(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】磁性粒子及び検査薬
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240702BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/53 U
(21)【出願番号】P 2021509614
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013814
(87)【国際公開番号】W WO2020196786
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019058530
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大日方 秀平
(72)【発明者】
【氏名】脇屋 武司
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 祐也
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-307126(JP,A)
【文献】特開2010-132513(JP,A)
【文献】特開平05-158286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0269751(US,A1)
【文献】特開平10-087711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる磁性粒子であって、
内部に第1の磁性体を含む磁性体内包樹脂粒子と、
前記磁性体内包樹脂粒子の外表面上に配置され、かつ第2の磁性体を含む磁性層と、
前記磁性層の外表面側に担持されており、かつ前記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備え
、
前記磁性体内包樹脂粒子の外表面から中心に向かって厚み1/3までの領域の100体積%中における前記第1の磁性体の含有量の、前記磁性体内包樹脂粒子の中心から外表面に向かって厚み2/3までの領域の100体積%中における前記第1の磁性体の含有量に対する比が、0.8以上4.0以下である、磁性粒子。
【請求項2】
前記第1の磁性体が、金属又は金属酸化物であり、
前記第2の磁性体が、金属又は金属酸化物である、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項3】
前記磁性層の外表面上に配置されたシェル層を更に備え、
前記シェル層の材料が、無機酸化物又は有機ポリマーを含み、
前記シェル層と、前記物質とが結合している、請求項1又は2に記載の磁性粒子。
【請求項4】
前記シェル層の材料が、前記無機酸化物を含み、
前記無機酸化物が、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はジルコニウム原子を有する無機酸化物である、請求項3に記載の磁性粒子。
【請求項5】
前記物質が、抗原又は抗体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項6】
前記物質が、アビジン又はストレプトアビジンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項7】
磁性粒子100重量%中、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体と合計の含有量が、10重量%以上95重量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項8】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の含有量の合計100重量%中、前記第1の磁性体の含有量が、10重量%以上90重量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項9】
検査薬として用いられる、請求項1~
8のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の磁性粒子を含む、検査薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体を含む磁性粒子に関する。また、本発明は、上記磁性粒子を用いた検査薬に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の研究開発及び臨床検査等の分野において、検体中の目的物質の濃度等を測定するために磁性粒子が用いられている。例えば、化学発光免疫測定法(CLIA法)等のイムノアッセイでは、表面に抗体又は抗原等を有する磁性粒子が広く用いられている。この磁性粒子は、一般に、目的物質である抗原又は抗体等と結合した後、磁石等によって集磁される。
【0003】
従来、磁性粒子として、樹脂粒子の内部に磁性体を有する磁性粒子(例えば、特許文献1,2参照)、及び樹脂粒子の外表面上に形成された磁性層を有する磁性粒子(例えば、特許文献3参照)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2004/056895A1
【文献】特開昭59-500691号公報
【文献】特開平07-063761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂粒子の内部に磁性体を有する従来の磁性粒子や、樹脂粒子の外表面上に磁性層を有する従来の磁性粒子では、該磁性粒子中の磁性体の含有量を十分に多くすることが困難である。そのため、従来の磁性粒子では、集磁性が低いことがある。
【0006】
また、従来の磁性粒子では、磁性体が酸化して、経時的に集磁性が低下することがある。
【0007】
また、従来の磁性粒子では、分散性が低いことがある。
【0008】
集磁性の低い磁性粒子を用いた場合には、磁石で集磁しきれない磁性粒子が多くなり、抗体や抗原等の目的物質の濃度等を測定する際に、測定精度及び測定感度が低下することがある。また、分散性の低い磁性粒子を用いた場合には、磁気分離後に磁性粒子が十分に再分散せず、測定精度、測定感度及び測定再現性が低下することがある。
【0009】
本発明の目的は、集磁性及び分散性を高めることができ、かつ集磁性を高く維持することができる磁性粒子を提供することである。また、本発明の限定的な目的は、長期間集磁性を高く維持することができる磁性粒子を提供することである。また、本発明の目的は、上記磁性粒子を用いた検査薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる磁性粒子であって、内部に第1の磁性体を含む磁性体内包樹脂粒子と、前記磁性体内包樹脂粒子の外表面上に配置され、かつ第2の磁性体を含む磁性層と、前記磁性層の外表面側に担持されており、かつ前記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備える、磁性粒子が提供される。
【0011】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記第1の磁性体が、金属又は金属酸化物であり、前記第2の磁性体が、金属又は金属酸化物である。
【0012】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記磁性層の外表面上に配置されたシェル層を更に備え、前記シェル層の材料が、無機酸化物又は有機ポリマーを含み、前記シェル層と、前記物質とが結合している。
【0013】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記シェル層の材料が、前記無機酸化物を含み、前記無機酸化物が、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はジルコニウム原子を有する無機酸化物である。
【0014】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記物質が、抗原又は抗体である。
【0015】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記物質が、アビジン又はストレプトアビジンである。
【0016】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、磁性粒子100体積%中、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体と合計の含有量が、10重量%以上95重量%以下である。
【0017】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の含有量の合計100重量%中、前記第1の磁性体の含有量が、10重量%以上90重量%以下である。
【0018】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記磁性体内包樹脂粒子の外表面から中心に向かって厚み1/3までの領域の100体積%中における前記第1の磁性体の含有量の、前記磁性体内包樹脂粒子の中心から外表面に向かって厚み2/3までの領域の100体積%中における前記第1の磁性体の含有量に対する比が、0.8以上4.0以下である。
【0019】
本発明に係る磁性粒子のある特定の局面では、前記磁性粒子は、検査薬として用いられる。
【0020】
本発明の広い局面によれば、上述した磁性粒子を含む、検査薬が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る磁性粒子は、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。本発明に係る磁性粒子は、内部に第1の磁性体を含む磁性体内包樹脂粒子と、上記磁性体内包樹脂粒子の外表面上に配置され、かつ第2の磁性体を含む磁性層と、上記磁性層の外表面側に担持されており、かつ上記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備える。本発明に係る磁性粒子では、上記の構成が備えられているので、集磁性及び分散性を高めることができ、かつ集磁性を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、磁性体内包樹脂粒子において、第1の磁性体の含有量を求める各領域を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
