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特許7513303腫瘍免疫増強剤、その調製方法および適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】腫瘍免疫増強剤、その調製方法および適用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20240702BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240702BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 39/07 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240702BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240702BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240702BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240702BHJP
   C07K 14/34 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
A61K47/64 ZNA
A61K31/7088
A61K35/76
A61K38/16
A61K39/00 H
A61K39/07
A61K45/00
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/31
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K14/34
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022552322
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 CN2021078264
(87)【国際公開番号】W WO2021170111
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】202010129884.6
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522343359
【氏名又は名称】ウーシー ピーエルビー セラピューティクス テクノロジー リミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デン リー
(72)【発明者】
【氏名】チェン シューシャン
(72)【発明者】
【氏名】クー シウシア
(72)【発明者】
【氏名】ゴン シャオハイ
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】Front. Immunol.,2019年,Vol.10, No.2472,p.1-16
【文献】Front. Immunol.,2019年,Vol.10, No.2340,p.1-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/64
A61K 31/7088
A61K 35/76
A61K 38/16
A61K 39/00
A61K 39/07
A61K 45/00
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 37/04
C12N 15/31
C12N 15/62
C12N 15/63
C07K 14/34
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍免疫増強剤であって、
前記腫瘍免疫増強剤は、式Iの構造を有する一つまたは複数のポリペプチド、またはその薬学的に許容される塩を含み、
Z0―Z1―Z2(I)
式において、
Z0は、なしであるか、または個のアルギニンまたはリジン残基からなるペプチドセグメントであり、
Z2は、なしであるか、または個のアルギニンまたはリジン残基からなるペプチドセグメントであり、
Z1は、EQ ID NO:1~からなる群から選択されるペプチドセグメントであることを特徴とする、前記腫瘍免疫増強剤。
【請求項2】
前記腫瘍免疫増強剤は、Z1がSEQ ID NO:1に示される式Iの構造を有するポリペプチド、Z1がSEQ ID NO:2に示される式Iの構造を有するポリペプチド、およびZ1がSEQ ID NO:3に示される式Iの構造を有するポリペプチドを含むことを特徴とする
請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤。
【請求項3】
Z0およびZ2のうちの少なくとも一つは、(Arg)n構造を含み、ここで、nは、3~6の正の整数であることを特徴とする
請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤。
【請求項4】
前記腫瘍免疫増強剤は、腫瘍免疫を増強する活性を有し、CD8 T細胞応答を誘発することを特徴とする
請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤。
【請求項5】
多量体であって、
前記多量体は、直列のm個の単量体によって形成され、腫瘍免疫を増強する機能を有し、ここで、mは、≧2の正の整数であり、前記各単量体は、それぞれ独立して、式Iの構造を有し、
Z0―Z1―Z2(I)
式において、
Z0は、なしであるか、または個のアルギニンまたはリジン残基からなるペプチドセグメントであり、
Z2は、なしであるか、または個のアルギニンまたはリジン残基からなるペプチドセグメントであり、
Z1は、EQ ID NO:1~からなる群から選択されるペプチドセグメントであることを特徴とする、前記多量体。
【請求項6】
単離された核酸分子であって、
ポリペプチドをコードし、前記ポリペプチドは、式Iの構造を有するか、または前記ポリペプチドは、直列のm個の単量体によって形成される多量体であり、ここで、各単量体は、それぞれ独立して、式Iの構造を有し、mは、≧2の正の整数であり、
Z0―Z1―Z2(I)
Z0は、なしであるか、または3~6個のアルギニンまたはリジン残基からなるペプチドセグメントであり、
Z2は、なしであるか、または3~6個のアルギニンまたはリジン残基からなるペプチドセグメントであり、
Z1は、SEQ ID NO:1~7からなる群から選択されるペプチドセグメントであることを特徴とする、前記単離された核酸分子。
【請求項7】
医薬組成物であって、
(a)請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、請求項5に記載の多量体、および/または請求項6に記載の単離された核酸分子、および
(b)薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤を含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は、
(c)腫瘍抗原をさらに含むことを特徴とする
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物は、
(d)樹状細胞活性化剤をさらに含むことを特徴とする
請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、腫瘍ワクチン組成物であることを特徴とする
請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
腫瘍抗原の抗腫瘍活性を改善するための薬物を調製するため、または抗腫瘍ワクチン組成物を調製するための質であって、
前記物質は、請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、請求項5に記載の多量体、および請求項6に記載の単離された核酸分子からなる群から選択されることを特徴とする、前記物質
【請求項12】
キットであって、
前記キットは、
(i)第1の容器、および当該第1の容器に盛る請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤、または前記腫瘍免疫増強剤を含む薬物、
(ii)第2の容器,および当該第2の容器に盛る腫瘍治療薬、ならびに
(iii)前記腫瘍免疫増強剤および前記腫瘍治療薬を同時に投与することによって癌を治療する説明が記載される説明書を含むことを特徴とする、前記キット
