(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電池制御ユニットおよび電池システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240702BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240702BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240702BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02J7/02 G
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H02J7/00 302C
H02J7/02 H
(21)【出願番号】P 2020017186
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/142369(WO,A2)
【文献】特開2002-320339(JP,A)
【文献】特開2016-119788(JP,A)
【文献】特開2012-070487(JP,A)
【文献】特開2005-020866(JP,A)
【文献】特開2013-090525(JP,A)
【文献】特開2016-146748(JP,A)
【文献】特開2012-156025(JP,A)
【文献】特開2010-068558(JP,A)
【文献】特開平09-298805(JP,A)
【文献】特開2009-296820(JP,A)
【文献】特開2008-148486(JP,A)
【文献】特開2009-142071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の電池毎に設けられ、対応する前記電池を負荷又は充電器に接続可能とする接続状態と、対応する前記電池を前記負荷又は前記充電器に接続不可とする非接続状態と、に切り替える切替部と、
前記切替部を制御して前記複数の電池のうち少なくとも1つを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が終止電圧に達したか否かを判定し、前記終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記電池を、他の前記電池に切り替える制御部と、
前記電池と前記負荷又は前記充電器との間に設けられたDC/DCコンバータと、を備えた、電池制御ユニットにおいて、
前記制御部は、前記接続状態とする電池の数が、前記切り替え前と前記切り替え後とで2以上の同じ数になるように切り替え
、
前記接続状態にある前記電池の電圧の総和である総電圧が、前記DC/DCコンバータが有する電圧-効率特性において所定の効率以上となる電圧の範囲内で、変動する、
電池制御ユニット。
【請求項2】
直列に接続された複数の電池毎に設けられ、対応する前記電池を負荷又は充電器に接続可能とする接続状態と、対応する前記電池を前記負荷又は前記充電器に接続不可とする非接続状態と、に切り替える切替部と、
前記切替部を制御して前記複数の電池のうち少なくとも1つを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が終止電圧に達したか否かを判定し、前記終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記電池を、他の前記電池に切り替える制御部と、
前記電池と前記負荷又は前記充電器との間に設けられたDC/DCコンバータと、を備えた、電池制御ユニットにおいて、
前記複数の電池を、総電圧が予め定めた範囲内となる複数のグループに分け、
前記制御部が、
前記接続状態において対応する前記電池を前記負荷に接続する場合、前記複数のグループのうち最も少ない電池数のグループを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が放電終止電圧に達したか否かを判定し、前記放電終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記グループを、他の前記グループのうち最も少ない電池数の前記グループに切り替え、
前記接続状態において対応する前記電池を前記充電器に接続する場合、前記複数のグループのうち最も多い電池数のグループを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が充電終止電圧に達したか否かを判定し、前記充電終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記グループを、他の前記グループのうち最も多い電池数の前記グループに切り替える、
