(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】バッテリシステムの熱イベント感知方法およびそれを適用したバッテリシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240702BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240702BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H02J7/00 S
H02J7/04 K
H02J7/04 L
(21)【出願番号】P 2022564771
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2021013136
(87)【国際公開番号】W WO2022080699
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132500
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ソルジ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヒョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォンゴン
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特許第5881593(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2020/0086745(US,A1)
【文献】特開2009-076265(JP,A)
【文献】特開平11-191436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルを含むバッテリパック;
前記バッテリパックの内部圧力を測定する圧力センサ;および
アクティブモードで、第1サンプリング期間の間第1サンプリング周期ごとに
前記圧力センサによって測定された内部圧力に基づいて
第1基準圧力を更新し、前記
第1サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記
第1基準圧力の差で
第1圧力変動量を算出し、前記
第1圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、前記
第1サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が連続して少なくとも2回増加する場合、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断するバッテリ管理システムを含
み、
前記バッテリ管理システムが動作しないスリープモードで、前記圧力センサは、
第2サンプリング期間の間第2サンプリング周期ごとに内部圧力を測定した平均で第2基準圧力を更新し、前記第2サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記第2基準圧力の差で第2圧力変動量を算出し、前記第2圧力変動量が前記臨界圧力以上である時、前記バッテリ管理システムをウェークアップさせ、
前記第2サンプリング周期が前記第1サンプリング周期より長い、
バッテリシステム。
【請求項2】
複数のバッテリセルを含むバッテリパック;
前記バッテリパックの内部圧力をサンプリング周期ごとに測定する圧力センサ;
前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力に基づいて基準圧力を更新し、前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記基準圧力の差で圧力変動量を算出し、前記圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、前記サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が連続して少なくとも2回増加する場合、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断するバッテリ管理システム;および
前記圧力センサに電源を供給する補助電源を含み、
前記バッテリ管理システムがスリープモードである時、
前記圧力センサは、
前記サンプリング周期ごとにサンプリング期間の間測定された内部圧力の平均で基準圧力を更新し、前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記基準圧力の差で第1圧力変動量を算出し、前記第1圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、前記バッテリ管理システムをウェークアップさせ
る
バッテリシステム。
【請求項3】
前記バッテリ管理システムがウェークアップされた後、前記バッテリ管理システムは前記サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が少なくとも連続して2回増加する場合、前記バッテリパックを異常と判断する、請求項2に記載のバッテリシステム。
【請求項4】
前記バッテリ管理システムは、
前記熱イベントが発生したと判断した後、前記複数のバッテリセルの電圧および温度、および前記バッテリパックとグラウンドの間の絶縁抵抗を測定し、
