(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電池モジュール及びモータ駆動回路
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H02J7/00 H
H02J7/00 P
H02J7/00 A
(21)【出願番号】P 2023556085
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2021040212
(87)【国際公開番号】W WO2023073981
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-01-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507307651
【氏名又は名称】榊原 和征
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】榊原 和征
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-191138(JP,A)
【文献】特開2010-183831(JP,A)
【文献】特開2002-313439(JP,A)
【文献】特開2007-282375(JP,A)
【文献】特開2012-023822(JP,A)
【文献】特開2017-184365(JP,A)
【文献】国際公開第2007/066676(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
H02M 7/00-7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル群と、放電専用端子と、充電専用端子と、を備え、充電時に、前記充電専用端子および通電遮断素子を介して充電電流を前記電池セル群へ入力し、放電時に、前記電池セル群から通電遮断素子を介さずに前記放電専用端子から放電電流を出力する複数の電池モジュールが接続された電池モジュール群と、
3相モータに電力を供給する3相インバータと、を備え、
前記電池モジュール群の放電末期の放電電流が放電初期の放電電流より低くなるように制御し、
前記電池モジュール群の電圧、前記電池モジュール群の電圧低下率、または、前記電池モジュール群の放電電流により計算される前記電池モジュール群の残容量、の少なくともいずれか1個の検知結果に応じて、少なくとも1個
のリチウムイオン二次電池セルの終止電圧を下回らないように前記電池モジュール群の放電電流を制御し、
かつ前記3相インバータの3相の交流電圧出力の少なくとも電圧振幅を調整して前記3相モータへの出力電流を調整するものであって、
前記3相インバータの前記3相のうち、相対的に最高温度である1相、および、他の2相の交流電圧出力の電圧振幅の調整量が異なる、
モータ駆動回路。
【請求項2】
電気自動車を走行するための前記3相モータを駆動する請求項1に記載のモータ駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール及びモータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から、内燃機関すなわちエンジンで駆動する自動車がモータで駆動する電気自動車またはエンジンおよびモータで駆動するハイブリッド自動車に置き換わりつつある。特に、電池電源とモータの個々の性能のみならず、電池電源およびモータを備えるモータ駆動回路の性能が電気自動車の1充電あたりの航続距離延長やハイブリッド自動車の燃費向上に大きく寄与する要素として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池セルが過放電状態となり故障するため放電停止すなわち走行停止せざるを得ない課題がある。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、適切な放電制御をすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、モータ駆動回路であって、電池モジュール群と、3相モータに電力を供給する3相インバータと、を備え、前記電池モジュール群の放電末期の放電電流が放電初期の放電電流より低くなるように制御する。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、適切な放電制御をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電池モジュール2の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【
