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特許7513378シラン官能性ポリウレタン架橋剤のスズフリー触媒反応
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】シラン官能性ポリウレタン架橋剤のスズフリー触媒反応
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/54 20060101AFI20240702BHJP
   C09D 183/14 20060101ALI20240702BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240702BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20240702BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240702BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20240702BHJP
【FI】
C08G77/54
C09D183/14
C09D7/63
C09D7/47
C09D7/61
C09D7/41
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019097396
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020041125
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】18193333.4
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ウンケルホイサー
(72)【発明者】
【氏名】エマヌイル スピロウ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー ヘースル
(72)【発明者】
【氏名】デニス メンネ
(72)【発明者】
【氏名】ハイド ストリューケンス
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-535779(JP,A)
【文献】特開2003-238891(JP,A)
【文献】特開2018-003016(JP,A)
【文献】特表2015-524017(JP,A)
【文献】特開2011-218332(JP,A)
【文献】特開2012-136449(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069712(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0043945(US,A1)
【文献】特表2017-503046(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03085718(EP,A1)
【文献】特表2015-528033(JP,A)
【文献】特表2017-507206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)イソシアナトシランのヒドロキシ官能性化合物への付加物と、B)アルキルアンモニウムハライドから選択されるスズフリー触媒とを少なくとも含む、アミノシランフリーの組成物であって、
前記ヒドロキシ官能性化合物が、モノアルコール、ジオール、トリオールまたはテトラオールであるポリオール及び10~500mgKOH/gのOH価及び250~6000g/molの数平均モル質量を有するヒドロキシル基含有ポリマーからなる群より選択され、
前記ヒドロキシル基含有ポリマーが、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、FEVE(フルオロエチレンビニルエーテル)、アルキド及びポリウレタンからなる群から選択され、ここで、前記ポリウレタンは、ポリオール及びジイソシアネートモノマーからなり;かつ
それぞれ、前記組成物全体を基準として、成分A)の量が40~99質量%であり、かつ成分B)の量が0.01~3質量%である、前記アミノシランフリーの組成物。
【請求項2】
前記イソシアナトシランが、式(I)
OCN-(アルキル)-Si(アルコキシ) (I)
で示される化合物であり、ここで、前記の式(I)中のアルキルが、炭素原子1~4個を有する線状又は分岐状のアルキル基に相当し、かつ前記の式(I)中のアルコキシが、それぞれ互いに独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基に相当し、ここで、式(I)の化合物中の3個のアルコキシ基が、それぞれ同じか又は互いに異なっていてよい、請求項1に記載のアミノシランフリーの組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物中のアルコキシが、それぞれ互いに独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択される、請求項2に記載のアミノシランフリーの組成物。
【請求項4】
前記アルコキシ基は、3個全てのアルコキシ基が同じである場合に、メトキシ基ではない、請求項3に記載のアミノシランフリーの組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシ官能性化合物のOH基と前記イソシアナトシランのNCO基との比が、0.8:1~1.2:1である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のアミノシランフリーの組成物。
【請求項6】
前記スズフリー触媒B)が、アルキルアンモニウムフルオリドである、請求項1に記載のアミノシランフリーの組成物。
【請求項7】
前記スズフリー触媒B)が、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド又はそれらの混合物である、請求項6に記載のアミノシランフリーの組成物。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のアミノシランフリーの組成物を少なくとも含む、アミノシランフリーの1成分(1K)又は2成分(2K)コーティング組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤及び/又は少なくとも1種の溶剤を含有する、請求項に記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物。
【請求項10】