電池制御ユニット。
【請求項3】
直列に接続された複数の電池と、
請求項1又は2に記載の電池制御ユニットと、を備えた、
電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御ユニットおよび電池システム、に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池を直列に接続して構成される電池システムがある。複数の電池は、例えば製造時のバラツキや動作環境のバラツキに起因して、劣化がばらつく。例えば、熱源に近い電池は早く劣化してしまうが、熱源から離れた電池は劣化が遅い。
【0003】
このため、充放電時に劣化の進んだ電池が最初に充電終止電圧に達してしまう。この場合、他の電池に余力が残っていたとしても充電を停止しなければならず、電池容量を使いきることができない。そこで、充電終止電圧に達した電池をバイパスして充電から切り離し、充電終止電圧に達していない電池の充電を継続させるシステムが提案されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、充電終止電圧を4V、放電終止電圧を3Vとする。充電終止電圧、放電終止電圧に達した電池のバイパスを行うと、そのたびに電池パックとしての総電圧が3Vもしくは4Vずつ低下する。電池パックと負荷又は充電器との間にDC/DCコンバータが設けられている場合があり、その場合、電池パックの電圧がDC/DC変換されて負荷に供給され、充電器からの充電電圧がDC/DC変換された負荷に供給される。このため、DC/DCコンバータとしては広範囲の電圧変換が可能なものを用いる必要がある。しかしながら、広範囲な電圧変換が可能なDC/DCコンバータは、高効率変換領域が限られる。そのため、電池パックの総電圧が大きく変動すると、DC/DCコンバータの変換効率が高い範囲から外れる、という問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池パックの総電圧の変動範囲を抑制することができる電池制御ユニットおよび電池ユニットすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電池制御ユニットおよび電池ユニットは、下記[1]~[3]を特徴としている。
[1]
直列に接続された複数の電池毎に設けられ、対応する前記電池を負荷又は充電器に接続可能とする接続状態と、対応する前記電池を前記負荷又は前記充電器に接続不可とする非接続状態と、に切り替える切替部と、
前記切替部を制御して前記複数の電池のうち少なくとも1つを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が終止電圧に達したか否かを判定し、前記終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記電池を、他の前記電池に切り替える制御部と、
前記電池と前記負荷又は前記充電器との間に設けられたDC/DCコンバータと、を備えた、電池制御ユニットにおいて、
前記制御部は、前記接続状態とする電池の数が、前記切り替え前と前記切り替え後とで2以上の同じ数になるように切り替え、
前記接続状態にある前記電池の電圧の総和である総電圧が、前記DC/DCコンバータが有する電圧-効率特性において所定の効率以上となる電圧の範囲内で、変動する、
電池制御ユニットであること。
【0009】
[2]
直列に接続された複数の電池毎に設けられ、対応する前記電池を負荷又は充電器に接続可能とする接続状態と、対応する前記電池を前記負荷又は前記充電器に接続不可とする非接続状態と、に切り替える切替部と、
前記切替部を制御して前記複数の電池のうち少なくとも1つを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が終止電圧に達したか否かを判定し、前記終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記電池を、他の前記電池に切り替える制御部と、
前記電池と前記負荷又は前記充電器との間に設けられたDC/DCコンバータと、を備えた、電池制御ユニットにおいて、
前記複数の電池を、総電圧が予め定めた範囲内となる複数のグループに分け、
前記制御部が、
前記接続状態において対応する前記電池を前記負荷に接続する場合、前記複数のグループのうち最も少ない電池数のグループを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が放電終止電圧に達したか否かを判定し、前記放電終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記グループを、他の前記グループのうち最も少ない電池数の前記グループに切り替え、
