(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】弁、油圧システム、建設機械及び移動弁体
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20240702BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20240702BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20240702BHJP
F16K 3/26 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16K17/04 A
F15B11/02 F
F16K51/00 B
F16K3/26 A
(21)【出願番号】P 2019219596
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】三上 晃右
(72)【発明者】
【氏名】山本 良宏
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223497(JP,A)
【文献】特開2010-121726(JP,A)
【文献】米国特許第7566044(US,B1)
【文献】登録実用新案第3145693(JP,U)
【文献】特開平6-58442(JP,A)
【文献】特開平4-125369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/00-17/168
F16K 3/00-3/36
F15B 11/00-11/22
F16K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと、
前記収容空間に収容され、所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた前記作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体と、を備え
、
前記移動弁体は、前記作動流体を排出する排出口を有するとともに、前記収容空間に通じる流路を有し前記流路の上流側にフィルタを備え、
前記移動弁体は、前記フィルタよりも上流側に前記所定以上の圧力が加わったとき、前記収容空間内を移動する、
弁。
【請求項2】
前記移動弁体が移動した際に前記流路より上流側から前記排出口より下流側に通じるバイパス流路に設けられた他のフィルタを備える、
請求項
1に記載の弁。
【請求項3】
作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと、
前記収容空間に収容され、所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた前記作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体と、を備え、
前記移動弁体は、
前記作動流体を排出する排出口を有するとともに、前記収容空間に通じる流路を有し前記流路の上流側にフィルタを備え
、
前記移動弁体が移動した際に前記流路より上流側から前記排出口より下流側に通じるバイパス流路に設けられた他のフィルタを備える、
弁。
【請求項4】
前記収容空間に嵌め込まれて前記移動弁体の前記収容空間内の動作範囲を規制するプラグを備える、
請求項1から
3のうちいずれか1項に記載の弁。
【請求項5】
駆動源となるエンジンと、
前記エンジンに駆動され作動流体を流通させる油圧ポンプと、
前記作動流体の圧力により動作対象を駆動する複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータの動作を切り替える比例電磁弁と、
前記比例電磁弁の上流側に取り付けられ前記作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと、前記収容空間に収容され所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた前記作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体とを備える弁と、
前記作動流体を貯蔵するタンクと、
前記作動流体の圧力調整のためのリリーフ弁と、を備え
、
前記移動弁体は、前記作動流体を排出する排出口を有するとともに、前記収容空間に通じる流路を有し前記流路の上流側にフィルタを備え、
前記移動弁体は、前記フィルタよりも上流側に前記所定以上の圧力が加わったとき、前記収容空間内を移動する、
油圧システム。
【請求項6】
駆動源となるエンジンと、前記エンジンに駆動され作動流体を流通させる油圧ポンプと、前記作動流体の圧力により動作対象を駆動する複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータの動作を切り替える比例電磁弁と、前記比例電磁弁の上流側に取り付けられ前記作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと前記収容空間に収容され所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた前記作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体とを備える弁と、前記作動流体を貯蔵するタンクと、前記作動流体の圧力調整のためのリリーフ弁と、を備える油圧システムと、
