(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】希釈冷凍機内で低周波のマイクロ波信号を使用する超伝導量子ビットの測定方式
(51)【国際特許分類】
H03D 7/00 20060101AFI20240702BHJP
H10N 60/10 20230101ALI20240702BHJP
G06N 10/00 20220101ALI20240702BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20240702BHJP
H03F 19/00 20060101ALI20240702BHJP
G06F 7/38 20060101ALI20240702BHJP
H03K 19/195 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
H03D7/00 E
H10N60/10 K
G06N10/00
H03M1/12 A
H03F19/00
G06F7/38 510
G06F7/38 610
H03K19/195
(21)【出願番号】P 2021552612
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2020057989
(87)【国際公開番号】W WO2020212092
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-08-24
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】アブド、バレーフ
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0091646(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109327190(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0042967(US,A1)
【文献】特開2001-119300(JP,A)
【文献】N T Bronn et al,Fast, high-fidelity readout multiple qubits,JOURNAL OF PHYSICS: CONFERENCE SERIES,2017年,Vol. 834
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F18/00-18/40
G06N3/00-99/00
H03D7/00-9/06
H03F5/00
H03F9/00-99/00
H03M1/00-1/88
H10N60/00-69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子プロセッサに関連する量子ビット測定を提供するために、量子ビットの読み出しに関連付けられたマイクロ波信号の周波数を減らすこと、および増やすことを実行する量子プロセッサ用の希釈冷凍機システムであって、
前記希釈冷凍機システムが、
量子プロセッサによって生成された量子情報に関連付けられた第1のマイクロ波信号を第2のマイクロ波信号に変換する第1のジョセフソン・ミキサー回路
を備えており、ここで、前記第2のマイクロ波信号は、前記量子プロセッサに関連する量子ビット測定を得る為に量子ビットの読み出しの為に使用され、前記第2のマイクロ波信号は前記第1のマイクロ波信号に関連付けられた第1の周波数と異なる周波数
(以下、第2の周波数とする)を有する、
ここで、前記第1のジョセフソン・ミキサー回路が、
前記第1の周波数で共振することができるマイクロ波共振器、
前記第2のマイクロ波
信号の前記
第2の周波数で共振することができる電気機械共振器である表面音響波共振器、および、
前記マイクロ波共振器若しくは電気機械共振器又はそれらの両方に接続された、前記ジョセフソン・トンネル接合のセットを備えているジョセフソン・リング変調器
を備えている、
前記希釈冷凍機システム。
【請求項2】
前記希釈冷凍機システムが、
ジョセフ
ソンベースのサーキュレータ
をさらに備えており、
ここで、前記ジョセフ
ソンベースのサーキュレータは、
前記第2のマイクロ波信号を前記量子プロセッサに送信すること、ここで、前記第2のマイクロ波信号の一部が前記量子プロセッサに反射され、前記量子プロセッサに関連付けられた量子ビット情報に関連付けられた読み出し出力信号を提供する、
前記読み出し出力信号を第2のジョセフソン・ミキサー回路に送信する
ように構成されている、請求項1に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項3】
前記希釈冷凍機システムが、
前記読み出し出力信号を第3のマイクロ波信号に変換する前記第2のジョセフソン・ミキサー回路
をさらに備えており、ここで、前記第3のマイクロ波信号は前記第2の周波数と異なる第3の周波数を有する、希釈冷凍機システム。
請求項2に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項4】
前記第1の周波数が、前記第2の周波数よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項5】
前記希釈冷凍機システムが、高速単一磁束量子(RSFQ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)を備え、前記RSFQ ADCが、超伝導デバイスに基づいて前記第3のマイクロ波信号をデジタル化し、古典的コンピューティング・システムのためのデジタル信号を生成する、請求項
3、又は請求項
3を引用する場合の請求項4に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項6】
前記希釈冷凍機システムが、量子限定に近い増幅器を備え、前記量子限定に近い増幅器が、前記第3のマイクロ波信号を増幅して、前記RSFQ ADCによって処理するための、前記第3のマイクロ波信号の増幅されたバージョンを生成する、請求項
3、又は請求項
3を引用する場合の請求項4~5
のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項7】
前記希釈冷凍機システムが、量子限定された増幅器をさらに備え、前記量子限定された増幅器が、前記読み出し出力信号を増幅して、前記第2のジョセフソン・ミキサー回路によって処理するための、前記読み出し出力信号の増幅されたバージョンを生成する、請求項2若しくは3、又は請求項2又は3を引用する場合の請求項4~5のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項8】
前記希釈冷凍機システムが、前記希釈冷凍機システム内の出力チェーンによって前記量子プロセッサにもたらされるノイズを制限するためのジョセフソン・ミキサーのセットを備えているジョセフソンベースのアイソレータをさらに備えている、請求項1~7のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項9】
前記希釈冷凍機システムが、バンドパス・フィルタをさらに備え、前記バンドパス・フィルタが、周波数の帯域に基づいて前記読み出し出力信号をフィルタリングし、前記ジョセフソン・ミキサー回路によって処理するための、前記読み出し出力信号のフィルタリングされたバージョンを生成する、請求項1~8のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項10】
前記希釈冷凍機システムが、ローパス・フィルタをさらに備え、前記ローパス・フィルタが、前記RSFQ ADCによって処理するために、損失を最小限に抑えて前記第3のマイクロ波信号を送信する、請求項3、又は請求項3を引用する場合の請求項4~9のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項11】
前記希釈冷凍機システムが、前記量子プロセッサのコヒーレンスを改善するために、前記
希釈冷凍機システムの内部のマイクロ波信号
の周波数を増加させること、および前記希釈冷凍機システムの内部
の前記マイクロ波信号の前記周波数を減らすこと
のいずれかを実行する、請求項1~10のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項12】
前記第1のジョセフソン・ミキサー回路が、前記希釈冷凍機システム内の10mK段に取り付けられており、及び/又は、
前記第2のジョセフソン・ミキサー回路が、前記希釈冷凍機システム内の10mK段に取り付けられており、及び/又は、
前記高速単一磁束量子(RSFQ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)が、前記希釈冷凍機システム内の4K段に取り付けられている、
請求項5
、又は請求項5を引用する場合の請求項6~11のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システムと、
前記第1のマイクロ波信号を生成する電子デバイスを備えている古典的コンピューティング・システムと
を備えている、システム。
【請求項14】
マイクロ波信号を使用して超伝導量子ビットを測定するための極低温マイクロ波システムであって、該
極低温マイクロ波システムが、
請求項1~12のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システム
を備えており、
前記希釈冷凍機システムが、前記量子ビット情報に関連付けられたマイクロ波信号を減少した周波数のマイクロ波信号に変換し、前記減少した周波数のマイクロ波信号が、前記量子プロセッサに関連付けられた量子ビット周波数および読み出し共振器周波数を下回る周波数を含む、
前記極低温マイクロ波システム。
【請求項15】
前記希釈冷凍機システムの入力伝送線が、マイクロ波信号を減衰させフィルタリングするための減衰器およびローパス・フィルタを備える、請求項14に記載の極低温マイクロ波システム。
【請求項16】
前記希釈冷凍機システムの出力伝送線が、特定の周波数の信号およびノイズを通さないためのローパス・フィルタを備え、前記出力伝送線が、前記減少した周波数のマイクロ波信号をデジタル化しフィルタリングするためのアナログ/デジタル・コンバータおよびローパス・フィルタを備える、請求項14または15に記載の極低温マイクロ波システム。
【請求項17】
前記希釈冷凍機システムが、アナログ/デジタル・コンバータを備え、前記アナログ/デジタル・コンバータが、超伝導デバイスに基づいて前記減少した周波数のマイクロ波信号をデジタル化し、古典的コンピューティング・システムのためのデジタル信号を生成する、請求項14~16のいずれか1項に記載の極低温マイクロ波システム。
【請求項18】
前記減少した周波数のマイクロ波信号を採用することによって、前記量子プロセッサの性能を改善する、請求項
14に記載の極低温マイクロ波システム。
【請求項19】
方法であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載の量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムによって、前記希釈冷凍機システム内にあるジョセフソン・ミキサー回路に基づいて、マイクロ波信号を減少した周波数のマイクロ波信号に変換することと、
前記希釈冷凍機システムによって、前記減少した周波数のマイクロ波信号を、前記量子プロセッサに関連付けられた量子ビット情報を含んでいるデジタル信号にデジタル化することと、
前記希釈冷凍機システムによって、前記デジタル信号を古典的コンピューティング・システムに送信することと
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記希釈冷凍機システムによって、前記マイクロ波信号を前記古典的コンピューティング・システムから受信することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記希釈冷凍機システムによって、前記希釈冷凍機システム内にあるジョセフソン方向性増幅器を介して前記マイクロ波信号を増幅することをさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記希釈冷凍機システムによって、前記希釈冷凍機システム内にあるジョセフソンベースのアイソレータを使用して、前記希釈冷凍機システムの出力チェーンに関連付けられたノイズから前記量子プロセッサを保護することをさらに含む、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
システムであって、
量子プロセッサと、
ジョセフソン・ミキサー回路を介して量子ビット読み出しに関連付けられた第1のマイクロ波信号の周波数を減らして、第2のマイクロ波信号を生成し、高速単一磁束量子(RSFQ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)を介して前記第2のマイクロ波信号をデジタル化して、古典的コンピューティング・システムのためのデジタル信号を生成する、請求項1~12のいずれか1項に記載の希釈冷凍機システムとを備える、システム。
【請求項24】
前記第2のマイクロ波信号を増幅して、前記RSFQ ADCによって処理するための増幅された前記第2のマイクロ波信号を生成する、量子限定に近い増幅器をさらに備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1のマイクロ波信号を増幅して、前記ジョセフソン・ミキサー回路によって処理するための増幅された前記第1のマイクロ波信号を生成する、量子限定された増幅器をさらに備える、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子ハードウェアに関し、より詳細には、量子コンピューティングのための超伝導デバイスに関する。
【発明の概要】
【0002】
以下に、本発明の1つまたは複数の実施形態の基本的理解を可能にするための概要を示す。この概要は、主要な要素または重要な要素を特定するよう意図されておらず、特定の実施形態の範囲または特許請求の範囲を正確に説明するよう意図されていない。この概要の唯一の目的は、後で提示されるより詳細な説明のための前置きとして、概念を簡略化された形態で提示することである。本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態では、希釈冷凍機内で低周波のマイクロ波信号を使用する超伝導量子ビットの測定方式を容易にするデバイス、システム、方法、装置、またはコンピュータ・プログラム製品、あるいはその組み合わせが説明される。
【0003】
