IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長谷川 伸二の特許一覧 ▶ 長谷川 陽一の特許一覧 ▶ 見永 茉由の特許一覧

<>
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図1
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図2
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図3
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図4
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図5
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図6
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図7
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図8
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図9
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図10
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図11
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図12
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図13
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図14
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図15
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図16
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図17
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図18
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図19
  • 特許-転てつ機の異物侵入防止治具 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】転てつ機の異物侵入防止治具
(51)【国際特許分類】
   E01B 7/20 20060101AFI20240702BHJP
   E01B 19/00 20060101ALI20240702BHJP
   E01H 8/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E01B7/20
E01B19/00 Z
E01H8/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023082626
(22)【出願日】2023-05-18
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】523185914
【氏名又は名称】長谷川 伸二
(73)【特許権者】
【識別番号】523185925
【氏名又は名称】長谷川 陽一
(73)【特許権者】
【識別番号】523185936
【氏名又は名称】見永 茉由
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 伸二
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060067(JP,A)
【文献】特開平07-317004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 7/20
E01B 19/00
E01H 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転てつ機の不転換を防止するものであって、可撓性を有する材料で形成されて直方体形状を有し、基本レールと、この基本レールに対して接離駆動されるトングレールとの間に、上記トングレールの先端から、このトングレールの基端側であって、トングレールが基本レールに対して接離駆動される際に変位する部分までの範囲に配置され、上記基本レールとトングレールの対向する面に夫々固定され、上記トングレールが駆動されるに伴って収縮又は伸展して上記基本レールとトングレールとの間の隙間を塞いだ状態を保つように形成されたことを特徴とする転てつ機の異物侵入防止治具。
【請求項2】
請求項1に記載の転てつ機の異物侵入防止治具において、
上記基本レールとトングレールの対向する面に、磁石によって夫々固定されていることを特徴とする転てつ機の異物侵入防止治具。
【請求項3】
請求項1に記載の転てつ機の異物侵入防止治具において、
上面及び下面の少なくとも一方に、他の部分よりも強度の高い高強度部材が設けられていることを特徴とする転てつ機の異物侵入防止治具。
【請求項4】
請求項1に記載の転てつ機の異物侵入防止治具において、
内部に、上記基本レール又はトングレールと平行に延在する空洞が形成されていることを特徴とする転てつ機の異物侵入防止治具。
【請求項5】
請求項1に記載の転てつ機の異物侵入防止治具において、
上面に、短手方向断面において凹状の溝が形成されていることを特徴とする転てつ機の異物侵入防止治具。
【請求項6】
請求項1に記載の転てつ機の異物侵入防止治具において、
シリコーンスポンジで形成されていることを特徴とする転てつ機の異物侵入防止治具。
【請求項7】
請求項1に記載の転てつ機の異物侵入防止治具において、
