(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】積層パネル、積層パネルの製造方法、耐火壁、反応性耐熱組成物、反応性耐熱組成物の調製方法、耐熱構造体、及び耐熱構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240702BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20240702BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240702BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240702BHJP
E04C 2/24 20060101ALI20240702BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E04B1/94 V
B32B5/02 B
B32B7/027
C09K21/02
E04C2/24 P
E04C2/26 Q
E04C2/26 U
(21)【出願番号】P 2021210537
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021009814
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591043293
【氏名又は名称】加島 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】加島 道夫
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05190610(US,A)
【文献】特開2020-186164(JP,A)
【文献】特開2020-190340(JP,A)
【文献】特開平06-123141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
B32B 5/02,7/027
E04C 2/24,2/26
C09K 21/02
C03C 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材の少なくとも一面に積層された表層材と、を備え、
前記表層材は、無機繊維集合体と、前記無機繊維集合体に包含された耐熱性組成物と、を含
み、
前記耐熱性組成物は、耐熱性セラミックスと、粘土質性鉱物と、無機酸化物ゾルと、を含み、
前記芯材には、石灰系ボード、鉱物繊維系ボード、セラミック系ボード、木質系ボードから選択される少なくとも1種が用いられていることを特徴とする積層パネル。
【請求項2】
嵩比重が、0.4g/cm
3以上3.5g/cm
3以下である請求項1に記載の積層パネル。
【請求項3】
前記耐熱性セラミックスは、ケイ酸塩類の水和物及び繊維系セラミックスから選択される少なくとも1つである請求項1又は2に記載の積層パネル。
【請求項4】
前記表層材は、1000℃以上の温度域で溶融しない耐熱性能を有している請求項1乃至3のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項5】
前記表層材の表面は、鏡面状の化粧面とされている請求項1乃至4のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項6】
前記表層材の表面は、凹凸状の模様からなる化粧面とされている請求項1乃至4のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項7】
前記粘土質性鉱物は、セピオライトである請求項1乃至6のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項8】
前記表層材において、前記無機繊維集合体は、ガラス繊維、スラグ繊維、アルミナ繊維、及び石綿繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維が用いられている請求項1乃至7のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項9】
前記表層材の表面に積層された被覆材を更に備えている請求項1乃至8のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の積層パネルの製造方法であって、
水系媒体に分散されてスラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を、芯材に積層する第2工程と、
前記無機繊維集合体を、前記芯材とプレス盤との間で加熱圧縮し、前記無機繊維集合体に含浸又は塗布された前記反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結し、表層材を形成する第3工程と、を備えることを特徴とする積層パネルの製造方法。
【請求項11】
前記第3工程において、圧縮率は5%以上35%以下とされ、加熱温度は105℃以上800℃以下とされる請求項10に記載の積層パネルの製造方法。
【請求項12】
前記第3工程において、前記反応性耐熱組成物は、圧縮された前記無機繊維集合体の表面に滲み出し、その滲み出した反応性耐熱組成物から焼成された耐熱性組成物が、前記表層材の表層部分にスキン層を形成する請求項10又は11に記載の積層パネルの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれかに記載の積層パネルの製造方法であって、
水系媒体に分散されてスラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を、プレス盤を用いて加熱圧縮し、前記無機繊維集合体に含浸又は塗布された前記反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結し、表層材を形成する第2工程と、
前記第2工程で形成された前記表層材と、芯材とを貼り合わせる第3工程と、を備えることを特徴とする積層パネルの製造方法。
【請求項14】
前記第2工程において、圧縮率は5%以上35%以下とされ、加熱温度は105℃以上800℃以下とされる請求項13に記載の積層パネルの製造方法。
【請求項15】
前記第2工程において、前記反応性耐熱組成物は、圧縮された前記無機繊維集合体の表面に滲み出し、その滲み出した反応性耐熱組成物から焼成された耐熱性組成物が、前記表層材の表層部分にスキン層を形成する請求項13又は14に記載の積層パネルの製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至9のいずれかに記載の積層パネルによって形成されることを特徴とする耐火壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材の壁材等に用いられる積層パネル、その積層パネルの製造方法、その積層パネルによる耐火壁に関する。また、本発明は、無機繊維集合体の無機繊維を結着する耐熱性組成物を得るために用いる反応性耐熱組成物、その反応性耐熱組成物の調製方法、耐熱構造体、及び耐熱構造体の製造方法及び耐熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋や建築物の壁材等に使用されるものとして、特許文献1から特許文献3に記載のものが提案されている。
即ち、特許文献1には、少なくとも表基材と裏基材からなり、表基材と裏基材は接着剤を介して貼着され、互いに貼着する両貼着面側の、少なくともいずれか一方に形成された凸部と凹部によって、複数の空気層を形成する不燃性積層板が記載されている。また、表基材と裏基材には、珪酸カルシウム板、石膏ボード、スラグ石膏板、ロックウール板、スレート板等からなる無機質板や、これらを積層一体化した複合無機質板、火山性ガラス質複層板が使用される。
特許文献2には、第1建築用基材の片面或いは両面に第1塗膜層を有し、この第1塗膜層が、鱗片状の膨潤性無機化合物と、水膨潤性物質と、ソープフリーのエマルジョン接着剤とが含有されている難燃性塗料組成物で形成されている板状体、あるいは第1建築用基材と第1塗膜層を有する板状体を芯材として、該芯材の表裏面にそれぞれ第2建築用基材が貼着された板状体が記載されている。また、第1建築用基材及び第2建築用基材には、石膏ボード、ケイカル板、火山性ガラス質複層板、金属板、樹脂板、ロックウール板、インシュレーションボード等が使用される。
特許文献3には、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着剤により接着一体化された耐火パネルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-083039号公報
【文献】特開2011-068853号公報
【文献】特開2016-211288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から特許文献3にも記載されているように、家屋や建築物の壁材等には、石膏ボード、セメント板、ケイ酸カルシウム板、ALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)等のような、原料に石灰質やケイ酸質が用いられた耐火パネルが一般に使用されている。耐火パネルは、原料に使用された石灰質やケイ酸質が結晶水等の水分を保持しており、火災等による加熱時には、その水分を蒸発等させて放出することで、加熱に耐えることができる。しかし、こうした耐火パネルは、水分を放出してしまうと割れを発生させるため、この割れによって炎熱を遮ることができなくなり、所望の耐火性能を発揮出来なくなる。このため、耐火性能を高めた耐火パネルが要請されている。
【0005】
本発明は、前述の従来技術の問題点を解決するものであり、耐火性能の向上を図ることができる積層パネル、積層パネルの製造方法、耐火壁を提供することを目的とする。また、本発明は、無機繊維集合体の無機繊維を結着する耐熱性組成物を得るために用いる反応性耐熱組成物であって、耐火性能の向上を図ることができる反応性耐熱組成物、その反応性耐熱組成物の調製方法、耐熱構造体、及び耐熱構造体の製造方法及び耐熱構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決する手段として、本発明は以下のとおりである。
請求項1に記載の積層パネルの発明は、芯材と、前記芯材の少なくとも一面に積層された表層材と、を備え、