前記油圧システムにより動作する旋回体と、
前記旋回体を回転自在に支持し前記油圧システムにより駆動されて走行する走行体と、を備え
、
前記移動弁体は、前記作動流体を排出する排出口を有するとともに、前記収容空間に通じる流路を有し前記流路の上流側にフィルタを備え、
前記移動弁体は、前記フィルタよりも上流側に前記所定以上の圧力が加わったとき、前記収容空間内を移動する、
建設機械。
【請求項7】
ハウジング内に設けられた作動流体を収納する収容空間に収容され、
前記作動流体を排出する排出口を有するとともに、前記収容空間に通じる流路を有し前記流路の上流側にフィルタを備え、
前記フィルタよりも上流側に所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御の自動化に適用される弁、油圧システム、建設機械及び移動弁体に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の油圧回路は、コントロールバルブに比例電磁弁を有するものが増えつつある。比例電磁弁は、ソレノイドによって発生させた小さな推力や、小径のスプールの圧力対抗で作動させるような精密な部品で構成されているため、比例電磁弁内に異物(コンタミネーション)が侵入しないように比例電磁弁の上流側に異物を捕獲するためのフィルタが設けられる。例えば、特許文献1参照に記載された技術によれば、フィルタの濾過メッシュの目のサイズを小さくし、電磁弁を保護しつつ、フィルタの目詰まりを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、比例電磁弁内への異物の混入を防止するためにフィルタの目を細かくすると、低温時に作動流体の粘性が大きくなり、作動流体がフィルタを通過する際に作動流体の圧力損失が発生する。そのため、低温時で作動流体の粘性が高い場合や、比例電磁弁を急激に動作させるような操作や、電磁弁のON/OFFの切替え時に比例電磁弁にフィルタの部分で作動流体が滞留し、応答の遅れが発生する虞がある。
【0005】
本発明は、比例電磁弁の応答の遅れを低減することができる弁、油圧システム、建設機械及び移動弁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る弁は、作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと、前記収容空間に移動自在に収容され、所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体と、を備える。
【0007】
このように構成することで、低温時で作動流体の粘性が高い場合や、比例電磁弁を急激に動作させるような操作や、電磁弁のON/OFFの切替え時に移動弁体に所定値以上の圧力が加わった場合、作動流体が流路の途中で停滞しても移動弁体が移動することにより、畜油空間に蓄えられた作動流体が下流側に供給されるため、比例電磁弁の応答の遅れを低減することができる。
【0008】
上記構成であって、前記移動弁体は、前記作動流体を排出する排出口を有するようにしてもよい。
【0009】
このように構成することで、移動弁体が移動するのに従って排出口から作動流体を排出させることができる。
【0010】
上記構成であって、前記移動弁体は、前記収容空間に通じる流路を有し前記流路の上流側にフィルタを備えるようにしてもよい。
【0011】
このように構成することで、フィルタの目を細かくして異物の捕獲性能を向上する共に、比例電磁弁の応答の遅れを低減することができる。
【0012】
上記構成であって、前前記移動弁体が移動した際に前記流路より上流側から前記排出口より下流側に通じるバイパス流路に設けられた他のフィルタを備えるようにしてもよい。
【0013】
このように構成することで、畜油空間から下流側に作動流体が供給されるのに加えて、バイパス流路からも他のフィルタを通過した作動流体が下流側に供給されるため、比例電磁弁の応答の遅れを更に低減することができる。
【0014】
上記構成であって、前記収容空間に嵌め込まれて前記移動弁体の前記収容空間内の動作範囲を規制するプラグを備えるようにしてもよい。
【0015】
このように構成することで、少ない部品点数で摺動自在な移動弁体を有する弁体を実現することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る弁は、作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと、前記収容空間に収容され、所定値以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた作動流体を前記収容空間外に排出する排出口を有し、前記収容空間に通じる流路を有し前記流路の上流側にフィルタを備える移動弁体と、前記収容空間に嵌め込まれて前記移動弁体の前記収容空間内の動作範囲を規制するプラグと、を備える、弁である。
