(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ラッセルネット
(51)【国際特許分類】
A01G 9/12 20060101AFI20240702BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240702BHJP
A23K 30/10 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
A01G9/12 A
A01G7/00 601Z
A23K30/10
(21)【出願番号】P 2023126514
(22)【出願日】2023-08-02
【審査請求日】2024-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523294917
【氏名又は名称】パナテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 越三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 傑三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 庸富
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-027040(JP,A)
【文献】特開平09-302581(JP,A)
【文献】特開2001-346456(JP,A)
【文献】特許第7174997(JP,B2)
【文献】特許第5882806(JP,B2)
【文献】特許第7303685(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/12
A01G 7/00
A23K 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦ストランドと、複数の横ストランドとが直交するように配列されたラッセルネットにおいて、
前記縦ストランドが、ループが小さい小ループを有する小ループ部と、前記小ループよりもループが大きい大ループを有する大ループ部とからなる鎖編組織であり、
前記横ストランドが、紐状の紐状体であり、
前記横ストランドが、前記小ループ部に対し交絡により固定されているラッセルネット。
【請求項2】
格子状であり、
前記縦ストランドにおいて、前記大ループ部と前記小ループ部とが交互に配置されており、
格子の上下に前記紐状体が位置し、左右に前記大ループが位置し、交差部に前記小ループ及び前記紐状体が位置している請求項1記載のラッセルネット。
【請求項3】
前記小ループ部が、複数の前記小ループが連続的に連なった小ループ群を形成しており、
前記横ストランドが、前記小ループ群のうちの何れか1つの小ループに対し交絡により固定されている請求項1記載の
ラッセルネット。
【請求項4】
前記大ループ部が、1つの大ループからなり、
前記縦ストランドにおける前記大ループの縦方向の長さが、2.5cm以上であり、且つ
前記縦ストランドにおける前記大ループの縦方向の長さが、前記小ループの縦方向の長さの8倍以上である請求項1記載のラッセルネット。
【請求項5】
前記縦ストランド及び前記横ストランドの素材が、綿、麻、絹、羊毛又はジュートからなる天然繊維、若しくは、前記天然繊維のうちの異なる種類の繊維同士を混紡した混紡繊維である請求項1記載のラッセルネット。
【請求項6】
農作物の栽培において該農作物の成長を促進させるための農産用ネットとして用いられる請求項5記載のラッセルネット。
【請求項7】
牧草用のロールベールを包み込むためのラップネットとして用いられる請求項5記載のラッセルネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な用途に使用可能であり、軽量で且つ強度にも優れるラッセルネットに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットはあらゆる分野で利用されている。
例えば、農産の分野においては、農作物の栽培において該農作物の成長(茎の垂直成長)を促進させるために農産用ネットが用いられている。
具体例としては、草花の栽培に際して茎を所望の方向に誘引するために用いる園芸用補助ネットであって、縦及び横の目合いが10mm~30mmであり、遮光率が10%以下である園芸用補助ネット(農産用ネット)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかる農産用ネットは、ポリプロピレンを素材とし、押出二軸延伸法により形成されるプラスチックネットである。