一実施形態によれば、マイクロ波信号を使用して超伝導量子ビットを測定するための極低温マイクロ波システムは、量子プロセッサ用の希釈冷凍機システムを備えることができる。希釈冷凍機システムは、希釈冷凍機システム内にあるジョセフソン・ミキサー回路に基づいて、量子ビット情報に関連付けられたマイクロ波信号を減少した周波数のマイクロ波信号に変換することができる。減少した周波数のマイクロ波信号は、量子プロセッサに関連付けられた量子ビット周波数および読み出し共振器周波数を下回る周波数を含むことができる。
【0004】
別の実施形態によれば、システムは、量子プロセッサ用の希釈冷凍機システムを備えることができる。希釈冷凍機システムは、量子プロセッサに関連する量子ビット測定値を提供するために、量子ビットの読み出しに関連付けられたマイクロ波信号の周波数を減らすこと、および増やすことができる。
【0005】
さらに別の実施形態によれば、方法が提供される。この方法は、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムによって、希釈冷凍機システム内にあるジョセフソン・ミキサー回路に基づいて、マイクロ波信号を減少した周波数のマイクロ波信号に変換することを含むことができる。この方法は、希釈冷凍機システムによって、減少した周波数のマイクロ波信号を、量子プロセッサに関連付けられた量子ビット情報を含んでいるデジタル信号にデジタル化することを含むこともできる。さらに、この方法は、希釈冷凍機システムによって、デジタル信号を古典的コンピューティング・システムに送信することを含むことができる。
【0006】
さらに別の実施形態によれば、システムは、ジョセフソン・ミキサー回路および高速単一磁束量子(RSFQ:rapid single flux quantum)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC:analog-to-digital converter)を備えることができる。ジョセフソン・ミキサー回路は、量子プロセッサによって生成された量子情報に関連付けられた第1のマイクロ波信号を、第2のマイクロ波信号に変換することができ、第1のマイクロ波信号に関連付けられた第1の周波数は、第2のマイクロ波信号に関連付けられた第2の周波数よりも大きい。RSFQ ADCは、超伝導デバイスに基づいて第2のマイクロ波信号をデジタル化し、古典的コンピューティング・システムのためのデジタル信号を生成することができる。
【0007】
さらに別の実施形態によれば、システムは、量子プロセッサおよび希釈冷凍機システムを備えることができる。希釈冷凍機システムは、ジョセフソン・ミキサー回路を介して、量子ビットの読み出しに関連付けられた第1のマイクロ波信号の周波数を減らし、第2のマイクロ波信号を生成することができる。希釈冷凍機システムは、高速単一磁束量子(RSFQ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)を介して第2のマイクロ波信号をデジタル化し、古典的コンピューティング・システムのためのデジタル信号を生成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機システム、量子プロセッサ、および古典的コンピューティング・システムに関連付けられた例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図2】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機システム、量子プロセッサ、および古典的コンピューティング・システムに関連付けられた別の例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図3】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機システム、量子プロセッサ、および古典的コンピューティング・システムに関連付けられたさらに別の例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図4】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機システム、量子プロセッサ、および古典的コンピューティング・システムに関連付けられたさらに別の例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図5】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機システム、量子プロセッサ、および古典的コンピューティング・システムに関連付けられたさらに別の例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図6】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機システム、量子プロセッサ、および古典的コンピューティング・システムに関連付けられたさらに別の例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図7】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機システム、量子プロセッサ、および古典的コンピューティング・システムに関連付けられたさらに別の例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図8】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、古典的コンピューティング・システムに関連付けられた例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図9】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、ジョセフソンベースのミキサーに関連付けられた例示的な非限定的システムを示す図である。
【
図10】本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、超伝導量子プロセッサ用の改善された希釈冷凍機を提供するための、例示的な非限定的コンピュータ実装方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、例にすぎず、実施形態、または実施形態の適用もしくは使用、あるいはその両方を制限するよう意図されていない。さらに、先行する「背景技術」または「発明の概要」のセクション、あるいは「発明を実施するための形態」のセクションで提示された、いずれかの明示されたか、または暗示された情報によって制約されるという意図はない。
【0010】
ここで、図面を参照して1つまたは複数の実施形態が説明され、図面全体を通じて、類似する参照番号が、類似する要素を参照するために使用されている。以下の説明では、説明の目的で、1つまたは複数の実施形態を十分に理解できるように、多数の特定の詳細が示されている。しかし、これらの特定の詳細がなくても、さまざまな事例において、1つまたは複数の実施形態が実践され得るということは明らかである。
【0011】
超伝導体デバイスは、特定の温度を下回ると電気抵抗ゼロになるデバイスであることができる。超伝導デバイスは、例えば、超伝導量子プロセッサの量子ビットとして採用され得る。超伝導量子プロセッサは、例えば、4ギガヘルツ(GHz)~10GHzの周波数範囲内の1つまたは複数のマイクロ波信号を使用して制御されるか、または測定されるか、あるいはその両方が行われ得る。さらに、超伝導量子プロセッサは、ミリケルビン温度に冷却され得る希釈冷凍機に取り付けられ得る。1つの例では、超伝導量子プロセッサは、希釈冷凍機の基礎段に取り付けられ得る。超伝導量子プロセッサは、例えば、超伝導量子プロセッサを超伝導状態で動作させるために、ミリケルビン温度に冷却され得る。例えば、有効に動作するために、超伝導量子プロセッサの温度は、超伝導量子プロセッサにおいて採用された超伝導材料の臨界温度を下回る必要がある。1つの例では、アルミニウムに基づくジョセフソン接合を採用する超伝導量子プロセッサは、有効に動作するために、アルミニウムの臨界温度(例えば、1.2ケルビン(K)にほぼ等しい温度)未満に冷却される必要がある。追加的または代替的に、超伝導量子プロセッサは、例えば、超伝導マイクロ波回路のマイクロ波光子励起のエネルギー・レベル未満での超伝導量子プロセッサの超伝導マイクロ波回路における熱ノイズを抑制するために、ミリケルビン温度に冷却され得る。超伝導量子プロセッサのそのような超低温を実現するために、黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方が超伝導量子プロセッサに達するのを阻止する必要がある。黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方は、希釈冷凍機の外部から(例えば、室温環境から)、または希釈冷凍機内の高温段(例えば、希釈冷凍機内の4K段)から、あるいはその両方から生じる可能性がある。通常、黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすために、複数の電磁シールドまたは黒体放射シールドあるいはその両方が希釈冷凍機内に組み込まれ得る。追加的または代替的に、黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすために、希釈冷凍機の異なる段が熱的に分離され得る。追加的または代替的に、黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすために、希釈冷凍機内の入力線(例えば、室温の電子機器から超伝導量子プロセッサにマイクロ波信号を搬送する入力線)は、損失同軸ケーブル、減衰器、またはフィルタ、あるいはその組み合わせを組み込むことができる。追加的または代替的に、黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすために、希釈冷凍機内の出力線(例えば、超伝導量子プロセッサから希釈冷凍機の外部の室温の電子機器にマイクロ波信号を搬送する出力線)は、アイソレータ、サーキュレータ、半導体に基づくトランジスタなどの、フィルタまたは方向性デバイスあるいはその両方を組み込むことができる。しかし、希釈冷凍機に関連付けられた超伝導量子プロセッサの黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすことは、通常、大きいハードウェアのオーバーヘッドを必要とする。さらに、希釈冷凍機に関連付けられた超伝導量子プロセッサの黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすことは、通常、希釈冷凍機内に大量の熱負荷を導入する。希釈冷凍機に関連付けられた超伝導量子プロセッサの黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすことは、通常、大量の電力を消費する。そのため、希釈冷凍機に関連付けられた超伝導量子プロセッサの黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減らすことは、改善され得る。
【0012】
これらの問題またはその他の問題あるいはその両方に対処するために、本明細書に記載された実施形態は、超伝導量子プロセッサ用の改善された希釈冷凍機システムを容易にするシステム、方法、またはコンピュータ・プログラム製品、あるいはその組み合わせを含む。例えば、本明細書では、希釈冷凍機内で低周波のマイクロ波信号を使用する超伝導量子ビットの新しい測定方式が提供される。一実施形態では、量子ビット情報を搬送する高周波の出力読み出しマイクロ波信号が、相対的に低い周波数のマイクロ波信号にダウンコンバートされ得る。本明細書において使用されるとき、「高周波」マイクロ波信号は、約8GHz以上であることができる。さらに、本明細書において使用されるとき、「低周波」マイクロ波信号は、約0.5GHz~2GHzの(例えば、量子ビット周波数または読み出し共振器周波数あるいはその両方を下回る)周波数範囲内であることができる。高周波の出力読み出しマイクロ波信号は、量子プロセッサ(例えば、超伝導量子プロセッサ)に関連付けられた希釈冷凍機によって受信されたマイクロ波信号であることができる。高周波の出力読み出しマイクロ波信号のダウンコンバート・プロセスは、無損失またはコヒーレントあるいはその両方であることができる。さらに、高周波の出力読み出しマイクロ波信号のダウンコンバート・プロセスは、ジョセフソン・ミキサーのセットを使用して実行され得る。ジョセフソン・ミキサーのセットは、例えば、散逸が少ない三波ジョセフソン・ミキサー(three-wave Josephson mixers)であることができる。読み出し共振器によって送信された量子ビット読み出し信号は、例えば、希釈冷凍機の基礎段で、量子限定された増幅器または量子限定に近い増幅器によっても、増幅され得る。量子ビット読み出し信号の増幅は、元の量子ビット読み出し信号に対して(例えば、ダウンコンバート・プロセスの前に)実行され得る。代替として、量子ビット読み出し信号の増幅は、ダウンコンバートされた量子ビット読み出し信号に対して(例えば、ダウンコンバート・プロセスの後に)実行され得る。元の量子ビット読み出し信号は、例えば、磁束バイアスまたはマイクロ波駆動あるいはその両方を採用するジョセフソン方向性増幅器を使用して増幅され得る。ダウンコンバートされた量子ビット読み出し信号は、例えば、直流(DC:direct current)または磁束バイアスあるいはその両方を採用する直流超伝導量子干渉デバイス(DC-SQUID:direct current superconducting quantum interference device)増幅器を使用して増幅され得る。特定の実施形態では、例えば、量子ビットに対する方向性増幅器の過剰な逆作用を阻止するために、ジョセフソンベースのアイソレータまたはジョセフソンベースのサーキュレータが、希釈冷凍機の量子ビット共振器システムと方向性増幅器の間に実装され得る。ジョセフソンベースのアイソレータまたはジョセフソンベースのサーキュレータあるいはその両方は、磁束バイアスまたはマイクロ波駆動あるいはその両方を採用することができる。特定の実施形態では、バンドパス・フィルタまたはハイパス・フィルタあるいはその両方が、希釈冷凍機の出力線上の量子ビット共振器システムとダウンコンバート段の間に実装され得る。バンドパス・フィルタまたはハイパス・フィルタあるいはその両方は、最小限の挿入損失で高周波読み出し信号を送信することができる。バンドパス・フィルタまたはハイパス・フィルタあるいはその両方は、限界周波数を下回るDC信号およびマイクロ波信号を阻止することもでき、この限界周波数は、高周波読み出し信号を下回る。特定の実施形態では、ローパス・フィルタまたは周波数依存減衰器あるいはその両方が、希釈冷凍機の基礎段と希釈冷凍機の4K段の間の1つまたは複数の異なる段で、希釈冷凍機の出力線上に実装され得る。そのため、ダウンコンバートされた量子ビット読み出し信号が、わずかな減衰を伴って、または減衰なしで、出力チェーンを介して送信され得る。ダウンコンバートされた量子ビット読み出し信号の周波数を超える周波数での信号またはノイズあるいはその両方も、減衰され得る。