前記接続状態において対応する前記電池を前記充電器に接続する場合、前記複数のグループのうち最も多い電池数のグループを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池が充電終止電圧に達したか否かを判定し、前記充電終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記グループを、他の前記グループのうち最も多い電池数の前記グループに切り替える、
電池制御ユニットであること。
【0010】
[3]
直列に接続された複数の電池と、
[1]又は[2]に記載の電池制御ユニットと、を備えた、
電池システムであること。
【0011】
上記[1]及び[3]の構成の電池制御ユニット及び電池ユニットによれば、制御部が、複数の電池の少なくとも1つを接続状態とし、接続状態の電池が終止電圧に達したか否かを判定し、終止電圧に達したと判定すると、接続状態とする電池を、他の電池に切り替える。これにより、負荷又は充電器に接続される電池は、複数の電池のうち一部となるため、電池パックの総電圧の変動範囲を抑制することができる。これにより、電池パックの総電圧の変動範囲を抑制することができ、電池パックの総電圧がDC/DCコンバータの高効率変換領域から外れるのを抑制することができる。
【0012】
更に、上記[1]及び[3]の構成の電池制御ユニット及び電池ユニットによれば、制御部は、接続状態とする電池の数が、切り替え前と切り替え後とで同じになるように切り替える。これにより、負荷又は充電器に接続される電池の数は、常時同じとなるため、より一層、電池パックの総電圧の変動範囲を抑制することができる。
【0013】
上記[2]の構成の電池制御ユニットによれば、制御部が、複数の電池を総電圧が予め定めた範囲内となる複数のグループに分ける。制御部が、複数のグループの1つを接続状態とし、接続状態の電池が終止電圧に達したか否かを判定し、終止電圧に達したと判定すると、接続状態とするグループを、他のグループに切り替える。これにより、負荷又は充電器に接続される電池の総電圧が予め定めた範囲内となるため、より一層、電池パックの総電圧の変動範囲を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池パックの総電圧の変動範囲を抑制することができる電池制御ユニットおよび電池ユニットを提供することができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の電池システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電池システムの詳細を示す回路図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における
図2に示す制御部の充電処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】比較品及び本発明品の電池パックの総電圧のタイムチャートである。
【
図5】
図1に示すDC/DCコンバータの電圧-効率特性である。
【
図6】
図6は、第2実施形態における
図2に示す制御部の充電処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3実施形態における
図2に示す制御部の充電処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
まず、第1実施形態について説明する。
図1に示す電池システム1は、例えば劣化が進んだ電池を再利用して電力を供給する装置である。
【0019】
同図に示すように、電池システム1は、電池パック2と、電池制御ユニット3と、DC/DCコンバータ4と、充電器5と、負荷6と、を備えている。電池システム1は、電池パック2からの電力をDC/DCコンバータ4を介して電圧変換した後、負荷6に供給している。また、電池システム1は、充電器5からの電力をDC/DCコンバータ4を介して電圧変換した後、電池パック2に供給して、充電している。
【0020】
電池パック2は、
図2に示すように、複数の電池21~2N(Nは2以上の整数)を有している。複数の電池21~2Nは各々、充放電可能な蓄電池であり、1つのセルから構成されていてもよいし、複数のセルから構成されていてもよい。
【0021】
電池制御ユニット3は、複数の切替部311~31Nと、複数の電圧計測部321~32Nと、制御部33と、を備えている。複数の切替部311~31Nは、複数の電池21~2Nに各々対応して設けられている。複数の切替部311~31Nは、互いに同じ構成である。
【0022】
