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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】トイレットペーパー
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20240702BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20240702BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A47K10/16 A
D21H27/00 F
D21H27/30 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019239725
(22)【出願日】2019-12-27
(62)【分割の表示】P 2018563184の分割
【原出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020054874
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-06-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2017128581
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】藁科 真一
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】有家 秀郎
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-287725(JP,A)
【文献】特表2006-524093(JP,A)
【文献】米国特許第4671983(US,A)
【文献】特表2009-528928(JP,A)
【文献】特開2003-70678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K10/16
D21H27/00
D21H27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エンボスが形成された第1シートと、第2エンボスが形成された第2シートとが、ネステッド形式で一体化されており、
前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の第1曲線上に並び、
前記正弦波形状の周期が150mm~250mmであり、
前記正弦波形状の振幅が35~45mmであり、
前記第1エンボスの第1エンボス凸部の頂部の各面積および前記第2エンボスの第2エンボス凸部の頂部の各面積の少なくともいずれかが、1.0~1.4mm であり、
前記第1エンボス凸部の頂部の面積率および前記第2エンボス凸部の頂部の面積率の少なくともいずれかが、7~10%であり、
前記第1エンボス凸部の高さおよび前記第2エンボス凸部の高さの少なくともいずれかが、1.1~1.7mmである、トイレットペーパー。
【請求項2】
前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第1曲線と平行な正弦波形状の第2曲線上に並ぶ、請求項1に記載のトイレットペーパー。
【請求項3】
前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第1曲線と交差する正弦波形状の第3曲線上に並ぶ、請求項1に記載のトイレットペーパー。
【請求項4】
前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第1曲線と平行な正弦波形状の第2曲線上に並び、
前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第3曲線と平行な正弦波形状の第4曲線上に並ぶ、請求項3に記載のトイレットペーパー。
【請求項5】
前記第1エンボスの第1エンボス凸部の側面は、前記第1シートから前記第1エンボス凸部の頂部に向かって、前記第1エンボス凸部の頂部の面積が前記第1エンボス凸部に対応する第1エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜しており、
前記第2エンボスの第2エンボス凸部の側面は、前記第2シートから前記第2エンボス凸部の頂部に向かって、前記第2エンボス凸部の頂部の面積が前記第2エンボス凸部に対応する第2エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜している、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトイレットペーパー。
【請求項6】
前記第1エンボスの第1エンボス凸部の側面は、前記第1シートから前記第1エンボス凸部の頂部に向かって、前記第1エンボス凸部の頂部の面積が前記第1エンボス凸部に対応する第1エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜しており、
前記第2エンボスの第2エンボス凸部の側面は、前記第2シートから前記第2エンボス凸部の頂部に向かって、前記第2エンボス凸部の頂部の面積が前記第2エンボス凸部に対応する第2エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜しており、
前記第1エンボス凸部の側面および前記第2エンボス凸部の側面の各傾斜角度が60~80°である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトイレットペーパー。
【請求項7】
500gf/cm荷重下での圧縮強度が5.0gf・cm/cm以上ある、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトイレットペーパー。
【請求項8】
50gf/cm荷重下での圧縮率が70%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトイレットペーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトイレットペーパーは、エンボス加工が施された複数枚の原紙を重ね合せた構造を備えるものが知られている。また、シャワートイレの普及により、このようなトイレットペーパーには、丈夫であること(堅牢性)と高い吸水性が求められるようになっている。
【0003】
例えば、特許第6021532号(特許文献1)には、デザインラミネートと呼ばれる積層構造を備えるトイレットペーパーが開示されている。このトイレットペーパーでは、色素成分を配合した接着剤で原紙を貼り合わせることで意匠性が付与されている。
【0004】
また、特公平6-28951号公報(特許文献2)には、ティップ トゥ ティップ(Tip To Tip)形式の積層構造を備えるトイレットペーパーが開示されている。このトイレットペーパーでは、図6図8に示すように、エンボスが形成された2枚の原紙(クレープ紙10、20)間でエンボス凸部(凸エンボス32、42)の頂部同士(頂部33、43)が接着され、エンボス凸部が形成されない部分(非エンボス部11、21)同士が対向することで空間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6021532号公報
【文献】特公平6-28951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の意匠性が付与されたトイレットペーパーでは、原紙間が接着部により貼り合わされているだけであり、十分な強度が得られない。また、原紙間に十分な空間が形成されないため、吸水性に限界がある。また、ティップ トゥ ティップ形式の積層構造を有するトイレットペーパーでは、原紙間に形成される空間が広いため、厚み方向に潰れ易く、吸収した水分を十分に保持できない。そのため、従来のトイレットペーパーは、堅牢性と吸水性は必ずしも高いものではない。
【0007】
本発明の課題は、堅牢性、吸水性に優れたトイレットペーパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1エンボスが形成された第1シートと、第2エンボスが形成された第2シートとが、ネステッド形式で一体化されており、前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の第1曲線上に並ぶ、トイレットペーパーを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、堅牢性、吸水性に優れるトイレットペーパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るトイレットペーパーを示す図である。
