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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】浮力調整用ジャケット
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/08 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B63C11/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022174953
(22)【出願日】2022-10-31
(65)【公開番号】P2024065879
(43)【公開日】2024-05-15
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133191
【氏名又は名称】株式会社タバタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】弁理士法人白浜国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤間 太朗
(72)【発明者】
【氏名】増谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 良治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓也
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06402429(US,B1)
【文献】米国特許第05902073(US,A)
【文献】特開平05-112291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向、幅方向及び前後方向を有し、エアタンクを固定するためのハーネスを有する浮力調整用ジャケットにおいて、
ベストと、前記ベストの内面に配置されて前記上下方向へ延びるハーネスと、前記ハーネスの上端部から延びる一対のショルダーベルトとを含み、
前記ハーネスは、ダイバーの背側と対向して位置するハーネス本体と、前記ハーネス本体の下側部分の前面に位置し、ウエストベルトと腰当てパットとを有するウエスト締付手段とを含み、
前記ハーネス本体の背面長を複数段階に変更することのできるサイズ調整手段を備え
前記ウエスト締付手段と前記ハーネス本体とは別体であって、
前記ウエスト締付手段は、スライド機構によって前記上下方向へ移動することが可能であって、前記スライド機構を介してのみ前記ハーネス本体に取り付けられていることを特徴とする浮力調整用ジャケット。
【請求項2】
前記ハーネス本体は、背面プレートと、前記背面プレートの前面側に位置する中央パネルとを有し、前記背面プレートと前記中央パネルとは分離可能に互いに連結される請求項に記載の浮力調整用ジャケット。
【請求項3】
前記ハーネス本体の両側には、前記ショルダーベルトと連結されるサイドパネルが前記前後方向へ旋回可能に取り付けられている請求項1又は2に記載の浮力調整用ジャケット。
【請求項4】
前記サイドパネルは、ウエイト手段を有する請求項に記載の浮力調整用ジャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮力調整機能を有する浮力調整用ジャケット(BCジャケット)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイビングに使用される浮力調整用ジャケットは、公知である。例えば、特許文献1には、上下方向におけるウエストベルトの位置の調整を容易に行うことのできる浮力調整装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-211484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の浮力調整装置は、ジャケットと、ジャケットの背部内面に取り付けられたハーネスと、ジャケットの肩部から下方へ延びる長さ調整可能なショルダーベルトと、ジャケットの胴回り方向へ延びる長さ調整可能なウエストベルトとを備える。
【0005】
かかる浮力調整装置においては、ウエストベルトの端部がハーネスに連結板を介して取り付けられており、連結板を固定する固定部の位置の選択によって、ハーネスにおけるウエストベルトの上下方向の位置を2段階に調整することができる。
【0006】
装着時において、ダイバーの身体の大きさに合わせて、ショルダーベルトの長さを調整し、かつ、ウエストベルトの位置を上下方向において調整することによって、胴回りを身体にフィットさせることができる。しかしながら、身長差のあるダイバーに対してハーネスの背面長が一定であることから、身長差に合わせた最適なフィット性を実現させることができなかった。