前記の少なくとも1種の助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤が、安定剤、光安定剤、触媒、顔料、レベリング剤又はレオロジー助剤、ミクロゲル、ヒュームドシリカ、無機又は有機の有色顔料及び/又は効果顔料又はそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項に記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物。
【請求項11】
前記レオロジー助剤が、“サグコントロール剤”である、請求項10に記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物。
【請求項12】
木材、プラスチック、ガラス又は金属をコーティングするための、請求項から11までのいずれか1項に記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物の使用。
【請求項13】
請求項から11までのいずれか1項に記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物を含有する、コーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A)イソシアナトシランのヒドロキシ官能性化合物への付加物と、B)スズフリー触媒とを少なくとも含有するアミノシランフリーの組成物、並びに少なくとも該組成物を含有するアミノシランフリーのコーティング組成物、及び該コーティング組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の耐久性保護コーティングのために、今日、周囲温度では緩慢に、かつ高められた温度では急速に硬化することができるポリウレタン系の2成分塗料が通常は使用される。これらは典型的には、塗料用樹脂と架橋剤とからなり、それぞれ官能基を持っており、かつ架橋しながら互いに反応する。温度及び架橋速度への著しい依存性及びそれから生じる、活性で毒性学的に懸念のある触媒並びに官能基を利用する必要性に基づいて、代替のコーティング系を提供することへの要望がある。この場合に、多様な硬化条件下での高い反応性、並びに硬化されたコーティングの、薬品又は天候の影響に対する、あるいはまた機械的応力に対する高い耐性が保証されるべきである。技術的な参照として、長らく公知となっている脂肪族2K-ポリウレタン系(PUR)を引用することができる。
【0003】
そのような2K系は、例えば、独国特許出願公開第102007013262号明細書(DE 10 2007 013 262 A1)に記載されている。しかしこれらは、140℃以上の高温ではじめて急速に硬化することができる2K系である。
【0004】
国際公開第2014/180623号(WO 2014/180623 A1)には、シラン含有コーティング組成物が記載されているが、該コーティング組成物は、もっぱら0℃~40℃の範囲の温度で硬化することができるものであり、かつ使用されるアミノシランに基づいて、2Kポリウレタン系との相溶性を有していない。さらに、塗料において常用される速乾性溶剤、例えばアセテート、殊にブチルアセテートは、該アミノシラン含有コーティング組成物と組合せて、1K系として一緒に貯蔵することは不可能である。それというのも、アミノリシスが起こることにより、該系の反応性が阻害されるからである。
そのうえ、上記文献に開示されたコーティング組成物では、メタノールを放出する短鎖アルコキシ基の存在によって、急速な架橋速度を保証することができるにすぎない。
【0005】
従来技術から公知の系は、これらが室温又は高温のいずれかで硬化し、並びに十分な架橋速度を保証するためにしばしば毒性学的に懸念のあるスズ化合物を含有するという欠点を有する。さらに、シラン含有コーティング組成物の場合には、しばしば機械的なフレキシビリティーが有利ではなく、かつ例えば2Kポリウレタン系(PUR)による、本来的なシラン脆性の低下は、非相溶性に基づき不可能である。それに加えて、そのようなシラン含有コーティング組成物の場合には、十分な架橋速度を保証するために、毒性学的に懸念のある、メタノールを放出する成分を使用する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102007013262号明細書
【文献】国際公開第2014/180623号
【文献】独国特許発明第19529124号明細書
【文献】国際公開第93/15849号
【文献】欧州特許出願公開第0140186号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、好ましくは0℃~170℃の範囲の温度で硬化することができ、2Kポリウレタン系と相溶性であり、かつスズフリーである組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくは本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物によって解決される。
【0009】
本発明の基礎をなす課題は、A)イソシアナトシランのヒドロキシ官能性化合物への付加物と、B)スズフリー触媒とを少なくとも含有するアミノシランフリーの組成物によって解決することができた。好ましい実施態様において、前記のアミノシランフリーの組成物はもっぱら、A)イソシアナトシランのヒドロキシ官能性化合物への付加物と、B)スズフリー触媒とからなる。
【0010】
本発明によるアミノシランフリーの組成物は、殊に、コーティング組成物として使用することができる。驚くべきことに、前記の成分A)及びB)を少なくとも含有する本発明による組成物は、これらがコーティング組成物として使用される場合に、既に0℃で安定したコーティングをもたらすことが明らかになった。本発明によるこれらのコーティング組成物は、適用が簡単な1成分系(1K)である。該アミノシランフリーの組成物もしくはアミノシランフリーのコーティング組成物の低分子量分に基づき、本発明によるコーティング組成物は、後の使用に関して、付加的な有機溶剤を用いることなく配合可能であり、かつ加工可能である。したがって、100g/l未満のVOC含有量を実現することが可能である。
【0011】
さらに驚くべきことに、前記の成分A)及びB)を含有する本発明によるアミノシランフリーの組成物は、イソシアナトシランのヒドロキシ官能性化合物への、エトキシベースの付加物も、室温で急速に硬化させることができることが明らかになった。
【0012】
本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくはコーティング組成物の成分A)は、イソシアナトシランのヒドロキシ官能性化合物への付加物である。
【0013】
好ましくは、該イソシアナトシランは、式(I)
OCN-(アルキル)-Si(アルコキシ) (I)
で示される化合物であり、ここで、前記の式(I)中のアルキルは、炭素原子1~4個を有する線状又は分岐状のアルキル基に相当し、かつ前記の式(I)中のアルコキシは、同時に又は互いに独立してメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基に相当し、ここで、式(I)の化合物中の3個のアルコキシ基は、それぞれ同じか又は互いに異なっていてよい。
