(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】わた
(51)【国際特許分類】
D04H 1/02 20060101AFI20240702BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20240702BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20240702BHJP
D04H 1/4334 20120101ALI20240702BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20240702BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20240702BHJP
【FI】
D04H1/02
A47G9/02 B
D04H1/425
D04H1/4334
D04H1/435
D04H1/4382
(21)【出願番号】P 2020048207
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮越 亮多
(72)【発明者】
【氏名】櫛野 守
(72)【発明者】
【氏名】井原 周平
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-058299(JP,U)
【文献】特開2013-233192(JP,A)
【文献】特開昭54-088369(JP,A)
【文献】特開2001-190384(JP,A)
【文献】特表2010-532827(JP,A)
【文献】特開昭57-089649(JP,A)
【文献】実公昭53-018009(JP,Y2)
【文献】実開昭49-099514(JP,U)
【文献】特開2020-090732(JP,A)
【文献】特開2021-146589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/02
B68G 1/00 - 99/00
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混率20wt%~60wt%の吸湿性繊維と混率80wt%~40wt%の疎水性繊維が混合されてなるわたであって、該吸湿性繊維は、植物繊維カポック、動物繊維、及び該植物繊維カポック以外のセルロース繊維から成る群から選ばれる少なくとも1種以上であり、該植物繊維カポックの混率は、0.1wt%~40wt%であり、該疎水性繊維は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維(ナイロン)、及びポリ乳酸繊維からなる群から選ばれる合成繊維であり、かつ、
該わたは、直径が0.5mm~30mmの円形又は楕円形の外観を呈することを特徴とする略球状形態のわた。
【請求項2】
吸湿発熱値が3℃~8℃であり、吸放湿性が3%~15%であり、かつ、保温性が60%~85%である、請求項1に記載のわた。
【請求項3】
前記植物繊維カポックの単繊維繊度が、0.15dtex以上0.30dtex以下である、請求項1又は2に記載のわた。
【請求項4】
前記合成繊維の単繊維繊度が、1.0dtex以上10dtex以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のわた。
【請求項5】
前記動物繊維の混率が0.1wt%以上40wt%以下であり、かつ、単繊維直径が10μm以上25μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のわた。
【請求項6】
前記植物繊維カポック以外のセルロース繊維の混率が0.1wt%以上40wt%以下であり、かつ、単繊維繊度が、1.0dtex以上10dtex以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のわた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に衣料及び寝装寝具等に用いられる、吸湿発熱性、吸放湿性、及び保温性に優れた環境配慮型の粒状のわたに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冬の寒冷時期には身体の保温性を得るために、表地布帛などの間に、羽毛や中入れわたといった保温材などを使用した、外気と内衣や肌との間に空気層を有する断熱構造とした防寒衣類、寝具を使用している。
このように保温性を持たせる目的で使用される素材形態としては、羽毛、わた、最近では、粒状わたといった素材が使用されているのが一般的になってきている。
他方、吸放湿性、吸湿発熱性を有するアクリル系繊維やセルロース系繊維が開発されている。これらの繊維をわたに適用して温かさや軽さの機能を発現することも試みられているが、単に混用するだけでは、わた内の緻密な空気層が得られないことから、保温性に関して十分満足できるものは得られていない。
また、近年では、世界的に地球環境への意識が高まっており、廃プラスチック化や二酸化炭素の排出量の削減といった課題が企業に課せられている。また、この取り組みは。企業イメージにも大きく左右されるところである。
【0003】
これらの問題を解決するため、一手法として、天然繊維素材を選定することが挙げられる。例えば、わた、麻、カポック、パンヤ、亜麻、大麻、芋麻、羊毛、アルパカ、カシミヤ、モヘヤなどが代表的であるが、その中でも最近一注目を浴びているのが植物繊維のカポックである。
