(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】基板トレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01L21/68 U
(21)【出願番号】P 2020062216
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
(72)【発明者】
【氏名】入江 暢
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-051651(JP,A)
【文献】特開2006-041028(JP,A)
【文献】特開2005-005495(JP,A)
【文献】特開2013-071742(JP,A)
【文献】特開2016-192453(JP,A)
【文献】特開2008-81269(JP,A)
【文献】特開2004-319623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクエア形状またはセミスクエア形状の基板をホールドする基板トレイであって、
前記基板を収容するスクエア形状の窪みで構成されるポケットを有し、
前記ポケットの底は、前記ポケットの4つの側壁側から前記ポケットの内側に向けて順に周底部と中央底部とを有し、
前記周底部は、
前記中央底部よりも浅く、前記基板の4つの辺部の裏面を支持し、
前記ポケットの前記側壁に沿う方向に、前記ポケットのコーナー間の中央から前記コーナーに向けて次第に浅くなるように湾曲して
おり、
4つの前記側壁側から前記ポケットの内側に向けて次第に深くなるように傾斜しており、
前記周底部の4つの前記側壁側から前記ポケットの内側へ向けた傾斜は、前記ポケットのコーナー間の中央から前記コーナーに向けて次第に急になっている、
基板トレイ。
【請求項2】
前記周底部の前記側壁に沿う方向の湾曲は、前記基板の角部の裏面のみを支持するときの前記基板の4つの辺部の反りの湾曲よりも緩やかであり、前記基板の4辺部の中央部の裏面のみを支持するときの前記基板の4つの辺部の反りの湾曲よりも急である、請求項
1に記載の基板トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽電池セルの製造工程、特にCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相堆積)法またはPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相堆積)法等を用いた半導体層またはTCO(Transparent Conductive Oxide)層等の製膜工程において、スクエア(四角)形状またはセミスクエア(四角形状の四隅をカットした八角)形状の半導体基板(半導体ウェハ)をホールドする基板トレイが用いられる。このような基板トレイとして、特許文献1にはポケットタイプの基板トレイが開示されており、特許文献2にはピンタイプの基板トレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-192453号公報
【文献】特開2014-118631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピンタイプの基板トレイでは、半導体基板の角以外にピンを設けることにより半導体基板をホールドするため、いわゆる製膜時の製膜ガスの裏回り(半導体基板の製膜面と反対側の裏側に製膜ガスが回り込み、半導体基板の裏側も製膜されること)の抑制効果が低い。
【0005】
一方、ポケットタイプの基板トレイでは、スクエア形状の窪みからなるポケットに半導体基板が収容されるため、製膜時の製膜ガスの裏回りの抑制効果が高い。しかし、ポケットタイプの基板トレイでも、自重により半導体基板が反ってしまうことにより、製膜時の製膜ガスの裏回りが増加してしまうことがある。
【0006】
本発明は、ポケットタイプの基板トレイにおいて、半導体基板の反りに起因する製膜時の製膜ガスの裏回りを低減する基板トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る基板トレイは、スクエア形状またはセミスクエア形状の基板をホールドする基板トレイであって、前記基板を収容するスクエア形状の窪みで構成されるポケットを有する。前記ポケットの底は、前記ポケットの4つの側壁側から前記ポケットの内側に向けて順に周底部と中央底部とを有する。前記周底部は、前記中央底部よりも浅く、前記基板の4つの辺部の裏面を支持し、前記ポケットの前記側壁に沿う方向に、前記ポケットのコーナー間の中央から前記コーナーに向けて次第に浅くなるように湾曲している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポケットタイプの基板トレイにおいて、半導体基板の反りに起因する製膜時の製膜ガスの裏回りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る基板トレイを示す平面図である。
【
図2】
図1に示す基板トレイにおけるII部分(ポケット)を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図2に示す基板トレイのポケットの一例の斜視図である。
【
図4】
図2に示す基板トレイのポケットの一例におけるIVA-IVA線端面(半分)、IVB-IVB線端面(半分)、IVC-IVC線端面(半分)、IVD-IVD線端面(半分)、IVE-IVE線端面(半分)、およびIVF-IVF線端面(半分)を重ねて示す図である。
【
図5】半導体基板の一例の反り(撓み)特性のシミュレーション結果である。
【
図6】半導体基板の辺部における支持位置による、半導体基板の一例の辺部の反り(撓み)特性のシミュレーション結果である。
【
図7】
図6における半導体基板の辺部の支持位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0011】
図1は、本実施形態に係る基板トレイを示す平面図である。