【請求項13】
癌を治療するためのキットまたは組成物を調製するための、請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、請求項5に記載の多量体、請求項6に記載の単離された核酸分子、または請求項7に記載の医薬組成物であって、
前記キットまたは組成物は、
(i)請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、請求項5に記載の多量体、請求項6に記載の単離された核酸分子、または請求項7に記載の医薬組成物、および
(ii)腫瘍治療薬を含むことを特徴とする、請求項1に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、請求項5に記載の多量体、請求項6に記載の単離された核酸分子、または請求項7に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、免疫の分野に関し、より具体的には、腫瘍免疫増強剤およびその調製方法と適用に関する。
【0002】
[背景技術]
腫瘍発生の根本的な原因は、異常な細胞成長を促進する組織細胞の遺伝物質の突然変異である。腫瘍細胞の遺伝子突然変異の数は、数千にもなる可能性があるが、実際に腫瘍発生を開始する突然変異遺伝子(ドライバー遺伝子)は、二つまたは三つしか関与しない可能性がある。一部のドライバー遺伝子は、腫瘍治療薬の設計の標的として使用された。研究によると、このような標的薬の臨床的な治療効果は、腫瘍細胞における他の非ドライバー突然変異遺伝子および非標的ドライバー遺伝子の発現状況に依存するため、このような薬物の臨床的な治療効果は、非常に限られている。腫瘍ワクチンの最新の研究の進歩は、アミノ酸残基のコーディングを変更するあれらの遺伝子突然変異を使用して腫瘍を治療できるワクチンを設計することができることを示し、これは、腫瘍治療における重要なマイルストーンである。
【0003】
突然変異をコードする遺伝子がタンパク質として発現されると、抗原提示細胞によって分解され、腫瘍新生抗原と呼ばれるT細胞によって識別できる腫瘍特異的抗原を産生すことができる。新抗原を識別するT細胞は、中枢性免疫寛容によって制限されないため、新抗原は、免疫原性が高く、腫瘍特異的殺傷性CD8T細胞(CTL)応答を誘発する可能性があると考えられる。臨床研究により、このような新生抗原特異的CTLは、腫瘍組織に存在することが確認され、また、このようなCTLの活性は、T細胞成長因子IL―2、免疫チェックポイント阻害剤(PD―1およびCTLA―4モノクローナル抗体)ならびにインビトロでの拡張TILsの注入等の様々な腫瘍治療方法の治療効果を決定する。
【0004】
ほとんどの腫瘍の新生抗原は、患者固有であるため、新生抗原に対するワクチンは、各患者の遺伝子突然変異に基づいて調整する必要がある。さらに、単一の腫瘍における遺伝の突然変異は、ポリクローナル特性を有する。腫瘍のこのような異種性に対処するために、腫瘍ワクチンは、マルチ標的設計戦略を採用する必要がある。公表された腫瘍ワクチンの臨床研究で使用された新生抗原Tエピトープの数は、20個以上である。CD4およびCD8 T細胞応答の検出により、新生抗原の約1/3のみが抗腫瘍T細胞応答を誘発することができ、ここで、90%以上のT細胞は、CD4であることが分かる。腫瘍ワクチンの治療効果を達成する必要があるため、腫瘍特異的殺傷性CD8T細胞応答を刺激する必要がある。このような細胞の活性化および記憶の形成、ならびに腫瘍浸潤には、I型ヘルパーT細胞を必要とする。従って、現在癌ワクチンに使用される補トンとの新生抗原は、I型ヘルパーT細胞応答を効果的に誘発することはできないと推測されることができる。
【0005】
I型ヘルパーT細胞応答を増強するための一つの方法は、外因性Tヘルパーポリペプチドを使用することである。例えば、破傷風毒素Tヘルパーペプチドおよびpan―DRペプチド(PARDE)は、臨床試験に使用された。その結果、これらのポリペプチドは、抗腫瘍CD8CTL応答を効果的に誘導することはできないことが分かる。
【0006】
要約すると、当技術分野では、まだ満足できる抗腫瘍免疫増強剤が不足している。従って、当技術分野では、腫瘍免疫応答に対する有効な免疫増強剤を開発する必要がある。
【0007】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、有効な抗腫瘍免疫応答免疫増強剤およびその調製方法と適用を提供することである。
【0008】
[課題を解決するための手段]
本発明の第1の態様は、腫瘍免疫増強剤を提供し、前記腫瘍免疫増強剤は、式Iの構造を有する一つまたは複数の種類のポリペプチド、またはその薬学的に許容される塩を含み、
Z0―Z1―Z2(I)
式において、
Z0は、なしであるか、または1~10個のアミノ酸残基からなるペプチドセグメントであり、
Z2は、なしであるか、または1~10個のアミノ酸残基からなるペプチドセグメントであり、
Z1は、
(a)SEQ ID NO:1~9に示されるようなポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:1~9のアミノ酸配列の一つ、二つまたは三つのアミノ酸残基の置換、欠失または付加によって形成され、かつヒトおよびマウスのII型組織適合性抗原に結合できる誘導ポリペプチドからなる群から選択されるペプチドセグメントである。
【0009】
別の好ましい例において、前記誘導ポリペプチドは、SEQ ID NO:1~9に示されるポリペプチドのヒトおよびマウスのII型組織適合性抗原に対する≧70%の結合活性を保持する。
【0010】
別の好ましい例において、SEQ ID NO:1~9に示されるポリペプチドに対する前記誘導ポリペプチドの同一性は、≧80%、好ましくは≧90%、より好ましくは≧95%である。
【0011】
別の好ましい例において、前記組織適合性抗原に結合するZ1のIC50は、5~50nmである。
別の好ましい例において、Z0とZ2とが異なる場合、なしである。
【0012】
別の好ましい例において、Z0およびZ2は、少なくとも2~8個、好ましくは3~6個の親水性アミノ酸残基を含む。
別の好ましい例において、Z2がなしであり、かつZ0が2~8個である場合、好ましくは3~6個の親水性アミノ酸残基からなるペプチドセグメントである。
【0013】
別の好ましい例において、Z0がなしであり、かつZ2が2~8個である場合、好ましくは3~6個の親水性アミノ酸残基からなるペプチドセグメントである。
【0014】
別の好ましい例において、前記親水性アミノ酸は、アルギニン、リジンからなる群から選択される。
別の好ましい例において、Z0およびZ2のうちの少なくとも一つは、(Arg)n構造を含み、ここで、nは、3~6の正の整数である。
【0015】
別の好ましい例において、前記式Iの構造は、N末端からC末端までの構造である。
別の好ましい例において、前記式Iの構造は、C末端からN末端までの構造である。
【0016】
別の好ましい例において、「―」は、共有結合(例えば、ペプチド結合)であるか、またはZ0がなしである場合、Z0とZ1との間の「―」は、存在しないか、またはZ2がなしである場合、Z1とZ2との間の「―」は、存在しない。
【0017】
別の好ましい例において、前記腫瘍免疫増強剤は、腫瘍免疫を増強する活性を有する。
別の好ましい例において、記腫瘍免疫増強剤は、殺傷性T細胞応答を誘発することができる。
【0018】
別の好ましい例において、式Iの構造を有する前記ポリペプチドは、一つまたは複数のCD4Thエピトープペプチドを含む。
別の好ましい例において、式Iの構造を有する前記ポリペプチドは、CD4T細胞抗原受容体リガンドである。
【0019】
別の好ましい例において、前記腫瘍免疫増強剤は、Z1がSEQ ID NO:1に示される式Iの構造であるポリペプチド、Z1がSEQ ID NO:2に示される式Iの構造であるポリペプチドおよびZ1がSEQ ID NO:3に示される式Iの構造であるポリペプチドを含む。
【0020】
本発明の第2の態様は、多量体を提供し、前記多量体は、直列のm個の単量体によって形成され、腫瘍免疫を増強する機能を有し、ここで、mは、≧2の正の整数であり、前記各単量体は、それぞれ独立して、式Iの構造を有し、
Z0―Z1―Z2(I)
式において、
Z0は、なしであるか、または1~10個のアミノ酸残基からなるペプチドセグメントであり、
Z2は、なしであるか、または1~10個のアミノ酸残基からなるペプチドセグメントであり、
Z1は、