図2】本実施形態に係るトイレットペーパー(第1実施形態)を構成するクレープ紙を示す図である。
図3図2をY方向に視た斜視図である。
図4図2をX方向に視た斜視図である。
図5】本実施形態に係るトイレットペーパー(第2実施形態)を構成するクレープ紙を示す図である。
図6】従来のティップ トゥ ティップ形式で形成したトイレットペーパーを構成するクレープ紙(比較例1)を示す図である。
図7図6の一部(TT1部分)を拡大した断面斜視図である。
図8図6の一部(TT2部分)を拡大した断面斜視図である。
図9】ティップ トゥ ティップ形式で形成したトイレットペーパーを構成するクレープ紙において、正弦波形状の曲線上にエンボスを配置したもの(参考例1)を示す図である。
図10】ネステット形式で形成したトイレットペーパーを構成するクレープ紙(参考例2)を示す図である。
図11図10の一部(NT1部分)を拡大した断面斜視図である。
図12図10の一部(NT2部分)を拡大した断面斜視図である。
図13】デザインラミネート形式で形成したトイレットペーパーを構成するクレープ紙(参考例3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の態様は、第1エンボスが形成された第1シートと、第2エンボスが形成された第2シートとが、ネステッド形式で一体化されており、前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の第1曲線上に並ぶ、トイレットペーパーである。
【0012】
第1の態様では、第1エンボスの一部および/または第2エンボスの一部が正弦波形状の第1曲線上に並ぶように、第1シートと第2シートとをネステッド形式で一体化することにより、トイレットペーパーの強度を高くすることができ、厚み方向に潰れ難くすることができる。また、このような構成により、拭き取られた水分をトイレットペーパーに保持することができる。そのため、第1の態様によれば、丈夫で(堅牢性に優れ)、吸水性に優れるトイレットペーパーを得ることができる。また、第1の態様では、第1エンボスの一部および第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の第1曲線上に配置されるため、従来にない意匠性をトイレットペーパーに付与することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第1曲線と平行な正弦波形状の第2曲線上に並ぶ、トイレットペーパーである。第2の態様では、第1エンボスの一部および/または第2エンボスの一部が、第1曲線と平行な正弦波形状の第2曲線上にも配置されているため、堅牢性と吸水性を高めながら、トイレットペーパーに付与される意匠性を高めることができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第1曲線と交差する正弦波形状の第3曲線上に並ぶ、トイレットペーパーである。第3の態様では、第1エンボスの一部および/または第2エンボスの一部が、第1曲線と交差する正弦波形状の第3曲線上にも配置されているため、堅牢性、吸水性をさらに高めながら、トイレットペーパーに付与される意匠性をさらに高めることができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第1曲線と平行な正弦波形状の第2曲線上に並び、前記第1エンボスの一部および前記第2エンボスの一部の少なくともいずれかが、前記第3曲線と平行な正弦波形状の第4曲線上に並ぶ、トイレットペーパーである。
【0016】
第4の態様では、第1エンボスの一部および/または第2エンボスの一部が、第1曲線と平行な正弦波形状の第2曲線上に配置され、第3曲線と平行な正弦波形状の第4曲線上にも配置されるため、堅牢性、吸水性に優れるトイレットペーパーを確実に得ることができる。また、付与される意匠性を確実に高めることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記正弦波形状の振幅が10~60mmである、トイレットペーパーである。第1乃至第4曲線のうち少なくとも1つの曲線の正弦波形状の振幅を10~60mmにすることにより、堅牢性、吸水性を確実に高めながら、トイレットペーパーに付与される意匠性を確実に高めることができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、前記正弦波形状の周期が50mm~300mmである、トイレットペーパーである。第1乃至第4曲線のうち少なくとも1つの曲線の正弦波形状の周期をこのような範囲にすることにより、堅牢性、吸水性を確実に高めながら、トイレットペーパーに付与される意匠性を確実に高めることができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、前記第1エンボスの第1エンボス凸部の頂部の各面積および前記第2エンボスの第2エンボス凸部の頂部の各面積の少なくともいずれかが、0.8~1.5mmである、トイレットペーパーである。第7の態様では、第1エンボスの第1エンボス凸部の頂部の各面積および/または第2エンボスの第2エンボス凸部の頂部の各面積をこのような範囲にすることにより、各シートがエンボス凸部によって支えられる。これにより、第1エンボス凸部、第2エンボス凸部は潰れ難くなるため、トイレットペーパーの厚み方向の強度を高くすることができる。
【0020】
本発明の第8の態様は、前記第1エンボスの第1エンボス凸部の頂部の面積率および前記第2エンボスの第2エンボス凸部の頂部の面積率の少なくともいずれかが、5~10%である、トイレットペーパーである。
【0021】
第8の態様では、第1エンボスの第1エンボス凸部の頂部の面積率および/または第2エンボスの第2エンボス凸部の頂部の面積率をこのような範囲にすることにより、ネステッド形式で一体化されたシート間でエンボス凸部同士が干渉するのを防ぐことができる。これにより、シート間にエンボス凸部が存在しない空間(以下、非エンボス空間という)を形成することができる。そのため、第8の態様によれば、嵩高く、潰れ難いトイレットペーパーを得ることができる。
【0022】
さらに、第8の態様では、第1エンボス凸部の頂部の面積率および/または第2エンボス凸部の頂部の面積率をこのような範囲にすることにより、エンボス凸部とシートとの接着面積を小さくすることができる。そのため、第8の態様によれば、シート間の接着部分の存在によりトイレットペーパーが固くなる(柔軟性がなくなる)のを低減することができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、前記第1エンボスの第1エンボス凸部の頂部の各面積および前記第2エンボスの第2エンボス凸部の頂部の各面積の少なくともいずれかが、0.8~1.5mmであり、前記第1エンボス凸部の頂部の面積率および前記第2エンボス凸部の頂部の面積率の少なくともいずれかが、5~10%であり、前記第1エンボス凸部の高さおよび前記第2エンボス凸部の高さの少なくともいずれかが1.0mm~1.7mmである、トイレットペーパーである。
【0024】
第9の態様では、第1エンボスの第1エンボス凸部の頂部の各面積および/または第2エンボスの第2エンボス凸部の頂部の各面積を上述の範囲にし、第1エンボス凸部の頂部の面積率および/または第2エンボス凸部の頂部の面積率を上述の範囲にし、第1エンボス凸部の高さおよび/または第2エンボス凸部の高さを上述の範囲にすることにより、厚み方向の強度を維持しながら、シート間に形成される非エンボス空間を大きくすることができる。そのため、第9の態様によれば、嵩高さ、潰れ難さをより高めることができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、前記第1エンボスの第1エンボス凸部の側面は、前記第1シートから前記第1エンボス凸部の頂部に向かって、前記第1エンボス凸部の頂部の面積が前記第1エンボス凸部に対応する第1エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜しており、前記第2エンボスの第2エンボス凸部の側面は、前記第2シートから前記第2エンボス凸部の頂部に向かって、前記第2エンボス凸部の頂部の面積が前記第2エンボス凸部に対応する第2エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜している、トイレットペーパーである。