図2】モータ駆動回路100の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【
図3】電池モジュール20の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【
図4】モータ駆動回路101の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【
図5】モータ駆動回路101の制御アルゴリズム1の制御の概略を示すフローチャート図である。
【
図6】モータ駆動回路の電池モジュール群の放電特性を示すグラフ図である。
【
図7】モータ駆動回路の3相インバータの回路基板の温度特性を示すグラフ図である。
【
図8】モータ駆動回路101の制御アルゴリズム2の制御の概略を示すフローチャート図である。
【
図9】モータ駆動回路103の構成の概略を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電池モジュール2は、
図1に示すように、複数のリチウムイオン二次電池セルを直列接続して成る高電圧定格の電池セル群1Hを、充電電流および放電電流を通電または遮断するための通電遮断素子として極性を対向して直列接続したFET4およびFET5を介して端子7に接続する。モジュールコントローラ30は、前記電池セル群1H内の少なくとも1個のリチウムイオン二次電池セルの電圧、または、シャント抵抗6の両端に現れる電
圧すなわち前記電池セル群1Hの電流を検知し、それらの検知結果に応じて前記FET4または前記FET5をオンまたはオフに操作する。また、モジュールコントローラ30は、詳細図示しない絶縁性通信ライン3を用いてモータ駆動回路100のメインコントローラ12と通信を行い、制御に関する情報を送受信し、前記情報に応じて前記FET4または前記FET5の操作も行う。
【0011】
図2に示すように、モータ駆動回路100は、例えば、3個の電池モジュール2を端子7を介して直列接続して電池モジュール2群を構成し、前記電池モジュール2群が出力する直流電圧を3相インバータ10へ印加する。前記3相インバータ10は、前記電池モジュール2群から入力した直流電圧を3相交流電圧へ変換して前記3相交流電圧を3相モータ11へ印加することにより前記3相モータ11の回転を制御する。メインコントローラ12は、詳細図示しない絶縁性通信ライン3を用いて各電池モジュール2と通信を行いモータ駆動に要する情報の送受信を行う。
【0012】
図3に示すように、電池モジュール20は、前記電池モジュール2のように、充電電流および放電電流の通電を1個の端子7で共用せず放電経路に直列接続された前記2個のFETを介在しない。
【0013】
複数のリチウムイオン二次電池セルを直列接続して成る高電圧定格の電池セル群1Hの正極を、FETを介さずに、直接、放電専用端子8に接続する一方、充電電流を通電または遮断するためのFET5を介して充電専用端子7に接続する。充電経路に前記FET5を配置する理由は、一般に、リチウムイオン二次電池セルの安全性リスクの最大因子が充電の失敗に起因するためである。また、一般に、電気自動車用途において、充電電流値が放電電流値よりも大幅に低いため、当該電池モジュール20のFET5の電流定格を、前記電池モジュール2のFET5の電流定格よりも下げられるためコストダウンできる。前記放電専用端子8と電池セル群1Hの間には、従来技術で用いられるような放電電流を通電または遮断しリチウムイオン二次電池セルの過放電による電池故障を防止する目的のFETを介在しないが、後述の制御アルゴリズム1に従い制御を行うモータ駆動回路101では、電池モジュール20内のリチウムイオン二次電池セルを能動的に過放電状態にしないため、前記放電電流を通電または遮断する過放電防止用FETの介在、および、前記過放電防止用FETの通電時の発熱対策が不要となり、電池モジュールのコストダウンに貢献する。
【0014】