前記表層材は、無機繊維集合体と、前記無機繊維集合体に包含された耐熱性組成物と、を含むことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、嵩比重が、0.4g/cm3以上3.5g/cm3以下であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記芯材には、石灰系ボード、金属板、鉱物繊維系ボード、セラミック系ボード、木質系ボードから選択される少なくとも1種が用いられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記表層材は、1000℃以上の温度域で溶融しない耐熱性能を有していることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記表層材の表面は、鏡面状の化粧面とされていることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記表層材の表面は、凹凸状の模様からなる化粧面とされていることを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記表層材は、その表層部分にスキン層を有していることを要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記表層材において、前記無機繊維集合体は、ガラス繊維、スラグ繊維、アルミナ繊維、及び石綿繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維が用いられていることを要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記表層材の表面に積層された被覆材を更に備えていることを要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の積層パネルの製造方法であって、
水系媒体に分散されてスラリー状とされた耐熱性組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記耐熱性組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を、芯材に積層する第2工程と、
前記無機繊維集合体を、前記芯材とプレス盤との間で加熱圧縮して、スラリー状の前記耐熱性組成物を焼結させて、表層材を形成する第3工程と、を備えることを要旨とする。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記第3工程において、圧縮率は5%以上35%以下とされ、加熱温度は105℃以上800℃以下とされることを要旨とする。
請求項12に記載の発明は、請求項10又は11に記載の発明において、前記第3工程において、前記耐熱性組成物は、圧縮された前記無機繊維集合体の表面に滲み出し、焼結されて、前記表層材の表層部分にスキン層を形成することを要旨とする。
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の積層パネルの製造方法であって、
水系媒体に分散されてスラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を、プレス盤を用いて加熱圧縮し、前記無機繊維集合体に含浸又は塗布された前記反応性耐熱組成物を焼結させて耐熱性組成物とし、表層材を形成する第2工程と、
前記第2工程で形成された前記表層材と、芯材とを貼り合わせる第3工程と、を備えることを要旨とする。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記第2工程において、圧縮率は5%以上35%以下とされ、加熱温度は105℃以上800℃以下とされることを要旨とする。
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14に記載の発明において、前記第2工程において、前記反応性耐熱組成物は、圧縮された前記無機繊維集合体の表面に滲み出し、その滲み出した反応性耐熱組成物を焼結させた耐熱性組成物が、前記表層材の表層部分にスキン層を形成することを要旨とする。
請求項16に記載の耐火壁の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の積層パネルによって形成されることを要旨とする。
請求項17に記載の耐熱構造体の発明は、無機繊維集合体の無機繊維を結着する耐熱性組成物を得るために用いる反応性耐熱組成物であって、
耐熱性セラミックスと、粘土質性鉱物と、無機酸化物ゾルと、を含み、
前記耐熱性セラミックスは、ケイ酸塩類の水和物及び繊維系セラミックスから選択される少なくとも1つである、ことを要旨とする。
請求項18に記載の発明は、請求項17に記載の発明において、浸透剤をさらに含むことを要旨とする。
請求項19に記載の発明は、請求項17又は18に記載の発明において、前記ケイ酸塩類の水和物は、含水ケイ酸カルシウム及び含水ケイ酸アルミニウムから選択される少なくとも1つであることを要旨とする。
請求項20に記載の発明は、請求項17乃至19の何れか一項に記載の発明において、前記粘土質性鉱物は、セピオライトであることを要旨とする。
請求項21に記載の発明は、請求項17乃至20の何れか一項に記載の発明において、前記無機酸化物ゾルは、シリカゾルであることを要旨とする。
請求項22に記載の発明は、請求項17乃至21の何れか一項に記載の反応性耐熱組成物の調製方法であって、
水系媒体に対し、粘土質性鉱物を加え、撹拌し、混合分散させる第1の作業と、
第1の作業の後、水系媒体に対し、無機酸化物ゾルを徐々に加え、撹拌し、混合分散させて、増粘させる第2の作業と、
前記第2の作業の後、粉末状とした耐熱性セラミックスを徐々に加え、水系媒中に耐熱性セラミックスが均一に分散するまで撹拌する第3の作業と、を備えることを要旨とする。
請求項23に記載の耐熱構造体の発明は、無機繊維集合体と、前記無機繊維集合体の無機繊維を結着する耐熱性組成物とを含み、
前記耐熱性組成物は、請求項17乃至21の何れか一項に記載の反応性耐熱組成物を焼成して得られたものである、ことを要旨とする。
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載の発明において、前記無機繊維集合体は、ガラス繊維、スラグ繊維、アルミナ繊維、及び石綿繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維を含むことを要旨とする。
請求項25に記載の発明は、請求項23又は24に記載の耐熱構造体の製造方法であって、
水系媒体に分散されてスラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を加熱圧縮し、前記無機繊維集合体に含浸又は塗布された前記反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を得るとともに、前記耐熱性組成物によって前記無機繊維集合体の無機繊維を結着する第2工程と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層パネル、積層パネルの製造方法、耐火壁によれば、耐火性能の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、耐火性能の向上を図ることができる反応性耐熱組成物、その反応性耐熱組成物の調製方法、耐熱構造体、及び耐熱構造体の製造方法及び耐熱構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の積層パネルの1例を示す側断面図である。
【
図2】実施形態の積層パネルの他例を示す側断面図である。
【
図3】実施形態の積層パネルの他例を示す斜視図である。
【
図4】実施形態の積層パネルの他例を示す斜視図である。
【
図5】実施形態の積層パネルの他例を示す側断面図である。
【
図6】実施形態の積層パネルの他例を示す側断面図である。
【
図7】実施形態の耐火壁の1例を示す分解斜視図である。
【
図8】実施形態の耐火壁の他例を示す分解斜視図である。
【
図9】積層パネルの製造方法の第3工程を示す説明図である。
【
図10】実施形態の耐熱構造体の1例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
〔1〕積層パネル
本発明の積層パネルは、芯材と、芯材の少なくとも一面に積層された表層材と、を備えている。
表層材は、無機繊維集合体と、前記無機繊維集合体に包含された耐熱性組成物と、を含むものである。
【0011】
即ち、
図1に示すように、積層パネル10は、芯材11と、芯材11の一面に積層された表層材12とを備えており、板状に形成されている。
表層材12は、複数の無機繊維によって構成された無機繊維集合体21と、無機繊維集合体21に包含された耐熱性組成物22と、を含んでいる。
また、表層材12は、表層部分にスキン層12Aを有している。このスキン層12Aは、耐熱性組成物22によって膜状に形成されており、無機繊維集合体21をほぼ含んでいない。
加えて、表層材12は、内部に複数の気泡23を有している。即ち、積層パネル10は、表層材12の内部の気泡23に空気を保持することができ、断熱性を有している。
【0012】
積層パネル10は、
図1に示すように、芯材11の一面にのみ表層材12が積層された構成とすることができる。
また、積層パネル10は、芯材11の一面にのみ表層材12が積層されることに限らず、
図2に示すように、芯材11の一面と他面の両面に表層材12が積層された構成とすることができる。
積層パネル10は、芯材11と表層材12とを1つずつ有する構成に限らず、複数ずつ有する構成とすることができる。例えば、積層パネル10は、互いに積層された2つの芯材11と、各芯材11の一面にそれぞれ積層された表層材12と、を備えている、つまり芯材11と表層材12を2つずつ有する構成とすることができる。
また、複数の積層パネル10が積層されて1つの積層パネルとする構成とすることもできる。
【0013】
積層パネル10において、表層材12の表面は、
図3に示すように、鏡面状の化粧面15Aとすることができる。
また、積層パネル10において、表層材12の表面は、
図4に示すように、凹凸状の模様からなる化粧面15Bとすることができる。この化粧面15Bについて、凹凸状の模様は、特に限定されず、
図4に示したタイル模様の他に、例えば、木目模様、幾何学模様などとすることができる。
即ち、積層パネル10は、鏡面状の化粧面15Aや凹凸状の模様からなる化粧面15Bを設けることができ、化粧性を有している。
【0014】
積層パネル10は、
図5に示すように、表層材12の表面に積層された被覆材13を更に備えることができる。
積層パネル10は、芯材11の両面に表層材12が積層されている場合、
図6に示すように、芯材11の一面に積層された表層材12の表面にのみ設けることができる。
また、積層パネル10は、芯材11の両面に表層材12が積層されている場合、芯材11の両面に積層された表層材12のそれぞれの表面に設けることもできる。
【0015】
積層パネル10は、嵩比重が、0.4g/cm3以上3.5g/cm3以下であることが好ましく、0.5g/cm3以上2.5g/cm3以下であることがより好ましく、0.6g/cm3以上2.2g/cm3以下であることがさらに好ましい。この場合、積層パネル10は、建築材料の壁材として用いた場合に、十分な圧縮強度と断熱効果を発揮することができる。
なお、上述の嵩比重は、積層パネル10の全体における嵩比重である。つまり、芯材11、表層材12等を備えた状態とした積層パネル10の嵩比重である。