一般に、植物繊維カポックは、これまで、軽量、撥水性、繊維が緻密な特性を持つ素材であることから、救命胴衣などの資材分野、枕やぬいぐるみなどの寝具、雑貨品の単なる詰めわたとして使用されていた。
しかしながら、植物繊維カポックのわた生産における加工に関しては、いくつかの問題点があった。その一つは、わた状にするとき、繊維長が短いため繊維が脱落し易いことである、また、製品のドライクリーニング後の繊維のへたりが発生し、高品質なわたを提供する上ではカポックの使用は敬遠されていた。
【0004】
以下の特許文献1では、繊維の粒状体を大きく丸く作るための方法が記載されているが、風合いが硬かったり、へたり易いという問題がある。
また、以下の特許文献2では、ポリトリメチレンテレフタレート短繊維を一定混率以上含ませることで風合い、弾力性を向上させる方法が開示されているが、吸湿発熱性、吸放湿性を謳えるものではない。
また、以下の特許文献3では、カポック綿の脱落を防止するために他の素材と結合剤を介して不均一に混合結合されている複合基材が開示されているが、結合剤を付与した後にキュアリングする工程が必要であり、風合いが低下、生産性も悪化することから実用化は進んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許3990350号
【文献】特開2018-178304号公報
【文献】特開昭54-88368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、吸湿発熱性、吸放湿性、及び保温性を兼ね備えた環境配慮型の粒状のわたを提供することである。
【0007】
本願発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、軽くて、緻密であるうえに、中空率約80%という高中空天然繊維であるという植物繊維カポックの特徴を生かして、保温性、断熱効果の特性を発現させるために、主にこの植物繊維カポックを使用し、羊毛、アルパカ、カシミヤなどの動物繊維とセルロース繊維と合成繊維を適正な混率で用いてわたを作ることで、わた本来の必要とされる特性(吸湿発熱性、吸放湿性、保温率)が得られることを予想外に見出し、本願発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]混率20wt%~60wt%の吸湿性繊維と混率80wt%~40wt%の疎水性繊維が混合されてなるわたであって、該吸湿性繊維は、植物繊維カポック、動物繊維、及びセルロース繊維から成る群から選ばれる少なくとも1種以上であり、該植物繊維カポックの混率は、0.1wt%~40wt%であり、該疎水性繊維は、合成繊維であり、かつ、該粒状のわたは、直径が0.5~30mmの円形又は楕円形の外観を呈することを特徴とする略球状形態のわた。
[2]吸湿発熱値が3℃~8℃であり、吸放湿性が3%~15%であり、かつ、保温性が60%~85%である、前記[1]に記載のわた。
[3]前記植物繊維カポックの単繊維繊度が、0.15dtex以上0.30dtex以下である、前記[1]又は[2]に記載のわた。
[4]前記合成繊維の単繊維繊度が、1.0dtex以上10dtex以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のわた。
[5]前記動物繊維の混率が0.1wt%以上40wt%以下であり、かつ、単繊維直径が10μm以上25μm以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のわた。
[6]前記セルロース繊維の混率が0.1wt%以上40wt%以下であり、かつ、単繊維繊度が、1.0dtex以上10dtex以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載のわた。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るわたは、吸湿性繊維としての植物繊維カポック及び疎水性繊維としての合成繊維を適正な混率でバランスよく混綿することで、わた本来の特性である吸湿発熱性、吸放湿性、及び保温性に優れる環境配慮型の粒状わたであるため、例えば、防寒衣類、布団やクッションなどの寝装寝具、スポーツ・アウトドア用品等に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態のわたの外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のわたは、混率20wt%~60wt%の吸湿性繊維と混率80wt%~40wt%の疎水性繊維が混合されてなるわたであって、該吸湿性繊維は、植物繊維カポック、動物繊維、及びセルロース繊維から成る群から選ばれる少なくとも1種以上であり、該植物繊維カポックの混率は、0.1wt%~40wt%であり、該疎水性繊維は、合成繊維であり、かつ、該粒状のわたは、直径が0.5mm~30mmの円形又は楕円形の外観を呈することを特徴とする略球状形態のわたである。
【0012】
本実施形態のわたは、吸湿発熱値が3℃~8℃であり、吸放湿性が3%~15%であり、かつ、保温性が60%~85%であることが好ましい。
前記植物繊維カポックの単繊維繊度は0.15dtex以上0.30dtex以下であることが好ましい。
前記合成繊維の単繊維繊度は1.0dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