図1に示す基板トレイ1は、例えば太陽電池セルの製造工程、特にCVD法またはPVD法等を用いた半導体層またはTCO層等の製膜工程において、スクエア形状またはセミスクエア形状の半導体基板(半導体ウェハ)をホールドする基板トレイである。基板トレイ1の材料としては、特に限定されないが、例えばアルミニウムが挙げられる。基板トレイ1は、半導体基板を収容するスクエア形状の窪みで構成される複数のポケット10を有する。複数のポケット10は、例えば2次元状に配列されている。
【0012】
図2は、
図1に示す基板トレイにおけるポケット(II部分)を拡大して示す平面図である。
図3は、
図2に示す基板トレイのポケットの一例の斜視図であり、
図4は、
図2に示す基板トレイのポケットの一例におけるIVA-IVA線端面(半分)、IVB-IVB線端面(半分)、IVC-IVC線端面(半分)、IVD-IVD線端面(半分)、IVE-IVE線端面(半分)、およびIVF-IVF線端面(半分)を重ねて示す図である。
【0013】
図2~
図4に示すように、ポケット10は、4つの側壁20を有する。ポケット10の底は、4つの側壁20からポケット10の内側に向けて順に周底部31と中央底部33とを有する。ポケット10の底と反対側には、半導体基板Wを収容または取り出すための開口を有する。
【0014】
周底部31は、中央底部33よりも浅く、半導体基板Wの周縁部、すなわち4つの辺部、の裏面を支持する。周底部31は、4つの側壁20からポケット10の内側に向けて次第に深くなるように傾斜している。
【0015】
ここで、
図5に、半導体基板Wの一例(6インチ×170μm(厚さ))の反り(撓み)特性のシミュレーション結果を示す。
図5に示すように、半導体基板Wは、自重により3次元的に反る(撓む)ことがある。
図5では、半導体基板Wの辺部の中央部が150μm~175μmの範囲に位置するのに対して、半導体基板Wの角部は200μm~225μmの範囲に位置する。本願発明者(ら)の知見によれば、例えば6インチ×170μm(厚さ)の半導体基板Wでは、半導体基板Wの辺部の中央部に対して、半導体基板Wの角部は40μm~70μmほど反る(撓む)ことがある。
【0016】
これに対して、基板トレイのポケットの周底部の側壁に沿う方向の高さが均一であると、半導体基板Wの辺部の中央部が支持され、半導体基板Wの角部が浮いてしまう。すると、製膜時の製膜ガスの裏回りが発生してしまう。
【0017】
この点に関し、本実施形態では、周底部31を、半導体基板Wの反り(撓み)に追従した形状とする。具体的には、
図3および
図4に示すように、周底部31は、側壁20に沿う方向に、ポケット10のコーナー間の中央からコーナーに向けて次第に浅くなるように湾曲している。
【0018】
換言すると、周底部31の4つの側壁20からポケット10の内側へ向けた傾斜は、ポケット10のコーナー間の中央からコーナーに向けて次第に急になっている。
【0019】
ここで、
図6に、半導体基板Wの辺部における支持位置による、半導体基板Wの一例(6インチ×170μm(厚さ))の辺部の反り(撓み)特性のシミュレーション結果(4辺の平均値)を示す。
図6に示すように、半導体基板Wの角部(
図7のG)の裏面のみを支持するときに、半導体基板Wの4つの辺部の反り(撓み)が最大となり(曲線G)、半導体基板Wの4辺部の中央部(
図7のH)の裏面のみを支持するときの半導体基板Wの4辺部の反り(撓み)が最小となる(曲線H)。
【0020】
この点に関し、本実施形態では、周底部31の側壁20に沿う方向の湾曲は、半導体基板Wの角部の裏面のみを支持するときの半導体基板Wの4つの辺部の反り(撓み)の湾曲よりも緩やかであり、半導体基板Wの4つの辺部の中央部の裏面のみを支持するときの半導体基板Wの4辺部の反り(撓み)の湾曲よりも急である。
【0021】
以上説明したように、本実施形態の基板トレイ1によれば、ポケット10における、半導体基板Wの4つの辺部の裏面を支持する周底部31は、ポケット10の側壁20に沿う方向に、ポケット10のコーナー間の中央からコーナーに向けて次第に浅くなるように湾曲している。すなわち、ポケット10の周底部31は、ポケット10の辺部の反り(撓み)に追従した形状である。これにより、半導体基板の反りに起因する、半導体基板Wの角部の浮きを低減することができ、製膜時の製膜ガスの裏回りを低減することができる。
【0022】
また、本実施形態の基板トレイ1によれば、ポケット10の周底部31の側壁20に沿う方向の湾曲は、半導体基板Wの角部の裏面のみを支持するときの半導体基板Wの4つの辺部の反りの湾曲よりも緩やかであり、半導体基板Wの4辺部の中央部の裏面のみを支持するときの半導体基板Wの4つの辺部の反りの湾曲よりも急である。すなわち、周底部31の側壁20に沿う方向の湾曲は、
図5に示す半導体基板Wの4つの辺部の反り(撓み)の最大と最小との間に設定される。これにより、半導体基板の反りに起因する、半導体基板Wの角部の浮きをより低減することができ、製膜時の製膜ガスの裏回りをより低減することができる。
【0023】
また、本実施形態の基板トレイ1によれば、ポケット10の周底部31は、4つの側壁20からポケット10の内側に向けて深くなるように傾斜している。これにより、半導体基板Wの周縁部の裏面のみを支持することができ、半導体基板Wの周縁部以外の裏面がポケット10の底に触れることが抑制され、太陽電池の性能低下を抑制することができる。
【0024】
また、中央底部33を深くすることにより、半導体基板Wの反りが生じても、半導体基板Wの裏面がポケット10の底に触れることが抑制される。
【0025】
更に、周底部31を次第に深くすることにより、半導体基板Wの周縁部の裏面側の空間を小さくできる。このように、半導体基板Wの周縁部の裏面側の空間が小さいと、製膜時の製膜ガスの裏回りが低減される。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、太陽電池の製造工程、特にCVD法またはPVD法等を用いた半導体層またはTCO層等の製膜工程において用いられる基板トレイを例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、スクエア形状またはセミスクエア形状の種々の基板をホールドする基板トレイに適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 基板トレイ
10 ポケット
20 側壁
31 周底部
33 中央底部