(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】装飾フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240702BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20240702BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240702BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240702BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240702BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240702BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20240702BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240702BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B3/14
B05D1/26 Z
B05D7/00 A
B05D7/24 301M
B05D7/24 301T
B05D3/06 Z
B05D1/38
B05D5/00 B
B05D5/06 104B
(21)【出願番号】P 2019136406
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 公二
(72)【発明者】
【氏名】ブラント ユー コルブ
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-022932(JP,A)
【文献】特開2004-325861(JP,A)
【文献】特開2004-249586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0283648(US,A1)
【文献】特開2016-093979(JP,A)
【文献】特開2020-100041(JP,A)
【文献】特開2015-091637(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046568(WO,A1)
【文献】特開2008-087155(JP,A)
【文献】特開2014-240153(JP,A)
【文献】特表2017-524561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/14
B32B 27/00
B05D 1/00-7/26
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、可撓性樹脂層及び独立ドットパターン状ハードコート層を順に含み、
前記可撓性樹脂層が、電離放射線硬化型インクの硬化物であって、該電離放射線硬化型インクは、単官能モノマーが、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、40質量%以上含まれている、前記硬化物を含
み、
前記ハードコート層の独立ドットパターンは、ドットの最大高さが10~100マイクロメートルである、
60度光沢度が、20以下であり、かつ、10%以上の伸び率を有する、装飾フィルム。
【請求項2】
基材フィルム上に、可撓性樹脂層及び独立ドットパターン状ハードコート層を順に含み、
前記可撓性樹脂層が、電離放射線硬化型インクの硬化物であって、該電離放射線硬化型インクは、単官能モノマーが、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、40質量%以上含まれている、前記硬化物を含み、
前記ハードコート層が、ナノシリカ粒子を含む、
60度光沢度が、20以下であり、かつ、10%以上の伸び率を有する、装飾フィルム。
【請求項3】
前記可撓性樹脂層が、非連続印刷層である、請求項1
又は2に記載の装飾フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層の独立ドットパターンは
、ドットの面積円相当径が30~600マイクロメートルである、請求項1
~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層の独立ドットパターンは、ドットの最大高さが1~100マイクロメートルであり、ドットの面積円相当径が30~600マイクロメートルである、請求項2に記載の装飾フィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層の独立ドットパターンは、隣接するドットパターンにおけるドット中心間距離が40~800マイクロメートルである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項7】
前記可撓性樹脂層は、インクジェット印刷層である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項8】
前記可撓性樹脂層が、非連続印刷層であり、かつ、前記非連続印刷層が、融合ドットパターンを含む、請求項
3~
7のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項9】
前記融合ドットパターンは、ドットの面積円相当径が、前記独立ドットパターンの面積円相当径より小さい、請求項
8に記載の装飾フィルム。
【請求項10】
鉛筆硬度が、3B以上である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項11】
前記ハードコート層が、電離放射線硬化型インクの硬化物を含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項12】
前記基材フィルムと前記可撓性樹脂層との間に装飾層を含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項13】
前記ハードコート層が、ナノシリカ粒子を含む、請求項1
及び3~
12のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
【請求項14】
インクジェットプリンターを用いて基材フィルムの上に第1の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して前記インクを硬化させて、可撓性樹脂層を形成する工程であって、前記第1の電離放射線硬化型インクは、単官能モノマーが、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、40質量%以上含まれている、前記工程と、
インクジェットプリンターを用いて前記可撓性樹脂層の上に第2の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して前記インクを硬化させて、独立ドットパターン状ハードコート層を形成する工程
であって、前記ハードコート層の独立ドットパターンは、ドットの最大高さが10~100マイクロメートルである、前記工程と、
を含む、60度光沢度が、20以下である、装飾フィルムの製造方法。
【請求項15】
インクジェットプリンターを用いて基材フィルムの上に第1の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して前記インクを硬化させて、可撓性樹脂層を形成する工程であって、前記第1の電離放射線硬化型インクは、単官能モノマーが、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、40質量%以上含まれている、前記工程と、
インクジェットプリンターを用いて前記可撓性樹脂層の上に第2の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して前記インクを硬化させて、独立ドットパターン状ハードコート層を形成する工程であって、前記ハードコート層が、ナノシリカ粒子を含む、前記工程と、
を含む、60度光沢度が、20以下である、装飾フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の電離放射線硬化型インクが、(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項
14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装飾フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗装に代えて、例えば、表面保護性能を有するフィルムなどが使用されている。
【0003】