【0017】
このように構成することで、低温時で作動流体の粘性が高い場合や、比例電磁弁を急激に動作させるような操作や、電磁弁のON/OFFの切替え時に移動弁体に所定値以上の圧力が加わり作動流体が停滞した場合、作動流体が流路の途中で停滞しても移動弁体が移動することにより、畜油空間に蓄えられた作動流体が下流側に供給されるため、比例電磁弁の応答の遅れを低減することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る油圧システムは、駆動源となるエンジンと、前記エンジンに駆動され作動流体を流通させる油圧ポンプと、前記作動流体の圧力により動作対象を駆動する複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータの動作を切り替える比例電磁弁と、前記比例電磁弁の上流側に取り付けられ前記作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと、前記収容空間に収容され所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた前記作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体とを備える弁と、前記作動流体を貯蔵するタンクと、前記作動流体の圧力調整のためのリリーフ弁と、を備える油圧システムである。
【0019】
このように構成することで、油圧システムは、低温時で作動流体の粘性が高い場合等に移動弁体に所定値以上の圧力が加わり作動流体が停滞した場合、移動弁体が移動することにより、畜油空間に蓄えられた作動流体が下流側に供給されるため、比例電磁弁の応答の遅れを低減することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る建設機械は、駆動源となるエンジンと、前記エンジンに駆動され作動流体を流通させる油圧ポンプと、前記作動流体の圧力により動作対象を駆動する複数のアクチュエータと、前記複数のアクチュエータの動作を切り替える比例電磁弁と、前記比例電磁弁の上流側に取り付けられ前記作動流体を収納する収容空間を有するハウジングと前記収容空間に収容され所定以上の圧力が加わり前記作動流体が停滞した場合前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた前記作動流体を前記収容空間外に排出する移動弁体とを備える弁と、前記作動流体を貯蔵するタンクと、前記作動流体の圧力調整のためのリリーフ弁と、を備える油圧システムと、前記油圧システムにより動作する旋回体と、前記旋回体を回転自在に支持し前記油圧システムにより駆動されて走行する走行体と、を備える、建設機械である。
【0021】
このように構成することで、低温時で作動流体の粘性が高い場合や、比例電磁弁を急激に動作させるような操作や、電磁弁のON/OFFの切替え時に移動弁体に所定値以上の圧力が加わった場合、作動流体が流路の途中で停滞しても移動弁体が移動することにより、畜油空間に蓄えられた作動流体が下流側に供給されるため、比例電磁弁の応答の遅れを低減し操作に対して応答が速い建設機械を実現することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る移動弁体は、ハウジング内に設けられた作動流体を収納する収容空間に収容され、所定以上の圧力が加わった場合、前記収容空間内を移動し前記収容空間内に蓄えられた作動流体を前記収容空間外に排出する。
【0023】
このように構成することで、少ない部品点数で摺動自在な移動弁体をを実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電気制御化に対応する油圧システムの構成を簡略化することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態における建設機械の概略構成図。
【
図2】本発明の実施形態における油圧システムの構成図。
【
図4】本発明の実施形態における弁体に作動流体が流入する状態を示す図。
【
図5】本発明の実施形態における弁体のピストンが移動する状態を示す図。
【
図6】本発明の実施形態における弁体の変形例を示す図。
【
図7】本発明の実施形態における弁体の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(建設機械)
図1に示されるように、建設機械100は、例えば油圧ショベルである。建設機械100は、旋回体101と、走行体102とを備えている。旋回体101は、走行体102の上に旋回可能に設けられている。旋回体101には、油圧システム1が設けられている。
【0028】
旋回体101は、操作者が搭乗可能な運転席103と、運転席103の近くで旋回体101に一端が揺動自在に連結されているブーム104と、ブーム104のキャブ103とは反対側の他端(先端)に揺動自在に一端が連結されているアーム105と、アーム105のブーム104とは反対側の他端(先端)に揺動自在に連結されているバケット106と、を備えている。また、キャブ103内には、油圧システム1が設けられている。この油圧システム1から供給される作動流体によって、キャブ103、ブーム104、アーム105、及びバケット106が駆動される。