【0026】
第10の態様では、第1のエンボスおよび第2のエンボスでエンボス凸部の頂部の面積がエンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるようにエンボス凸部の側面が傾斜しているため、シート間でエンボス凸部同士が干渉するのを確実に防ぐことができる。これにより、トイレットペーパーの嵩高さをさらに高めることができる。
【0027】
また、第10の態様では、シート間に形成される非エンボス空間がより大きくなるため、トイレットペーパーはさらに潰れ難くなる。さらに、エンボス凸部とシートとの接着面積をより小さくすることができるため、接着部分によってトイレットペーパーが固くなるのをより低減することができる。
【0028】
本発明の第11の態様は、前記第1エンボスの第1エンボス凸部の側面は、前記第1シートから前記第1エンボス凸部の頂部に向かって、前記第1エンボス凸部の頂部の面積が前記第1エンボス凸部に対応する第1エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜しており、前記第2エンボスの第2エンボス凸部の側面は、前記第2シートから前記第2エンボス凸部の頂部に向かって、前記第2エンボス凸部の頂部の面積が前記第2エンボス凸部に対応する第2エンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるように傾斜しており、前記第1エンボス凸部の側面および前記第2エンボス凸部の側面の各傾斜角度が60~80°である、トイレットペーパーである。
【0029】
第11の態様では、第1のエンボスおよび第2のエンボスでエンボス凸部の頂部の面積がエンボス凹部の開口部の面積よりも小さくなるようにエンボス凸部の側面を傾斜させ、さらに、第1エンボス凸部の側面および第2エンボス凸部の側面の各傾斜角度をこのような範囲にすることにより、トイレットペーパーの嵩高さと、潰れ難さを高く維持しながら、接着部分により固くなるのをさらに低減することができる。
【0030】
本発明の第12の態様は、500gf/cm荷重下での圧縮強度が5.0gf・cm/cm以上ある、トイレットペーパーである。第12の態様では、500gf/cm荷重下での圧縮強度がこのような範囲のトイレットペーパーとすることにより、さらにトイレットペーパーの強度を高くすることができるため、トイレットペーパー100の堅牢性を確実に高くすることができる。また、500gf/cm荷重下での圧縮強度がこのような範囲に含まれるトイレットペーパーは圧縮され易いため、柔らかいトイレットペーパーが得られる。
【0031】
本発明の第13の態様は、50gf/cm荷重下での圧縮率が70%以下である、トイレットペーパーである。第13の態様では、50gf/cm荷重下での圧縮率が70%以下のトイレットペーパーとすることにより、嵩高く、潰れ難いトイレットペーパーを確実に得ることができる。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す説明では、理解を容易にするため、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、本明細書では、各図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係るトイレットペーパーを示し、図2は、本実施形態に係るトイレットペーパー(第1実施形態)を構成するクレープ紙を示す図である。図3は、トイレットペーパー100をY方向に視た斜視図であり、図4は、トイレットペーパー100をX方向に視た斜視図である。
【0034】
図1に示すトイレットペーパー100は、本発明に係るトイレットペーパーの一例である。このトイレットペーパー100は、図示しない分断用のミシン目線が適宜の間隔で配置された帯状のトイレットペーパーを紙管PTに巻き付けたロールタイプのトイレットペーパーである。トイレットペーパーの形態は、本実施形態で用いられるロールタイプに限定されず、ピックアップ式、ポップアップ式等と称される枚葉のトイレットペーパーが折畳み積層された積層タイプ等を用いることができる。
【0035】
トイレットペーパー100は、クレープ紙10とクレープ紙20とを有する。クレープ紙10、20は、シートの抄紙工程において抄紙機のドライヤーの出口で、ドクターブレードと呼ばれる刃を当てることにより表面に細かいシワが形成された紙である。なお、クレープ紙10は、本発明のトイレットペーパーを構成する第1シートの一例であり、クレープ紙20は、本発明のトイレットペーパーを構成する第2シートの一例である。
【0036】
クレープ紙10、20には、パルプを主原料とする原紙が用いられる。原紙のパルプ組成は、トイレットペーパーにおける通常の組成を用いることができる。例えば、パルプの配合割合を90質量%以上とすることができ、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。
【0037】
クレープ紙10、20におけるパルプ組成は、特に限定されないが、例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプとを適宜の比率で使用することができる。例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプの比は、30:70~80:20にすることができる。
【0038】
また、クレープ紙10、20には、JIS P 8124(1998)を基準とする所定の坪量(また米坪)を有する紙が用いられる。所定の坪量は、限定されないが、トイレットペーパーの柔軟性、水解性、拭き取り性等の観点から、10~25g/mの範囲にすることができ、好ましくは、12~20g/mの範囲にすることができる。
【0039】
図2図4に示すように、クレープ紙10は、エンボス部30と、非エンボス部11とを有する。非エンボス部11は、クレープ紙10においてエンボス部30に囲まれ、かつエンボス部30が形成されない部分を示す。
【0040】
エンボス部30は、凹エンボス31と凹エンボス31に対応する凸エンボス32とで構成されている。そして、凹エンボス31と凸エンボス32とは、クレープ紙10の表裏に複数形成されている(図2図4参照)。なお、エンボス部30、凹エンボス31および凸エンボス32は、本発明のトイレットペーパーを構成する第1シートに形成される第1エンボス、第1エンボス凹部および第1エンボス凸部の一例である。
【0041】
エンボス部30において、凹エンボス31の開口部35、凹エンボス31の底部36、および凸エンボス32の頂部33は、いずれも平面視で四角形状を有する(図2図4参照)。また、凹エンボス31の開口部35の四角形状と凸エンボス32の頂部33の四角形状とは相似形の関係にある。なお、凸エンボス32の頂部33は、凹エンボス31の底部36に対応する。これにより、凸エンボス32の形状は、切頭四角錐の形状を有するものとなっている。なお、凸エンボス32の形状は、切頭四角錐の形状に限定されるものではなく、切頭三角錐、切頭円錐等の形状を有していても良い。
【0042】
凹エンボス31は、スチールラバー式等のエンボス付与方法により、図示しない凸エンボスロールをラバーロールとの間でクレープ紙10に押し付けることにより、エンボス凹部としてクレープ紙10の一方の面上に形成される。一方、凸エンボス32は、凹エンボス31に対応するエンボス凸部としてクレープ紙10の他方の面上に形成される。
【0043】
クレープ紙20は、エンボス部40と、非エンボス部21とを有する。非エンボス部21は、クレープ紙20においてエンボス部40に囲まれ、かつエンボス部40が形成されない部分を示す。
【0044】
エンボス部40は、図2図4に示すように、凹エンボス41と凹エンボス41に対応する凸エンボス42とで構成されている。そして、凹エンボス41と凸エンボス42とは、クレープ紙20の表裏に複数形成されている。なお、エンボス部40、凹エンボス41および凸エンボス42は、本発明のトイレットペーパーを構成する第2シートに形成される第2エンボス、第2エンボス凹部および第2エンボス凸部の一例である。
【0045】