切替部311~31Nは、対応する電池21~2Nを充電器5又は負荷6に接続可能とする接続状態と、対応する電池21~2Nを充電器5又は負荷6に接続不可とする非接続状態と、の間で切り替える。即ち、接続状態の電池21~2Nは、電池パック2に設けられた一対の端子T1、T2間に電気的に接続され、非接続状態の電池21~2Nは、一対の端子T1、T2間から切り離される。よって、電池パック2の端子T1、T2を充電器5又は負荷6に接続すると、接続状態の電池21~2Nが充電器5又は負荷6に接続され、非接続状態の電池21~2Nが充電器5又は負荷6から切り離される。
【0023】
切替部311は、電池21に直列接続された第1スイッチSW11と、電池21及び第1スイッチSW11に並列接続された第2スイッチSW21と、から構成されている。第1スイッチSW11は、一端T11が電池21の一極(例えば正極)に接続されている。第2スイッチSW21は、一端T21が電池21の他極(例えば負極)に接続され、他端T22が第1スイッチSW11の他端T12に接続されている。切替部312~31Nについては、上述した切替部311についての説明中の「311」を「312」~「31N」、「SW11」を「SW12」~「SW1N」、「SW21」を「SW22」~「SW2N」にそれぞれ置き換えて説明することができ、詳細な説明を省略する。
【0024】
また、第1スイッチSW12の他端T12は、電池21の負極に接続され、第1スイッチSW13の他端T12は、電池22の負極に接続されている。即ち、互いに隣接する電池21-電池22間、電池22-電池23、…、電池2N-1-電池2N間にそれぞれ、第1スイッチSW12~SW1Nが接続されている。
【0025】
以上の構成によれば、第2スイッチSW21~SW2Nをオフし、第1スイッチSW11~SW1Nをオンすると、対応する電池21~2Nが接続状態となる。また、第1スイッチSW11~SW1Nをオフすると対応する電池21~2Nが非接続状態となる。このとき、第2スイッチSW21~SW2Nをオンするとバイパス経路が形成され、接続状態となっている電池21~2Nのみが端子T1、T2間に接続される。
【0026】
複数の電圧計測部321~32Nは、対応する電池21~2Nの両端電圧を測定して、その測定結果を後述する制御部33に対して出力する。
【0027】
制御部33は、周知のCPU、ROM、RAMから構成され、電池システム1全体の制御を司る。制御部33は、各電池21~2Nの両端電圧に基づいて第1スイッチSW11~S1N及び第2スイッチSW21~SW2Nをオンオフ制御する。
【0028】
DC/DCコンバータ4は、電池パック2と充電器5又は負荷6との間に設けられる。充電器5及び負荷6は、DC/DCコンバータ4を介して電池パック2に接続されている。
【0029】
次に、上述した電池システム1の動作の概要について説明する。制御部33は、電池21~2Nを充放電する際、電池21~2Nを1つずつ端子T1、T2に接続する。具体的に説明すると、今全ての電池21~2Nが充電終止電圧、放電終止電圧に達していないとする。このとき、例えば、充放電の最初は電池21のみを端子T1、T2間に接続し、電池22、23はバイパスさせておく。電池21を充放電した結果、充電終止電圧、放電終止電圧に達したら、電池21をバイパスし、電池22のみを端子T1、T2間に接続する。電池22を充放電した結果、充電終止電圧、放電終止電圧に達したら、電池22をバイパスし、電池23のみを端子T1、T2間に接続し、これを繰り返す。繰り返した結果、全ての電池21~2Nが、充電終止電圧、放電終止電圧に達したら、充放電完了となる。
【0030】
このように、複数の電池21~2Nを直列接続して使わずに、電池21~2Nを1つずつ使用することで、電池パック2の総電圧(入出力端子T1、T2間の電圧)の変動範囲を狭めることができる。これにより、DC/DCコンバータ4の高効率変換領域から総電圧が外れないようにすることができる。
【0031】
次に、上述した電池システム1の動作の詳細について、
図3及び
図4を参照して以下説明する。
図3は、第1実施形態における
図1に示す制御部33の充電処理手順を示すフローチャートである。
【0032】
制御部33は、放電命令を受信すると、
図3に示す放電処理を開始する。まず、制御部33は、全第1スイッチSW11~SW1N、全第2スイッチSW21~SW2Nをオフにする(ステップS1)。その後、制御部33は、放電終止電圧の設定を行う(ステップS2)。本実施形態では、制御部33は、3Vを放電終止電圧として設定する。次に、制御部33は、n=1に設定する(ステップS3)。その後、制御部33は、切替部311~31Nを制御して、電池2nのみを接続状態とし、電池2n以外を非接続状態とする(ステップS4)。
【0033】
