右側幅広部42aとされている。右側縦方向部42の右側幅広部42aよりも下側部分は、前側部材21の右側切欠部21fから後側部材22の右外側板部24と右内側板部31との間に挿入される部分である。右側縦方向部42の右側幅広部42aよりも下側部分には、右側へ突出する複数の右側突起42bが上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。各右側突起42bは、前側部材21の右側切欠部21fの右縁部に下方から引っ掛かって係合する。
【0052】
図7に示す握り玉タイプのドアノブ101や図10に示すレバー式のドアノブ102では、吊り下げ部材40を掛ける部分が小さいので、左側縦方向部41及び右側縦方向部42の下側部分を容器20内に入れて上にある左側突起41b及び右側突起42bを左側切欠部21e及び右側切欠部21fの縁部にそれぞれ係合させ、吊り下げ部材40を短くしておくことができる。
【0053】
一方、図13に示すバー式のドアノブ103では、吊り下げ部材40を掛ける部分が大きいので、左側縦方向部41及び右側縦方向部42の下側部分を容器20内から出して下にある左側突起41b及び右側突起42bを左側切欠部21e及び右側切欠部21fの縁部にそれぞれ係合させ、吊り下げ部材40を長くしておくことができる。左側突起41b及び右側突起42bが複数設けられているので、吊り下げ部材40の長さは多段階に調整することができる。吊り下げ部材40の長さを調整することで、ドアノブ101、102、103以外にも、例えば竿や枝に薬剤放散器本体10を吊り下げることもできる。吊り下げ部材40の長さの調整機構は上述した機構に限られるものではなく、例えば吊り下げ部材40の全長を変えることができるようにしたものであってもよい。また、吊り下げ部材40の長さは所定長さに固定されていてもよい。
【0054】
接続部43は、左側幅広部41aの上部から右側幅広部42aの上部に達するまで延びている。接続部43の幅は、左側幅広部41a及び右側幅広部42aの幅と同じに設定されている。接続部43の幅が広くなっていることで、吊り下げた状態の薬剤放散器本体10を安定させることができる。また、接続部43は、左右方向の中央部が最も上に位置するように湾曲ないし屈曲している。図9に示すように、接続部43の左右方向中央部にドアノブ101の小径部分の外周面が当たるようになっている。ドアノブ101の小径部分は、ドア100に固定された部分であり、握り玉101aと共に回動しない。接続部43は、左右方向に直線状に延びる形状であってもよい。
【0055】
吊り下げ部材40は、左側突出部(第1突出部)44及び右側突出部(第2突出部)45を有している。左側突出部44及び右側突出部45は吊り下げ部材40に一体成形されているが、左側突出部44及び右側突出部45を別部材として吊り下げ部材40の本体部分に組み付けるようにしてもよい。
【0056】
左側突出部44は、左側縦方向部41の左側幅広部41aから右側縦方向部42へ接近する方向、即ち右側へ向けて突出している。左側突出部44は、突出方向先端部に近づくほど上に位置するように傾斜ないし湾曲形成されている。右側突出部45は、右側縦方向部42の右側幅広部42aから左側縦方向部41へ接近する方向、即ち左側へ向けて突出している。右側突出部45も、突出方向先端部に近づくほど上に位置するように傾斜ないし湾曲形成されている。左側突出部44及び右側突出部45は、上下方向に撓む可撓性を有しており、例えば下から押し上げるような力が左側突出部44及び右側突出部45に作用した場合、左側突出部44及び右側突出部45は上へ撓み変形し、その力が除かれると、元の形状に復元する。押し下げるような力が作用した場合も同様である。
【0057】
左側突出部44の突出方向先端部(右端部)は、左側幅広部41aと右側幅広部42aとの中央よりも左寄りに位置している。また、右側突出部45の突出方向先端部(左端部)は、左側幅広部41aと右側幅広部42aとの中央よりも右寄りに位置している。したがって、左側突出部44の突出方向先端部と、右側突出部45の突出方向先端部とは、左側幅広部41a及び右側幅広部42aの離間方向に離れて配置されることになる。その結果、左側突出部44の突出方向先端部と、右側突出部45の突出方向先端部との間には、図9に示すようにドアノブ101の小径部分を入れることが可能な隙間が形成される。左側突出部44及び右側突出部45を上方へ撓ませると、左側突出部44の突出方向先端部と右側突出部45の突出方向先端部との間隔は広くなる。つまり、左側突出部44の突出方向先端部と右側突出部45の突出方向先端部との間隔を無段階に調整することができる。
【0058】
左側突出部44の突出方向先端部は、ドアノブ101の小径部分に対して左側から当接する左側当接部(第1当接部)44aとされている。また、右側突出部45の突出方向先端部は、ドアノブ101の小径部分に対して右側から当接する右側当接部(第2当接部)45aとされている。つまり、図9に示すように、左側当接部44a及び右側当接部45aは、回動中心線X(図8に示す)の径方向のうち、水平方向両側からドアノブ101の小径部分に当接する。