【0014】
式(I) OCN-(アルキル)-Si(アルコキシ)の化合物として、前記の可能な化合物の全てが原則的に適している。しかし、特に好ましくは、アルコキシは、メトキシ基及びエトキシ基から選択されている。好ましくは、該アルコキシ基は、3個全てのアルコキシ基が同じである場合に、しかしながらメトキシ基ではない。
【0015】
式(I)の適した化合物は、殊に、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン、2-イソシアナトエチルトリメトキシシラン、2-イソシアナトエチルトリエトキシシラン、2-イソシアナトエチルトリイソプロポキシシラン、4-イソシアナトブチルトリメトキシシラン、4-イソシアナトブチルトリエトキシシラン、4-イソシアナトブチルトリイソプロポキシシラン、イソシアナトメチルトリメトキシシラン、イソシアナトメチルトリエトキシシラン、イソシアナトメチルトリイソプロポキシシラン、3-イソシアナトプロピルジメトキシエトキシシラン及び/又は3-イソシアナトプロピルジエトキシメトキシシランを含む群から選択されるイソシアナトアルキルアルコキシシランである。
【0016】
好ましくは、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルジメトキシエトキシシラン及び/又は3-イソシアナトプロピルジエトキシメトキシシラン、特に好ましくは3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルジメトキシエトキシシラン及び/又は3-イソシアナトプロピルジエトキシメトキシシランが、本発明による組成物もしくはコーティング組成物中の式(I)の化合物(成分A))として使用される。
【0017】
上述のイソシアナトシランは、ヒドロキシ官能性化合物への付加物として、結合して存在する。対応するヒドロキシ官能性化合物として、一価又は多価のアルコール並びにポリオールが適している。
【0018】
適したヒドロキシ官能性化合物は、例えば、モノアルコール又はポリオール、すなわちジオール、トリオール、テトラオール及びヒドロキシル基含有ポリマーである。好ましい実施態様において、ヒドロキシ官能性化合物として、ジオール、トリオール又はテトラオール、特に好ましくはジオール又はトリオールが使用される。
【0019】
該モノアルコールの場合に、これらは殊に、炭素原子1~20個、好ましくは炭素原子1~12個、特に好ましくは炭素原子1~9個を有する一官能性の分岐状又は線状のアルコール又はこれらの混合物、殊にメタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールである。
【0020】
モノアルコールとして、グリコールエーテルも使用することができる。グリコールエーテルとして、殊に、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,1′-オキシビス(2-トリエチレングリコール)モノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-1-メチルエーテル、プロピレングリコール-2-メチルエーテル、プロピレングリコール-1-エチルエーテル及びプロピレングリコール-1-ブチルエーテルが適している。
【0021】
ジオールとして、炭素原子1~20個、好ましくは炭素原子1~12個、特に好ましくは炭素原子1~10個を有する二官能性の分岐状又は線状のアルコール又はこれらの混合物が殊に適している。
【0022】
トリオールとして、炭素原子1~20個、好ましくは炭素原子1~12個、特に好ましくは炭素原子1~10個を有する三官能性の分岐状又は線状のアルコール又はこれらの混合物が特に適している。
【0023】
テトラオールとして、炭素原子1~20個、好ましくは炭素原子1~12個、特に好ましくは炭素原子1~10個を有する四官能性の分岐状又は線状のアルコール又はこれらの混合物が特に適している。
【0024】
さらに、10~500mgKOH/gのOH価及び250~6000g/molの数平均モル質量を有するヒドロキシル基含有ポリマーをヒドロキシ官能性化合物として使用することができ、ここで、該ヒドロキシル基含有ポリマーは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、FEVE(フルオロエチレンビニルエーテル)、アルキド及びポリウレタンからなる群から選択され、ここで、該ポリウレタンは、ポリオール及びジイソシアネートモノマーからなるか、もしくは形成される。好ましくは、20~150mgKOH/gのOH価及び500~6000g/molの数平均分子量を有するヒドロキシル基含有ポリエステル及び/又はポリアクリレートが使用される。
【0025】
ヒドロキシル価(OHN)は、DIN EN ISO 4629-2 (2016-12)に従って決定される。この方法の場合に、試料を無水酢酸と、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で、触媒としてNMP中の4-N-ジメチルアミノピリジンの存在下で反応させ、ここで、該ヒドロキシル基はアセチル化される。その際に、ヒドロキシル基1個あたり1分子の酢酸が生じ、続いて過剰の無水酢酸の加水分解の間に2分子の酢酸が生成する。酢酸の消費は、滴定により、主値と、並行して実施されうる空試験値との差から求められる。
【0026】
数平均分子量は、DIN 55672-1 (2016-03)に従い、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、溶離液としてのテトラヒドロフラン中で、校正のためのポリスチレンを用いて決定される。
【0027】
さらにまた、上述のヒドロキシル官能性化合物の混合物を使用することもできる。
【0028】
好ましい実施態様において、付加物A)のためのヒドロキシ官能性化合物として、ジオール、トリオール又はテトラオール、特に好ましくはジオール又はトリオールが使用される。
【0029】
付加物A)の製造は、無溶剤で又は非プロトン性溶剤を使用して実施することができ、ここで、該反応はバッチ式に又は連続的に行うことができる。該反応は、室温で、つまり20~25℃の範囲の温度で実施することができるが、しかしながら好ましくは、30~150℃の範囲、殊に50~100℃の範囲のより高い温度が使用される。該反応の促進のために、ウレタン化学において公知の触媒、例えばSn、Bi、Zn及び他の金属のカルボキシレート、第三級アミン、例えば1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン等を有利に使用することができる。該反応は、好ましくは、水を遮断して実施される。
【0030】