積層パネル10の形状は、板状であれば、特に限定されず、例えば、平板や、あるいは、波板や、曲げ角度が直角や鋭角や鈍角とされた屈曲板や、曲面状とされた曲面板等とすることができる。この積層パネル10の形状は、通常、芯材11の形状に応じたものとすることができる。
【0016】
(1)芯材
上記芯材11は、積層パネル10の骨格とすることを目的として設けられている。
芯材11は、その材料として用いられるものについて、特に限定されない。通常、芯材11は、建築材料で使用されているもの、特に、壁材、天井材、床材等として使用されている板状の建築材料であれば、その材料として何れも用いることができるが、建築材料の中でも防火材料として使用されているものを用いることが好ましい。芯材11の材料に防火材料が用いられる場合、積層パネル10に好適な耐火性能を付与することができる。
なお、防火材料とは、建築基準法において一定の要件を満たしていることを条件に定められた材料である。
【0017】
具体的に、芯材11には、石灰系ボード、金属板、鉱物繊維系ボード、セラミック系ボード、木質系ボードから選択される少なくとも1種を用いることができる。
石灰系ボードとしては、石膏ボード、コンクリート板、セメント板、モルタル板、ケイ酸カルシウム板(以下、略して「ケイカル板」ともいう)、軽量気泡コンクリートパネル(以下、「ALCパネル」ともいう)等が挙げられる。
【0018】
金属板としては、鋼板、カラー鋼板、アルミニウム板、銅板、ステンレス鋼板、真鍮板、トタン板等が挙げられる。
鉱物繊維系ボードとしては、ロックウール板、グラスウール板、炭素繊維板等が挙げられる。
セラミック系ボードとしては、陶磁器板、煉瓦等が挙げられる。
木質系ボードとしては、無垢の木材に不燃性の薬剤を注入する、含浸する等して得られた不燃木材や準不燃木材等によるものが挙げられる。
【0019】
なお、上述の石灰系ボード、金属板、鉱物繊維系ボード、セラミック系ボード、木質系ボードは、2種以上を組み合わせて用いることができ、このようなものとして、例えば、グラスウール混入セメント板、ロックウール混入ケイカル板、ロックウール混入石膏ボード等が挙げられる。
芯材11には、上述したもののうち、入手容易性、耐火性能の観点から、石灰系ボードを用いることが好ましい。
【0020】
芯材11の厚さは、特に限定されない。この厚さは、例えば、上述した芯材11に用いられる材料や、積層パネル10に所望される用途や性能等に適宜応じた値にすることができる。
例えば、材料が石灰系ボードの石膏ボードである場合、芯材11の厚さは、好ましくは9.5mm以上、より好ましくは12.5mm以上、さらに好ましくは15mm以上である。通常、この場合の芯材11の厚さは、100mm以下である。
芯材11の材料が石灰系ボードのケイカル板である場合、芯材11の厚さは、好ましくは4mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。通常、この場合の芯材11の厚さは、50mm以下である。
芯材11の材料が石灰系ボードのALCパネルの場合、芯材11の厚さは、好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上、さらに好ましくは30mm以上である。通常、この場合の芯材11の厚さは、200mm以下である。
【0021】
芯材11の材料が木質系ボードである場合、芯材11の厚さは、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上である。通常、この場合の芯材11の厚さは、100mm以下である。
上述した芯材11の厚さは、1枚の材料のみで達成することができるが、2枚以上の材料を重ね合わせて達成することもできる。
【0022】
芯材11の嵩比重は、特に限定されない。この嵩比重は、例えば、上述した芯材11に用いられる材料や、積層パネル10に所望される用途や性能等に適宜応じた値にすることができる。
芯材11の材料が石灰系ボードの石膏ボードである場合、通常、嵩比重は、好ましくは0.5g/cm3以上2.5g/cm3以下、より好ましくは0.6g/cm3以上1.5g/cm3以下、さらに好ましくは0.6g/cm3以上1g/cm3以下である。
芯材11の材料が石灰系ボードのケイカル板である場合、通常、嵩比重は、好ましくは0.4g/cm3以上1.2g/cm3以下、より好ましくは0.6g/cm3以上1g/cm3以下、さらに好ましくは0.7g/cm3以上0.9g/cm3以下である。
【0023】
芯材11の材料が石灰系ボードのALCパネルである場合、通常、嵩比重は、好ましくは0.2g/cm3以上1g/cm3以下、より好ましくは0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下、さらに好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。
芯材11の材料が木質系ボードである場合、通常、嵩比重は、好ましくは0.3g/cm3以上1.5g/cm3以下、より好ましくは0.4g/cm3以上1g/cm3以下、さらに好ましくは0.5g/cm3以上0.9g/cm3以下である。
【0024】
(2)表層材
上記表層材12は、芯材11の一面に積層されて、その芯材11を被覆することにより、耐火性能を向上させることを目的として設けられている。
即ち、表層材12は、複数の無機繊維によって構成された無機繊維集合体21と、無機繊維集合体21に包含された耐熱性組成物22と、を含んでいる(
図1参照)。この表層材12は、無機繊維集合体21及び耐熱性組成物22を含むことにより、高温度域で溶融し難く、燃焼し難い。
更に、無機繊維集合体21及び耐熱性組成物22を含む表層材12は、所謂、繊維強化セラミックスであり、非常に高い靱性、剛性、耐熱性を有している。このため、表層材12は、高温度域でも芯材11を補強することができ、その芯材11の割れを防止することができる。
また、表層材12は、積層パネル10に断熱性と化粧性を付与するものである。
表層材12は、1000℃以上の温度域で溶融しない耐熱性能を有しているものが好ましい。言い換えると、表層材12は、1000℃以上の温度域でも溶融することがなく、このため、1000℃以上の温度域で燃焼しない耐火性能を有しているものが好ましい。
【0025】
(2-1)無機繊維集合体
無機繊維集合体21は、表層材12に強度をもたせるとともに、積層パネル10に断熱性を付与する目的で、表層材12に含まれている。
無機繊維集合体21は、複数本の無機繊維が絡み合わされることによって形成されている。
無機繊維は、特に限定されないが、不燃性繊維が好ましい。具体的に、無機繊維として、ガラス繊維、スラグ繊維、アルミナ繊維、石綿繊維、他に、炭素繊維、スチールウール、ステンレス繊維等が挙げられる。これらのなかでも、ガラス繊維、スラグ繊維、アルミナ繊維、石綿繊維は、入手容易性、断熱性、耐火性能の観点から、無機繊維としてより好ましい。
無機繊維は、上述したものから選択される1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
無機繊維の繊維径、繊維長さは、特に限定されない。
無機繊維の繊維径は、通常は2μm~30μm、好ましくは5μm~30μm、より好ましくは5μm~20μm、更に好ましくは5~15μmである。
無機繊維の繊維長さの下限は、通常は10mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上、更に好ましくは50mm以上である。無機繊維の繊維長さの上限は、通常は100mm以下、好ましくは80mm以下である。
【0027】
無機繊維集合体21の形状、形態は、特に限定されない。無機繊維集合体21の形状、形態として、シート、ニードルマット、ボード、フェルト、不織布、フィルム状体、紙状体、織物等が挙げられる。
無機繊維集合体21は、その形状、形態に応じて、密度や嵩高さが異なる。
【0028】
無機繊維集合体21の形状、形態が不織布、紙状体、織物等の場合、無機繊維集合体21は、高密度なものとなる。
この場合、無機繊維集合体21は、無機繊維をより多く含むことにより、耐火性能に優れる傾向を有する。具体的に、この場合の、無機繊維集合体21の坪量は、好ましくは150g/m2以上900g/m2以下、より好ましくは200g/m2以上600g/m2以下とすることができる。
【0029】
無機繊維集合体21の形状、形態がシート、ニードルマット、ボード、フェルト等の場合、無機繊維集合体21は、嵩高なものとなる。
この場合、無機繊維集合体21は、気泡23をより多く含むことにより、断熱性に優れる傾向を有する。具体的に、この場合の、無機繊維集合体21の坪量は、上述した高密度なものの坪量の約1/4~1/2程度の値とすることができる。
【0030】
無機繊維集合体21の嵩比重は、特に限定されないが、表層材12が形成された状態の嵩比重で、好ましくは0.2g/cm3以上1.0g/cm3以下、より好ましくは0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下とすることができる。この場合、表層材12の強度と、表層材12によって付与される積層パネル10の断熱性とのバランスを好適なものとすることができる。
無機繊維集合体21は、1層のみが表層材12に含まれてもよく、2層以上が積層された形態として表層材12に含まれてもよい。
無機繊維集合体21の厚さは、特に限定されない。その厚さは、例えば、好ましくは0.05mm~500mm、より好ましくは0.05mm~60mm、更に好ましくは0.05~40mmとすることができる。
なお、上述した無機繊維集合体21の厚さは、無機繊維集合体21全体の厚さとする。即ち、2層以上の無機繊維集合体21が積層された形態で表層材12に含まれる場合、無機繊維集合体21の厚さは、2層以上の無機繊維集合体21の合計の厚さである。
【0031】
(2-2)耐熱性組成物
耐熱性組成物22は、上述した無機繊維集合体21の無機繊維を結着する目的で表層材12に含まれている。この耐熱性組成物22は、反応性耐熱組成物を焼成させて得られ、表層材12中ではセラミック化することにより硬化している。
耐熱性組成物22は、耐熱性を有するものであれば、特に限定されない。具体的に、耐熱性組成物22は、例えば、カオリン系耐熱材、ムライト系耐熱材、アルミナ系耐熱材、ケイ素系耐熱材、シャモット系耐熱材、クロム系耐熱材、カーボランダム系耐熱材、及びマグネシア系耐熱材等から選択され、反応性、耐熱性の観点で、カオリン系耐熱材、ムライト系耐熱材、及びアルミナ系耐熱材などが好ましい。
【0032】
表層材12中における耐熱性組成物22の含有比率は、特に限定されないが、表層材12の質量をM1とし、耐熱性組成物22の質量をM2とした場合に、M1とM2との比(M1/M2)で、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.5~3.5、さらに好ましくは2.0~3.0とすることができる。
この場合、特に1000℃以上の温度域で溶融することがない、優れた耐熱性及び耐火性能を表層材12に付与することができる。
なお、セラミック化した耐熱性組成物22は、反応性耐熱組成物に使用するものの種類によっては結晶構造中に結晶水を有していたり、風化による酸化分解で微粉化される段階で水酸基が生成したりしており、こうした結晶水や水酸基の働きにより、優れた耐熱性を発揮することができる。