特許文献1(特表2017-524561号公報)には、形状適合性剥離性フィルムをベースとした物品であって、第1主表面及び第2主表面を有する形状適合性フィルムと、形状適合性フィルムの第1主表面上の感圧性接着剤層と、形状適合性フィルムの第2主表面の少なくとも一部上の不連続パターン保護層とを含む、物品が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2016-093979号公報)には、基材フィルム上に、ドット群からなるハードコートが形成されていて、各ドットは、硬化性組成物の硬化物であって、且つ各ドットは、該ドットの頭頂面の面積が1×10-6~1mm2であり、ドット群におけるドット中心間距離は10~1000マイクロメートルであり、塗膜1cm2当たりにおけるドット個数は、100~1×106個である、表面保護用フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-524561号公報(国際公開第2015/187770号)
【文献】特開2016-093979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
装飾フィルムの分野においても、近年、表面保護性能が望まれている。例えば、スキージを使用して装飾フィルムを被着体に適用した場合、或いは、装飾フィルムに人又は荷物などがぶつかった場合、装飾フィルムの表面に傷が入ってしまい外観を損なうことがあった。このような傷を防止するために、装飾フィルムの表面にハードコート層が適用される場合がある。しかしながら、このような場合、傷を防止することは可能であるが、例えば、装飾フィルムを曲面又は屈曲部に適用する場合には、伸び特性を呈さないハードコート層においてクラックが発生する場合があった。
【0007】
本開示は、耐擦傷性及び伸び特性を有する装飾フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施態様によれば、基材フィルム上に、可撓性樹脂層及び独立ドットパターン状ハードコート層を順に含む、10%以上の伸び率を有する、装飾フィルムが提供される。
【0009】
本開示の別の実施態様によれば、インクジェットプリンターを用いて基材フィルムの上に第1の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して係るインクを硬化させて、可撓性樹脂層を形成する工程と、インクジェットプリンターを用いて可撓性樹脂層の上に第2の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して係るインクを硬化させて、独立ドットパターン状ハードコート層を形成する工程と、を含む、装飾フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、耐擦傷性及び伸び特性を有する装飾フィルムを提供することができる。
【0011】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は、本開示の一実施態様による装飾フィルムの断面図であり、(b)は、係る装飾フィルムの平面図である。
【
図2】(a)は、本開示の別の実施態様による装飾フィルムの断面図であり、(b)は、係る装飾フィルムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
【0014】
本開示において「フィルム」には、「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0015】
本開示において、例えば、「層が基材フィルムの上に配置される」における「上」とは、層が基材フィルムに直接的に配置されること、又は、層が他の層を介して基材フィルムに間接的に配置されることを意図している。
【0016】
本開示において「独立ドットパターン」とは、隣接するドット同士が接触せずに点在している状態を意図している。
【0017】
本開示において「融合ドットパターン」とは、隣接するドット同士が少なくとも一箇所において、接合している状態を意図している。
【0018】
本開示の「可撓性樹脂層」に関し、「連続印刷層」とは、印刷方法のいかんを問わず、被印刷領域の略全面を連続して当該樹脂層が印刷されている状態の層(連続層)をいう。一方、「非連続印刷層」とは、連続印刷層とは異なり、被印刷領域に対して当該樹脂層が非連続に印刷されている状態の層(非連続層)をいい、例えば、当該樹脂層が形成されている領域の一部に被印刷領域面が露出している状態の層などを挙げることができる。典型的には、上述する「融合ドットパターン」により形成される印刷層の態様を含み、樹脂層が形成されている領域において被印刷領域面の露出面が繰り返し現れる状態をいう。
【0019】
本開示の「インクジェット印刷層」とは、インクジェット印刷で形成された層をいう。
【0020】
本開示において「硬化」には、一般的に「架橋」と呼ばれる概念も包含することができる。
【0021】
本開示において「略」とは、製造誤差などによって生じるバラつきを含むことを意味し、±約20%程度の変動が許容されることを意図する。
【0022】
本開示において「透明」とは、可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、80%以上をいい、望ましくは85%以上、又は90%以上であってよい。
【0023】
本開示において「半透明」とは、可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、80%未満をいい、望ましくは75%以下であってよく、10%以上、又は20%以上であってよく、下地を完全に隠蔽しないことを意図する。
【0024】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0025】
以下、本開示の装飾フィルムについて説明する。
【0026】
本開示の装飾フィルムは、基材フィルム上に、可撓性樹脂層及び独立ドットパターン状ハードコート層を順に含む。独立ドットパターン状のハードコート層を有することで、耐擦傷性を付与できるとともに、可撓性樹脂層上に形成されているハードコート層が独立ドットパターンであるため、クラック等の発生を抑制しながらフィルムの曲げ伸ばしを行うことができる。例えば、10%以上伸張させることが可能な装飾フィルムを得ることができる。
【0027】
本開示の装飾フィルムは、独立ドットパターン状ハードコート層を有している。独立ドットパターン状ハードコート層は、隣接するドット同士が接触せずに点在しているため、係るハードコート層が、曲げられたり、伸ばされたりしても、ハードコート層におけるクラックを低減又は防止することができる。独立ドットパターン状ハードコート層は、後述する可撓性樹脂層に直接配置されてもよく、接合層などを介して間接的に配置されてもよいが、耐擦傷性、生産性の観点から、可撓性樹脂層に直接配置されていることが好ましい。
【0028】
独立ドットパターンは、例えば、エンボス加工、又はインクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などの公知の印刷法を用いて形成することができるが、生産性等の観点から、インクジェット印刷法を用いて形成することが好ましい。独立ドットパターンにおける各ドットは、透明、半透明、又は不透明のいずれであってもよい。
【0029】
ドットの形状については特に制限はない。例えば、装飾フィルムを
図1(b)のように上面から見た場合、形状は、略多角形(例えば、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形)、又は略球形とすることができ、或いは、異形状であってもよい。ドット形状は、
図1に示されるように一種類の形状で構成されてもよく、或いは複数の形状を組み合わせて構成されてもよい。ドット上部の形状についても特に制限はない。例えば、上部形状は、平坦面であってもよく、或いは
図1(a)のような曲面であってもよいが、耐擦傷性の観点から、曲面を有することが好ましい。
【0030】
ドットのパターン形状についても特に制限はない。例えば、
図1(b)のような規則的なパターン形状であってもよく、或いは、不規則なパターン形状であってもよいが、耐擦傷性能のムラを防止する観点から、規則的なパターン形状であることが好ましい。
【0031】
ドット形状の大きさについては特に制限はない。ドット形状の大きさは、例えば、面積円相当径によって規定することができる。面積円相当径とは、例えば、光学顕微鏡で観察したドット形状の投影面積と同じ面積を有する円形状に換算した場合の直径を意図することができる。面積円相当径は、10個以上のドットの平均値と規定することができる。ドット形状の面積円相当径は、耐擦傷性の観点から、30マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、80マイクロメートル以上、又は100マイクロメートル以上とすることができ、600マイクロメートル以下、550マイクロメートル以下、又は500マイクロメートル以下とすることができる。
【0032】