付加物A)を形成するための該イソシアナトシラン及び該ヒドロキシ官能性化合物の反応は、その際に、殊に、付加物A)中の該ヒドロキシ官能性化合物のOH基と該イソシアナトシランのNCO基との比が、0.8:1~1.2:1、好ましくは0.9:1~1.1:1であるように行われ、ここで、化学量論的な反応(1:1)が極めて特に好ましい。極めて特に好ましい実施態様において、該ヒドロキシ官能性化合物の全てのOH基と、該イソシアナトシランのNCO基との完全転化、殊に式(I)の化合物のものが達成される。
【0031】
双方の反応相手に関して選択される化学量論に依存して、得られる付加物A)は、遊離ヒドロキシル基又はイソシアネート基をなお有していてよい。しかしながら、付加物A)は、好ましくはNCO基不含である。これに関連して、“NCO基不含”という表現は、本発明による組成物もしくは本発明によるコーティング組成物が、遊離NCO基≦0.5%、好ましくは遊離NCO基≦0.05%、さらに好ましくは遊離NCO基≦0.01%を含有し、かつ特に好ましくは遊離NCO基を含有しないことであると理解すべきである。このパーセントの記載は、使用されるイソシアナトシランのNCO基の全量を基準としている。
【0032】
前記の反応の際に、該イソシアナトシランのNCO基は、該ヒドロキシ官能性化合物のOH基と、前記の化合物を互いに結合させるNH-CO-O基を形成しながら反応する。それにより得られる付加物A)は殊に、無溶剤型でも、0℃で及び0℃を上回る温度で液状である。それらはすなわち、好ましくは非結晶性の、むしろ低分子量の化合物である。
【0033】
付加物A)は、無溶剤型で、低ないし高粘稠であり、すなわちこれらは、10~40000mPa・sの範囲、好ましくは50~18000mPa・sの範囲の粘度(DIN EN/ISO 3219 (1994-10)、23℃で)を有する。より良好な取扱い性のためには、該生成物に付加的に、アルコールのような、プロトン性であってもよい溶剤が添加されていてよい。そのような調製物の固形分は、好ましくは>80質量%であり、かつその際に好ましくは1000mPa・sの最大粘度(DIN EN/ISO 3219 (1994-10)、23℃で)を有する。
【0034】
本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくは本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物中の成分A)の量は、該組成物全体もしくは該コーティング組成物全体を基準として、好ましくは40~99質量%である。
【0035】
本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくは本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物の成分B)は、スズフリー触媒である。したがって、本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくは本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物は、好ましくは全体として付加的にスズフリーである。本発明の意味でのスズフリーは、本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくは本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物に、スズ化合物が(例えば触媒として)添加されないが、しかし、スズ化合物が、該成分の事前の製造方法からの不純物として微小量で、該コーティング組成物中へ導入されうることであると理解すべきである。
【0036】
スズフリー触媒B)は、殊に、含窒素触媒、リンのオキソ酸の塩及びエステル及びアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択されていてよく、ここで、前記の群の化合物の混合物も可能である。好ましい実施態様において、アルキルアンモニウムハライド又は多様なアルキルアンモニウムハライドの混合物が、本発明による組成物もしくは本発明によるコーティング組成物中の触媒として使用される。
【0037】
本発明による組成物もしくは本発明によるコーティング組成物中で使用することができる含窒素触媒は、殊に、アミジン類及びグアニジン類である。該アミジン類は、好ましくは、二環状アミジン類又は二環状アミジン類の混合物である。二環状アミジンとして、殊に、ジアザビシクロノネン(DBN)又はジアザビシクロウンデセン(DBU)を使用することができる。該グアニジン類の中では、テトラメチルグアニジン(TMG)が好ましい。
【0038】
触媒として使用できるリンのオキソ酸の塩及びエステルは、好ましくは、リン酸のモノエステル又はジエステル、ジホスホン酸ジエステル及びそれらの混合物からなる群から選択されている。リンのオキソ酸の好ましい塩及びエステルは、リン酸のモノエステル又はジエステル及びジホスホン酸ジエステルであり、特に好ましくは、リン酸のモノエステル又はジエステルである。
【0039】
前記のリン酸のモノエステル又はジエステルは、殊に、リン酸のモノアルキルエステル又はジアルキルエステル(いわゆるアルキルホスフェート又はジアルキルホスフェート)である。該アルキルホスフェート又はジアルキルホスフェートのアルキル基は、好ましくは炭素原子1~8個を有し、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチル、特に好ましくは、該ジアルキルホスフェートは、炭素原子2~5個を有する。該ジアルキルホスフェートのアルキル基は、その際に同じか又は互いに異なっていてよく、好ましくはこれらは同じである。極めて特に好ましくは、前記のリン酸のモノアルキルエステル又はジアルキルエステルは、リン酸ブチルエステルであり、例えば、Clariant社の名称Hordaphos(登録商標) MDB又はHordaphos(登録商標) MOBで入手可能である。
【0040】
該ジホスホン酸ジエステルは、殊にジアルキルジホスホネートである。該ジアルキルジホスホネートのアルキル基は、好ましくは炭素原子1~8個を有し、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチル、特に好ましくは、該ジアルキルジホスホネートは、炭素原子2~5個を有する。該ジアルキルジホスホネートのアルキル基は、その際に同じか又は互いに異なっていてよく、好ましくはこれらは同じである。
【0041】