前記動物繊維の混率は0.1wt%以上40wt%以下であり、かつ、単繊維直径が10μm以上25μm以下であることが好ましい。
前記セルロース繊維の混率は0.1wt%以上40wt%以下であり、かつ、単繊維繊度が、1.0dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
【0013】
本実施形態のわたは、吸湿性繊維と疎水性繊維が混合されてなり、吸湿性繊維の少なくとも一部に植物繊維カポック(以下、カポック繊維ともいう。)が含有されている。
本明細書中、用語「吸湿性繊維」とは、天然植物繊維カポック、動物繊維、セルロース繊維等の公定水分率6%以上の繊維をいう。
カポックとは、東南アジアを中心に広く生育されるパンヤ科の木であり、その種子から採れる繊維(わた毛)を利用する目的で広く栽培されている。天然植物繊維カポックは、繊維長2mm~7mmほどの環境負荷が小さい植物繊維であり、極めて軽くて、緻密であるうえに、中空率約80%という高中空構造であることを特徴とする。
【0014】
本実施形態のわたには、吸湿性繊維である、植物繊維カポック、動物繊維、及びセルロース繊維が、合計混率20wt%~60wt%で含まれていることを特徴とする。合計混率が20wt%未満であると、わたに必要とされる吸湿発熱性、吸放湿性、及び/又は保温性が損なわれる。他方、合計混率が60wt%を超えると、疎水性繊維である合成繊維、例えば、ポリエステル繊維の混率が低下することから、かさ高性や洗濯耐久性が著しく低下し、わた形態が保持されず、商品性が失われる。吸湿性繊維である、植物繊維カポック、動物繊維、及びセルロース繊維の合計混率は、好ましくは25wt%~50wt%である。
【0015】
本実施形態のわたには、カポック繊維が0.1wt%以上40wt%以下の混率で含まれる必要がある。カポック繊維の混率が40wt%を超えると、わた製品でのカポック繊維の脱落が多くなり、縫製時でのカポック繊維の飛散などで作業環境を悪化させることや、衣料製品の着用時や洗濯などでのカポック繊維の脱落により、わたとしての機能低下や、わたを縫い合わした衣料表面の外見が悪くなる。他方、0.1wt%未満では所望の効果が発現されない。カポック繊維の混率は、好ましくは1.0wt%以上35wt%以下であり、より好ましくは10wt%以上30wt%以下である。
【0016】
本実施形態のわたには、吸湿性繊維として、カポック繊維以外に動物繊維が40wt%以下の混率で含まれていてもよい。動物繊維としては、羊毛、アンゴラ、カシミヤなどが挙げられる。カポック繊維、セルロース繊維は、捲縮が少ないため、繊維同士が絡みにくく加工が難しいとされているが、動物繊維は捲縮性があるため絡みやすく、繊維がかさ高になり、かつ弾力性も出るためへたり性にも効果が得られる。動物繊維の混率が0.1wt%以上であることが好ましく、より好ましくは1.0wt%以上30wt%以下である。
【0017】
本実施形態のわたには、吸湿性繊維として、カポック繊維以外にセルロース繊維が40wt%以下の混率で含まれていてもよい。セルロース繊維としては、天然繊維の綿、麻や、再生セルロース繊維のキュプラ・アンモニウム・レーヨン、ビスコース・レーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維などが挙げられる。セルロース繊維の混率が0.1wt%以上であることがより好ましく、特に好ましくは1.0wt%以上30wt%以下である。
【0018】
本実施形態のわたには、疎水性繊維である合成繊維が40wt%~80wt%の混率で含まれる。混率がこの範囲であれば、吸湿性繊維の効果を下げずに、わたとしての強度等の特性を付与でき、かさ高性や洗濯耐久性に優れ、特にドライクリーニング後のへたりやわたの偏りを抑制し、必要とされるわた形態を保持することができる。合成繊維としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維(ナイロン)などが挙げられるが、植物由来のポリ乳酸繊維であれば、エコ商品として謳うことができ、好ましい。
【0019】
本実施形態のわたの直径とは、
図2に示すように、粒状わた毛羽部分中心の粒わた部分の直径D(mm)と、一方から飛び出している毛羽部分の長さをL
1(mm)、さらに粒状わた部分を挟んで反対側から飛び出している毛羽部分の長さをL
2(mm)としたとき、それぞれの値の和(D+L
1+L
2)をわたの直径とする。これらは拡大顕微鏡等を用いて容易に測定可能であり、例えば以下の実施例においてはKEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX―2000を用いて測定を行った。
【0020】
本実施形態のわたは、粒状わた表面から飛び出した毛羽部分を有しており、粒状わた毛羽部分中心の粒わた部分の直径をD(mm)、一方から飛び出している毛羽部分の長さをL1(mm)としたとき、毛羽部分の長さL1と粒の直径Dとの比率が、0.2≦L1/D≦3の範囲であれば、毛羽部分同士が絡むことにより、わたの膨らみを保持し、偏りを軽減し、保温性をより良好なものにすることができる。L2についても同様であり、L1とL2を併せてLと表記した時に、0.2≦L/D≦3の範囲であれば好ましく、より好ましくは0.5≦L/D≦2である。
【0021】
本実施形態のわたは、粒状であって、その直径が0.5mm~30mmの円形又は楕円形の外観を呈する略球状形態にあることを特徴とする。本明細書中、用語「粒状のわた」とは、繊維を開繊、混綿させた後、粒わた生成機にてボール状に生成されたものである。