【0007】
また、身体の大きさに合わない背面長を有するハーネスを身体へ密着させるために、ショルダーベルトを引き上げると、それとともにウエストベルトが上方に位置し、腹部よりも上方に配置されてしまうことがあった。たとえ、ウエストベルトの位置を2段階に調整することができたとしても、ウエストベルトを上下方向において最適な位置にコントロールして配置することはできなかった。
【0008】
一方、胴回りのフィット性を優先して、ウエストベルトをダイバーの胴回りに配置しようとすると、ショルダーベルトを引き上げることができず、ハーネスがダイバーの背面に密着されないおそれがあった。特に、ハーネスの背面長が身体に合わないサイズの場合には、ダイバーが前屈したときに、ダイバーの肩部からハーネスが離間して隙間が生じ、十分なホールド感を得ることができなかった。
【0009】
そこで、本発明の課題は、ダイバーの身体の動きに追従することができ、安定したホールド感を与えることのできる浮力調整用ジャケットの提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、互いに交差する上下方向、幅方向及び前後方向を有し、エアタンクを固定するためのハーネスを有する浮力調整用ジャケットに関する。
【0011】
本発明に係る浮力調整用ジャケットは、ベストと、前記ベストの内面に配置されて前記上下方向へ延びるハーネスと、前記ハーネスの上端部から延びる一対のショルダーベルトとを含み、前記ハーネスは、ダイバーの背側と対向して位置するハーネス本体と、前記ハーネス本体の下側部分の前面に位置し、ウエストベルトと腰当てパットとを有するウエスト締付手段とを含み、前記ハーネス本体の背面長を複数段階に変更することのできるサイズ調整手段を備え、前記ウエスト締付手段と前記ハーネス本体とは別体であって、前記ウエスト締付手段は、スライド機構によって前記上下方向へ移動することが可能であって、前記スライド機構を介してのみ前記ハーネス本体に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る浮力調整装置は、以下の好ましい実施態様を含む。
)前記ハーネス本体は、背面プレートと、前記背面プレートの前面側に位置する中央パネルとを有し、前記背面プレートと前記中央パネルとは分離可能に互いに連結される。
)前記ハーネス本体の両側には、前記ショルダーベルトと連結されるサイドパネルが前記前後方向へ旋回可能に取り付けられている。
)前記サイドパネルは、ウエイト手段を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る浮力調整用ジャケットによれば、ハーネス本体の背面長を複数段階に変更することのできるサイズ調整手段を備えることから、ハーネス本体の背面長をダイバーの身長に最適なサイズにすることによって、ダイビング中にハーネス本体が身体にしっかりと密着して、十分なホールド感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
図1】第1実施形態に係る浮力調整用ジャケットの正面図。
図2】浮力調整用ジャケットの背面図。
図3】ハーネスの展開正面図。
図4】正面側から視たハーネスの分解斜視図。
図5】背面側から視たハーネスの分解斜視図。
図6図3に示す、VI-VI線に沿う断面図。
図7】背面プレートと中央パネルとの連結箇所を表した図。
図8】背面側から視た腰し当てパッドの平面図。
図9】(a)ダイバーが直立した状態の図。(b)ダイバーが前屈みになった状態の図。
図10】着用状態における、第2実施形態に係る浮力調整用ジャケットの側面図。
図11】ウエイト手段とサイドパネルとが互いに分離された様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1及び図2を参照すると、本発明に係る浮力調整用ジャケット1は、互いに交差する上下方向Y、幅方向X及び前後方向Zと、前後面1a,1bとを有し、エアタンク2からの空気を供給可能であってダイバーの背中と腹部とを覆うベスト3と、ベスト3の内面に配置されて上下方向Yへ延びるタンクハーネス(ハーネス)10と、ハーネス10の上端部から延びる一対のショルダーベルト11と、ハーネス10の下端部側においてダイバーの胴回り方向へ延びる一対のウエストベルト12とを備える。ショルダーベルト11は、ダイバーの肩部に当接されるショルダーパッド11aを有する。なお、浮力調整用ジャケット1の前面1aは正面、後面1bは背面ともいう。
【0016】
エアタンク2は、ベスト3の背面の外面側に位置しており、タンクバンド14に介して、ハーネス10に固定されている。タンクバンド14は、エアタンク2の大きさに応じて、バックル13によって長さ調整することができる。
【0017】