剛性の異なる治具ユニットが、上記基本レールの長手方向に沿って複数個配列されて構成されていることを特徴とする転てつ機の異物侵入防止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の軌道の転てつ機に氷や石等の異物が混入することを防止する異物混入防止治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道の軌道の分岐部に設置された転てつ機では、冬季に車両で生成された氷柱が脱落し、基本レールとトングレールの間に侵入してトングレールの駆動が妨げられ、転てつ機の不転換が発生して列車の運行を停止させる問題が生じている。このような問題を解決するため、従来、基本レールとトングレールの間に侵入した異物を、圧縮空気によって除去する異物除去装置が開示されている(特許文献1)。
【0003】
上記従来の異物除去装置は、基本レールのトングレールに対向する側面に、圧縮空気を噴射するためのノズル部を配置している。このノズル部は、トングレールの先端側に向けて、基本レールの延在方向に対して傾斜した方向に圧縮空気を噴射する空気噴射口が形成されている。この空気噴射口から噴射した圧縮空気により、基本レールとトングレールとの間に挟まった氷等の異物を吹き飛ばして、当該異物を除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-144602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の異物除去装置は、トングレールの基本レールに接する先端部では、基本レールにトングレールが接したときに隙間が殆ど無くなるので、ノズル部を配置することができない。したがって、トングレールの先端部から基端側に多少離れた位置に配置されたノズル部から、上記トングレールの先端部に向かって圧縮空気を噴射している。このトングレールの先端部は、基本レールから離れるとき、基本レールとの間の距離が比較的大きくなるため、比較的大きな空間が基本レールとの間に形成される。この空間に、比較的大きな氷柱が嵌り込むと、離れた位置から噴射する圧縮空気では氷柱の除去が困難になるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、トングレールと基本レールとの間への異物の侵入を、効果的に防止できる転てつ機の異物侵入防止治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の転てつ機の異物侵入防止治具は、基本レールと、この基本レールに対して接離駆動されるトングレールとの間に配置され、上記基本レールとトングレールの対向する面に夫々固定され、上記トングレールが駆動されるに伴って収縮又は伸展して上記基本レールとトングレールとの間の隙間を塞いだ状態を保つように形成されたことを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、転てつ機の基本レールと、この基本レールに対して接離駆動されるトングレールとの間に、異物侵入防止治具が配置される。この異物侵入防止治具は、上記基本レールとトングレールの対向する面に夫々固定される。上記トングレールが駆動されるに伴い、上記異物侵入防止治具が収縮又は伸展して上記基本レールとトングレールとの間の隙間を塞いだ状態を保つ。したがって、トングレールの先端部が基本レールから離れても、上記異物侵入防止治具が伸展して上記基本レールとトングレールとの間の隙間を塞いだ状態を保つので、車両から落下した氷柱が上記基本レールとトングレールとの間の隙間に嵌り込むことが、上記異物侵入防止治具により効果的に防止される。その結果、氷柱によってトングレールの駆動が妨げられて転てつ機の不転換が発生する問題を、効果的に防止できる。
【0009】
一実施形態の転てつ機の異物侵入防止治具は、上記基本レールとトングレールの対向する面に、磁石によって夫々固定されている。
【0010】
上記実施形態によれば、異物侵入防止治具を、基本レールとトングレールの対向する面に、磁石を用いることで、簡易な構造で比較的高い強度で固定することができる。また、異物侵入防止治具を少ない手間で設置でき、設置作業を安全に行うことができる。この異物侵入防止治具を固定する基本レールとトングレールの面には、車両の走行に伴う鉄粉が付着している場合が多く、この場合、鉄粉が磁石に接して磁化して基本レール又はトングレールに吸着するので、鉄粉の存在による接着力の低下が生じにくい。このように、磁石を用いることにより、鉄粉が存在しても、基本レールとトングレールの面に安定して異物侵入防止治具を固定することができる。ここで、上記磁石の種類は、フェライト磁石やネオジウム磁石等の種々のものを用いることができる。また、上記磁石の形状は、シート状や、角型や、棒状等の種々のものを用いることができる。
【0011】
一実施形態の転てつ機の異物侵入防止治具は、上面及び下面の少なくとも一方に、他の部分よりも強度の高い高強度部材が設けられている。
【0012】
上記実施形態によれば、異物侵入防止治具の上面に、他の部分よりも強度の高い高強度部材が設けられているので、車両の通過に伴って氷柱やバラスト等が接触しても、異物侵入防止治具の損傷を効果的に低減又は防止できる。また、異物侵入防止治具の下面に、他の部分よりも強度の高い高強度部材が設けられているので、この異物侵入防止治具の下方に位置するバラストや転てつ機の部品と接触しても、異物侵入防止治具の摩耗や損傷を効果的に低減又は防止できる。
【0013】
一実施形態の転てつ機の異物侵入防止治具は、内部に、上記基本レール又はトングレールと平行に延在する空洞が形成されている。
【0014】
上記実施形態によれば、異物侵入防止治具の内部に、基本レール又はトングレールと平行に延在する空洞が形成されているので、基本レールに対してトングレールが接離駆動されるとき、上記異物侵入防止治具が効果的に収縮又は伸張する。したがって、この異物侵入防止治具は、基本レールからトングレールが離れたときに、基本レールとトングレールの間の隙間を効果的に塞ぐことができる一方、基本レールにトングレールが接したときに、基本レールとトングレールの間の隙間に確実に収容される。特に、基本レールにトングレールが接したときに、異物侵入防止治具の収縮に伴って表面が膨出することを防止して、基本レールとトングレールの間の隙間に確実に収容される。また、異物侵入防止治具の表面の膨出による通過車両に対する悪影響を、効果的に防止できる。