(磁性粒子)
本発明に係る磁性粒子は、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。本発明に係る磁性粒子は、目的物質と特異的に相互作用させることができる磁性粒子である。本発明に係る磁性粒子は、内部に第1の磁性体を含む磁性体内包樹脂粒子と、上記磁性体内包樹脂粒子の外表面上に配置され、かつ第2の磁性体を含む磁性層と、上記磁性層の外表面側に担持されており、かつ上記目的物質と特異的に相互作用する物質とを備える。
【0025】
本発明に係る磁性粒子では、上記の構成が備えられているので、集磁性及び分散性を高めることができ、かつ集磁性を高く維持することができる。本発明では、長期間集磁性を高く維持することができる。本発明に係る磁性粒子では、該磁性粒子を用いた目的物質の測定において、磁性粒子の単位重量あたりの目的物質との結合量を多くすることができ、従って、測定感度を高めることができる。
【0026】
従来の磁性粒子では、集磁性又は分散性が低いことがある。樹脂粒子の内部に磁性体を有する従来の磁性粒子では、樹脂粒子内部の空間が限られているため、磁性体の含有量を十分に多くすることが困難である。そのため、従来の磁性粒子では、集磁性を高めることが困難である。また、樹脂粒子の外表面上に磁性層を有する従来の磁性粒子において、磁性層に含まれる磁性体の含有量を多くした場合には、集磁性をある程度高めることができるものの、磁性粒子の粒子径が大きくなり、磁性粒子の単位面積あたりの目的物質の結合量が低下するため好ましくない。また、樹脂粒子の外表面上の磁性層を厚くすると、磁性粒子間での反発力が低下し、分散性が低下することがある。さらに、樹脂粒子の内部に磁性体を有する従来の磁性粒子及び樹脂粒子の外表面上に磁性層を有する従来の磁性粒子の双方において、粒子径が小さくなるほど磁性体の含有量が減少するため、集磁性が低下し、その結果、測定感度が低下することがある。
【0027】
さらに、樹脂粒子の内部に磁性体を有する従来の磁性粒子や、樹脂粒子の外表面上に磁性層を有する従来の磁性粒子では、磁性体が酸化して、経時的に集磁性が低下することがある。
【0028】
これに対して、本発明に係る磁性粒子では、磁性粒子の粒子径を小さく維持したままで、磁性体の含有量を多くすることができ、集磁性を高めることができる。その結果、磁性粒子の単位重量あたりの表面積を大きくしつつ集磁性を高くすることができるため、測定感度を高めることができる。また、本発明に係る磁性粒子では、分散性を高めることができる。さらに、本発明に係る磁性粒子では、磁性体がある程度劣化したとしても、集磁性を高く維持することができる。例えば、本発明に係る磁性粒子では、上記第2の磁性体を含む特定の磁性層がある程度劣化したとしても、上記第1の磁性体を含むので、集磁性を高く維持することができる。本発明に係る磁性粒子では、該磁性粒子を用いた目的物質の測定において、測定精度、測定感度及び測定再現性を高めることができる。
【0029】
上記磁性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μm以下、最も好ましくは3.5μm以下である。上記磁性粒子の平均粒子径が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記磁性粒子の平均粒子径が上記上限以下であると、単位重量あたりの上記目的物質と特異的に相互作用する物質の含有量を多くすることができ、目的物質の結合量を多くすることができる。
【0030】
上記磁性粒子の平均粒子径は、数平均粒子径である。上記磁性粒子の粒子径は、例えば、任意の磁性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各磁性粒子の粒子径の平均値を算出することにより求められる。上記磁性粒子を乾燥させた試料を作製し、得られた試料を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察することが好ましい。
【0031】
上記磁性粒子の平均粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。上記磁性粒子の平均粒子径の変動係数が上記上限以下であると、磁性粒子を用いた目的物質の測定において、測定精度をより一層高めることができる。
【0032】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0033】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:磁性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:磁性粒子の粒子径の平均値
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【0036】
図1に示す磁性粒子1は、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。磁性粒子1は、磁性体内包樹脂粒子2と、磁性層3と、シェル層4と、目的物質と特異的に相互作用する物質5とを備える。物質5は、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、抗原及び抗体等の生理活性物質等である。
【0037】
磁性体内包樹脂粒子2は、樹脂粒子21と、第1の磁性体22とを有する。磁性体内包樹脂粒子2は、内部に第1の磁性体22を含む。磁性体内包樹脂粒子2において、樹脂粒子21は、内部に第1の磁性体22を含む。第1の磁性体22が、磁性体内包樹脂粒子2の内部に分散している。磁性体内包樹脂粒子2において、第1の磁性体22が、樹脂粒子21の内部に分散している。
【0038】
第1の磁性体22が、磁性体内包樹脂粒子2の内部に均一に分布している。上記第1の磁性体は、磁性体内包樹脂粒子の内部に均一に分布していなくてもよい。例えば、磁性体内包樹脂粒子の中心から外表面にかけて、第1の磁性体の含有量が多くなるように第1の磁性体が配置されていてもよい。
【0039】
磁性層3は、磁性体内包樹脂粒子2の外表面上に配置されている。磁性層3は、磁性体内包樹脂粒子2における樹脂粒子21の外表面上に配置されている。磁性層3は、第2の磁性体を含む。シェル層4は、磁性層3の外表面上に配置されている。磁性層3の外表面側に、物質5が担持されている。シェル層4の外表面上に、物質5が担持されている。シェル層4と、物質5とが結合している。物質5は、磁性粒子1の表面に存在する。
【0040】
磁性層3は、単層の磁性層である。磁性層3は、磁性体内包樹脂粒子2の外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記磁性層が上記磁性体内包樹脂粒子の外表面の全体を覆っていてもよく、上記磁性層が上記磁性体内包樹脂粒子の表面の一部を覆っていてもよい。上記磁性粒子では、上記磁性層は、単層の磁性層であってもよく、2層以上の層から構成される多層の磁性層であってもよい。
【0041】
シェル層4は、単層のシェル層である。シェル層4は、磁性層3の外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記シェル層が上記磁性層の外表面の全体を覆っていてもよく、上記シェル層が上記磁性層の表面の一部を覆っていてもよい。
【0042】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【0043】
図2に示す磁性粒子1Aは、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。磁性粒子1Aは、磁性体内包樹脂粒子2Aと、磁性層3Aと、目的物質と特異的に相互作用する物質5Aとを備える。物質5Aは、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、抗原及び抗体等である。磁性粒子1Aは、上記シェル層を備えない。
【0044】
磁性体内包樹脂粒子2Aは、樹脂粒子21Aと、第1の磁性体22Aとを有する。
図1に示す磁性体内包樹脂粒子2と、
図2に示す磁性体内包樹脂粒子2Aとでは、第1の磁性体の分布状態が異なっている。
【0045】
磁性体内包樹脂粒子2Aでは、第1の磁性体22Aが、磁性体内包樹脂粒子2Aの内部に均一に分布していない。磁性体内包樹脂粒子2Aの中心から外表面にかけて、第1の磁性体22Aの含有量が多くなるように第1の磁性体22Aが配置されている。なお、上記第1の磁性体は、磁性体内包樹脂粒子の内部に均一に分布していてもよい。
【0046】
磁性層3Aは、磁性体内包樹脂粒子2Aの外表面上に配置されている。磁性層3Aは、第2の磁性体を含む。磁性層3Aの外表面上に、物質5Aが担持されている。物質5Aは、磁性粒子1Aの表面に存在する。
【0047】
磁性層3Aは、単層の磁性層である。磁性層3Aは、磁性体内包樹脂粒子2Aの外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記磁性層は、単層の磁性層であってもよく、2層以上の層から構成される多層の磁性層であってもよい。
【0048】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【0049】
図3に示す磁性粒子1Bは、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。磁性粒子1Bは、磁性体内包樹脂粒子2Bと、磁性層3Bと、シェル層4Bと、目的物質と特異的に相互作用する物質5Bとを備える。物質5Bは、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、抗原及び抗体等の生理活性物質等である。
【0050】
