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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】タッチパネル装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240702BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G06F3/041 590
G06F3/045 F
G06F3/041 510
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020084686
(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公開番号】P2021179799
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】FCLコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧内 祐仁
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-056914(JP,A)
【文献】特開2015-014957(JP,A)
【文献】特開2018-067270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向の両端に第1電極及び第2電極が設けられた第1抵抗膜と、
前記第1の方向と直交する第2の方向の両端に第3電極及び第4電極が設けられた第2抵抗膜と、
前記第1電極~前記第4電極に接続される複数のスイッチと、
前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加し且つ前記第3電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記第1抵抗膜の入力点としての1点または2点が入力された場合に前記第4電極にかかる第1電圧値を測定すると共に、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加し且つ前記第4電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記1点または前記2点が入力された場合に前記第3電極にかかる第2電圧値を測定する測定手段と、
前記第1電圧値と前記第2電圧値との合計値を前記1点または前記2点の入力点の接触面積に対応する電圧とする決定手段と、
を備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
第1の方向の両端に第1電極及び第2電極が設けられた第1抵抗膜と、
前記第1の方向と直交する第2の方向の両端に第3電極及び第4電極が設けられた第2抵抗膜と、
前記第1電極~前記第4電極のそれぞれに接続される複数のスイッチと、
前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加し且つ前記第3電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記第1抵抗膜の入力点としての2点が入力された場合に前記第4電極にかかる第1電圧値を測定すると共に、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加し且つ前記第4電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記2点が入力された場合に前記第3電極にかかる第2電圧値を測定する測定手段と、
前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分が閾値未満である場合、前記第1電圧値及び前記第2電圧値の合計値を前記2点の入力点の各々の接触面積とし、
前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分が閾値以上である場合、前記第1電圧値及び前記第2電圧値のうち小さい方に対する大きい方の割合を前記合計値に乗算した値を、前記2点の入力点のうち前記大きい方の値が測定された電極に近い入力点の接触面積とし、前記第1電圧値及び前記第2電圧値のうち大きい方に対する小さい方の割合を前記合計値に乗算した値を、前記2点の入力点のうち前記小さい方の値が測定された電極に近い入力点の接触面積とする決定手段と、