(a)SEQ ID NO:1~9に示されるようなポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:1~9のアミノ酸配列の一つ、二つまたは三つのアミノ酸残基の置換、欠失または付加によって形成され、かつ組織適合性抗原に結合できる誘導ポリペプチドからなる群から選択されるペプチドセグメントである。
【0021】
別の好ましい例において、mは、2、3、4、5、または6である。
別の好ましい例において、二つの単量体の間は、ペプチド結合、またはペプチドリンカーによって直接結合される。
【0022】
別の好ましい例において、前記ペプチドリンカーは、柔軟なペプチドリンカー、硬性ペプチドリンカー、またはその組み合わせである。
別の好ましい例において、前記ペプチドリンカーは、3~10個のアミノ酸のペプチドリンカーである。
【0023】
本発明の第3の態様は、ポリペプチドをコードする、単離された核酸分子を提供し、前記ポリペプチドは、式Iの構造を有するか、または前記ポリペプチドは、直列のm個の単量体によって形成される多量体であり、ここで、各単量体は、それぞれ独立して、式Iの構造を有し、mは、≧2の正の整数である。
【0024】
別の好ましい例において、前記核酸分子は、DNA、RNAまたはその組み合わせからなる群から選択される。
本発明の第4の態様は、
(a)本発明の第1の態様に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、本発明の第2の態様に記載の多量体、本発明の第3の態様に記載の単離された核酸分子、および/または本発明の第4の態様に記載の医薬組成物、および
(b)薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0025】
別の好ましい例において、前記組成物の剤形は、注射剤である。
別の好ましい例において、前記組成物は、徐放性剤形である。
別の好ましい例において、前記組成物に含まれる本発明の第1の態様に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、または本発明の第2の態様に記載の多量体は、
タンパク質分子(無傷の分子、サブユニット、ドメイン、ポリペプチドおよび組換え操作分子)、脂質、多糖類、脂質と多糖類との複合体からなる群から選択される形態で存在することができる。
【0026】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、
(c)腫瘍抗原をさらに含む。
別の好ましい例において、前記腫瘍抗原は、腫瘍新生抗原ペプチドである。
【0027】
別の好ましい例において、前記腫瘍抗原は、元々抗腫瘍免疫応答を効果的に引き出すことができない抗原である。
別の好ましい例において、前記腫瘍抗原は、天然、人工合成、またはその組み合わせである。
【0028】
別の好ましい例において、前記腫瘍抗原は、短いペプチド、無傷のタンパク質、腫瘍細胞溶解物、不活化腫瘍細胞、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
別の好ましい例において、前記腫瘍抗原は、悪性黒色腫、乳がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、腸がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎細胞がん、多形性神経膠腫を含むがこれらに限定されない、コドン中程度に高い頻度の非同義突然変異を有する悪性腫瘍に由来する。
【0030】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、
(d)DC活性化剤をさらに含む。
別の好ましい例において、前記DC活性化剤は、w/o剤およびo/w剤を含むがこれらに限定されない、ナノ製剤である。
【0031】
別の好ましい例において、前記DC活性化剤は、自己組織化ナノ製剤である。
別の好ましい例において、前記DC活性化剤は、リポソーム、ウイルスキャプシド、不活化細菌からなる群から選択される。
【0032】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、腫瘍ワクチン組成物である。
別の好ましい例において、前記ワクチンは、全細胞ワクチン、細胞溶解物ワクチン、腫瘍組織溶解物ワクチン、腫瘍細胞エクソソームワクチンからなる群から選択される。
【0033】
本発明の第5の態様は、物質の用途を提供し、前記物質は、本発明の第1の態様に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、本発明の第2の態様に記載の多量体、または本発明の第3の態様に記載の単離された核酸分子からなる群から選択され、また、前記物質は、腫瘍抗原の抗腫瘍活性を改選するための薬物の調製、または抗腫瘍ワクチン(腫瘍ワクチン)組成物の調製に使用される。
【0034】
別の好ましい例において、前記薬物またはワクチン組成物は、
(a)ヘルパーT細胞応答、好ましくはI型ヘルパーT細胞応答の誘発、
(b)CD8T細胞応答、好ましくは腫瘍特異的殺傷性CD8T細胞応答の誘発、
(c)B細胞応答の誘発、
(d)抗腫瘍細胞治療、
(e)免疫チェックポイント阻害剤等の他の治療手段との併用からなる群から選択される一つまたは複数の種類の用途のためにさらに使用される。
【0035】
本発明の第6の態様は、薬箱を提供し、前記薬箱は、
(i)第1の容器、および当該第1の容器に盛る本発明の第1の態様に記載の腫瘍免疫増強剤、または前記腫瘍免疫増強剤を含む薬物、
(ii)第2の容器、および当該第2の容器に盛る腫瘍治療薬、ならびに
(iii)前記腫瘍免疫増強剤および前記腫瘍治療薬を同時に投与することによって癌を治療する説明が記載される説明書を含む。
【0036】
別の好ましい例において、前記腫瘍治療薬は、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、放射線療法剤、温熱療法剤、腫瘍溶解性ウイルス、免疫細胞治療剤を含む。
【0037】
別の好ましい例において、前記免疫細胞治療剤は、CAR―T細胞、CAR―NK細胞、TCR―T細胞、DC細胞またはその組み合わせを含む。
【0038】
本発明の第7の態様は、
(i)必要とする対象に本発明の第1の態様に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、本発明の第2の態様に記載の多量体、本発明の第3の態様に記載の単離された核酸分子または本発明の第4の態様に記載の医薬組成物を投与する段階と、
(ii)必要とする対象に腫瘍治療薬を投与する段階とを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0039】
別の好ましい例において、前記段階(i)および(ii)は、同時または連続して実行することができる。
別の好ましい例において、前記必要とする対象は、腫瘍患者を指す。
【0040】
別の好ましい例において、段階(ii)において、従来の投与用量および投与頻度に従って前記腫瘍治療薬を投与する。
別の好ましい例において、前記方法は、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、温熱療法、腫瘍溶解性ウイルス等の既存の腫瘍治療手段を、本出願の腫瘍免疫増強剤と併用することである。
【0041】
別の好ましい例において、前記方法は、細胞治療を本出願の腫瘍免疫増強剤と併用することであり、これらの細胞治療は、DC細胞治療、CAR―T細胞治療、CAR―NK細胞治療等の既存の細胞治療手段を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の第8の態様は、必要とする対象に本発明の第1の態様に記載の腫瘍免疫増強剤またはその薬学的に許容される塩、本発明の第2の態様に記載の多量体、本発明の第3の態様に記載の単離された核酸分子、または本発明の第4の態様に記載の医薬組成物を投与する段階を含む、哺乳動物の腫瘍を予防および/または治療する方法を提供する。
【0043】
別の好ましい例において、前記対象は、ヒトである。
別の好ましい例において、前記腫瘍抗原は、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、乳がん、肺がん、腸がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎細胞がん、多形性神経膠腫等の、中程度頻度のコドンの非同義突然変異を有する悪性腫瘍に由来する。
【0044】
別の好ましい例において、前記方法は、必要とする対象に腫瘍抗原を投与する段階をさらに含む。
別の好ましい例において、前記方法は、必要とする対象に腫瘍治療薬を投与する段階をさらに含む。