【0003】
また、畜産の分野においては、牧草用のロールベールを包み込むための牧草用ラップネットが用いられている。
具体例としては、合成樹脂からなるモノフィラメント糸条、マルチフィラメント糸条及び短繊維紡績糸条の群から選ばれる少なくとも1種の糸条を用いて、経編機にて編密度が0.5~20コース/2.54cm、且つ、編地の長さ方向に連なる編目と隣接する編目との間隔が10cm以下となるように編成し、編成後の編地の長さ方向の引張伸度が40~150%であるラップネットや(例えば、特許文献2参照)、編地の長さ方向に並列したセルロース系繊維からなる経糸群が、それぞれ、編地の長さ方向に連続したループにより複数の独立鎖編を形成し、独立鎖編の各ループが他の独立鎖編の他のループとセルロース系繊維からなる緯糸によって連結されてなる編地からなるラップネットが知られている(例えば、特許文献3~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-274736号公報
【文献】特開2014-133965号公報
【文献】国際公開第2014/175300号パンフレット
【文献】特開2018-28158号公報
【文献】特開2020-128600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、何れの分野においても、ネットの更なる軽量化及びコストダウンが求められている。特に、近年では化石燃料の高騰により、原料費が暴騰している。
【0006】
また、農産の分野において、上記特許文献1記載の農産用ネットを含む従来の農産用ネットは、伸縮性が適切ではないという欠点が有る。
同様に、畜産の分野において、上記特許文献3~6に記載のラップネットを含む従来の牧草用ラップネットは、経糸群が、連続したループ(小ループ)からなっているため、適度な伸縮性を有するものの、菱目のネットであるので、横方向の伸縮性が適切ではないという欠点が有る。
すなわち、上述の分野においては、取り扱い性の観点から、縦方向には適度な伸縮性が求められ、横方向には適度な寸法安定性が求められている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、適度な伸縮性を有しつつ、軽量で且つ安価に製造することが可能なラッセルネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、縦ストランドに鎖編組織を採用し、且つ、その縦ストランドの構成として横ストランドを固定する小ループ部以外の部分に、大ループ部を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、複数の縦ストランドと、複数の横ストランドとが直交するように配列されたラッセルネットにおいて、縦ストランドが、ループが小さい小ループを有する小ループ部と、小ループよりもループが大きい大ループを有する大ループ部とからなる鎖編組織であり、横ストランドが、紐状(繊維の束)の紐状体であり、横ストランドが、小ループ部に対し交絡により固定されているラッセルネットである。
【0010】
本発明のラッセルネットにおいては、格子状であり、縦ストランドにおいて、大ループ部と小ループ部とが交互に配置されており、格子の上下に紐状体が位置し、左右に大ループが位置し、交差部に小ループ及び紐状体が位置していることが好ましい。
【0011】
本発明のラッセルネットにおいては、小ループ部が、複数の小ループが連続的に連なった小ループ群を形成しており、横ストランドが、小ループ群のうちの何れか1つの小ループに対し交絡により固定されていることが好ましい。
【0012】
本発明のラッセルネットにおいては、大ループ部が、1つの大ループからなり、縦ストランドにおける大ループの縦方向の長さが、2.5cm以上であり、且つ縦ストランドにおける大ループの縦方向の長さが、小ループの縦方向の長さの8倍以上であることが好ましい。
【0013】
本発明のラッセルネットにおいては、縦ストランド及び横ストランドの素材が、綿、麻、絹、羊毛又はジュートからなる天然繊維、若しくは、天然繊維のうちの異なる種類の繊維同士を混紡した混紡繊維であることが好ましい。
【0014】
このとき、ラッセルネットは、農作物の栽培において該農作物の成長を促進させるための農産用ネットとして用いられることが好ましい。