磁性体内包樹脂粒子2Bは、樹脂粒子211Bと、第1の磁性体22Bと、樹脂層212Bとを有する。磁性体内包樹脂粒子2Bは、内部に第1の磁性体22Bを含む。磁性体内包樹脂粒子2Bにおいて、第1の磁性体22Bが層状に含まれている。磁性体内包樹脂粒子2Bは、内部に第1の磁性体22Bを含む磁性層を有する。樹脂粒子211Bは、第1の磁性体22Bを含まない。樹脂粒子211Bと樹脂層212Bとの間に第1の磁性体22Bが配置されていることによって、磁性体内包樹脂粒子2Bが、内部に第1の磁性体22Bを含む。磁性体内包樹脂粒子2Bにおいて、樹脂粒子211Bの外表面上に第1の磁性体22Bを含む磁性層が配置されており、該磁性層の外表面上に樹脂層212Bが配置されている。
【0051】
磁性層3Bは、磁性体内包樹脂粒子2Bの外表面上に配置されている。磁性層3Bは、第2の磁性体を含む。シェル層4Bは、磁性層3Bの外表面上に配置されている。磁性層3Bの外表面側に、物質5Bが担持されている。シェル層4Bの外表面上に、物質5Bが担持されている。シェル層4Bと、物質5Bとが結合している。物質5Bは、磁性粒子1Bの表面に存在する。
【0052】
磁性層3Bは、単層の磁性層である。磁性層3Bは、磁性体内包樹脂粒子2Bの外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記磁性層は、単層の磁性層であってもよく、2層以上の層から構成される多層の磁性層であってもよい。
【0053】
シェル層4Bは、単層のシェル層である。シェル層4Bは、磁性層3Bの外表面の全体を覆っている。
【0054】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る磁性粒子を模式的に示す断面図である。
【0055】
図4に示す磁性粒子1Cは、目的物質と特異的に相互作用させるために用いられる。磁性粒子1Cは、磁性体内包樹脂粒子2Cと、磁性層3Cと、シェル層4Cと、目的物質と特異的に相互作用する物質5Cとを備える。物質5Cは、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、抗原及び抗体等の生理活性物質等である。
【0056】
磁性体内包樹脂粒子2Cは、樹脂粒子211Cと、第1の磁性体221C,222Cと、樹脂層212Cとを有する。磁性体内包樹脂粒子2Cは、内部に第1の磁性体221C,222Cを含む。第1の磁性体221Cが、磁性体内包樹脂粒子2Cの内部に分散している。第1の磁性体221Cが、樹脂粒子211Cの内部に分散している。磁性体内包樹脂粒子2Cにおいて、第1の磁性体221Cが、樹脂粒子211Cの内部に分散している。磁性体内包樹脂粒子2Cにおいて、第1の磁性体222Cが層状に含まれている。磁性体内包樹脂粒子2Cは、内部に第1の磁性体222Cを含む磁性層を有する。樹脂粒子211Cと樹脂層212Cとの間に第1の磁性体222Cが配置されていることによって、磁性体内包樹脂粒子2Cが、内部に第1の磁性体222Cを含む。磁性体内包樹脂粒子2Cにおいて、樹脂粒子211Cの外表面上に第1の磁性体222Cを含む磁性層が配置されており、該磁性層の外表面上に樹脂層212Cが配置されている。
【0057】
磁性層3Cは、磁性体内包樹脂粒子2Cの外表面上に配置されている。磁性層3Cは、第2の磁性体を含む。シェル層4Cは、磁性層3Cの外表面上に配置されている。磁性層3Cの外表面側に、物質5Cが担持されている。シェル層4Cの外表面上に、物質5Cが担持されている。シェル層4Cと、物質5Cとが結合している。物質5Cは、磁性粒子1Cの表面に存在する。
【0058】
磁性層3Cは、単層の磁性層である。磁性層3Cは、磁性体内包樹脂粒子2Cの外表面の全体を覆っている。上記磁性粒子では、上記磁性層は、単層の磁性層であってもよく、2層以上の層から構成される多層の磁性層であってもよい。
【0059】
シェル層4Cは、単層のシェル層である。シェル層4Cは、磁性層3Cの外表面の全体を覆っている。
【0060】
以下、磁性粒子の他の詳細について説明する。
【0061】
(磁性体内包樹脂粒子)
上記磁性体内包樹脂粒子は、樹脂を含む。上記磁性体内包樹脂粒子は、樹脂粒子を含む。上記磁性体内包樹脂粒子は、内部に第1の磁性体を含む。上記磁性体内包樹脂粒子は、以下の(1)又は(2)の構成を備えることによって、内部に第1の磁性体を含むことが好ましい。(1)樹脂粒子と第1の磁性体を含み、該樹脂粒子の内部に該第1の磁性体が分散している。(2)樹脂粒子と、第1の磁性体と、樹脂層とを含み、該樹脂粒子の外表面上において、磁性体内包樹脂粒子の中心から外表面に向かって、第1の磁性体を含む磁性層と、樹脂層とが交互に配置されている。上記磁性体内包樹脂粒子は、構成(1)のみを備えていてもよく、構成(2)のみを備えていてもよく、構成(1)と構成(2)とを備えていてもよい。なお、上記磁性体内包樹脂粒子が構成(2)を備える場合には、樹脂粒子の外表面上に第1の磁性体を含む磁性層が配置されていることが好ましく、磁性体内包樹脂粒子の最外層は樹脂層であることが好ましい。上記構成(1)を備える磁性体内包樹脂粒子は、例えば、
図1,2に示す磁性体内包樹脂粒子である。上記構成(2)を備える磁性体内包樹脂粒子は、例えば、
図3に示す磁性体内包樹脂粒子である。上記構成(1)と上記構成(2)とを備える磁性体内包樹脂粒子は、例えば、
図4に示す磁性体内包樹脂粒子である。
【0062】
上記磁性体内包樹脂粒子が上記構成(2)を備える場合に、該磁性体内包樹脂粒子は、1層の樹脂層と、第1の磁性体を含む1層の磁性層を有していてもよく、2層以上の樹脂層と、第1の磁性体を含む2層以上の磁性層を有していてもよい。
【0063】
<樹脂粒子及び樹脂層>
上記樹脂粒子及び上記樹脂層の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ジビニルベンゼン重合体、並びにジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン共重合体等としては、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体及びジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記樹脂粒子及び上記樹脂層の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、上記磁性体内包樹脂粒子が上記構成(2)を備える場合、上記樹脂粒子の材料と上記樹脂層の材料とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
上記磁性体内包樹脂粒子を良好に得る観点からは、上記樹脂粒子は、多孔質構造を有することが好ましい。上記構成(1)を備える磁性体内包樹脂粒子における樹脂粒子は、多孔質構造を有することが好ましい。上記構成(2)を備える磁性体内包樹脂粒子における樹脂粒子は、多孔質構造を有していてもよく、多孔質構造を有していなくてもよい。
【0065】
上記樹脂粒子のBET比表面積は、好ましくは20m2/g以上、より好ましくは40m2/g以上、更に好ましくは100m2/g以上であり、好ましくは800m2/g以下、より好ましくは700m2/g以下、更に好ましくは650m2/g以下である。上記BET比表面積が上記下限以上及び上記上限以下であると、磁性体内包樹脂粒子に内包される第1の磁性体の含有量を多くすることができ、集磁性をより一層高めることができる。
【0066】
上記樹脂粒子の平均細孔径は、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上であり、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下である。上記平均細孔径が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂粒子の内部に磁性体をより一層容易に含有させることができ、磁性体内包樹脂粒子に内包される第1の磁性体の含有量を多くすることができ、集磁性をより一層高めることができる。
【0067】
上記樹脂粒子のBET比表面積、及び平均細孔径は、BJH法に準拠して、窒素の吸着等温線から測定することができる。上記樹脂粒子のBET比表面積、及び平均細孔径を測定するための測定装置としては、カンタクローム・インスツルメンツ社製「NOVA4200e」等が挙げられる。
【0068】
上記BET比表面積及び上記平均細孔径等の好ましい範囲を満足する樹脂粒子は、例えば、下記の工程を備える樹脂粒子の製造方法により得ることができる。重合性モノマーと、上記重合性モノマーとは反応しない有機溶剤とを混合し、重合性モノマー溶液を調整する工程。上記重合性モノマー溶液と、アニオン性分散安定剤とを極性溶媒に添加して乳化させて乳化液を得る工程。上記乳化液を数回に分けて添加し、種粒子にモノマーを吸収させて、モノマーが膨潤した種粒子を含む懸濁液を得る工程。上記重合性モノマーを重合させて樹脂粒子を得る工程。上記重合性モノマーとしては、単官能性モノマー、及び多官能性モノマー等が挙げられる。上記重合性モノマーとは反応しない有機溶剤は、重合系の媒体である水等の極性溶媒と相溶しないものであれば、特に限定されない。上記有機溶剤としては、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アリル、酢酸プロピル、クロロホルム、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられる。上記有機溶剤の添加量は、上記重合性モノマー成分100重量部に対して、1重量部~80重量部であることが好ましく、20重量部~60重量部であることがより好ましい。上記有機溶剤の添加量が上記の好ましい範囲であると、BET比表面積及び上記平均細孔径等をより一層好適な範囲に制御することができ、粒子内部で緻密な細孔が得られやすくなる。
【0069】
上記樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μm以下、最も好ましくは3.5μm以下である。上記樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記樹脂粒子の平均粒子径が上記上限以下であると、磁性粒子の沈降を効果的に抑え、分散性をより一層高めることができ、また、磁性粒子の粒子径を小さくすることができるので、目的物質を効果的に相互作用させることができる。