次に、制御部33は、電池パック2の端子T1、T2に充電器5を接続して充電を開始する(ステップS5)。その後、制御部33は、接続状態である電池2nが放電終止電圧に達したか否かを判定する(ステップS6)。電池2nが放電終止電圧に達していなければ(ステップS6でN)、制御部33は、ステップS4に戻り、電池2nの放電を継続させる。一方、電池2nが放電終止電圧に達していれば(ステップS6でY)、制御部33は、全電池21~2Nが放電終止電圧に達したか否かを判定する(ステップS7)。全電池21~2Nが放電終止電圧に達していなければ(ステップS7でN)、制御部33は、nをインクリメントした後(ステップS8)、ステップS4に戻る。これにより、接続状態となる電池が電池2nから電池2n+1に切り替わる。
【0034】
これに対して、全電池21~2Nが放電終止電圧に達すると(ステップS7でY)、制御部33は全第1スイッチSW11~SW1N、全第2スイッチSW21~SW2Nをオフして(ステップS9)、処理を終了する。
【0035】
また、制御部33は、充電命令を受信すると、充電処理を開始する。充電処理については、上述した放電処理についての説明中の「放電」を「充電」に、「3V」を「4V」に、「充電器5」を「負荷6」に置き換えて説明することができ、詳細な説明を省略する。
【0036】
上述した実施形態によれば、制御部33が、複数の電池21~2Nの1つを接続状態とし、接続状態の電池2nが終止電圧に達したか否かを判定し、終止電圧に達したと判定すると、接続状態とする1つの電池2nを、他の電池2n+1に切り替える。これにより、充電器5又は負荷6に接続される電池21~2Nは常時、1つとなるため、電池パック2の総電圧の変動範囲を抑制することができる。また、電池パック2の総電圧の変動範囲を抑制することができ、電池パック2の総電圧がDC/DCコンバータ4の高効率変換領域から外れるのを抑制することができる。
【0037】
次に、上述した本実施形態の電池システム1の効果の詳細について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、比較品及び本発明の電池パック2の総電圧のタイムチャートであり、
図5は、DC/DCコンバータ4の電圧-効率特性を示す。上記比較品は、最初に全ての電池21~23を直列に端子T1及びT2間に接続し、終止電圧に達した電池21~2Nについてはバイパスさせるものである。本発明品は、上述した
図1~
図3に示す電池システム1であり、N=3としている。
【0038】
また、放電終止電圧を3Vとし、充電終止電圧を4Vとし、電池21~23は、いずれも満充電(充電終止電圧=4V)であり、電池21>電池22>電池23の順に劣化しているものとする。放電開始時は、比較品の電池パック2は、電池21~23の全てが直列接続され、総電圧は12V(4V×3)である。充電中、比較品の総電圧は、徐々に減少し、最も劣化している電池21が最初に放電終止電圧に達すると、電池21がバイパスされ、総電圧が3V一気に下がる。その後、同様に電池22がバイパスされた後、最も劣化していない電池23が放電終止電圧に達すると、そのときの比較品の総電圧は3Vとなる。即ち、比較品の総電圧は、12V~3Vの範囲Aで変動する。
【0039】
これに対して、本発明品の電池パック2は、放電開始時は、電池21のみが接続され、総電圧は4Vである。充電中、比較品の総電圧は、徐々に減少し、電池21が放電終止電圧に達すると、3Vとなる。その後、電池21がバイパスされて、電池22が接続すると比較品の総電圧は、4Vに上昇し、これを繰り返す。即ち、本発明品の総電圧は、4V~3Vの範囲Bで変動する。
【0040】
よって、比較品は12V~3Vの広範囲で変換できるDC/DCコンバータ4を用いても、効率70%以上の高効率範囲は12V~9Vの間であるため、総電圧9V以下は高効率範囲から外れてしまう。これに対して、本発明品は4V~1Vの狭範囲で変換できるDC/DCコンバータ4を用いても、効率70%以上の高効率範囲を4V~3Vであるため、総電圧が高効率範囲から外れることがない。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態においては、電池21~2Nのうち1つだけを接続状態に制御していたが、これに限ったものではなく、2以上の電池21~2Nを接続状態にしてもよい。接続状態とする電池21~2Nの数が常に一定であれば、第1実施形態と同様に、電池21~2Nの総電圧の変動を抑えて、総電圧が、DC/DCコンバータ4の高効率範囲から外れることがない。
【0042】
上述した第2実施形態における電池システム1の詳細について、説明する。第2実施形態における電池システム1の構成は、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。ただし、本実施形態では、電池システム1が、N≧4以上としている。
【0043】