【0033】
(2-3)反応性耐熱組成物
上記した耐熱性組成物22を得るための反応性耐熱組成物は、粘土質性鉱物、耐熱性セラミックス、無機酸化物ゾル等を含む。
反応性耐熱組成物は、上述した無機繊維集合体21の無機繊維と反応することにより、無機繊維集合体21の耐熱性を大きく向上させることができる。例えば、無機繊維がガラス繊維の場合、ガラス繊維による無機繊維集合体21は、通常、耐熱性が400℃~800℃であるが、反応性耐熱組成物を用いることにより、その耐熱性を1000℃以上に向上させることができる。
【0034】
〔粘土質性鉱物〕
上記の粘土質性鉱物は、主に耐熱性セラミックスに作用することで、反応性耐熱組成物に粘性を付与し、スラリー状にしやすくするものである。
粘土質性鉱物は、特に限定されず、結晶質粘土鉱物、非晶質粘土鉱物、準晶質粘土鉱物等を用いることができる。これらの中でも、セピオライト、ハロイサイト等の結晶質粘土鉱物が好ましく、特に、セピオライトが好ましい。セピオライトは、含水ケイ酸マグネシウムを主成分とし、温度が変化しても粘性が変化しにくく、高温であっても高い粘性を維持することができる。このため、反応性耐熱組成物を無機繊維集合体21の無機繊維の表面へ好適に密着させ、固相反応を起こさせることにより、耐熱性組成物が無機繊維同士を好適に接合し、高強度の表層材12を得ることができる。
【0035】
セピオライトの組成は、特に限定されないが、SiO2:50重量部~70重量部、MgO2:25重量部以下が好ましい。更に、Al2O3:2重量部~4重量部、CaO:1重量部~2重量部等を含んでもよい。
セピオライトの平均粒径は、特に限定されないが、5μm~10μmが好ましい。この場合、無機繊維の表面への密着はもとより、無機繊維集合体21の内部にまで浸透して固相反応を起こしやすくなる。
セピオライトの比表面積は、特に限定されないが、200m2~400m2であることが好ましく、250m2~350m2であることが更に好ましい。この場合、固相反応の効率を高く維持することができる。
【0036】
粘土質性鉱物は、耐熱性セラミックスと無機酸化物ゾルのみを混合した場合に、耐熱性セラミックスの沈殿が発生する可能性があり、この沈殿を防止するものとしても有用である。粘土質性鉱物、特に粘土鉱物は、反応性耐熱組成物の粘性を大きくするので、無機繊維に対する反応性を高めることができる。
また、無機酸化物ゾルとしてシリカゾルが用いられる場合、粘土質性鉱物としてセピオライトを用いることにより、高温になっても高い粘性を維持できるセピオライトと、低分子で反応性に優れたシリカゾルと、が耐熱性セラミックスと組み合わされることで、高温に耐えられる耐熱性組成物が得られる。
【0037】
〔耐熱性セラミックス〕
上記の耐熱性セラミックスは、主として無機繊維集合体21の無機繊維と反応して耐熱性を向上させるものであり、表層材12の耐熱性は、この耐熱性セラミックスの種類によって調整することができる。
耐熱性セラミックスは、特に限定されない。具体的に、耐熱性セラミックスは、陶土等の天然鉱物のほか、カオリン系セラミックス(カオリナイト等)、ムライト系セラミックス(ムライト等)、アルミナ系セラミックス(アルミナ等)、ケイ素系セラミックス(ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ(ケイ酸)、シリカアルミナ(ケイ酸アルミニウム)等のケイ酸塩類)、シャモット系セラミックス、クロム系セラミックス、カーボランダム系セラミックス、マグネシア系セラミックス、及びリン酸系セラミックス等から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0038】
耐熱性セラミックスは、上述した中でも、ケイ素系セラミックス(ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩類)、カオリン系セラミックス(カオリナイト等)、ムライト系セラミックス(ムライト等)、アルミナ系セラミックス(アルミナ等)が好ましい。これらの中でも、繊維系セラミックス(例えば、ヒドロキシアパタイト等)や、ケイ酸塩類(例えば、ケイ酸カルシウム等)を好適に用いることができる。
さらに、ケイ酸塩類は、例えば、含水ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム等のような、ケイ酸塩類の水和物が好ましい。
耐熱性セラミックスは、希望の耐熱温度(1000℃以上、特に1100℃以上、更に1200℃以上、特に1400℃~1800℃)を得るべく、上述した中から適宜選択することができる。
耐熱性セラミックスの粒径は、特に限定されない。粒径は、反応性を向上させる観点から、小さい粒径であることが好ましく、具体的に、15μm以下であることが好ましい。
【0039】
〔無機酸化物ゾル〕
上記の無機酸化物ゾルは、上述の粘土質性鉱物と混合することで、反応性耐熱組成物を均一なスラリー状とし、無機繊維集合体21に含浸等させることで、均一な硬化反応をさせやすくするものである。また、無機酸化物ゾルは、分散性が良く、粒子が極めて小さいことから固相反応において高い反応性を発揮し、更に無機繊維とのからみに優れることから、耐熱性、結合性が強く強扨な表層材12を形成することができる。
無機酸化物ゾルは、特に限定されないが、水系媒体に無機酸化物が分散、含有された分散液を用いることができる。具体的に、無機酸化物ゾルとして、シリカゾル(コロイダルシリカ)、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を挙げることができる。
無機酸化物ゾル中における無機酸化物の含有量は、特に限定されない。無機酸化物の含有量は、無機酸化物ゾルを100重量部とした場合に、好ましくは20重量部~40重量部、より好ましくは25重量部~35重量部とすることができる。この場合、無機繊維集合体21の無機繊維同士を、容易且つ十分に結着させることができる。
【0040】
無機酸化物ゾルは、上述した中でも、シリカゾル(コロイダルシリカ)、アルミナゾルが好ましい。シリカゾル(コロイダルシリカ)、アルミナゾルは、様々な粒子径、粒度分布、形状などの選択がしやすく、耐熱性、結合性、硬度などの必要な物性に適合することができる。
例えば、シリカゾルは、焼成されると、シリカゾル表面のシラノール基[Si-OH]が化学結合に寄与することで、結着する無機繊維同士の間に多数の接点を生むため、表層材12の強度を大きく向上させることができる。特に、無機繊維がガラス繊維の場合、ガラス繊維同士の隙間にシリカゾルが毛細管現象によって集まり、シラノール基の脱水縮合反応によって、ガラス繊維同士を強固に結合させることができる。
特に、シリカゾルとして繊維性ゾル(アルミナナノファイバーゾル等)は、粘土質性鉱物として繊維性鉱物(セピオライト等)と組み合わせる、更に耐熱性セラミックスとして繊維性セラミックス(ヒドロキシアパタイト等)と組み合わせることにより、耐熱性の更なる向上を図ることができる。
【0041】
〔その他の成分〕
反応性耐熱組成物は、粘土質性鉱物、耐熱性セラミックス、無機酸化物ゾルの3成分の他、所望に応じて、例えば、増粘剤、硬化促進剤、浸透剤等のような、その他の成分を含んでもよい。
増粘剤は、反応性耐熱組成物の粘性を増加させるための補助剤として用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ソーダ、糊料等が挙げられる。増粘剤の含有量は、特に限定されず、反応性耐熱組成物の固形分の合計を100重量部とした場合、通常、2重量部~5重量部である。
硬化促進剤は、反応性耐熱組成物の硬化を促進させるための硬化促進剤として用いられ、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ等が挙げられる。硬化促進剤の含有量は、特に限定されず、反応性耐熱組成物の固形分の合計を100重量部とした場合、通常、0.2重量部~0.5重量部である。
浸透剤は、反応性耐熱組成物を無機繊維集合体21中に浸透しやすくするために用いられ、例えば、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム等が挙げられる。
浸透剤の含有量は、特に限定されず、反応性耐熱組成物の固形分の合計を100重量部とした場合、通常、0.2重量部~1.0重量部である。
【0042】
(3)被覆材
積層パネル10は、上述したとおり、表層材12の表面に積層された被覆材13を更に備えることができる。
被覆材13は、表層材12を保護する目的で設けられる。他の目的として、被覆材13は、積層パネル10に化粧性を付与することで、意匠性の向上を図ることができる。
被覆材13は、表層材12を保護し、意匠性の向上を図ることができるものであれば、いずれのものであっても使用することができ、特に限定されない。被覆材13に使用可能なものとして、例えば、カラー鋼板等の金属板や、合成樹脂や木質材等による化粧板、化粧フィルムや、壁紙、印刷物等の化粧材や、塗料による塗膜などを挙げることができる。
【0043】
具体的に、被覆材13の材料は、特に限定されず、金属材料、塗料(塗膜)、紙材、木質材、不織布や織布等の布材料等を挙げることができる。
金属材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、銅等からなる金属箔や金属板が挙げられる。
塗料は、塗膜を形成するための塗膜形成成分、その塗膜形成成分を分散、溶解等させるための溶剤、他に顔料や添加剤等を含んでいる。この塗膜形成成分としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂(有機材料)や、金属、石質、鉱物、ガラス等の無機材料や、有機材料と無機材料との混合材料等が挙げられる。溶剤や、顔料、添加剤等については、塗膜形成成分に応じたものが適宜用いられ、特に限定されない。
壁紙等の化粧材としては、ビニールクロス、紙クロス、布クロス、木質系クロス、無機質系クロス等を挙げることができる。こうした化粧材の中には、不燃性が付与されたもの、抗菌性が付与されたものもあり、被覆材13として好ましく用いることができる。
【0044】
上述した被覆材13の材料の中でも、金属材料や、塗膜形成成分として無機材料を含む塗料(一般に、「無機塗料」とも呼称される)は、耐火性能の向上、耐久性の向上の観点から、好ましい。
被覆材13の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下とすることができる。通常、被覆材13の厚さは、0.1μm以上である。
【0045】
(4)積層パネルの用途
積層パネル10の用途としては、家屋等の木構造による建物や、ビルディング等の鉄筋コンクリート構造による建物に使用される建築材料が挙げられる。この建築材料としては、具体的に、壁材、天井材、床材、柱材等が例示される。
壁材、天井材、床材、柱材等について、積層パネル10は、壁、天井、床、柱等の構造自体を形成する構造材等と、壁、天井、床、柱等を装飾する化粧材と、の何れにも使用することができる。
【0046】