ドットの最大高さについては特に制限はない。例えば、最大高さは、1マイクロメートル以上、5マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、又は10マイクロメートル超とすることができる。耐擦傷性の観点から、最大高さは、15マイクロメートル以上であることが好ましく、20マイクロメートル以上であることがより好ましい。原理は定かではないが、ドットの最大高さが15マイクロメートル以上の場合には、ドットに加わった力によるドットの可撓性樹脂層内への埋没を低減又は防止することができるため、耐擦傷性能がより向上するものと考えている。ドットの最大高さの上限値については特に制限はないが、例えば、100マイクロメートル以下、90マイクロメートル以下、又は80マイクロメートル以下と規定することができる。ここで、ドットの最大高さとは、可撓性樹脂層が連続印刷層である場合には、可撓性樹脂層表面は比較的平坦であるため、ドットの最頂部から可撓性樹脂層まで伸ばした垂線の長さと定義することができ、可撓性樹脂層が非連続印刷層である場合には、ドットの最頂部から、ハードコート層のドットが接触している非連続印刷層の凸部(例えば融合ドットのドット)との接触領域における凸部の最高位の位置を水平に横切る面であって、かつ、装飾フィルムの底面に対して平行な面まで伸ばした垂線の長さと定義することができる。
【0033】
ドットの間隔については特に制限はない。ドットの間隔は、例えば、
図1(b)に示されるようなドットの中心間距離として規定することができる。ここで、ドットの中心間距離とは、例えば、
図1(b)の場合には、左右に隣接するドット間の中心間距離と、対角において隣接するドット間の中心間距離が考えられるが、それらのうちで最小のものを、ドットの中心間距離と定義することができる。つまり、
図1(b)の場合には、左右に隣接するドット間の中心間距離が、ドットの中心間距離に相当する。
【0034】
耐擦傷性の観点から、中心間距離は、40マイクロメートル以上、60マイクロメートル以上、80マイクロメートル以上、又は100マイクロメートル以上とすることができ、800マイクロメートル以下、700マイクロメートル以下、又は600マイクロメートル以下とすることができる。
【0035】
ドットが、例えば、異形状である場合には、ドットの間隔は、ドット間の最小距離及び最大距離で規定することもできる。耐擦傷性の観点から、最小距離は、10マイクロメートル以上、15マイクロメートル以上、又は20マイクロメートル以上とすることができ、300マイクロメートル以下、250マイクロメートル以下、又は200マイクロメートル以下とすることができ、最大距離は、40マイクロメートル以上、60マイクロメートル以上、80マイクロメートル以上、又は100マイクロメートル以上とすることができ、800マイクロメートル以下、700マイクロメートル以下、又は600マイクロメートル以下とすることができる。
【0036】
ドットの単位面積あたりの個数については特に制限はないが、耐擦傷性の観点から、ドットの個数は、例えば、1cm2当たり、10,000個以上、100,000個以上、又は1,000,000個以上とすることができ、625,000,000個以下、500,000,000個、又は300,000,000個以下とすることができる。
【0037】
ハードコート層に含まれる代表的な樹脂として、例えば、電離放射線で硬化可能な硬化性モノマー及び/又は硬化性オリゴマーを重合することで得られる樹脂、ゾルゲルガラスを重合することで得られる樹脂などが挙げられる。具体的な樹脂の例として、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、及びポリビニルアルコールが挙げられる。中でも、耐擦傷性能の観点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0038】
ハードコート層中の樹脂の割合としては、特に制限はなく、例えば、ハードコート層の全質量の、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上とすることができ、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下とすることができる。
【0039】
生産性、耐擦傷性の観点から、ハードコート層は、電離放射線硬化型インクの硬化物を含むことが好ましい。本開示において電離放射線硬化型インクとは、例えば、紫外線、X線、γ線、電子線などの電離放射線によって硬化することが可能なインクを意味する。電離放射線硬化型インクは、単官能及び/又は多官能の(メタ)アクリレートモノマーなどの硬化性モノマー、又は硬化性オリゴマーを含み、任意に、光重合開始剤及び有機溶媒を含有することができる。電子線照射を用いる場合には、光重合開始剤は用いなくてもよい。
【0040】
硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーは、ハードコートの技術分野において公知の硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーを使用することができる。これらは単独で使用してもよく、或いは、2種以上の硬化性モノマーの混合物、2種以上の硬化性オリゴマーの混合物、又は1又は2種以上の硬化性モノマーと1又は2種以上の硬化性オリゴマーとの混合物として使用してもよい。
【0041】
ハードコート層を形成するための電離放射線硬化型インクは、耐擦傷性を得る観点から、二官能以上の多官能モノマーが、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上含まれていることが好ましい。多官能モノマーの上限値については特に制限はないが、例えば、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。
【0042】
電離放射線硬化型インクは、硬化性オリゴマーを、例えば、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、25質量%以下又は20質量%以下配合することができる。硬化性オリゴマーの下限値については特に制限はないが、例えば、0質量%超、又は1質量%以上とすることができる。
【0043】
電離放射線硬化型インクは、単官能モノマーを、例えば、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下配合することができる。単官能モノマーの下限値については特に制限はないが、例えば、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上とすることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、樹脂として、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(例えば、サートマー社(Sartomer Company,Exton,PA)から商品名「SR444」及び「SR295」として入手可能)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(例えば、サートマー社(Sartomer Company,Exton,PA)から商品名「SR399」として入手可能)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネート(例えば、日本化薬株式会社(日本、東京)から商品名「UX-5000」として入手可能)、ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成化学工業株式会社(日本、大阪)から商品名「UV1700B」及び商品名「UB6300B」として入手可能)、トリメチルヒドロキシルジイソシアネート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル・サイテック株式会社(日本、東京)から商品名「Ebecryl 4858」として入手可能)、ポリエチレンオキシド(PEO)改質ビス-Aジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬株式会社(日本、東京)から商品名「R551」として入手可能)、PEO改質ビス-Aエポキシ(メタ)アクリレート(例えば、共栄社化学株式会社(日本、大阪)から商品名「3002M」として入手可能)、シラン系UV硬化性樹脂(例えば、ナガセケムテックス株式会社(日本、大阪)から商品名「SK501M」として入手可能)、及び2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、サートマー社から商品名「SR340」として入手可能);又はこれらの混合物を用いて重合した樹脂が挙げられる。
【0045】
必要に応じて、ハードコート層は、他の硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーでさらに硬化されていてもよい。代表的な硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーとしては、