【0013】
一実施形態では、高速単一磁束量子(RSFQ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)が、希釈冷凍機の4K段に実装され得る。RSFQ ADCは、ダウンコンバートされた量子ビット読み出し信号をサンプリングし、デジタル化することができる。1つの態様では、RSFQ ADCの出力は、古典的コンピューティング・システムに送信されるデジタル信号であることができる。古典的コンピューティング・システムは、古典的信号処理または古典的信号解析あるいはその両方のための室温の処理ユニットを含むことができる。追加的または代替的に、デジタル信号が、希釈冷凍機の4K段にあるRSFQ論理に送信され得る。特定の実施形態では、エネルギー効率の良いRSFQ(ERSFQ:energy-efficient RSFQ)回路が、追加的または代替的に、希釈冷凍機の4K段に実装され得る。特定の実施形態では、エネルギー効率の良い単一磁束量子(eSFQ:energy-efficient single flux quantum)回路が、追加的または代替的に、希釈冷凍機の4K段に実装され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機の入力線は、マイクロ波減衰器またはフィルタあるいはその両方を実施形態に組み込むことができ、高周波のマイクロ波読み出し信号は、希釈冷凍機システムの内部の量子ビットの読み出し共振器の共振周波数にほぼ等しい。特定の実施形態では、希釈冷凍機の入力線は、限界周波数を超える高周波のマイクロ波信号またはノイズあるいはその両方を減衰させるマイクロ波減衰器またはフィルタあるいはその両方を実施形態に組み込むことができ、高周波のマイクロ波信号またはノイズあるいはその両方は、希釈冷凍機の読み出し共振器の共振周波数に関してデチューンされる。限界周波数は、読み出し共振器の共振周波数を下回ることができる。特定の実施形態では、低周波のマイクロ波量子ビット読み出し信号を、希釈冷凍機の読み出し共振器の共振周波数にほぼ等しい高周波のマイクロ波量子ビット読み出し信号にアップコンバートするためのアップコンバート段が、希釈冷凍機の基礎段に実装され得る。ジョセフソン・ミキサーのセットを使用して、アップコンバート段に関連付けられたアップコンバート・プロセスが実行され得る。ジョセフソン・ミキサーのセットは、例えば、磁束バイアスおよびマイクロ波駆動を採用する、散逸が少ない三波ジョセフソン・ミキサーであることができる。1つの例では、ジョセフソン・ミキサーのセットは、集中素子マイクロ波共振器および表面音響波(SAW:surface acoustic wave)共振器に結合されたジョセフソン・リング変調器を採用することができる。特定の実施形態では、量子ビット制御用の別々の入力線が採用され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機の内部のマイクロ波ポンプ線が、各ポンプ周波数より高いか、または低い周波数でのノイズに関して、減衰され得る。マイクロ波ポンプ線は、希釈冷凍機の内部のジョセフソン・ミキサー、ジョセフソンベースの方向性増幅器、ジョセフソンベースのアイソレータ、またはジョセフソンベースのサーキュレータ、あるいはその組み合わせの動作に必要なマイクロ波駆動を搬送することができる。特定の実施形態では、ポンプ信号(例えば、帯域内信号)を最小限に減衰させ、他の信号(例えば、帯域外信号)を大幅に減衰させる、ポンプ線上のバンドパス・フィルタを採用することによって、ポンプ線が減衰され得る。そのため、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。例えば、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムは、極低温の磁気に基づくサーキュレータ、アイソレータ、またはトランジスタ(例えば、高電子移動度トランジスタ)、あるいはその組み合わせを使用せずに実装され得る。さらに、室温で、読み出し線上のマイクロ波ミキサーが不要である。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。加えて、希釈冷凍機の入力線または希釈冷凍機の出力線あるいはその両方は、黒体放射ノイズまたは電磁ノイズあるいはその両方を減衰させる減衰器を含むことができる。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムにおける低周波のマイクロ波信号の合成またはサンプリングあるいはその両方は、希釈冷凍機システムの複雑さを低減することもできる。さらに、改善された超伝導デバイス、改善された量子プロセッサ(例えば、改善された超伝導量子プロセッサ)、または改善された量子コンピューティング・システム、あるいはその組み合わせが提供され得る。
【0014】
図1は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、超伝導量子プロセッサ用の改善された希釈冷凍機を提供する、例示的な非限定的システム100のブロック図を示している。例えば、システム100は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、希釈冷凍機内で低周波のマイクロ波信号を使用する超伝導量子ビットの新しい測定方式を提供することができる。一実施形態では、システム100は量子コンピューティング・システムであることができる。別の実施形態では、システム100は、追加的または代替的に、極低温マイクロ波システムであることができる。さまざまな実施形態では、システム100は、量子コンピューティング技術、超伝導技術、量子ハードウェア技術、量子コンピュータ技術、量子回路技術、量子プロセッサ技術、極低温マイクロ波技術、希釈冷凍機技術、量子増幅器技術、超伝導量子ビット技術、マイクロ波デバイス技術、量子情報処理技術、人工知能技術、機械学習技術、またはその他の技術、あるいはその組み合わせなどの、ただしこれらに限定されない、技術に関連付けられ得る。システム100は、抽象的ではない、人間による一連の精神的活動として実行され得ない本質的に高度に技術的な問題を解決するためのハードウェアまたはソフトウェアあるいはその両方を採用することができる。さらに、実行されるプロセスの一部は、量子コンピューティングまたは希釈冷凍機システムあるいはその両方に関連する定義されたプロセスまたはタスクあるいはその両方を実行するために、1つまたは複数の特殊なコンピュータ(例えば、1つまたは複数の特殊な回路、1つまたは複数の特殊なハードウェアなど)によって実行されてよい。システム100またはシステムのコンポーネントあるいはその両方は、例えば、量子コンピューティング技術、超伝導技術、量子ハードウェア技術、量子コンピュータ技術、量子回路技術、量子プロセッサ技術、希釈冷凍機技術、極低温マイクロ波技術、量子増幅器技術、超伝導量子ビット技術、マイクロ波デバイス技術、量子情報処理技術、人工知能技術、機械学習技術などの、前述した技術における進歩によって生じる新しい問題を解決するために、採用され得る。システム100の1つまたは複数の実施形態は、量子コンピューティング・システム、超伝導システム、量子ハードウェア・システム、量子コンピュータ・システム、量子回路システム、量子プロセッサ・システム、希釈冷凍機システム、極低温マイクロ波システム、量子増幅器システム、超伝導量子ビット・システム、マイクロ波デバイス・システム、量子情報処理システム、人工知能システム、機械学習システム、またはその他の技術のシステム、あるいはその組み合わせに対する技術的改良を提供することができる。システム100の1つまたは複数の実施形態は、希釈冷凍機内の熱負荷を低減すること、または希釈冷凍機の電力消費を低減すること、あるいはその両方によって、希釈冷凍機に対する技術的改良を提供することもできる。追加的または代替的に、システム100の1つまたは複数の実施形態は、量子プロセッサの性能を改善すること、または量子プロセッサの精度を改善すること、あるいはその両方によって、量子プロセッサに対する技術的改良を提供することもできる。
【0015】
図1に示されている実施形態では、システム100は、希釈冷凍機システム102、量子プロセッサ104、または古典的コンピューティング・システム106、あるいはその組み合わせを含むことができる。希釈冷凍機システム102は、量子プロセッサ104を冷却するために採用された希釈冷凍機であることができる。例えば、希釈冷凍機システム102は、量子プロセッサ104をミリケルビン温度に冷却するために採用された希釈冷凍機であることができる。一実施形態では、希釈冷凍機システム102は、量子プロセッサ104を収納することができる。別の実施形態では、量子プロセッサ104は、希釈冷凍機システム102に取り付けられ得る。1つの例では、量子プロセッサ104は、希釈冷凍機システム102の基礎段に取り付けられ得る。基礎段は、例えば、希釈冷凍機システム102の最も低温の部分であることができる。量子プロセッサ104は、量子コンピューティングの量子状態を操作するように構成されたデバイス(例えば、量子コンピュータ、量子回路など)であることができる。1つの例では、量子プロセッサ104は、超伝導量子プロセッサであることができる。1つの態様では、量子プロセッサ104は、量子物理学の原理に基づいて一連の計算を実行するマシンであることができる。例えば、量子プロセッサ104は、量子ビットを使用して情報をエンコードするか、または処理するか、あるいはその両方を実行することができる。1つの実施形態では、量子プロセッサ104は、量子ビットを使用して情報をエンコードするか、または処理するか、あるいはその両方を実行することができる、ハードウェア量子プロセッサ(例えば、ハードウェア超伝導量子プロセッサ)であることができる。例えば、量子プロセッサ104は、量子ビットに関連付けられた一連の命令スレッドを実行するハードウェア量子プロセッサであることができる。非限定的な実施形態では、量子プロセッサ104は、量子ビット共振器であることができる。古典的コンピューティング・システム106は、ビット(例えば、「0」の値を持つビットおよび「1」の値を持つビット)を使用して情報を格納するか、または処理するか、あるいはその両方を実行する古典的コンピューティングを実行することができる。1つの態様では、古典的コンピューティング・システム106は、ほぼ室温(例えば、約273K)で実装され得る。古典的コンピューティング・システム106は、古典的信号処理または信号解析あるいはその両方を実行できる。古典的コンピューティング・システム106は、追加的または代替的に、データ(例えば、ビット)の格納を管理することができる。さらに、古典的コンピューティング・システム106は、ほぼ室温で操作される1つまたは複数の電子機器を含むことができる。
【0016】
一実施形態では、古典的コンピューティング・システム106は、マイクロ波信号108を希釈冷凍機システム102に提供することができる。マイクロ波信号108は、電圧または電流あるいはその両方における振動の変化に関連付けられた無線周波数信号であることができる。さらに、マイクロ波信号108は、1つまたは複数のマイクロ波信号を含むことができる。マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104を制御するために採用され得る。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子情報を測定するために採用され得る。1つの態様では、マイクロ波信号108は、例えば4GHz~10GHzの周波数範囲内の高周波のマイクロ波信号であることができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は量子ビット読み出し信号であることができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子ビット読み出し情報などの量子ビット情報を搬送することができる。
【0017】
希釈冷凍機システム102は、マイクロ波信号108を変更し、希釈冷凍機システム102内で送信するための変更された周波数のマイクロ波信号109を生成することができる。例えば、変更された周波数のマイクロ波信号109は、減少した周波数を有する変更されたマイクロ波信号108であることができる。別の例では、変更された周波数のマイクロ波信号109は、増加した周波数を有する変更されたマイクロ波信号108であることができる。一実施形態では、変更された周波数のマイクロ波信号109は、例えば0.5GHz~2GHzの周波数範囲内の低周波のマイクロ波信号であることができる。例えば、変更された周波数のマイクロ波信号109は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット周波数を下回る周波数を備えることができる。追加的または代替的に、変更された周波数のマイクロ波信号109は、量子プロセッサ104に関連付けられた読み出し共振器周波数を下回る周波数を備えることができる。一実施形態では、希釈冷凍機システム102は、マイクロ波信号108に関連付けられたダウンコンバート・プロセスを実行し、変更された周波数のマイクロ波信号109を生成することができる。希釈冷凍機システム102によって実行されるダウンコンバート・プロセスは、無損失かつコヒーレントであることができる。さらに、特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102は、マイクロ波信号108をダウンコンバートし、変更された周波数のマイクロ波信号109を生成するために、ジョセフソン・ミキサーのセットを採用することができる。ジョセフソン・ミキサーのセットは、例えば、散逸が少ない三波ジョセフソン・ミキサーであることができる。1つの実装では、ジョセフソン・ミキサーのセットは、マイクロ波信号108が低周波信号である実施形態におけるアップコンバートのために採用され得る。例えば、一実施形態では、古典的コンピューティング・システム106内の1つまたは複数の電子機器(例えば、室温での1つまたは複数の電子機器)を使用してマイクロ波信号108が合成され得る。代替の実施形態では、希釈冷凍機システム102内の1つまたは複数のRSFQ回路(例えば、4K段での1つまたは複数の電子機器)が、マイクロ波信号108を低周波信号として合成することができる。別の実施形態では、古典的コンピューティング・システム106内の1つまたは複数の電子機器(例えば、室温での1つまたは複数の電子機器)を使用してマイクロ波信号108が高周波信号として合成され得る。代替として、希釈冷凍機システム102内の1つまたは複数のRSFQ回路(例えば、4K段での1つまたは複数の電子機器)が、マイクロ波信号108を高周波信号として合成することができる。さらに別の実施形態では、希釈冷凍機システム102は、変更された周波数のマイクロ波信号109を提供するために、マイクロ波信号108の周波数を減らすこと、および増やすことができる。例えば、希釈冷凍機システム102は、マイクロ波信号108の周波数を減らし、減少した周波数のマイクロ波信号108を生成することができる。希釈冷凍機システム102は、減少した周波数のマイクロ波信号108の周波数を、マイクロ波信号108の元の周波数を下回る特定の周波数に増やすこともできる。特定の実施形態では、マイクロ波信号108の周波数を、量子プロセッサ104に関連付けられた読み出し共振器の読み出し周波数にアップコンバートすることができる。1つの態様では、量子ビット測定値(例えば、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット測定値)を古典的コンピューティング・システム106に提供するために、変更された周波数のマイクロ波信号109が採用され得る。別の実施形態では、希釈冷凍機システム102は、減少した周波数のマイクロ波信号11をデジタル信号112に変換することができる。デジタル信号112は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット測定値を含むことができる。例えば、デジタル信号112は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット測定値を、2進値のシーケンスとしてエンコードすることができる。さらに、希釈冷凍機システム102は、デジタル信号112を古典的コンピューティング・システム106に提供することができる。そのため、古典的コンピューティング・システム106は、デジタル信号112の古典的信号処理を実行し、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット測定値を取得することができる。