触媒として、アルキルアンモニウムハライド又は異なるアルキルアンモニウムハライドの混合物を使用することもできる。該アルキル基は、その際に炭素原子1~6個を有していてよい。好ましいアルキルアンモニウムハライドは、アルキルアンモニウムフルオリド、特に好ましくは第四級アルキルアンモニウムフルオリドであり、ここで、該アルキル基は、その際に炭素原子1~6個を有していてよい。極めて特に好ましいアルキルアンモニウムフルオリドとして、テトラメチルアンモニウムフルオリド(TMAF)、テトラエチルアンモニウムフルオリド(TEAF)、テトラプロピルアンモニウムフルオリド(TPAF)及びテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)を使用することができる。好ましくは、挙げたアルキルアンモニウムフルオリドは、それらの水和物、例えば三水和物の形で使用される。該アルキルアンモニウムハライドは、殊にC~C-アルコール、殊にメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール又はヘキサノール中の溶液として、該組成物に添加することができる。
【0042】
本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくは本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物中のスズフリー触媒B)の量は、それぞれ、該組成物全体もしくは該コーティング組成物全体を基準として、殊に0.01~3.0質量%、好ましくは0.1~1質量%である。
【0043】
本発明は、アミノシランフリーの組成物もしくはアミノシランフリーのコーティング組成物に関する。本発明の意味でのアミノシランフリーは、該組成物もしくは該コーティング組成物に、アミノシランが添加されず、かつこれらの組成物又はコーティング組成物が、アミノシランを含有していないことであると理解すべきである。例えば該成分の不純物から導入されている、アミノシランの微小量(<0.01質量%)を許容することができる。
【0044】
それにより、本発明による組成物もしくはコーティング組成物を、ポリイソシアネートもしくは2Kポリウレタン系と組み合わせることができる。それというのも、ポリイソシアネートとアミノシランとの反応が行われないからである。さらに、本発明による組成物もしくは本発明によるコーティング組成物は、アミノシランを用いなくても、焼き付けに対して安定である。モノマーのアミノシランは、既に比較的低い温度で沸騰し、そうすると、もはや該コーティング系の活性化のために十分に利用できない。該組成物又はコーティング組成物中のアミノシランにより、メタノールも放出されうるので、このことは特定の使用に、例えば建設市場の自由販売用製品に、毒性学的な見地から望ましくないことも考えられる。
【0045】
本発明によるアミノシランフリーの組成物は、上述のように、成分A)とB)とからなっていてよく、バインダーフリーであってよく、かつコーティング組成物として使用することができる。前記のアミノシランフリーのコーティング組成物はそうすると、本発明による組成物からなる1成分(1K)コーティング組成物である。
【0046】
それに応じて本発明の対象は、本発明による組成物(成分A)及びB)を少なくとも含有するか又は該成分からなる)を少なくとも含むが、しかしながらバインダーを含まない、アミノシランフリーの1Kコーティング組成物である。好ましい実施態様において、該アミノシランフリーの1Kコーティング組成物は付加的に、少なくとも1種の助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤及び/又は少なくとも1種の溶剤を含有する。
【0047】
該溶剤は、好ましくは有機溶剤、例えばケトン、エステル、アルコール又は芳香族化合物である。該溶剤は、それぞれ、該コーティング組成物全体を基準として、好ましくは1~50質量%、殊に5~75質量%の量で、本発明によるアミノシランフリーの1Kコーティング組成物中に含まれていてよい。該溶剤の量は、該コーティング組成物の調節されうる適用粘度に従う。
【0048】
前記のアミノシランフリーの1Kコーティング組成物は、助剤及び/又は添加剤、例えば安定剤、光安定剤、顔料、充填剤、レベリング剤又はレオロジー助剤、例えばいわゆる“サグコントロール剤”、ミクロゲル又はヒュームドシリカを、典型的な濃度で含有していてよい。該助剤及び/又は添加剤は、顔料フリーのコーティング組成物の場合に、それぞれ、該コーティング組成物全体を基準として、好ましくは0.01~90質量%、殊に0.1~20質量%の量で、本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物中に含まれていてよい。顔料含有及び/又は充填剤含有コーティング組成物の場合に、助剤及び/又は添加剤の含有率は、それぞれ、該コーティング組成物全体を基準として、0.01~99質量%、殊に0.1~90質量%であってよい。
【0049】
しかし、本発明によるコーティング組成物は、バインダー成分を含有していてもよい。それにより、2成分のアミノシランフリーの(2K)コーティング組成物が得られる。該2成分(その場合、少なくともA)及びB)のアミノシランフリーの組成物が一方の成分に該当し、かつ該バインダーが他方の成分に該当する)は、互いに別個に貯蔵され、その適用の際にはじめて互いに混合される。それというのも、該バインダーは、例外的な場合にのみ、少なくとも成分A)及びB)のアミノシランフリーの組成物と共に、安定に貯蔵することができるからである。
【0050】
それに応じて、本発明の対象は、少なくとも本発明による組成物(成分A)及びB)を少なくとも含有するか又は該成分からなる)及び少なくとも1種のバインダー成分を含む、アミノシランフリーの2Kコーティング組成物でもある。好ましい実施態様において、前記のアミノシランフリーの2Kコーティング組成物は付加的に、少なくとも1種の助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤及び/又は少なくとも1種の溶剤を含有する。
【0051】
バインダー成分として、当業者に公知の全ての種類のバインダー、例えば熱可塑性でもある、つまり非架橋性である、通常>10000g/molの平均分子量を有するバインダーが原則的に適している。しかしながら、好ましくは、酸性水素原子を有する反応性官能基を持っているバインダーが使用される。前記の種類の適したバインダーは、例えば少なくとも1個、しかしながら好ましくは2個以上のヒドロキシル基を有する。該バインダーのさらに適した官能基は、例えばトリアルコキシシラン官能基である。
【0052】
官能基を有するバインダーとして、好ましくはヒドロキシル基含有ポリマー、殊に20~500mgKOH/gのOH価及び250~6000g/molの平均モル質量を有するヒドロキシル基含有のポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネート及びポリウレタンが使用される。特に好ましくは、本発明の範囲内で、20~150mgKOH/gのOH価及び500~6000g/molの平均分子量を有するヒドロキシル基含有のポリエステル又はポリアクリレートがバインダー成分として使用される。