ハーネス10は、ベスト3の背面の内面に位置するハーネス本体20と、ハーネス本体20に旋回可能に取り付けられる一対のサイドパネル30と、ハーネス本体20の下方側部分の前面に位置するウエスト締付手段40とを有する。
【0018】
ハーネス本体20は、背面プレート50と、背面プレート50の前面に位置する中央パネル60とを含む。背面プレート50と中央パネル60とは、連結部材70等の連結手段を介して互いに取り外し可能に連結されている。
【0019】
図4図5を参照すると、連結部材70は、背面プレート50と中央パネル60とを連結した状態で、ベスト3の後面の外側に位置していて、連結部材70のバンド挿通孔71にタンクバンド14が挿通されている。連結部材70は、上方に位置する挿通孔72と、前面、すなわち、背面プレート50と対向する側の面に位置する、先端が上方へ屈曲した係止爪73とをさらに有する。ベスト3には、連結部材70の挿通孔72に挿通されるボルトを貫通するための開口と、係止爪73を貫通するための開口が形成されている。
【0020】
背面プレート50は、頭部51と、頭部51から下方へ延びる支持板部52とを有する。頭部51には、ショルダーベルト11を挿通した状態で固定するための挿通孔51aが位置する。支持板部52の前面側には、両側縁部において上下方向Yへ延びる両側リブ54と、幅方向Xの中央に位置する中央凸部55と、両側リブ54と中央凸部55との間において上下方向Yへ延びる一対の係合溝57とを有する。
【0021】
支持板部52は、中央凸部55において上下方向Yに所定間隔を空けて配置された複数の中央挿通孔58と、係合溝57において上下方向Yに所定間隔を空けて配置された複数の両側挿通孔59とを有する。両側挿通孔59の下方には、矩形状の第1係止孔75が位置する。なお、図7に示すとおり、中央挿通孔58は、上方から下方へ6つ並んで配置されていて、順に58a~58gの符号、両側挿通孔59には、上方側の挿通孔に59a,下方側の挿通孔に59bの符号をそれぞれ付している。
【0022】
図5を参照すると、中央パネル60は、両側部に位置する取付バンド22を挿通するための一対のバンド挿通孔61と、両側縁部に位置する、サイドパネル30を旋回可能に連結するためのヒンジ機構を構成する筒状の第1連結部62とを有する。中央パネル60の幅方向Xの中央には、中央挿通孔63a,63bが位置する。また、中央パネル60の後面において、中央挿通孔63a,63bの間には、上下方向Yに並ぶ一対の突起68a,68bが位置する。
【0023】
中央パネル60の後面には、上下方向Yへ延びる一対の係合凸部64が位置する。係合凸部64には、上下方向Yにおいて所定間隔を空けて配置された、中央パネル60を貫通する複数の両側挿通孔65a,65bと矩形状の第2係止孔76a,76bが位置する。両側挿通孔65bの内部には、ボルトを螺合するための螺旋溝を有するナットが配置されている。
【0024】
取付バンド22は、布をウレタン樹脂でコーティングしたものであって、その両端部がバンド挿通孔61に挿通され、両端部に位置する挿通孔と中央パネル60の後面に位置する開孔とを貫通するファスナ手段を介して中央パネル60に着脱可能に取り付けられている。
【0025】
一対のサイドパネル30は、先端部31と、中央パネル60に固定される基端部32と、先端部31に位置する、連結ベルト16が挿通されるベルト挿通孔31aと、基端部32側に位置する筒状の第2連結部33とを有する。中央パネル60とサイドパネル30とは、第1連結部62と第2連結部33とを上下方向Yにおいて交互に位置するように組み合わせた状態で、それらを貫通する連結ピン(旋回軸)18を介して互いに連結される。
【0026】
一対のサイドパネル30は、かかる構成からなるヒンジ機構によって、中央パネル60に前後方向Zへ旋回可能に取り付けられる。中央パネル60は両側部が着用者の身体へ向かって延びる全体的に湾曲した形状を有し、中央パネル60の両側部に位置するサイドパネル30のヒンジ機構は、内方へ、すなわちダイバーの身体へ向かって旋回し易くなっている。また、浮力調整用ジャケット1の未使用時において、サイドパネル30を折り畳んでコンパクトにした状態で、収納、所持することができる。
【0027】
連結ベルト16の先端には、係止爪を有するバックルの雄部が位置し、雄部をショルダーベルト11に位置する雌部に係止することによって、連結ベルト16を介してショルダーベルト11がサイドパネル30に連結される。
【0028】
ウエスト締付手段40は、ダイバーの腰周りに当接される腰当てパッド41と、腰当てパッド41の両側縁から延出する一対のウエストベルト12とを備える。
【0029】
ウエストベルト12は、それらの先端に位置するメカニカルファスナによる連結手段12a,12bによって互いに着脱可能に連結される。また、ウエストベルト12の端部は、腰当てパッド41の両側部にリング状の掛回部を介して折り返されており、折り返されて互いに対向する部分どうしがメカニカルファスナ手段によって互いに着脱可能に連結されていて、ウエストベルト12の長さ調整を可能としている。