前記複数のバッテリセルの電圧、前記複数のバッテリセルの温度、および前記絶縁抵抗の少なくとも一つが異常である場合、前記バッテリパックが異常であると判断する、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリシステム。
【請求項5】
前記バッテリ管理システムは、
前記複数のバッテリセルの電圧の少なくとも一つが臨界電圧以上の第1条件、前記複数のバッテリセルの温度の少なくとも一つが臨界温度以上の第2条件、および前記絶縁抵抗が所定の臨界抵抗以下である第3条件の少なくとも一つが満たされる場合、前記バッテリパックが異常であると判断する、請求項4に記載のバッテリシステム。
【請求項6】
前記バッテリパックと前記バッテリシステムの出力端を連結するリレーをさらに含み、
前記バッテリ管理システムは、前記バッテリパックが異常であると判断する時前記リレーを開放する、請求項4または5に記載のバッテリシステム。
【請求項7】
前記バッテリ管理システムは、
前記バッテリシステムを含む車両に前記バッテリパックの異常を知らせる、請求項4から6のいずれか一項に記載のバッテリシステム。
【請求項8】
前記圧力センサに電源を供給する補助電源をさらに含む、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項9】
複数のバッテリセルを含むバッテリパック;圧力センサ;およびバッテリ管理システムを含むバッテリシステムの熱イベント感知方法において、
前記圧力センサが前記バッテリパックの内部圧力を測定する段階;
アクティブモードで、前記バッテリ管理システムは、第1サンプリング期間の間第1サンプリング周期ごとに測定された内部圧力に基づいて第1基準圧力を更新し、前記第1サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記第1基準圧力の差で第1圧力変動量を算出し、前記第1圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、前記第1サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が連続して少なくとも2回増加する場合、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断する段階;および
前記バッテリ管理システムが動作しないスリープモードで、前記圧力センサが、
第2サンプリング期間の間第2サンプリング周期ごとに内部圧力を測定した平均で第2基準圧力を更新し、前記第2サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記第2基準圧力の差で第2圧力変動量を算出し、前記第2圧力変動量が前記臨界圧力以上である時、前記バッテリ管理システムをウェークアップさせる段階を含み、
前記第2サンプリング周期が前記第1サンプリング周期より長い、
バッテリシステムの熱イベント感知方法。
【請求項10】
複数のバッテリセルを含むバッテリパック;圧力センサ;およびバッテリ管理システムを含むバッテリシステムの熱イベント感知方法において、
前記圧力センサがサンプリング周期ごとに前記バッテリパックの内部圧力を測定する段階;
前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力に基づいて基準圧力を更新する段階;
前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記基準圧力の差で圧力変動量を算出する段階;
前記圧力変動量が所定の臨界圧力以上であるかを判断する段階;および
前記圧力変動量が前記臨界圧力以上である時、前記サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が少なくとも連続して2回増加する場合、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断する段階を含
み、
前記バッテリ管理システムがスリープモードである時、
前記基準圧力を更新する段階、前記圧力変動量を算出する段階、および前記圧力変動量が前記臨界圧力以上であるかを判断する段階は、補助電源により電源を供給される前記圧力センサによって行われ、
前記バッテリ管理システムがスリープモードである時、前記圧力変動量が前記臨界圧力以上であると、前記圧力センサが前記バッテリ管理システムをウェークアップさせる段階をさらに含む
バッテリシステムの熱イベント感知方法。
【請求項11】
前記バッテリ管理システムがウェークアップされた後、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断する段階は前記バッテリ管理システムによって行われる、請求項
9または
10に記載のバッテリシステムの熱イベント感知方法。
【請求項12】
前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断する段階は、
サンプリングの現在の周期に測定された内部圧力からサンプリングの前の周期に測定された内部圧力を差し引いて圧力差を算出する段階;
前記算出された圧力差がゼロ以上であるかを判断する段階;および
前記算出された圧力差がゼロ以上である場合、前記内部圧力が増加すると判断する段階を含む、請求項
10に記載のバッテリシステムの熱イベント感知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバッテリシステムの熱イベント感知方法およびそれを適用したバッテリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近電気車への需要増加に伴い、電気車の火災も増加している。電気車の火災はバッテリ破損によって発生し得る。このようにバッテリ破損による電気車の火災を防止するために、バッテリのセル電圧、セル温度、絶縁抵抗などを測定して破損の有無を診断する技術が適用されてきた。