エンボス部40において、凹エンボス41の開口部45、凹エンボス41の底部46、および凸エンボス42の頂部43は、いずれも平面視で四角形状を有する。また、凹エンボス41の開口部45の四角形状と凸エンボス42の頂部43の四角形状とは相似形の関係にある。なお、凸エンボス42の頂部43は、凹エンボス41の底部46に対応する。これにより、凸エンボス42の形状は、切頭四角錐の形状を有するものとなっている。なお、凸エンボス42の形状は、切頭四角錐の形状に限定されるものではなく、切頭三角錐、切頭円錐等の形状を有していても良い。
【0046】
凹エンボス41は、スチールラバー式等のエンボス付与方法により、図示しない凸エンボスロールをラバーロールとの間でクレープ紙20に押し付けることによって、エンボス凹部としてクレープ紙20の一方の面上に形成される。一方、凸エンボス42は、凹エンボス41に対応するエンボス凸部としてクレープ紙20の他方の面上に形成される。
【0047】
なお、図2図4に示す実施形態では、クレープ紙10のエンボス部30の凸エンボス32とクレープ紙20のエンボス部40の凸エンボス42とは、同じ形状になっているが、クレープ紙10のエンボス部30の凸エンボス32とクレープ紙20のエンボス部40の凸エンボス42とを異なる形状にしてもよい。
【0048】
本実施形態のトイレットペーパー100では、エンボス部30が形成されたクレープ紙10とエンボス部40が形成されたクレープ紙20とが、クレープ紙10の凸エンボス32の形成面とクレープ紙20の凸エンボス42の形成面とをネステッド形式で対面させて一体化されている。具体的には、図2図4に示すように、クレープ紙10の凸エンボス32は、クレープ紙20の非エンボス部21(凸エンボス42が設けられていない部分)に対向して配置されている。一方、クレープ紙20の凸エンボス42は、クレープ紙10の非エンボス部11(凸エンボス32が設けられていない部分)に対向して配置されている。
【0049】
また、クレープ紙20の凸エンボス42の頂部43は、クレープ紙10の非エンボス部11に対して、図示しない接着剤により接着されている。クレープ紙20の凸エンボス42の頂部43とクレープ紙10の非エンボス部11とを接着させることにより、2枚のクレープ紙10とクレープ紙20との接着部分を、一方のクレープ紙(クレープ紙10)側にバランスよく配置することができる。そのため、クレープ紙10とクレープ紙20との間で固くなり易い接着部分を少なくすることができ、しかもその接着部分をクレープ紙10とクレープ紙20との間に分散して配置することができる。
【0050】
なお、接着剤には、積層構造を有するトイレットペーパーに使用される公知の接着剤を用いることができる。このような接着剤の主成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0051】
なお、本実施形態では、クレープ紙10の凸エンボス32の頂部33は、クレープ紙20の非エンボス部21に対して接着されていない。しかしながら、クレープ紙20の凸エンボス42の頂部43とクレープ紙10の非エンボス部11とを接着する代わりに、クレープ紙10の凸エンボス32の頂部33とクレープ紙20の非エンボス部21とを接着してもよい。また、クレープ紙20の凸エンボス42の頂部43をクレープ紙10の非エンボス部11に接着し、かつクレープ紙10の凸エンボス32の頂部33をクレープ紙20の非エンボス部21に接着してもよい。
【0052】
図1乃至図4に示すように、トイレットペーパー100では、エンボス部30の一部およびエンボス部40の一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の曲線SC1上に並んで配置されている。本明細書において、正弦波形状の曲線とは、一定の周期(波長)および振幅を持つ正弦曲線(サインカーブ)またはシヌソイドを意味する。また、正弦波形状の曲線は、トイレットペーパー上に示される仮想の曲線である。曲線SC1は、図1乃至図4のY方向(ロールタイプのトイレットペーパー100が引き出される方向)に延びている。この曲線SC1は、本発明のトイレットペーパーにおける第1曲線の一例である。
【0053】
図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、曲線SC1上にクレープ紙10のエンボス部30の一部が配置されている。これにより、エンボス部30の一部は、曲線SC1に沿って正弦波形状に並んで配置されている。なお、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC1上にエンボス部30の一部のみが配置される構成に限定されない。すなわち、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC1上にエンボス部40の一部のみが配置されていてもよく、また、曲線SC1上にエンボス部30の一部およびエンボス部40の一部のいずれもが配置される構成としてもよい。
【0054】
また、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、エンボス部30は全て正弦波形状の曲線SC1上に並んで配置されているが、この構成に限定されるものではない。したがって、エンボス部30の一部およびエンボス部40の一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の曲線SC1上に並んで配置されていればよく、他のエンボス部30の一部およびエンボス部40の一部は、正弦波形状の曲線でない、例えば一部が直線状または見かけ上の直線上に配置されていても良い。
【0055】
図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、エンボス部30の一部が正弦波形状の曲線SC1上に並ぶように、クレープ紙10とクレープ紙20とがネステッド形式で一体化されている。これにより、トイレットペーパー100の強度を高くすることができ、しかもトイレットペーパー100は厚み方向に潰れ難くなる。また、このような構成により、拭き取られた水分はトイレットペーパー100に保持され易くなる。このように、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100は、堅牢性、吸水性に優れるものとなる。
【0056】
また、ロールタイプのトイレットペーパー100を使用する際に、トイレットペーパー100が図示しないホルダーから引き出されるときに、正弦波形状に配置されたエンボス部30が揺らぎ模様を示すことができる。そのため、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100は、使用者に立体的、視覚的な柔らかさを想起させることができ、従来にない意匠性を示すことができる。
【0057】
さらに、エンボス部30の一部が正弦波形状の曲線SC1上に並ぶように、クレープ紙10とクレープ紙20とをネステッド形式で一体化する場合、正弦波形状のエンボス部30に対応する凸エンボスロールの部分とラバーロールの部分が直線状に並ばないため、凸エンボスロール面がラバーロール面に対して同じ位置に当たるのを防ぐことができる。そのため、凸エンボスロールとラバーロールの摩耗を低減することができる。
【0058】
また、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、エンボス部30の一部およびエンボス部40の一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の曲線SC2上に並んで配置されている。曲線SC2は、正弦波形状の曲線SC1と平行な曲線である。すなわち曲線SC1に対して、曲線SC2が所定の間隔をあけて配置されている。曲線SC2も、曲線SC1と同様に、図2乃至図4のY方向に延びている。この曲線SC2は、本発明のトイレットペーパーにおける第2曲線の一例である。
【0059】
図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、曲線SC2上にクレープ紙20のエンボス部40の一部が配置されている。これにより、エンボス部30の一部が曲線SC1に沿って正弦波形状に並んで配置された状態で、エンボス部40の一部が、曲線SC1と平行な曲線SC2に沿って正弦波形状に並んで配置されている。
【0060】
なお、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC2上にエンボス部40の一部のみが配置される構成に限定されない。すなわち、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC2上にエンボス部30の一部のみが配置されていてもよく、また、曲線SC2上にエンボス部30の一部およびエンボス部40の一部のいずれもが配置される構成としてもよい。