(a)1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン改質ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン改質ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド改質トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル基を2つ有する化合物;
(b)グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリ(メタ)アクリレート(例えば、プロポキシ化(3)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(5.5)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル基を3つ有する化合物;
(c)ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン改質ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル基を4つ以上有する化合物;
(d)例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのオリゴマー(メタ)アクリル化合物;上記のポリアクリルアミド類似体;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される多官能性(メタ)アクリルモノマー及び多官能性(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。中でも、耐擦傷性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。このような他の硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーは単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0046】
このような化合物は市販されており、少なくともいくつかは、例えば、サートマー社、UCB Chemicals Corporation(Smyrna,GA)、アルドリッチ社(Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI)などから入手可能である。他の有用な(メタ)アクリレートとしては、例えば米国特許第4262072号で報告されるようなヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
耐擦傷性の観点において好ましい硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーは、例えば、少なくとも3つの(メタ)アクリル基を含む。好ましい市販の硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(商品名「SR351」)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(商品名「SR444」及び「SR295」)、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(商品名「SR399」)などのサートマー社から入手可能なものが挙げられる。
【0048】
上述の硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーは、単官能モノマーと混合して使用することもできる。このような単官能モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。このような単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アルキル基が直鎖状又は分岐状であり、炭素原子数が1~22(好ましくは1~18、更には1~12)である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は複数組み合わせて使用することができる。中でも、耐擦傷性の観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
電離放射線硬化型インクに使用される光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等が挙げられる。これら光重合開始剤は、単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0050】
本開示のハードコート層は、本開示の効果を阻害しない範囲において、任意成分として、充填剤、補強材、酸化防止剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料などを含むことができる。
【0051】
ハードコート層中に充填剤を配合すると、耐擦傷性をより向上させることができる。充填剤としては、無機粒子が好ましく、無機ナノ粒子がより好ましい。無機粒子としては、例えば、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、シリカ、ジルコニア、チタニア、フェライトなどの無機酸化物、これらの混合物、又はこれらの混合酸化物;金属バナジン酸塩、金属タングステン酸塩、金属リン酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、及び金属カーバイドなどが挙げられる。これらは単独で又は複数組み合わせて使用することができる。中でも、シリカ粒子が好ましく、ナノシリカ粒子が特に好ましい。
【0052】
無機酸化物のナノ粒子として、無機酸化物ゾルを使用することができる。例えば、ナノシリカ粒子の場合、水ガラス(ケイ酸ナトリウム溶液)を出発原料として得られるシリカゾルを使用することができる。水ガラスから得られるシリカゾルは製造条件によっては非常に狭い粒径分布を有することから、このようなシリカゾルを用いると、ハードコート層におけるナノ粒子の充填率をより正確に制御して、所望の性能を有するハードコート層を得ることができる。
【0053】
ナノ粒子の粒子径(平均粒子径)としては、特に制限はなく、例えば、2nm以上、5nm以上、又は10nm以上とすることができ、1,000nm未満、800nm以下、600nm以下、又は400nm以下とすることができる。平均粒子径は、ナノ粒子がハードコーティング液中に含まれている場合には、動的光散乱法を用いて測定することができ、ナノ粒子がハードコート層中に含まれている場合には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてハードコート層の断面を測定することによって求めることができる。走査型電子顕微鏡を用いる場合には、平均粒子径は、10個以上の粒子の平均値として規定することができる。
【0054】
充填剤の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ハードコート層の全質量の、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上とすることができ、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下とすることができる。或いは、充填剤の配合量は、ハードコート層の全体積の、10体積%以上、20体積%以上、又は30体積%以上とすることができ、95体積%以下、90体積%以下、又は85体積%以下とすることができる。
【0055】
本開示の装飾フィルムは、可撓性樹脂層を有している。可撓性樹脂層は、典型的には、上述したハードコート層よりも柔軟な層であるため、可撓性樹脂層を含む装飾フィルムは、10%以上の伸び率を達成することができる。原理は定かではないが、意外にも、基材フィルムに可撓性樹脂層を適用すると、可撓性樹脂層を含まない構成に比べて伸び率を向上させることができる。また、上述した独立ドットパターン状ハードコート層は、可撓性樹脂層の上に配置されているため、ドットに加わった力は、可撓性樹脂層によって吸収及び緩和させることができる。したがって、本開示の装飾フィルムは、独立ドットパターン状ハードコート層が可撓性樹脂層上に配置されていない構成に比べ、耐擦傷性能をより向上させることができる。
【0056】
可撓性樹脂層の厚さとしては、特に制限はなく、例えば、5マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、又は15マイクロメートル以上とすることができる。ドットに加わった力を吸収及び緩和させる観点から、可撓性樹脂層の厚さは、20マイクロメートル以上であることが好ましく、30マイクロメートル以上であることがより好ましい。厚さの上限値については特に制限はなく、例えば、200マイクロメートル以下、150マイクロメートル以下、又は100マイクロメートル以下とすることができる。ここで、可撓性樹脂層が、