【0070】
上記樹脂粒子の平均粒子径は、数平均粒子径である。上記樹脂粒子の平均粒子径は、任意の樹脂粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各樹脂粒子の粒子径の平均値を算出することにより求められる。上記磁性粒子又は上記樹脂粒子を乾燥させた試料を作製し、得られた試料を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察することが好ましい。
【0071】
<第1の磁性体>
上記第1の磁性体は、金属又は金属酸化物であることが好ましく、強磁性体又は常磁性体であることがより好ましい。
【0072】
上記第1の磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ランタノイド、フェライト等が挙げられる。上記フェライトとしては、マグへマイト(γFe2O3)及びMFe2O4で表される化合物(MFe2O4中、Mは、Co、Ni、Mn、Zn、Mg、Cu、Fe、Li0.5Fe0.5等)等が挙げられる。上記フェライトは、四酸化三鉄(Fe3O4)であることが好ましい。上記第1の磁性体は、合金であってもよい。上記合金としては、ニッケル-コバルト合金、コバルト-タングステン合金、鉄-白金合金、及び鉄-コバルト合金等が挙げられる。また、上記金属は、金属イオンであってもよい。上記第1の磁性体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
集磁性をより一層高め、かつ高い集磁性をより一層長期間維持する観点からは、上記第1の磁性体は、コバルト又はフェライトであることが好ましく、コバルト又は四酸化三鉄であることがより好ましく、コバルトであることが更に好ましい。
【0074】
上記磁性粒子100体積%中、上記第1の磁性体の含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。上記第1の磁性体の含有量が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記第1の磁性体の含有量が上記上限以下であると、分散性をより一層高めることができる。
【0075】
上記第1の磁性体と上記第2の磁性体の合計100重量%中、上記第1の磁性体の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記第1の磁性体の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、集磁性をより一層高め、かつ高い集磁性をより一層長期間維持することができる。
【0076】
上記磁性体内包樹脂粒子の外表面から中心に向かって厚み1/3までの領域(R1)の100体積%中、上記第1の磁性体の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記含有量(1)が上記下限以上及び上記上限以下であると、集磁性をより一層高めることができる。また、上記含有量(1)が上記上限以下であると、樹脂骨格が良好に保持され、粒子形状を良好に保持することができる。上記領域(R1)は、
図5において、磁性体内包樹脂粒子2の破線L1よりも外側の領域である。
【0077】
上記磁性体内包樹脂粒子の中心から外表面に向かって厚み2/3までの領域(R2)の100体積%中、上記第1の磁性体の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)は、好ましくは15体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記含有量(2)が上記下限以上及び上記上限以下であると、集磁性をより一層高めることができる。上記領域(R2)は、
図5において、磁性体内包樹脂粒子2の破線L1よりも内側の領域である。
【0078】
上記含有量(1)の上記含有量(2)に対する比(含有量(1)/含有量(2))は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下である。上記比(含有量(1)/含有量(2))が上記下限以上及び上記上限以下であると、集磁性及び分散性をより一層高めることができる。
【0079】
上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値は、25体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましい。上記第1の磁性体は、上記磁性体内包樹脂粒子の内部に均一に存在していることが好ましく、上記磁性体内包樹脂粒子の内部に均一に含まれていることが好ましい。
【0080】
上記含有量(1)及び上記含有量(2)は、以下のようにして測定できる。
【0081】
磁性粒子の含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、磁性粒子検査用埋め込み樹脂体を作製する。検査用埋め込み樹脂体中に分散した磁性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、磁性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、磁性体内包樹脂粒子の厚み方向における第1の磁性体の含有量を測定することで、磁性体内包樹脂粒子の厚み方向における第1の磁性体の含有量の分布結果が得られる。この結果から、上記含有量(1)及び上記含有量(2)を算出することができる。上記含有量(1)及び上記含有量(2)は、任意に選択された20個の磁性体内包樹脂粒子の含有量(1)及び含有量(2)を算術平均することにより算出された平均含有量であることが好ましい。
【0082】
上記磁性体内包樹脂粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、多孔質構造を有する上記樹脂粒子と、上記第1の磁性体とを混合し、該樹脂粒子の内部に該第1の磁性体を導入することで、上記構成(1)を備える磁性体内包樹脂粒子を得ることができる。また、例えば、中実構造を有する上記樹脂粒子と上記第1の磁性体を混合し、該樹脂粒子の外表面に該第1の磁性体を被覆し、次いで該第1の磁性体の外表面を樹脂で被覆することにより、上記構成(2)を備える磁性体内包樹脂粒子を得ることができる。
【0083】
(磁性層)
本発明に係る磁性粒子は、第2の磁性体を含む磁性層を備える。上記第2の磁性体を含む磁性層は、上記磁性体内包樹脂粒子の外表面上に配置される。上記第1の磁性体と上記第2の磁性体とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0084】
上記第2の磁性体は、金属又は金属酸化物であることが好ましく、強磁性体又は常磁性体であることがより好ましい。
【0085】
上記第2の磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ランタノイド及びフェライト等が挙げられる。上記フェライトとしては、マグへマイト(γFe2O3)及びMFe2O4で表される化合物(MFe2O4中、Mは、Co、Ni、Mn、Zn、Mg、Cu、Fe、Li0.5Fe0.5等)等が挙げられる。上記フェライトは、四酸化三鉄(Fe3O4)であることが好ましい。上記第2の磁性体は、合金であってもよい。上記合金としては、ニッケル-コバルト合金、コバルト-タングステン合金、鉄-白金合金、及び鉄-コバルト合金等が挙げられる。また、上記金属は、金属イオンであってもよい。上記第2の磁性体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
集磁性をより一層高め、かつ高い集磁性をより一層長期間維持する観点からは、上記第2の磁性体は、フェライトであることが好ましく、四酸化三鉄であることがより好ましい。
【0087】
上記第1の磁性体と上記第2の磁性体の合計100重量%中、上記第2の磁性体の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記第2の磁性体の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、集磁性をより一層高め、かつ高い集磁性をより一層長期間維持することができる。
【0088】
上記磁性粒子100体積%中、上記第2の磁性体の含有量は、好ましくは4体積%以上、より好ましくは8体積%以上、好ましくは40体積%以下、より好ましくは25体積%以下である。上記第2の磁性体の含有量が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記第2の磁性体の含有量が上記上限以下であると、分散性をより一層高めることができる。
【0089】
上記磁性粒子100重量%中、上記第1の磁性体と上記第2の磁性体との合計の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。上記合計の含有量が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記合計の含有量が上記上限以下であると、分散性をより一層高めることができる。
【0090】
上記磁性粒子100体積%中、上記第1の磁性体と上記第2の磁性体との合計の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。上記合計の含有量が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記合計の含有量が上記上限以下であると、分散性をより一層高めることができる。
【0091】
上記磁性体内包樹脂粒子の外表面の全表面積100%中、上記第2の磁性体を含む磁性層により覆われている表面積は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは100%である。上記表面積が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができ、かつ高い集磁性をより一層長期間維持することができ、さらに分散性をより一層高めることができる。
【0092】