【0003】
ただし、車両を駐車する際バッテリを管理するシステムがスリープモードで運営されると、セル電圧、セル温度、絶縁抵抗などを測定することができず、バッテリ破損の有無を診断することができない。実際バッテリによる電気車の火災のうち駐車の際に発生する火災が概ね21%を占めている。したがって、電気車の走行中だけでなく駐車中にもバッテリを診断する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリの熱イベントを感知できる方法およびそれを適用したバッテリシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一特徴によるバッテリシステムは、複数のバッテリセルを含むバッテリパック、前記バッテリパックの内部に位置して、前記バッテリパックの内部圧力をサンプリング周期ごとに測定する圧力センサ、およびサンプリング期間の間前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力の平均で基準圧力を更新し、前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記基準圧力の差で圧力変動量を算出し、前記圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、前記サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が連続して少なくとも2回増加する場合、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断するバッテリ管理システムを含む。
【0006】
前記バッテリ管理システムがスリープモードである時、前記圧力センサは、前記サンプリング周期ごとにサンプリング期間の間測定された内部圧力の平均で基準圧力を更新し、前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記基準圧力の差で第1圧力変動量を算出し、前記第1圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、前記バッテリ管理システムをウェークアップさせ得る。
【0007】
前記バッテリ管理システムがウェークアップされた後、前記バッテリ管理システムは前記サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が少なくとも連続して2回増加する場合、前記バッテリパックを異常と判断する、バッテリシステム。
【0008】
前記バッテリ管理システムは、前記熱イベントが発生したと判断した後、前記複数のバッテリセルの電圧および温度、および前記バッテリパックとグラウンドの間の絶縁抵抗を測定し、前記複数のバッテリセルの電圧、前記複数のバッテリセルの温度、および前記絶縁抵抗の少なくとも一つが異常である場合、前記バッテリパックが異常であると判断し得る。
【0009】
前記バッテリ管理システムは、前記複数のバッテリセルの電圧の少なくとも一つが臨界電圧以上の第1条件、前記複数のバッテリセルの温度の少なくとも一つが臨界温度以上の第2条件、および前記絶縁抵抗が所定の臨界抵抗以下である第3条件の少なくとも一つが満たされる場合、前記バッテリパックが異常であると判断し得る。
【0010】
前記バッテリシステムは、前記バッテリパックと前記バッテリシステムの出力端を連結するリレーをさらに含み、前記バッテリ管理システムは、前記バッテリパックが異常であると判断する時前記リレーを開放し得る。
【0011】
前記バッテリ管理システムは、前記バッテリシステムを含む車両に前記バッテリパックの異常を知らせ得る。
【0012】
前記バッテリシステムは、前記圧力センサに電源を供給する補助電源をさらに含み得る。
【0013】
発明の他の一特徴による複数のバッテリセルを含むバッテリパック、前記バッテリパックの内部に位置する圧力センサ、およびバッテリ管理システムを含むバッテリシステムの熱イベント感知方法は、前記圧力センサがサンプリング周期ごとに前記バッテリパックの内部圧力を測定する段階、サンプリング期間の間前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力の平均で基準圧力を更新する段階、前記サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と前記基準圧力の差で圧力変動量を算出する段階、前記圧力変動量が所定の臨界圧力以上であるかを判断する段階、および前記圧力変動量が前記臨界圧力以上である時、前記サンプリング周期ごとに測定される内部圧力が少なくとも連続して2回増加する場合、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断する段階を含む。
【0014】
前記バッテリ管理システムがスリープモードである時、前記基準圧力を更新する段階、前記圧力変動量を算出する段階、および前記圧力変動量が前記臨界圧力以上であるかを判断する段階は、前記圧力センサによって行われ得る。
【0015】
前記熱イベント感知方法は、前記バッテリ管理システムがスリープモードである時、前記圧力変動量が前記臨界圧力以上であると、前記圧力センサが前記バッテリ管理システムをウェークアップさせる段階をさらに含み得る。