上記第2実施形態における電池システム1の動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、第2実施形態における
図1に示す制御部33の充電処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
制御部33は、放電命令を受信すると、
図6に示す放電処理を開始する。制御部33は、全第1スイッチSW11~SW1N、第2スイッチSW21~SW2Nをオフにする(ステップS10)。その後、制御部33は、放電終止電圧の設定を行う(ステップS11)。次に、制御部33は、n=1に設定する(ステップS13)。その後、制御部33は、切替部311~31Nを制御して、電池2n、2n+1のみを接続状態とし、電池2n、2n+1以外を非接続状態とする(ステップS14)。
【0045】
次に、制御部33は、充電を開始する(ステップS15)。その後、制御部33は、接続状態である電池2n又は2n+1が放電終止電圧に達したか否かを判定する(ステップS16)。電池2n、2n+1の何れかが放電終止電圧に達していなければ(ステップS16でN)、制御部33は、ステップS14に戻り、電池2n、2n+1の放電を継続させる。一方、電池2n、2n+1が放電終止電圧に達していれば(ステップS16でY)、制御部33は、全電池21~2Nの放電が完了したか否か(n+1=Nか)判定する(ステップS17)。全電池21~2Nが放電していなければ(ステップS17でN)、制御部33は、nに2を加算した後(ステップS18)、ステップS14に戻る。これにより、接続状態となる電池が、電池2n、2n+1から電池2n+2、2n+3に切り替わる。
【0046】
これに対して、全電池21~2Nの放電が完了すると(ステップS17でY)、制御部33は全第1スイッチSW11~SW1N、全第2スイッチSW21~SW2Nをオフして(ステップS19)、処理を終了する。また、充電については、上述した放電処理についての説明中の「放電」を「充電」に置き換えて説明することができる。
【0047】
上述した第2実施形態によれば、常時、2つの電池21~2Nが接続状態となるため、電池21~2Nの総電圧の変動を抑えることができる。
【0048】
なお、上述した第2実施形態によれば、2つの電池21~2Nを接続状態としていたが、これに限ったものではない。3つ以上の電池21~2Nを接続状態とするようにしてもよい。
【0049】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。上述した第1、2実施形態においては、接続状態とする電池21~2Nの数を常に一定にしていたが、これに限ったものではない。電池21~2Nの総電圧が、DC/DCコンバータ4の高効率範囲内になるような組み合わせの電池21~23を接続状態としてもよい。
【0050】
上述した第2実施形態における電池システム1の詳細について、説明する。第3実施形態における電池システム1の構成は、上述した第2実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
上記第3実施形態における電池システム1の動作について、
図7を参照して説明する。
図7は、第3実施形態における
図1に示す制御部33の放電処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
制御部33は、放電命令を受信すると、
図7に示す放電処理を開始する。制御部33は、全第1スイッチSW11~SW1N、第2スイッチSW21~SW2Nをオフにする(ステップS20)。その後、制御部33は、放電終止電圧の設定を行う(ステップS21)。次に、制御部33は、放電終止電圧に達していない電池21~2Nをグループに分ける(ステップS22)。このとき、各グループの総電圧が、Vmax以下、Vmin以上となるように、グループ分けする。Vmax、Vminは、例えばDC/DCコンバータ4の放電方向における高効率範囲の最大値、最小値に設定されている。
【0053】
その後、制御部33は、ステップS22で分けられたグループのうち、最も少ない電池数のグループを決定する(ステップS23)。少ない電池数のグループほど、グループを構成する1個、1個の電池21~2Nの両端電圧が高いとみなすことができる。なお、ステップS23において、制御部33は、最も少ない電池数のグループが複数グループあった場合、総電圧がVmaxに最も近いグループに決定するようにしてもよい。また、グループ内の最小、最大の電圧差が小さいものを選んで決定するようにしてもよい。次に、制御部33は、決定されたグループ内の電池21~2Nのみ接続状態として、その他の電池21~2Nを非接続状態とする(ステップS24)。
【0054】