【0053】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルコポリマーとして、例えば独国特許発明第19529124号明細書(DE 195 29124 C1)に記載されているようなモノマー組成を有する樹脂を使用することができる。その際に、モノマーとして(メタ)アクリル酸の割合に応じた使用により調節されうる、該(メタ)アクリルコポリマーの酸価は、0~30mgKOH/g、好ましくは3~15mgKOH/gであるべきである。該(メタ)アクリルコポリマーの数平均モル質量(ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン標準に対して求めた)は、好ましくは2000~20000g/molであり、そのガラス転移温度は、好ましくは-40℃~+60℃である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合に応じた使用により調節されうる、本発明により使用されうる(メタ)アクリルコポリマーのヒドロキシル含量は、好ましくは70~250mgKOH/g、特に好ましくは90~190mgKOH/gである。
【0054】
本発明により適切なポリエステルポリオールは、国際公開第93/15849号(WO 93/15849 A1)に記載されているようなジカルボン酸及びポリカルボン酸とジオール及びポリオールとからなるモノマー組成を有する樹脂である。ポリエステルポリオールとして、例えば名称CAPA(登録商標) (Perstorp)で入手可能な、カプロラクトンの低分子量ジオール及びトリオールへの重付加生成物を使用することもできる。計算により決定される数平均モル質量は、好ましくは500~5000g/mol、特に好ましくは800~3000g/molであり、その平均官能価は、好ましくは2.0~4.0、より好ましくは2.0~3.5である。
【0055】
本発明により使用されうるウレタン基含有及びエステル基含有ポリオールとして、原則的に、欧州特許出願公開第0140186号明細書(EP 0 140 186 A2)に記載されているようなものも使用される。好ましくは、HDI、IPDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)又は(H12-MDI)が製造に使用されるウレタン基含有及びエステル基含有ポリオールが使用される。その数平均モル質量は、好ましくは500~2000g/molであり、その平均官能価は、殊に2.0~3.5の範囲内である。
【0056】
もちろん、前記のバインダーの混合物を使用することもできる。好ましいバインダーは、単独で又は混合物としての、ヒドロキシル基含有ポリエステル及びポリアクリレートである。
【0057】
本発明によるアミノシランフリーの2Kコーティング組成物中の任意の付加的なバインダーの割合は、該コーティング組成物全体を基準として、殊に5~60質量%、殊に10~40質量%であってよい。
【0058】
本発明によるアミノシランフリーの2Kコーティング組成物はさらに、コーティング技術において公知の助剤及び/又は添加剤、例えば安定剤、光安定剤、顔料、充填剤、レベリング剤又はレオロジー助剤、例えばいわゆる“サグコントロール剤”、ミクロゲル又はヒュームドシリカを、典型的な濃度で含有していてよい。必要な場合には、本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物中に、コーティング技術において慣用の無機又は有機の有色顔料及び/又は効果顔料を導入することもできる。
【0059】
該助剤及び/又は添加剤は、顔料フリーの、アミノシランフリーのコーティング組成物の場合に、それぞれ、該コーティング組成物全体を基準として、好ましくは0.01~90質量%、殊に0.1~20質量%の量で、本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物中に含まれていてよい。顔料含有及び/又は充填剤含有のアミノシランフリーのコーティング組成物の場合に、助剤及び/又は添加剤の含有率は、それぞれ、該コーティング組成物全体を基準として、0.01~99質量%、殊に0.1~90質量%であってよい。
【0060】
前記のアミノシランフリーの2Kコーティング組成物のための任意で存在する溶剤は、好ましくは有機溶剤、例えばケトン、エステル、アルコール又は芳香族化合物である。該溶剤は、それぞれ、該コーティング組成物全体を基準として、好ましくは1~50質量%、殊に5~75質量%の量で、本発明によるコーティング組成物中に含まれていてよい。該溶剤の量は、該コーティング組成物の調節されうる適用粘度に従う。
【0061】
前記のアミノシランフリーの組成物又はアミノシランフリーのコーティング組成物の全ての成分、すなわち少なくとも成分A)及びB)、並びに付加的に可能なバインダー、助剤及び/又は添加剤及び溶剤の割合の合計は、常に100質量%になる。
【0062】
本発明によるアミノシランフリーの組成物もしくは本発明によるアミノシランフリーのコーティング組成物の製造は、前記の成分の混合により行われる。該混合は、当業者に公知のミキサー、例えば撹拌槽、ディソルバー、ビーズミル、ロールミル等中で、しかしスタティックミキサーを用いて連続的に行うこともできる。
【0063】
本発明のさらなる対象は、本発明によるアミノシランフリーの組成物を少なくとも含有するアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物の使用であり、ここで、該コーティング組成物は、殊に0℃~170℃の温度で硬化性であり、木材、プラスチック、ガラス又は金属のコーティングに適している。
【0064】
上述のコーティング組成物をベースにして得られるコーティングは、機械的応力に対する高い耐性により特徴付けられている。さらにまた、これらは、極めて良好な耐薬品性、際立って良好な耐候性及び硬度とフレキシビリティーとの極めて良好なバランスを示す。
【0065】
本発明によるコーティング組成物を含有するコーティングは、同様に本発明の対象である。
【0066】
さらなる説明がないとしても、当業者であれば前記の記載を最大限の範囲で利用できることを前提としている。したがって、好ましい実施態様及び実施例は、単に説明のための開示として理解すべきであり、決して何らかの方法で限定する開示として理解すべきではない。
【0067】
以下では、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。本発明の選択的な実施態様は、同様にして得ることができる。
【実施例
【0068】
例1):コーティング組成物(1K)の製造
個々の物質を、配合表に応じて、連続してガラスびん中へ入れ、均質で十分に混合された溶液が形成されるまで撹拌する。使用されるアルキルアンモニウムハライドTMAF及びTBAFを、該組成物への添加前に、10%エタノール中に溶解させた(例2/組成物Nを除く)。全てのコーティング組成物に、レベリング剤(Tego Glide 410 /n-ブチルアセテート中10%)を添加した。