【0030】
腰当てパッド41は、ウレタン樹脂等の反撥材料をメッシュ生地で覆って形成したクッション部材42と、クッション部材42の後面に取り付けられた薄板状の背面板部43とを有する。
【0031】
背面板部43は、クッション部材のように容易に変形するものではなく、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、硬質合成ゴム等で形成されていて、ダイバーの腰部に沿って僅かに変形し得る程度の可撓性を有する。背面板部43の後面には、取付バンド22が挿通される上下方向Yへ開口したループ状のスライダ(挿通部)45が配置されている。
【0032】
図6を参照すると、背面プレート50の一対の係合溝57に中央パネル60の一対の係合凸部64が係合されており、背面プレート50の支持板部52に位置する中央挿通孔58と中央パネル60に位置する中央挿通孔63aとが前後方向Zにおいて互いに連通していて、それらを貫通するファスナ締結手段によって締結されている。ここで、取付バンド22及びハーネス本体20に使用されるファスナ締結手段は、グロメットと、グロメットに挿通されるピンとから構成されており、ピンをグロメットの挿通孔に挿入することによって、グロメットの脚部が弾性変形して拡開され、互いに重なる部材どうしを安定的に締結することができる。
【0033】
また、連結部材70と背面プレート50との間にベスト3を介在した状態において、ベスト3に形成された開口を介して挿通孔72に挿通されるボルトによって、前後方向Zにおいて互いに連通する支持板部52の両側挿通孔59a~59cと中央パネル60の両側挿通孔65a,65bとがボルト締めされている。
【0034】
また、連結部材70の係止爪73が前後方向Zにおいて互いに連通する背面プレート50の第1係止孔75と中央パネル60の第2係止孔76a,76bに篏挿されて係止される。このように、背面プレート50と中央パネル60とは、幅方向Xの中央部分及び両側部が互いに固定されることで、安定的に連結される。
【0035】
図7を参照すると、中央パネル60は背面プレート50に対してその上下方向Yの位置を複数段階に変えることができる。具体的には、図示例においては、6段階に変えることができ、それによって、ハーネス10の背面長L1(図3参照)をダイバーの身長に合わせて自由に変更することができる。
【0036】
各段階における中央パネル60と背面プレート50との相関位置について述べると、まず、最も下方に位置する場合(図7(a))には、中央挿通孔58bと中央挿通孔63a,両側挿通孔59aと両側挿通孔65bとがそれぞれ重なり、突起68aが中央挿通孔58dに挿通されている。さらに、上方に位置する場合(図7(b))には、中央挿通孔58cと中央挿通孔63a,両側挿通孔59bと両側挿通孔65bとがそれぞれ重なり、突起68aが中央挿通孔58eに挿通されている。さらに、上方に位置する場合(図7(c))には、中央挿通孔58dと中央挿通孔63a,両側挿通孔59cと両側挿通孔65bとがそれぞれ重なり、突起68aが中央挿通孔58fに挿通されている。
【0037】
さらに、上方に位置する場合(図7(d))には、中央挿通孔58eと中央挿通孔63a,両側挿通孔59aと両側挿通孔65aとがそれぞれ重なっている。さらに、上方に位置する場合(図7(e))には、中央挿通孔58fと中央挿通孔63a,両側挿通孔59bと両側挿通孔65aとがそれぞれ重なっている。最も上方に位置する場合(図7(f))には、中央挿通孔58gと中央挿通孔63a,両側挿通孔59cと両側挿通孔65aとがそれぞれ重なっている。
【0038】
このように、ハーネス10(ハーネス本体20)は、ダイバーの身長に合わせて、6段階に背面長L1を自由に変更することができることから、例えば、身長150cm程度のダイバーから身長195cm程度のダイバーまで、比較的に大きな身長差のあるダイバーに対しても幅広く使用することができる。これによって、男女を問わず、幅広い年齢層のダイバーが同じ浮力調整用ジャケット1を使用することができ、製造者は異なるサイズの製品を製造する必要がないことから生産性に優れる。また、使用者はダイバーの身長に合わせて複数の製品を準備する必要がないことから、経済的負担が軽減されるともいえる。
【0039】
本実施形態においては、ハーネス本体20の背面長L1のサイズ調整手段は、背面長L1を6段階に変更することができるものであるが、6段階以下又はそれ以上に変更できるものであってもよい。
【0040】