を備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記第3電極及び前記第4電極に電圧を印加し且つ前記第1電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記2点が入力された場合に前記第2電極にかかる第3電圧値を測定すると共に、前記第3電極及び前記第4電極に電圧を印加し且つ前記第2電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記2点が入力された場合に前記第1電極にかかる第4電圧値を測定し、
前記決定手段は、
前記第3電圧値と前記第4電圧値との差分が閾値未満である場合、前記第3電圧値及び前記第4電圧値の合計値を前記2点の入力点の各々の接触面積とし、
前記第3電圧値と前記第4電圧値との差分が閾値以上である場合、前記第3電圧値及び前記第4電圧値のうち小さい方に対する大きい方の割合を前記合計値に乗算した値を、前記2点の入力点のうち前記大きい方の値が測定された電極に近い入力点の接触面積とし、前記第3電圧値及び前記第4電圧値のうち大きい方に対する小さい方の割合を前記合計値に乗算した値を、前記2点の入力点のうち前記小さい方の値が測定された電極に近い入力点の接触面積とすることを特徴とする請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記2点の入力点が前記第1の方向と平行な一直線上に配置されていない場合には、前記測定手段は前記第1電圧値及び前記第2電圧値を測定し、前記2点の入力点が前記第1の方向と平行な一直線上に配置されている場合には、前記測定手段は前記第3電圧値及び前記第4電圧値を測定することを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2点タッチの押圧値を考慮して2点間距離を検出するタッチパネル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、2点タッチの押圧値を検出するタッチパネル装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-134316号公報
【文献】特開2018-67270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献2の図6の等価回路では、2点の入力点の接触面積が変わらない場合でも、入力点の位置により抵抗R31~36及び電流I3,I4の値が変動するために、検出される2点の接触面積が2つの入力点の位置により大きく変動してしまい、適切に接触面積を検出できないおそれがあった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、入力の位置に依存しない接触面積を検出することができるタッチパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタッチパネル装置は、第1の方向の両端に第1電極及び第2電極が設けられた第1抵抗膜と、前記第1の方向と直交する第2の方向の両端に第3電極及び第4電極が設けられた第2抵抗膜と、前記第1電極~前記第4電極に接続される複数のスイッチと、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加し且つ前記第3電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記第1抵抗膜の入力点としての1点または2点が入力された場合に前記第4電極にかかる第1電圧値を測定すると共に、前記第1電極及び前記第2電極に電圧を印加し且つ前記第4電極を接地するように前記複数のスイッチを制御し、前記1点または前記2点が入力された場合に前記第3電極にかかる第2電圧値を測定する測定手段と、前記第1電圧値と前記第2電圧値との合計値を前記1点または前記2点の入力点の接触面積に対応する電圧とする決定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入力の位置に依存しない接触面積を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は、本実施の形態に係るタッチパネル装置を示す図である。(B)は、CPUの機能を示す機能ブロック図である。
図2】CPUで実行される接触点検出の処理を示すフローチャートである。
図3】(A)は、図2のS5で電圧測定部ADY1が電圧を測定する場合の等価回路を示す図である。(B)は、図2のS5で電圧測定部ADY2が電圧を測定する場合の等価回路を示す図である。
図4】抵抗Rsを100Ωに固定し、抵抗R1及びR2を変化させた場合に、電圧測定部ADY1及びADY2で測定された電圧を示す図である。
図5】2点入力の例を示す図である。
図6】X軸方向の2点間の距離と電圧測定部ADX1において測定される電圧との関係を示す図である。
図7】各接触点における接触面積の算出処理を示すフローチャートである。
図8】各接触点における接触面積の算出処理を示すフローチャートである。