若しくは、牧草用のロールベールを包み込むためのラップネットとして用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のラッセルネットにおいては、縦ストランドが、小ループ部だけではなく、大ループ部を有しているので、小ループ部のみが連続する場合と比較して、大ループ部を有する分だけ、用いる糸の量を軽減でき、編成速度も飛躍的に向上させることができる。
その結果、ラッセルネットにおいては、材料の使用量が少なくなるため、十分に軽量化することができ、且つ、製造コストも低減することができる。
また、ラッセルネットにおいて、牧草用ラップネットとして用いる場合は、大ループ部を有しているので、牧草が大ループ部の間に入り込み、引っ掛かり易くなるという利点もある。
【0016】
また、上記ラッセルネットは、縦ストランドに鎖編組織を採用することにより、縦方向(長手方向)に適度な伸縮性を付与することができる。
これにより、農産用ネットとして用いる場合は、障害物があったとしても形状を変化させて設置することが可能となり、破損の可能性も低くなる。
また、牧草用ラップネットとして用いる場合は、いわゆるロールベールの外周の凹凸に追従させて、これに取り付けることが可能となる。
【0017】
一方で、横ストランドは、紐状のものを採用しており、それが小ループ部に対し交絡により固定されているので、寸法安定性に優れる。
このため、農産用ネットとして用いる場合は、横の寸法が変わり難いので、支柱に取り付ける際に、展張し易いという利点がある。
また、牧草用ラップネットとして用いる場合は、いわゆるロールベールの外周面を均等な押圧力で確実に覆うことが可能となる。
【0018】
本発明のラッセルネットにおいては、大ループ部と小ループ部とを交互に配置し、格子の上下に紐状体が位置し、左右に大ループが位置し、交差部に小ループが位置するようにすることで、バランス良く十分な軽量化が図れると共に、バランス良く十分な強度を発揮させることができる。
【0019】
本発明のラッセルネットにおいては、小ループ部が、複数の小ループが連続的に連なった小ループ群を形成する場合、小ループの数に応じて、伸縮性を付与することができる。
なお、この場合、横ストランドは、小ループ群のうちの何れか1つの小ループに対し交絡により固定されていればよい。
【0020】
本発明のラッセルネットにおいては、大ループ部が、1つの大ループからなり、縦ストランドにおける大ループの縦方向の長さを上記範囲内とし、且つ、縦ストランドにおける大ループの縦方向の長さを上記範囲内とすることにより、十分な軽量化が図れ、製造コストも十分に低減させることができる。
【0021】
本発明のラッセルネットにおいては、縦ストランド及び横ストランドの素材を、綿、麻、絹、羊毛又はジュートからなる天然繊維、若しくは、天然繊維のうちの異なる種類の繊維同士を混紡した混紡繊維とすることにより、ラッセルネット自体が自然界において生分解可能となるため、環境にも優しいものとなる。
【0022】
本発明のラッセルネットにおいては、軽量で且つ安価に製造することが可能であり、上述したように、適切な伸縮性を有しているので、農作物の栽培において該農作物の成長を促進させるための農産用ネット、若しくは、牧草用のロールベールを包み込むためのラップネットとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るラッセルネットを示す模式平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すラッセルネットの縦ストランドの部分を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すラッセルネットの格子の部分を拡大して示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すラッセルネットを農産用ネットとして用いた例を示す模式斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すラッセルネットを牧草用ラップネットとして用いた例を示す模式斜視図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係るラッセルネットの縦ストランドの部分を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
図1は、本実施形態に係るラッセルネットを示す模式平面図である。
なお、
図1においては、縦ストランド1を破線、横ストランド2を実線で示している。
図1に示すように、本実施形態に係るラッセルネット100は、格子状の繊維ネットであり、複数が等間隔で左右に並設された縦ストランド1と、複数が等間隔で上下方向に並設された横ストランド2とからなる。