また、図5及び図8を参照すると、ウエスト締付手段40の腰当てパッド41は、ループ状のスライダ45とハーネス本体20に固定された取付バンド22とからなるスライダ機構によって、ハーネス本体20に取り付けられている。腰当てパッド41は、スライダ45を取付バンド22に摺動させることによって自由に上下動が可能であって、図8に示すように、腰当てパッド41は、太い仮想線で示した位置から、細い仮想線で示した位置に、着用者の身体の動きに追従するように上方へ又は下方へ移動することができる。
【0041】
従来、ダイバーの身長に合ったサイズではないハーネスを使用した場合には、たとえショルダーベルトの調整のみによって身体への密着性を図ったとしても、着用者が前屈みになったときにダイバーの肩部とハーネスとの間に隙間が生じ、ダイバーは浮力調整用ジャケットの着用時において十分なホールド感を得ることができなかった。
【0042】
本願人の鋭意検討した結果によれば、着用時において、しっかりとしたホールド感を得るためには、常時、ダイバーの肩部からショルダーベルト11(ショルダーパッド11a)が離間しないこと、ハーネス10が着用者の肩甲骨近傍に当接されていることが必須であり、さらに高いホールド感を得るためには、ダイバーの腰回りに当接される部分が、腰部の小さな動きにも追従して上下方向Yへ移動できることが必要であることが分かった。
【0043】
また、従来の浮力調整用ジャケットでは、ショルダーベルトが固定されたハーネス本体と腰当てパッドとが一体であることから、ダイバーの身体にハーネス本体を密着させるためにショルダーベルトの長さを調整したときに、ハーネス本体が上方へ引き上げられ、それとともに腰当てパッドも上方へ移動することから、ダイバーの腰部よりも上方に腰当てパッドが位置することになり、腰部のフィット性が低下することがあった。
【0044】
本願発明に係るハーネス10によれば、既述のとおり、その背面長L1をダイバーの身長に最適な大きさになるように、複数段階に自由に変更・設定することができることから、ハーネス10をダイバーの身体にフィットさせて、十分なホールド感を与えることができる。さらに、腰当てパッド41を含むウエスト締付手段40は、腰当てパッド41のスライダ45を取付バンド22に摺動させることで、自由に上下動してその位置を変更することができることから、着用者の腰部の小さな動きにも追従させることができる。
【0045】
図9(a)を参照すると、ダイバーは、浮力調整用ジャケット1の着用前に、図7に示した複数の背面長L1のサイズのうちで身長に最適なものを選択して、背面プレート20と中央パネル60とを連結するとともに、ウエスト締付手段40を胴回りの最適な位置に配置する。次に、ダイバーは、直立した状態において、着用するために少し緩んだ状態のショルダーベルト11をバックルを介して長さ調整して緊張状態として、身体に密着させる。
【0046】
このとき、ショルダーベルト11が取り付けられたハーネス本体20がショルダーベルト11の動きによって上方へ引き上げられた状態となるが、ウエスト締付手段40は、ハーネス本体20と別体であるから、ハーネス本体20とともに上方へ引き上げられることはなく、胴回りの最適な位置を維持することができる。
【0047】
具体的には、ハーネス本体20が上方へ引き上げられて取付バンド22が上方に移動しても、腰当てパッド41のスライダ45を摺動して移動するだけであるから、腰当てパッド41を含むウエスト締付手段40がそれとともに上方へ移動することはない。
【0048】
また、図9(b)を参照すると、ダイバーが前屈みになったときに、身体の動きに合わせてウエスト締付手段40が下方へスライド移動することから、腰当てパッド41は腰部に対して最適な位置において当接した状態を維持することができる。さらに、腰当てパッド41にはウエストベルト12が連結されていることから、腰当てパッド41が上下動する際には、ウエストベルト12も同様に上下動することになる。したがって、ダイバーの身体の動きに追従するように腰当パッド41とウエストベルト12とが上下動して、それぞれ、ダイバーの腰部と腹部とにフィットされた状態を維持することができる。
【0049】
本発明に係るBCジャケットにおいては、着用後において、ハーネス本体20の背面長L1を調整する必要がないことから、背面プレート50と中央パネル60との連結は、ボルトや連結部材70等を使用した機械的な手段によるものであるのに対し、ウエスト締付手段40は、着用中におけるダイバーの大小様々な動きに追従するように移動させる必要があることから、その連結には、ループ状のスライダ45と取付バンド(レール)22とからなる簡易なスライド機構を採用している。このように、用途、機能に応じて、それぞれ最適な連結手段を選択した結果として、異なる連結手段となっている。
【0050】
再び、図6を参照すると、スライダ45の開口幅と取付バンド22の幅寸法とはほぼ同じであることから、スライダ45は自重によって下方へ移動し難くなるといえる。
【0051】
なお、取付バンド22は、所要の摩擦抵抗力を発揮する限りにおいて、布及び合成樹脂のほかに、金属、ゴム、ガラス、化学繊維等の公知の材料から形成することができる。