【0045】
[発明の効果]
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の一実施例において、UThEがマウス黒色腫の弱い新生抗原の抗腫瘍免疫応答を増強することを示す。
図2】本発明の別の実施例において、UThEがマウス黒色腫の弱い新生抗原の抗腫瘍免疫応答(腫瘍予防)を増強することを示す。図2Aおよび図2Bは、それぞれ腫瘍注射後の日数の関数としての腫瘍体積の変化を示す。
図3】本発明の別の実施例において、UThEがマウス黒色腫に対する治療効果を効果的に増強することを示す。
図4】一実施例において、ワクチン免疫後のマウス血清サンプルにおける抗UThE抗体の検出結果を示す。
図5】別の実施例において、ワクチン免疫後のマウス血清サンプルにおける抗UThE抗体の検出結果を示す。
図6】別の実施例において、ワクチン免疫後のマウス血清サンプルにおける抗新生抗原抗体の検出結果を示す。
図7】別の実施例において、ワクチン免疫後のマウス血清サンプルにおける抗新生抗原抗体の検出結果を示す。
図8】別の実施例において、ワクチン免疫後のマウス脾臓における腫瘍特異的CD8CTLの検出結果を示す。
図9】別の実施例において、免疫化されたマウス脾臓における腫瘍特異的CD8CTLの検出結果を示す。
図10】別の実施例において、腫瘍標的細胞に対する殺傷性CD8CTLの効果的な殺傷作用を示す。
図11】別の実施例において、UThEがマウス肺がん(LLC)の弱い抗原の免疫原性および腫瘍に対する阻害効果を効果的に増強することを示す。
図12】別の実施例において、UThEがマウス黒色腫(B16F10)の弱い抗原の免疫原性および腫瘍に対する阻害効果を効果的に増強することを示す。
図13】別の実施例において、UThEがマウス前立腺がん(RM―1)の弱い抗原の免疫原性および腫瘍に対する阻害効果を効果的に増強することを示す。
図14】別の実施例において、UThEがマウス膵臓がん(PanC―02)の弱い抗原の免疫原性および腫瘍に対する阻害効果を効果的に増強することを示す。
図15】別の実施例において、腫瘍細胞の殺傷に対するUThEの用量効果関係および安全性(マウスの体重は安定する)を示す。
図16】別の実施例において、C57BL/6マウスおよびBalb/CマウスにおけるUThE候補ペプチド、即ち、UThE1―7の腫瘍阻害効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明者らは、広範囲にわたる詳細な研究の後、腫瘍新生抗原ワクチン特異的CD8CTL免疫応答を増強することができる、ジフテリアおよび破傷風毒素タンパク質に由来する一般的なThエピトープペプチドを初めて発見した。実験は、本発明のこのようなポリペプチドが腫瘍ワクチンの抗腫瘍免疫応答効果を増強することができることを示す。これに基づいて、本発明を完成した。
【0048】
具体的には、本発明は、15~21個のアミノ酸残基からなるポリペプチド分子であり、マウスII型組織適合性抗原分子と中程度の親和性を有し、IC50が5~50nmである、UThE1―UThE9を提供する。これらのポリペプチド分子は、疎水性が強すぎるため、合成中に、N末端またはC末端に複数の親水性アミノ酸残基(例えば、アルギニン残基またはリジン残基)を付加する必要がある。これらのポリペプチド分子は、すべて一つまたは複数のThエピトープを有し、80%を超える人々でヘルパーT細胞応答を誘発する機能を支持することができる。
【0049】
活性ポリペプチド
本発明において、「本発明のポリペプチド」、「UThEポリペプチド」、「Thエピトープペプチド」または「UThE1――UThE9」という用語は、交換可能に使用され、すべて式Iの構造を有するポリペプチドを指し、
Z0―Z1―Z2(I)
式において、
Z0は、なしであるか、または1~10個のアミノ酸残基からなるペプチドセグメントであり、
Z2は、なしであるか、または1~10個のアミノ酸残基からなるペプチドセグメントであり、
Z1は、
(a)SEQ ID NO:1~9に示されるようなポリペプチド、
(b)SEQ ID NO:1~9のアミノ酸配列の一つ、二つまたは三つのアミノ酸残基の置換、欠失または付加によって形成され、かつII型組織適合性抗原に結合できる誘導ポリペプチドからなる群から選択されるペプチドセグメントである。
【0050】
本発明のポリペプチドは、腫瘍免疫を増強する機能を有するSEQ ID NO:1~9の配列の突然変異形態を含む。これらの突然変異形態は、1~4個(好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、最も好ましくは1個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端での一つまたは複数(通常は、4個以下、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下)のアミノ酸の付加または欠失を含む(これらに限定されない)。例えば、当技術分野において、性能が同様または類似なアミノ酸で置換する場合、通常タンパク質の機能を変更しない。例えば、C末端および/またはN末端での一つまたは複数のアミノ酸の付加または欠失も、通常タンパク質の構造および機能を変更しない。さらに、前記用語は、本発明のポリペプチドの単量体および多量体形態をさらに含む。当該用語は、線形および非線形のポリペプチド(例えば、環状ペプチド)をさらに含む。
【0051】
本発明のポリペプチド分子の疎水性が過度に強いため、合成中に、N末端またはC末端に複数の親水性アミノ酸残基(例えば、アルギニン残基またはリジン残基)を付加する必要がある。本発明の典型的なポリペプチドは、SEQ ID NO:1~9に示されるポリペプチドのN末端またはC末端への3~6個のアルギニンの付加である。
【0052】
本発明は、UTHEポリペプチドの活性フラグメント、誘導体および類似体をさらに含む。本明細書で使用されるように、「フラグメント」、「誘導体」および「類似体」という用語は、腫瘍免疫を増強する機能または活性を実質的に保持するポリペプチドを指す。本発明のポリペプチドフラグメント、誘導体または類似体は、(i)一つまたは複数の保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド、または(ii)一つまたは複数のアミノ酸残基には置換基を有するポリペプチド、または(iii)DTHEポリペプチドと別の化合物(例えば、ポリエチレングリコール等のポリペプチドの半減期を延長する化合物)との融合によって形成されたポリペプチド、または(iv)追加のアミノ酸配列とこのポリペプチド配列との融合によって形成されたポリペプチド(リーダー配列、分泌配列または6His等のタグ配列と融合によって形成されるタンパク質)であり得る。本明細書の教示に従って、これらのフラグメント、誘導体および類似体は、当業者によく知られている範囲に属する。
【0053】
好ましいクラスの活性誘導体とは、式Iのアミノ酸配列と比較して、最大4個、好ましくは最大3個、より好ましくは最大2個、最も好ましくは1個のアミノ酸が類似または同様の性質のアミノ酸に置き換えられることによってポリペプチドを形成する。これらの保存的に変異したポリペプチドは、好ましくは、表Aによるアミノ酸の置き換えによって生成される。
【0054】
【表1】
【0055】
本発明は、DTHEポリペプチドの類似体をさらに提供する。これらの類似体は、天然DTHEポリペプチドとの違いは、アミノ酸配列の違い、配列に影響を与えない修飾形態での違い、またはその両方であり得る。類似体は、天然L―アミノ酸とは異なる残基(例えば、D―アミノ酸)を有する類似体、および非天然または合成アミノ酸(例えば、β、γ―アミノ酸)を有する類似体をさらに含む。本発明のポリペプチドは、上記で例示された代表的なポリペプチドに限定されないことを理解されたい。
【0056】
修飾(一般に一次構造を変更しない)形態は、インビボまたはインビトロでのポリペプチドのアセチル化またはカルボキシル化等の化学的に誘導された形態を含む。修飾は、例えば、ポリペプチドの合成およびプロセシングまたはさらなるプロセシング段階におけるグリコシル化修飾によって生成されるポリペプチド等の、グリコシル化をさらに含む。このような修飾は、ポリペプチドを、グリコシル化を行う酵素(例えば、哺乳動物のグリコシラーゼまたは脱グリコシラーゼ)に曝露することによって達成することができる。修飾形態は、リン酸化アミノ酸残基(例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、ホスホスレオニン)を有する配列をさらに含む。修飾されることにより、その抗タンパク質の加水分解性能を向上させるか、または溶解性能を最適化するポリペプチドをさらに含む。