図2のような後述する非連続印刷層である場合の厚さとは、凸部の最頂部から下方に隣接する他の層(例えば
図2(b)では装飾層204)まで伸ばした垂線の長さと定義することができる。
【0057】
可撓性樹脂層は、透明、半透明、又は不透明のいずれであってもよく、
図1に示すような連続印刷層(「可撓性連続印刷樹脂層」又は単に「連続層」という場合がある。)、或いは
図2に示すような非連続印刷層(「可撓性非連続印刷樹脂層」又は単に「非連続層」という場合がある。)であってもよい。可撓性樹脂層が非連続印刷層である場合には、耐擦傷性及び伸び特性に加え、マット性能を付与することができる。
【0058】
可撓性樹脂層が、非連続印刷層である場合、かかる樹脂層には、非連続印刷に伴う凹凸形状が付されている。非連続印刷層は、例えば、層の厚さ方向全体において凹凸形状が付されていてもよく、或いは、層表面を含む厚さ方向の一部において凹凸形状が付されていてもよい。後者の凹凸形状は、例えば、可撓性連続印刷樹脂層を形成した後に、この樹脂層上に非連続的な可撓性樹脂層を別途印刷して凹凸形状を形成することができる。
【0059】
可撓性非連続印刷樹脂層の凹凸形状については特に制限はない。例えば、装飾フィルムを
図2(b)のように上面から見た場合、形状は、略多角形(例えば、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形)、又は略球形とすることができ、或いは、異形状であってもよい。凹凸形状は、
図2に示されるように一種類の形状で構成されてもよく、或いは複数の形状を組み合わせて構成されてもよい。凸部の上部形状についても特に制限はない。例えば、上部形状は、平坦面であってもよく、或いは
図2(a)のような曲面であってもよいが、マット性、光散乱性の観点から、曲面を有していることが好ましい。
【0060】
非連続印刷層における凹凸のパターン形状についても特に制限はない。例えば、
図2(b)のような規則的なパターン形状であってもよく、或いは、不規則なパターン形状であってもよい。凹凸パターンが、上述したハードコート層のように、ドット間の隙間が大きい独立ドットパターンであると、下地(例えば装飾層又は基材フィルム)のグロスの影響を受けやすいため、マット性能が低下する場合がある。したがって、凹凸パターンにおける凸部は、比較的近接していることが好ましい。凸部間の距離は60度光沢度に影響を及ぼすため、60度光沢度の値から凸部間の距離を間接的に規定することができる。
【0061】
凹凸パターンは、例えば、エンボス加工、又はインクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などの公知の印刷法を用いて形成することができるが、生産性、マット性の観点から、インクジェット印刷法を用いて形成することが好ましい。インクジェット印刷法を用いて形成した非連続印刷層の凹凸パターンは、
図2(b)に示されるような融合ドットパターンを構成することができ、マット性能をより向上させることができる。原理は定かではないが、非連続印刷層上に独立ドットパターン状のハードコート層を配置すると、マット性能をより向上させることができる。例えば、融合ドットパターンにおけるドットの面積円相当径が、独立ドットパターンの面積円相当径より小さい場合、或いは、融合ドットパターンにおけるドット間の最小距離及び最大距離が、独立ドットパターンのドット間の最小距離及び最大距離より小さい場合には、マット性能をより一層向上させることができる。
【0062】
例えば、ハードコート層のドットパターンを独立型ではなく融合型にすれば、耐擦傷性に加えてマット性能を発揮することは可能である。しかしながら、このような構成にすると、ドット同士が融合しているため、装飾フィルムを伸ばした場合にクラックが発生し、装飾フィルムの外観を損ねるおそれがある。独立ドットパターン状のハードコート層と可撓性非連続印刷樹脂層とを備える本開示の構成の装飾フィルムは、このようなクラックの発生を低減又は防止することができるとともに、耐擦傷性に加えてマット性能も発揮させることができる。
【0063】
可撓性樹脂層に含まれる樹脂としては、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、及びポリビニルアルコールが挙げられる。中でも、伸び特性、ハードコート層との接着性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0064】
可撓性樹脂層中の樹脂の割合としては、特に制限はなく、例えば、可撓性樹脂層の全質量の、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上とすることができ、100質量%以下、又は100質量%未満とすることができる。
【0065】
生産性の観点から、可撓性樹脂層は、電離放射線硬化型インクの硬化物を含むことが好ましい。電離放射線硬化型インクは、単官能及び/又は多官能の(メタ)アクリレートモノマーなどの硬化性モノマー、又は硬化性オリゴマーを含み、任意に、光重合開始剤及び有機溶媒を含有することができる。電子線照射を用いる場合には、光重合開始剤は用いなくてもよい。
【0066】
硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーは、公知の硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーを用いることができる。これらは単独で使用してもよく、或いは、2種以上の硬化性モノマーの混合物、2種以上の硬化性オリゴマーの混合物、又は1又は2種以上の硬化性モノマーと1又は2種以上の硬化性オリゴマーとの混合物として使用してもよい。
【0067】
可撓性樹脂層を形成するための電離放射線硬化型インクは、可撓性及び伸び特性を得る観点から、単官能モノマーが、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上含まれていることが好ましい。単官能モノマーの上限値については特に制限はないが、例えば、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。
【0068】
電離放射線硬化型インクは、硬化性オリゴマーを、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下配合することができる。硬化性オリゴマーの下限値については特に制限はないが、例えば、0質量%超、5質量%以上、又は10質量%以上とすることができる。
【0069】
電離放射線硬化型インクは、二官能以上の多官能モノマーを、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーの全量の、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下配合することができる。多官能モノマーの下限値については特に制限はないが、例えば、0質量%超、0.5質量%以上、又は0.7質量%以上とすることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、単官能モノマーとして、例えば、単官能(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。このような単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキル基が直鎖状又は分岐状であり、炭素原子数が1~22(好ましくは1~18、更には1~12)である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は複数組み合わせて使用することができる。中でも、伸び特性の観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0071】
いくつかの実施形態では、多官能モノマー及び硬化性オリゴマーとしては、上述したハードコート層で使用される二官能以上の硬化性モノマー及び二官能以上の硬化性オリゴマーを適宜採用することができる。中でも、可撓性樹脂層の伸び特性の観点から、多官能モノマーとしては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましく、硬化性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのオリゴマー(メタ)アクリル化合物が好ましい。
【0072】
電離放射線硬化型インクに使用される光重合開始剤としては、上述したハードコート層で使用される光重合開始剤と同様のものを使用することができる。
【0073】
本開示の可撓性樹脂層は、本開示の効果を阻害しない範囲において、任意成分として、充填剤、補強材、酸化防止剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料などを含むことができる。
【0074】