そして、縦ストランド1と横ストランド2とが直交するように配列された構成となっている。
なお、縦ストランド1及び横ストランド2は、後述するように、素材が繊維である。
そのため、ラッセルネット100は、フレキシブル性に優れ、屈曲させたり、ロール状に巻いたりすることが可能となっている。
【0026】
図2は、
図1に示すラッセルネットの縦ストランドの部分を拡大して示す平面図である。
図2に示すように、縦ストランド1は、ループが小さい小ループ11aを有する小ループ部11と、小ループ11aよりもループのサイズが大きい大ループ12aを有する大ループ部12とからなる。
換言すると、縦ストランド1は、密度が小さい複数の小ループ11aよりなる部分と、それより密度が大きい単数の大ループ12aよりなる部分とからなる。
そして、縦ストランド1は、大ループ部12と小ループ部11とが交互に配置された構成となっている。
すなわち、縦ストランド1は、経編機で編成された鎖編組織である。
これにより、ラッセルネット100は、縦方向(長手方向)に適度な伸縮性を有することになる。
【0027】
大ループ部12は、1つの大ループ12aからなる。
すなわち、大ループ部12は、小ループ部11との連結部分以外は、互いに独立した(連結されていない)複数本の糸条12a1となっている。
これにより、ラッセルネット100においては、十分な軽量化が図れ、製造コストも十分に低減させることができる。
【0028】
ここで、大ループ12aの縦方向の長さH2は、軽量化及び経済性の観点から、少なくとも2.5cm以上であることが好ましい。
かかる長さH2は、用途に応じて変更することが可能であるが、上述した軽量化及び経済性の観点からは、大きくなる程、好ましい。
なお、大ループ12aの縦方向の長さH2とは、互いの糸条12a1が隣接するように縦方向に直線状に配置した場合の小ループ11aとの連結部分間の距離を意味する。
このため、大ループ12aの縦方向の長さH2は、格子の縦方向のサイズに直接的に関与することになる。
【0029】
また、ラッセルネット100は、農産用ネットとして用いる場合、大ループ12aの長さH2は、農作物の絡み易さの観点から、10~30cmであることが好ましい。
また、ラッセルネット100は、牧草用ラップネットとして用いる場合、大ループ12aの長さH2は、牧草を崩さずに保持する観点から、2.5~10cmであることが好ましい。
【0030】
小ループ部11は、複数の小ループ11aが連続的に連なった小ループ群を形成している。
小ループ部11において、小ループ群における小ループ11aの数は、縦方向の伸縮性を付与する観点から、1~5個であることが好ましい。
なお、小ループ11aの数が5個を超えると、生産性の効果が小さくなる欠点が有る。
ちなみに、本実施形態に係るラッセルネット100においては、3個の小ループ11aが連続的に連なって、小ループ部11を形成している。
【0031】
ここで、1つの小ループ11aの縦方向の長さH1は、一般的な範囲であり、製造し易いという観点から、0.5~1.0cmであることが好ましい。
また、縦ストランド1における大ループ12aの縦方向の長さH2は、軽量化及び経済性の観点から、小ループ11aの縦方向の長さH1の8倍以上であることが好ましい。
【0032】
横ストランド2は、1つの小ループ11aに対し交絡により固定されている。
すなわち、横ストランド2は、小ループ群のうちの1つの小ループ11aに絡めて編成することで縦ストランド1に固定されている。
また、小ループ群のうち、横ストランド2を交絡により固定する小ループ11a(以下単に「交絡小ループ」ともいう。)は、任意で定めることができる。
なお、小ループ群のうち、大ループ12aと連結する小ループは、上下両端に位置する小ループ11aである。
【0033】
このとき、小ループ群が3個以上の小ループからなる場合、中央部に位置する小ループ11aを交絡小ループとすることが好ましい。
すなわち、横ストランド2は、中央部に位置する小ループ11aに対し交絡により固定されていることが好ましい。
この場合、交絡小ループ11aと、大ループ部12との間に、小ループ11aが位置することになるので、横ストランド2と、大ループ部12との間に縦方向の伸縮性を付与することができる。
その結果、作業性が向上し、破損し難くなるという利点がある。
【0034】
横ストランド2は、編成したものではなく、紐状(繊維の束)の紐状体である。
すなわち、繊維を束ねて細長い1本の糸状にしたものである。
なお、撚り加工等が施されていてもよい。
なお、上述した縦ストランド1は、横ストランド2と同一の紐状体を用いて、鎖編組織に編成したものとすることも可能である。