【0057】
本発明のポリペプチドは、薬学的にまたは生理学的に許容される酸または塩基に由来する塩の形態で使用されることができる。これらの塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、またはイセチオン酸等の酸と形成される塩を含む(これらに限定されない)。他の塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム)と形成された塩、ならびにエステル、カルバメートまたは他の従来の「プロドラッグ」の形態を含む。
【0058】
腫瘍免疫増強剤
本発明は、式Iの構造を有する一つまたは複数の種類のポリペプチドを含む、腫瘍免疫増強剤を提供する。
【0059】
本発明の腫瘍免疫増強剤は、腫瘍新生抗原ワクチンの特異的CD8CTL免疫応答を増強することができ、腫瘍ワクチンの抗腫瘍免疫応答を増強する活性を有する。
【0060】
好ましい実施形態において、本発明の腫瘍免疫増強剤は、SEQ ID NO.:1~3に示されるポリペプチドまたはその誘導ポリペプチドを含む。
【0061】
腫瘍新生抗原ポリペプチド
遺伝子変異に基づいて癌細胞によって生成される特異的アミノ酸配列変異を有するタンパク質は、「新生抗原」(neoantigen、NeoAg)と呼ばれる。これは、アミノ酸配列の変更がなければ、これらのタンパク質は、抗原性がないはずである。変異が発生すると、これらのタンパク質は、自己免疫細胞の注意を引き付け、一連の免疫応答を引き起こす。
【0062】
本発明の腫瘍免疫増強剤は、腫瘍新生抗原、特に元々抗腫瘍免疫応答を効果的に誘発できない抗原の免疫応答を増強することができる。前記腫瘍抗原は、天然、人工合成、またはその組み合わせであり得る。前記腫瘍抗原は、短いペプチド、無傷のタンパク質、腫瘍細胞溶解物、またはその組み合わせであり得る。
【0063】
好ましい実施形態において、四つの異なる黒色腫細胞B16F10新生抗原ペプチド(NeoAg)がワクチンとして使用されるが、単独で投与される場合、抗原特異的抗腫瘍CTLを生成することはできない。
【0064】
本発明に言及される細胞溶解物は、細胞を等体積のリン酸緩衝液に懸濁し、凍結融解法により細胞を破砕し、10000gで10分間遠心分離して、上清を細胞溶解物として使用して沈殿物除去する。
【0065】
コード配列
本発明は、DTHEポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにさらに関する。好ましいコード配列は、SEQ ID NO:1~9に示される短いペプチドをコードする。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA形態またはRNA形態であり得る。DNAは、コード鎖または非コード鎖であり得る。本発明のポリヌクレオチドの全長配列またはそのフラグメントは、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成法によって得られることができる。現在、化学合成によって、本発明のポリペプチド(またはそのフラグメント、またはその誘導体)をコードするDNA配列を得ることができる。次に、当該DNA配列を、当技術分野で知られている様々な既存のDNA分子(またはベクター等)および細胞に導入することができる。
【0067】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、ならびに本発明のベクターまたはUTHEポリペプチドのコード配列で遺伝子操作された宿主細胞にも関する。
【0068】
UThEポリペプチドの調製
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチドまたは合成ポリペプチドであり得る。本発明のポリペプチドは、化学的に合成されることができるか、または組換えされることができる。対応的に、本発明のポリペプチドは、従来の方法によって人工的に合成することができるか、または組換え法によって生成することができる。
【0069】
好ましい実施形態において、化学合成法によって、末端に6個のArgを有するUThEポリペプチドを合成することができ、HPLC精製収率は、20%を超え、純度は、99.9%を超える。
【0070】
好ましい方法は、液相合成技術または例えば、Boc固相法、Fmoc固相法または両方の方法の併用等の固相合成技術を使用することである。固相合成によりサンプルを迅速に得ることができ、標的ペプチドの配列特徴に応じて、適切なレジンベクターおよび合成システムを選択することができる。例えば、Fmocシステムにおいて好ましい固相ベクターは、ペプチドのC末端アミノ酸に結合したWangレジンであり、Wangレジンの構造は、ポリスチレンであり、アミノ酸の間のアームは、4―アルコキシベンジルアルコールであり、25%ヘキサヒドロピリジン/ジメチルホルムアミドで室温下で20分間処理して、Fmoc保護基を除去し、所定のアミノ酸配列に従って、C末端からN末端に一つずつ伸長させる。合成完了後、4%p―クレゾールを含むトリフルオロ酢酸を使用して、合成されたプロインスリン関連ペプチドをレジンから切断し、かつ保護基を除去し、ろ過してレジンを除去した後、エーテルで沈殿させることによって粗ペプチドを得ることができる。得られた生成物の溶液を凍結乾燥した後、ゲルろ過および逆相高圧液体クロマトグラフィーによって必要とするペプチドを精製する。Bocシステムを使用して固相合成する場合、好ましくは、レジンは、ペプチドのC末端アミノ酸が結合しているPAMレジンであり、PAMレジンの構造は、ポリスチレンであり、アミノ酸の間のアームは、4―ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドであり、Boc合成システムにおいて、脱保護、中和、カップリングのサイクルにおいて、TFA/ジクロロメタン(DCM)を使用して保護基Bocを除去し、かつジイソプロピルエチルアミン(DIEA/ジクロロメタン)で中和する。ペプチド鎖の凝縮完了後、p―クレゾール(5~10%)を含むフッ化水素(HF)を使用して0℃下で1時間処理する場合、レジンからペプチド鎖を切断し、同時に保護基を除去する。50~80%酢酸(少量のメルカプトエタノールを含む)でペプチドを抽出し、溶液を凍結乾燥した後、モレキュラーシーブSephadex G10またはTsk―40fを使用してさらに単離および精製し、次に高圧液相で精製して、必要とするペプチドを得る。ペプチド化学の分野で知られている様々なカップリング剤およびカップリング方法を使用して各アミノ酸残基をカップリングすることができ、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)または1,1,3,3―テトラ尿素ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)等を使用して、直接カップリングすることができる。合成された短いペプチドの純度および構造は、逆相高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析によって確認されることができる。
【0071】
別の方法は、組換え技術を使用して本発明のポリペプチドを生成することである。従来の組換えDNA技術によって、組換えDTHEポリペプチドを発現または産生するために本発明のポリヌクレオチドを使用することができる。一般に次のような段階がある:
(1)本発明のDTHEポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(または変異体)を使用するか、または当該ポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターで適切な宿主細胞を形質転換または形質導入する段階、
(2)適切な培地で宿主細胞を培養する段階、
(3)培地または細胞からタンパク質を単離および精製する段階。
【0072】
組換えポリペプチドは、細胞内でまたは細胞膜で発現されることができるか、または細胞外に分泌されることができる。必要に応じて、その物理的、化学的および他の特性を使用して、様々な単離方法によって組換えタンパク質を単離および精製することができる。これらの方法は、当業者によく知られている。これらの方法の例としては、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧滅菌、超処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、他の様々な液体クロマトグラフィー技術、およびこれらの方法の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0073】