【0061】
このように、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100は、エンボス部30の一部を曲線SC1に沿って正弦波形状に並べて配置し、かつエンボス部40の一部を曲線SC1と平行な曲線SC2に沿って正弦波形状に並べで配置することにより、トイレットペーパー100の堅牢性、吸水性を高めながら、トイレットペーパー100に付与される意匠性を高めることができる。
【0062】
また、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、エンボス部30の一部およびエンボス部40の一部の少なくともいずれかが、正弦波形状の曲線SC3上に並んで配置されている。曲線SC3は、正弦波形状の曲線SC1と交差する曲線である。曲線SC1と曲線SC3が交差する態様は任意である。図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、曲線SC1と曲線SC3が1カ所で交差する態様になっている。曲線SC3は、図2乃至図4のX方向に延びている。この曲線SC3は、本発明のトイレットペーパーにおける第3曲線の一例である。
【0063】
図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、曲線SC3上にエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とが交互に並んで配置されている。これにより、エンボス部30の一部が曲線SC1に沿って正弦波形状に並んで配置された状態で、他のエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とが、曲線SC1と交差する曲線SC3に沿って正弦波形状に交互に並んで配置されている。なお、曲線SC1の曲線SC3が交差する部分では、エンボス部30の一部および/またはエンボス部40の一部が共通するエンボス部として配置されていても良い。
【0064】
なお、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC3上にエンボス部30の一部およびエンボス部40の一部のいずれもが配置される構成に限定されない。すなわち、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC3上にエンボス部30の一部のみが配置されていてもよく、また、曲線SC3上にエンボス部40の一部のみが配置される構成としてもよい。
【0065】
このように、エンボス部30の一部を曲線SC1に沿って正弦波形状に並べて配置し、かつ、他のエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とを、曲線SC1と交差する曲線SC3に沿って正弦波形状に交互に並べで配置することにより、堅牢性、吸水性をさらに高めながら、トイレットペーパーの意匠性をさらに高めることができる。
【0066】
また、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、エンボス部30の一部およびエンボス部40の一部の少なくともいずれかが、曲線SC1と平行な正弦波形状の曲線SC2上に並んで配置され、かつ、エンボス部30の一部および他のエンボス部40の一部の少なくともいずれかが、曲線SC3と平行な正弦波形状の曲線SC4上に並んで配置されている。
【0067】
曲線SC4は、曲線SC3と平行であり、かつ曲線SC1および曲線SC2のいずれにも交差する正弦波形状の曲線である。曲線SC4は、曲線SC3と同様に、図2乃至図4のX方向に延びている。この曲線SC4は、本発明のトイレットペーパーにおける第4曲線の一例である。
【0068】
図2乃至図4に示すトイレットペーパー100では、曲線SC4上にエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とが交互に並んで配置されている。これにより、曲線SC1と曲線SC2とのいずれにも交差する曲線SC3に沿ってエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とが正弦波形状に交互に並んで配置された状態で、他のエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とが、曲線SC3と平行な曲線SC4に沿って正弦波形状に交互に並んで配置されている。
【0069】
なお、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC4上にエンボス部30の一部およびエンボス部40の一部のいずれもが配置される構成に限定されない。すなわち、トイレットペーパー100の構成は、曲線SC4上にエンボス部30の一部のみが配置されていてもよく、また、曲線SC4上にエンボス部40の一部のみが配置される構成としてもよい。
【0070】
このように、図2乃至図4に示すトイレットペーパー100は、エンボス部30の一部を曲線SC1に沿って正弦波形状に並べて配置し、かつエンボス部40の一部が曲線SC1と平行な曲線SC2に沿って正弦波形状に並べて配置し、さらにエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とを曲線SC1および曲線SC2とに交差する曲線SC3および曲線SC3と平行な曲線SC4に沿って正弦波形状に交互に並べて配置することにより、堅牢性、吸水性を確実に高めながら、意匠性を確実に高めることができる。
【0071】
また、図5は、本実施形態に係るトイレットペーパー(第2実施形態)を構成するクレープ紙を示す図である。図5に示すトイレットペーパー100では、クレープ紙10のエンボス部30の一部およびクレープ紙20のエンボス部40の一部のいずれもが曲線SC1上に配置されている。これにより、エンボス部30の一部およびエンボス部40の一部は、曲線SC1に沿って、正弦波形状に交互に並んで配置されている。
【0072】
図5に示すように、クレープ紙10のエンボス部30の一部およびクレープ紙20のエンボス部40の一部を曲線SC1上に交互に配置することにより、トイレットペーパー100の強度を高くすることができ、しかもトイレットペーパー100は厚み方向に潰れ難くなる。また、このような構成により、拭き取られた水分はトイレットペーパー100に保持され易くなる。そのため、図5に示すトイレットペーパー100は、丈夫で(堅牢性に優れ)、潰れ難く、吸水性に優れるものとなる。
【0073】
また、図5に示すトイレットペーパー100を使用する際に、ロールタイプのトイレットペーパー100が図示しないホルダーから引き出されるときに、正弦波形状に交互に配置されたエンボス部30及びエンボス部40が揺らぎ模様を示すことができる。そのため、図5に示すトイレットペーパー100も、使用者に立体的、視覚的な柔らかさを想起させることができ、従来にない意匠性を示すことができる。
【0074】
図5に示すトイレットペーパー100では、曲線SC1と平行な曲線SC2上にクレープ紙10のエンボス部30の一部およびクレープ紙20のエンボス部40の一部が配置されている。これにより、エンボス部30の一部とエンボス部40の一部とが曲線SC1に沿って正弦波形状に交互に並んで配置された状態で、他のエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とが、曲線SC1と平行な曲線SC2に沿って正弦波形状に交互に並んで配置されている。
【0075】
このように、図5に示すトイレットペーパー100では、エンボス部30の一部とエンボス部40の一部とを曲線SC1に沿って正弦波形状に交互に並べて配置し、かつ他のエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とを曲線SC1と平行な曲線SC2に沿って正弦波形状に交互に並べて配置することにより、堅牢性、吸水性を高くしながら、意匠性を高めることができる。
【0076】
また、図5に示すトイレットペーパー100では、曲線SC3上にエンボス部30の一部が並んで配置されている。これにより、エンボス部30の一部およびエンボス部40の一部が曲線SC1に沿って正弦波形状に交互に並んで配置された状態で、他のエンボス部30の一部が、曲線SC1と交差する曲線SC3に沿って正弦波形状に並んで配置されている。
【0077】