これにより、ラッセルネット100は、横方向(左右方向)の寸法安定性に優れるものとなる。
【0035】
ラッセルネット100において、縦ストランド1及び横ストランド2の素材は、特に限定されないが、綿、麻、リネン、羊毛、カシミヤ、絹、ジュート等の天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリスチレン繊維等の合成繊維、若しくは、これらの繊維のうちの異なる種類の繊維同士を混紡した混紡繊維等が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、縦ストランド1及び横ストランド2の素材は、綿、麻、絹、羊毛又はジュートからなる天然繊維、若しくは、天然繊維のうちの異なる種類の繊維同士を混紡した混紡繊維であることが好ましい。
この場合、ラッセルネット100は、それ自体が自然界で生分解可能となるため、環境に優しいものとなる。
特に、後述する農業用ネットや牧草用ラップネットに用いる場合には極めて有用である。
すなわち、農業用ネットとして使用した場合、従来の農業ネットにおいては、使用後の廃棄作業に大変な労務的負担を強いられるが、本発明の農業用ネットは生分解性であるため、その点が解決できるものである。
また、牧草用ラップネットとして使用した場合は、家畜等が食してしまう問題があるが、本発明の牧草用ラップネットは生分解性であるため、家畜等が食しても殆ど弊害がないという大きな利点がある。
また、縦ストランド1及び横ストランド2の素材は、強度の観点から、ジュートであることがより好ましい。
【0037】
ラッセルネット100は、同形状の格子Lを縦横後方に複数有しており、各格子Lは同じ平面視矩形状となっている。
図3は、
図1に示すラッセルネットの格子の部分を拡大して示す平面図である。
図3に示すように、格子Lは、左右の縦ストランド1と上下の横ストランド2とに囲まれた領域となっている。
具体的には、格子Lの上下に紐状体(横ストランド2)が位置し、左右に大ループ12aが位置し、縦ストランド1及び横ストランド2が交差する交差部3に小ループ11a及び紐状体が位置している。
これにより、上述したように、ラッセルネット100は、バランス良く十分な軽量化が図れると共に、バランス良く十分な強度を発揮させることが可能となっている。
【0038】
ここで、格子Lの形状は、特に限定されず、正方形であっても長方形であってもよい。
また、格子Lの隣り合う横ストランド2の間隔D2は、概ね大ループ12の長さに相当する。一方で、隣り合う縦ストランド1の間隔D1は、農産用ネットとして用いる場合、農作物の絡み易さの観点から、10~30cmであることが好ましく、牧草用ラップネットとして用いる場合、牧草を崩さずに保持する観点から、2.5~10cmであることが好ましい。
【0039】
ラッセルネット100は、軽量で且つ安価に製造することが可能であるため、従来のネットの代替品としてあらゆる分野で用いることができる。
その中でも、ラッセルネット100は、適切な伸縮性を有しているので、農作物の栽培において該農作物の成長を促進させるための農産用ネット、若しくは、牧草用のロールベールを包み込むためのラップネットとして好適に用いることができる。
【0040】
図4は、
図1に示すラッセルネットを農産用ネットとして用いた例を示す模式斜視図である。
なお、
図4においては、ラッセルネット100を横向きに使用しており、縦ストランド1を破線、横ストランド2を実線で示している。
ちなみに、
図4に示すラッセルネット100は、1本の横ストランド2が蛇行するように編成され、隣り合う横ストランド2同士の端部が連結されたラッセルネットを、
図4でいう真ん中で横方向に切断して形成されたものである。
図4に示すように、ラッセルネット100は、畑31(花壇等も含む)の両側に立設された支柱30に展張して用いられる。
畑31には、任意の農作物が植えられており、当該農作物の栽培において、農作物のつるをラッセルネット100に絡ませることで、当該農作物の垂直方向の成長を促進させることができる。
【0041】
なお、ラッセルネット100と支柱30との連結方法は、特に限定されず、従来と同様の方法で行えばよい。
また、上記農作物としては、特に限定されないが、アサガオ、きゅうり、ゴーヤ、へちま、長芋等のつる植物が好適に用いられる。
【0042】
ラッセルネット100は、従来の農産用ネットと比較して、材料の使用量を少なくできるので、十分に軽量化することができ、且つ、製造コストも低減することができる。
また、縦方向に伸縮性を有するので、設置時に、障害物があったとしても形状を変化させて設置することができ、破損の可能性も低くなる。