上記磁性層の厚みは、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上であり、好ましくは1000nm以下、より好ましくは200nm以下である。上記磁性層の厚みは、磁性層が多層である場合には磁性層全体の厚みである。上記磁性層の厚みが上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができ、かつ高い集磁性をより一層長期間維持することができる。上記磁性層の厚みが上記上限以下であると、磁性粒子の沈降を効果的に抑え、分散性をより一層高めることができ、また、磁性粒子の粒子径を小さくすることができるので、磁性粒子の単位重量当たりの目的物質の結合量を多くすることができる。
【0093】
上記磁性層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性粒子の断面を観察することにより測定できる。上記磁性層の厚みについては、任意の磁性層の厚み5箇所の平均値を1個の磁性粒子の磁性層の厚みとして算出することが好ましく、磁性層全体の厚みの平均値を1個の磁性粒子の磁性層の厚みとして算出することがより好ましい。上記磁性層の厚みは、任意の磁性粒子10個について、各磁性粒子の磁性層の厚みの平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0094】
上記磁性層は、連続層であってもよく、上記第2の磁性体が粒子状に集合した粒状物によって形成された層であってもよい。また、上記磁性層は、樹脂粒子の外表面上の全部を被覆していてもよく、一部を被覆していてもよい。また、上記磁性層は、海島構造を有していてもよい。集磁性の低下を効果的に抑える観点からは、上記磁性層は、連続層であることが好ましい。上記連続層は、例えば、微粒子の凝集体のように磁性層に無数の継ぎ目(例えば磁性粒子1個あたり1000個以上)が存在する形状とは異なり、継ぎ目が少ない或いは継ぎ目が無い構造を有する層を指す。集磁性をより一層高める観点からは、上記磁性層は、第2の磁性体が粒子状に集合した粒状物によって形成された層であることが好ましい。
【0095】
上記磁性層が、上記第2の磁性体が粒子状に集合した粒状物によって形成された層である場合に、該粒状物の平均粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下である。上記粒状物の平均粒径が上記下限以上であると、集磁性をより一層高めることができる。上記粒状物の平均粒径が上記上限以下であると、上記磁性体内包樹脂粒子の外表面に第2の磁性体を良好に配置することができ、磁性層を良好に形成させることができる。
【0096】
上記磁性層の形成方法は、特に限定されない。例えば上記磁性体内包樹脂粒子と上記第2の磁性体の粒状物とを混合することにより、上記磁性体内包樹脂粒子の外表面上に磁性層を形成させることができる。
【0097】
(シェル層)
本発明に係る磁性粒子は、シェル層を備えることが好ましい。上記シェル層の材料は、無機酸化物又は有機ポリマーを含む。上記シェル層は、該シェル層の材料として上記無機酸化物を含む無機酸化物シェル層であるか、又は該シェル層の材料として上記有機ポリマーを含む有機ポリマーシェル層である。上記シェル層は、上記第2の磁性体を含む上記磁性層の外表面上に配置されることが好ましい。上記磁性粒子が上記シェル層を備えることにより、上記目的物質と特異的に相互作用する物質を磁性粒子の表面に良好に配置することができ、また、磁性粒子の分散性をより一層高めることができる。また、上記磁性粒子がシェル層を備えることにより、磁性体内包樹脂粒子等からの不純物の溶出、磁性体の溶出、及び磁性層からの不純物の溶出を強固に防ぐことができる。そのため、上記磁性粒子が上記シェル層を備える場合には、検査薬として好適に用いることができる。
【0098】
上記シェル層は、磁性体を含んでもよく、磁性体を含まなくてもよい。上記シェル層は、磁性体を含まないことがより好ましい。上記シェル層は、磁性体を含まない非磁性層であることがより好ましい。
【0099】
磁性粒子の分散性をより一層高める観点からは、上記シェル層の材料は、上記無機酸化物を含むことが好ましく、無機酸化物を含む無機酸化物シェル層であることがより好ましい。
【0100】
<無機酸化物>
上記無機酸化物とは、金属元素又は半金属元素と、酸素原子とを少なくとも有する化合物を意味する。上記無機酸化物としては、特に限定されない。上記無機酸化物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0101】
上記無機酸化物は、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子又はジルコニウム原子を有する無機酸化物であることが好ましい。また、上記無機酸化物は、上記磁性層の外表面と反応可能な官能基を有することが好ましい。磁性表面と非磁性層を反応させる方法は特に限定されないが、例えば共有結合や配位結合が挙げられる。
【0102】
上記無機酸化物としては、具体的には、オルトケイ酸テトラエチル等のアルコキシシラン及びその加水分解物に代表されるシラン化合物、ゲルマニウムテトラエトキシド等のアルコキシゲルマニウム及びその加水分解物に代表されるゲルマニウム化合物、チタンテトラエトキシド等のアルコキシチタン及びその加水分解物に代表されるチタン化合物、ジルコニウムテトラブトキシド等のアルコキシジルコニウム及びその加水分解物に代表されるジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0103】
磁性粒子の分散性を高く維持する観点からは、上記無機酸化物は、比重の小さい化合物であることが好ましく、上記の例示の中では、上記シラン化合物であることが最も好ましい。
【0104】
上記シラン化合物としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチル;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シラン化合物;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シラン化合物;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン等のメタクリル基含有シラン化合物;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有シラン化合物;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基含有シラン化合物;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイド基含有シラン化合物;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン化合物;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン化合物;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物含有シラン化合物;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の加水分解物等のカルボン酸含有シラン化合物等が挙げられる。
【0105】
例えば、磁性層の表面を種々の官能基を有するシラン化合物で処理することにより、上記磁性層の外表面上にケイ素原子を有する無機酸化物シェル層を形成させることができる。
【0106】
上記無機酸化物シェル層100重量%中、上記無機酸化物の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0107】
<有機ポリマー>
上記有機ポリマーは、特に限定されないが、ビニル系ポリマーであることが好ましい。
【0108】
上記ビニル系ポリマーの材料に用いられるビニル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド等が挙げられる。
【0109】
上記ビニル系ポリマーは1種のビニル系モノマーが重合した単独重合体であってもよく、2種以上のビニル系モノマーが重合した共重合体であってもよい。
【0110】
例えば、母粒子の存在下で、主原料としてのビニル系モノマー等の共重合モノマーと、必要に応じて副原料である重合開始剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤、電解質、架橋剤、分子量調節剤等を添加し、液体中で重合を行うことにより、上記磁性層の外表面上に有機ポリマーシェル層を形成させることができる。
【0111】
上記有機ポリマーシェル層100重量%中、上記有機ポリマーの含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0112】
上記シェル層は、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と結合する前において、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、トシル基、チオール基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルアミノ基及びスルホン酸基等の官能基を有することが好ましい。上記シェル層が上記官能基を有する場合には、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質を上記シェル層の外表面上に良好に担持させることができ、該物質を磁性粒子の表面に良好に配置することができる。
【0113】
上記シェル層は、外表面上にリンカー部を有していてもよい。上記シェル層が上記リンカー部を有することにより、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質との結合点である上記官能基を、上記シェル層の最表面からより離れた位置に配置することができ、立体的な障害がより少ない位置で上記官能基と上記物質とが接触可能になる。このため、上記物質が結合しやすくなり、上記物質を磁性粒子の表面に良好に配置することができる。
【0114】