【0059】
左側当接部44a及び右側当接部45aの間隔をドアノブ101の小径部分の径よりも小さくしておくことで、左側当接部44a及び右側当接部45aはドアノブ101の小径部分を左右方向から挟持することができる。左側当接部44a及び右側当接部45aでドアノブ101の小径部分を挟持することにより、薬剤放散器本体10が安定する。特に、左側突出部44及び右側突出部45を撓ませた状態で左側当接部44a及び右側当接部45aはドアノブ101に当接させると、吊り下げ部材40が動き難くなり、より一層安定する。
【0060】
左側当接部44a及び右側当接部45aは、それぞれ上方へ延びるように形成されている。さらに、左側当接部44a及び右側当接部45aは、互いに対向するように配置されている。すなわち、ドアノブ101の小径部分の径が異なる場合があるが、左側当接部44a及び右側当接部45aが上下方向に延びていることで、ドアノブ101の小径部分の径の差を許容して左側当接部44a及び右側当接部45aをドアノブ101の小径部分に確実に当接させることができる。
【0061】
さらに、吊り下げ部材40は、左下側当接面(第3当接部)44bと右下側当接面(第3当接部)45bとを有している。左下側当接面44bは、左側突出部44の下面で構成されており、従って左右方向に長い面とされるとともに、右側へいくほど上に位置するように傾斜ないし湾曲している。右下側当接面45bは、右側突出部45の下面で構成されており、従って左右方向に長い面とされるとともに、左側へいくほど上に位置するように傾斜ないし湾曲している。左下側当接面44bと右下側当接面45bとは、互いに左右方向に離れて設けられている。
【0062】
図14に示すドアノブ103に吊り下げ部材40を掛けた時には、図15に示すように、左下側当接面44b及び右下側当接面45bがドアノブ103の一部である下側支持部103bにその上方から当接する。これにより、薬剤放散器本体10が安定する。
【0063】
(吊り下げ部材40の変形例)
図16は変形例1に係る吊り下げ部材40を示すものである。変形例1の吊り下げ部材40の接続部43の左側には、下方へ突出する左側突出部300が形成され、その左側突出部300は、上下方向中央部が最も左に位置するように湾曲している。また、接続部43の右側には、下方へ突出する右側突出部301が形成され、その右側突出部301は、上下方向中央部が最も右に位置するように湾曲している。左側突出部300及び右側突出部301は可撓性を有している。
【0064】
左側突出部300と右側突出部301との間に、図7に示す握り玉タイプのドアノブ101の小径部分が挿入される。左側突出部300の右側面300a及び右側突出部301の左側面301aとは、ドアノブ101の小径部分に水平方向両側から当接する第1当接部及び第2当接部である。左側突出部300と右側突出部301の下端部同士の離間距離は、ドアノブ101の小径部分の径よりも短く設定されている。ドアノブ101の小径部分を左側突出部300と右側突出部301との間に挿入する際には、ドアノブ101の小径部分を左側突出部300と右側突出部301の下端部の間に下方から押し付ける。そうすると、左側突出部300と右側突出部301が互いに左右方向に開くように撓み変形してドアノブ101の小径部分が通過する。ドアノブ101の小径部分が通過すると、左側突出部300と右側突出部301の形状が復元する。図10に示すレバー式のドアノブ102に吊り下げる際には、左側突出部300の右側面300a及び右側突出部301の左側面301aが、付け根部分102aに対して水平方向両側から当接する。
【0065】
左側突出部300の下部には、左右方向に延びる左下面300bが形成されている。また、右側突出部301の下部には、左右方向に延びる右下面301bが形成されている。図13に示すバー式のドアノブ103に吊り下げる際には、左下面300b及び右下面301bが下側支持部103bにその上方から当接する。
【0066】
図17は変形例2に係る吊り下げ部材40を示すものである。変形例2の吊り下げ部材40の接続部43には、上方へ突出するとともに湾曲形成された部分が設けられている。すなわち、接続部43の左側には、上方へ突出する左側突出部302が形成され、その左側突出部302は、上下方向中央部が最も左に位置するように湾曲している。また、接続部43の右側には、上方へ突出する右側突出部303が形成され、その右側突出部303は、上下方向中央部が最も右に位置するように湾曲している。さらに、左側突出部302の上部から右側突出部303の上部まで延びる上側部304を有している。左側突出部302、右側突出部303及び上側部304は可撓性を有している。
【0067】