本実施形態のわたの直径が0.5mm未満であると粒状わたを充填させた際に粒わた部分同士が密になり商品として重く、膨らみの無い風合いとなり、他方、直径が30mmを超えると十分な充填率を満たせず、審美性、機能性が損なわれる。本実施形態の粒わたの直径は好ましくは5mm以上15mm以下である。
【0022】
本実施形態のわたを構成する各繊維は、わたの性能を満足させるために、それぞれ以下の形状であることが好ましい。
カポック繊維は、繊維長7mm~15mm、単繊維繊度0.15dtex以上0.30dtex以下であることが好ましい。
動物繊維は、天然繊維であるため不均一な形状であるが、繊維長30mm~100mm、単繊維直径10μm以上25μm以下であることが好ましい。
セルロース繊維は、繊維長36mm~51mm、単繊維繊度1.0dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
合成繊維は、繊維長30mm~60mm、単繊維繊度1.0dtex以上10dtex以下であることが好ましい。
【0023】
本実施形態のわたは、後述する方法で測定される吸湿発熱値が3℃~8℃、吸放湿性が3~15%、及び保温性が60%~85%という優れた性能を発現することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。
尚、以下の実施例では、具体的な材料名や数値等を挙げて説明しているが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
各繊維の公定水分率としては、JIS 0105 繊維製品の物理試験方法通則記載の測定方法で測定した値を採用した。
わたの直径は、前述のKEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX―2000を用いてD、L1、及びL2の測定を行った。このとき、サンプルから粒を6点選択し、それぞれの顕微鏡視野における水平方向、垂直方向に計2回測定を行い、あわせて12回の測定平均を求めた。L/Dは各測定におけるL1/DとL2/Dの、あわせて24回の測定平均を求めた。
【0025】
(実施例1)
天然植物繊維カポック(繊度0.15dtex~0.30dtex、繊維長9mm~15mm、公定水分率6%以上)、動物繊維カシミヤ(繊維長25mm~90mm、単繊維直径12μm~20μm、公定水分率15%)、ポリエステル繊維(繊度3.3dtex、繊維長51mm、公定水分率0.4%)を20:10:70の比率で、開繊、混綿させた後、粒わた生成機にてボール状に生成し、直径が9.5mm、L/Dが0.8である円形又は楕円形の外観を有する略球状形態に形成されたわたを得た。
【0026】
(実施例2)
植物繊維カポックとセルロース繊維(繊度1.4dtex、繊維長51mm、公定水分率11%)とポリエステル繊維を20:30:50の比率で、含有させる以外は、実施例1と同様にして開繊、混綿させた後、粒わた生成機にてボール状に生成し、直径が9.8mm、L/Dが0.7である円形又は楕円形の外観を有する略球状形態に形成されたわたを得た。
【0027】
(実施例3)
植物繊維カポックとポリエステル繊維を30:70の比率で含有させる以外は、実施例1と同様にして開繊、混綿させた後、粒わた生成機にてボール状に生成し、直径が10.0mm、L/Dが1.0である円形又は楕円形の外観を有する略球状形態に形成されたわたを得た。
【0028】
(比較例1)
ポリエステル繊維(繊度3.3dtex、繊維長51mm、公定水分率0.4%)を開繊、混綿させた後、粒わた生成機にてボール状に生成し、直径が13.8mm、L/Dが0.5である円形又は楕円形の外観を有する略球状形態に形成されたわたを得た。
【0029】
以上のようにして作成された実施例、比較例のわたについて、吸湿発熱性、吸放湿性、保温性を以下のようにして測定、評価した。評価結果を以下の表1に示す。
【0030】
(1)吸湿発熱値(℃)
わた試料5gを恒温乾燥機内で105℃、1時間放置させた後、一般に言う環境試験室にて、温度20℃、湿度5%RHの環境下6時間放置させた後、温度20℃、湿度65%RHの環境下に5分間放置したときのわたの表面変化温度のピーク値を赤外線サーモグラフィーにて測定して、高湿度環境による温度上昇(℃)を算出した。
【0031】
(2)吸放湿性(%)
わた試料5gを恒温乾燥機内で105℃、2時間放置させて絶乾状態にした後、このわた重量を基に、温度30℃、湿度95%RHの初期環境下に5時間放置させた後、温度30℃、湿度30%RH環境下に5時間放置した時のわたの重量変化を経時的に測定していき、わたの絶乾重量から算出される吸湿された初期の環境下での水分率の最大値から、その後の環境下で放出された水分率の最小値の差を算出した。
【0032】
(3)保温性(%)及びclo値
JIS L 1096 A法(恒温法)に準じて測定するものであり、外気温度は、23.0℃、発熱体表面温度は、36.0℃とした。
【0033】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るわたは、天然繊維カポック、動物繊維、セルロース繊維、及び合成繊維を適正な混率でバランスよく混綿することで、吸湿発熱性、吸放湿性、保温性などの高い機能を有する、環境配慮型の粒状わたであるため、例えば、防寒衣類に好適に利用可能である。