【0052】
図8に示すとおり、スライダ45は、腰当てパッド41の上下方向Yの寸法の中央部分よりも上方に位置していることが好ましい。かかる場合には、スライダ45が当該中央部分に位置する場合に比べて、腰当てパッド41において、スライダ45から下方へ延びる面積が大きくなり、スライダ45が最下に位置するときであっても、ダイバーの腰部を広く覆うこともできる。また、取付バンド22とスライダ45とによるスライド機構は、図示例のように、幅方向Xにおいて離間対向した一対のものではなく、2つ以上であってもよいし、1つだけでもよい。
【0053】
(他の実施例)
他の実施例として、例えば、ハーネス本体20とウエストベルト12とが一体に形成されていて、ショルダーベルト11がそれらと別体に構成されていてもよい。また、浮力調整用ジャケット1は、本願発明の技術的効果を奏する限りにおいて、ハーネス10、ベスト3及びウエストベルト12が一体に形成されていて、それとは別体にウエスト締付手段40を形成するものであってもよい。
【0054】
また、図示例においては、ハーネス本体20は、別体からなるハーネス本体20と中央パネル60とからなる分離構造を有しているが、背面長L1が複数サイズに調整可能なハーネス本体20と中央パネル60とが一体に形成されているものであってもよい。
【0055】
<第2実施形態>
図10及び図11を参照すると、本実施形態に係る浮力調整用ジャケット1においては、サイドパネル30にウエイト手段80が配置されている。ウエイト手段80は、ウエイト81と、ウエイト81を挿入、挿抜可能なポケット82を有するウエイト袋83とを含む。ウエイト81は、ハンドル部81aを有しており、ダイバーはハンドル部81aを把持することで、ウエイト81をポケット82に容易に挿入、挿抜することができる。
【0056】
また、ウエイト袋83は、袋本体84と、袋本体84に一部が固定されたフラップ85とを有する。フラップ85は、袋本体84に固定された固定端部85aと、袋本体84に固定されていない自由部85bとを有し、自由部85bの外周縁部の内面には複数のフック要素が位置する係止部が位置する。袋本体84のフラップ85と対向する面の外周縁部には複数のループ要素からなる非係止部が位置している。
【0057】
ウエイト袋83のポケット開口82aからウエイト81をポケット82に収納し、フラップ85の自由部85bと袋本体84との間にサイドパネル30の先端部31を介在された状態で、フラップ85の自由部85bの係止部と袋本体84の被係止部とを連結することによって、ウエイト袋83をサイドパネル30に着脱可能に取り付けることができる。
【0058】
水中において、ダイバーは肺による呼吸コントロール(トリミング)によって浮力を調整するが、従来の浮力調整用ジャケットにおいては、ウエイト手段はベストの胴回り近傍に位置するポケット等に収容されていたことから、例えば、比較的に身長の大きなダイバーが着用した場合には、ウエスト手段と肺とが離れた位置にあり、肺による呼吸コントロールがし難くかった。
【0059】
本発明の浮力調整用ジャケット1では、ハーネス10が背面長L1のサイズ調整手段を備えることによって、背面長L1をダイバーの身長に合わせて変更することができることから、例えば、比較的に身長の大きなダイバーが着用した場合であっても、その身長に応じてサイドパネル30に取り付けられたウエイト手段80も上方に位置する。
【0060】
したがって、常時ダイバーの肺の近くにウエイト手段80を配置することができ、肺による浮力調整を容易に行うことができる。また、着用状態において、サイドパネル30は、ヒンジ機構を介してダイバーの身体側へ旋回した状態であることから、ベスト3のポケットに配置された場合に比べて、より肺の近くに配置されるといえる。
【0061】
なお、ウエイト手段80の構成は、図示例に限定されるものではなく、例えば、サイドパネル30と一体に構成されていてもよい。
【0062】
本明細書において、浮力調整用ジャケット1を構成する各構成材料には、特に記述がなされている場合を除き、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書において使用されている「第1」、「第2」等の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いてある。
【符号の説明】
【0063】
1 浮力調整用ジャケット
2 エアタンク
10 ハーネス
11 ショルダーベルト
20 ハーネス本体
30 サイドパネル
40 ウエスト締付手段
50 背面プレート
60 中央パネル
80 ウエイト手段
L1 ハーネスの背面長
X 幅方向
Y 上下方向
Z 前後方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11