積層パネル10の用途が壁材の場合、積層パネル10は、内壁、外壁、間仕切り壁などといった固定された壁の壁材の他に、可動間仕切、パーテーションなどのような固定されていない壁の壁材にも使用することができる。
特に、積層パネル10は、芯材11に、石膏ボード、コンクリート板、セメント板、モルタル板、ケイカル板、ALCパネル等の石灰系ボードが用いられている場合、優れた耐力性を有することから、壁材の構造材として用いることにより、耐力壁を形成することができる。
【0047】
(4-1)耐火壁
積層パネル10は、芯材11と表層材12とを備えており、この表層材12により、好適な断熱性と優れた耐火性能とを有している。このため、積層パネル10の用途が壁材の場合、積層パネル10によって耐火壁を形成することができる(
図7、
図8参照)。
積層パネル10によって形成された耐火壁について、具体例を挙げて説明する。
【0048】
図7は、木構造の家屋の内壁を耐火壁30Aとした具体例である。
この耐火壁30Aは、土台31と、一対の柱32と、梁33と、積層パネル10と、を備えている。
土台31は、建物の基礎(図示略)の上に、横方向(水平方向)へ伸びるようにして設置されている。柱32は、縦方向(垂直方向)へ伸びるようにして、土台31に立設されている。梁33は、横方向(水平方向)へ伸びるように、柱32の上方に横架されて設けられている。
土台31、柱32及び梁33は、互いに組み合わされて、枠状の軸組を形成している。耐火壁30Aは、この枠状の軸組の開口を塞ぐように、積層パネル10が釘、ネジ等の固定具(図示略)を用いて土台31、柱32及び梁33に固定されることにより、形成されている。
【0049】
図8は、鉄筋コンクリート構造のビルディングの間仕切り壁を耐火壁30Bとした具体例である。
この耐火壁30Bは、横方向(水平方向)へ伸びるようにして設けられた上下一対のランナー35と、縦方向(垂直方向)へ伸びるようにしてランナー35の間に架設されたスタッド36と、積層パネル10と、を備えている。
ランナー35とスタッド36は、金属材料を用い、断面略C字状の長尺形状に形成されている。これらランナー35とスタッド36は、互いの接合部で、ボルト、ネジ、接合金具等の固定具(図示略)を用いる、溶接する等して一体化されており、枠状のラーメン構造を形成している。
耐火壁30Bは、この枠状のラーメン構造の開口を塞ぐように、ランナー35とスタッド36に対して積層パネル10がネジ等の固定具や接着剤等を用いて固定されることにより、形成されている。
【0050】
耐火壁30A,30Bにおいて、積層パネル10は、芯材11に上述の石灰系ボードが用いられている。この積層パネル10によって形成された耐火壁30A,30Bは、耐力壁としても機能することができる。
耐火壁30A,30Bにおいて、積層パネル10は、表層材12が耐火壁30A,30Bの表面に現れるように配置されている。このため、火災時の耐火壁30A,30Bは、火に曝された表層材12が高温に耐えるとともに、この表層材12が、高温による芯材11の割れを防止することにより、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0051】
耐火壁30A,30Bの耐火性能について、耐火壁30A,30Bの壁面を構成する積層パネル10の表層材12は、1000℃以上の温度域で溶融しない耐熱性能を有している。このため、積層パネル10によって形成された耐火壁30A,30Bは、1000℃以上の温度域で溶融しない、つまり燃焼しない耐火性能を有している。
なお、積層パネルによって形成された耐火壁において、1000℃以上の温度域で燃焼しない耐火性能とは、具体的に、好ましくは、建築基準法における2時間耐火の要求を満たす性能であり、より好ましくは、3時間耐火の要求を満たす性能である。
【0052】
耐火壁30A,30Bにおいて、積層パネル10は、必ずしも表層材12が表面に現れるように配置されることに限定されず、芯材11が表面に現れるように配置させることもできる。
耐火壁は、上述した耐火壁30A,30Bのような固定された壁に限らず、可動間仕切、パーテーションなどのような固定されていない壁とすることができる。固定されていない壁を耐火壁とする場合、この耐火壁は、例えば、四角枠状に形成されたフレームの内部に、1枚又は2枚以上の積層パネル10を嵌め込む等して、形成することができる。
【0053】
(4-2)化粧材
家屋やビルディング等の建物は、床、外壁、内壁や間仕切り壁等の表面に、フローリングパネル、サイディングパネル、化粧パネル等の化粧材を設けることにより、外観品質の向上が図られている。
積層パネル10は、表層材12の表層部分にスキン層12Aを有しており、更に、表層材12の表面を化粧面15A,15Bとしたり(
図3、
図4参照)、表層材12の表面に積層された被覆材13を更に備えたりすることができる(
図5、
図6参照)。
即ち、積層パネル10は、化粧性を有しており、スキン層12A、化粧面15A,15B、被覆材13等が表面に露出されることにより、その表面に優れた意匠性を付与することができるため、建築材料の化粧材として有用である。
また、上述したように、積層パネル10は、優れた耐火性能を有しているため、フローリングパネル、サイディング、化粧パネル等のような通常の化粧材では得られない耐火性能を、化粧材として設けられた対象に付与することができる。
【0054】
〔2〕積層パネルの製造方法(第1の製造方法)
本発明の積層パネルの製造方法は、水系媒体に分散されてスラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を、芯材に積層する第2工程と、
前記無機繊維集合体を、前記芯材とプレス盤との間で加熱圧縮し、前記無機繊維集合体に含浸又は塗布された前記反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結し、表層材を形成する第3工程と、を備える。
【0055】
(1)第1工程
上記第1工程は、反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する目的で実行される。
反応性耐熱組成物としては、上述の〔1〕積層パネルにおいて、(2)表層材の(2-3)反応性耐熱組成物で記載したものを使用することができる。
【0056】
この第1工程において、反応性耐熱組成物は、水系媒体に分散されて、スラリー状に調製される。この調製は、粘土質性鉱物と、耐熱性セラミックス及び無機酸化物ゾルの3成分、更に必要であればその他の成分を混合して行われるが、混合方法については、特に限定されない。混合方法として、例えば、容器等に3成分等を同時に投入し、攪拌して、混合してもよく、3成分等のうちのいずれか2つ以上の成分を混合し、その後、他の成分を投入し、攪拌して、混合してもよい。また、3成分等のうちのいずれか1つの成分が収容された容器等に、他の2つ以上の成分を同時に、又は順次、投入し、攪拌して、混合してもよい。更に、3成分等を混合した後に、必要に応じて、水系媒体を投入し、希釈してもよい。
水系媒体としては、水、あるいは水と、メタノール、エタノール等の水と相溶性の高い有機溶媒との混合媒体等が挙げられる。
水系媒体に分散される反応性耐熱組成物の含有量は、特に限定されないが、通常、20質量%~60質量%、好ましくは30質量%~50質量%、より好ましくは35質量%~45質量%である。
【0057】
具体的に、反応性耐熱組成物の調製方法として、以下を挙げることができる。
即ち、反応性耐熱組成物の調製方法は、水系媒体に対し、粘土質性鉱物を加え、撹拌し、混合分散させる第1の作業と、第1の作業の後、水系媒体に対し、無機酸化物ゾルを徐々に加え、撹拌し、混合分散させて、増粘させる第2の作業と、前記第2の作業の後、粉末状とした耐熱性セラミックスを徐々に加え、水系媒中に耐熱性セラミックスが均一に分散するまで撹拌する第3の作業と、を備える。
つまり、上述の反応性耐熱組成物の調製方法は、第1から第3の3つの作業を備え、各作業において、水系媒体に対し3成分を、粘土質性鉱物、無機酸化物ゾル、耐熱性セラミックスの順番で加える。
【0058】
第1の作業は、水系媒体に粘土質性鉱物を加える作業であり、水系媒体に粘土質性鉱物を混合分散させてなる分散液が得られる。
第2の作業は、第1の作業で得られた分散液に無機酸化物ゾルを加える作業である。無機酸化物ゾルは粘性を有しており、液中で分散せず、塊状に凝集しやすいため、第2の作業では、無機酸化物ゾルを徐々に加える。無機酸化物ゾルが液中で均一に混合分散されると、分散液が増粘され、粘性液が得られる。粘性液中において、第1の作業で加えられた粘土質性鉱物は、液が有する粘度によって混合分散された状態を維持されており、沈殿等を防止される。
第3の作業は、第2の作業で得られた粘性液に耐熱性セラミックスを加える作業であり、スラリー状とされた反応性耐熱組成物が得られる。耐熱性セラミックスは、固体であり、凝集しやすいため、第3の作業では、粉末状とした耐熱性セラミックスを徐々に加え、液中で均一に分散するまで粘性液を撹拌する。
【0059】
反応性耐熱組成物の調製方法は、第1から第3の作業の他、さらに第4の作業を備えることができる。
第4の作業は、その他の成分、例えば浸透剤を加える作業である。
第4の作業では、その他の成分、例えば浸透剤を、スラリー状とされた反応性耐熱組成物に対して十分に溶解するため、徐々に加えながら混合することが好ましい。
【0060】
スラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する方法は、特に限定されない。この方法として、例えば、反応性耐熱組成物のスラリー液へ無機繊維集合体を浸漬させることによる含浸や、スプレー塗布、ロールコート等による塗布が挙げられる。
【0061】
第1工程に供される無機繊維集合体の嵩密度は、特に限定されないが、好ましくは0.1g/cm3以上1.0g/cm3以下、より好ましくは0.2g/cm3以上0.8g/cm3以下とすることができる。この場合、反応性耐熱組成物を含浸又は塗布させやすく、無機繊維集合体が柔軟性を保つことで第1工程よりも後の工程におけるハンドリング性の向上を図ることができる。
反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する量については、特に限定されない。この含浸又は塗布する量は、上述した表層材12中における耐熱性組成物22の含有比率(M1/M2)の範囲となるように調整されることが好ましい。
【0062】
(2)第2工程
上記第2工程は、反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された無機繊維集合体を、芯材に積層する目的で実行される。
この第2工程において、無機繊維集合体を芯材に積層する方法は、特に限定されない。この方法として、芯材の1面に表層材を積層する構成の場合、例えば、コンベア等に載置されて搬送される芯材に対し、反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された無機繊維集合体を載せる方法が挙げられる。
また、芯材の両面に表層材を積層する構成の場合、例えば、コンベア等に載置されて搬送される無機繊維集合体に対して芯材を載せ、次いで、その芯材に対して無機繊維集合体を載せる方法が挙げられる。
【0063】
(3)第3工程