【0016】
前記バッテリ管理システムがウェークアップされた後、前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断する段階は前記バッテリ管理システムによって行われ得る。
【0017】
前記バッテリパックに熱イベント(thermal event)が発生したと判断する段階は、サンプリングの現在の周期に測定された内部圧力からサンプリングの前の周期に測定された内部圧力を差し引いて圧力差を算出する段階、前記算出された圧力差がゼロ以上であるかを判断する段階、および前記算出された圧力差がゼロ以上である場合、前記内部圧力が増加すると判断する段階を含み得る。
【発明の効果】
【0018】
バッテリの熱イベントを感知できる方法およびそれを適用したバッテリシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態によるバッテリシステムを示す図である。
【
図2】一実施形態による熱イベント発生の判断方法を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態による熱イベント発生の判断方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付する図面を参照して本明細書に開示された実施形態を詳細に説明するが、同一または類似の構成要素には同一、類似の図面符号を付与してこれに係る重複する説明は省略する。以下の説明で使用される構成要素に対する接尾辞の「モジュール」および/または「部」は明細書作成の容易さだけが考慮されて付与されたり混用されるものであって、それ自体が互いに区別する意味または役割を有するものではない。また、本明細書に開示された実施形態を説明するにあたり関連する公知技術に係る具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を曖昧にすると判断される場合はその詳細な説明を省略する。また、添付する図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解できるようにするためのものであり、添付する図面によって本明細書に開示された技術的思想は制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物及び代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0021】
第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0022】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる、「接続されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接連結されているかまたは接続されている場合であり得るが、中間に他の構成要素が存在することもできるものと理解されなければならない。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる、「直接接続されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないものと理解されなければならない。
【0023】
本出願で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0024】
図1は一実施形態によるバッテリシステムを示す図である。
【0025】
バッテリシステム1が車両に取り付けられ、車両を運営するために必要な多様な電源を生成してバッテリシステム1を充電するための電力装置3に連結されている。車両の運営を制御する電子制御部(Electronic Control Unit,ECU,2)は、バッテリ管理システム20とCAN通信を通じて情報を送受信する。
【0026】
バッテリシステム1はバッテリパック10、バッテリ管理システム(Battery Management System,BMS,20)、リレー30、電流センサ40、圧力センサ50、温度センサ60、および絶縁抵抗計算回路70を含むことができる。
【0027】
バッテリパック10は直列連結された複数のバッテリセル11-15を含む。
図1ではバッテリ10が5個のバッテリセル11-15を含む場合が示されているが、これは一例であり、発明はこれに限定されない。
【0028】
リレー30はバッテリパック10の陽極と出力端P+の間に連結され、BMS20の制御によって開放または閉じられる。例えば、リレー30はBMS20から受信されるオンレベルのリレー制御信号RCSに応じて閉じられ、オフレベルのリレー制御信号RCSに応じて開放される。
図1では一つのリレーだけが示されているが、これは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。バッテリパック10の陰極と出力端P-の間にリレーがさらに連結されてもよい。
【0029】
電流センサ40はバッテリパック10に流れる電流(以下、バッテリ電流)を感知し、電流センサ40は感知された電流を指示する信号をBMS20に伝送する。
【0030】