【0015】
一実施形態の転てつ機の異物侵入防止治具は、上面に、短手方向断面において凹状の溝が形成されている。
【0016】
上記実施形態によれば、異物侵入防止治具の上面に、短手方向断面において凹状の溝が形成されているので、基本レールに対してトングレールが接離駆動されるとき、上記異物侵入防止治具が効果的に収縮又は伸張する。特に、基本レールにトングレールが接したときに、異物侵入防止治具の収縮に伴って表面が膨出することを防止して、基本レールとトングレールの間の隙間に確実に収容される。また、異物侵入防止治具の表面の膨出による通過車両に対する悪影響を、効果的に防止できる。
【0017】
一実施形態の転てつ機の異物侵入防止治具は、シリコーンスポンジで形成されている。
【0018】
上記実施形態によれば、シリコーンスポンジで形成することにより、伸縮性が高く、しかも、耐久性の高い異物侵入防止治具が得られる。また、シリコーンスポンジは加工が容易であるため、基本レールとトングレールの接着位置や設置位置に応じて、適切な形状に成形できる。また、シリコーンスポンジは水密性が良好であるので、異物侵入防止治具は、基本レールとトングレールの間の設置位置において、水の貯留や凍結を防止できる。特に、独立気泡構造のスポンジを用いることにより、高い水密性を発揮できる。また、シリコーンスポンジは、高い耐寒性と耐熱性を有するので、季節の変化に伴う温度変化を受けても、性能の安定した異物侵入防止治具が得られる。また、シリコーンスポンジは、高い電気絶縁性を有するので、異物侵入防止治具は迷走電流の導通を防止できる。また、シリコーンスポンジは、高い耐油性を有するので、転てつ機や車両の潤滑油が接触しても、劣化の少ない異物侵入防止治具が得られる。
【0019】
一実施形態の転てつ機の異物侵入防止治具は、剛性の異なる治具ユニットが、上記基本レールの長手方向に沿って複数個配列されて構成されている。
【0020】
上記実施形態によれば、異物侵入防止治具が、剛性の異なる複数の治具ユニットで構成される。ここで、転てつ機が作動する際の基本レールに対するトングレールの駆動距離は、基本レールの長手方向の位置によって異なる。一般的に、トングレールの先端部の駆動距離は、トングレールの基端部の駆動距離よりも大きい。したがって、例えば、トングレールの先端部に剛性の小さい治具ユニットを配置し、トングレールの基端部に剛性の大きい治具ユニットを配置することにより、トングレールに作用する各治具ユニットからの反力を揃えることができる。ここで、剛性とは、トングレールの駆動に伴って圧縮力が作用する方向における上記圧縮力に関する剛性をいう。また、上記治具ユニットの剛性は、治具ユニットの断面形状の違いによって異ならせてもよい。また、上記治具ユニットの剛性は、治具ユニットを形成する材質の違いによって異ならせてもよい。また、異物侵入防止治具を構成する複数の治具ユニットは、剛性の種類が個数と一致しなくてもよい。すなわち、複数の治具ユニットのうち、同一の剛性を有する治具ユニットが1個以上存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の異物侵入防止治具を転てつ機に装着した状態を示す平面図である。
図2図1のA-A線における断面図である。
図3】異物侵入防止治具が装着された転てつ機のトングレールが移動した状態を示す平面図である。
図4図3のB-B線における断面図である。
図5】異物侵入防止治具の短手方向の断面図である。
図6】トングレールが基本レールから離れたときの異物侵入防止治具の形状を模式的に示す斜視図である。
図7】トングレールが基本レールに接したときの異物侵入防止治具の形状を模式的に示す斜視図である。
図8】第2実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。
図9】第3実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。
図10】第4実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。
図11】第5実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。
図12】第6実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。
図13】第7実施形態の異物侵入防止治具を転てつ機に装着した状態を示す平面図である。
図14】第7実施形態の異物侵入防止治具が装着された転てつ機のトングレールが移動した状態を示す平面図である。
図15】第1治具ユニットを示す短手方向の断面図である。
図16】第2治具ユニットを示す短手方向の断面図である。
図17】第3治具ユニットを示す短手方向の断面図である。
図18】第4治具ユニットを示す短手方向の断面図である。
図19】第5治具ユニットを示す短手方向の断面図である。
図20】第6治具ユニットを示す短手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態の異物侵入防止治具を転てつ機に装着した状態を示す平面図であり、図2図1のA-A線における断面図である。
【0024】
本実施形態の転てつ機の異物侵入防止治具は、鉄道の軌道の分岐部に設置された転てつ機に用いられ、転てつ機の不転換を防止するものである。図1に示すように、この軌道の分岐部は、直線状に延びる基本線と、曲線状の分岐線とを分岐するために設置される。この分岐部には車両の走行方向を基本線と分岐線との間で振り分けるための転てつ機が設置されている。この転てつ機は、一対の基本レール3、3と、一対のトングレール4、4と、一対のトングレール4、4の間を接続する図示しない転轍棒と、一対のトングレール4、4を駆動する駆動装置を含んで構成されている。一対の基本レール3、3は、基本線と分岐線の互いに離れた側のレールで構成され、この一対の基本レール3、3の間に一対のトングレール4、4が配設されている。基本レール3、3とトングレールの下側には、図示しないまくらぎが設置されている。