図9】(A)は2点の押下パターンを示す図であり、(B)は図9(A)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。(C)は2点の押下パターンを示す図であり、(D)は図9(C)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。
図10】(A)は2点の押下パターンを示す図であり、(B)は図10(A)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。(C)は2点の押下パターンを示す図であり、(D)は図10(C)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1(A)は、本実施の形態に係るタッチパネル装置を示す図である。図1(A)に示すように、タッチパネル装置100は、スイッチSW1~SW12、抵抗R,Rx1,Ry1、抵抗膜10,20、制御部30及び入出力部36を備えている。抵抗膜10は上部抵抗膜であり、抵抗膜20は下部抵抗膜である。抵抗膜10及び20は互いに対向して配置されており、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置(不図示)と重なる。抵抗膜10(第1抵抗膜)の1つの辺にはXH電極12(第1電極)が設けられ、別の1つの辺にはXH電極12と対向するXL電極14(第2電極)が設けられている。抵抗膜20(第2抵抗膜)の1つの辺にはYH電極22(第3電極)が設けられ、別の1つの辺にはYH電極22と対向するYL電極24(第4電極)が設けられている。XH電極12とXL電極14との対向する方向(X軸方向)は、YH電極22とYL電極24とが対向する方向(Y軸方向)と交叉しており、図1(A)では直交している。
【0011】
抵抗膜10及び20は、例えばITO(Indium Tin Oxide)により形成された透明の導電膜である。抵抗膜10及び20は例えば同じ材料により形成され、電気抵抗は略均一に分布している。XH電極12、XL電極14、YH電極22及びYL電極24は、例えば銅またはアルミニウムなどの金属により形成されている。
【0012】
スイッチSW1~SW12は、それぞれトランジスタにより構成されている。各スイッチのトランジスタのベースは制御部30に接続されている。スイッチSW1、SW4、SW8及びSW10のエミッタは、電源電圧Vccに接続されている。スイッチSW2のエミッタは、抵抗Rx1を介して電源電圧Vccに接続されている。スイッチSW5のエミッタは抵抗Ry1を介して電源電圧Vccに接続されている。スイッチSW3、SW6、SW7、SW9、SW11及びSW12のエミッタは接地されている。電源電圧Vccは例えば5Vである。
【0013】
XH電極12は、スイッチSW1、SW2及びSW11のコレクタに接続され、さらに抵抗Rを介してスイッチSW7のコレクタに接続されている。XL電極14は、スイッチSW3及びSW8のコレクタに接続されている。YH電極22は、スイッチSW4、SW5、SW9及びSW12のコレクタに接続されている。YL電極24は、スイッチSW6及びSW10のコレクタに接続されている。
【0014】
制御部30は、入出力部36を介して外部装置としてのコンピュータ40に接続されている。制御部30で取得されたタッチ入力のデータは、入出力部36を介してコンピュータ40に送信される。入出力部36は、コンピュータ40と制御部30との間でデータの送受信を行うインターフェースである。
【0015】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)31、AD変換器32及びメモリ33を備える。CPU31は、測定手段及び決定手段として機能する。AD変換器32は、電圧測定部ADX1、ADX2、ADY1及びADY2を備える。電圧測定部ADX1はXH電極12に接続され、電圧測定部ADX2はXL電極14に接続されている。電圧測定部ADY1はYH電極22に接続され、電圧測定部ADY2はYL電極24に接続されている。メモリ33は、電圧測定部ADX1、ADX2、ADY1及びADY2で測定された電圧、及び座標検出に必要なデータなどを記憶する。
【0016】
抵抗Rx1の電気抵抗は、XH電極12とXL電極14との間における抵抗膜10の電気抵抗と略同一である。抵抗Ry1の電気抵抗は、YH電極22とYL電極24との間における抵抗膜20の電気抵抗と略同一である。
【0017】
図1(B)は、CPU31の機能を示す機能ブロック図である。CPU31は、印加部34及び検出部35として機能する。印加部34は、スイッチSW1~SW12に電圧を印加しスイッチSW1~SW12のオン/オフを制御することにより、各電極への電圧印加を制御する。検出部35は、電圧測定部ADX1、ADX2、ADY1及びADY2が測定した電圧を取得し、これらの電圧に基づき、1点押下又は2点押下を判断するとともに、2点押下の場合の中点座標、2点間距離、2点を結ぶ線分の方向、接触点の接触面積、及び接触点の座標を検出する。