上記リンカー部は、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と結合する前において、末端に、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、トシル基、チオール基等の目的物質と共有結合可能な官能基を有していることが好ましい。上記官能基と、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質の官能基とを反応させることにより、上記シェル層と、該物質とを化学結合させることができる。上記エポキシ基は、グリシジル基含有モノマー由来のエポキシ基であってもよい。上記水酸基は、上記エポキシ基の開環により生じる水酸基であってもよい。
【0115】
上記リンカー部の材料は、複数のエポキシ基を末端に有するエポキシ化合物であることが好ましい。上記複数のエポキシ基を末端に有するエポキシ化合物は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、又はトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルであることが好ましい。上記複数のエポキシ基を末端に有するエポキシ化合物は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルであることがより好ましい。
【0116】
上記シェル層と、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質とは、結合していることが好ましく、化学結合していることがより好ましい。
【0117】
上記第2の磁性体を含む磁性層の外表面の全表面積100%中、上記シェル層により覆われている表面積は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、最も好ましくは100%である。上記表面積が上記下限以上であると、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質の含有量を多くすることができ、その結果、磁性粒子を用いた目的物質の測定において、測定精度及び測定感度を高めることができる。
【0118】
上記シェル層の厚みは、好ましくは20nm以上、より好ましくは40nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。上記シェル層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、磁性粒子の沈降を効果的に抑え、分散性をより一層高めることができ、また、磁性粒子の粒子径を小さくすることができるので、目的物質を効果的に結合させることができる。
【0119】
上記シェル層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性粒子の断面を観察することにより測定できる。上記シェル層の厚みについては、任意のシェル層の厚み5箇所の平均値を1個の磁性粒子のシェル層の厚みとして算出することが好ましく、シェル層全体の厚みの平均値を1個の磁性粒子のシェル層の厚みとして算出することがより好ましい。上記シェル層の厚みは、任意の磁性粒子10個について、各磁性粒子のシェル層の厚みの平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0120】
(目的物質と特異的に相互作用する物質)
本発明に係る磁性粒子の表面において、目的物質と特異的に相互作用する物質が存在する。上記物質としては、糖鎖、ペプチド鎖、タンパク質、抗原、及びヌクレオチド鎖等が挙げられる。上記物質は、該目的物質の種類によって適宜変更可能である。上記物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0121】
上記物質と上記目的物質との相互作用としては、例えば、抗原抗体反応及び酵素と基質の相互作用等が挙げられる。上記物質と上記目的物質との相互作用は、上記物質と上記目的物質との非共有結合的な相互作用であってもよく、上記物質と上記目的物質との共有結合であってもよい。上記非共有結合的な相互作用としては、疎水性相互作用、静電的相互作用、ファンデルワールス力、水素結合、配位結合及びイオン結合等が挙げられる。
【0122】
上記目的物質と特異的に相互作用する物質は、上記目的物質と非共有結合的な相互作用が可能な物質であること好ましい。
【0123】
上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と、該目的物質の組み合わせとしては、抗体と抗原との組み合わせ、糖鎖とレクチン等のタンパク質との組み合わせ、酵素等のタンパク質とインヒビターとの組み合わせ、ペプチドとタンパク質との組み合わせ、ヌクレオチド鎖とヌクレオチド鎖との組み合わせ、ヌクレオチド鎖とタンパク質との組み合わせ等が挙げられる。
【0124】
上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質は、タンパク質であることが好ましく、アビジン又はストレプトアビジンであることがより好ましい。また、上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質は、抗原又は抗体であることが好ましい。
【0125】
上記抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクロナール抗体であってもよい。上記抗体は、パパイン及びペプシン等のタンパク質分解酵素により処理されていてもよく、Fab及びF(ab’)2フラグメント等であってもよい。
【0126】
上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質の配置方法は、特に限定されない。例えば、上記物質と、該物質が担持される前の磁性粒子とを混合することにより、該物質を該磁性粒子の表面に配置することができる。
【0127】
(目的物質)
上記目的物質とは、上述した物質と特異的に相互作用する物質である。
【0128】
上記目的物質としては、タンパク質、核酸、ホルモン、癌マーカー、呼吸器関連マーカー、心疾患マーカー及び薬物等挙げられる。
【0129】
上記タンパク質としては、高比重リポタンパク質(HDL)、低比重リポタンパク質(LDL)、超低比重リポタンパク質等の脂質タンパク質;アルカリホスファターゼ、アミラーゼ、酸性ホスファターゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GTP)、リパーゼ、クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、レニン、プロテインキナーゼ(PK)、チロシンキナーゼ等の酵素;IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等の免疫グロブリン(又はこれらのFc部、Fab部及びF(ab)2部等の断片);例えばフィブリノーゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プロトロンビン、トロンビン等の血液凝固関連因子;抗ストレプトリジンO抗体、抗ヒトB型肝炎ウイルス表面抗原抗体(HBs抗原)、抗ヒトC型肝炎ウイルス抗体、抗リュウマチ因子等の抗体;アルブミン、ヘモグロビン、ミオグロビン、トランスフェリン、プロテインA、C反応性蛋白質(CRP)等が挙げられる。
【0130】
上記核酸としては、DNA及びRNA等が挙げられる。
【0131】
上記ホルモンとしては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(FT3、FT4、T3、T4)、副甲状腺ホルモン(PTH)、及びヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)エストラジオール(E2)等が挙げられる。
【0132】
上記癌マーカーとしては、α-フェトプロテイン(AFP)、PIVKA-II、癌胎児性抗原(CEA)、CA19-9、及び前立腺特異抗原(PSA)等が挙げられる。
【0133】
上記呼吸器関連マーカーとしては、KL-6等が挙げられる。
【0134】
上記心疾患マーカーとしては、トロポニンT(TnT)、及びヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)等が挙げられる。
【0135】
上記薬物としては、抗てんかん薬、抗生物質、及びテオフィリン等が挙げられる。
【0136】
(磁性粒子の他の詳細)
上記磁性粒子は、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、電気化学発光法(ECLIA)、化学発光免疫測定法(CLIA及びCLEIA)、吸光度測定、並びに表面プラズモン共鳴等の測定において、好適に用いられる。上記磁性粒子は、サンドイッチ法及び競合法の測定において、好適に用いられる。
【0137】
上記磁性粒子は、検体中の上記目的物質の濃度を測定にするために好適に用いられる。
【0138】
上記磁性粒子は、検査薬として好適に用いられる。上記磁性粒子は、検査薬として用いることができる磁性粒子であることが好ましい。
【0139】
上記磁性粒子を用いた目的物質の濃度測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0140】
上記磁性粒子を含む液(例えば、後述の検査薬)と、目的物質を含む検体とを混合し、混合液を得る。得られた混合液を加温等して、磁性粒子における上記目的物質と特異的に相互作用する上記物質と、検体中の目的物質を結合させた反応液を得る(第1の反応工程)。次いで、磁石等により、反応液に磁力を加え、磁性粒子を集める(集磁工程)。未反応の検体を除去したのち、洗浄液を添加し、混合する(洗浄工程)。なお、集磁工程及び洗浄工程は、複数回繰り返されてもよい。次いで、洗浄液を除去した後、該目的物質と標識物質とを反応させて、目的物質の濃度を測定する(第2の反応工程)。
【0141】