【0029】
(油圧システム)
図2に示されるように、油圧システム1は、駆動源となるエンジン120と、エンジン120に駆動される油圧ポンプ130と、建設機械100の各部を動作させる複数のアクチュエータ140と、複数のアクチュエータ140の動作を切り替える油圧制御弁150と、作動流体を貯蔵するタンク160と、圧力調整のためのリリーフ弁300とを備える。
【0030】
エンジン120は、ガソリンやディーゼル燃料を用いた内燃機関である。エンジン120は、出力軸121を備え、出力軸121は、油圧ポンプ130に連結されている。油圧ポンプ130には、配管Qが接続されている。油圧ポンプ130は、出力軸121に駆動されて配管Qに作動流体を流通させる。配管Qには油圧制御弁150が接続されている。
【0031】
油圧制御弁150には、複数のアクチュエータ140が分岐した配管Qを介して接続されている。油圧制御弁150は、複数個設けられており、配管Qに流通する作動流体の油圧を複数のバルブで切り替えて複数のアクチュエータ140に作動流体を供給する。複数のアクチュエータ140は、キャブ103、ブーム104、アーム105、及びバケット106等を駆動する。リリーフ弁300は、油圧システム1の油圧回路内において流路の圧力が予め設定された所定値以上となった場合に圧力を開放する。
【0032】
油圧制御弁150には操作者の操作に基づいたパイロットポンプPからの作動流体が比例電磁弁170を通して供給される。比例電磁弁170の上流側には、後述の弁200が設けられている。図示するように、油圧システム1は、パイロットポンプPを2個備えているが、パイロットポンプPは、1個を共有する構成であってもよい。
【0033】
次に、比例電磁弁170の上流側に設けられる弁200について説明する。
【0034】
図3に示されるように、弁200は、異物を捕獲するフィルタFを備え、比例電磁弁への異物の侵入を防止する。弁200は、作動流体の圧力の値に応じて移動するピストン201(移動弁体)と、ピストン201を収容するハウジング220とを備える。ハウジング220は、油圧システム1の筐体として一体に形成されていてもよいし、別体として形成されていてもよい。
【0035】
ピストン201は、有頂の筒状に形成されている。ピストン201は、筒状の胴部202を備える。胴部202は、一端を閉塞するように頂面203を備える。胴部202及び頂面203により、ピストン201の内部は空洞201Sが形成されている。ピストン201の胴部202には、空洞201Sと連通する排出口206が軸線Lと直交方向に向かって形成されている。排出口206は、後述の下流側の流路224に接続されている。
【0036】
頂面203は、胴部202の一端から他端側に向かって所定幅の円柱状に形成されている。頂面203には、ピストン201の軸線L方向に沿って作動流体が流通する流路204が形成されている。流路204は、貫通孔に形成されている。流路204の一端側には、流路204の径よりも大きくなるように段差205が形成されている。段差205には、作動流体の異物を捕獲するフィルタFが設けられている。
【0037】
フィルタFは、上流側の後述する流路233から空洞201Sに流入する作動流体に混入している異物を濾過する。上記構成により、ピストン201は、フィルタFを介して流路204から排出口206に作動流体を流通させる。
【0038】
ピストン201は、ハウジング220に形成された収容空間221にリターンスプリングSを介して挿入される。ハウジング220は、リターンスプリングSで付勢されたピストン201を移動自在に収容する。リターンスプリングSは、ピストン201を収容空間の開口方向に向かって付勢している。リターンスプリングSは、ピストン201の空洞201S内に挿入される。
【0039】
収容空間221は、ピストン201を収容する円形の空洞に形成されている。収容空間221の径は、ピストン201の外形よりも若干大きい径で形成されている。作動流体は、収容空間221とピストン201との間の隙間から収容空間221内に侵入し得るが、この隙間は非常に小さくここから進入する異物は、フィルタFで捕獲される異物よりも小さいので、比例電磁弁170に侵入しても問題とならない。
【0040】
収容空間221は、軸線L方向の長さ方向においてピストン201を収容する空間に加えて作動流体を蓄えるための畜油空間223が形成されている。収容空間221には、ピストン201の排出口206に対応する位置に径が拡大されるように段差222が形成されている。段差222は、ピストン201が軸線L方向にストロークしても排出口206と連通するように軸線L方向に幅を持って形成されている。
【0041】
収容空間221には、段差222に連通して流路224が接続されている。流路224は、比例電磁弁170に連通している。収容空間221の一端側は開口221Aが形成され、他端側は閉塞した畜油空間223が形成されている。開口221Aにはネジ山221Bが形成されている。開口221A側には、開口221Aを覆うように供給プラグ230が嵌め込まれている。
【0042】