【0018】
図2は、CPU31で実行される接触点検出の処理を示すフローチャートである。
【0019】
まず、CPU31は、X軸方向の電圧測定を行う(S1)。具体的には、CPU31は、スイッチSW2及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして、電圧測定部ADX1において電圧を測定する。この状態では、XH電極12には抵抗Rx1を介しVccが印加され、XL電極14は接地されるため、抵抗膜10のX軸方向に電位分布が生じている。この状態において電圧測定部ADX1により電圧を測定し、メモリ33に測定した電圧を記憶する。尚、電圧測定部ADX1において測定される電圧は、XH電極12とXL電極14との間の抵抗成分と抵抗Rx1とにより分圧された値となる。
【0020】
次に、Y軸方向の電圧測定を行う(S2)。具体的には、CPU31は、スイッチSW5及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして、電圧測定部ADY1において電圧を測定する。この状態では、YH電極22には抵抗Ry1を介しVccが印加され、YL電極24は接地されるため、抵抗膜20のY軸方向に電位分布が生じている。この状態において電圧測定部ADY1により電圧を測定し、メモリ33に測定した電圧を記憶する。尚、電圧測定部ADY1において測定される電圧は、YH電極22とYL電極24との間の抵抗成分と抵抗Ry1とにより分圧された値となる。
【0021】
次に、CPU31は、接触点が1点であるか又は2点であるかの判断を行う(S3)。具体的には、S1において電圧測定部ADX1で測定した電圧及びS2において電圧測定部ADY1で測定した電圧が、Vcc/2であるか又はVcc/2未満であるかを判断する。電圧測定部ADX1で測定した電圧及び電圧測定部ADY1で測定した電圧がともにVcc/2である場合は、CPU31は接触点が1点であると判断する。一方、電圧測定部ADX1で測定した電圧及び電圧測定部ADY1で測定した電圧がともにVcc/2未満である場合は、CPU31は接触点が2点であると判断する。
【0022】
S3において接触点が1点であると判断された場合には、CPU31は、通常の位置検出方法により接触点の座標を検出する(S4)。CPU31は、スイッチSW1及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADY1又はADY2で測定された電圧に基づいて、接触点のX座標を検出する。この際、CPU31は例えば、XH電極12とXL電極14との間の電位差に対する電圧測定部ADY1又はADY2で測定された電圧の比率に、XH電極12とXL電極14との間の距離を乗算することで、XH電極12から接触点までのX軸方向の距離を算出する。さらに、CPU31は、スイッチSW4及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADX1又はADX2によって測定された電圧に基づいて、接触点のY座標を検出する。ここでは、CPU31は、YH電極22とYL電極24との間の電位差に対する電圧測定部ADX1又はADX2で測定された電圧の比率に、YH電極22とYL電極24との間の距離を乗算することで、YH電極22から接触点までのY軸方向の距離を算出する。
【0023】
次に、CPU31は、スイッチSW1、SW6及びSW8をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADY1で電圧を測定する。続けて、CPU31は、スイッチSW1、SW8及びSW12をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADY2で電圧を測定する。CPU31は、電圧測定部ADY1で測定された電圧と電圧測定部ADY2で測定された電圧との合計値をメモリ33に記憶する(S5)。なお、メモリ33に記憶される合計値は抵抗膜10と抵抗膜20との接触面積と相関関係があるため、この合計値を用いて、接触面積の相対的な大小関係などを求めることができる。
【0024】
上記では、電圧測定部ADY1で測定された電圧と電圧測定部ADY2で測定された電圧との合計値を接触点の接触面積としたが、電圧測定部ADX1で測定された電圧と電圧測定部ADX2で測定された電圧との合計値を接触点の接触面積としてもよい。この場合、CPU31は、スイッチSW3、SW4及びSW10をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADX1で電圧を測定する。続けて、CPU31は、スイッチSW4、SW10及びSW11をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして電圧測定部ADX2で電圧を測定する。