上記標識物質としては、例えば酵素免疫測定法(EIA)において好適に用いられるアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼ等の酵素;例えば放射免疫測定法(RIA)において好適に用いられる99mTc、131I、125I、14C、3H、32P等の放射性同位元素;例えば蛍光免疫測定法(FIA)において好適に用いられるフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン及びこれらの誘導体、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性物質、例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質、例えばフェノール、ナフトール、アントラセン及びこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリオキシル等のオキシル基を有する化合物等のスピンラベル化剤としての性質を有する化合物等が挙げられる。測定感度を高める観点からは、上記標識物質は、酵素又は蛍光性物質であることが好ましく、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼであることがより好ましく、ペルオキシダーゼであることが更に好ましい。
【0142】
(検査薬)
上記検査薬は、上述した磁性粒子を含む。
【0143】
上記検査薬は、緩衝液を含むことが好ましい。
【0144】
上記緩衝液は、pH5.0以上9.0以下において緩衝能を有する緩衝液であることが好ましい。上記緩衝液としては、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、ベロナール緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びグッド緩衝液等が挙げられる。
【0145】
上記検査薬は、増感剤、タンパク質等の高分子化合物、アミノ酸、及び界面活性剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0146】
上記検査薬が上記増感剤を含むことにより、目的物質と該目的物質と結合可能である化合物との反応を効率的に進行させることができ、また、測定精度を高めることができる。上記増感剤としては、メチルセルロース及びエチルセルロース等のアルキル化多糖化合物、プルラン、並びにポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0147】
上記タンパク質としては、アルブミン(牛血清アルブミン及び卵性アルブミン等)、カゼイン、及びゼラチン等が挙げられる。
【0148】
上記検査薬100重量%中、上記磁性粒子の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記磁性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、目的物質の測定精度をより一層高めることができる。
【0149】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0150】
(実施例1)
磁性体内包樹脂粒子の作製:
種粒子として平均粒子径0.69μmのポリスチレン粒子を用意した。上記ポリスチレン粒子3.9重量部と、イオン交換水500重量部と、5.0重量%ポリビニルアルコール水溶液120重量部とを混合し、混合液を調製した。上記混合液を超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに入れて、均一に撹拌した。
【0151】
次に、ジビニルベンゼン(モノマー成分)150重量部と、過酸化ベンゾイル(日油社製「ナイパーBW」)2.0重量部とを混合した。さらに、ラウリル硫酸トリエタノールアミン9.0重量部と、トルエン(溶媒)150重量部と、イオン交換水1100重量部とを添加し、乳化液を調製した。
【0152】
セパラブルフラスコ中の上記混合液に、上記乳化液を数回に分けて添加し、12時間撹拌し、種粒子にモノマーを吸収させて、モノマーが膨潤した種粒子を含む懸濁液を得た。
【0153】
その後、5.0重量%ポリビニルアルコール水溶液490重量部を添加し、加熱を開始して85℃で9時間反応させ、樹脂粒子を得た。
【0154】
撹拌子を入れた300mL容のビーカーに、得られた樹脂粒子1重量部、60%硫酸50重量部を秤量した後、撹拌し、90℃で24時間反応させ、スルホン基が導入された樹脂粒子を得た。
【0155】
その後、撹拌子を入れた200mLビーカーに、スルホン基が導入された樹脂粒子1.0重量部、硫酸コバルト・7水和物5.0重量部、及び蒸留水25mLを秤量した後、室温下で24時間撹拌した。その後、上記粒子及び蒸留水20mL、ジメチルアミンボラン5.0重量部を秤量し、超音波照射下、60℃で1時間反応させ、第1の磁性体としてコバルトを含む磁性体内包樹脂粒子を得た。
【0156】
磁性層(第2の磁性体を含む磁性層)の形成:
磁性体内包樹脂粒子1重量部と、磁性流体EMG707(平均粒子径約10nmの四酸化三鉄ナノ粒子の水分散液、フェローテック社製)4重量部(但し、そのうち磁性体の含有量は約17重量%)とを250rpmで10間撹拌した。得られた粒子分散液を、水を用いてろ過及び洗浄し、磁性体内包樹脂粒子の外表面上に第2の磁性体としての四酸化三鉄を含む磁性層を形成させて、磁性層を有する磁性体内包樹脂粒子を得た。
【0157】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
磁性層を有する磁性体内包樹脂粒子の水分散液0.5mLを試験管に加え、PBS溶液を用いて3回洗浄した。分散媒を除去した後、シアル化糖鎖抗原KL-6(以下、KL-6と略記)抗体を含むPBS溶液(0.75mg/mL)0.5mLを加え、25℃にて一夜撹拌した。その後、1.0重量%BSA溶液を1.5mL添加し、25℃にて4時間撹拌した。続いて、1.0重量%BSA溶液1.5mLを用いて分散と磁石を用いた試験管壁面への集磁を3回繰り返し、抗KL-6抗体が感作された磁性粒子分散液を調製した。
【0158】
なお、得られた樹脂粒子における平均粒子径、BET比表面積及び平均細孔径、並びに、得られた磁性粒子における第1の磁性体、第2の磁性体の含有量、含有量(1)の含有量(2)に対する比、及び含有量(1)と含有量(2)との差の絶対値、平均粒子径を表1に示す。なお、これらは、後述の評価の項目に記載の方法で求めた。
【0159】
(実施例2)
トルエン150重量部に変えて、トルエン80重量部用いて樹脂粒子を作製したこと、磁性粒子の構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様して、磁性粒子を作製した。
【0160】
(実施例3)
トルエン150重量部に変えて、トルエン30重量部用いて樹脂粒子を作製したこと、磁性粒子の構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様して、磁性粒子を作製した。
【0161】
(実施例4)
実施例1と同様にして、磁性層を有する磁性体内包樹脂粒子を得た。
【0162】
シェル層の形成:
得られた磁性層を有する磁性体内包樹脂粒子1.0重量部にエタノール400重量部及び28%アンモニア水溶液(ナカライテスク社製)20重量部を加えた。次いで、オルトケイ酸テトラエチル5.0重量部及び8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン15重量部を加え、1時間撹拌した。得られた分散液をろ過後、水で洗浄した。このようにして、表面に官能基を有する無機酸化物シェル層を有する磁性体内包粒子を得た。
【0163】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
実施例1と同様にして、磁性粒子の表面に抗KL-6抗体が存在する磁性粒子を得た。
【0164】
(実施例5,6)
樹脂粒子及び磁性粒子の構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例4と同様にして磁性粒子を得た。
【0165】
(比較例1)
トルエンを用いなかったこと、ジビニルベンゼン150重量部に変えて、ジビニルベンゼン300重量部を用いたこと、過酸化ベンゾイル2.0重量部に変えて、過酸化ベンゾイル4.0重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。また、比較例1では、第1の磁性体を用いなかった。得られた樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして、樹脂粒子の外表面上に第2の磁性体により磁性層を形成した。
【0166】
シェル層の形成:
得られた磁性層を有する樹脂粒子を用いて、実施例4と同様にして、該磁性層の外表面上にシェル層を形成した。
【0167】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
得られたシェル層及び磁性層を有する樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして、抗KL-6抗体を配置した。このようにして、第1の磁性体を有さない磁性粒子を得た。
【0168】
(比較例2)
比較例1と同様にして、樹脂粒子を得た。次に、油性磁性流体(平均粒子径約10nmの四酸化三鉄ナノ粒子の有機溶剤分散液、フェローテック社製「EXPシリーズ」)にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の磁性体微粒子(平均一次粒子径:10nm)を得た。
【0169】
次いで、上記樹脂粒子1.0重量部と上記疎水化された表面を有するフェライト系の磁性体微粒子1.0重量部とをミキサーでよく混合した。得られた混合物を、ハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所社製)を用いて、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16200rpm)で5分間処理し、樹脂粒子の外表面上に第2の磁性体により磁性層を形成した。
【0170】
シェル層の形成:
得られた磁性層を有する粒子10重量部と、分散剤としてノニオン性乳化剤(花王社製「エマルゲン150」)の0.5%水溶液300重量部とを1Lセパラブルフラスコに投入し、撹拌した。これに、モノマーとして、シクロヘキシルメタクリレート24重量部及び2-メタクリロイロキシエチルコハク酸60重量部と、開始剤として、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(日油社製「パーロイル355」)1.0重量部とを添加し、80℃、200rpmで8時間撹拌した。このようにして、該磁性層の外表面上にカルボキシル基を有する有機ポリマーシェル層を形成した。上記有機ポリマーは、シクロヘキシルメタクリレートと2-メタクリロイロキシエチルコハク酸との共重合体である。
【0171】
目的物質と特異的に相互作用する物質の配置:
得られたシェル層及び磁性層を有する樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして、抗KL-6抗体を配置した。このようにして、第1の磁性体を有さない磁性粒子を得た。
【0172】
(比較例3)
樹脂粒子及び磁性粒子の構成を表1に示すように変更したこと以外は、比較例1と同様にして磁性粒子を得た。比較例3で得られた磁性粒子は、第1の磁性体を有さない。
【0173】
(比較例4)
樹脂粒子及び磁性粒子の構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、磁性粒子を作製した。比較例4で得られた磁性粒子は、磁性層を有さない。
【0174】
(比較例5)
樹脂粒子及び磁性粒子の構成を表1に示すように変更したこと以外は、比較例4と同様にして磁性粒子を得た。なお、比較例5では、シェル層として、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)を含むシェル層(有機ポリマーシェル層)を形成した。比較例5で得られた磁性粒子は、磁性層を有さない。
【0175】
(評価)
(1)樹脂粒子及び磁性粒子の平均粒子径
得られた樹脂粒子及び磁性粒子について、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「Regulus8220」)を用いて、樹脂粒子及び磁性粒子の平均粒子径を算出した。具体的には、得られた磁性粒子を乾燥させた試料を作製し、得られた試料を走査型電子顕微鏡にて観察し、任意の50個の磁性粒子、及び磁性粒子における樹脂粒子の粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0176】
(2)樹脂粒子のBET比表面積
得られた樹脂粒子について、カンタクローム・インスツルメンツ社製「NOVA4200e」を用いて、窒素の吸着等温線を測定した。測定結果から、BET法に準拠して、樹脂粒子の比表面積を算出した。
【0177】
(3)樹脂粒子の平均細孔径
得られた樹脂粒子について、カンタクローム・インスツルメンツ「NOVA4200e」を用いて、窒素の吸着等温線を測定した。測定結果から、BJH法に準拠して、樹脂粒子の平均細孔径を算出した。
【0178】
(4)第1の磁性体及び第2の磁性体の含有量
磁性粒子の含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、磁性粒子検査用埋め込み樹脂体を作製した。検査用埋め込み樹脂体中に分散した磁性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、磁性粒子の断面を切り出した。そして、電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、第1の磁性体及び第2の磁性体の含有量を測定し、磁性粒子の内部における第1の磁性体及び第2の磁性体の含有量の分布結果を得た。得られた結果から、第1の磁性体及び第2の磁性体の含有量を算出した。第1の磁性体及び第2の磁性体の含有量は、任意に選択された20個の磁性粒子の第1の磁性体及び第2の磁性体の含有量を算術平均することにより算出した。
【0179】
また、磁性粒子の外表面から内側に向かって厚み1/3までの領域(R1)の100体積%中、第1の磁性体の含有量を含有量(1)とした。磁性粒子の中心から外側に向かって厚み2/3までの領域(R2)の100体積%中、第1の磁性体の含有量を含有量(2)とした。
【0180】
磁性粒子の含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、磁性粒子検査用埋め込み樹脂体を作製した。検査用埋め込み樹脂体中に分散した磁性粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、磁性粒子の断面を切り出した。そして、電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、磁性体内包樹脂粒子の厚み方向における第1の磁性体の含有量を測定し、磁性体内包樹脂粒子の厚み方向における第1の磁性体の含有量の分布結果を得た。得られた結果から、上記含有量(1)及び上記含有量(2)を算出した。上記含有量(1)及び上記含有量(2)は、任意に選択された20個の磁性粒子の含有量(1)及び含有量(2)を算術平均することにより算出した。
【0181】
また、得られた結果から、上記含有量(1)の上記含有量(2)に対する比(含有量(1)/含有量(2))、及び上記含有量(1)の上記含有量(2)との差の絶対値を算出した。
【0182】
(5)集磁率
試料溶液として、波長550nmにおける吸光度が0.9~1.1に調整された磁性粒子が水に分散した液を用意した。スペーサー(W10mm×D10mm×H4mm)を介し磁石(2800G、W10mm×D10mm×H1mm)をあてた状態で分光光度計(日立製作所社製「U-3900H」)に設置した石英セルに、試料溶液1.3mLを投入し、試料溶液投入後5秒後~125秒後の波長550nmにおける吸光度を測定した。この120秒間での吸光度減衰率を以下の式により算出し、集磁率とした。
【0183】
集磁率(%)=[{(5秒後の吸光度)-(125秒後の吸光度)}/(5秒後の吸光度)]×100
【0184】
[集磁率の判定基準]
○○:集磁率が80%以上
○:集磁率が60%以上80%未満
△:集磁率が40%以上60%未満
×:集磁率が40%未満
【0185】
(6)分散率
試料溶液として、波長550nmにおける吸光度が0.9~1.1に調整された磁性粒子が水に分散した液を用意した。分光光度計(日立製作所社製「U-3900H」)に設置した石英セルに、試料溶液1.3mLを投入し、波長550nmにおける吸光度を測定した。次いで、磁石(28000G、W40mm×D40mm×H10mm)を用いて、上澄みの吸光度が0になるまで集磁した。その後、ボルテックスにより2000rpm、5秒間、磁性粒子を分散させて、波長550nmにおける吸光度を測定した。集磁前の吸光度と、集磁及び分散後の吸光度とから、吸光度の変化率を以下の式により算出し、分散率とした。
【0186】
分散率(%)={(集磁及び分散後の吸光度)/(集磁前の吸光度)}×100
【0187】
[分散率の判定基準]
○○:分散率が95%以上
○:分散率が90%以上95%未満
△:分散率が85%以上90%未満
×:分散率が85%未満
【0188】
(7)集磁率(1カ月放置後)
得られた磁性粒子を25℃で1カ月放置した。放置後、(5)集磁率と同様の方法で集磁率を求めた。
【0189】
[集磁率(1カ月放置後)の判定基準]
○○:集磁率が80%以上
○:集磁率が60%以上80%未満
△:集磁率が40%以上60%未満
×:集磁率が40%未満
【0190】
(8)免疫測定(磁性粒子の単位重量当たりの発光量)
KL-6を含まない溶液(抗原未含有溶液)と、5000U/mLのKL-6を含む溶液(抗原含有溶液)を用意した。抗原未含有溶液を用いた免疫測定における発光量と、抗原含有溶液を用いた免疫測定における発光量との差を求めることにより、磁性粒子と目的物質(KL-6)との結合能を評価した。具体的には、以下の手順で評価を行った。
【0191】
ルテニウム錯体標識抗KL-6抗体(二次抗体)の作製:
ポリプロピレンチューブに抗KL-6抗体のPBS-1溶液(抗KL-6抗体濃度2.0mg/mL)0.5mLを加え、次いでRu-NHS(10mg/mL)を13μL加えた。25℃にて振動撹拌した後、Sephadex G25カラムを用いて精製し、ルテニウム錯体標識抗KL-6抗体を得た。
【0192】
免疫測定:
電気化学発光免疫測定法を測定原理としたECLIA自動分析装置(積水メディカル社製「ピコルミIII」)を用いて、以下のようにして発光量の測定を行った。反応溶液(正常ウサギ血清を含む緩衝液)200μLに5000U/mLのKL-6を含む溶液(抗原含有溶液)20μLを加えたのち、磁性粒子25μLを加えた。30℃で9分間反応させたのち、ピコルミBF洗浄液(10mMトリス緩衝液)を350μL加え、磁性粒子を磁石でトラップしながら3回洗浄した。次いで、1.0μg/mLのルテニウム錯体標識抗KL-6抗体を含むルテニウム標識抗体含有液200μLを加え、30℃で9分間反応させたのち、ピコルミBF洗浄液(10mMトリス緩衝液)を350μL加え、磁性粒子を磁石でトラップしながら3回洗浄した。次いで、0.1Mトリプロピルアミンを含むピコルミ発光電解液300μLを加え、電極表面に送液し、磁性粒子に結合したルテニウム錯体の発光量を測定した。抗原未含有溶液を用いた免疫測定における発光量と、抗原含有溶液を用いた免疫測定における発光量との差Xを求めた。
【0193】
[磁性粒子の単位重量当たりの発光量の判定基準]
○○:差Xが150000以上
○:差Xが125000以上150000未満
△:差Xが100000以上125000未満
×:差Xが100000未満
【0194】
磁性粒子の構成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0195】
【0196】
【符号の説明】
【0197】
1,1A,1B,1C…磁性粒子
2,2A,2B,2C…磁性体内包樹脂粒子
3,3A,3B,3C…磁性層
4,4B,4C…シェル層
5,5A,5B,5C…物質
21,21A,211B,211C…樹脂粒子
22,22A,22B,221C,222C…第1の磁性体
212B,212C…樹脂層