図4に示すように、モータ駆動回路101は、モータ駆動回路100と概ね同じ構成であり、前記電池モジュール2群に代わって3個の電池モジュール20を、放電専用端子8を介して直列接続し電池モジュール20群を成して配置したものである。当該モータ駆動回路101は前記モータ駆動回路100と概ね同じ構成につき基本的なコストアップ要因が無い上に、後述の制御アルゴリズム1に従う制御によって、モータ駆動中の3相インバータ10の回路基板の発熱を抑制できるため、前記3相インバータ10の回路基板の発熱対策に係るコストダウンおよび前記電池モジール20のコストダウンも併せて、モータ駆動回路全体を大幅にコストダウンできる。
【0015】
また、当該モータ駆動回路101の前記電池モジュール20群から前記3相インバータ10への電力供給においては、前記電池モジュール内に2個のFETをそれぞれ直列に介さないため、FET固有のドレイン・ソース間のオン抵抗に伴う電気ロスを解消でき、前記電池モジュール20群から前記3相インバータ10への送電効率の向上を実現し、後述の制御アルゴリズム1による放電時間延長の効果も併せて電気自動車の1充電あたりの航続距離の延長、および、モータ駆動回路全体の大幅なコストダウンの両立に貢献する。
【0016】
本発明の第1実施例のモータ駆動回路101のメインコントローラ120および9の制御アルゴリズム1の制御の概略について、次に、
図5のフローチャート図を用いて説明する。
【0017】
3相モータ11の駆動中、Step1にて、3相インバータ10は、3相の内、相対的に最高温度である1個の相のX相を選択する。これは例えば、前記3相インバータ10の回路基板上に実装される、PWM制御により3相交流電圧を出力する詳細図示しない複数の半導体スイッチング素子IGBTの中で相対的に最高温度であるX相のIGBTおよび前記IGBTの周辺の銅箔パターンを含む回路基板の温度、または、3相モータ11内のX相の励磁コイルの温度、のいずれか1個を検知すると良い。前記相対的に最高温度の前記X相を選択することにより、前記3相インバータ10の回路基板全体の温度上昇を抑制できる。
【0018】
3相インバータ10は、Step2にて、電池モジュール20群の電圧すなわち前記3相インバータ10の入力電圧を検知し前記電池モジュール20群の電圧が所定値を下回るか否かを検知し、前記電池モジュール20群の電圧が所定値を下回ったと判定した場合はStep3へ移行する一方、そうでない場合は、Step5へ移行する。3相インバータ10は、Step3にて、前記電池モジュール20群の電圧低下率が所定値を上回るか否かを検知し、前記電池モジュール20群の電圧低下率が所定値を上回ったと判定した場合は、Step5へ移行し、そうでない場合は、Step4へ移行する。
【0019】
前記電圧低下率とは、所定時間当たりに低下した電圧差の絶対値、または、所定時間前の電圧値に対する現在の電圧値の相対値としてのパーセント値、のいずれを用いても良い。
【0020】
3相インバータ10は、Step4にて、3相に出力する交流電圧の振幅を下げる一方、Step5にて、前記3相に出力する交流電圧の振幅を上げる。この際、前記X相の交流電圧振幅調整量を他の2相の交流電圧振幅調整量より相対的に大きくする。これによって、前記インバータ10の回路基板の発熱を効率的に抑制でき、および、前記X相および前記他の2相のそれぞれの交流電圧振幅のアンバランスに伴う前記3相モータ11の振動が乗員にとって不快なものになることを抑制できる。
【0021】
これによって、前記3相の出力電流の調整を行い、モータ11の回転に大きく影響することなく、前記3相インバータ10の入力電流すなわち前記電池モジュール20群の放電電流の増減を調整して前記電池モジュール20群の放電末期の放電電圧の低下を抑制し放電時間を延長、および、前記3相インバータ10の回路基板の発熱を抑え前記3相インバータのコストダウン、の両立、を実現できる。
【0022】
3相インバータ10は、Step6にて、X相の出力電流が所定値を下回るか否かを検知し、前記X相の出力電流が所定値を下回ったと判定した場合は、Step7へ移行し、そうでない場合は、Step1へ帰還する。リチウムイオン二次電池セルは残容量0%に近づくと放電電圧の低下速度が増すため、すなわち、前記電池モジュール20群の電圧低下率が大きくなるため、Step2ないしStep4にて前記電池モジュール20群の放電電圧の低下を抑制する方へ作用し前記X相の出力電流が0Aに近づく。したがって、Step6の判定は電池モジュール20群の残容量が0%に達したか否かを判定することに等しい。また、電池モジュール20群が過負荷時、すなわち、前記電池モジュール20群の放電電流が顕著に増加した場合、前記電池モジュール20群の電圧低下率が大きくなり、その放電電流が抑制されるように能動的に制御されるため、前記過負荷に伴う前記電池モジュール20群の信頼性低下を回避できるメリットも有する。