【0025】
図3(A)は、S5で電圧測定部ADY1が電圧を測定する場合の等価回路を示す図である。図3(B)は、S5で電圧測定部ADY2が電圧を測定する場合の等価回路を示す図である。図3(A)及び(B)において、Rsは接触点による抵抗膜10、20間の抵抗を示し、R1は接触点からYL電極24までの抵抗を示し、R2は接触点からYH電極22までの抵抗を示す。なお、抵抗Rsは抵抗膜10と抵抗膜20との接触面積に依存し、R1は接触点とYL電極24との距離に依存し、R2は接触点とYH電極22との距離に依存する。
【0026】
入力位置が同じ場合には抵抗R1は一定であり、電圧測定部ADY1の測定電圧が接触点の接触面積に比例するため、接触面積の推定が可能になる。ただし、入力位置が変わると抵抗R1の値も変化する。そこで、接地する電極をYH電極22とYL電極24とで入れ替えて各電圧測定部で電圧の測定を行い、電圧測定部ADY1で測定された電圧と電圧測定部ADY2で測定された電圧とを合計する。その合計値を接触面積とすることで、入力位置の違いによる接触面積の算出結果の変動を抑制し、入力位置に依存しない接触面積の検出を可能とする。
【0027】
電圧測定部ADY1及びADY2の測定電圧は、下記の式で算出される。
ADY1=Vcc×R1/(Rs+R1)
ADY2=Vcc×R2/(Rs+R2)
【0028】
例えば、接触面積に対応する抵抗Rsを100Ωに固定し、抵抗R1及びR2を変化させた場合に、電圧測定部ADY1及びADY2で測定された電圧の例を図4に示す。
【0029】
電圧測定部ADY1及びADY2で測定された電圧値の最大値は4091mVであり、最小値は1667mVである。このため、電圧測定部ADY1あるいはADY2の一方で測定した電圧の入力位置による変化率は59.3%(=(4091-1667)/4091×100%)になる。従って、電圧測定部ADY1あるいはADY2の一方のみで電圧を測定した場合には、入力位置の違いによる測定電圧値、つまり接触面積の変動が大きいことがわかる。
【0030】
一方、電圧測定部ADY1及びADY2で測定された電圧値の合計の最大値は7143mVであり、最小値は5758mVである。このため、電圧測定部ADY1及びADY2の双方で電圧を測定した場合、電圧の入力位置による変化率は19.4%(=(7143-5758)/7143×100%)になる。従って、電圧測定部ADY1及びADY2の双方で測定された電圧値の合計値を用いることで、入力位置の違いによる接触面積の変動を抑制できることがわかる。
【0031】
図2に戻り、CPU31は、S4で検出された接触点の座標とS5で測定された接触面積とを関連付けしてタッチデータを生成して入出力部36を介してコンピュータ40に出力し(S6)、本処理を終了する。
【0032】
一方、S3において接触点が2点であると判断された場合には、CPU31は、2点を結ぶ線分の傾きが、X軸方向あるいはY軸方向に平行であるか、又は斜め方向であるか否かを判定する(S7)。
【0033】
図2の処理に先立ち、初期的な処理として、接触点が0である又は1点である状態で、スイッチSW2及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして、抵抗膜10のX軸方向に電位分布を形成した状態で、電圧測定部ADX1により電圧をあらかじめ測定する。CPU31は、この状態で電圧測定部ADX1にて測定した電圧をメモリ33に初期電圧α1として記憶する。同様に、接触点が0である又は1点である状態でスイッチSW5及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして、抵抗膜20のY軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADY1により電圧をあらかじめ測定する。CPU31は、この状態で電圧測定部ADY1にて測定した電圧をメモリ33に初期電圧α2として記憶する。このような初期電圧の設定は、例えば装置を使用し始める際、装置の製造時など、適当なタイミングで行うことができる。
【0034】
S7において、CPU31は、S1及びS2において測定された電圧と記憶されている初期電圧α1、α2とを比較することにより、2点を結ぶ線分が、X軸方向に平行であるか、Y軸方向に平行であるか、あるいはX軸方向・Y軸方向に対して斜め方向であるのかを判断する。
【0035】