また、横方向に寸法安定性を有するので、支柱30に取り付ける際に、展張し易いという利点がある。
【0043】
図5は、
図1に示すラッセルネットを牧草用ラップネットとして用いた例を示す模式斜視図である。
なお、
図5においては、縦ストランド1を破線、横ストランド2を実線で示している。
また、
図5に示すラッセルネット100の両側は、実線となっているが、これは縦ストランド1の破線と、牧草の端部を示す実線とが重なったものである。
図5に示すように、ラッセルネット100は、牧草を、いわゆるべ―ラー(大型機械)で円筒状に成形したロールベール32に対し、その外周を覆うように取り付けて用いられる。
【0044】
ラッセルネット100は、従来の牧草用ラップネットと比較して、十分に軽量化することができ、且つ、製造コストも低減することができる。
また、取り付け時においては、大ループ部12を有しているので、牧草が引っ掛かり易くなるという利点もある。
また、縦方向に伸縮性を有するので、ロールベール32の外周の凹凸に追従させて、これに取り付けることが可能となる。
また、横方向に寸法安定性を有するので、ロールベール32の外周面を均等な押圧力で確実に覆うことができる。
【0045】
ラッセルネット100は、経編機で製造される。
具体的には、縦方向に鎖編組織を並列して編成すると共に、大ループ部12と小ループ部11とを交互に繰り返し編成し、任意の小ループ11aで、水平方向に全列に紐状体を挿入、橋架、貫通して、交絡を形成する。
設計条件としては、例えば、小ループ11aは、コース/インチ当たり、0.3~1mm×2~3回で編成し、大ループ12aは、コース/インチ当たり、20~100mm×1~2回で編成することができる。
このため、一般的な経編と比較して、大ループ12aの分だけ、編成速度を向上させることができる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0047】
本実施形態に係るラッセルネット100は、格子状となっているが、菱形が連続するダイヤ状であってもよい。
この場合、対向する辺同士が、大ループ12a、若しくは、紐状体となる。
【0048】
本実施形態に係るラッセルネット100においては、大ループ部12が、1つの大ループ12aからなっているが、複数の大ループからなっていてもよい。
【0049】
本実施形態に係るラッセルネット100においては、3個の小ループ11aが連続的に連なって、小ループ部11(小ループ群)を形成しているが、これに限定されない。
図6は、他の実施形態に係るラッセルネットの縦ストランドの部分を拡大して示す平面図である。
図6に示すように、他の実施形態に係るラッセルネットにおいて、縦ストランド1aは、大ループ部12と小ループ部13とからなり、小ループ部13は、1つの小ループ11aからなっている。
この場合であっても、十分に軽量化することができ、且つ、製造コストも低減することができる。
なお、縦方向の伸縮性には劣るが、伸縮性を要さない用途に用いればよい。
【0050】
本実施形態に係るラッセルネット100は、用途として、農産用ネット及び牧草用ラップネットを例示しているが、これらに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るラッセルネットは、ネットとして利用できる。
具体的には、従来のネットの代替品として利用することができ、特に、農産用ネットや牧草用ラップネットとして好適に利用できる。
本発明に係るラッセルネットにおいては、適度な伸縮性を有しつつ、軽量で且つ安価に製造することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,1a・・・縦ストランド
100・・・ラッセルネット
11,13・・・小ループ部
11a・・・小ループ
12・・・大ループ部
12a・・・大ループ
12a1・・・糸条
2・・・横ストランド
30・・・支柱
31・・・畑
32・・・ロールベール
L・・・格子
【要約】
【課題】適度な伸縮性を有しつつ、軽量で且つ安価に製造することが可能なラッセルネットを提供すること。。
【解決手段】本発明は、複数の縦ストランド1と、複数の横ストランド2とが直交するように配列されたラッセルネット100において、縦ストランド1が、ループが小さい小ループ11aを有する小ループ部11と、小ループ11aよりもループが大きい大ループ12aを有する大ループ部12とからなる鎖編組織であり、横ストランド2が、紐状の紐状体であり、横ストランド2が、小ループ部11に対し交絡により固定されているラッセルネット100である。
【選択図】
図1