左側突出部302と右側突出部303との間に、図7に示す握り玉タイプのドアノブ101の小径部分が挿入される。左側突出部302の右側面302a及び右側突出部303の左側面303aとは、ドアノブ101の小径部分に水平方向両側から当接する第1当接部及び第2当接部である。左側突出部302と右側突出部303の下端部同士の離間距離は、ドアノブ101の小径部分の径よりも短く設定されている。ドアノブ101の小径部分を左側突出部302と右側突出部303との間に挿入する際には、ドアノブ101の小径部分を左側突出部302と右側突出部303の下端部の間に下方から押し付ける。そうすると、左側突出部302と右側突出部303が互いに左右方向に開くように上側部304が撓み変形してドアノブ101の小径部分が通過する。ドアノブ101の小径部分が通過すると、左側突出部302、右側突出部303及び上側部304の形状が復元する。図10に示すレバー式のドアノブ102に吊り下げる際には、左側突出部302の右側面302a及び右側突出部303の左側面303aが、付け根部分102aに対して水平方向両側から当接する。
【0068】
左側突出部302の下部には、左右方向に延びる左下面302bが形成されている。また、右側突出部303の下部には、左右方向に延びる右下面303bが形成されている。図13に示すバー式のドアノブ103に吊り下げる際には、左下面302b及び右下面303bが下側支持部103bにその上方から当接する。
【0069】
(衝撃吸収部50の構成)
図4に示すように、薬剤放散器本体10は、ドア100との接触部分に、該ドア100との接触時に弾性変形することによって衝撃を吸収する衝撃吸収部50を有している。衝撃吸収部50は、容器20と一体成形されている。具体的には、容器20の後側を構成している後側部材22の下部に同材料で一体成形されている。これにより、後側部材21と衝撃吸収部50とが1つの部品で構成されることになるので、衝撃吸収部50を設けるに当たって部品点数の増加を回避できる。また、後側部材21と衝撃吸収部50とが一体化していることで、衝撃吸収部50の脱落を防止できる。
【0070】
尚、衝撃吸収部50は前側部材21に設けてもよい。また、衝撃吸収部50は容器20とは別部品で構成してもよく、この場合、衝撃吸収部50を容器20に取り付けて固定すればよい。また、衝撃吸収部50の材質と、容器20の材質とは異なっていてもよく、この場合、衝撃吸収部50の材質を容器20の材質よりも柔らかいものとするのが好ましい。
【0071】
図3及び図6に示すように、衝撃吸収部50は、容器20の下部からドア101側へ向けて突出し、かつ、容器20の下部から下方へ突出するように設けられている。すなわち、衝撃吸収部50は、容器20の下部から当該容器20の外方である後方へ突出する突出部51と、突出部51の突出方向先端部(後端部)からドア101の表面に沿う方向に延びる延出部52とを備えている。尚、衝撃吸収部50は、容器20から下方へ突出しないように設けてもよい。
【0072】
突出部51は、後側部材22の下部の左右方向中間部(幅方向中間部)に位置しており、図6に示すように下端部に近づくほど後に位置するように傾斜ないし湾曲している。この突出部51は、その下端部に対して前後方向の力が作用すると、その力が作用した方向に撓むように突出部51が弾性変形し、その力が除かれると、元の形状に復元する。突出部51は、板状であってもよいし、柱状や棒状であってもよい。
【0073】
延出部52は、突出部51から左側及び右側の両方(容器20の幅方向両側)へ延出している。延出部52の左端部は、容器20の左端部近傍に位置しており、また、延出部52の右端部は、容器20の右端部近傍に位置している。図3図6に示すように、延出部52は、容器20の後面よりも後方に突出している。このため、図8図14に示すように、薬剤放散器本体10をドアノブ101、103に吊り下げると、ドア100の表面には延出部52が接触し、容器20の後面は接触しないようになる。延出部52が左右方向に延びているので、容器20の下の角がドア100の表面に接触することもない。延出部52は、板状であってもよいし、柱状や棒状であってもよい。
【0074】
延出部52も弾性変形可能である。例えば、延出部52の左端部や右端部に対して前後方向の力が作用すると、その力が作用した方向に撓むように延出部52が弾性変形し、その力が除かれると、元の形状に復元する。延出部52の左端部にのみ、または延出部52の右端部にのみ前後方向の力が作用すると、突出部51には捻れ方向の力が作用することになり、この場合、突出部51は捻れるように弾性変形することもある。
【0075】
突出部51及び延出部52の硬さ(変形しやすさ)は、その肉厚や形状、各部の寸法等によって任意に変更できる。この実施形態では、後述するように薬剤放散器本体10が風にあおられてドア100の表面に接触した時に突出部51及び延出部52が衝撃を吸収して接触時の音が小さくなるようにしている。例えば、薬剤放散器本体10が勢いよくドア100の表面に接触したとしても、容器20がドア100の表面には接触しないように、突出部51及び延出部52の硬さを設定しておくのが好ましい。このような硬さの設定は、実際の使用状況を再現した試験等によって決定することができる。