S1において測定された電圧が初期電圧α1よりも低く、S2において測定された電圧が初期電圧α2と略同じである場合には、CPU31は2点を結ぶ線分がX軸方向と平行であると判断する。また、S1において測定された電圧が初期電圧α1と略同じであり、S2において測定された電圧が初期電圧α2よりも低い場合には、CPU31は2点を結ぶ線分がY軸方向に平行であると判断する。更に、S1において測定された電圧が初期電圧α1よりも低く、S2において測定された電圧が初期電圧α2よりも低い場合には、CPU31は2点を結ぶ線分は斜め方向であると判断する。
【0036】
また、点Aと点Bとの2点を結ぶ線分の傾きが、図5に示すように右上がり方向であるか、あるいは右下がり方向であるかを判定するために、CPU31は、スイッチSW1及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFFにして抵抗膜10のX軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADY1及びADY2で電圧を測定する。電圧測定部ADY1において測定された電圧が電圧測定部ADY2において測定された電圧よりも低い場合、CPU31は2点を結ぶ線分の傾きは右上がりであると判断する。また、電圧測定部ADY1において測定された電圧が電圧測定部ADY2において測定された電圧よりも高い場合、CPU31は2点を結ぶ線分の傾きは左上がりであると判断する。
【0037】
次に、CPU31は、2点の中点座標を算出する(S8)。具体的には、CPU31は、スイッチSW1及びSW3をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして抵抗膜10のX軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADY1及びADY2で電圧を測定する。CPU31は、電圧測定部ADY1において測定された電圧と電圧測定部ADY2において測定された電圧との平均値を算出することによりX軸方向の電圧を取得し、この電圧に基づき中点のX座標を取得する。例えば、CPU31は、XH電極12とXL電極14との間の距離に、上記算出された平均値に対するXH電極12とXL電極14との間の電位差の比率を乗算することで、XH電極12からのX軸方向の距離を取得する。
【0038】
同様に、CPU31は、スイッチSW4及びSW6をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして抵抗膜20のY軸方向に電位分布を形成し、電圧測定部ADX1及びADX2で電圧を測定する。CPU31は、電圧測定部ADX1において測定された電圧と電圧測定部ADX2において測定された電圧との平均値に基づき中点のY座標を取得する。例えば、CPU31は、YH電極22とYL電極24との間の距離に、上記算出された平均値に対するYH電極22とYL電極24との間の電位差の比率を乗算することで、YH電極22からのY軸方向の距離を取得する。
【0039】
次に、CPU31は、2点間の距離を算出する(S9)。具体的には、S1及びS2において測定された電圧に基づき2点間の距離を算出する。
【0040】
図6は、X軸方向の2点間の距離と電圧測定部ADX1において測定される電圧との関係を示し、距離算出用データとして用いられる。この距離算出用データはメモリ33に格納されている。曲線41aは2点がX軸に平行な直線上に存在している場合の2点間の距離と電圧測定部ADX1との関係を示す。曲線41bは2点がX軸に平行な直線上ではなく右上がりまたは左上がりの直線上に存在している場合の2点間の距離と電圧測定部ADX1との関係を示す。
【0041】
図6に示されるように、2点間の距離が広がるに従い、電圧測定部ADX1において測定される電圧の値は低下する。また、2点が電圧の印加されている方向(X軸方向)に平行な位置にある場合と、2点がX軸方向に平行な位置にない、右上がりまたは左上がりの場合とでは、2点間の距離と電圧測定部ADX1において測定される電圧との関係が異なる。
【0042】
よって、CPU31は、S7において検出された2点の位置関係、即ち、2点を結ぶ線分の傾きに応じて、図6に示す2点間の距離と電圧測定部ADX1において測定された電圧との関係を選択し、選択された関係に基づきX軸方向における2点間の距離を得る。
【0043】
具体的には、2点がX軸方向に平行な直線上に存在している場合には、CPU31は、図6における曲線41aと電圧測定部ADX1において測定された電圧とに基づき、X軸方向における2点間の距離を算出する。また、2点が右上がりまたは左上がりの直線上に存在している場合には、図6における曲線41bと電圧測定部ADX1において測定された電圧に基づき、X軸方向における2点間の距離を算出する。
【0044】
尚、メモリ33は、Y軸方向の2点間の距離と電圧測定部ADY1において測定される電圧との関係を示す距離算出用データも備えている。CPU31は、X軸方向と同様の方法により、Y軸方向の2点間の距離と電圧測定部ADY1において測定される電圧との関係を示す距離算出用データと、電圧測定部ADY1において測定された電圧とに基づきY軸方向の2点間の距離を得る。