【0025】
基本レール3は、まくらぎの上にポイント床板を介して配置されており、トングレール4は、まくらぎの上にベアリング床板を介して移動可能に配置されている。これにより、一対のトングレール4は、その先端部が、対向する基本レール3に対して当接及び離間可能になっている。
【0026】
また、各トングレール4の基本レール3に接離する先端部同士は、転てつ棒によって一定間隔が維持された状態で連結されている。そして、図示しない制御装置からの指令に基づいて駆動装置が作動することにより、転てつ棒で接続された一対のトングレール4が、各トングレール4に隣り合う基本レール3に対して当接又は離間する方向に移動する。その結果、転てつ機の転換が行われるようになっている。図1では、図1の紙面の左側から右側に向かって基本線を走行する車両を、そのまま基本線に導く位置に、トングレール4,4が配置されている。
【0027】
本実施形態の異物侵入防止治具1は、可撓性を有する材料で形成され、転てつ機の対向する基本レール3とトングレール4の隙間を塞ぐために、上記基本レール3とトングレール4の間に配置される。詳しくは、異物侵入防止治具1は、対向する基本レール3とトングレール4の間であって、トングレール4が基本レール3に対して接離駆動される領域の隙間に配置される。具体的には、この異物侵入防止治具1は、図1に示すように、長手方向において、トングレール4の先端から、このトングレール4の基端側であって、トングレール4が基本レール3に対して接離駆動される際に変位する部分までの範囲に配置される。また、この異物侵入防止治具1は、図2に示すように、短手方向において、トングレール4の腹部の側面と、基本レール3の腹部の側面との間に配置されている。ここで、図2は、図1のA-A線が付された基本線の基本レール3及びトングレール4とその間に配置された異物侵入防止治具1を示し、トングレール4が基本レール3から離間しているので異物侵入防止治具1は伸張している。この異物侵入防止治具1は、可撓性を有する材料としてのシリコーンスポンジで形成され、基本レール3とトングレール4の間に配置される前の状態で、細長い直方体形状を有する。
【0028】
図3は、本実施形態の異物侵入防止治具1の短手方向の断面図である。この異物侵入防止治具1は、トングレール4と基本レール3の間の最大の離間距離よりも多少大きな幅と、基本レール3の腹部の高さと略同じ高さを有する。この異物侵入防止治具1は、長手方向に延在して短手方向に対向する2つの側面に、マグネットシート6,6が張り付けられている。図3には、マグネットシート6,6の断面が示されている。このマグネットシート6,6を、トングレール4の腹部の側面と基本レール3の腹部の側面に夫々吸着させることにより、基本レール3とトングレール4の間に異物侵入防止治具1を固定するようになっている。
【0029】
本実施形態の異物侵入防止治具1は、図1に示すように、一対の基本レール3と一対のトングレール4との間に、1個の転てつ機につき2個設置される。図1の分岐線の基本レール3とトングレール4の間に配置された異物侵入防止治具1は、トングレール4が基本レール3に接しているので、図2の異物侵入防止治具1とは異なり、トングレール4と基本レール3によって圧縮されて収縮している。この異物侵入防止治具1は、トングレール4が基端側のリードレールと分離された一般的な転てつ機でも、トングレール4がリードレールと一体に形成された弾性転てつ機(弾性ポイント)でも、いずれの場合にも適用可能である。
【0030】
本実施形態の異物侵入防止治具1が設置された転てつ機は、基本レール3とトングレール4の間に上記異物侵入防止治具1が配置され、基本レール3とトングレール4の間の隙間が塞がれるので、車両から落下した氷柱や、飛散したバラスト等が上記基本レール3とトングレール4との間の隙間に嵌り込むことが効果的に防止される。その結果、氷柱やバラスト等の異物によってトングレール4の駆動が妨げられて転てつ機の不転換が発生する問題を、効果的に防止できる。特に、基本線の基本レール3とトングレール4が離間して比較的広い隙間が形成されても、この隙間を異物侵入防止治具1が塞ぐので、氷柱やバラスト等の異物の侵入を効果的に防止して、転てつ機の不転換を効果的に防止できる。
【0031】
上記異物侵入防止治具1が設置された転てつ機が転換すると、トングレール4,4が駆動され、図1において分岐線の基本レール3に当接していたトングレール4が離れると共に、基本線の基本レール3から離れていたトングレール4が接して、図4のように切り替わる。これにより、図4の紙面の左側から右側に向かって基本線を走行する車両が、分岐線に導かれる。
【0032】
この転てつ機の転換に伴い、2つの異物侵入防止治具1のうちの一方が伸張し、他方が収縮する。具体的には、図1において収縮していた分岐線の基本レール3の側の異物侵入防止治具1が伸張し、図1において伸張していた基本線の基本レール3の側の異物侵入防止治具1が収縮する。
【0033】
図5は、図4のB-B線が付された基本線の基本レール3及びトングレール4とその間に配置された異物侵入防止治具1を示しており、トングレール4が基本線の基本レール3に接するに伴い、異物侵入防止治具1が収縮した様子を示している。図5のように、トングレール4の先端部では、基本レール3の腹部の側面とトングレール4の腹部の側面の間の隙間に、異物侵入防止治具1が収縮して収容される。このようにして、基本レール3とトングレール4との間を異物侵入防止治具1で塞いだ状態で、基本レール3にトングレール4の先端部が当接する。したがって、転てつ機が転換しても、基本レール3とトングレール4の隙間が異物侵入防止治具1を効果的に塞ぐことができるので、氷柱やバラスト等の異物の侵入を効果的に防止でき、転てつ機の不転換を効果的に防止できる。
【0034】
また、図4の分岐線の基本レール3とトングレール4の間に配置された異物侵入防止治具1は、転てつ機の転換によってトングレール4が基本レール3から離間し、これに伴って伸張する。上記分岐線の基本レール3とトングレール4が離間しても、この分岐線の基本レール3とトングレール4の間を、伸張した異物侵入防止治具1によって塞ぐことができる。したがって、基本レール3とトングレール4の間の隙間が比較的大きくなるにもかかわらず、氷柱やバラスト等の異物の侵入を効果的に防止でき、転てつ機の不転換を効果的に防止できる。