本発明のポリペプチドは、短いため、複数のポリペプチドを直列に接続し、組換え発現後、多量体の形態の発現産物を得、酵素切断等の方法によって、必要とする小さなペプチドを形成すると考えられることができる。
【0074】
医薬組成物および投与方法
本発明は、治療的または予防的(例えば、ワクチン)であり得る、医薬組成物をさらに提供する。本発明の医薬組成物は、(a)安全かつ有効量の本発明のポリペプチドまたはその薬学的に許容される塩、および(b)薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤を含む。
【0075】
本発明の目的のために、有効な投与量は、個体に投与される本発明のポリペプチドの約10μg―100mg/剤、好ましくは100~1000μg/剤である。さらに、本発明のポリペプチドは、単独で、または他の治療剤とともに使用することができる(例えば、同じ医薬組成物に調製される)。
【0076】
本発明において、本発明のポリペプチドおよび腫瘍抗原を含み、通常「薬学的に許容されるベクター」と組み合わせる、予防的医薬組成物は、ワクチン組成物であり得る。
【0077】
「薬学的に許容されるベクター」という用語は、治療剤の投与に使用されるベクターを指す。当該用語は、それ自体が当該組成物を受け取る個体に有害な抗体の生成を誘発せず、投与後に過度の毒性を有さない等のような医薬ベクターを指す。これらのベクターは、当業者によく知られている。レミントンの薬物科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co.、N.J.1991))で、薬学的に許容される賦形剤の十分な議論を見つかることができる。このようなベクターは、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、アジュバントおよびその組み合わせ含む(これらに限定されない)。さらに、これらのベクターには、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等の補助性物質が存在することができる。
【0078】
さらに、本発明の(ワクチン)組成物は、追加のアジュバントをさらに含むことができる。代表的なワクチンアジュバントは、例えば、水酸化アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム無水等の無機アジュバント、例えば、人工的に合成された二本鎖ポリヌクレオチド(二本鎖ポリアデニル酸、ウリジル酸)、レバミゾール、イソプロリノシン等の合成アジュバント、例えば、フロイントアジュバント、落花生油乳化アジュバント、鉱油、植物油等の油剤等の種類を含む(これらに限定されない)
アジュバントは、現在およびこの後の研究において、ワクチンアジュバントに有用であると考えられる様々な新規アジュバントおよびアジュバント成分をさらに含む。
【0079】
通常、ワクチン組成物または免疫原性組成物を液体溶液または懸濁液等の注射剤に調製することができ、注射前に溶液または懸濁液、液体賦形剤に適した固体形態に調製することもできる。当該製剤は、リポソームに乳化またはカプセル化して、アジュバント効果を増強することができる。
【0080】
組成物は、単一または多成分の剤形に調製することができる。各剤形は、所望の治療効果を生み出すために計算された所定量の活性物質、および適切な医薬賦形剤を含む。
【0081】
本発明の組成物が調製されると、静脈内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、皮内、癌の付近、または局所投与を含むがこれらに限定されない、従来の経路によって投与することができる。予防または治療される対象は、動物、とくに人間であり得る。
【0082】
本発明の組成物が実際の治療に使用される場合、使用状況に応じて異なるサイケの様々な医薬組成物を使用することができる。これらの医薬組成物は、従来の方法に基づいて混合、希釈または溶解することによって処方されることができ、また、場合によって、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、希釈剤、緩衝剤、等張剤(isotonicities)、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤および共溶媒剤等の適切な薬物添加剤を加え、当該調製プロセスは、剤形に従って、通常の方法で実施することができる。
【0083】
本発明の医薬組成物は、徐放剤の形態で投与することができる。例えば、短いペプチドDTHEまたはその塩は、ベクターとして徐放性ポリマーを有するピルまたはマイクロカプセルに組み込まれることができ、次に当該ピルまたはマイクロカプセルを、手術を通じて、治療される組織に移植する。徐放性ポリマーの例として、エチレン―酢酸ビニルコポリマー(ethylene-vinyl acetate copolymer)、ポリヒドロメタアクリレート(polyhydrometaacrylate)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、メチルセルロース(methylcellulose)、乳酸ポリマー、乳酸―グリコール酸コポリマー等を含み、好ましくは、例えば、乳酸ポリマーおよび乳酸―グリコール酸コポリマー等の生分解性ポリマーを含む。
【0084】
本発明の医薬組成物が実際の治療に使用される場合、有効成分としての短いペプチドDTHEまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、治療される各患者の体重、年齢、性別、症状の程度に応じて合理的に決定することができる。
【0085】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(a)本発明は、複合抗原ベクター技術を使用して、腫瘍新生抗原を最大限に識別する。
【0086】
(b)本発明のポリペプチドを使用することによって調製されたワクチンの純度および品質は、制御がより容易であり、安全性が高く、毒性および副作用が少ない。
【0087】
(c)ヒトの免疫応答率は、高く、より効果的である。
(e)本発明のポリペプチドは、インビトロで免疫細胞の活性化効率を改善することができる。
【0088】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてされに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。
【0089】
調製実施例1.UThEの合成
本調製実施例において、化学合成法を使用して、以下の表にアミノ酸配列を示すUThEポリペプチドを合成し、そのうちの#1、#2、#3の組み合わせを以下の実施例に使用する。
【0090】
【表2】
【0091】
調製実施例2.B16F10腫瘍新生抗原ペプチドの調製
本調製実施例において、化学合成法を使用して、以下のアミノ酸配列を有する新生抗原ペプチド(neoAg)を合成する。
四つの新生抗原ペプチド(neoAg)のアミノ酸配列は、次のとおりである。
【0092】
【表3】
【0093】
調製実施例3.腫瘍細胞溶解物の調製
細胞を等体積のリン酸緩衝液に懸濁し、凍結融解して細胞を破壊した後、10000gで10分間遠心分離して沈殿物を除去した後に上清を細胞溶解物として使用する。腫瘍抗原として、それぞれB16F10細胞溶解物、LLC細胞溶解物、およびHepa1―6細胞溶解物を調製する。
【0094】
実施例1.UThEによる黒色腫の弱い新生抗原の抗腫瘍免疫応答の増強
前臨床研究でマウスの抗腫瘍免疫応答の誘導に効果がないことが示されるB16F10細胞系からの四つの新生抗原ペプチド(neoAg)を選択する。B16F10は、マウスの黒色腫細胞である。
四つのneoAgペプチド(#1、#2、#3および#4)を1:1:1:1の重量比で混合し、UThEペプチドおよびアジュバントと一緒にワクチンに調製し、マウスを免疫した後、その抗腫瘍効果を検出する。具体的な方法は次のとおりである。
【0095】
C57BL6マウス(6週齢、各実験群に7匹)を1週間間隔で3回免疫する。マウス1匹あたりの免疫化ごとに200μLのワクチンを使用し、それぞれ四肢近くの外側部位に50μLを皮下注射する。200μLのワクチンの各成分の投与量は、neoAg50μg、DThE50μg、Alum300μgおよびCpG20μgである。ワクチン注射液は、PBSで調製する。実験群は、(1)PBS群(Alum+CpG+PBS)、(2)neoAg群(neoAg+Alum+CpG+PBS)、(3)neoAg+UThE群(neoAg+UThE+Alum+CpG+PBS)である。3回目の免疫後3日目に、マウスの右脇の下に10個のB16F10細胞を皮下接種する。細胞を100μLのPBSに懸濁する。次に腫瘍の成長状況を観察して記録する。