【0018】
従来の希釈冷凍機システムと比較して、システム100がさまざまな利点を提供できるということが、理解されるべきである。例えば、システム100を採用することによって、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機システム内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。さらに、システム100を採用することによって、希釈冷凍機システムに関連付けられた量子プロセッサの性能または精度あるいはその両方が改善され得る。1つの例では、変更された周波数のマイクロ波信号109(例えば、減少した周波数のマイクロ波信号)を採用することによって、量子プロセッサ104の性能または精度あるいはその両方を改善することができる。別の例では、希釈冷凍機システム102は、量子プロセッサ104のコヒーレンスを改善するため、または量子プロセッサ104のハードウェアのオーバーヘッドを低減するため、あるいはその両方のために、希釈冷凍機システム102の内部のマイクロ波信号108の周波数を減らすこと、および増やすことができる。
【0019】
図2は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム200のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0020】
システム200は、希釈冷凍機システム102、量子プロセッサ104、または古典的コンピューティング・システム106、あるいはその組み合わせを含むことができる。
図2に示されている実施形態では、希釈冷凍機システム102は、方向性結合器202、ジョセフソンベースのアイソレータ204、ジョセフソン方向性増幅器206、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、または高速単一磁束量子(RSFQ)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)210、あるいはその組み合わせを含むことができる。一実施形態では、方向性結合器202、ジョセフソンベースのアイソレータ204、ジョセフソン方向性増幅器206、バンドパス・フィルタ208、またはジョセフソンベースのミキサー209、あるいはその組み合わせは、希釈冷凍機システム102の10mK段に取り付けられ得る。追加的または代替的に、RSFQ ADC210は、希釈冷凍機システム102の4K段に取り付けられ得る。古典的コンピューティング・システム106によって生成されたマイクロ波信号108が、希釈冷凍機システム102の入力伝送線を介して希釈冷凍機システム102に提供され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102の入力伝送線は、マイクロ波信号108を減衰させるか、フィルタリングするか、あるいはその両方を実行するために、1つもしくは複数の減衰器または1つもしくは複数のフィルタ(例えば、1つまたは複数のローパス・フィルタ)あるいはその両方を含むことができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット共振周波数または読み出し共振周波数あるいはその両方に対応する周波数を含むことができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット共振周波数に対応する周波数を含むことができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の読み出し共振器に対応する周波数を含むことができる。特定の実施形態では、マイクロ波信号108は、追加的または代替的に、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができ、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットを制御することができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連する1つまたは複数の量子測定を容易にすることができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報の測定を容易にすることができる。1つの例では、量子ビット情報は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット状態(例えば、励起状態、基底状態、または重ね合わせ状態)に関する情報を含むことができる。
【0021】
マイクロ波信号108は、希釈冷凍機システム102の方向性結合器202によって受信され得る。方向性結合器202は、古典的コンピューティング・システム106、量子プロセッサ104、またはジョセフソンベースのアイソレータ204、あるいはその組み合わせの間の接続を容易にする回路であることができる。1つの態様では、マイクロ波信号108は、方向性結合器202の第1のポートによって受信され得る。マイクロ波信号108の一部は、方向性結合器202の第2のポートを介して方向性結合器202に結合された低温負荷によって散逸され得る。低温負荷は、例えば、50オームの負荷であることができる。さらに、マイクロ波信号108の残りの部分が、方向性結合器202の第3のポートを介して量子プロセッサ104に提供され得る。例えば、マイクロ波信号108の残りの部分が、第3のポートを介して量子プロセッサ104に提供され得る。さらに、マイクロ波信号108の残りの部分は、量子プロセッサ104に(例えば、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に)反射され、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報(例えば、量子ビット測定値)に関連付けられた読み出し出力信号212を提供することができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、回路量子電気力学(cQED:circuit quantum electrodynamics)によって量子プロセッサ104に反射され得る。例えば、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットは、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に分散的に結合され得る。さらに、量子ビット状態は、量子プロセッサ104に適用されたマイクロ波信号108の測定された位相シフトに基づいて決定され得る。そのため、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号212は、量子ビット測定値、量子ビット状態、またはその他の量子ビット情報、あるいはその組み合わせなどの、量子ビット情報を含むことができる。
【0022】
ジョセフソンベースのアイソレータ204、ジョセフソン方向性増幅器206、またはバンドパス・フィルタ208、あるいはその組み合わせは、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号212(例えば、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号212)をさらに処理することができる。1つの態様では、読み出し出力信号212は、方向性結合器202の第4のポートを介してジョセフソンベースのアイソレータ204に送信され得る。ジョセフソンベースのアイソレータ204は、希釈冷凍機システム102内で、減衰のない読み出し出力信号212の送信を可能にすることができる。ジョセフソンベースのアイソレータ204は、ジョセフソン方向性増幅器206に向かう単一方向での読み出し出力信号212の送信を可能にすることもできる。一実施形態では、ジョセフソンベースのアイソレータ204は、ビーム分割器を介して結合された2つのアクティブ・ジョセフソン・ミキサー(active Josephson mixers)を含むことができる。ジョセフソンベースのアイソレータ204の2つのアクティブ・ジョセフソン・ミキサーは、例えば、マイクロ波ポンプ・ソース信号によって駆動され得る。別の実施形態では、ジョセフソンベースのアイソレータ204は、量子プロセッサ104に提供されるノイズ(例えば、希釈冷凍機システム102内の出力チェーンから生じるノイズ)を制限することができる。ジョセフソン方向性増幅器206は、読み出し出力信号212を増幅することができる。ジョセフソン方向性増幅器206は、量子限定された増幅器または量子限定に近い増幅器であることができる。一実施形態では、ジョセフソン方向性増幅器206は、読み出し出力信号212の増幅を容易にするための一緒に結合された2つのジョセフソン・パラメトリック・コンバータを備えることができる。特定の実施形態では、読み出し出力信号212は、特定の周波数を中心にして、バンドパス・フィルタ208によってさらにフィルタリングされ得る。例えば、バンドパス・フィルタ208は、読み出し出力信号212に関連付けられた周波数の特定の帯域がジョセフソンベースのミキサー209に通過することを可能にすることができる。1つの態様では、バンドパス・フィルタ208は、損失を最小限に抑えて読み出し出力信号212を送信することができ、限界周波数を下回るDC信号またはマイクロ波信号あるいはその両方を遮ることができる。ジョセフソンベースのミキサー209は、読み出し出力信号212を減少した周波数のマイクロ波信号110に変換することができる。減少した周波数のマイクロ波信号110は、読み出し出力信号212の周波数およびマイクロ波信号108の周波数より低い周波数を含むことができる。例えば、減少した周波数のマイクロ波信号110は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの周波数および量子プロセッサ104の量子ビット共振器の周波数より低い周波数を含むことができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー209は、減少した周波数のマイクロ波信号110への、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号212のダウンコンバートを容易にするために、1つもしくは複数の集中素子共振器または1つもしくは複数の表面音響波共振器あるいはその両方に結合されたジョセフソン・リング変調器のセットを含むことができる。したがって、減少した周波数のマイクロ波信号110は、ダウンコンバートされた読み出し出力信号(例えば、ダウンコンバートされた読み出し出力信号212)であることができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー209によって生成された減少した周波数のマイクロ波信号110は、ローパス・フィルタによってフィルタリングされ得る。例えば、希釈冷凍機システム102の10mK段と希釈冷凍機システム102の4K段の間の出力線は、ジョセフソンベースのミキサー209とRSFQ ADC210の間にローパス・フィルタを含むことができる。ローパス・フィルタは、ローパス・フィルタのカットオフ周波数を超える高周波信号またはノイズあるいはその両方を通さないことができる。例えば、ローパス・フィルタは、減少した周波数のマイクロ波信号110を、RSFQ ADC210によって処理するために、損失を最小限に抑えて送信することができる。さらに、ローパス・フィルタは、希釈冷凍機システム102内の出力チェーンに関連付けられた高周波ノイズを通さないことができる。さらに、RSFQ ADC210は、デジタル信号112を生成することができる。例えば、RSFQ ADC210は、減少した周波数のマイクロ波信号110をサンプリングするか、またはデジタル化するか、あるいはその両方を実行し、デジタル信号112を生成することができる。一実施形態では、RSFQ ADC210は、超伝導デバイスに基づいて減少した周波数のマイクロ波信号110をデジタル化し、デジタル信号112を生成することができる。そのため、デジタル信号112は、読み出し出力信号212に含まれているエンコードされた量子ビット情報を含むことができ、デジタル信号112に含まれている量子ビット情報は、バイナリ・ビットのシーケンスを使用してエンコードされる。一実施形態では、RSFQ ADC210は、減少した周波数のマイクロ波信号110をデジタル信号112に変換するために、ジョセフソン接合によって生成された単一磁束量子電圧パルスを採用することができる。RSFQ ADC210によって生成されたデジタル信号112が、希釈冷凍機システム102の出力伝送線を介して古典的コンピューティング・システム106に提供され得る。特定の実施形態では、RSFQ ADC210は、エネルギー効率の良いRSFQ(ERSFQ)ADCまたはエネルギー効率の良い単一磁束量子(eSFQ)ADCであることができる。特定の実施形態では、減少した周波数のマイクロ波信号110をフィルタリングするRSFQ ADC210またはローパス・フィルタあるいはその両方は、希釈冷凍機システム102の出力伝送線上に位置することができる。