【0035】
図6は、図1の基本線の基本レール3とトングレール4の間に配置された異物侵入防止治具1を、トングレール4の先端側から視た様子を模式的に示す斜視図である。図6に示すように、トングレール4が基本レール3から離間しているときは、異物侵入防止治具1は概ね直方体形状をなす。図6において、1aはトングレール4に接する側面であり、1bは基本レール3に接する側面である。これらの側面1a,1bに、トングレール4と基本レール3に固定するためのマグネットシート6,6が取り付けられている。図7は、図4の基本線の基本レール3とトングレール4の間に配置された異物侵入防止治具1を、トングレール4の先端側から視た様子を模式的に示す斜視図である。図7に示すように、トングレール4が基本レール3に当接しているときは、異物侵入防止治具1は、手前側の幅が細い概ね三角柱形状をなす。このように、転てつ機の転換によってトングレール4が駆動されるに伴い、異物侵入防止治具1が短手方向に伸縮して変形する。ここで、異物侵入防止治具1の伸縮量は長手方向において不均一であるが、この異物侵入防止治具1はシリコーンスポンジで形成されているので、局所的な劣化や断裂等の異常が生じにくい。したがって、異物侵入防止治具1は、良好な耐久性を有し、比較的長い期間にわたって、基本レール3とトングレール4の間への異物の侵入を防止できる。
【0036】
また、本実施形態の異物侵入防止治具1は、シリコーンスポンジで形成されているので、高い伸縮性が得られるから、基本レール3に対するトングレール4の接離距離が比較的大きくても、基本レール3とトングレール4の間を安定して塞ぐことができる。また、シリコーンスポンジは加工が容易であるため、異物侵入防止治具1の基本レール3とトングレール4への接着位置や設置位置に応じて、適切な形状に成形できる。また、シリコーンスポンジは水密性が良好であるので、異物侵入防止治具1は、基本レール3とトングレール4の間の設置位置において、水の貯留や凍結を防止できる。特に、独立気泡構造のスポンジを用いることにより、高い水密性を発揮できる。また、シリコーンスポンジは、高い耐寒性と耐熱性を有するので、異物侵入防止治具1は、季節の変化に伴う温度変化を受けても安定して性能を発揮できる。また、シリコーンスポンジは、高い電気絶縁性を有するので、異物侵入防止治具1により迷走電流の導通を防止できる。また、シリコーンスポンジは、高い耐油性を有するので、転てつ機の摺動部分に供給された潤滑油や、車両から漏洩した潤滑油が触れても劣化しにくい異物侵入防止治具1が得られる。本実施形態において、異物侵入防止治具1を形成するシリコーンスポンジとしては、見掛け密度が0.1~0.5g/cm、引張強さが0.1~2.0MPa、伸びが150~500%、圧縮荷重が0.02~0.3MPaのものを用いることができる。
【0037】
上記実施形態において、異物侵入防止治具1をシリコーンスポンジで形成したが、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂スポンジで形成してもよい。
【0038】
また、本実施形態の異物侵入防止治具1は、長手方向に延びる両側面に設置したマグネットシート6,6で、トングレール4の腹部の側面と基本レール3の腹部の側面に夫々吸着させるので、トングレール4と基本レール3の間に少ない手間で容易に固定できる。
【0039】
ここで、上記異物侵入防止治具1は、マグネットシート6,6に替えて、長手方向に延びる両側面に接着剤を設け、この接着剤でトングレール4の腹部の側面と基本レール3の腹部の側面に固定してもよい。上記接着剤としては、刷毛などで塗布するものや、両面テープの形態に形成されて貼付するもの等を用いることができる。
【0040】
図8は、第2実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。第2実施形態の異物侵入防止治具21は、上面に、高強度部材としての補強膜8が設けられている点が、第1実施形態の異物侵入防止治具と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0041】
第2実施形態の異物侵入防止治具21は、第1実施形態と同様のシリコーンスポンジで形成された直方体の本体22と、この本体22の上面部分に設けられた補強膜8とを備える。この補強膜8は、本体22よりも硬い樹脂で形成され、1~5mmの厚みに形成される。第2実施形態の異物侵入防止治具21は、第1実施形態の異物侵入防止治具1と同様に、基本レール3とトングレール4の間に配置され、図示しないマグネットシート6によって長手方向の両側面が固定される。この異物侵入防止治具21は、分岐部を通過する車両から落下した氷柱や飛散したバラストが接触しても、上面に形成した補強膜8により、損傷を効果的に低減又は防止できる。また、第2実施形態の異物侵入防止治具21の下面に、上面と同様の補強膜8を追加してもよい。異物侵入防止治具21の下面に補強膜8を追加することにより、この異物侵入防止治具21の下方に位置するバラストや転てつ機の部品と接触しても、異物侵入防止治具21の摩耗や損傷を効果的に低減又は防止できる。第2実施形態において、高強度部材としての補強膜8は、異物侵入防止治具21の上面と下面の両方に設けてもよく、また、いずれか一方のみに設けてもよい。また、上記補強膜8は、本体22と同じ材質によって一体に形成されてもよく、この場合、シリコーンスポンジで本体22を成形する際に、表面に形成されるソリッドの非発泡膜を使用することができる。
【0042】
図9は、第3実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。第3実施形態の異物侵入防止治具31は、上面部分に、高強度部材としての補強層10が設けられている点が、第1実施形態の異物侵入防止治具と異なる。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0043】