本開示の装飾フィルムは、基材フィルムを含む。基材フィルムとしては、特に制限はないが、10%以上、15%以上、又は20%以上の伸び率を有する基材フィルムが好ましい。このような基材フィルムを使用すると、可撓性樹脂層と併用した場合に、伸び率をより向上させることができる。基材フィルムの伸び率の上限値については特に制限はないが、例えば、300%以下、250%以下、又は200%以下と規定することができる。
【0075】
例えば、基材フィルムの材料としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素系樹脂を挙げることができる。これらは単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0076】
本開示の基材フィルムの厚さとしては、特に限定されないが、例えば、50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、又は150マイクロメートル以上とすることができる。上限値については特に制限はないが、追従性及び製造コストの観点から、例えば、1ミリメートル以下、700マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、又は300マイクロメートル以下とすることができる。
【0077】
本開示の基材フィルムは、本開示の効果を阻害しない範囲において、任意成分として、充填剤、補強材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料などを含むことができる。
【0078】
本開示の装飾フィルムは、次のものに限定されないが、使用環境、装飾性等に応じて、例えば、装飾層、光輝層、接合層、接着層及び剥離ライナーからなる群から選択される少なくとも一種をさらに備えることができる。
【0079】
本開示の装飾フィルムは、例えば、基材フィルムと可撓性樹脂層との間に、或いは、基材フィルムと接着層との間に、装飾層を配置することができる。装飾層は、例えば、基材フィルムの全面又は一部に、直接又は接合層を介して適用することができる。
【0080】
装飾層としては、次のものに限定されないが、塗装色、例えば、白、黄等の淡色、赤、茶、緑、青、グレー、黒などの濃色を呈するカラー層;木目、石目、幾何学模様、皮革模様などの模様、ロゴ、絵柄などを物品に付与するパターン層;表面に凹凸形状が設けられたレリーフ(浮き彫り模様)層;及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0081】
カラー層の材料としては、次のものに限定されないが、例えば、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料などの顔料が、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などのバインダー樹脂に分散された材料を使用することができる。
【0082】
カラー層は、このような材料を用い、例えば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング法により形成することができ、或いはインクジェット印刷などの印刷法により形成することもできる。
【0083】
パターン層としては、次のものに限定されないが、例えば、模様、ロゴ、絵柄などのパターンを、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷法を用いて、基材フィルム等に直接適用したものを採用してもよく、或いは、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング、打ち抜き、エッチングなどにより形成された模様、ロゴ、絵柄などを有するフィルム、シートなどを使用することもできる。パターン層の材料としては、例えば、カラー層で使用した材料と同様の材料を使用することができる。
【0084】
レリーフ層として、従来公知の方法、例えば、エンボス加工、スクラッチ加工、レーザー加工、ドライエッチング加工、又は熱プレス加工などによる凹凸形状を表面に有する熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。凹凸形状を有する剥離ライナー上に硬化性(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性又は放射線硬化性樹脂を塗布し、加熱又は放射線照射により硬化させて、剥離ライナーを取り除くことによりレリーフ層を形成することもできる。
【0085】
レリーフ層に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系樹脂、PET、PENなどのポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリウレタンなどを使用することができる。レリーフ層は、カラー層で使用される顔料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0086】
本開示の装飾層は、本開示の効果及び装飾性を阻害しない範囲において、任意成分として、充填剤、補強材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒などを含むことができる。
【0087】
装飾層の厚さとしては、要する装飾性、隠蔽性等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、1マイクロメートル以上、3マイクロメートル以上、又は5マイクロメートル以上とすることができ、50マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下、又は15マイクロメートル以下とすることができる。
【0088】
光輝層は、次のものに限定されないが、例えば、基材フィルム又は装飾層の全面若しくは一部に、真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成された、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、白金、クロム、鉄、スズ、インジウム、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどから選択される金属、又はこれらの合金若しくは化合物を含む層であってよい。光輝層の厚さについては、要する装飾性及び輝度等に応じて適宜選択することができる。
【0089】
装飾フィルムを構成する各層を接合するために接合層(「プライマー層」などと呼ばれる場合もある。)を用いてもよい。接合層として、例えば、一般に使用される(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。接合層は、公知のコーティング法などによって適用することができる。
【0090】
接合層の厚さは、例えば、0.05マイクロメートル以上、0.5マイクロメートル以上、又は5マイクロメートル以上とすることができ、100マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下、又は10マイクロメートル以下とすることができる。
【0091】
装飾フィルムは、被着体に装飾フィルムを貼り付けるための接着層をさらに含んでもよい。接着層の材料としては、接合層の材料と同様のものを使用することができる。接着層は、装飾フィルムではなく被着体に対して適用してもよい。
【0092】
接着層の厚さは、次のものに限定されないが、例えば、5マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、又は20マイクロメートル以上とすることができ、200マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、又は80マイクロメートル以下とすることができる。
【0093】
本開示の接合層及び接着層は、本開示の効果及び装飾性を阻害しない範囲において、任意成分として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、粘着付与剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料などを含むことができる。
【0094】
接着層を保護するために、任意の好適な剥離ライナーを使用することができる。代表的な剥離ライナーとして、紙(例えば、クラフト紙)、ポリマー材料(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなど)などから調製されるものが挙げられる。剥離ライナーは、必要に応じてシリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤の層が適用されていてもよい。
【0095】
剥離ライナーの厚さは、例えば、5マイクロメートル以上、15マイクロメートル以上、又は25マイクロメートル以上とすることができ、300マイクロメートル以下、200マイクロメートル以下、又は150マイクロメートル以下とすることができる。
