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特許7513417鉄道車輪の形状測定装置及び鉄道車輪の形状測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】鉄道車輪の形状測定装置及び鉄道車輪の形状測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240702BHJP
   B61K 9/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01B11/24 R
B61K9/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020071067
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167764
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 利勝
(72)【発明者】
【氏名】花井 勝祥
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131076(JP,A)
【文献】特開平03-128410(JP,A)
【文献】特開2017-181224(JP,A)
【文献】特開2015-215267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
B61K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車輪のレールと接触する踏面への上下方向の広がりを有するレーザ光の照射によって、前記踏面を周方向に分割した複数の分割形状であって、前記複数の分割形状の各々は、所定の中心角の扇型における弧の部分に相当する、複数の分割形状を取得するように構成された取得部と、
前記複数の分割形状を2次元の極座標系又は直交座標系における点の集合データとして扱い、前記周方向の位置を表す基準軸に沿って、前記基準軸と直交する軸方向における前記複数の分割形状の平均値を平均形状として算出するように構成された第1算出部と、
前記基準軸に沿って、前記複数の分割形状の1つにおける点の位置と前記平均形状における点の位置との差を真円度として算出するように構成された第2算出部であって、前記複数の分割形状の各々に対して前記真円度の算出を繰り返す、ように構成された第2算出部と、
を備える、鉄道車輪の形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車輪の形状測定装置であって、
前記取得部は、前記レールの長手方向に沿って互いに離間して配置されるように構成された複数の測定部を有し、
前記複数の測定部は、それぞれ、前記踏面に対し、前記レールの長手方向と、前記レールの幅方向とに交差する方向に前記レーザ光を照射するように構成される、鉄道車輪の形状測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄道車輪の形状測定装置であって、
前記複数の分割形状は、それぞれ、他の分割形状と重複する部分を有する、鉄道車輪の形状測定装置。
【請求項4】
鉄道車輪のレールと接触する踏面への上下方向の広がりを有するレーザ光の照射によって、前記踏面を周方向に分割した複数の分割形状であって、前記複数の分割形状の各々は、所定の中心角の扇型における弧の部分に相応する、複数の分割形状を取得する工程と、
前記複数の分割形状を2次元の極座標系又は直交座標系における点の集合データとして扱い、前記周方向の位置を表す基準軸に沿って、前記基準軸と直交する軸方向における前記複数の分割形状の平均値を平均形状として算出する工程と、
前記基準軸に沿って、前記複数の分割形状の1つにおける点の位置と、前記平均形状における点の位置との差を真円度として算出する工程と、
銭複数の分割形状の各々に対して、前記差を前記真円度として算出する工程を繰り返す工程と、
を備える、鉄道車輪の形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車輪の形状測定装置及び鉄道車輪の形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車輪は、走行安定性及び乗り心地の観点からその踏面の形状管理が重要である。特に鉄道車輪は、滑走の影響などによって必ずしも周方向に均一に摩耗しないため、周方向全体における踏面形状(つまり真円度)の把握が求められる。
【0003】
このような踏面の形状管理の方法として、レーザ光によって踏面の断面形状を測定する方法が考案されている(特許文献1参照)。この方法は、走行状態の鉄道車輪の測定が可能であるため、真円度測定のコスト及び労力が抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-131076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の方法では、断面形状を取得した回転方向の位相を特定することで、真円度を測定している。しかし、取得した複数の踏面の断面形状を繋ぎ合せることで真円度を算出するため、測定精度に改善の余地がある。
【0006】