供給プラグ230は、円筒形に形成されている。供給プラグ230の一端側は、ネジ山221Bに螺合するネジ山231が形成されている。供給プラグ230は、開口221Aに螺入された際にハウジング220に固定されるように段差232が形成されている。供給プラグ230は、リターンスプリングSで付勢されたピストン201を押し込みながら開口221Aに螺入され、段差232がハウジング220に当接すると、ピストン201をハウジング220の収容空間221に閉じ込める。
【0043】
これにより、ピストン201は、収容空間221内において頂面203が供給プラグ230側に当接するようにリターンスプリングSに付勢され、ピストン201に外力が加わるとリターンスプリングSが縮む方向に摺動する。このようにして、供給プラグ230は、ピストン201の収容空間221内の動作範囲を規制する。即ち供給プラグ230により、ピストン201が位置決めされる。このように、供給プラグ230は、少ない部品点数で摺動自在なピストン201を有する弁200を実現することができる。
【0044】
供給プラグ230の他端側には、軸線L方向に沿って流路233の入口234が形成されている。流路233は、貫通孔に形成されている。流路233の上流側には、流路233の径よりも大きい径で入口234が形成されている。流路233の下流側には、流路233の径よりも大きい径で拡大部235が形成されている流路233は、フィルタFを介して流路204に作動流体を流通させる。
【0045】
次に、弁200の動作について説明する。
【0046】
図4に示されるように、供給プラグ230の外部から流路233に作動流体が流入する際に、低温時で作動流体の粘性が高い場合や、比例電磁弁170を急激に動作させるような操作や比例電磁弁170のON/OFFの切替え等が発生した場合、流路233内を流通する作動流体はフィルタFで圧力損失が発生し、作動流体がフィルタFを通過しきれずにフィルタF部分で停滞する。フィルタF部分で停滞した作動流体により、フィルタF部分において圧力が高まる。
【0047】
図5に示されるように、作動流体の圧力が所定値以上となった場合、ピストン201は、リターンスプリングSが縮む方向に移動する。ピストン201が移動すると、ピストン201は、収容空間221において畜油空間223からピストン201が移動した体積分の作動流体を排出口206から流路224に排出させる。流路233に流入する作動流体の流通が通常状態に戻ると、作動流体がフィルタFを通過するようになり、ピストン201に加わる圧力が所定値未満となる。そうすると、ピストン201は、リターンスプリングSに供給プラグ230の方向に押し戻される。作動流体はフィルタFを介して空洞201Sに流入し、排出口206から排出され、下流側の流路224に流入する。
【0048】
上述したように、弁200によれば、比例電磁弁170を急激に動作させるような操作等が発生してフィルタFにおいて作動流体の圧力損失が発生した場合でも、ピストン201が移動して畜油空間223に蓄えられた作動流体を流路224に流入させ、比例電磁弁170に滞りなく作動流体を供給し比例電磁弁170の応答の遅れを低減することができる。
【0049】
[変形例]
図6に示されるように、弁200にバイパス流路250が設けられていてもよい。バイパス流路250は、ピストン201の頂面203近傍から流路224に接続されている。バイパス流路250の途中には、フィルタFと異なる他のフィルタF1が設けられている。ピストン201が移動すると、バイパス流路250と流路233が接続されると共に、作動流体が流路233からバイパス流路250を介して下流側の流路224に短絡されて流出する。バイパス流路250を有する弁200によれば、畜油空間223に蓄えられた作動流体が下流側の流路224に供給されるのに加えて、バイパス流路250からも作動流体が供給されるので、比例電磁弁170の応答の遅れを低減することができる。
【0050】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。上記実施形態では作動流体が作動油である油圧システムを例示したが、実施形態に係る弁は油圧で作動するものの他、アルコール、水、燃料が作動流体として用いられる液圧システムに適用してもよい。上記実施形態では、ピストン201の排出口206に対応する位置に径が拡大されるように段差222が形成されている構成を例示したが、
図7に示されるように、段差222は、ピストン201の外周側に形成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…油圧システム、100…建設機械、101…旋回体、102…走行体、103…キャブ、104…ブーム、105…アーム、106…バケット、120…エンジン、121…出力軸、130…油圧ポンプ、140…アクチュエータ、150…油圧制御弁、160…タンク、170…比例電磁弁、200…弁、201…ピストン(移動弁体)、201S…空洞、202…胴部、203…頂面、204…流路、205…段差、206…排出口、220…ハウジング、221…収容空間、221A…開口、221B…ネジ山、222…段差、223…畜油空間、224…流路、230…供給プラグ、231…ネジ山、232…段差、233…流路、234…入口、235…拡大部、250…バイパス流路、300…リリーフ弁、F…フィルタ、F1…フィルタ、L…軸線、P…パイロットポンプ、Q…配管、S…リターンスプリング