【0096】
本開示の装飾フィルムの厚さは、次のものに限定されないが、例えば、120マイクロメートル以上、150マイクロメートル以上、200マイクロメートル以上、又は250マイクロメートル以上とすることができ、2ミリメートル以下、1ミリメートル以下、又は500マイクロメートル以下とすることができる。ここで、装飾フィルムの厚さとは、装飾フィルムの独立ドットパターン状ハードコート層の最頂部から装飾フィルムの底辺まで伸ばした垂線の長さと定義することができる(但し、剥離ライナーが存在する場合には、該剥離ライナーの厚さを除く。)。
【0097】
装飾フィルムの厚さが上記範囲であると、曲面形状等の複雑な形状を有する被着体に対しても装飾フィルムを十分に追従させて、優れた外観を提供することができる。
【0098】
本開示の装飾フィルムは、例えば以下に示す性能を呈することができる。
【0099】
本開示の装飾フィルムは耐擦傷性を呈することができる。この耐擦傷性は、後述する実施例において記載される鉛筆硬度試験によって評価することができる。
【0100】
本開示の装飾フィルムは、3B以上又は2B以上の鉛筆硬度を有することができる。鉛筆硬度の上限値については特に制限はないが、例えば、6H以下、5H以下、又は4H以下と規定することができる。
【0101】
本開示の装飾フィルムの耐擦傷性は、後述する実施例において記載されるテーバー摩耗試験による耐摩耗性によっても評価することができる。
【0102】
本開示の装飾フィルムは、500回以上、750回以上、又は1,000回以上の耐摩耗性を有することができる。耐摩耗性の上限値については特に制限はないが、例えば、10,000回以下、8,000回以下、又は6,000回以下と規定することができる。
【0103】
本開示の装飾フィルムは優れた伸び特性を呈することができる。この伸び特性は、後述する実施例において記載される伸び試験による伸び率(破断伸び率)によって評価することができる。
【0104】
本開示の装飾フィルムは、10%以上、15%以上、又は20%以上の伸び率を有することができる。伸び率の上限値については特に制限はないが、例えば、200%以下、175%以下、又は150%以下と規定することができる。
【0105】
本開示の装飾フィルムは、可撓性樹脂層が、非連続印刷層である場合には、当該非連続印刷層の凹凸の存在によりマット性能(艶消し性能)を呈することができる。係るマット性能は、後述する実施例において記載される60度光沢度試験によって評価することができる。
【0106】
当該非連続印刷層を備える本開示の装飾フィルムは、20以下、15以下、10以下、7.5以下、又は5.0以下の60度光沢度を有することができる。60度光沢度の下限値については特に制限はないが、例えば、1.0以上、1.5以上、又は2.0以上と規定することができる。
【0107】
本開示の装飾フィルムは、伸び特性を有しているため、例えば、曲面部材、柱などの屈曲部材に対して追従させることができるとともに、耐擦傷性を有している。したがって、本開示の装飾フィルムは、形状追従性を伴う内装及び/又は外装用途、例えば、各種乗物又は建築物の内装用(例えば、車のインストルメントパネル、建物内の壁紙)、パソコン、スマートフォン、携帯電話、冷蔵庫、エアコンなどの電化製品、文具、家具、机などの外装用として使用することができる。可撓性非連続印刷樹脂層を備える装飾フィルムは、マット性能も有しているため、壁紙用として好適に使用することができる。
【0108】
本開示の装飾フィルムの製造方法の一例について、
図1、2を参照しながら例示的に説明するが、装飾フィルムの製造方法はこれらに限られない。
【0109】
図1及び
図2の構成の装飾フィルムは、例えば、基材フィルム(102、202)上に、公知の印刷法を用いて装飾層(104、204)を適用し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化工程を更に適用する。次いで、得られた装飾層(104、204)の上に、インクジェットプリンターを用いて第1の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射してインクを硬化させて、可撓性樹脂層(106、206)を形成する。この可撓性樹脂層(106、206)の上に、インクジェットプリンターを用いて第2の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射してインクを硬化させて、独立ドットパターン状ハードコート層(108、208)を形成して、装飾フィルム(110、210)を得ることができる。インクジェットプリンターを用いるインクの適用は、1回又は2回以上実施してもよい。
【実施例】
【0110】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0111】
本実施例で使用した商品などを以下の表1に示す。
【0112】
【0113】
表1に示す材料を表2に示す配合割合で混合し、可撓性樹脂層及びハードコート層を作製するための透明インクを各々作製した。ここで、表2における数値は全て質量部を意味する。
【0114】
【0115】
実施例1及び2並びに比較例1~3では、装飾フィルムの耐擦傷性及び伸び特性を評価した。
【0116】
〈実施例1〉
インクジェットプリンター(インクジェットヘッドKM1024iLMHB、720×720dpi、コニカミノルタ株式会社、日本国東京都千代田区)及びLUS200インクを用い、厚さ約90マイクロメートルの基材フィルム(3M(商標)スコッチカル(商標)グラフィックフィルムIJ180Cv3-10XR)上に、CMYKのカラーバーからなる装飾層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約90mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して厚さ約10マイクロメートルの装飾層を調製した。得られた装飾層上に、インクジェットプリンター及び可撓性樹脂用透明インク(F1)を用いて可撓性連続印刷樹脂層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約410mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して厚さ約50マイクロメートルの可撓性連続印刷樹脂層を調製した。次いで、可撓性連続印刷樹脂層上に、インクジェットプリンター及びハードコート用透明インク(H1)を用いて独立ドットパターン状ハードコート層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約410mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して装飾フィルムを得た。ここで、ドットの面積円相当径は約205マイクロメートルであり、ドット中心間距離は約566マイクロメートルであり、ドットの最大高さは約61マイクロメートルであった。
【0117】
〈実施例2〉
ドットの面積円相当径が約300マイクロメートル、ドット中心間距離が約500マイクロメートル、ドットの最大高さが約30マイクロメートルとなるようにして独立ドットパターン状ハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の装飾フィルムを調製した。
【0118】
〈比較例1〉
独立ドットパターン状ハードコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の装飾フィルムを調製した。
【0119】
〈比較例2〉
実施例1と同様にして装飾層を調製し、この装飾層上に、インクジェットプリンター及びハードコート用透明インク(H1)を用いてハードコート層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約410mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して厚さ約60マイクロメートルの平坦なハードコート層を形成して装飾フィルムを得た。
【0120】
〈比較例3〉
実施例1と同様にして装飾層を調製し、この装飾層上に、インクジェットプリンター及びハードコート用透明インク(H1)を用いて独立ドットパターン状ハードコート層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約410mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して装飾フィルムを得た。ここで、ドットの面積円相当径は約205マイクロメートルであり、ドット中心間距離は約566マイクロメートルであり、ドットの最大高さは約61マイクロメートルであった。
【0121】
〈物性評価試験1〉
装飾フィルムの特性を、以下の方法を用いて評価した。ここで、鉛筆硬度試験及び摩耗試験は、装飾フィルムの耐擦傷性能に関する指針となる。
【0122】
(伸び試験)