【0045】
次に、CPU31は、2点の各座標を算出する(S10)。CPU31は、2点の位置関係(2点を結ぶ線分の傾き)と、2点の中点の位置と、2点間の距離に基づいて、2点のそれぞれの座標を算出する。
【0046】
具体的には、2点間のX軸方向の距離をLx、2点間のY軸方向の距離をLyとして算出し、2点の中点座標を(Xc、Yc)とした場合、2点の座標は下記式(1)~(4)のいずれかで表わされる。尚、式(1)は、2点が右上がりの直線上に存在している場合、式(2)は、2点が左上がりの直線上に存在している場合、式(3)は、2点がX軸方向の直線上にある場合、式(4)は、2点がY軸方向の直線上にある場合を示す。
(Xc+Lx/2、Yc+Ly/2)、(Xc-Lx/2、Yc-Ly/2)…(1)
(Xc+Lx/2、Yc-Ly/2)、(Xc-Lx/2、Yc+Ly/2)…(2)
(Xc+Lx/2、Yc)、(Xc-Lx/2、Yc)…(3)
(Xc、Yc+Ly/2)、(Xc、Yc-Ly/2)…(4)
【0047】
次に、CPU31は、各接触点における接触面積を算出する(S11)。接触面積の算出処理についての詳細は後述する。
【0048】
次に、CPU31は、ステップS10で算出された2点の座標とステップS11で算出された各接触点における接触面積とを関連付けしたタッチデータを生成して、入出力部36を介してコンピュータ40に出力し(ステップS12)、図2の処理を終了する。
【0049】
本処理により、タッチデータを受信したコンピュータ40は、2つの接触点の接触面積の大小関係を判断することができる。
【0050】
図7及び図8は、各接触点における接触面積の算出処理を示すフローチャートである。図9(A)は2点の押下パターンを示す図であり、図9(B)は図9(A)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。図9(C)は2点の押下パターンを示す図であり、図9(D)は図9(C)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。図10(A)は2点の押下パターンを示す図であり、図10(B)は図10(A)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。図10(C)は2点の押下パターンを示す図であり、図10(D)は図10(C)の状態で電圧測定部ADX1及びADX2で測定された電圧値を示す図である。
【0051】
図7は、2点を結ぶ線分がX軸方向に平行であるか又は斜めである場合にCPU31によって実行される処理であり、図8は、2点を結ぶ線分がY軸方向に平行であるか又は斜めである場合にCPU31よって実行される処理である。
【0052】
図2のS7では、2点を結ぶ線分が、X軸方向に平行であるか、Y軸方向に平行であるか、あるいはX軸方向・Y軸方向に対して斜め方向であるのかを判定しており、さらに図2のS10の処理で2点の入力座標は判明しているため、CPU31は、接触面積の算出処理前に2点を結ぶ線分がどのような状態にあるのかを判断できる。従って、CPU31は、図2のS7又はS10の処理結果に基づいて、図7又は図8のいずれの処理を実行するかを選択する。
【0053】
以下、電圧測定部ADX1で測定された電圧を電圧Vx1と称し、電圧測定部ADX2で測定された電圧を電圧Vx2と称する。
【0054】
図7において、CPU31は、スイッチSW3、SW4及びSW10をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして(S21)、電圧測定部ADX1で電圧Vx1を測定する(S22)。なお、SW4及びSW10をONとしているので、抵抗膜20全体に電源電圧Vccが均一に印加される。このように、接触面積を算出する場合には、電圧印加側の抵抗膜全体にかかる電位を均一にする。これは、電圧印加側の抵抗膜に電位分布が形成されると、2点入力の位置により電圧測定部で測定される電圧が変動してしまい、接触面積を適切に検出できなくなるからである。
【0055】
続けて、CPU31は、スイッチSW4、SW10及びSW11をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして(S23)、電圧測定部ADX2で電圧Vx2を測定する(S24)。ここでも、SW4及びSW10をONとしているので、抵抗膜20全体に均一にVccが印加される。
【0056】
CPU31は、図2のS3と同様に、接触点が2点であるか否かの判断を行う(S25)。接触点が1点である場合には(S25でNO)、CPU31は、電圧Vx1と電圧Vx2との合計値を接触点の接触面積としてメモリ33に記憶し(S26)、本処理を終了する。
【0057】