【0023】
3相インバータ10は、Step7にて、前記電池モジュール20群の内、少なくとも1個の過放電状態となったリチウムイオン二次電池セルが存在するか否かを検知し、前記少なくとも1個の過放電状態となったリチウムイオン二次電池セルが存在すると判定した場合はStep8へ移行し3相全ての出力を停止し、そうでない場合はStep1へ帰還する。ここでは、前記リチウムイオン二次電池セルが過放電故障する前に予め検知してその放電を停止することが好ましい。
【0024】
当該制御アルゴリズム1に従うモータ駆動回路101は、基本的に、電池モジュール20群内の電池セル群1H全体の過放電を防止するように能動的に制御するが、何らかの要因によって、電池モジュール20の電池セル群1H内に大きな残容量アンバランスが生じた場合、少なくとも1個の過放電状態となったリチウムイオン二次電池セルが生じ得るため、前記過放電状態、すなわち、前終止電圧を下回った状態となったリチウムイオン二次電池セルが過放電故障することを防止できる。
【0025】
制御アルゴリズム1に従うモータ駆動回路101の電池モジュール20群の放電特性、および、従来技術の放電特性の違いについて、次に、
図6のグラフ図を用いて説明する。
【0026】
従来技術の電池モジュール群の1充電あたりの放電特性は、
図6左図に示すように、点線A0で示す電流値I(A)の定電流で放電する場合、満充電後の電圧値Vstartから始まり、放電が続き残容量の減少に伴い実線B0で示すように徐々に低下し放電時間t1の時点で前記電圧値が終止電圧Vendに達し、その残容量が0%になる。一般に、リチウムイオン二次電池セルは、前記終止電圧Vendより低い電圧まで放電すると過放電により故障する一方、前記終止電圧Vendより高い電圧放電停止すると、その電池寿命を延長できる特性を有する。
【0027】
一方で、
図6右図に示すように、前記制御アルゴリズム1に従う前記モータ駆動回路101の、前記モータ駆動回路100と同じリチウムイオン二次電池セルを有する電池モジュール20群の1充電あたりの放電特性は、満充電後の電圧値Vstartから始まり、実線B1で示すように前記電池モジュール20群の電圧または電圧低下率に応じてその放電電圧が低下しにくいように、すなわち、概ね定電圧を保つように放電電流が調整され、点線A1に示すように放電電流が電流値I(A)より低く徐々に低下し、その結果、前記放電時間t1を超えても放電電圧が前記終止電圧Vendに達しない。すなわち、同じリチウムイオン二次電池セルを使用し、前記リチウムイオン二次電池セルの定格容量を大容量化することなく1充電あたりの放電時間の延長を実現できる。また、放電時間を維持して、前記リチウムイオン二次電池セルの定格容量を小容量化して電池モジュール20群のさらなるコストダウンも実現できる。
【0028】
なお、前記制御アルゴリズム1の制御パラメータの詳細について、前記リチウムイオン二次電池セルの定格容量を下げて前記リチウムイオン二次電池セルをコストダウンしながら、モータ駆動回路の放電時間の延長を実現できる制御パラメータの最適値を選択することができる。
【0029】
制御アルゴリズム1に従うモータ駆動回路101の3相インバータ10の回路基板の温度特性、および、従来技術の3相インバータの回路基板の温度特性の違いについて、次に、
図7のグラフ図を用いて説明する。
【0030】
従来技術の3相インバータの回路基板の温度特性は、
図7左図に示すように、3相インバータの入力電流を点線A0で示す電流値I(A)の定電流で通電する場合、周囲温度Tstart下で温度Tstartから通電開始した前記回路基板の温度は、実線に示すように通電時間t1を超えても温度T0でサチレートする。
【0031】
一方で、制御アルゴリズム1に従う前記モータ駆動回路101の3相インバータ10の回路基板の温度特性は、
図7右図に示すように、前記制御アルゴリズム1のStep2ないしStep5に従い前記3相インバータ10が、電池モジュール20群の放電電圧が低下しにくいようにその3相の内の1相の出力電流を概ね0Aに徐々に近づくように制御し、および、前記の他の2相の出力電流がほとんど維持されることに伴いその入力電流を、点線A1で示す