このように、エンボス部30の一部とエンボス部40の一部とを曲線SC1に沿って正弦波形状に交互に並べて配置し、かつ、他のエンボス部30の一部を、曲線SC1と交差する曲線SC3に沿って正弦波形状に並べで配置することにより、堅牢性、吸水性をさらに高めながら、トイレットペーパーの意匠性をさらに高めることができる。
【0078】
また、図5に示すトイレットペーパー100では、曲線SC4上にエンボス部40の一部が並んで配置されている。これにより、曲線SC1と曲線SC2とのいずれにも交差する曲線SC3に沿ってエンボス部30の一部が正弦波形状に並んで配置された状態で、エンボス部40の一部が、曲線SC3と平行な曲線SC4に沿って正弦波形状に並んで配置されている。
【0079】
このように、図5に示すトイレットペーパー100は、エンボス部30の一部とエンボス部40の一部とを曲線SC1に沿って正弦波形状に交互に並べて配置し、他のエンボス部30の一部とエンボス部40の一部とを曲線SC1に平行な曲線SC2に沿って正弦波形状に交互に並べて配置し、さらに他のエンボス部30の一部を曲線SC1および曲線SC2とに交差する曲線SC3に沿って正弦波形状に並べて配置し、エンボス部40の一部を曲線SC3と平行な曲線SC4に沿って正弦波形状に並べて配置することにより、堅牢性、吸水性を確実に高めながら、意匠性を確実に高めることができる。
【0080】
本実施形態のトイレットペーパーにおいて、曲線SC1~SC4の正弦波形状の振幅は任意であるが、曲線SC1~SC4のうち少なくとも1つの曲線の正弦波形状の振幅は、例えば10~60mmにすることが好ましく、より好ましくは20~50mm、さらに好ましくは35~45mmである。なお、図2及び図5に示すトイレットペーパー100では、曲線SC1~SC4の正弦波形状の振幅はいずれも10~60mmの範囲に含まれている。曲線SC1~SC4のうち少なくとも1つの曲線の正弦波形状の振幅をこのような範囲にすると、トイレットペーパー100の堅牢性、吸水性を確実に高めながら、トイレットペーパー100に付与される意匠性を確実に高めることができる。
【0081】
また、本実施形態のトイレットペーパーにおいて、曲線SC1~SC4の正弦波形状の周期(波長)は任意であるが、曲線SC1~SC4のうち少なくとも1つの曲線の正弦波形状の周期は、例えば50mm~300mmにすることが好ましく、より好ましくは100mm~280mm、さらに好ましくは150mm~250mmである。なお、図2及び図5に示すトイレットペーパー100では、曲線SC1~SC4の正弦波形状の周期はいずれも50mm~300mmの範囲に含まれている。曲線SC1~SC4のうち少なくとも1つの曲線の正弦波形状の周期をこのような範囲にすると、トイレットペーパー100の堅牢性、吸水性を確実に高めながら、トイレットペーパー100に付与される意匠性を確実に高めることができる。
【0082】
また、図2乃至図5に示すトイレットペーパー100では、クレープ紙20に対面する凸エンボス32の頂部33及びクレープ紙10に対面する凸エンボス42の頂部43の各面積が0.8~1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.9~1.4mmであり、さらに好ましくは1.0~1.3mmである。
【0083】
ここで、凸エンボス32の頂部33の各面積は、1個あたりの凸エンボス32の頂部33の面積を示す。また、凸エンボス42の頂部43の各面積は、1個あたりの凸エンボス42の頂部43の面積を示す。以下、凸エンボスの頂部の各面積を、個面積という場合がある。
【0084】
凸エンボス32、凸エンボス42の個面積をこのような範囲にすることにより、クレープ紙10が凸エンボス42によって支えられ、クレープ紙20が凸エンボス32によって支えられる。これにより、凸エンボス32、凸エンボス42は潰れ難くなるため、トイレットペーパー100の厚み方向の強度を高くすることができる。
【0085】
また、図2乃至図5に示すトイレットペーパー100では、クレープ紙20に対面する凸エンボス32の頂部33の面積率及びクレープ紙10に対面する凸エンボス42の頂部43の面積率は、5~10%であることが好ましく、より好ましくは7~10%であり、さらに好ましくは8~10%である。
【0086】
ここで、凸エンボス32の頂部33の面積率は、クレープ紙10に占める凸エンボス32の頂部33の面積の割合を示す。また、凸エンボス42の頂部43の面積率は、クレープ紙20に占める凸エンボス42の頂部43の面積の割合を示す。なお、本明細書中で、凸エンボスの頂部の面積率は、糊付け面積率という場合がある。
【0087】
凸エンボス32の面積率および凸エンボス42の面積率をこのような範囲にすることにより、ネステッド形式で一体化されたクレープ紙10、20間で凸エンボス32、42が干渉するのを防ぐことができ、クレープ紙10、20間に非エンボス空間を形成することができる。そのため、トイレットペーパー100は、嵩高く、潰れ難いものとなる。
【0088】
さらに、凸エンボス32の面積率および凸エンボス42の面積率を上述の範囲にすると、凸エンボス32、42とクレープ紙10、20との接着面積を小さくすることができる。そのため、クレープ紙10、20の接着部分によってトイレットペーパー100が固くなるのを低減することができる。
【0089】
また、本実施形態では、凸エンボス32、42の高さを1.0mm~1.7mmにすることが好ましく、より好ましくは1.1~1.5mm、さらに好ましくは1.2~1.4mmにする。なお、凸エンボス32の高さは、クレープ紙10の凸エンボス32の形成面から凸エンボス32の頂部33までの距離であり、凸エンボス42の高さは、クレープ紙20の凸エンボス42の形成面から凸エンボス42の頂部43までの距離である。
【0090】
本実施形態では、凸エンボス32、42の高さをこのような範囲にすることで、トイレットペーパー100の厚み方向の強度を維持しながらクレープ紙10、20間に形成される非エンボス空間を大きくすることができる。そのため、トイレットペーパー100はさらに嵩高くなり、しかも潰れ難いものとなる。
【0091】
本実施形態では、図3及び図4に示すように、クレープ紙10の凸エンボス32の側面34は、凸エンボス32の頂部33の面積が凹エンボス31の開口部35の面積よりも小さくなるように傾斜している。すなわち、凸エンボス32は、クレープ紙10の凸エンボス32の形成面から凸エンボス32の頂部33(または底部36)に向かって先細りになっている。
【0092】
一方、クレープ紙20の凸エンボス42の側面44は、凸エンボス42の頂部43の面積が凹エンボス41の開口部45の面積よりも小さくなるように傾斜している。すなわち、凸エンボス42は、クレープ紙20の凸エンボス42の形成面から凸エンボス42の頂部43(または底部46)に向かって先細りになっている。
【0093】
このように、クレープ紙10の凸エンボス32の側面34を傾斜させ、クレープ紙20の凸エンボス42の側面44を傾斜させることにより、クレープ紙10とクレープ紙20との間での凸エンボス32と凸エンボス42との干渉を確実に防ぐことができる。これにより、トイレットペーパー100はさらに嵩高く、潰れ難いものとなる。
【0094】
また、凸エンボス32がクレープ紙10の凸エンボス32の形成面から凸エンボス32の頂部33(または底部36)に向かって先細りになっているため、凸エンボス32とクレープ紙20との接着面積をより小さくすることができる。その結果、クレープ紙10とクレープ紙20との接着部分によってトイレットペーパー100が固くなるのをより低減することができる。
【0095】
また、凸エンボス42がクレープ紙20の凸エンボス42の形成面から凸エンボス42の頂部43(または底部46)に向かって先細りになっている。そのため、クレープ紙20の凸エンボス42の頂部43とクレープ紙10の非エンボス部11とが接着されている場合でも、凸エンボス42とクレープ紙10との接着面積をより小さくすることができる。これにより、クレープ紙10とクレープ紙20との接着部分によってトイレットペーパー100が固くなるのを低減することができる。
【0096】
なお、凸エンボス32の側面34の傾斜角度および凸エンボス42の側面44の傾斜角度は、ともに60~80°にすることが好ましく、より好ましくは63~77°、さらに好ましくは65~75°である。
【0097】
ここで、凸エンボス32の側面34の傾斜角度は、クレープ紙10の凸エンボス32の形成面と凸エンボス32の側面34との間の角度である。また、凸エンボス42の側面44の傾斜角度は、クレープ紙20の凸エンボス42の形成面と凸エンボス42の側面44との間の角度である。
【0098】