【0023】
従来の希釈冷凍機システムと比較して、システム200がさまざまな利点を提供できるということが、理解されるべきである。例えば、システム200を採用することによって、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機システム内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。さらに、システム200を採用することによって、希釈冷凍機システムに関連付けられた量子プロセッサの性能または精度あるいはその両方が改善され得る。
【0024】
図3は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム300のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0025】
システム300は、希釈冷凍機システム102’、量子プロセッサ104、または古典的コンピューティング・システム106、あるいはその組み合わせを含むことができる。希釈冷凍機システム102’は、希釈冷凍機システム102の代替の実施形態であることができる。
図3に示されている実施形態では、希釈冷凍機システム102’は、方向性結合器202、ジョセフソンベースのアイソレータ204、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、直流超伝導量子干渉デバイス(DC-SQUID)増幅器302、またはRSFQ ADC210、あるいはその組み合わせを含むことができる。一実施形態では、方向性結合器202、ジョセフソンベースのアイソレータ204、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、またはDC-SQUID増幅器302、あるいはその組み合わせは、希釈冷凍機システム102’の10mK段に取り付けられ得る。追加的または代替的に、RSFQ ADC210は、希釈冷凍機システム102’の4K段に取り付けられ得る。古典的コンピューティング・システム106によって生成されたマイクロ波信号108が、希釈冷凍機システム102’の入力伝送線を介して希釈冷凍機システム102’に提供され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102’の入力伝送線は、マイクロ波信号108を減衰させるか、フィルタリングするか、あるいはその両方を実行するために、1つもしくは複数の減衰器または1つもしくは複数のフィルタ(例えば、1つまたは複数のローパス・フィルタ)あるいはその両方を含むことができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット共振周波数または読み出し共振周波数あるいはその両方に対応する周波数を含むことができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット共振周波数に対応する周波数を含むことができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の読み出し共振器に対応する周波数を含むことができる。特定の実施形態では、マイクロ波信号108は、追加的または代替的に、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができ、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットを制御することができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連する1つまたは複数の量子測定を容易にすることができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報の測定を容易にすることができる。1つの例では、量子ビット情報は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット状態(例えば、励起状態、基底状態、または重ね合わせ状態)に関する情報を含むことができる。
【0026】
マイクロ波信号108は、希釈冷凍機システム102’の方向性結合器202によって受信され得る。方向性結合器202は、古典的コンピューティング・システム106、量子プロセッサ104、またはジョセフソンベースのアイソレータ204、あるいはその組み合わせの間の接続を容易にする回路であることができる。1つの態様では、マイクロ波信号108は、方向性結合器202の第1のポートによって受信され得る。マイクロ波信号108の一部は、方向性結合器202の第2のポートを介して方向性結合器202に結合された低温負荷によって散逸され得る。低温負荷は、例えば、50オームの負荷であることができる。さらに、マイクロ波信号108の残りの部分が、方向性結合器202の第3のポートを介して量子プロセッサ104に提供され得る。例えば、マイクロ波信号108の残りの部分が、第3のポートを介して量子プロセッサ104に提供され得る。さらに、マイクロ波信号108の残りの部分は、量子プロセッサ104に(例えば、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に)反射され、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報(例えば、量子ビット測定値)に関連付けられた読み出し出力信号212を提供することができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、cQEDによって量子プロセッサ104に反射され得る。例えば、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットは、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に分散的に結合され得る。さらに、量子ビット状態は、量子プロセッサ104に適用されたマイクロ波信号108の測定された位相シフトに基づいて決定され得る。そのため、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号212は、量子ビット測定値、量子ビット状態、またはその他の量子ビット情報、あるいはその組み合わせなどの、量子ビット情報を含むことができる。
【0027】
ジョセフソンベースのアイソレータ204、またはバンドパス・フィルタ208、あるいはその両方は、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号212(例えば、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号212)をさらに処理することができる。1つの態様では、読み出し出力信号212は、方向性結合器202の第4のポートを介してジョセフソンベースのアイソレータ204に送信され得る。ジョセフソンベースのアイソレータ204は、希釈冷凍機システム102’内で、減衰のない読み出し出力信号212の送信を可能にすることができる。ジョセフソンベースのアイソレータ204は、バンドパス・フィルタ208に向かう単一方向での読み出し出力信号212の送信を可能にすることもできる。一実施形態では、ジョセフソンベースのアイソレータ204は、ビーム分割器を介して結合された2つのアクティブ・ジョセフソン・ミキサーを含むことができる。ジョセフソンベースのアイソレータ204の2つのアクティブ・ジョセフソン・ミキサーは、例えば、マイクロ波ポンプ・ソース信号によって駆動され得る。特定の実施形態では、読み出し出力信号212は、特定の周波数を中心にして、バンドパス・フィルタ208によってさらにフィルタリングされ得る。例えば、バンドパス・フィルタ208は、読み出し出力信号212に関連付けられた周波数の特定の帯域がジョセフソンベースのミキサー209に通過することを可能にすることができる。1つの態様では、バンドパス・フィルタ208は、損失を最小限に抑えて読み出し出力信号212を送信することができ、限界周波数を下回るDC信号またはマイクロ波信号あるいはその両方を遮ることができる。ジョセフソンベースのミキサー209は、読み出し出力信号212を減少した周波数のマイクロ波信号110に変換することができる。減少した周波数のマイクロ波信号110は、読み出し出力信号212の周波数およびマイクロ波信号108の周波数より低い周波数を含むことができる。例えば、減少した周波数のマイクロ波信号110は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの周波数および量子プロセッサ104の量子ビット共振器の周波数より低い周波数を含むことができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー209は、減少した周波数のマイクロ波信号110への、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号212のダウンコンバートを容易にするために、1つもしくは複数の集中素子共振器または1つもしくは複数の表面音響波共振器あるいはその両方に結合されたジョセフソン・リング変調器のセットを含むことができる。したがって、減少した周波数のマイクロ波信号110は、ダウンコンバートされた読み出し出力信号(例えば、ダウンコンバートされた読み出し出力信号212)であることができる。DC-SQUID増幅器302は、減少した周波数のマイクロ波信号110を増幅することができる。DC-SQUID増幅器302は、量子限定された増幅器または量子限定に近い増幅器であることができる。一実施形態では、DC-SQUID増幅器302は、減少した周波数のマイクロ波信号110の増幅を容易にするために、チップ上のマイクロ波回路に結合された超伝導ループ内の並列な2つのジョセフソン接合を備えることができる。一実施形態では、DC-SQUID増幅器302によって生成されて増幅された、減少した周波数のマイクロ波信号110は、ローパス・フィルタによってフィルタリングされ得る。例えば、希釈冷凍機システム102の10mK段と希釈冷凍機システム102の4K段の間の出力線は、DC-SQUID増幅器302とRSFQ ADC210の間にローパス・フィルタを含むことができる。ローパス・フィルタは、ローパス・フィルタのカットオフ周波数を超える高周波信号またはノイズあるいはその両方を通さないことができる。さらに、RSFQ ADC210は、増幅された減少した周波数のマイクロ波信号110に基づいて、デジタル信号112を生成することができる。例えば、RSFQ ADC210は、増幅された減少した周波数のマイクロ波信号110をサンプリングするか、またはデジタル化するか、あるいはその両方を実行し、デジタル信号112を生成することができる。そのため、デジタル信号112は、読み出し出力信号212に含まれているエンコードされた量子ビット情報を含むことができ、デジタル信号112に含まれている量子ビット情報は、バイナリ・ビットのシーケンスを使用してエンコードされる。一実施形態では、RSFQ ADC210は、増幅された減少した周波数のマイクロ波信号110をデジタル信号112に変換するために、ジョセフソン接合によって生成された単一磁束量子電圧パルスを採用することができる。RSFQ ADC210によって生成されたデジタル信号112が、希釈冷凍機システム102’の出力伝送線を介して古典的コンピューティング・システム106に提供され得る。特定の実施形態では、RSFQ ADC210は、ERSFQ ADCまたはeSFQ ADCであることができる。特定の実施形態では、減少した周波数のマイクロ波信号110をフィルタリングするRSFQ ADC210またはローパス・フィルタあるいはその両方は、希釈冷凍機システム102’の出力伝送線上に位置することができる。
【0028】
従来の希釈冷凍機システムと比較して、システム300がさまざまな利点を提供できるということが、理解されるべきである。例えば、システム300を採用することによって、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機システム内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。さらに、システム300を採用することによって、希釈冷凍機システムに関連付けられた量子プロセッサの性能または精度あるいはその両方が改善され得る。
【0029】
図4は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム400のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0030】
システム400は、希釈冷凍機システム102、量子プロセッサ104、古典的コンピューティング・システム106、RSFQ論理402、またはRSFQデジタル/アナログ・コンバータ(DAC:digital-to-analog converter)404、あるいはその組み合わせを含むことができる。希釈冷凍機システム102は、方向性結合器202、ジョセフソンベースのアイソレータ204、ジョセフソン方向性増幅器206、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、またはRSFQ ADC210、あるいはその組み合わせを含むことができる。
図4に示されている実施形態では、RSFQ DAC404がマイクロ波信号108を生成することができる。RSFQ DAC404によって生成されたマイクロ波信号108が、希釈冷凍機システム102の入力伝送線を介して希釈冷凍機システム102に提供され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102の入力伝送線は、マイクロ波信号108を減衰させるか、フィルタリングするか、あるいはその両方を実行するために、1つもしくは複数の減衰器または1つもしくは複数のフィルタ(例えば、1つまたは複数のローパス・フィルタ)あるいはその両方を含むことができる。RSFQ DAC404は、古典的コンピューティング・システム106に通信によって結合され得る。例えば、RSFQ DAC404は、古典的コンピューティング・システム106の1つまたは複数の電子機器に通信によって結合され得る。一実施形態では、RSFQ DAC404は、希釈冷凍機システム102の4K段に位置することができる。デジタル信号112が、古典的コンピューティング・システム106およびRSFQ論理402に提供され得る。RSFQ論理402は、マイクロ波信号108へのデジタル信号112の変換を容易にするための論理を含むことができる。例えば、RSFQ論理402は、マイクロ波信号108のフィードバックまたは連続的なマイクロ波信号108へのデジタル信号112の変換を容易にするための論理を含むことができる。特定の実施形態では、RSFQ論理402は、デジタル信号112の結果に基づいて、マイクロ波信号108のフィードバックまたは連続的なマイクロ波信号108へのデジタル信号112の変換を容易にするための論理を含むことができる。そのため、特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102の内部のデバイスによって、マイクロ波信号108が生成され得る。