上記第3工程は、反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結し、表層材を形成する目的で実行される。
第3工程は、
図9に示すように、定盤41とプレス盤42とを備えるプレス装置40を使用して、実行することができる。具体的に、第3工程は、所定温度に加熱されたプレス盤42を使用し、定盤41上に載せられた芯材11と、プレス盤42との間で、反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された無機繊維集合体21を加熱圧縮して実行される。
【0064】
第3工程において、加熱圧縮される無機繊維集合体21の圧縮率(%)は、特に限定されない。この圧縮率(%)は、加熱圧縮前の無機繊維集合体の厚さをT1(mm)とし、加熱圧縮後の無機繊維集合体21の厚さ(≒表層材12の厚さ)をT2(mm)とした場合、〔1-(T2/T1)〕×100の計算式で求められる。
具体的に、圧縮率(%)は、好ましくは5%以上35%以下、より好ましくは7%以上28%以下とすることができる。この場合、形成される表層材12の圧縮強度を向上させることができる。
【0065】
第3工程において、プレス盤42による無機繊維集合体21の加熱温度は、反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結することが可能であれば、特に限定されない。
具体的に、加熱温度は、好ましくは105℃以上800℃以下、より好ましくは200℃以上600℃以下とすることができる。この場合、反応性耐熱組成物を好適に焼成させて耐熱性組成物を焼結することができるとともに、形成される表層材の表面が荒れることを抑制することができる。
【0066】
第3工程において、プレス盤42による無機繊維集合体21の加熱時間は、水系媒体を除去し、反応性耐熱組成物を焼成させることができるのであれば、特に限定されない。
具体的に、加熱時間は、製造される積層パネル10の平面寸法や厚さにもよるが、好ましくは3時間以上25時間以下、より好ましくは10時間以上25時間以下、更に好ましくは15時間以上20時間以下とすることができる。
【0067】
第3工程において、反応性耐熱組成物は、プレス盤42によって加熱圧縮された無機繊維集合体21の内部から抜け出す水系媒体により、その一部が無機繊維集合体21の内部から押し出され、無機繊維集合体21の表面へマイグレーションして、該表面に滲み出し、その状態で焼成されて耐熱性組成物となる。
この無機繊維集合体21の表面で焼結された耐熱性組成物により、表層材12の表層部分にスキン層12Aが形成される。
即ち、圧縮率、加熱温度及び加熱時間が上述の範囲とされた場合、表層材12の表層部分にスキン層12Aを形成することができる。
【0068】
なお、加熱温度が上述の範囲の上限を超えて高い場合、水系媒体が反応性耐熱組成物を無機繊維集合体21の内部から押し出す圧力が高くなることで、スキン層12Aが荒れた表面となる場合がある。加熱温度が上述の範囲の下限よりも低い場合、耐熱性組成物を焼結させることができなくなる場合がある。
また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定され、加熱温度が高くなるに従い加熱時間は短く、加熱温度が低くなるに従い加熱時間は長くなるように設定される。
【0069】
第3工程で用いられるプレス盤42は、無機繊維集合体21と接触されるプレス面42Aを鏡面とすることができる(
図9参照)。この場合、プレス面42Aが無機繊維集合体21に圧接されて形成される表層材12の表面を、鏡面状の化粧面15Aとすることができる(
図3参照)。
また、プレス盤42は、無機繊維集合体21と接触されるプレス面42Aに凹凸状の模様を設けることができる(
図9参照)。この場合、プレス面42Aが無機繊維集合体21に圧接されて形成される表層材12の表面を、凹凸状の模様からなる化粧面15Bとすることができる(
図4参照)。
なお、プレス面42Aに設けられる凹凸状の模様は、タイル模様、木目模様、幾何学模様などとされ、そのプレス面42Aの模様に応じて、表層材12の表面には、タイル模様、木目模様、幾何学模様などが設けられる。
【0070】
表層材12の表面に被覆材13を積層する場合、第3工程よりも前の工程で無機繊維集合体21の表面に被覆材13の材料を載せ、この第3工程で無機繊維集合体21とともに芯材11とプレス盤42との間で加熱圧縮することにより、被覆材13を形成することができる。
この場合、プレス盤42のプレス面42Aを鏡面としたり、凹凸状の模様を設けたりすることにより、被覆材13の表面を鏡面としたり、被覆材13の表面に凹凸状の模様を設けたりすることができる。
【0071】
〔3〕積層パネルの製造方法(第2の製造方法)
積層パネルの製造方法については、〔2〕積層パネルの製造方法で記載した方法(以下、「第1の製造方法」とも記載する)の他に、以下に記載の方法(以下、「第2の製造方法」とも記載する)が挙げられる。
即ち、本発明の積層パネルの製造方法は、水系媒体に分散されてスラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を、プレス盤を用いて加熱圧縮し、前記無機繊維集合体に含浸又は塗布された前記反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結し、表層材を形成する第2工程と、
前記第2工程で形成された前記表層材と、芯材とを貼り合わせる第3工程と、を備える。
【0072】
(1)第1工程
第2の製造方法の第1工程は、上述の第1の製造方法において、(1)第1工程で記載した内容と共通し、説明を省略する。
【0073】
(2)第2工程
第2の製造方法の第2工程は、上述の第1の製造方法において、(3)第3工程で記載した内容とほぼ共通するため、異なる点を中心に説明する。
第2の製造方法の第2工程は、反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結し、表層材を形成する目的で実行される。
第2工程は、
図9に示したプレス装置40を使用して、実行することができる。具体的に、第2工程は、所定温度に加熱されたプレス盤42を使用し、反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された無機繊維集合体21を定盤41上に載せ、この定盤41と、プレス盤42との間で加熱圧縮して実行される。
【0074】
第2工程において、加熱圧縮される無機繊維集合体21の圧縮率(%)は、特に限定されないが、加熱圧縮前の無機繊維集合体の厚さをT1(mm)とし、加熱圧縮後の無機繊維集合体21の厚さ(≒表層材12の厚さ)をT2(mm)とし、圧縮率(%)を〔1-(T2/T1)〕×100の計算式で求める場合、好ましくは5%以上35%以下、より好ましくは7%以上28%以下とすることができる。この場合、形成される表層材12の圧縮強度を向上させることができる。
【0075】
第2工程において、プレス盤42による無機繊維集合体21の加熱温度は、特に限定されないが、好ましくは105℃以上800℃以下、より好ましくは200℃以上600℃以下とすることができる。この場合、反応性耐熱組成物を好適に焼成させて耐熱性組成物を焼結することができるとともに、形成される表層材の表面が荒れることを抑制することができる。
第2工程において、プレス盤42による無機繊維集合体21の加熱時間は、特に限定されないが、好ましくは3時間以上25時間以下、より好ましくは10時間以上25時間以下、更に好ましくは15時間以上20時間以下とすることができる。
【0076】
第2工程において、反応性耐熱組成物は、プレス盤42によって加熱圧縮された無機繊維集合体21の内部から抜け出す水系媒体により、その一部が無機繊維集合体21の内部から押し出され、無機繊維集合体21の表面へマイグレーションして、該表面に滲み出し、その状態で焼成されて耐熱性組成物となる。
この無機繊維集合体21の表面で焼結された耐熱性組成物により、表層材12の表層部分にスキン層12Aが形成される。
即ち、圧縮率、加熱温度及び加熱時間が上述の範囲とされた場合、表層材12の表層部分にスキン層12Aを形成することができる。
【0077】
第2工程で用いられるプレス盤42は、無機繊維集合体21と接触されるプレス面42Aを鏡面としたり、プレス面42Aに凹凸状の模様を設けたりすることができる(
図9参照)。この場合、プレス面42Aが無機繊維集合体21に圧接されて形成される表層材12の表面を、鏡面状の化粧面15Aとしたり、凹凸状の模様からなる化粧面15Bとしたりすることができる(
図3、
図4参照)。
なお、プレス面42Aに設けられる凹凸状の模様は、タイル模様、木目模様、幾何学模様などとされ、そのプレス面42Aの模様に応じて、表層材12の表面には、タイル模様、木目模様、幾何学模様などが設けられる。
【0078】
(3)第3工程
第2の製造方法の第3工程は、第2工程で形成された表層材12と、芯材11と、を貼り合わせて、積層パネル10を形成する目的で実行される。
表層材12と芯材11との貼り合わせ方法は、特に限定されない。
貼り合わせ方法として、例えば、表層材12及び/又は芯材11の表面に、スラリー状とされた反応性耐熱組成物を塗布し、表層材12と芯材11とを積層した後、反応性耐熱組成物を焼成する方法が挙げられる。つまり、反応性耐熱組成物を接着剤として用いることにより、表層材12と芯材11とを接合する方法である。この方法において、焼成温度は、特に限定されないが、好ましくは200℃以上1000℃以下、より好ましくは250℃以上800℃以下とすることができる。
他の貼り合わせ方法として、例えば、表層材12及び/又は芯材11の表面に、接着剤を塗布し、表層材12と芯材11とを接着して接合する方法が挙げられる。この方法において、接着剤は、特に限定されないが、耐熱性が1000℃以上のものが好ましい。このような接着剤は、例えば、主成分としてアルミナ、シリカ、ジルコニア等の金属や鉱物、モルタル、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)等の石質やガラス質などといった無機材料を含む無機接着剤や、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の有機材料を含む有機接着剤が挙げられる。
【0079】
〔4〕耐熱構造体
本発明の耐熱構造体は、無機繊維集合体と、前記無機繊維集合体の無機繊維を結着する耐熱性組成物と、を含み、前記耐熱性組成物は、上述の反応性耐熱組成物を焼成して得られたものである、ことを特徴とする。
具体例として、耐熱構造体20は、
図10に示すように、複数の無機繊維によって構成された無機繊維集合体21と、無機繊維集合体21に包含された耐熱性組成物22と、を含んでいる。
耐熱性組成物22は、無機繊維集合体21に含浸又は塗布された反応性耐熱組成物が焼成して形成されたものであり、無機繊維集合体21の無機繊維同士を結着している。
耐熱構造体20は、耐熱性組成物22により結着された無機繊維同士が互いの間に隙間を形成することで、内部に複数の気泡23を有しおり、こうした気泡23を空気が通過することができるため、通気性を有している。