凸エンボス32、42の側面34、44の傾斜角度を60~80°とすることで、トイレットペーパー100の嵩高さと、潰れ難さとを高く維持しながら、接着部分によりトイレットペーパーが固くなるのをさらに低減することができる。
【0099】
トイレットペーパー100は、500gf/cm荷重下での圧縮強度が5.0gf・cm/cm以上の条件を満たすのが好ましい。ここで、500gf/cm荷重下での圧縮強度は、トイレットペーパー100に対して厚み方向に500gf/cmの荷重をかけたときの圧縮エネルギー(gf・cm/cm)である。なお、500gf/cm荷重は、トイレットペーパーの使用時に想定される圧力を超える過剰の圧力を想定したものである。
【0100】
トイレットペーパーの物理特性をこのような条件にすることで、さらにトイレットペーパー100の強度を高くすることができる。これにより、嵩高さと潰れ難さとを高く維持しながら、丈夫な(堅牢性に優れた)トイレットペーパー100を得ることができる。また、500gf/cm荷重下での圧縮強度が5.0gf・cm/cm以上のトイレットペーパーは、圧縮され易い。そのため、得られるトイレットペーパーは柔らかいものとなる。
【0101】
また、トイレットペーパー100は、50gf/cm荷重下での圧縮率が70%以下の条件を満たすのが好ましい。ここで、50gf/cm荷重下での圧縮率は、トイレットペーパー100に対して厚み方向に50gf/cmの荷重を加えたときのトイレットペーパー100の厚み(荷重時の厚み)と、初期厚みとから、下記式より算出したものである。また、50gf/cm荷重下での初期厚みは、トイレットペーパーに対して厚み方向に50gf/cmの荷重をかける直前のトイレットペーパーの厚みである。なお、50gf/cm荷重は、トイレットペーパーの使用時(例えば、拭き取り時)の圧力を想定したものである。
・圧縮率(%)=(初期厚み-荷重時の厚み)÷初期厚み×100
【0102】
トイレットペーパー100の物理特性をこのような条件にすることで、嵩高く、潰れ難いトイレットペーパーを確実に得ることができる。
【実施例
【0103】
以下、本実施形態について、さらに実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。各実施例、比較例の測定、評価は、以下のようにして行った。
【0104】
[坪量(原紙および製品)]
試験で使用するトイレットペーパー100のクレープ紙(原紙)及び製品の坪量(米坪)(g/m)を測定した。坪量(米坪)(g/m)は、JIS P 8124(1998)により算出する。
【0105】
[紙厚(原紙)]
原紙の紙厚(μm/1枚)を測定した。紙厚の測定方法は、50cm×50cmに裁断した原紙の試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。測定の具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、該ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせる。次いで、プランジャーを上げて試験片を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろし、そのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は、金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにする。紙厚の測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、紙厚の測定値は、測定を10回行って得られる平均値とする。
【0106】
[紙厚(製品)]
製品の紙厚を測定した(製品状態で測定し、例えば2プライ製品であれば、2プライのまま測定する)。紙厚の測定方法は、12cm×12cmに裁断した試験片をJISP 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK H型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。測定の具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、該ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせる。次いで、プランジャーを上げて試験片を試験台の上におき、プランジャーを70μmまで測定子を開いた後、レバーを一気に放し、そのときのゲージを読み取る。プランジャーの端子は、金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにする。紙厚の測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、紙厚の測定値は、測定を10回行って得られる平均値とする。
【0107】
[圧縮試験]
トイレットペーパー100について、圧縮試験を行った。圧縮試験の測定方法は、12cm×12cmに裁断した試験片(製品状態で測定し、例えば2プライ製品であれば、2プライのまま測定する)を用意し、圧縮試験機(カトーテック製、KES-G5)を用いて、500gf/cm荷重時の圧縮エネルギーWC(gf・cm/cm)と、50gf/cm荷重時の初期厚みT(mm)と荷重時の厚みT(mm)から50gf/cm荷重時の圧縮率(%)を測定する。測定条件は、加圧子面積:2cm、力計:1kg、CHECKスイッチ:MES、DEF出力感度ダイヤル:2mm/V、上限荷重:(1)50gf/cm(SENS:2、STOROKE SETダイヤル:5)、(2)500gf/cm(SENS:10、STOROKE SETダイヤル:10)、SPEED:0.02cm/s(SPEED RANGEスイッチ:0.1、SPEED SETスイッチ:2)、CONTROLスイッチ:INT、STOPスイッチ:OFFとする。
【0108】
ここで、圧縮エネルギーWCとは、上限荷重まで圧縮した際の圧縮仕事量の積分値である。また、初期厚みTとは、荷重圧力が0.5gf/cmに達したときの試験片の厚みであり、荷重時の厚みTとは、荷重圧力が上限荷重(50gf/cm)に達したときの試験片の厚みである。測定は、初期厚みTと荷重時の厚みTとをそれぞれ3回測定し平均値を算出する。算出した初期厚みTと荷重時の厚みTとから荷重時の圧縮率(潰れ率)を算出する。荷重時の圧縮率は、下記式より算出する。
・荷重時の圧縮率(%)=(初期厚みT-荷重時の厚みT)÷初期厚みT×100
【0109】
なお、500gf/cm荷重時の圧縮エネルギーが大きいことは、トイレットペーパーの強度が高く、丈夫な(堅牢性に優れた)トイレットペーパーであることを示す。また、500gf/cm荷重時の圧縮エネルギーが大きいことは、トイレットペーパーが圧縮され易く、柔らかいことを示す。ここでは、500gf/cm荷重時の圧縮エネルギーが5.0gf・cm/cm以上の場合に、丈夫で柔らかいトイレットペーパーであると評価した。
【0110】
また、50gf/cm荷重時の初期厚みTが厚いことは、トイレットペーパーが嵩高いことを示す。ここでは、50gf/cm荷重時の初期厚みTが0.7mm以上の場合に、嵩高いトイレットペーパーであると評価した。
【0111】
さらに、50gf/cm荷重時の圧縮率が低いことは、トイレットペーパーが厚み方向に潰れ難いことを示す。50gf/cm荷重時の圧縮率が70%以下の場合、トイレットペーパーが潰れ難いものと評価した。
【0112】
[吸水試験]
吸水試験では、浸透阻止率(%)を算出し、この浸透阻止率(%)から吸水性を評価した。具体的には、水平に保持したアクリル板上に1mlの蒸留水を30mm×40mmにメンディングテープ等で区画した内側に吹き付け等の手段で平均して塗布し、その上に15組(使用枚数)の試験片を載せ、均一に650gの加重を掛けて1秒後に、蒸留水が浸透している枚数(浸透枚数)を数える。ここで、浸透枚数は3回の平均値を求めたものである。そして、浸透阻止率(%)を下記式より算出する。
・浸透阻止率(%)=(使用枚数-浸透枚数)÷製品の坪量×100
ここでは、浸透阻止率が40%以上の場合に、荷重時の裏抜けが少なく、吸水性が良好なトイレットペーパーであると評価した。
【0113】
[実施例1]