装飾フィルムを1インチ×4インチの大きさにカットして試験片を調製した。JIS K 7127に準拠し、試験片のギャップが5cmとなるように引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)に試験片を設置して装飾フィルムの破断伸び率を測定した。その結果を表3及び表4に示す。
【0123】
(鉛筆硬度試験)
1mm厚のアルミニウム板に装飾フィルムを貼り合わせ、JIS K5600-5-4に準拠して、荷重1,000gの条件で装飾フィルムの鉛筆硬度を評価した。その結果を表3及び表4に示す。
【0124】
(摩耗試験)
100mm×100mm×1mmのサイズのアルミニウム板に、装飾フィルムを貼り合わせて試験片を調製した。JIS K 7204に準拠し、テーバー摩耗試験機(テスター産業株式社製、日本国埼玉県入間郡)に試験片を設置し、摩耗輪CS-17、750g荷重の条件で摩耗試験を実施した。250回転毎に試験片の外観を目視観察し、装飾層が消失するまで試験を実施した。表3に示す値は、目視観察で装飾層が消失していたときの回転数である。
【0125】
【0126】
実施例3及び4並びに比較例4及び5では、装飾フィルムの耐擦傷性及び伸び特性に加え、マット性能も評価した。
【0127】
〈実施例3〉
実施例1と同じインクジェットプリンター及びLUS200インクを用い、実施例1と同じ基材フィルム上に黒色のカラーバーからなる装飾層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約90mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して厚さ約10マイクロメートルの装飾層を調製した。得られた装飾層上に、インクジェットプリンター及び可撓性樹脂用透明インク(F1)を用いて可撓性連続印刷樹脂層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約410mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して厚さ約60マイクロメートルの可撓性連続印刷樹脂層を調製した。次いで、得られた可撓性連続印刷樹脂層の上に、インクジェットプリンター及び可撓性樹脂用インク(F1)を用いて、融合ドットパターンを6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約410mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して厚さ15マイクロメートルの可撓性非連続印刷樹脂層を調製した。ここで、融合ドットパターンは、インクジェットプリンターにおけるデジタルデータを、ドット直径が100マイクロメートル、ドット中心間距離が175マイクロメートルに設定して調製した。デジタルデータでは、ドット同士は融合していないが、インクジェットプリンターによって可撓性連続印刷樹脂層に着弾した透明インクは、デジタルデータのドットよりも拡がるため、実際のドットは、隣接するドットの少なくとも一箇所において融合していた。
【0128】
次いで、得られた可撓性非連続印刷樹脂層上に、インクジェットプリンター及びハードコート用透明インク(H2)を用いて独立ドットパターン状ハードコート層を6パスで印刷した。メタルハライドランプを用い、1パス当たり約410mJ/cm2の照射量で紫外線を照射して装飾フィルムを得た。ここで、ドットの面積円相当径は約130~約205マイクロメートルであり、ドット中心間距離は約225マイクロメートルであり、ドットの最大高さは約12マイクロメートルであった。
【0129】
〈実施例4〉
ドットの面積円相当径が約360~440マイクロメートル、ドット中心間距離が約550マイクロメートル、ドットの最大高さが約28マイクロメートルとなるようにして独立ドットパターン状ハードコート層を調製したこと以外は、実施例3と同様にして実施例4の装飾フィルムを調製した。
【0130】
〈比較例4〉
独立ドットパターン状ハードコート層及び融合ドットパターンを形成しなかったこと以外は、実施例3と同様にして比較例4の装飾フィルムを調製した。
【0131】
〈比較例5〉
独立ドットパターン状ハードコート層を形成しなかったこと以外は、実施例3と同様にして比較例5の装飾フィルムを調製した。
【0132】
〈物性評価試験2〉
装飾フィルムのマット性能に関し、以下の60度光沢度試験を用いて評価した。
【0133】
(60度光沢度試験)
装飾フィルムの60度光沢度を、JIS Z8741に準拠した、村上色彩研究所製のポータブル光沢計GMX-202で測定した。光沢度の測定は3点で行い、平均値をもって代表値とした。
【0134】
【0135】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0136】
100、200 装飾フィルム
102、202 基材フィルム
104、204 装飾層
106 可撓性樹脂層(連続印刷層)
206 可撓性樹脂層(不連続印刷層)
108、208 独立ドットパターン状ハードコート層
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目20]に記載する。
[項目1]
基材フィルム上に、可撓性樹脂層及び独立ドットパターン状ハードコート層を順に含む、10%以上の伸び率を有する、装飾フィルム。
[項目2]
前記可撓性樹脂層が、連続印刷層である、項目1に記載の装飾フィルム。
[項目3]
前記可撓性樹脂層が、非連続印刷層である、項目1に記載の装飾フィルム。
[項目4]
前記ハードコート層の独立ドットパターンは、ドットの最大高さが1~100マイクロメートルであり、ドットの面積円相当径が30~600マイクロメートルである、項目1~3のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目5]
前記ハードコート層の独立ドットパターンは、隣接するドットパターンにおけるドット中心間距離が40~800マイクロメートルである、項目1~4のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目6]
前記可撓性樹脂層は、インクジェット印刷層である、項目1~5のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目7]
前記非連続印刷層が、融合ドットパターンを含む、項目3~6のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目8]
前記融合ドットパターンは、ドットの面積円相当径が、前記独立ドットパターンの面積円相当径より小さい、項目7に記載の装飾フィルム。
[項目9]
鉛筆硬度が、3B以上である、項目1~8のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目10]
60度光沢度が、20以下である、項目1~9のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目11]
前記可撓性樹脂層及び前記ハードコート層が、電離放射線硬化型インクの硬化物を含む、項目1~10のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目12]
前記基材フィルムと前記可撓性樹脂層との間に装飾層を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目13]
前記ハードコート層が、(メタ)アクリル系樹脂を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目14]
前記ハードコート層が、ナノシリカ粒子を含む、項目1~13のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目15]
前記可撓性樹脂層が、(メタ)アクリル系樹脂を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目16]
接着層をさらに含む、項目1~15のいずれか一項に記載の装飾フィルム。
[項目17]
インクジェットプリンターを用いて基材フィルムの上に第1の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して前記インクを硬化させて、可撓性樹脂層を形成する工程と、
インクジェットプリンターを用いて前記可撓性樹脂層の上に第2の電離放射線硬化型インクを適用し、電離放射線を照射して前記インクを硬化させて、独立ドットパターン状ハードコート層を形成する工程と、
を含む、装飾フィルムの製造方法。
[項目18]
前記可撓性樹脂層が、非連続印刷層であり、かつ、融合ドットパターンを含む、項目17に記載の方法。
[項目19]
前記ハードコート層の独立ドットパターンは、隣接するドットパターンにおけるドット中心間距離が、40~800マイクロメートルである、項目17又は18に記載の方法。
[項目20]
前記第1及び第2の電離放射線硬化型インクが、(メタ)アクリレートモノマーを含む、項目17~19のいずれか一項に記載の方法。