圧力センサ50はバッテリパック10の内部に位置し、バッテリパック10内部の圧力をサンプリング周期ごとに測定してBMS20に伝送する。車両が駐車すると、BMS20はスリープモード(sleep mode)に転換される。BMS20はスリープモード中にはバッテリパック10のセル電圧、セル温度、絶縁抵抗などを測定しない。BMS20のスリープモード中には圧力センサ50がサンプリング期間の間サンプリング周期ごとに測定された内部圧力の平均で基準圧力を更新し、サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と基準圧力の差で第1圧力変動量を算出し、第1圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、BMS20をウェークアップさせることができる。
【0031】
車両が走行中であるアクティブモード(active mode)では、BMS20が圧力センサ50から測定された内部圧力を受信し、サンプリング期間の間サンプリング周期ごとに測定された内部圧力の平均で基準圧力を更新し、サンプリング周期ごとに測定された内部圧力と基準圧力の差で第1圧力変動量を算出し、第1圧力変動量が所定の臨界圧力以上である時、バッテリパック10に熱イベント(thermal event)が発生したと判断する。熱イベントはバッテリパック10の内部に熱が発生して火災、爆発などの危険性が存在する可能性があることを意味する。バッテリパック10内部の熱発生により内部圧力が増加するので、一実施形態はバッテリパック10の内部圧力を測定して熱イベント発生を感知することができる。
【0032】
アクティブモードではBMS20が、スリープモードでは圧力センサ50が、サンプリング期間の間サンプリング周期ごとに測定された内部圧力を平均して基準圧力を更新する。サンプリング期間は現在のサンプリング時点を基準として所定時間の前の時点から現在のサンプリング時点までの期間を設定する。アクティブモードではBMS20が、スリープモードでは圧力センサ50が、毎サンプリング周期ごとに基準電圧を更新する。したがって、基準圧力は毎サンプリング周期ごとに更新されることができる。基準圧力がサンプリング期間の間の平均で更新されるので、ノイズによってピーク性として測定された内部圧力の影響を減少させることができる。
【0033】
圧力センサ50はBMS20がスリープモードである場合にも動作しなければならないので、バッテリパック10の代わりに補助電源4から電力を供給される。補助電源4はバッテリシステム10または車両に別に備えられてもよい。
【0034】
温度センサ60はバッテリパック10の内部に設けられて複数のバッテリセル11-15それぞれの温度を測定する。温度センサ60は測定された複数のバッテリセル11-15の温度を指示する信号をBMS20に伝送する。
【0035】
BMS20は複数のバッテリセル11-15に連結され、複数のバッテリセル11-15のセル電圧およびバッテリパック10の電圧を測定し、バッテリ電流および複数のバッテリセル11-15の温度、バッテリパック10の内部圧力などの情報を受信し、複数のバッテリセル11-15のセル電圧、バッテリ電流などに基づいてバッテリ10の充放電電流を制御し、複数のバッテリセル11-15に対するセルバランシング動作を制御する。
【0036】
BMS20はバッテリパック10の充放電制御のために、リレー30の開閉を制御する。BMS20はリレー30の開閉を制御する制御信号(RCS)を生成して供給する。
【0037】
BMS20は絶縁抵抗計算回路70を制御して絶縁抵抗の計算のために必要な測定電圧V1,V2を用いて絶縁抵抗を計算する。
図1にはバッテリパック10の陽極とグラウンドの間の絶縁抵抗RL1およびバッテリパック10の陰極とグラウンドの間の絶縁抵抗RL2が連結された場合が示されている。これは絶縁抵抗RL1,RL2を説明するための一例であり、発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
絶縁抵抗計算回路70はバッテリパック10の陽極と陰極の間、そしてグラウンドに連結されている。絶縁抵抗計算回路70は二つのスイッチSW1,SW2、4個の抵抗R1-R4、および基準電圧源VRを含む。スイッチSW1、抵抗R1、および抵抗R2はバッテリパック10の陽極とグラウンドの間に連結されており、スイッチSW2、抵抗R3、抵抗R4、および基準電圧源VRはバッテリパック10の陰極とグラウンドの間に連結されている。スイッチSW1はBMS20から供給されるスイッチング信号SC1に応じてスイッチングし、スイッチSW2はBMS20から供給されるスイッチング信号SC2に応じてスイッチングする。BMS20はスイッチング信号SC1およびスイッチング信号SC2それぞれをオンレベルまたはオフレベルで生成してスイッチSW1およびスイッチSW2それぞれをオンまたはオフさせる。
【0039】
以下、圧力センサを用いて熱イベント発生を判断する方法を説明する。
【0040】
図2は一実施形態による熱イベント発生の判断方法を示すフローチャートである。
【0041】
図2は車両の運行中に、BMS20がアクティブモードである時の熱イベント発生の判断方法を示すフローチャートである。
【0042】
先に、圧力センサ50がバッテリパック10の内部圧力を測定する(S1)。圧力センサ50はサンプリング周期ごとに内部圧力を測定する。例えば、サンプリング周期は0.1秒であり得る。
【0043】
圧力センサ50はBMS20に測定された内部圧力を伝送し、BMS20は受信された内部圧力に応じて基準圧力Prを更新し、受信された内部圧力と基準圧力の間の差である圧力変動量Pdeを算出する(S2)。この時、基準圧力Prは現在の内部圧力の測定時点を基準に所定期間(例えば、10秒)前から現在の内部圧力の測定時点までのサンプリング期間の間測定された内部圧力の平均である。
【0044】