図6右図と同じ電流値I(A)から電流値が概ね2/3I(A)に向かい徐々に低減する電流値で通電する場合、周囲温度Tstart下で温度Tstartから通電開始した前記3相インバータ10の回路基板の温度は実線に示すように通電時間t1を超えても前記温度T0より低い温度T1でサチレートする。前記モータ駆動回路101の前記3相インバータ10の回路基板のモータ駆動中の温度を、前記モータ駆動回路100の前記3相インバータ10の回路基板の温度よりも相対的に低くできることにより、前記モータ駆動回路100の前記3相インバータ10の回路基板の発熱対策に係るコストを下げられ、かつ、回路基板に実装される電子部品の高温に対する信頼性を向上することもできる。
【0032】
また、前記3相インバータ10の回路基板と同様に、前記電池モジュール20群も放電時の温度上昇も抑制できるため、前記リチウムイオン二次電池セルの高温放電に伴う電池寿命低下を抑制でき、それに対する対策に係るコストを下げることもできる。
【0033】
これらによって、制御アルゴリズム1に従う当該モータ駆動回路101の全体のコストは、前記モータ駆動回路100の全体のコストに対して大幅に下げることができる。
【0034】
上記のように、
図6ないし
図7を用いて説明した効果を得るための制御因子の共通項は、リチウムイオン二次電池セルの終止電圧を下回らないように電池モジュールの放電末期の放電電流が放電初期の放電電流よりも相対的に低くなるように能動的に制御されることであり、すなわち、本発明の第2実施例として、放電中の前記電池モジュール20の電池セル群1H内の、放電深度に従い減少する前記電池モジュール群の残容量に応じて前記放電末期の電流値が放電初期の電流値よりも相対的に低くなるように能動的に制御する制御アルゴリズム2をモータ駆動回路101に適用可能である。
【0035】
制御アルゴリズム2に従うモータ駆動回路101のメインコントローラ120および3相モータ10の制御の概略について、次に、
図8のフローチャート図を用いて説明する。
【0036】
3相モータ11の駆動中、メインコントローラ120は、Step1にて、絶縁性通信ライン3を用いて各電池モジュール20と通信を行い、電池モジュール20群の残容量を計算する。一般に、リチウムイオン二次電池セルの残容量は、無負荷時の開放電圧から求める手法があるが、高精度の残容量値を検知するために、電池モジュール20内のモジュールコントローラ31がシャント抵抗6を用いて放電電流値を常時監視して以前に記憶した前記残容量値から放電量を差し引く計算を行うことができる。前記3相インバータ10は、Step2にて、3相インバータ10は、3相の内、相対的に最高温度である1個の相のX相を選択する。前記X相の選択は、前記制御アルゴリズム1と同じである。
【0037】
3相インバータ10は、Step3にて、前記電池モジュール20群の残容量が所定値を下回るか否かを検知し、前記残容量が所定値を下回ったと判定した場合、Step4へ移行する一方、そうでない場合、Step3でループする。前記3相インバータ10は、Step4にて、3相に出力する交流電圧の振幅を低減する。Step4は、前記制御アルゴリズム1のStep4と同じである。
【0038】
ここで、前記X相および他の2相に出力する交流電圧の振幅の調整量を異なるものとする。これによって、前記X相の出力電流が減少し、すなわち、電池モジュール20群の放電電流を減少し、前記インバータ10の回路基板の発熱を抑制し、および、3相モータの3個の励磁コイルに流れるそれぞれの電流の変化に伴う前記3相モータ10のロータのトルクリップルの増加を抑制できるメリットがある。
【0039】
なお、Step3ないしStep4では、残容量に応じて前記X相の出力電流を低減する段数を1段とする制御を一例に挙げたが、前記段数をリチウムイオン二次電池セルに最適な複数段を設けて、それを予め数値テーブルとして記憶し、Step3ないしStep4の都度、前記数値テーブルを参照して実行することができる。
【0040】
図8に示す制御アルゴリズム2のStep5ないしStep7は、
図5に示す前記制御アルゴリズム1のStep6ないしStep8と同じである。
【0041】
図9に示すように、モータ駆動回路103に、前記制御アルゴリズム1または前記制御アルゴリズム2を適用すると、独立した3個の閉回路に電池モジュール20および単相インバータ10がそれぞれ配置されることに伴う本来の効果が加味され、電気自動車の1充電あたりの航続距離の延長および、コストダウンの効果を相乗的に高められる。
【0042】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0043】
2 電池モジュール
20 電池モジュール
100 モータ駆動回路
101 モータ駆動回路
103 モータ駆動回路
120 メインコントローラ