【0076】
図示しないが、衝撃吸収部50は複数設けてもよい。例えば容器20の左側と右側とにそれぞれ衝撃吸収部50を設けてもよいし、容器20の左側、右側及び中央部にそれぞれ衝撃吸収部50を設けてもよい。また、衝撃吸収部50は、例えばゴムや発泡材等の弾性材で構成されていてもよい。この場合、弾性材を容器20に接着等によって取り付けることができる。
【0077】
また、衝撃吸収部50は、容器20の前側に設けてもよい。使用者が容器20の前後を反対にして使用する場合が考えられ、前後反対とされた場合には容器20の前側に設けられている衝撃吸収部50がドア100の表面に接触することになる。また、衝撃吸収部50は、容器20の上下方向中間部や上部に設けてもよい。
【0078】
(実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、吊り下げ部材40を使用して薬剤放散器本体10をドアノブ101、102、103に吊り下げて使用することができる。図7図9に示す握り玉タイプのドアノブ101に吊り下げた場合には、吊り下げ部材40の左側当接部44a及び右側当接部45aをドアノブ101の小径部分に当接させて薬剤放散器本体10を安定させることができる。
【0079】
また、図10に示すレバー式のドアノブ102に吊り下げた場合には、薬剤放散器1の脱落を抑制することができる。すなわち、吊り下げ時には吊り下げ部材40が付け根部分102aに位置するように配置ことで、吊り下げ部材40が付け根部分102aの先端部へ向けて移動したとしても、水平方向に延びるレバー部102aに引っ掛かって薬剤放散器1の脱落は抑制されると思われる。
【0080】
ここで、図12に示す比較例について説明すると、この比較例に係る薬剤放散器200は実施形態と同様な薬剤放散器本体201を備えているが、吊り下げ部材202には当接部が設けられていない。この比較例において、薬剤放散器本体201が受ける風は突然向きを変えたり、強弱を繰り返したりすることがあり、その風の影響により、薬剤放散器本体201が矢印203で示すような力を受けると、吊り下げ部材201が付け根部分102aからレバー部102bまで移動してしまい、その後、レバー部102bの端まで水平方向に移動し、その結果、薬剤放散器200が落下してしまうことがある。
【0081】
これに対し、本実施形態では、図11に示すように薬剤放散器本体10が矢印203で示すような力を受けたとしても、ドアノブ102の付け根部分102aとレバー部102bとは略直交する関係で一体化されており、しかも、その付け根部分120aに対して吊り下げ部材40の左側当接部44a及び右側当接部45aが径方向両側から当接しているので、レバー部102bへ向けての移動が左側当接部44a及び右側当接部45aによって抑制される。その結果、薬剤放散器1がドアノブ102から落下し難くなる。
【0082】
また、図14及び図15に示すバー式のドアノブ103に吊り下げた場合には、左下側当接面44b及び右下側当接面45bが下側支持部103bにその上方から当接するので、薬剤放散器本体10が安定する。
【0083】
また、薬剤放散器本体10をドアノブ101、102、103に吊り下げて使用している時に、薬剤放散器本体10が風にあおられてドア100から離れた後、風向きや風の強さが急に変わってドア100の表面に勢いよく接触することがある。このとき、薬剤放散器本体10の衝撃吸収部50がドア100に接触して弾性変形し、ドア100に接触したときの衝撃が吸収される。これにより、薬剤放散器本体10の容器20がドア100に接触したときに発生する音が低減される。つまり、薬剤放散器本体10が風にあおられてドア100に接触した時に弾性変形するように衝撃吸収部50の弾性率(バネ定数)が設定されている。
【0084】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明に係る薬剤放散器は、各種ドアノブに吊り下げて使用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 薬剤放散器
10 薬剤放散器本体
11 薬剤保持体
20 容器
21a、22a 開口部
40 吊り下げ部材
41 左側縦方向部(第1縦方向部)
42 右側縦方向部(第2縦方向部)
43 接続部
44 左側突出部(第1突出部)
44a 左側当接部(第1当接部)
44b 左下側当接面(第3当接部)
45 右側突出部(第2突出部)
45a 右側当接部(第2当接部)
45b 右下側当接面(第3当接部)
50 衝撃吸収部
51 突出部
52 延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17