【0080】
耐熱構造体20において、無機繊維集合体21は、上記した〔1〕積層パネル、(2)表層材の(2-1)無機繊維集合体で説明したものと同じものを用いることができる。
耐熱構造体20において、耐熱性組成物22は、上記した〔1〕積層パネル、(2)表層材の(2-2)耐熱性組成物で説明したものと同じものを用いることができる。
耐熱性組成物22は、反応性耐熱組成物を焼成して形成されるものであり、その反応性耐熱組成物は、上記した〔1〕積層パネル、(2)表層材の(2-3)反応性耐熱性組成物で説明したものと同じものを用いることができる。
【0081】
即ち、耐熱構造体20は、無機繊維集合体21及び耐熱性組成物22を含んでおり、上記の積層パネル10の表層材12と同様に、高温度域で溶融し難く、燃焼し難い。
更に、無機繊維集合体21及び耐熱性組成物22を含む耐熱構造体20は、所謂、繊維強化セラミックスであり、非常に高い靱性、剛性、耐熱性を有している。
また、耐熱構造体20は、反応性耐熱組成物を完全に焼成させず、耐熱性組成物22を半硬化の状態にする等して、可撓性や柔軟性を付与することにより、繊維強化セラミックスを得るために用いられるプリプレグ(前駆体)とすることができる。
耐熱構造体20は、1000℃以上の温度域で溶融しない耐熱性能を有しているものが好ましい。言い換えると、耐熱構造体20は、1000℃以上の温度域でも溶融することがなく、このため、1000℃以上の温度域で燃焼しない耐熱性能を有しているものが好ましい。
【0082】
耐熱構造体20は、高度な耐熱性を有しており、その用途は、耐熱性を必要とするのであれば、特に限定されない。
耐熱構造体20の用途として、例えば、積層パネル10の表層材21が挙げられ、表層材21の他にも、家屋等の木構造による建物や、ビルディング等の鉄筋コンクリート構造による建物に使用される建築材料、より具体的な例として、襖、板戸、格子戸、障子、雨戸、欄間、シャッター、扉等の建具が挙げられる。
また、耐熱構造体20は、通気性を有しているため、その用途として、耐熱性を有する吸音材を挙げることができる。こうした耐熱性を有する吸音材の用途として、例えば、上述の建築材料(特には、耐熱性を有する防音壁など)や、それ以外に自動四輪車、自動二輪車等の自動車や、鉄道車両や、航空機や、船舶等の内装材や外装材として用いられる吸音材が挙げられる。
具体的に、耐熱性を有する吸音材の一例として、自動四輪車、自動二輪車等の自動車において、高温の排気ガスを外部へ排出する際に生じる排気音を低減するための消音器に使用する吸音材が挙げられる。
【0083】
耐熱構造体20の形状は、用途等に応じて定められ、特に限定されない。耐熱構造体20の形状として、例えば、シート状、マット状、ボード状、フィルム状等が挙げられる。
図10は、耐熱構造体20を、自動車の消音器に使用される耐熱性を有する吸音材とした具体例である。
耐熱構造体20は、無機繊維集合体21と、無機繊維集合体21の無機繊維を結着する耐熱性組成物22とを有しており、シート状の形状に形成されている。
【0084】
上述の耐熱構造体20は、自動車の消音器の吸音材として用いることができる。
即ち、自動車において、エンジンから排出される排気ガスは、600℃以上の高温となっており、3kg/cm2~5kg/cm2の高い圧力を有している。また、排気ガスは、エンジンが有する各気筒ごとに間欠的に排出され、そのまま外部へ放出されると、急激に膨張し、爆発音を発する。このため、自動車の消音器には、排気ガスについて、その温度と圧力を下げ、消音する機能を要求される。
具体的に、自動車の消音器は、一般的にマフラー、サイレンサー等とも呼称されており、多段膨張室型、ストレート型等の構造を有している。
【0085】
多段膨張室型の消音器であれば、その内部が、複数の隔壁を設けることによって複数の膨張室(チャンバー)に区分けされており、排ガスは、各膨張室(チャンバー)を通過するごとに徐々に膨張することで温度と圧力が下がり、エネルギーを減衰されて、消音されるようになっている。
ストレート型の消音器であれば、その内部を貫通して設けられたパンチングパイプと、パンチングパイプの周囲に配された消音材とを有し、排ガスは、パンチングパイプの孔から漏れ出す際、その圧力で消音材を振動等させ、エネルギーを減衰されて、消音されるようになっている。
吸音材として耐熱構造体20は、多段膨張室型であれば膨張室(チャンバー)に充填して用いたり、ストレート型であればパンチングパイプの周囲に配された消音材に用いたりすることができる。
つまり、耐熱構造体20は、気泡23を介することで、排ガスの通り抜けを可能としており、緩衝吸音作用により、吸音性能を発揮する。
【0086】
耐熱構造体20の形状は、特に限定されず、上述のシート状に限らず、テープ状、筒状、塊状等に形成することもできる。
また、耐熱構造体20は、自動車の消音器であればいずれの構造のものにも使用することができるが、それらの中でもストレート型の消音器は、消音材の経時劣化に係る問題を解消できるという観点で、耐熱構造体20を用いるものとして好ましい。
即ち、ストレート型の消音器について、通常、消音材にはガラス繊維が使用されるが、その消音材(ガラス繊維)は、排気ガスの熱や圧力に影響されて経時劣化してしまう。
耐熱構造体20は、無機繊維集合体21と反応性耐熱組成物を使用することにより、高い処理温度により脱水縮合反応が進み、セラミックス化することで、耐熱性、耐水性、耐薬品性が向上しており、排気ガスの熱や圧力の影響で経時劣化し難いという利点を有している。
【0087】
詳述すると、耐熱構造体20は、ガラス繊維などの無機繊維による無機繊維集合体21に、反応性耐熱組成物を含浸し、200℃~800℃で加熱処理して、硬化させたものである。この加熱処理の際、反応性耐熱組成物は、脱水縮合反応を起こし、耐熱性組成物22が焼成されるが、そのとき無機繊維(ガラス繊維)相互の接触点を固定するとともに、消音器(マフラー、サイレンサー等)の内部の金属(インナー)との接着などの反応を起こすことにより、耐熱性、耐水性、耐薬品性(NOx・SOx)などの性能が著しく向上する。その結果、過酷な使用条件に耐え得る耐久性のある高性能の消音器を製造することができる。
特に、無機酸化物ゾルにシリカゾルを用いる場合、焼成されると、シリカゾル表面のシラノール基[Si-OH]が化学結合に寄与することで、結着する無機繊維同士の間に多数の接点を生むため、強度を大きく向上させることができる。
また、無機繊維がガラス繊維の場合、ガラス繊維同士の隙間にシリカゾルが毛細管現象によって集まり、シラノール基の脱水縮合反応によって、ガラス繊維同士を強固に結合させることができる。
【0088】
さらに、無機酸化物ゾルであるシリカゾルは、粘土質性鉱物としてセピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、及び耐熱性セラミックスとして含水ケイ酸カルシウム(ゾノライト)と組み合わせた場合、シラノール基の脱水縮合反応が促進され、ガラス繊維同士をより強固に結合させることができる。
その結果、耐熱構造体20は、耐熱性のみならず、耐水性が向上し、排気ガス中の水分による耐熱性組成物22の崩壊が抑制されるため、長期間にわたって吸音性能を維持することができる。
【0089】
なお、一般的に使用されている消音器内の吸音材には、多くの場合、無機繊維(ガラス繊維)の固定材として、酸化ゾル、ベントナイトが使用され、増粘剤としてデンプン糊が使用されている。
上述の耐熱構造体20は、無機繊維(ガラス繊維)同士の接点を固定し、無機繊維集合体21(ガラスマット)の収縮やへたりを抑えることにより、消音効果を長く持続させることを目的としたものである。
即ち、耐熱構造体20は、多孔質耐熱断熱材と耐熱吸音材としての性能を十分に生かすため、無機繊維(ガラス繊維)の固定材に上述の耐熱性組成物22(反応性耐熱組成物)を使用し、加熱処理することによって反応性耐熱組成物の脱水縮合反応を進めている。
この反応性耐熱組成物の脱水縮合反応を進めることにより、耐熱構造体20は、無機繊維集合体21(ガラスマット)中における無機繊維(ガラス繊維)同士の接点の固定、及び、消音器の内部の金属(インナー)と無機繊維(ガラス繊維)との固定を強くすることができ、固定材である耐熱性組成物22の耐熱性、耐水性、耐薬品性(NOx・SOx)が一段と強化されたものとすることができる。
【0090】
また、上述の耐熱構造体20は、自動車の消音器の吸音材として用いる場合、一般的なNOx・SOxを多く含む高温の排気ガスのみならず、水素ガスを燃料とする所謂「水素エンジン自動車」の水分を多量に含む高温の排気ガスにも十分に耐え得る耐熱性、耐水性、耐薬品性を有することができる。
つまり、上述の反応性耐熱組成物は、200℃~800℃という高温での加熱処理により、脱水縮合反応が進み、焼成された耐熱性組成物22が高度にセラミックス化することで、優れた耐熱性、耐水性、耐薬品性を得ることができる。
そして、耐熱性組成物22が優れた耐熱性、耐水性、耐薬品性を有することから、耐熱構造体20は、無機繊維集合体21(ガラスマット)の収縮やへたりを抑制することができ、高温排ガス、ヒートサイクル、振動などの過酷な使用条件に耐え得る自動車の消音器用の吸音材として好適に使用することができる。
【0091】
〔5〕耐熱構造体の製造方法
本発明の耐熱構造体の製造方法は、
水系媒体に分散されてスラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する第1工程と、
前記反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された前記無機繊維集合体を加熱圧縮し、前記無機繊維集合体に含浸又は塗布された前記反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を得るとともに、前記耐熱性組成物によって前記無機繊維集合体の無機繊維を結着する第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0092】
(1)第1工程
上記第1工程は、反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する目的で実行される。
この第1工程は、上述の〔2〕積層パネルの製造方法(第1の製造方法)において、(1)第1工程で記載した方法と同様に行うことができる。
即ち、第1工程において、反応性耐熱組成物は、上述の調製方法と同様にして、スラリー状に調製される。
スラリー状とされた反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に含浸又は塗布する方法は、特に限定されない。この方法として、例えば、反応性耐熱組成物のスラリー液へ無機繊維集合体を浸漬させることによる含浸や、ブレードコーティング、スプレー塗布、ロールコート等による塗布が挙げられる。
【0093】
(2)第2工程
上記第2工程は、反応性耐熱組成物を焼成させて耐熱性組成物を焼結し、耐熱構造体を形成する目的で実行される。
この第2工程は、上述の〔3〕積層パネルの製造方法(第2の製造方法)において、(2)第2工程で記載した方法と同様に行うことができる。
即ち、第2工程は、例えば、プレス装置40(
図9参照)等を使用して、実行することができる。