【0031】
従来の希釈冷凍機システムと比較して、システム400がさまざまな利点を提供できるということが、理解されるべきである。例えば、システム400を採用することによって、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機システム内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。さらに、システム400を採用することによって、希釈冷凍機システムに関連付けられた量子プロセッサの性能または精度あるいはその両方が改善され得る。
【0032】
図5は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム500のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0033】
システム500は、希釈冷凍機システム102’、量子プロセッサ104、古典的コンピューティング・システム106、RSFQ論理402、またはRSFQ DAC404、あるいはその組み合わせを含むことができる。希釈冷凍機システム102’は、方向性結合器202、ジョセフソンベースのアイソレータ204、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、DC-SQUID増幅器302、またはRSFQ ADC210、あるいはその組み合わせを含むことができる。
図5に示されている実施形態では、RSFQ DAC404がマイクロ波信号108を生成することができる。RSFQ DAC404によって生成されたマイクロ波信号108が、希釈冷凍機システム102の入力伝送線を介して希釈冷凍機システム102’に提供され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102’の入力伝送線は、マイクロ波信号108を減衰させるか、フィルタリングするか、あるいはその両方を実行するために、1つもしくは複数の減衰器または1つもしくは複数のフィルタ(例えば、1つまたは複数のローパス・フィルタ)あるいはその両方を含むことができる。RSFQ DAC404は、古典的コンピューティング・システム106に通信によって結合され得る。例えば、RSFQ DAC404は、古典的コンピューティング・システム106の1つまたは複数の電子機器に通信によって結合され得る。一実施形態では、RSFQ DAC404は、希釈冷凍機システム102’の4K段に位置することができる。デジタル信号112が、古典的コンピューティング・システム106およびRSFQ論理402に提供され得る。RSFQ論理402は、マイクロ波信号108へのデジタル信号112の変換を容易にするための論理を含むことができる。例えば、RSFQ論理402は、マイクロ波信号108のフィードバックまたは連続的なマイクロ波信号108へのデジタル信号112の変換を容易にするための論理を含むことができる。特定の実施形態では、RSFQ論理402は、デジタル信号112の結果に基づいて、マイクロ波信号108のフィードバックまたは連続的なマイクロ波信号108へのデジタル信号112の変換を容易にするための論理を含むことができる。そのため、特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102’の内部のデバイスによって、マイクロ波信号108が生成され得る。
【0034】
従来の希釈冷凍機システムと比較して、システム500がさまざまな利点を提供できるということが、理解されるべきである。例えば、システム500を採用することによって、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機システム内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。さらに、システム500を採用することによって、希釈冷凍機システムに関連付けられた量子プロセッサの性能または精度あるいはその両方が改善され得る。
【0035】
図6は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム600のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0036】
システム600は、希釈冷凍機システム102”、量子プロセッサ104、または古典的コンピューティング・システム106、あるいはその組み合わせを含むことができる。希釈冷凍機システム102”は、希釈冷凍機システム102の代替の実施形態であることができる。
図6に示された実施形態では、希釈冷凍機システム102”は、ジョセフソンベースのミキサー602、バンドパス・フィルタ604、ジョセフソンベースのサーキュレータ606、ジョセフソン方向性増幅器206、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、またはRSFQ ADC210、あるいはその組み合わせを含むことができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー602、バンドパス・フィルタ604、ジョセフソンベースのサーキュレータ606、ジョセフソン方向性増幅器206、バンドパス・フィルタ208、またはジョセフソンベースのミキサー209、あるいはその組み合わせは、希釈冷凍機システム102”の10mK段に取り付けられ得る。追加的または代替的に、RSFQ ADC210は、希釈冷凍機システム102”の4K段に取り付けられ得る。古典的コンピューティング・システム106によって生成されたマイクロ波信号108が、希釈冷凍機システム102”の入力伝送線を介して希釈冷凍機システム102”に提供され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102”の入力伝送線は、マイクロ波信号108を減衰させるか、フィルタリングするか、あるいはその両方を実行するために、1つもしくは複数の減衰器または1つもしくは複数のフィルタ(例えば、1つまたは複数のローパス・フィルタ)あるいはその両方を含むことができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット共振周波数または読み出し共振周波数あるいはその両方を下回る低周波数を含むことができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット共振周波数を下回る周波数を含むことができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の読み出し共振器を下回る周波数を含むことができる。特定の実施形態では、マイクロ波信号108は、追加的または代替的に、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができ、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットを制御することができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連する1つまたは複数の量子測定を容易にすることができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報の測定を容易にすることができる。1つの例では、量子ビット情報は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット状態(例えば、励起状態、基底状態、または重ね合わせ状態)に関する情報を含むことができる。マイクロ波信号108は、希釈冷凍機システム102”のジョセフソンベースのミキサー602によって受信され得る。ジョセフソンベースのミキサー602は、特定の周波数を有するポンプ信号に基づくマイクロ波信号108の送信または生成あるいはその両方を容易にすることができる。1つの態様では、ジョセフソンベースのミキサー602は、マイクロ波信号108を増加した周波数のマイクロ波信号にアップコンバートすることができる。例えば、ジョセフソンベースのミキサー602は、マイクロ波信号108を読み出し信号213にアップコンバートすることができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー602は、増加した周波数のマイクロ波信号への、マイクロ波信号108のアップコンバートを容易にするために、1つもしくは複数の集中素子共振器または1つもしくは複数の表面音響波共振器あるいはその両方に結合されたジョセフソン・リング変調器のセットを含むことができる。それに応じて、読み出し信号213は、アップコンバートされた読み出し出力信号であることができる。特定の実施形態では、マイクロ波信号108は、特定の周波数を中心にして、バンドパス・フィルタ604によってさらにフィルタリングされ得る。例えば、バンドパス・フィルタ604は、マイクロ波信号108に関連付けられた周波数の特定の帯域がジョセフソンベースのサーキュレータ606に通過することを可能にすることができる。1つの態様では、バンドパス・フィルタ604は、損失を最小限に抑えてマイクロ波信号108を送信することができ、限界周波数を下回るDC信号またはマイクロ波信号あるいはその両方を遮ることができる。
【0037】
ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、古典的コンピューティング・システム106、量子プロセッサ104、またはジョセフソン方向性増幅器206、あるいはその組み合わせの間の接続を容易にする回路であることができる。1つの態様では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、非可逆マイクロ波デバイスであることができる。ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、1つの実装では、3つのポートを含むことができる。別の実装では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、4つのポートを含むことができる。1つの例では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606のあるポートに入る信号は、既定の循環方向に基づいて、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の別のポートに低損失でルーティングされ得る。1つの実装では、マイクロ波信号108は、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第1のポートによって受信され得る。さらに、量子プロセッサ104は、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第2のポートに結合され得る。マイクロ波信号108の一部は、第2のポートを介して量子プロセッサ104に(例えば、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に)反射され、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報(例えば、量子ビット測定値)に関連付けられた読み出し出力信号を提供することができる。読み出し出力信号は、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第3のポートを介して送信され得る。特定の実施形態では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第4のポートを介して、低温負荷がジョセフソンベースのサーキュレータ606に結合され得る。低温負荷は、例えば、50オームの負荷であることができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、cQEDによって量子プロセッサ104に反射され得る。例えば、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットは、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に分散的に結合され得る。さらに、量子ビット状態は、量子プロセッサ104に適用されたマイクロ波信号108の測定された位相シフトに基づいて決定され得る。そのため、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号は、量子ビット測定値、量子ビット状態、またはその他の量子ビット情報、あるいはその組み合わせなどの、量子ビット情報を含むことができる。1つの態様では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、読み出し出力信号に関連付けられた量子ビット情報に対するジョセフソン方向性増幅器206の過剰な逆作用を阻止することができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、磁性物質または強磁場あるいはその両方を使用せずに実装され得る。別の実施形態では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、ジョセフソン・パラメトリック・コンバータのセットを含むことができる。
【0038】