その後、制御部33は、充電を開始する(ステップS25)。次に、制御部33は、接続状態であるグループ内の電池21~2Nの何れかが放電終止電圧に達したか否かを判定する(ステップS26)。グループ内の電池21~2Nの何れかが放電終止電圧に達していなければ(ステップS26でN)、制御部33は、ステップS23に戻る。一方、グループ内の電池21~2Nの何れか1つでも放電終止電圧に達していれば(ステップS26でY)、制御部33は、全電池21~2Nが放電したか否かを判定する(ステップS27)。全電池21~2Nが放電していなければ(ステップS27でN)、制御部33はステップS23に戻る。
【0055】
これに対して、全電池21~2Nが放電していれば(ステップS27でY)、制御部33は全第1スイッチSW11~SW1N、全第2スイッチSW21~SW2Nをオフして(ステップS28)、処理を終了する。また、充電については、上述した放電処理についての説明中の「放電」を「充電」に置き換え、ステップS21の「放電終了電圧=3V」を「充電終了電圧=4V」に置き換え、「Vmax」を「Vmax´」に、「Vmin」を「Vmin´」に置き換えて説明することができる。双方向のDC/DCコンバータ4では、充電方向と放電方向とで高効率範囲が異なることがあるので、VmaxとVmax´、VminとVmin´は、異なる値に設定されていてもよい。
【0056】
ただし、ステップS23においては、制御部33は、ステップS22で分けられたグループのうち、最も多い電池数のグループを決定する。多い電池数のグループほど、グループを構成する1個、1個の電池21~2Nの両端電圧が低いとみなすことができる。なお、充電時のステップS23において、制御部33は、最も多い電池数のグループが複数グループあった場合、総電池がVmin´に最も近いグループに決定するようにしてもよい。また、グループ内の最小、最大の電圧差が小さいものを選んで決定するようにしてもよい。
【0057】
上述した第3実施形態によれば、総電圧がDC/DCコンバータ4の高効率範囲内になるような組み合わせの電池21~23を接続状態とする。これにより、電池パック2の総電圧がDC/DCコンバータ4の高効率変換領域から外れるのを抑制することができる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0059】
上述した実施形態によれば、切替部311~31Nとしては、2つの第1スイッチSW11~SW1N、第2スイッチSW21~SW2Nとから構成されていたが、これに限ったものではない。切替部311~31Nとしては、電池21~2Nと、電池21~2Nに並列接続されたバイパス回路と、の何れかを選択する切替スイッチから構成されていてもよい。
【0060】
ここで、上述した本発明に係る電池制御ユニットおよび電池システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
複数の電池(21~2N)毎に設けられ、対応する前記電池(21~2N)を負荷(6)又は充電器(5)に接続可能とする接続状態と、対応する前記電池(21~2N)を前記負荷(6)又は前記充電器(5)に接続不可とする非接続状態と、に切り替える切替部(311~31N)と、
前記切替部(311~31N)を制御して前記複数の電池(21~2N)のうち少なくとも1つを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池(21~2N)が終止電圧に達したか否かを判定し、前記終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記電池(21~2N)を、他の前記電池(21~2N)に切り替える制御部(33)と、
前記電池(21~2N)と前記負荷(6)又は前記充電器(5)との間に設けられたDC/DCコンバータ(4)と、を備えた、
電池制御ユニット(3)。
[2]
[1]に記載の電池制御ユニット(3)において、
前記制御部(33)は、前記接続状態とする電池(21~2N)の数が、前記切り替え前と前記切り替え後とで同じになるように切り替える、
電池制御ユニット(3)。
[3]
[1]に記載の電池制御ユニット(3)において、
前記複数の電池(21~2N)を、総電圧が予め定めた範囲内となる複数のグループに分け、
前記制御部(33)が、前記複数のグループの1つを前記接続状態とし、前記接続状態の前記電池(21~2N)が終止電圧に達したか否かを判定し、前記終止電圧に達したと判定すると、前記接続状態とする前記グループを、他の前記グループに切り替える、
電池制御ユニット(3)。
[4]
複数の電池(21~2N)と、
[1]~[3]何れか1項に記載の電池制御ユニット(3)と、を備えた、
電池システム(1)。
【符号の説明】
【0061】
1 電池システム
3 電池制御ユニット
4 DC/DCコンバータ
5 充電器
6 負荷
21~2N 電池
311~31N 切替部