具体的に、第2工程は、所定温度に加熱されたプレス盤42を使用し、反応性耐熱組成物が含浸又は塗布された無機繊維集合体21を定盤41上に載せ、この定盤41と、プレス盤42との間で加熱圧縮して実行される。この加熱圧縮により、反応性耐熱組成物は、焼成されて耐熱組成物22となり、この耐熱組成物22が無機繊維集合体21の無機繊維を結着することにより、耐熱構造体20が得られる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
〔実施例1〕
(1)反応性耐熱組成物の成分
1.無機酸化物ゾル
シリカゾル(商品名;サーフロイド30、愛知珪曹工業)、400質量部。
2.粘土質性鉱物
セピオライト(セピオジャパン、主成分;含水ケイ酸マグネシウム)、100質量部。
3.耐熱性セラミックス
含水ケイ酸アルミニウム(商品名;クレー、山陽クレー工業)、50質量部。
4.その他の成分
浸透剤(商品名;ネオコールYSK、第一工業製薬)、1質量部
5.水系媒体
水;スラリー状の反応性耐熱組成物の無機繊維集合体(ガラス繊維集合体シート)に対する浸透性と含浸量(ガラス繊維への付着量)が所望のものとなるように650~1450質量部の範囲で調整する。
【0096】
(2)反応性耐熱組成物の調製
第1の作業として、水(650~1450質量部)に対し、粘土質性鉱物(セピオライト、100質量部)を加え、撹拌しながら、混合分散させた。
その後、第2の作業として、第1の作業で得た液に対し、無機酸化物ゾル(シリカゾル、400質量部)を徐々に加え、撹拌しながら混合分散させ、無機酸化物ゾルによる増粘を確認できるまで撹拌した。
その後、第3の作業として、第2の作業で得た液に対し、耐熱性セラミックス(含水ケイ酸アルミニウム、50質量部)を徐々に加え、完全かつ均一に分散するまで撹拌した。
その後、第4の作業として、第3の作業で得た液に対し、その他の成分(浸透剤、1質量部)を徐々に加え、その他の成分が十分に溶解するまで撹拌して、スラリー状の反応性耐熱組成物を得た。
【0097】
(3)耐火ボード(耐火壁)の製造
無機繊維集合体として、ガラス繊維集合体シート(ニードルマット)を用い、試料1;厚さ5mm、試料2;厚さ10mm、試料3;厚さ15mm、としたものを用意した。
第1工程として、試料1~3のそれぞれを、上記(2)で得たスラリー状の反応性耐熱組成物で満たした槽中に浸漬し、スラリー状とされた反応性耐熱組成物を無機繊維集合体に含浸させた。
第2工程として、反応性耐熱組成物を含浸させた試料1~3に対し、プレス装置(
図9参照)を用い、270℃で8分間の加熱圧縮を行った。その後、試料1~3を300℃の雰囲気下で4時間放置し、脱水縮合反応を進行させて、反応性耐熱組成物を焼成させることにより、耐熱性組成物を焼結して、試料1~3の耐火ボード(耐火壁)を得た。
【0098】
(4)耐火性能試験
建築基準法第2条第7号(耐火構造)の規定に基づく認定に係る性能評価の試験において、一般財団法人建材試験センター(JTCCM)によって定められた試験方法に従い、試料1~3の耐火ボード(耐火壁)について、対象部位を壁とし耐火性能試験を行った。
耐火性能試験の結果、試料1~3の耐火ボード(耐火壁)は、1時間耐火、2時間耐火、及び3時間耐火の性能を満たすものであった。
【0099】
〔実施例2〕
(1)反応性耐熱組成物の成分
1.無機酸化物ゾル
シリカゾル(商品名;サーフロイド30、愛知珪曹工業)、400質量部(固形分;30質量%)。
2.粘土質性鉱物
セピオライト(セピオジャパン、主成分;含水ケイ酸マグネシウム)、100質量部。
3.耐熱性セラミックス
試料1;含水ケイ酸アルミニウム(商品名;クレー、山陽クレー工業)、50質量部。
試料2;含水ケイ酸カルシウム(ゾノライト、日本インシュレーション)、50質量部。
試料3;第三リン酸カルシウム(太平化学産業)、50質量部。
4.その他の成分
浸透剤(商品名;ネオコールYSK、第一工業製薬)、1質量部
5.水系媒体
水;スラリー状の反応性耐熱組成物の無機繊維集合体(ガラス繊維集合体シート)に対する浸透性と含浸量(ガラス繊維への付着量)が所望のものとなるように450~1450質量部の範囲で調整する。
【0100】
(2)反応性耐熱組成物の調製
第1の作業として、水(450~1450質量部)に対し、粘土質性鉱物(セピオライト、100質量部)を加え、撹拌しながら、混合分散させた。
その後、第2の作業として、第1の作業で得た液に対し、無機酸化物ゾル(シリカゾル、400質量部)を徐々に加え、撹拌しながら混合分散させ、無機酸化物ゾルによる増粘を確認できるまで撹拌した。
その後、第3の作業として、第2の作業で得た液に対し、耐熱性セラミックスとして、試料1(含水ケイ酸アルミニウム、50質量部)、試料2(含水ケイ酸カルシウム、50質量部)、又は試料3(第三リン酸カルシウム、50質量部)を徐々に加え、完全かつ均一に分散するまで撹拌した。
その後、第4の作業として、第3の作業で得た液に対し、その他の成分(浸透剤、1質量部)を徐々に加え、その他の成分が十分に溶解するまで撹拌して、試料1~3のスラリー状の反応性耐熱組成物を得た。
【0101】
(3)耐熱構造体の製造
無機繊維集合体として、厚さ5mmのガラス繊維集合体シート(ニードルマット)を用意した。
試料1~3の反応性耐熱組成物は、必要であれば水を添加し、粘度を600mPa・s~900mPa・sに調整した。
第1工程として、試料1~3の反応性耐熱組成物を、無機繊維集合体に対し、ブレードコーティングによってそれぞれ塗布した。
第2工程として、試料1~3の反応性耐熱組成物をそれぞれ含浸させた無機繊維集合体に対し、プレス装置(
図9参照)を用い、270℃で8分間の加熱圧縮を行った後、300℃の雰囲気下で4時間放置し、脱水縮合反応を進行させて、反応性耐熱組成物を焼成させることにより、耐熱性組成物を焼結して、耐熱構造体として、試料1~3の耐熱シートを得た。
【0102】
(4)耐熱試験
試料1~3の耐熱シートを、925℃で1時間、1010℃で2時間、1050℃で3時間の各雰囲気下で静置し、耐熱性を確認した。
確認の結果、試料1~3の耐熱シートは、いずれの雰囲気下においても炭化せず、また水蒸気による耐熱組成物の分解が発生せず、好適な耐熱性、耐水性を有していた。
このため、試料1~3の反応性耐熱組成物及び耐熱シートは、自動車の消音器の吸音材に使用されるものとして、有用である。
【0103】
〔実施例3〕
(1)反応性耐熱組成物の成分
1.無機酸化物ゾル
シリカゾル(商品名;サーフロイド30、愛知珪曹工業)、400質量部。
2.粘土質性鉱物
セピオライト(商品名;セピオライトSR、セピオジャパン、主成分;含水ケイ酸マグネシウム)、100質量部。
3.耐熱性セラミックス
含水ケイ酸アルミニウム(商品名;HAカオリン、山陽クレー工業)、50質量部。
4.その他の成分
浸透剤(商品名;ネオコールYSK、第一工業製薬)、2質量部
5.水系媒体
水、1,650質量部。
【0104】
(2)反応性耐熱組成物の調製
第1の作業として、水(1,650質量部)に対し、粘土質性鉱物(セピオライト、100質量部)を加え、撹拌しながら、混合分散させた。
その後、第2の作業として、第1の作業で得た液に対し、無機酸化物ゾル(シリカゾル、400質量部)を徐々に加え、撹拌しながら混合分散させ、無機酸化物ゾルによる増粘を確認できるまで撹拌した。
その後、第3の作業として、第2の作業で得た液に対し、耐熱性セラミックス(含水ケイ酸アルミニウム、50質量部)を徐々に加え、完全かつ均一に分散するまで撹拌した。
その後、第4の作業として、第3の作業で得た液に対し、その他の成分(浸透剤、2質量部)を徐々に加え、その他の成分が十分に溶解するまで撹拌して、スラリー状の反応性耐熱組成物を得た。
【0105】
(3)耐熱構造体の製造
無機繊維集合体として、厚さ5mmのガラス繊維集合体シート(ニードルマット)を用意した。
ストレート型の消音器のインナーパイプ(パンチングパイプ、径(φ);30mm、長さ;100mm)を用意し、第1工程として、上記(2)で得たスラリー状の反応性耐熱組成物を無機繊維集合体に含浸させた後、厚さが20mmとなるように、インナーパイプ(パンチングパイプ)に巻き付けて、筒状の試料を得た。
第2工程として、インナーパイプに巻き付けた湿潤状態のままの試料を150℃で2時間、乾燥した後、350℃の雰囲気下で5時間、加熱硬化処理を行い、脱水縮合反応を進行させて、反応性耐熱組成物を焼成させることにより、耐熱性組成物を焼結して、自動車の消音器に使用される耐熱構造体の試験品を得た。試験品は、この消音器において、インナーパイプ(パンチングパイプ)に固定されていた。
【0106】
(4)性能試験
比較例として、従来品の自動車用の消音器(消音材の組成に、ガラス繊維集合体シート(ニードルマット)と、そのガラス繊維同士の接着材としてコロイダルシリカ、ベントナイト、及びデンプン糊と、を含む)を、上記の試験品と同条件で製作し、用意した。
上記(3)で得られた試験品と、比較例とについて、消音テストを実施した。その結果、試験品と比較例とに性能差はなく、試験品の自動車用の消音器は、従来品と遜色の無い消音性能を有することが示された。
次に、上記(3)で得られた試験品と、比較例とについて、NOxガスによる影響を想定し、硝酸酸性(pH4.0)の溶液中で試験品及び比較例を3時間煮沸した。
その結果、比較例の消音材は、ガラス繊維集合体シートについて、ガラス繊維の接着部分に剥離が発生し、一部に変形が認められた。また、比較例の消音材は、インナーパイプ(パンチングパイプ)から剥がれて剥離状態となっていた。
一方、試験品の耐熱構造体は、若干の膨潤は認められたものの、形状の変化は認められなかった。また、試験品の耐熱構造体は、インナーパイプ(パンチングパイプ)に固定されたままであった。
以上から、耐熱構造体は、従来品の消音材に比べ、耐熱性、耐水性、耐薬品性に優れたものであることが示された。
なお、従来品の消音材は、接着材に含まれるコロイダルシリカがアルカリ成分を含んだまま固化(200℃で2時間乾燥)しているため、水分(水蒸気)やNOxガス(酸性水)に侵されやすく、崩壊、溶解してしまうと考えられる。また、金属への接着力も弱く、へたりと収縮により空洞化と劣化が早く進み、騒音が拡大すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の積層パネルは、建築材料の用途において広く用いられる。特に、積層パネルと、その積層パネルによって形成される耐火壁は、優れた耐火性能を有するため、建築分野において好適に利用される。また、本発明の積層パネルの製造方法によれば、耐火性能の向上を図ることができる積層パネルを好適に製造するために利用される。さらに本発明の反応性耐熱組成物、耐熱構造体は、建築材料の用途に加え、自動車の用途等においても広く用いられ、それらの製造方法によれば、耐熱性能の向上を図ることができる反応性耐熱組成物、耐熱構造体を好適に製造するために利用される。
【符号の説明】
【0108】
10;積層パネル、
11;芯材、
12;表層材、12A;スキン層、
13;被覆材、
15A,15B;化粧面、
21;無機繊維集合体、
22;耐熱性組成物、
30A,30B;耐火壁、
31;土台、32;柱、33;梁、
35;ランナー、36;スタッド。