【0069】
コーティングの製造:
コーティングバーを用いて、前記のとおりに製造された組成物を約120μmの未乾燥膜厚で、試験板(Chemetall Group / Gardobond 26S 60 OC)上へ塗布する。製造された組成物の概要は第1表に見ることができる。全ての量は質量パーセントで示されている。
【0070】
該塗布後に、該コーティングを有する試験板を、恒温恒湿室中で23℃及び50%の相対大気湿度で貯蔵する。1日後に、製造されたコーティングの振かん硬度(ケーニッヒによる)を決定する。それに加えて、該コーティングの適用直後にダストドライタイムを把握する。
【0071】
該振かん硬度の基礎は、基材の減衰及び振動エネルギーの吸収が大きければ大きいほど、支点としている振り子の振動振幅の小さくなるのがより速くなることである。試料板(コーティングを有する)を、往復プラテン上に配置する。続いて、外部から操作可能なレバーアームを用いて、該往復プラテンが振り子に接するまで動かす。この振り子を、6°の目盛位置まで振り、ワイヤトリガーに固定し、続いて外す。該振り子が鉛直線に対して6°から3°まで弱まるのに必要とする振動の数が求められる。該振動をファクター1.4で乗ずることにより、ケーニッヒによる振り子減衰[単位:秒]を算出する。該測定を、該試料内の異なる2つの位置で実施し、かつ平均値を算出する。
【0072】
該コーティング材料の乾燥時間の決定は、EN ISO 9177 (3:2010)に従う該ダストドライタイムの決定によって行われる。
【0073】
このためには、該コーティング基材を、試験されうるコーティングにより、目標膜厚でコーティングする。その時点を書き留める。10分の間隔で、重さが約0.3~0.5gのガラスビーズ(ガラスビーズ直径:250~500μm/製造者:Carl-Roth GmbH + Co. KG)を、小さなさじ/へらを用いて、高さ0.5cmから一箇所に、慎重に該コーティング上へ散布する(該ガラスビーズの山の直径 約1.5~2.0cm)。10分毎に、ガラスビーズのない新しい箇所にガラスビーズをぶつける。速い系の場合には、該期間を5分に低下させ、遅い系の場合には、これは最初に15~30分に高められる。しかし、該硬化期間の終了頃に、ついで該時間間隔を再び10分に短縮する。各箇所について、該コーティングの塗布からの期間を書き留める。該コーティングが目視で乾燥したように見える場合には、該ガラスビーズを、柔らかい毛ばけで該板からはき出し、かつガラスビーズが塗膜表面に付着しなくなる時点の時間を記録する。ガラスビーズが塗膜表面に付着する場合は、該試験を続ける。
【0074】
製造されたコーティングについて得られた結果は、第2表に示されている。
【0075】
【表1】
(1) VESTANAT EP-M 60、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランと1,6-ヘキサンジオールとの付加物(3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランと1,6-ヘキサンジオールとの比は2:1に相当)
(2) VESTANAT EP-E 95、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランと1,9-ノナンジオールとの付加物(3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランと1,9-ノナンジオールとの比は2:1に相当)
(3) Dynasylan AMMO、Evonik Resource Efficiency GmbHの3-アミノプロピルトリメトキシシラン
(4) TIB Kat 218、ジブチルスズジラウレート、TIB Chemicals AG
(5) Tego Glide 410、ポリエーテルシロキサンコポリマー、Evonik Resource Efficiency GmbH
(6) Hordaphos MOB、リン酸ブチルエステル、Clariant
(7) Hordaphos MDB、リン酸ブチルエステル、Clariant
(8) Polycat DBU、ジアザビシクロウンデセン、Evonik Resource Efficiency GmbH
(9) テトラメチルグアニジン、Merck Millipore
(10) K-KAT XK-678、酸性リン酸アルキル、King Industries
(11) テトラメチルアンモニウムフルオリド、Sigma Aldrich
(12) テトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物、Sigma Aldrich。
【0076】
【表2】
【0077】
第2表からは、該スズフリー触媒を含有する本発明によるコーティング組成物(試料D~J)が、スズ含有触媒及びアミノシランを有する比較例(試料A、B及びC)と比べて、室温で匹敵して迅速に又はそれどころかより迅速に硬化することが明らかになる。同じことは振かん硬度にも該当し、振かん硬度は本発明による例の場合にはほぼ全てが比較例よりも高い。したがって、前記の本発明による全ての触媒は、公知のスズ含有触媒並びにアミノシランに対する代替品となる。
【0078】
そのうえ驚くべきことに、アルキルアンモニウムハライドの使用により(試料J)、室温でのエトキシベースの付加物(2)の迅速な硬化さえも達成することができるが、これは公知の組成物(試料B及びC)では不可能であった。
【0079】
例2):コーティング組成物(2K)の製造
個々の物質を、配合表に応じて、連続してガラスびん中へ入れ、均質で十分に混合された溶液が形成されるまで撹拌する。そのNCO:OH比を、それぞれ1:1の比に調節した。その配合物の粘度は、23℃でのDIN 4カップにおける流下時間として測定して、約20秒である。使用されるアルキルアンモニウムハライドTMAF及びTBAFを、該組成物への添加前に、エタノール中に溶解させた(TMAF及びTBAFの10%溶液)。全てのコーティング組成物に、レベリング剤(Tego Glide 410/n-ブチルアセテート中10%)を添加した。
【0080】
コーティングの製造:
前記のように製造された組成物を、コーティングバーを用いて、約120μmの未乾燥膜厚で、試験板(Chemetall Group / Gardobond 26S 60 OC)上へ塗布する。製造された組成物の概要は、第3表に見ることができる。全ての記載は質量パーセントで示されている。
【0081】
該塗布後に、該コーティングを有する試験板を130℃で30分間、空気循環乾燥器中で硬化させる。1日後に、製造されたコーティングの振かん硬度(ケーニッヒによる)を決定する。
【0082】
製造されたコーティングについて得られた結果は、第4表に示されている。
【0083】
【表3】
(1) Setalux 1767 VV-65、ポリアクリレートポリオール、Nuplex Resins B.V.