結果は、図1および表1に示されたとおりである。接種後7日目に、マウスは腫瘍を発症し始める。15日目に、PBS、NeoAgおよびNeoAg+UThEの各群のマウスの腫瘍の平均体積(mean±SEM)は、それぞれ785±153mm、890±80mmおよび328±65mmである。
【0096】
【表4】
【0097】
結果は、PBS群と比較して、NeoAg群において、neoAgおよびアジュバント(Alum+CpG)の投与は、腫瘍形成を阻害することはできなことを示す。NeoAg+UTh群において、腫瘍成長は、大幅に阻害された。
【0098】
実施例2.UThEによる黒色腫の弱い新生抗原の抗腫瘍免疫応答の増強
本実施例の方法は、実施例1の方法と基本的に同じであり、違いは、腫瘍抗原としてB16F10細胞溶解物またはneoAgを使用するワクチンの調製および免疫化の回数である。方法は、次のとおりである。
C57BL/6マウス(6週齢、各実験群に5匹)を1週間間隔で4回免疫する。各マウスの四肢近くの四つの外側部位に、1部位あたり50μLのワクチンを注射する。1回目および2回目の各200μLのワクチンの成分の投与量は、neoAgまたはB16F10細胞溶解物25μg、UThE25μgアジュバント(adj)25μgおよびMF59100μLである。アジュバントは、12.5ugのCpG,12.5μgのPolyI:Cを含み、PBSで調製する。3回目および4回目の各200μLのワクチンの各成分の投与量は、neoAgまたはB16F10細胞溶解物12.5μg、UThE12.5μg、アジュバント(adj)12.5μgおよびMF59μLである。アジュバントは、6.25μgのCpG、および6.25μgのPolyI:Cを含み、PBSで調製する。各群の投与状況は、次のとおりである。
【0099】
4回目の免疫後3日目に、マウスの右脇の下に10個のB16F10細胞を皮下接種する。細胞を100μLのPBSに懸濁する。次に腫瘍の成長状況を観察して記録する。腫瘍が見える場合、1日間隔で腫瘍体積を測定する。
【0100】
結果は、図2および表2に示されたとおりである。腫瘍細胞の注射から19日目まで、腫瘍の成長速度および体積の大きさの順序は、adj群>UThE+adj群>neo+adj群>neo+UThE+adj群>Lys+UThE+Adj群である。ここで、Lys+UThE+Adj群のマウスは、19日目にも腫瘍が発症しない。さらに、Neo+UThE+Adj群のマウスの腫瘍体積も、小さく、かつ成長が遅い(図2A)。
【0101】
19日目に、adj群、UTEh+adj群、neo+adj群、neo+UThE+adj群およびLys+UThE+Adj群の腫瘍体積の平均(mean±SEM)は、それぞれ801.1±821.7mm、517.4±615.5mm、431.8±886.7mm、317.8±314.4mmである(図2B)。
【0102】
【表5】
【0103】
上記結果は、免疫応答がない抗原ペプチド(NeoAgまたはB16F10細胞溶解物)をUThEペプチドと併用する場合、ワクチン接種マウスで腫瘍成長が有意に阻害され、腫瘍細胞溶解物+UThEペプチドを使用する場合、腫瘍成長を完全に阻害することができることを示す。
【0104】
実施例3.黒色腫B16F10に対するUThEによる治療効果の効果的な増強
実施例1~3において、UThEペプチドの事前投与は、免疫増強剤として作用し、腫瘍抗原ペプチドの抗腫瘍効果を増強することができることが確認された。本実施例において、担癌マウスへの腫瘍免疫増強剤UThEペプチドの投与が、腫瘍に対する治療効果を増強できるかどうかをさらに検証する。
【0105】
方法は、次のとおりである。腫瘍治療をシミュレートし、まず腫瘍細胞を接種し、次にUThE免疫増強剤で治療する。
1×10個のB16F10細胞をマウスの脇の下近くの右前肢に接種し、5日後に、マウスを免疫する。各マウスに、後肢近くの二つの外側の注射部位に100μLのワクチンを1部位あたり50μLを接種する。各200μLのワクチンの各成分の投与量は、UThE25μg、アジュバントAdj、MF59 100μLである。アジュバントは、12.5μgのCpG、および25μgのPolyI:Cを含み、PBSで調製する。1週間隔で1回、合計4回の免疫を行う。腫瘍が発症し始めた後、腫瘍サイズおよびマウスの体重を秤量する。
結果は、図3および表3に示されたとおりである。
【0106】
【表6】
【0107】
結果は、担癌マウスにおいて、UThEの投与が、マウスの細胞免疫を効果的に増強し、腫瘍細胞の成長を阻害することができることを示す。
【0108】
実施例4.ELISA法によるUThE増強新生抗原ペプチドNeoAgによる体液性免疫応答の検出
マウスの免疫後の血清を、0.1%BSAのPBSで1:100の体積比で希釈する。96ウェルプレートに100μLの新生抗原ペプチド溶液(10μg/mLのpH9.5炭酸緩衝液)を加え、4℃下で一晩コーティングする。次に、96ウェルプレートを0.1%BSAのPBSで室温下で2時間ブロックする。ブロッキング溶液を吸引した後、100μLの希釈血清を加え、室温下で1時間インキュベートし、その後血清を吸引し、96ウェルプレートを0.05%Tween20 PBSで3回洗浄し(毎回5分間インキュベートする)、1:5000希釈HRP―カップリングヤギ抗マウスIgG、IgG1、IgG2a、IgG2bを加える。室温下で1時間インキュベートした後抗体溶液を吸引する。96ウェルプレートを0.05%Tween20 PBSで3回洗浄し、再蒸留水で1回洗浄し、説明書に従ってTMBで発色させる。マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を読み取る。
【0109】
結果は、図4図7に示されたとおりである。
図4は、免疫化されたマウスの血清サンプル中のUThE抗体のELISA検出結果を示す。マウスをDThE+CpG+polyI:C+MF59ワクチンで1週間間隔で4回免疫し、免疫10日後に7.5×10個のB16F10細胞を接種し、マウスの腫瘍体積は、1500mmに達するか、または腫瘍接種後30日目に、マウスを犠牲にし、血液を採取する。IgG1およびIgG2が同時に存在し、かつその濃度比が1より大きいため、Tヘルパー細胞応答は、I型+II型の混合型であり、II型応答は、より強い。
【0110】
図5は、免疫化されたマウスの血清サンプル中のUThE抗体のELISA検出結果を示す。マウスをneoAg+UThE+CpG+polyI:C+MF59ワクチンで1週間間隔で4回免疫し、免疫10日後に7.5×10個のB16F10細胞を接種し、マウスの腫瘍体積は、1500mmに達するか、または腫瘍接種後30日目に、マウスを犠牲にし、血液を採取する。IgG1およびIgG2が同時に存在し、かつその濃度比が1より大きいため、Tヘルパー細胞応答は、I型+II型の混合型であり、II型応答は、より強い。
【0111】
図6は、免疫化されたマウスの血清サンプル中のneoAg抗体のELISA検出結果を示す。マウスをneoAg+CpG+polyI:C+MF59ワクチンで1週間間隔で4回免疫し、免疫10日後に7.5×10個のB16F10細胞を接種し、マウスの腫瘍体積は、1500mmに達するか、または腫瘍接種後30日目に、マウスを犠牲にし、血液を採取する。産生された抗体は、主にIgG2であり、従って、Tヘルパー細胞応答は、I型である。
【0112】
図7は、免疫化されたマウスの血清サンプル中のneoAg抗体のELISA検出結果を示す。マウスをneoAg+UThE+CpG+polyI:C+MF59ワクチンで1週間間隔で4回免疫し、免疫10日後に7.5×10個のB16F10細胞を接種し、マウスの腫瘍体積は、1500mmに達するか、または腫瘍接種後30日目に、マウスを犠牲にし、血液を採取する。IgG1およびIgG2が同時に存在し、かつその濃度比が1より大きいため、Tヘルパー細胞応答は、I型+II型の混合型であり、II型応答は、より強い。
【0113】
図4図7の結果は、UThEペプチドが腫瘍免疫増強剤として、腫瘍新生抗原に対する体液性免疫応答を有意に増強させることができることを示す。
【0114】
実施例5.UThEポリペプチドによるneo―Ag特異的CD8CTL細胞応答の促進
本実施例において、UThEポリペプチドがneoAg特異的CTL細胞応答を促進するかどうかを検証する。