実施例1では、坪量15.3g/m、紙厚131μmの原紙2枚(クレープ紙10、20)を、図2図4に示すようにネステッド(nested)形式で重ね合わせたトイレットペーパー100を用意した。また、実施例1では、図2に示すように、エンボス部を曲線SC1~SC4上に配置し、曲線SC1~SC4を全て、振幅(sinカーブの振幅)40.0mm、周期(sinカーブの周期または波長)209.3mmの正弦波形状の曲線とした。その他のエンボス条件は、凸エンボスの頂部の面積1.2mm/個、凸エンボスの高さ1.4mm、凸エンボスの傾斜角度70°、凸エンボスの頂部の形状を四角形とし、凸エンボスの個数(表、クレープ紙10)1110個/144cm、凸エンボスの個数(裏、クレープ紙20)1116個/144cm、凸エンボスの頂部の面積率(クレープ紙10の非エンボス部11とクレープ紙20の凸エンボスとの糊付け面積率)9.1%、凸エンボスの体積(表、クレープ紙10)3930mm、凸エンボスの体積(裏、クレープ紙20)3930mm、非エンボス空間の体積(凸エンボスを除いた空間の体積)12000mm、非エンボス部の面積率70.8%とした。また、実施例1では、トイレットペーパー100の製品としての坪量14.1g/m、紙厚340μmとなった。実施例1の条件及び結果を表1に示す。
【0114】
[実施例2]
実施例2では、図5に示すように、エンボス部を曲線SC1~SC4上に配置し、曲線SC1~SC4を全て、振幅40.0mm、周期(波長)240.0mmの正弦波形状の曲線とした。その他のエンボス条件は、凸エンボスの個数(表、クレープ紙10)1109個/144cm、凸エンボスの個数(裏、クレープ紙20)1110個/144cm、凸エンボスの頂部の面積率(クレープ紙10の非エンボス部11とクレープ紙20の凸エンボスとの糊付け面積率)9.0%、凸エンボスの体積(表、クレープ紙10)3877mm、凸エンボスの体積(裏、クレープ紙20)3879mm、非エンボス空間の体積12404mm、非エンボス部の面積率70.4%とした。また実施例2では、トイレットペーパー100の製品としての坪量14.1g/m、紙厚332μmとなった。これら以外の条件は、実施例1と同様にした。実施例2の条件及び結果を表1に示す。
【0115】
[比較例1]
比較例1では、図6乃至図8に示すように、原紙2枚(クレープ紙10、20)をティップ トゥ ティップ(tip to tip)形式で重ね合わせたトイレットペーパー100を用意した。また、比較例1では、図6図8に示すように、エンボス部を全て直線状に配置した。その他のエンボス条件は、凸エンボスの個数(表、クレープ紙10)1156個/144cm、凸エンボスの個数(裏、クレープ紙20)1156個/144cm、凸エンボスの頂部の面積率(クレープ紙10の凸エンボスとクレープ紙20の凸エンボスとの糊付け面積率)9.0%、凸エンボスの体積(表、クレープ紙10)3883mm、凸エンボスの体積(裏、クレープ紙20)3882mm、非エンボス空間の体積12395mm、非エンボス部の面積率68.7%とした。また比較例1では、トイレットペーパー100の製品としての坪量14.1g/m、紙厚258μmとなった。これら以外の条件は、実施例1と同様にした。比較例1の条件及び結果を表1に示す。
【0116】
[参考例1]
参考例1では、図9に示すように、原紙2枚(クレープ紙10、20)をティップ トゥ ティップ(tip to tip)形式で重ね合わせたトイレットペーパー100を用意した。また、参考例1では、図9に示すように、エンボス部を曲線SC1~SC4上に配置し、曲線SC1~SC4を全て、振幅40.0mm、周期(波長)240.0mmの正弦波形状の曲線とした。その他のエンボス条件は、凸エンボスの個数(表、クレープ紙10)1109個/144cm、凸エンボスの個数(裏、クレープ紙20)1109個/144cm、凸エンボスの頂部の面積率(クレープ紙10の凸エンボスとクレープ紙20の凸エンボスとの糊付け面積率)9.0%、凸エンボスの体積(表、クレープ紙10)3877mm、凸エンボスの体積(裏、クレープ紙20)3877mm、非エンボス空間の体積12406mm、非エンボス部の面積率70.4%とした。また参考例1では、トイレットペーパー100の製品としての坪量14.0g/m、紙厚258μmとなった。これら以外の条件は、実施例1と同様にした。参考例1の条件及び結果を表1に示す。
【0117】
[参考例2]
参考例2では、図10乃至図12に示すように、原紙2枚(クレープ紙10、20)をネステッド(nested)形式で重ね合わせたトイレットペーパー100を用意した。また、参考例2では、図10図12に示すように、エンボス部を全て直線状に配置した。その他のエンボス条件は、凸エンボスの個数(表、クレープ紙10)1013個/144cm、凸エンボスの個数(裏、クレープ紙20)1012個/144cm、凸エンボスの頂部の面積率(クレープ紙10の非エンボス部11とクレープ紙20の凸エンボスとの糊付け面積率)8.0%、凸エンボスの体積(表、クレープ紙10)3461mm、凸エンボスの体積(裏、クレープ紙20)3461mm、非エンボス空間の体積13238mm、非エンボス部の面積率72.1%とした。また参考例2では、トイレットペーパー100の製品としての坪量14.2g/m、紙厚404μmとなった。これら以外の条件は、実施例1と同様にした。参考例2の条件及び結果を表1に示す。
【0118】
[参考例3]
参考例3では、坪量15.5g/m、紙厚133μmの原紙2枚(クレープ紙10、20)を、図13に示すように、デザインラミネート形式で重ね合わせたトイレットペーパー100を用意した。凸エンボスの頂部の形状は、クレープ紙10のエンボス部50、70を円形とし、クレープ紙20のエンボス部60を花柄とした。また参考例3では、トイレットペーパー100の製品として、坪量15.1g/m、紙厚199μmであった。参考例3の条件及び結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
表1より、実施例1及び2では、500gf/cm荷重時の圧縮エネルギーが5.0gf・cm/cm以上となった。また、50gf/cm荷重時の圧縮率が70%以下となった。さらに、吸水性(浸透阻止率)は40%以上となった。
【0121】
一方、比較例1及び参考例1では、500gf/cm荷重時の圧縮エネルギーが5.0gf・cm/cm未満であった。また50gf/cm荷重時の圧縮率が70%を超えた。さらに吸水性(浸透阻止率)は40%未満であった。
【0122】
また、参考例2および参考例3では、500gf/cm荷重時の圧縮エネルギーが5.0gf・cm/cm未満であった。また50gf/cm荷重時の圧縮率が70%以下となった。さらに、吸水性(浸透阻止率)は、参考例2では40%以上となり、参考例3では40%未満となった。
【0123】
これらの結果から、従来のティップ トゥ ティップ形式のトイレットペーパーは、エンボス部を直線状および正弦波形状のいずれの形態に配置しても、トイレットペーパーの強度を高くすることはできず、またトイレットペーパーを柔らかくすることはできず、さらに潰れ易く、吸水性に劣るものであった(比較例1及び参考例1)。また、ネステッド形式のトイレットペーパーは、エンボス部を直線状に配置しただけでは、トイレットペーパーの強度を実施例1及び実施例2の強度と同程度まで高くすることはできなかった(参考例2)。さらに、従来のデザインラミネート形式のトイレットペーパー(参考例1)は、トイレットペーパーの強度を高くすることはできず、また、十分な吸水性は得られなかった(参考例3)。
【0124】
これに対して、クレープ紙10とクレープ紙20とを凸エンボス32の形成面と凸エンボス42の形成面とをネステッド形式で対面させて一体化し、エンボス部30およびエンボス部40を、正弦波形状の曲線上に配置することにより、トイレットペーパー100は、強度が高く、圧縮され易く、また厚み方向に潰れ難く、さらに吸水性が高くなった。この結果から、丈夫で(堅牢性に優れ)、柔らかく、潰れ難くて、吸水性に優れたトイレットペーパー100が得られることが判った(実施例1、2)。
【0125】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0126】
本国際出願は、2017年6月30日に出願された日本国特許出願2017-128581号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容をここに援用する。
【符号の説明】
【0127】
100 トイレットペーパー
10 クレープ紙
20 クレープ紙
30 エンボス部
31 凹エンボス
32 凸エンボス
33 頂部
34 側面
35 開口部
40 エンボス部
41 凹エンボス
42 凸エンボス
43 頂部
44 側面
45 開口部
SC1 曲線
SC2 曲線
SC3 曲線
SC4 曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13