(2) VESTANAT HT 2500 L、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、ホモポリマー(イソシアヌレート型)、n-ブチルアセテート/ソルベントナフサ(1:1)中90%、Evonik Resource Efficiency GmbH
(3) VESTANAT EP-M 60、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランと1,6-ヘキサンジオールとの付加物(3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランと1,6-ヘキサンジオールとの比は2:1に相当)
(4) Tego Glide 410、ポリエーテルシロキサンコポリマー、Evonik Resource Efficiency GmbH
(5) o-キシレン/n-ブチルアセテート(1:1混合物)、Merck Millipore
(6) Dynasylan AMMO、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、Evonik Resource Efficiency GmbH
(7) TIP Kat 218、ジブチルスズジラウレート、TIB Chemicals AG
(8) Hordaphos MOB、リン酸ブチルエステル、Clariant
(9) Polycat DBU、ジアザビシクロウンデセン、Evonik Resource Efficiency GmbH
(10) テトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物、Sigma Aldrich。
【0084】
【表4】
【0085】
例2からは、比較例(試料K)が、2K-PUR組成物との劣悪な相溶性を示すことがわかるが、これは、不十分な振かん硬度から明らかになる。
【0086】
しかしながら、本発明による触媒系(試料L~N)が使用される場合には、高められた硬化温度にもかかわらず、十分な硬度を生じることができる。
本発明による組成物は、有利な特性を維持しながら、室温で(例1)並びに高められた温度で(例2)、硬化することができる。
【0087】
本発明の好ましい実施態様は次のとおりである:
1. A)イソシアナトシランのヒドロキシ官能性化合物への付加物と、B)含窒素触媒、リンのオキソ酸の塩及びエステル及びアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択されるスズフリー触媒とを少なくとも含む、アミノシランフリーの組成物であって、
前記ヒドロキシ官能性化合物が、モノアルコール又はポリオール、すなわちジオール、トリオール、テトラオール及び10~500mgKOH/gのOH価及び250~6000g/molの数平均モル質量を有するヒドロキシル基含有ポリマーから選択され、
前記ヒドロキシル基含有ポリマーが、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、FEVE(フルオロエチレンビニルエーテル)、アルキド及びポリウレタンからなる群から選択され、ここで、前記ポリウレタンは、ポリオール及びジイソシアネートモノマーからなり;かつ
それぞれ、前記組成物全体を基準として、成分A)の量が40~99質量%であり、かつ成分B)の量が0.01~3質量%である、前記アミノシランフリーの組成物。
2. 前記イソシアナトシランが、式(I)
OCN-(アルキル)-Si(アルコキシ) (I)
で示される化合物であり、ここで、前記の式(I)中のアルキルが、炭素原子1~4個を有する線状又は分岐状のアルキル基に相当し、かつ前記の式(I)中のアルコキシが、それぞれ互いに独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基に相当し、ここで、式(I)の化合物中の3個のアルコキシ基が、それぞれ同じか又は互いに異なっていてよい、前記実施態様1に記載のアミノシランフリーの組成物。
3. 式(I)の化合物中のアルコキシが、それぞれ互いに独立して、メトキシ基及びエトキシ基から選択される、前記実施態様2に記載のアミノシランフリーの組成物。
4. 前記アルコキシ基は、3個全てのアルコキシ基が同じである場合に、メトキシ基ではない、前記実施態様3に記載のアミノシランフリーの組成物。
5. 前記ヒドロキシ官能性化合物のOH基と前記イソシアナトシランのNCO基との比が、0.8:1~1.2:1である、前記実施態様1から4までのいずれか1つに記載のアミノシランフリーの組成物。
6. 前記スズフリー触媒B)が、アルキルアンモニウムハライド、殊にアルキルアンモニウムフルオリドである、前記実施態様1に記載のアミノシランフリーの組成物。
7. 前記スズフリー触媒B)が、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド又はそれらの混合物である、前記実施態様7に記載のアミノシランフリーの組成物。
8. 前記実施態様1から7までのいずれか1つに記載のアミノシランフリーの組成物を少なくとも含む、アミノシランフリーの1成分(1K)又は2成分(2K)コーティング組成物。
9. 少なくとも1種の助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤及び/又は少なくとも1種の溶剤を含有する、前記実施態様8に記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物。
10. 前記の少なくとも1種の助剤及び/又は少なくとも1種の添加剤が、安定剤、光安定剤、触媒、顔料、レベリング剤又はレオロジー助剤、例えばいわゆる“サグコントロール剤”、ミクロゲル、ヒュームドシリカ、無機又は有機の有色顔料及び/又は効果顔料又はそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、前記実施態様9に記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物。
11. 木材、プラスチック、ガラス又は金属をコーティングするための、前記実施態様8から10までのいずれか1つに記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物の使用。
12. 前記実施態様8から10までのいずれか1つに記載のアミノシランフリーの1K又は2Kコーティング組成物を含有する、コーティング。