ジョセフソン方向性増幅器206、またはバンドパス・フィルタ208、あるいはその両方は、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号(例えば、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号)をさらに処理することができる。1つの態様では、読み出し出力信号がジョセフソン方向性増幅器206に送信され得る。ジョセフソン方向性増幅器206は、読み出し出力信号を増幅することができる。ジョセフソン方向性増幅器206は、量子限定された増幅器または量子限定に近い増幅器であることができる。一実施形態では、ジョセフソン方向性増幅器206は、読み出し出力信号の増幅を容易にするための一緒に結合された2つのジョセフソン・パラメトリック・コンバータを備えることができる。特定の実施形態では、読み出し出力信号は、特定の周波数を中心にして、バンドパス・フィルタ208によってさらにフィルタリングされ得る。例えば、バンドパス・フィルタ208は、読み出し出力信号に関連付けられた周波数の特定の帯域がジョセフソンベースのミキサー209に通過することを可能にすることができる。1つの態様では、バンドパス・フィルタ208は、損失を最小限に抑えて読み出し出力信号を送信することができ、限界周波数を下回るDC信号またはマイクロ波信号あるいはその両方を遮ることができる。ジョセフソンベースのミキサー209は、読み出し出力信号を減少した周波数のマイクロ波信号110に変換することができる。減少した周波数のマイクロ波信号110は、読み出し出力信号の周波数およびマイクロ波信号108の周波数より低い周波数を含むことができる。例えば、減少した周波数のマイクロ波信号110は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの周波数および量子プロセッサ104の量子ビット共振器の周波数より低い周波数を含むことができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー209は、減少した周波数のマイクロ波信号110への、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号のダウンコンバートを容易にするために、1つもしくは複数の集中素子共振器または1つもしくは複数の表面音響波共振器あるいはその両方に結合されたジョセフソン・リング変調器のセットを含むことができる。したがって、減少した周波数のマイクロ波信号110は、ダウンコンバートされた読み出し出力信号(例えば、ダウンコンバートされた読み出し出力信号)であることができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー209によって生成された減少した周波数のマイクロ波信号110は、ローパス・フィルタによってフィルタリングされ得る。例えば、希釈冷凍機システム102の10mK段と希釈冷凍機システム102の4K段の間の出力線は、ジョセフソンベースのミキサー209とRSFQ ADC210の間にローパス・フィルタを含むことができる。ローパス・フィルタは、ローパス・フィルタのカットオフ周波数を超える高周波信号またはノイズあるいはその両方を通さないことができる。さらに、RSFQ ADC210は、デジタル信号112を生成することができる。例えば、RSFQ ADC210は、減少した周波数のマイクロ波信号110をサンプリングするか、またはデジタル化するか、あるいはその両方を実行し、デジタル信号112を生成することができる。そのため、デジタル信号112は、読み出し出力信号に含まれているエンコードされた量子ビット情報を含むことができ、デジタル信号112に含まれている量子ビット情報は、バイナリ・ビットのシーケンスを使用してエンコードされる。一実施形態では、RSFQ ADC210は、減少した周波数のマイクロ波信号110をデジタル信号112に変換するために、ジョセフソン接合によって生成された単一磁束量子電圧パルスを採用することができる。RSFQ ADC210によって生成されたデジタル信号112が、希釈冷凍機システム102”の出力伝送線を介して古典的コンピューティング・システム106に提供され得る。特定の実施形態では、RSFQ ADC210は、ERSFQ ADCまたはeSFQ ADCであることができる。特定の実施形態では、減少した周波数のマイクロ波信号110をフィルタリングするRSFQ ADC210またはローパス・フィルタあるいはその両方は、希釈冷凍機システム102”の出力伝送線上に位置することができる。
【0039】
従来の希釈冷凍機システムと比較して、システム600がさまざまな利点を提供できるということが、理解されるべきである。例えば、システム600を採用することによって、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機システム内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。さらに、システム600を採用することによって、希釈冷凍機システムに関連付けられた量子プロセッサの性能または精度あるいはその両方が改善され得る。
【0040】
図7は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム700のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0041】
システム700は、希釈冷凍機システム102”’、量子プロセッサ104、または古典的コンピューティング・システム106、あるいはその組み合わせを含むことができる。希釈冷凍機システム102”’は、希釈冷凍機システム102’の代替の実施形態であることができる。
図7に示された実施形態では、希釈冷凍機システム102”’は、ジョセフソンベースのミキサー602、バンドパス・フィルタ604、ジョセフソンベースのサーキュレータ606、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、DC-SQUID増幅器、またはRSFQ ADC210、あるいはその組み合わせを含むことができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー602、バンドパス・フィルタ604、ジョセフソンベースのサーキュレータ606、バンドパス・フィルタ208、ジョセフソンベースのミキサー209、またはDC-SQUID増幅器、あるいはその組み合わせは、希釈冷凍機システム102”’の10mK段に取り付けられ得る。追加的または代替的に、RSFQ ADC210は、希釈冷凍機システム102”’の4K段に取り付けられ得る。古典的コンピューティング・システム106によって生成されたマイクロ波信号108が、希釈冷凍機システム102”’の入力伝送線を介して希釈冷凍機システム102”’に提供され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102”’の入力伝送線は、マイクロ波信号108を減衰させるか、フィルタリングするか、あるいはその両方を実行するために、1つもしくは複数の減衰器または1つもしくは複数のフィルタ(例えば、1つまたは複数のローパス・フィルタ)あるいはその両方を含むことができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット共振周波数または読み出し共振周波数あるいはその両方に対応する周波数を含むことができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット共振周波数に対応する周波数を含むことができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の読み出し共振器に対応する周波数を含むことができる。特定の実施形態では、マイクロ波信号108は、追加的または代替的に、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104の1つまたは複数の部分を制御することができ、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットを制御することができる。追加的または代替的に、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連する1つまたは複数の量子測定を容易にすることができる。例えば、マイクロ波信号108は、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報の測定を容易にすることができる。1つの例では、量子ビット情報は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの量子ビット状態(例えば、励起状態、基底状態、または重ね合わせ状態)に関する情報を含むことができる。マイクロ波信号108は、希釈冷凍機システム102”’のジョセフソンベースのミキサー602によって受信され得る。ジョセフソンベースのミキサー602は、特定の周波数を有するポンプ信号に基づくマイクロ波信号108の送信または生成あるいはその両方を容易にすることができる。1つの態様では、ジョセフソンベースのミキサー602は、マイクロ波信号108を増加した周波数のマイクロ波信号にアップコンバートすることができる。例えば、ジョセフソンベースのミキサー602は、マイクロ波信号108を読み出し信号213にアップコンバートすることができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー602は、増加した周波数のマイクロ波信号への、マイクロ波信号108のアップコンバートを容易にするために、1つもしくは複数の集中素子共振器または1つもしくは複数の表面音響波共振器あるいはその両方に結合されたジョセフソン・リング変調器のセットを含むことができる。それに応じて、読み出し信号213は、アップコンバートされた読み出し出力信号であることができる。特定の実施形態では、マイクロ波信号108は、特定の周波数を中心にして、バンドパス・フィルタ604によってさらにフィルタリングされ得る。例えば、バンドパス・フィルタ604は、マイクロ波信号108に関連付けられた周波数の特定の帯域がジョセフソンベースのサーキュレータ606に通過することを可能にすることができる。1つの態様では、バンドパス・フィルタ604は、損失を最小限に抑えてマイクロ波信号108を送信することができ、限界周波数を下回るDC信号またはマイクロ波信号あるいはその両方を遮ることができる。
【0042】
ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、古典的コンピューティング・システム106、量子プロセッサ104、またはジョセフソン方向性増幅器206、あるいはその組み合わせの間の接続を容易にする回路であることができる。1つの態様では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、非可逆マイクロ波デバイスであることができる。ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、1つの実装では、3つのポートを含むことができる。別の実装では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、4つのポートを含むことができる。1つの例では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606のあるポートに入る信号は、既定の循環方向に基づいて、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の別のポートに低損失でルーティングされ得る。1つの実装では、マイクロ波信号108は、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第1のポートによって受信され得る。さらに、量子プロセッサ104は、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第2のポートに結合され得る。マイクロ波信号108の一部は、第2のポートを介して量子プロセッサ104に(例えば、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に)反射され、量子プロセッサ104に関連付けられた量子ビット情報(例えば、量子ビット測定値)に関連付けられた読み出し出力信号を提供することができる。読み出し出力信号は、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第3のポートを介して送信され得る。特定の実施形態では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606の第4のポートを介して、低温負荷がジョセフソンベースのサーキュレータ606に結合され得る。低温負荷は、例えば、50オームの負荷であることができる。一実施形態では、マイクロ波信号108は、cQEDによって量子プロセッサ104に反射され得る。例えば、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットは、量子プロセッサ104の量子ビット共振器に分散的に結合され得る。さらに、量子ビット状態は、量子プロセッサ104に適用されたマイクロ波信号108の測定された位相シフトに基づいて決定され得る。そのため、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号は、量子ビット測定値、量子ビット状態、またはその他の量子ビット情報、あるいはその組み合わせなどの、量子ビット情報を含むことができる。1つの態様では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、読み出し出力信号に関連付けられた量子ビット情報に対するDC-SQUID増幅器302の過剰な逆作用を阻止することができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、磁性物質または強磁場あるいはその両方を使用せずに実装され得る。別の実施形態では、ジョセフソンベースのサーキュレータ606は、ジョセフソン・パラメトリック・コンバータのセットを含むことができる。
【0043】