BMS20はS2段階で算出された圧力変動量Pdeが臨界圧力Pth以上であるかを判断する(S3)。臨界圧力は熱イベント発生時のバッテリセルベンティング(venting)を認知するために設定されるバッテリパックの内部圧力の変化値を設定することができる。すなわち、セルベンティングによるバッテリパック10内部の圧力変動量が臨界圧力以上であると、複数のバッテリセル11-15のうちベンティングが発生したセルが存在し得る。これは実験的な方法で取得され、例えば、臨界圧力Pthは1kPaであり得る。
【0045】
圧力センサ50がバッテリパック10の内部圧力を測定し(S4)、S3段階での判断結果、圧力変動量Pdeが臨界圧力Pth以上である時、BMS20は現在測定された内部圧力(例えば、段階S4で測定された内部圧力)から前に測定された内部圧力(例えば、段階S1で測定された内部圧力)を差し引いて圧力差(Pdi,iは自然数)を算出する(S5)。
【0046】
BMS20は圧力差PDiがゼロ以上であるかを判断する(S6)。
【0047】
S6段階の判断結果、圧力差PDiがゼロ以上である場合、BMS20はカウント値nを一つ増加させる(S7)。次に、BMS20はカウント値nが2であるかを判断する(S8)。一実施形態では内部電圧が持続して上昇するかを判断するために圧力差PDiがゼロ以上であるかを二回判断する場合を説明する。しかし、発明はこれに限定されるものではなく、設計によって3回以上圧力差PDiがゼロ以上であるかを判断することができる。
【0048】
S8段階の判断結果、カウント値nが2でない場合、S4段階から繰り返される。S8段階の判断結果、カウント値nが2である場合、BMS20は熱イベントが発生したと判断する(S9)。
【0049】
S6段階の判断結果、圧力差PDiがゼロより小さいと、S1段階から繰り返される。S3段階での判断結果、圧力変動量Pdeが臨界圧力Pth未満であると、S1段階から繰り返される。
【0050】
図3は一実施形態による熱イベント発生の判断方法を示すフローチャートである。
【0051】
図3は車両が駐車などのように運行せずBMS20がスリープモードである時の熱イベント発生の判断方法を示すフローチャートである。
【0052】
先に、圧力センサ50はバッテリパック10の内部圧力を測定する(S11)。圧力センサ50はサンプリング周期ごとに内部圧力を測定する。例えば、サンプリング周期は0.66秒であり得る。すなわち、スリープモードでのサンプリング周期がアクティブモードでのサンプリング周期より長い。
【0053】
圧力センサ50は測定された内部圧力に応じて基準圧力Prを更新し、受信された内部圧力と基準圧力の間の差である圧力変動量Pdeを算出する(S12)。この時、基準圧力Prは現在の内部圧力の測定時点を基準として所定期間(例えば、5分)の前から現在の内部圧力の測定時点までのサンプリング期間の間測定された内部圧力の平均である。すなわち、スリープモードでのサンプリング期間がアクティブモードでのサンプリング期間より長い。
【0054】
圧力センサ50はS12段階で算出された圧力変動量Pdeが臨界圧力Pth以上であるかを判断する(S13)。
【0055】
圧力センサ50はバッテリパック10の内部圧力を測定し(S14)、S13段階での判断結果、圧力変動量Pdeが臨界圧力Pth以上である時、圧力センサ50はBMS20にウェークアップ信号を送信し、BMS20はウェークアップする(S15)。
【0056】
BMS20は現在測定された内部圧力(例えば、段階S14で測定された内部圧力)から前に測定された内部圧力(例えば、段階S11で測定された内部圧力)を差し引いて圧力差(PDi,iは自然数)を算出する(S16)。
【0057】
BMS20は圧力差PDiがゼロ以上であるかを判断する(S17)。
【0058】
S17段階の判断結果、圧力差PDiがゼロ以上である場合、BMS20はカウント値nを一つ増加させる(S18)。次に、BMS20はカウント値nが2であるかを判断する(S19)。一実施形態では内部電圧が持続して上昇するかを判断するために圧力差PDiがゼロ以上であるかを二回判断する場合を説明する。しかし、発明はこれに限定されるものではなく、設計によって3回以上圧力差PDiがゼロ以上であるかを判断することができる。
【0059】
S19段階の判断結果、カウント値nが2でない場合、S14段階から繰り返される。S19段階の判断結果、カウント値nが2である場合、BMS20は熱イベントが発生したと判断する(S20)。
【0060】
S17段階の判断結果、圧力差PDiがゼロより小さいと、S11段階から繰り返される。S13段階での判断結果、圧力変動量Pdeが臨界圧力Pth未満であると、S1段階から繰り返される。
【0061】
BMS20は熱イベントが発生したと判断すると、測定されたセル電圧が所定の臨界電圧以上であるかを判断するか、温度センサ60から受信したセル温度が所定の臨界温度以上であるかを判断するか、絶縁抵抗計算回路70を用いて絶縁抵抗を測定して測定された絶縁抵抗が臨界抵抗以下で絶縁が破壊されたかを判断することができる。測定されたセル電圧のうち臨界電圧がある条件、セル温度が臨界温度以上の条件、および絶縁抵抗が臨界抵抗以下である条件の少なくとも一つを満たすと、BMS20はECU2に火災または爆発の危険性があることを知らせ、リレー30を遮断することができる。
【0062】
このように、一実施形態によれば、BMSのアクティブモードだけでなくスリープモードでも、熱イベント発生を感知してバッテリパックの火災を防止し、バッテリパックの火災による車両火災も防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるものではなく本発明の属する分野で通常の知識を有する者が多様に変形および改良した形態もまた、本発明の権利範囲に属する。