本開示の一局面は、走行状態の鉄道車輪に対し踏面の真円度を精度よく測定できる鉄道車輪の形状測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、鉄道車輪のレールと接触する踏面へのレーザ光の照射によって、踏面を周方向に分割した複数の分割形状を取得するように構成された取得部と、複数の分割形状と、複数の分割形状を平均した平均形状とから、踏面の真円度を算出するように構成された算出部と、を備える鉄道車輪の形状測定装置である。
【0008】
このような構成によれば、レーザ光によって取得した踏面の周方向の分割形状から真円度を算出することができるため、踏面の形状を取得する位相による影響が避けられる。そのため、走行中の鉄道車輪に対して精度よく踏面の真円度を測定できる。
【0009】
本開示の一態様では、取得部は、レールの長手方向に沿って互いに離間して配置されるように構成された複数の測定部を有してもよい。複数の測定部は、それぞれ、踏面に対し、レールの長手方向と、レールの幅方向とに交差する方向にレーザ光を照射するように構成されてもよい。このような構成によれば、取得部の設置が容易となるため、踏面の形状測定におけるコスト及び労力が抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、複数の分割形状は、それぞれ、他の分割形状と重複する部分を有してもよい。このような構成によれば、踏面の真円度の算出精度を向上させることができる。
【0011】
本開示の別の態様は、鉄道車輪のレールと接触する踏面へのレーザ光の照射によって、踏面を周方向に分割した複数の分割形状を取得する工程と、複数の分割形状と、複数の分割形状を平均した平均形状とから、踏面の真円度を算出する工程と、を備える鉄道車輪の形状測定方法である。
【0012】
このような構成によれば、レーザ光によって取得した踏面の周方向の分割形状から真円度を算出することができるため、走行中の鉄道車輪に対して精度よく踏面の真円度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態における鉄道車輪の形状測定装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図2図2は、鉄道車輪の中心軸を含む仮想面における模式的な部分断面図である。
図3図3は、図1の鉄道車輪の形状測定装置における複数の測定部の配置を示す模式的な側面図である。
図4図4は、図3の測定部と鉄道車輪との位置関係を示す模式的な正面図である。
図5図5は、図3の測定部と鉄道車輪との位置関係を示す模式的な平面図である。
図6図6Aは、分割形状と平均形状との差を説明する模式図であり、図6Bは、真円度を説明する模式図である。
図7図7は、実施形態における鉄道車輪の形状測定方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す鉄道車輪の形状測定装置(以下、単に「形状測定装置」ともいう。)1は、走行中の鉄道車輪の形状を測定するための装置である。形状測定装置1は、取得部2と、算出部3とを備える。
【0015】
<取得部>
取得部2は、図2に示す鉄道車輪101のレールと接触する踏面102Aへのレーザ光の照射によって、踏面102Aを周方向に分割した複数の分割形状を取得するように構成されている。
【0016】
鉄道車輪101は、円環状のリム部102と、リム部102の内側に配置された円盤状の板部103とを備える。リム部102は、踏面102Aと、フランジ102Bとを有している。
【0017】
踏面102Aは、鉄道車輪101がレール上を走行する際に、レールと接触する面である。リム部102の回転軸を含む仮想面における踏面102Aの断面(つまり、回転軸を含む踏面102Aの断面)は、鉄道車輪101の回転軸と概ね平行な方向、つまり鉄道車輪101がレール上に設置された状態において概ね水平方向に延伸している。
【0018】
フランジ102Bは、リム部102の周方向全体にわたって、踏面102Aよりもリム部102の径方向外側に突出した円環状の部位である。フランジ102Bは、レールの内側の側面、つまりレール同士が対向する面に接触する。
【0019】
取得部2は、複数の測定部21を有する。複数の測定部21は、図3に示すように、レールRの長手方向(つまり鉄道車両の走行方向)に沿って互いに離間して配置されるように構成されている。
【0020】
測定部21は、図4及び図5に示すように、踏面102Aに向けてレーザ光を出射する投光部21Aと、踏面102Aで反射したレーザ光を検出する受光部21Bとを有するレーザ装置である。
【0021】
測定部21は、踏面102Aに対し、レールRの長手方向と、レールRの幅方向(つまり枕木方向)とに交差する方向にレーザ光を照射するように構成されている。また、測定部21は、レールRの幅方向外側に配置されている。つまり、測定部21は、レールR上を走行する鉄道車両と上下方向に重ならない位置に配置されている。
【0022】
図3に示すように、測定部21は、上下方向の拡がり角αを有するレーザ光を投光及び受光する。測定部21は、鉄道車輪101が測定位置に到達した時点でレーザ光の照射を行う。鉄道車輪101の位置は、例えばレールRの側方に配置したセンサ21Cによって検知される。
【0023】
1つの測定部21によって、踏面102Aのうち中心角βの扇型における弧の部分が、踏面102Aの分割形状として測定される。1つの測定部21が測定する分割形状の中心角βの上限としては、90°であり、70°が好ましい。また、1つの測定部21が測定する分割形状の中心角βの下限としては、5°であり、50°が好ましい。