【0115】
方法は、次のとおりである。免疫したマウス脾臓リンパ球をUThEまたはneoAg抗原提示細胞と五日間インキュベートした後、Tリンパ球またはCD8T単離キットを使用して、リンパ球を精製する。INF―γ捕捉抗体でコーティングされたイムノスポット96ウェルプレートに、10の精製リンパ球を含む100μLの培地を加える。37℃下で、5%COで16時間培養する。次に、イムノスポットキットでINF―γを分泌するT細胞の数を検出し、Tエフェクター細胞を腫瘍標的細胞と20:1の比率で共培養した後、LDHで細胞殺傷を検出する。
【0116】
UThEまたはneoAg抗原提示細胞樹状細胞の調製方法:同じ系統の健康なマウスを安楽死させた後、皮質を分離し、前脚および後脚の骨を取り、ハサミで脚の骨の両端を切り取り、PBS(1%FBSを含む)が含まれる1mlの注射器を使用して、針を脚の骨の一端にあるある赤い点に向け、その中の骨髄細胞を洗い流す。ストローで組織片を穏やかに吹きながら分散させ、200メッシュのふるいを通して50mlの遠心分離管に移し、400gで10分間遠心分離する。PBSで細胞を再懸濁し、赤血球溶解液を加え、400gで15分間遠心分離する。細胞をカウントし、24ウェルプレートに接種し(5×10~1×10個/mlが最適である)、IL―4を加えて培養を7日間維持し、25ng/mlのTNFaを加え、4時間後に10μg/mlの対応する抗原(UThEおよびNeoAg)を加える。
【0117】
マウス脾臓リンパ球の調製方法:実験群のマウスの脾臓を採取し、研磨および粉砕後に培地を200メッシュのふるいで400g、8分間洗浄し、遠心分離して上清を除去し、赤血球溶解液から赤血球を除去し、PBSで細胞を再懸濁しかつカウントし、培地にIL2(20ng/ml)を加えて培養し続ける。
【0118】
ELIspot実験結果は、図8および図9に示されたとおりである。腫瘍標的細胞(20:1)に対するCTLエフェクター細胞の殺傷効果は、図10に示されたとおりである。結果は、UThEペプチドが腫瘍免疫増強剤として、腫瘍新生抗原特異的CD8CTL細胞応答を有意に増強できるため、腫瘍ワクチンの免疫効果を効果的に増強することができることを示す。
【0119】
実施例6.UThEによる腫瘍溶解物の抗腫瘍免疫応答の増強
本実施例の方法は、実施例1および実施例2の方法と基本的に同じであり、違いは、元の黒色腫細胞B16F10の実験に基づいて、肺がん細胞LLC、前立腺がん細胞RM―1、膵臓がん細胞PanC―02を増加することであり、ワクチンの調製および免疫の回数は、基本的に同じであり、各細胞の溶解物腫瘍抗原を使用する。方法は、次のとおりである。
【0120】
C57BL/6マウス(6週齢、各実験群に4~6匹)を1週間間隔で4回免疫する。各マウスの後肢の基部の二つの部位に、1部位あたり50μLのワクチンを皮下注射する。四つの免疫化投与量は、同じであり、各50μLのワクチン成分の投与量は、細胞溶解物25μgおよびUThE25μgであり、アジュバントは、25μLのMF59、25ugのCpG、12.5μgのPolyI:Cを含み、PBSで調製する。
【0121】
各群の投与状況は、次のとおりである。
4回目の免疫後3日目に、マウスの右脇の下の近くに皮下接種し、ここで、B16F10細胞の接種量は、7.5×10であり、LLC細胞の接種量は、1×10であり、RM―1細胞の接種量は、1×10である。細胞を100μLのPBSに懸濁する。次に、腫瘍の成長状況を観察して記録する。腫瘍が見える場合、1日間隔で腫瘍体積を測定する。
【0122】
肺がんLLC細胞接種の結果は、図11および表4に示されたとおりである。腫瘍細胞の注射から17日目まで、腫瘍の成長速度および体積の大きさの順序は、Lys+adj群>Lys+Th+Adj群である。17日目の腫瘍の大きさは、図11に示されたとおりであり、腫瘍の平均重量(mean±SEM)は、それぞれ0.4475±0.04211g、および0.235±0.02958gである。
【0123】
【表7】
【0124】
黒色腫B16F10細胞の接種結果は、図12および表5に示されたとおりである。腫瘍細胞の注射から24日までに、腫瘍の成長速度および体積の大きさの順序は、Lys+adj群>Lys+Th+Adj群である。17日目の腫瘍の大きさは、図12に示されたとおりであり、腫瘍の平均体積(mean±SEM)は、それぞれ419.9±165mm、および154.9±111.6mmである。
【0125】
【表8】
【0126】
前立腺がんRM―1細胞の接種結果は、図13および表6に示されたとおりである。腫瘍細胞の注射から24日までに、腫瘍の成長速度および体積の大きさの順序は、Adj群>Th+Adj群>Lys+Adj群>Lys+Th+Adj群である。24日目の腫瘍の大きさは、図13に示されたとおりであり、腫瘍の平均体積(mean±SEM)は、それぞれ1476±436.9mm、1457±377.1mm、1335±384.6mm、および881.3±301.3mmである。
【0127】
【表9】
【0128】
膵臓がんPanC―02細胞の結果は、図14および表7に示されたとおりである。腫瘍細胞の注射から27日までに、腫瘍体積の大きさの順序は、Lys+adj群>Th+adj群>Lys+Th+Adj群である。腫瘍の平均体積(mean±SEM)は、それぞれ0.4475±0.04211mm、および0.235±0.02958mmである。
【0129】
【表10】
【0130】
結果は、免疫増強剤UThEが様々な腫瘍に対して阻害効果を有することを示し、実験室の現在の腫瘍種類に限定すると、UThEは、様々な腫瘍に対して、全部阻害効果を有し、つまり、広域スペクトルの腫瘍阻害が高いと推測することができる。
【0131】
実施例7.UThEの投与量とその腫瘍阻害効果との関係
本実施例の方法は、実施例1、実施例2および実施例6の方法と基本的に同じである。違いは、当該試験方案がB16F10腫瘍治療モデルであり、アジュバントAdjと組み合わせた低投与量から高投与量のUThEのみがマウスの腫瘍治療に使用されることである。各マウスの後肢の基部の二つの部位に、1部位あたり50μLのワクチンを皮下注射する。四つの免疫化投与量は、同じであり、各50μLのワクチン成分は、アジュバント(25μLのMF59、25ugのCpG、12.5μgのPolyI:Cを含む)およびUThEであり、UThEの投与量は、それぞれ30μg、50ugおよび80ugである。
治療された各群の腫瘍発症結果は、図15および表8に示されたとおりである。腫瘍細胞の注射から23日までに、各群のマウスの体重は、正常であり、かつ着実に増加していることを示し、腫瘍の成長速度および体積の大きさの順序は、PBS群>Adj群>Adj+Th―30ug群>Adj+Th―50ug群>Adj+Th―80ug群である。18日目の腫瘍の平均体積(mean±SEM)は、それぞれ480.4±118.6mm、309.9±139.6mm、253.3±70.59mm、115.8±45.05mm、および5.753±5.743mmである。
【0132】
【表11】
【0133】
結果は、適切なアジュバントと組み合わせたUThEが腫瘍阻害効果を達成できることを示し、このような阻害効果は、UThEの含有量が80ugに増加するまでに、UThEの投与量の増加とともに増強され、マウスの体重に影響せず、毒性が見られず、80ugの場合の腫瘍阻害率は、98.8%に達する。UThEが体内に入った後、体内に存在する腫瘍抗原を積極的に取得し、抗原特異的CTLを生成して、腫瘍殺傷を実現し、腫瘍阻害効果を達成できることが示唆される。
【0134】
実施例8.異なる系統のマウスの腫瘍に対するUThEの阻害効果
投与方法は、実施例7の方法と同じであり、UThEの用量効果関係を調査する実施例7とは異なる。実施例8の目的は、異なる系統のマウスの腫瘍に対する同じ投与量の50ugでの各ポリペプチドの阻害効果を調査することである。DThE1―7の各ペプチドの投与量は、50ugであり、アジュバントの使用量は、実施例7と同じである。C57BL/6マウスに10個のB16F10細胞を接種し、Balb/Cマウスに10の4T1細胞を接種し、腫瘍接種後3日目に免疫氏、各群のマウスの腫瘍成長は、図16に示されたとおりである。各ポリペプチドに対する2種類のマウスの腫瘍阻害効果は異なり、これは、2系統のマウスのMHC II種類に関連する可能性があり、後の投与でまずMHC関連種類を考慮して、標的免疫を行うことができることが示唆される。
【0135】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
【配列表】
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