第3実施形態の異物侵入防止治具31は、第1実施形態と同様のシリコーンスポンジで形成された直方体の本体32と、この本体32の上側に設けられて本体32よりも高密度のシリコーンスポンジで形成された補強層10が設けられている。この補強層10は、本体32の約1.5~3倍の密度に形成され、本体32の約1.5~2倍の引張強度を有し、10~30mmの厚みに形成される。この補強層10は、上記本体32の上面に接着剤で接着されている。第3実施形態の異物侵入防止治具31は、第1実施形態の異物侵入防止治具1と同様に、基本レール3とトングレール4の間に配置され、図示しないマグネットシート6によって長手方向の両側面が固定される。この異物侵入防止治具31は、分岐部を通過する車両から落下した氷柱や飛散したバラストが接触しても、上側に設けた補強層10により、損傷を効果的に低減又は防止できる。ここで、第3実施形態の異物侵入防止治具31の下面に、上面と同様の補強層10を追加してもよい。異物侵入防止治具31の下面に補強層10を追加することにより、この異物侵入防止治具31の下方に位置するバラストや転てつ機の部品と接触しても、異物侵入防止治具31の摩耗や損傷を効果的に低減又は防止できる。第3実施形態において、高強度部材としての補強層10は、異物侵入防止治具31の上面と下面の両方に設けてもよく、また、いずれか一方のみに設けてもよい。また、上記補強層10は、本体32と同じ材質によって一体に形成されてもよく、この場合、シリコーンスポンジで本体32を成形する際に、表面に形成されるソリッドの非発泡膜を使用することができる。
【0044】
図10は、第4実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。第4実施形態の異物侵入防止治具41は、内部に隆起防止孔12が設けられている点が、第1実施形態の異物侵入防止治具と異なる。第4実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0045】
第4実施形態の異物侵入防止治具41は、第1実施形態と同様のシリコーンスポンジで形成されて同様の寸法の直方体の本体42と、この本体42内に形成された3個の隆起防止孔12,12,12を備える。隆起防止孔12は円形断面を有し、本体42の長手方向に延びている。この隆起防止孔12は本体42の高さの約20~30%の直径を有し、図10の断面において、左右両側かつ上側に2個、中央の下側に1個形成されている。第4実施形態の異物侵入防止治具41は、第1実施形態の異物侵入防止治具1と同様に、基本レール3とトングレール4の間に配置され、図示しないマグネットシート6によって長手方向の両側面が固定される。この異物侵入防止治具41は、基本レール3にトングレール4が接して幅方向に収縮した場合、隆起防止孔12,12,12が潰れることにより、本体42の上面が隆起する不都合を防止できる。すなわち、本実施形態の異物侵入防止治具41は、基本レール3にトングレール4が接して幅方向に収縮しても本体42の上面が隆起しないので、本体42の上面が突出して車両の走行に悪影響を与えるおそれを防止できる。ここで、隆起防止孔12の個数は3個に限定されず、また、配置位置も適宜変更可能である。
【0046】
図11は、第5実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。第5実施形態の異物侵入防止治具51は、内部に設けた隆起防止孔13,14の大きさと配置位置が、第4実施形態の異物侵入防止治具と異なる。第5実施形態において、第4実施形態と同様の構成要素には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0047】
第5実施形態の異物侵入防止治具51は、第1実施形態と同様のシリコーンスポンジで形成されて同様の寸法の直方体の本体52と、この本体52内に形成された1個の大径隆起防止孔13と、2個の小径隆起防止孔14,14を備える。これらの大径隆起防止孔13と小径隆起防止孔14は、円形断面を有し、本体52の長手方向に延びている。大径隆起防止孔13は、本体52の高さの約40~50%の直径を有し、小径隆起防止孔14は、本体52の高さの約15~20%の直径を有する。大径隆起防止孔13は、図11の断面において、幅方向の中央の上側に1個配置されている。一方、小径隆起防止孔14,14は、左右両側かつ下側に2個配置されている。第5実施形態の異物侵入防止治具51は、第1実施形態の異物侵入防止治具1と同様に、基本レール3とトングレール4の間に配置され、図示しないマグネットシート6によって長手方向の両側面が固定される。この異物侵入防止治具51は、基本レール3にトングレール4が接して幅方向に収縮した場合、大径隆起防止孔13と小径隆起防止孔14が潰れることにより、本体52の上面が隆起する不都合を防止できる。したがって、本体52の上面が突出して車両の走行に悪影響を与えるおそれを防止できる。ここで、大径隆起防止孔13の個数は1個に限定されず、また、小径隆起防止孔14の個数は2個に限定されない。また、大径隆起防止孔13と小径隆起防止孔14の配置位置も適宜変更可能である。
【0048】
図12は、第6実施形態の異物侵入防止治具を示す短手方向の断面図である。第6実施形態の異物侵入防止治具61は、上面に、短手方向断面において凹状の溝16が設けられている点が、第1実施形態の異物侵入防止治具と異なる。第6実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0049】
第6実施形態の異物侵入防止治具61は、第1実施形態と同様のシリコーンスポンジで形成されて同様の寸法の直方体の本体62と、この本体62の上面に形成された溝16を備える。溝16は、図12の短手方向断面において凹状に形成され、本体62の幅に対して50~70%の幅と、本体62の高さに対して10~30%の深さを有する。この溝16は、本体62の長手方向に延在している。第6実施形態の異物侵入防止治具61は、第1実施形態の異物侵入防止治具1と同様に、基本レール3とトングレール4の間に配置され、図示しないマグネットシート6によって長手方向の両側面が固定される。この異物侵入防止治具61は、基本レール3にトングレール4が接して幅方向に収縮した場合、上面の中央に溝16が設けられているため、本体62の上面が隆起する不都合を防止できる。したがって、本体62の上面が突出して車両の走行に悪影響を与えるおそれを防止できる。ここで、溝16の個数は1個に限定されず、形状も適宜変更可能である。例えば、溝16の内側に、複数の幅の狭い溝を形成してもよい。