【0024】
中心角βが大きすぎると、レーザ光がレールR又は鉄道車両の車体に干渉するおそれや、測定される分割形状のひずみが大きくなるおそれがある。一方、中心角βが小さすぎると、真円度の算出精度が低下するおそれや、必要な測定部21の数が多大となるおそれがある。
【0025】
取得部2は、複数の分割形状を組み合わせることで踏面102Aの周方向全体の形状が得られる数の測定部21を有するとよい。つまり、取得部2は、少なくとも360°を分割形状の中心角βで除した数の測定部21を有するとよい。また、複数の測定部21は、レールRの長手方向において等間隔に配置されることが好ましい。
【0026】
複数の分割形状は、それぞれ、他の分割形状と重複する部分を有するとよい。例えば、測定される分割形状の中心角βがそれぞれ60°である8つの測定部21を取得部2が有すると、分割形状の周方向両端それぞれにおける中心角が7.5°の範囲が他の分割形状と重複する部分となる。このように複数の分割形状の一部を互いに重複させることより、踏面102Aの真円度の算出精度を向上させることができる。
【0027】
なお、踏面102Aの周方向において、複数の測定部21によって測定されない1又は複数の非測定領域が存在してもよい。非測定領域の中心角の合計(つまり複数の非測定領域を足し合わせた領域の中心角)は、30°以下が好ましい。
【0028】
<算出部>
算出部3は、取得部2が取得した複数の分割形状と、複数の分割形状を平均した平均形状とから、踏面102Aの真円度を算出するように構成されている。算出部3は、例えば入出力部を備えるコンピュータにより構成される。
【0029】
具体的には、算出部3は、複数の分割形状を例えば2次元の極座標系又は直交座標系における点の集合データとして扱う。算出部3は、まず、踏面102Aの周方向の位置を表す基準軸(例えばθ軸)に沿って、複数の分割形状における基準軸と直交する軸(例えばr軸)における平均値を算出することで、代表値としての平均形状を算出する。
【0030】
次に、算出部3は、図6Aに示すように、基準軸(図6Aではθ方向)に沿って1つの分割形状P1における点の位置(図6Aではr値)と、平均形状P2における点の位置との差Dを真円度として算出する。
【0031】
算出部3は、この真円度の算出を複数の分割形状に対して繰り返すことで、図6Bに示すように、踏面102Aの真円度を算出する。なお、図6Bの実線は複数の分割形状P1を周方向に連結して配置したものである。図6Bの破線は、平均形状P2を周方向に繰り返して配置したものである。
【0032】
また、算出部3は、物理的に測定された踏面102Aの実測形状と、複数の分割形状との比較を行ってもよい。これにより、算出部3による真円度の算出精度の検証を行うことができる。
【0033】
[1-2.形状測定方法]
図7に示す鉄道車輪の形状測定方法は、取得工程S10と、算出工程S20とを備える。本実施形態の鉄道車輪の形状測定方法は、例えば図1の形状測定装置1を用いて実施できる。
【0034】
<取得工程>
本工程では、鉄道車輪101のレールと接触する踏面102へのレーザ光の照射によって、踏面102を周方向に分割した複数の分割形状を取得する。
【0035】
<算出工程>
本工程では、複数の分割形状と、複数の分割形状を平均した平均形状とから、踏面102の真円度を算出する。
【0036】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)レーザ光によって取得した踏面102Aの周方向の分割形状から真円度を算出することができるため、踏面102Aの形状を取得する位相による影響が避けられる。そのため、走行中の鉄道車輪101に対して精度よく踏面102Aの真円度を測定できる。
【0037】
(1b)従来の踏面102Aの断面形状を用いた測定方法では、断面形状を取得する位相が制御できないため、測定装置に対し1つの車輪を複数回通過させる必要がある。これに対し、形状測定装置1では、少なくとも1度車輪が通過すれば真円度を算出できるため、必要な測定データを取得するまでの時間が短縮できる。つまり、連続的に踏面102Aの周方向の形状を測定することができる。
【0038】
(1c)複数の測定部21が踏面102Aに対し、レールの長手方向と、レールの幅方向とに交差する方向にレーザ光を照射することで、複数の測定部21から構成される取得部2の設置が容易となる。そのため、踏面102Aの形状測定のコスト及び労力が抑制できる。
【0039】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0040】
(2a)上記実施形態の鉄道車輪の形状測定装置1において、上述した複数の測定部21の配置はあくまで一例である。例えば、測定部21は、レールの幅方向内側に配置されてもよい。
【0041】
(2b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0042】
1…鉄道車輪の形状測定装置、2…取得部、3…算出部、21…測定部、
21A…投光部、21B…受光部、21C…センサ、101…鉄道車輪、
102…リム部、102A…踏面、102B…フランジ、103…板部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7