バンドパス・フィルタ208は、量子プロセッサ104によって提供された読み出し出力信号(例えば、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号)をさらに処理することができる。1つの態様では、読み出し出力信号は、特定の周波数を中心にして、バンドパス・フィルタ208によってさらにフィルタリングされ得る。1つの例では、バンドパス・フィルタ208は、読み出し出力信号に関連付けられた周波数の特定の帯域がジョセフソンベースのミキサー209に通過することを可能にすることができる。1つの態様では、バンドパス・フィルタ208は、損失を最小限に抑えて読み出し出力信号を送信することができ、限界周波数を下回るDC信号またはマイクロ波信号あるいはその両方を遮ることができる。ジョセフソンベースのミキサー209は、読み出し出力信号を減少した周波数のマイクロ波信号110に変換することができる。減少した周波数のマイクロ波信号110は、読み出し出力信号の周波数およびマイクロ波信号108の周波数より低い周波数を含むことができる。例えば、減少した周波数のマイクロ波信号110は、量子プロセッサ104の超伝導量子ビットの周波数および量子プロセッサ104の量子ビット共振器の周波数より低い周波数を含むことができる。一実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー209は、減少した周波数のマイクロ波信号110への、マイクロ波信号108に関連付けられた読み出し出力信号のダウンコンバートを容易にするために、1つもしくは複数の集中素子共振器または1つもしくは複数の表面音響波共振器あるいはその両方に結合されたジョセフソン・リング変調器のセットを含むことができる。したがって、減少した周波数のマイクロ波信号110は、ダウンコンバートされた読み出し出力信号(例えば、ダウンコンバートされた読み出し出力信号)であることができる。DC-SQUID増幅器302は、減少した周波数のマイクロ波信号110を増幅することができる。DC-SQUID増幅器302は、量子限定された増幅器または量子限定に近い増幅器であることができる。一実施形態では、DC-SQUID増幅器302は、減少した周波数のマイクロ波信号110の増幅を容易にするために、超伝導ループ内の並列な2つのジョセフソン接合を備えることができる。一実施形態では、DC-SQUID増幅器302によって生成されて増幅された、減少した周波数のマイクロ波信号110は、ローパス・フィルタによってフィルタリングされ得る。例えば、希釈冷凍機システム102の10mK段と希釈冷凍機システム102の4K段の間の出力線は、DC-SQUID増幅器302とRSFQ ADC210の間にローパス・フィルタを含むことができる。ローパス・フィルタは、ローパス・フィルタのカットオフ周波数を超える高周波信号またはノイズあるいはその両方を通さないことができる。さらに、RSFQ ADC210は、増幅された減少した周波数のマイクロ波信号110に基づいて、デジタル信号112を生成することができる。例えば、RSFQ ADC210は、増幅された減少した周波数のマイクロ波信号110をサンプリングするか、またはデジタル化するか、あるいはその両方を実行し、デジタル信号112を生成することができる。そのため、デジタル信号112は、読み出し出力信号に含まれているエンコードされた量子ビット情報を含むことができ、デジタル信号112に含まれている量子ビット情報は、バイナリ・ビットのシーケンスを使用してエンコードされる。一実施形態では、RSFQ ADC210は、増幅された減少した周波数のマイクロ波信号110をデジタル信号112に変換するために、ジョセフソン接合によって生成された単一磁束量子電圧パルスを採用することができる。RSFQ ADC210によって生成されたデジタル信号112が、希釈冷凍機システム102”’の出力伝送線を介して古典的コンピューティング・システム106に提供され得る。特定の実施形態では、希釈冷凍機システム102”’の出力伝送線は、デジタル信号112を減衰させるか、フィルタリングするか、あるいはその両方を実行するために、1つもしくは複数の減衰器または1つもしくは複数のフィルタあるいはその両方を含むことができる。特定の実施形態では、RSFQ ADC210は、ERSFQ ADCまたはeSFQ ADCであることができる。特定の実施形態では、減少した周波数のマイクロ波信号110をフィルタリングするRSFQ ADC210またはローパス・フィルタあるいはその両方は、希釈冷凍機システム102”’の出力伝送線上に位置することができる。
【0044】
従来の希釈冷凍機システムと比較して、システム700がさまざまな利点を提供できるということが、理解されるべきである。例えば、システム700を採用することによって、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムのハードウェアのオーバーヘッドが低減され得る。低減されたハードウェアのオーバーヘッドは、希釈冷凍機システムの拡張性を促進することもできる。さらに、希釈冷凍機システム内の熱負荷または質量負荷あるいはその両方が低減され得る。量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムの電力消費も低減され得る。さらに、システム700を採用することによって、希釈冷凍機システムに関連付けられた量子プロセッサの性能または精度あるいはその両方が改善され得る。
【0045】
図8は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム800のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0046】
システム800は、古典的コンピューティング・システム106を含んでいる。古典的コンピューティング・システム106は、希釈冷凍機システム102、希釈冷凍機システム102’、希釈冷凍機システム102”、または希釈冷凍機システム102”’に通信によって結合され得る。
図8に示されている実施形態では、古典的コンピューティング・システム106が、古典的信号管理802または1つもしくは複数の電子機器804あるいはその両方を含むことができる。古典的信号管理802は、1つまたは複数の電子機器804に通信によって結合され得る。古典的信号管理802または1つもしくは複数の電子機器804あるいはその両方は、例えば、室温(例えば、約273K)のコンピューティング環境内で操作され得る。古典的信号管理802は、デジタル信号112に関連付けられた古典的信号処理を実行することができる。古典的信号管理802は、追加的または代替的に、デジタル信号112に関連付けられた信号解析を実行することができる。さらに、古典的コンピューティング・システム106は、追加的または代替的に、デジタル信号112に関連付けられたデータ(例えば、ビット)の格納を管理することができる。1つまたは複数の電子機器804は、マイクロ波信号108を生成することができるか、またはマイクロ波信号108を希釈冷凍機システム102、希釈冷凍機システム102’、希釈冷凍機システム102”、または希釈冷凍機システム102”’に送信することができるか、あるいはその両方を実行することができる。一実施形態では、1つまたは複数の電子機器804は、1つまたは複数の信号発生器であることができる。特定の実施形態では、古典的信号管理802および1つまたは複数の電子機器804は、1つもしくは複数のアナログ信号または1つもしくは複数のデジタル信号あるいはその両方を交換することができる。特定の実施形態では、古典的信号管理802または1つもしくは複数の電子機器804あるいはその両方は、RSFQ論理402またはRSFQ DAC404あるいはその両方に関連付けられた1つまたは複数の機能を制御することができる。特定の実施形態では、古典的信号管理802または1つもしくは複数の電子機器804あるいはその両方は、1つまたは複数のアナログ信号をRSFQ論理402またはRSFQ DAC404あるいはその両方に送信することができる。
【0047】
図9は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、例示的な非限定的システム900のブロック図を示している。本明細書に記載された他の実施形態で採用されている類似する要素の説明の繰り返しは、簡潔にするために省略されている。
【0048】
システム900は、ジョセフソンベースのミキサー901を含んでいる。ジョセフソンベースのミキサー901は、例えば、ジョセフソンベースのミキサー209に対応することができる。しかし、別の例では、ジョセフソンベースのミキサー901は、ジョセフソンベースのミキサー602に対応することができる。ジョセフソンベースのミキサー901は、マイクロ波共振器902、表面音響波共振器904、およびジョセフソン・リング変調器906を含むことができる。マイクロ波共振器902は、特定のマイクロ波周波数で共振することができるマイクロ波共振器であることができる。表面音響波共振器904は、マイクロ波共振器と異なる1つまたは複数のマイクロ波周波数で共振することができる電気機械共振器であることができる。1つの態様では、マイクロ波共振器902は、第1の共振周波数を備えることができ、表面音響波共振器904は、第2の共振周波数を備えることができる。ジョセフソン・リング変調器906は、ジョセフソン・トンネル接合のセットを備えることができる。例えば、ジョセフソン・リング変調器906は、ホイートストン・ブリッジ構成で配置されたジョセフソン接合のセットを備えることができる。追加的または代替的に、ジョセフソン・リング変調器906は、シャント接合のセットを備えることができる。一実施形態では、例えばマイクロ波共振器902、表面音響波共振器904、およびジョセフソン・リング変調器906を介して、減少した周波数のマイクロ波信号110への読み出し出力信号212の周波数のダウンコンバートを制御するために、ポンプ信号908が利用され得る。特定の実施形態では、ジョセフソンベースのミキサー901は、マイクロ波共振器902、表面音響波共振器904、またはジョセフソン・リング変調器906、あるいはその組み合わせの間の1つまたは複数の結合を容易にするために、結合コンデンサ910、結合コンデンサ912、結合コンデンサ914、または結合コンデンサ916、あるいはその組み合わせを含むことができる。結合コンデンサ910、結合コンデンサ912、結合コンデンサ914、または結合コンデンサ916、あるいはその組み合わせは、追加的または代替的に、読み出し出力信号212、減少した周波数のマイクロ波信号110、またはポンプ信号908、あるいはその組み合わせの処理を容易にすることができる。例えば、結合コンデンサ916は、減少した周波数のマイクロ波信号110を搬送する外部伝送線を表面音響波共振器904に結合することができる。結合コンデンサ910は、読み出し出力信号212を搬送する外部伝送線をマイクロ波共振器902に結合することができる。結合コンデンサ912または結合コンデンサ914あるいはその両方は、例えば、入力ポンプ駆動および出力ポンプ駆動を搬送する伝送線918をジョセフソン・リング変調器に結合することができる。
【0049】
図10は、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に従って、超伝導量子プロセッサ用の改善された希釈冷凍機を提供するための、例示的な非限定的方法1000のフロー図を示している。1002で、マイクロ波信号が、量子プロセッサに関連付けられた希釈冷凍機システムによって、希釈冷凍機システム内にあるジョセフソン・ミキサー回路に基づいて、減少した周波数のマイクロ波信号に変換される。1004で、減少した周波数のマイクロ波信号が、希釈冷凍機システムによって、量子プロセッサに関連付けられた量子ビット情報を含んでいるデジタル信号にデジタル化される。1006で、デジタル信号が、希釈冷凍機システムによって、古典的コンピューティング・システムに送信される。特定の実施形態では、方法1000は、追加的または代替的に、希釈冷凍機システムによって、古典的コンピューティング・システムからマイクロ波信号を受信することを含むことができる。特定の実施形態では、方法1000は、追加的または代替的に、希釈冷凍機システムによって、希釈冷凍機システム内にあるジョセフソン方向性増幅器を介してマイクロ波信号を増幅することを含むことができる。特定の実施形態では、方法1000は、追加的または代替的に、希釈冷凍機システムによって、希釈冷凍機システム内にあるジョセフソンベースのアイソレータを介して量子プロセッサをノイズから分離することを含むことができる。特定の実施形態では、方法1000は、追加的または代替的に、希釈冷凍機システムによって、希釈冷凍機システム内にあるジョセフソンベースのアイソレータを使用して、希釈冷凍機システムの出力チェーンに関連付けられたノイズから量子プロセッサを保護することを含むことができる。
【0050】
説明を簡単にするために、一連の動作として方法が示され、説明される。本革新技術が、示された動作によって、または動作の順序によって、あるいはその両方によって制限されず、例えば動作が、本明細書において提示されておらず、説明されていない他の動作と共に、さまざまな順序で、または同時に、あるいはその両方で発生できるということが、理解されるべきである。さらに、開示される対象に従って方法を実装するために、示されているすべての動作が必要でなくてもよい。加えて、当業者は、それらの方法が、代替として、状態図を介して相互に関連する一連の状態またはイベントとして表され得るということを理解するであろう。
【0051】
さらに、少なくとも、マイクロ波信号を減少した周波数のマイクロ波信号に変換すること、減少した周波数のマイクロ波信号をデジタル化することなどが、電気的および機械的コンポーネントおよび回路の組み合わせから確立されるため、人間は、本明細書で開示されたシステムまたはデバイスあるいはその両方によって実行される処理を再現することも実行することもできない。例えば、人間は、マイクロ波信号を減少した周波数のマイクロ波信号に変換することができない。さらに、人間は、減少した周波数のマイクロ波信号をデジタル化することができない。
【0052】
加えて、「または」という用語は、排他的「論理和」ではなく、包含的「論理和」を意味するよう意図されている。すなわち、特に指定されない限り、または文脈から明らかでない限り、「XがAまたはBを採用する」は、自然な包含的順列のいずれかを意味するよう意図されている。すなわち、XがAを採用するか、XがBを採用するか、またはXがAおよびBの両方を採用する場合、「XがAまたはBを採用する」が、前述の事例のいずれかにおいて満たされる。さらに、本明細書および添付の図面において使用される冠詞「ある(a)」および「1つの(an)」は、単数形を対象にすることが特に指定されない限り、または文脈から明らかでない限り、「1つまたは複数」を意味すると一般に解釈されるべきである。本明細書において使用されるとき、「例」または「例示的」あるいはその両方の用語は、例、事例、または実例となることを意味するために使用される。誤解を避けるために、本明細書で開示された対象は、そのような例によって制限されない。加えて、「例」または「例示的」あるいはその両方として本明細書に記載された任意の態様または設計は、他の態様または設計よりも好ましいか、または有利であると必ずしも解釈されず、当業者に知られている同等の例示的な構造および技術を除外するよう意図されていない。
【0053】
前述した内容は、システムおよびコンピュータ実装方法の単なる例を含んでいる。当然ながら、本開示を説明する目的で、コンポーネントまたはコンピュータ実装方法の考えられるすべての組み合わせについて説明することは不可能であるが、当業者は、本開示の多くのその他の組み合わせおよび並べ替えが可能であるということを認識できる。さらに、「含む」、「有する」、「所有する」などの用語が、発明を実施するための形態、特許請求の範囲、付記、および図面において使用される範囲では、それらの用語は、「備えている」が特許請求における暫定的な用語として使用されるときに解釈されるような、用語「備えている」と同様の方法で、包含的であるよう意図されている。
【0054】
さまざまな実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であることは意図されておらず、開示された実施形態に制限されない。記載された実施形態の範囲および思想を逸脱することなく多くの変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。本明細書で使用された用語は、実施形態の原理、実際の適用、または市場で見られる技術を超える技術的改良を最も適切に説明するため、または他の当業者が本明細書で開示された実施形態を理解できるようにするために選択されている。