【0050】
図13及び14は、第7実施形態の異物侵入防止治具71が設置された転てつ機を示す平面図である。第7実施形態の異物侵入防止治具71は、複数の治具ユニット72,73,74によって形成されている。この第7実施形態の異物侵入防止治具71は、基本レール3に対してトングレール4が接離駆動される際の駆動距離が大きいトングレール4の先端部と、駆動距離が中程度であるトングレール4の中央部と、駆動距離が小さいトングレール4の基端部とで、異なる治具ユニット72,73,74を配置している。
【0051】
図15は、トングレール4の先端部に設置される第1治具ユニット72を示す短手方向の断面図であり、図16は、トングレール4の中央部に設置される第2治具ユニット73を示す短手方向の断面図であり、図17は、トングレール4の基端部に設置される第3治具ユニット74を示す短手方向の断面図である。
【0052】
第1治具ユニット72は、図15の断面図に示すように、上下方向に延びる板状の縦部材72aが幅方向に所定間隔をおいて複数個配置され、これらの縦部材72aの上端部の相互間と下端部の相互間に、幅方向に延びる板状の横部材72bが夫々配置されている。これらの縦部材72aと横部材72bとで、複数の矩形の中空穴を有する直方体が形成されて、第1治具ユニット72が構成されている。上記縦部材72aと横部材72bは、シリコーンスポンジで形成された板状体であり、互いに接着剤で固定されている。この第1治具ユニット72は、図15において左右両側の縦方向の縁に対応する側面に、図示しないマグネットシートが張り付けられ、このマグネットシートによって基本レール3とトングレール4の対向する側面に夫々固定される。この第1治具ユニット72は、基本レール3とトングレール4の間に、中空穴がレールと略平行に延在するように配置される。この第1治具ユニット72は、断面積の比較的大きい中空穴を有するので、幅方向に変形しやすく、剛性が比較的小さい。したがって、基本レール3に対するトングレール4の駆動距離が比較的大きいトングレール4の先端部に配置されるのが好適である。ここで、治具ユニットの剛性とは、第1治具ユニット72の場合、図15の短手方向の断面図において幅方向に圧縮力が作用した場合の幅方向の変形のしにくさをいう。例えば、治具ユニットが、短手方向にa(N)の力を受けて、短手方向にb(mm)の変形が生じた場合、剛性kは、a/b(N/mm)である。
【0053】
第2治具ユニット73は、図16の断面図に示すように、上下方向に延びる板状の縦部材73aが幅方向に所定間隔をおいて複数個配置され、これらの縦部材73aの上端部の相互間と下端部の相互間に、幅方向に延びる板状の横部材73bが夫々配置されている。これらの縦部材73aと横部材73bとで、複数の矩形の中空穴を有する直方体が形成されて、第2治具ユニット73が構成されている。上記縦部材73aと横部材73bは、シリコーンスポンジで形成された板状体であり、互いに接着剤で固定されている。この第2治具ユニット73は、図16において左右両側の縦方向の縁に対応する側面に、図示しないマグネットシートが張り付けられ、このマグネットシートによって基本レール3とトングレール4の対向する側面に夫々固定される。この第2治具ユニット73は、基本レール3とトングレール4の間に、中空穴がレールと略平行に延在するように配置される。この第2治具ユニット73は、縦部材73aの幅が、第1治具ユニット72の縦部材72aの幅よりも大きく、また、横部材73bの幅が、第1治具ユニット72の横部材72bの幅よりも小さく形成されている。これにより、中空穴の断面積が第1治具ユニット72よりも小さく形成されて、第1治具ユニット72よりも大きな剛性を有する。この第2治具ユニット73は、剛性が比較的大きくて変形しにくいので、基本レール3に対するトングレール4の駆動距離が比較的小さいトングレール4の中央部に配置されるのが好適である。
【0054】
第3治具ユニット74は、図17の断面図に示すように、上下方向に延びる板状の縦部材74aが幅方向に複数個連なって形成された直方体により構成されている。上記縦部材74aは、シリコーンスポンジで形成された板状体であり、互いに接着剤で固定されている。この第3治具ユニット74は、図17において左右両側の縦方向の縁に対応する側面に、図示しないマグネットシートが張り付けられ、このマグネットシートによって基本レール3とトングレール4の対向する側面に夫々固定される。この第3治具ユニット74は、中空穴が無く、第1及び第2治具ユニット72,73よりも高い剛性を有する。この第3治具ユニット74は、剛性が第1及び第2治具ユニット72,73よりも大きくて変形しにくいので、基本レール3に対するトングレール4の駆動距離が最も小さいトングレール4の基端部に配置されるのが好適である。
【0055】
第7実施形態の異物侵入防止治具71は、トングレール4の先端部に連なって配置された2個の第1治具ユニット72と、トングレール4の中央部に連なって配置された2個の第2治具ユニット73と、トングレール4の基端部に連なって配置された3個の第3治具ユニット74によって構成されている。上記第1乃至第3治具ユニット72,73,74は、長手方向に延びる両側面が、マグネットシートで基本レール3とトングレール4に固定される。一方、上記各第1乃至第3治具ユニット72,73,74は、短手方向に延びる端面が互いに接しているが、これらの接する端面は、互いに接着されていない。これにより、異物侵入防止治具71を構成する複数の第1乃至第3治具ユニット72,73,74のうちのいずれかが損傷した場合、その損傷したユニット72,73,74を容易に交換することができる。また、上記第1乃至第3治具ユニット72,73,74は、施工の容易性のため、0.9~2メートルの長さに設定するのが好ましい。また、上記第1乃至第3治具ユニット72,73,74は、切断具で切断して任意の長さに調整することも可能である。例えば、トングレール4の基本レール3に対する移動距離、すなわち、トングレール4の駆動時に治具ユニットが受ける圧縮量に応じて、適切な剛性の治具ユニット72,73,74が配置されるように、長さを適宜設定して配置してもよい。また、第1乃至第3治具ユニット72,73,74を予め同一の長さに設定しておき、第1治具ユニット72、第2治具ユニット73及び第3治具ユニット74の順に配置し、第3治具ユニット74の配置時に長さを調整してもよい。このように、圧縮量が最も小さい第3治具ユニット74の長さを調整することで、長さが短くなっても、変形量が小さいので治具ユニットの劣化を抑制することができる。
【0056】
第7実施形態において、異物侵入防止治具71は、第1乃至第3治具ユニット72,73,74を用いて構成したが、他の治具ユニットを用いて異物侵入防止治具を構成してもよい。以下に、本実施形態に使用可能な他の治具ユニットを説明する。
【0057】
図18は、第4治具ユニット75を示す短手方向の断面図である。この第4治具ユニット75は、幅方向に延びる2つの板状の横部材75a,75aが上面側と下面側に配置され、これらの横部材75a,75aの間に、上下方向に延びる板状の縦部材75bが幅方向に所定間隔をおいて複数個配置されている。これらの横部材75aと縦部材75bは、シリコーンスポンジで形成された板状体であり、互いに接する面が接着剤で固定されている。上記縦部材75aと横部材75bとで、複数の矩形の中空穴を有する直方体が形成されている。上記縦部材75aと横部材75bの厚みや長さを調節して中空穴の寸法を調節することにより、第4治具ユニット75の剛性の大きさを調整できる。こうして剛性が調整された第4治具ユニット75は、トングレール4の先端部や中央部に配置することができる。
【0058】
図19は、第5治具ユニット76を示す短手方向の断面図である。この第5治具ユニット76は、上下方向に延びる板状の縦部材76a,76b,76cが幅方向に複数個連なって形成されている。これらの縦部材76a,76b,76cは、シリコーンスポンジで形成された板状体であり、互いに接する面が接着剤で固定されている。第5治具ユニット76を構成する縦部材76a,76b,76cは、この第5治具ユニット76の高さと同じ高さを有する第1縦部材76aと、第5治具ユニット76の高さの40%程度の高さを有する第2縦部材76bと、第5治具ユニット76の高さの20%程度の高さを有する第3縦部材76cとで構成されている。上記第1縦部材76aが幅方向の両端に配置され、これらの両端の第1縦部材76aの間に、上記第2縦部材76b及び第3縦部材76cの組と、第1縦部材76aとが交互に配置されている。上記第2縦部材76b及び第3縦部材76cの組は、上端及び下端が、隣り合う第1縦部材76aの上端及び下端と高さ方向に揃えられている。これにより、第2縦部材76bと第3縦部材76cの間に中空孔が形成されると共に、外観が直方体に形成されている。上記第2縦部材76b及び第3縦部材76cの組は、第2縦部材76bと第3縦部材76cの位置を、上下いずれかに設定することにより、中空孔の位置を上方寄り又は下方寄りに設定可能になっている。図19では、4つの第2縦部材76b及び第3縦部材76cの組のうち、外側の2つの組は高さの小さい第3縦部材76cを下に設定し、内側の2つの組は高さの大きい第2縦部材76bを下に設定している。これにより、外側の2つの中空孔は下寄りに配置し、内側の2つの中空孔は上寄りに配置している。このように、第2縦部材76bと第3縦部材76cの位置を調整することにより中空孔の位置を調整することができる。例えば、中央寄りの中空孔を上寄りに配置することにより、第5治具ユニット76が幅方向に圧縮されたときに、上面が隆起する不都合を防止することができる。また、第2縦部材76bと第3縦部材76cの高さを調節して中空穴の寸法を調節することにより、第5治具ユニット76の剛性の大きさを調整できる。こうして剛性が調整された第5治具ユニット76は、トングレール4の先端部や中央部に配置することができる。
【0059】
図20は、第6治具ユニット77を示す短手方向の断面図である。この第6治具ユニット77は、幅方向に延びる板状の横部材77aが高さ方向に複数個連なって形成された直方体により構成されている。上記横部材77aは、シリコーンスポンジで形成された板状体であり、互いに接着剤で固定されている。この第6治具ユニット77は、上記第3治具ユニット74に替えて、トングレール4の基端部に配置することができる。
【0060】
上記実施形態において、異物侵入防止治具1が設置された分岐部は、直線状に延びる基本線と、曲線状の分岐線とを分岐したが、基本線と分岐線は他の形状であってもよい。例えば、曲線状の基本線から曲線状の分岐線を分岐する分岐部であってもよい。また、基本線と分岐線とを区別せず、直線状の軌道を等角度に分岐するいわゆるY字分岐部であってもよい。
【0061】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,21,31,41,51,61,71 異物侵入防止治具
3 基本レール
4 トングレール
6 マグネットシート
8 補強膜
10 補強層
12 隆起防止孔
13 大径隆起防止孔
14 小径隆起防止孔
16 溝
22,32,42,52,62 本体
72,73,74,75,76,77 治具ユニット
【要約】
【課題】トングレールと基本レールとの間への異物の侵入を、効果的に防止できる転てつ機の異物侵入防止治具を提供する。
【解決手段】
異物侵入防止治具1は、シリコーンスポンジで形成され、細長い直方体形状を有し、長手方向に延在する2つの側面にマグネットシートを備える。異物侵入防止治具1は、基本レール3と、この基本レール3に対して接離駆動されるトングレール4との間に配置され、基本レール3とトングレール4の腹部の側面にマグネットシートで夫々固定されて、基本レール3とトングレール4の間の隙間を塞ぐ。異物侵入防止治具1は、基本線の基本レール3及びトングレール4の間と、分岐線の基本レール3及びトングレール4との間に夫々固定され、1つの転てつ機につき2個配置される。転てつ機が転換してトングレール4が駆動されると、異物侵入防止治具1が収縮又は伸展し、基本レール3とトングレール4との間の隙間を塞いだ状態を保持する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20