接触点が2点である場合には(S25でYES)、電圧Vx2と電圧Vx1との差分が閾値(例えば、300mV)未満であるか否かを判別する(S27)。S27では、2点の接触面積が略同一であるか否かを判定している。
【0058】
例えば、図9(A)は、点P及び点Q1~点Q3はいずれもペン先による接触点を示す。この場合、点P押下時の接触面積と点Q1~点Q3押下時の接触面積とは同一あるいはほぼ同じになると見込まれる。2点の押下パターンとして、点Pと点Q1の押下パターン、点Pと点Q2の押下パターン、点Pと点Q3の押下パターンの計3パターンが示されているが、いずれの場合も、図9(B)に示すように、電圧Vx2と電圧Vx1との差分は、例えば、300mV未満である。
【0059】
一方、図9(C)では、点Pはペン先による接触点を、点Q4~点Q6はいずれも指先による接触点を示す。点Q4~点Q6における接触面積は点Pの接触面積よりも大きい。2点の押下パターンとして、点Pと点Q4の押下パターン、点Pと点Q5の押下パターン、点Pと点Q6の押下パターンの計3パターンが示されているが、いずれの場合も、図9(D)に示すように、電圧Vx2と電圧Vx1との差分は、例えば、300mV以上である。
【0060】
図7に戻り、電圧Vx2と電圧Vx1との差分が閾値未満である場合(S27でYES)、CPU31は、電圧Vx2と電圧Vx1との合計値を2点入力の各点の接触面積としてメモリ33に記憶し(S28)、本処理を終了する。例えば、図9(A)の点P及び点Q1には、接触面積に対応する電圧として、図9(B)に示す合計値5659.2mVが割り当てられる。
【0061】
電圧Vx2と電圧Vx1との差分が閾値以上である場合(S27でNO)、CPU31は、電圧Vx2が電圧Vx1よりも大きいか否かを判別する(S29)。ここでは、2点入力のうち、どちらの接触面積が大きいかを判定している。
【0062】
電圧Vx2が電圧Vx1よりも大きい場合には(S29でYES)、CPU31は、電圧Vx1に対する電圧Vx2の割合を電圧Vx1及び電圧Vx2の合計値に乗算した値(=(Vx1+Vx2)×Vx2/Vx1)をXL電極14に近い入力点の接触面積とし、電圧Vx2に対する電圧Vx1の割合を電圧Vx1及び電圧Vx2の合計値に乗算した値(=(Vx1+Vx2)×Vx1/Vx2)をXH電極12に近い入力点の接触面積として(S30)、本処理を終了する。例えば、図9(C)の点P及び点Q4には、接触面積に対応する電圧として図9(D)に示す5000.3mV,8341.6mVがそれぞれ割り当てられる。
【0063】
電圧Vx1が電圧Vx2よりも大きい場合には(S29でNO)、CPU31は、電圧Vx2に対する電圧Vx1の割合を電圧Vx1及び電圧Vx2の合計値に乗算した値(=(Vx1+Vx2)×Vx1/Vx2)をXH電極12に近い入力の接触面積とし、電圧Vx1に対する電圧Vx2の割合を電圧Vx1及び電圧Vx2の合計値に乗算した値(=(Vx1+Vx2)×Vx2/Vx1)をXL電極14に近い入力の接触面積として(S31)、本処理を終了する。
【0064】
以上のように、接触面積の算出処理では、1点の入力の場合も2点入力の場合も、S26、S28、S30、S31に示すように、電圧測定部ADX1で測定された電圧Vx1及び電圧測定部ADX2で測定された電圧Vx2の合計値を用いることで、入力位置の違いによる接触面積の変動を抑制し、入力位置に依存しない接触面積を検出する。
【0065】
尚、図9(B)、図9(D)に示すように、電圧Vx1及び電圧Vx2を実測した場合には、電圧Vx1及び電圧Vx2の合計値を使用しても、入力位置により合計値にはばらつきが生じる。このばらつきを抑えるために、例えば、CPU31は、入力位置に応じて予め決められた補正係数を使って、電圧Vx1及び電圧Vx2の値を補正することで、入力位置の違いによる電圧Vx1及び電圧Vx2の合計値のばらつきを抑えるようにしてもよい。
【0066】
図10(A)では、点S1~点S3及び点R1~点R3はいずれもペン先による接触点を示す。点S1~点S3及び点R1~点R3の接触面積は互いに同一である。2点の押下パターンとして、点S1と点R1の押下パターン、点S2と点R2の押下パターン、点S3と点R3の押下パターンの計3パターンが示されているが、図10(B)に示すように、電圧Vx1及び電圧Vx2の値が3641.4mV~805.7mVの範囲で、入力の位置によって大きく変動している。
【0067】
図10(C)では、点S1~点S3はペン先による接触点を、点R4~点R6はいずれも指先による接触点を示す。点R4~点R6押下時の接触面積は点S1~点S3押下時の接触面積よりも大きい。2点の押下パターンとして、点S1と点R4の押下パターン、点S2と点R5の押下パターン、点S3と点R6の押下パターンの計3パターンが示されているが、この場合も、図10(D)に示すように、電圧Vx1及び電圧Vx2の値が4082.0mV~1401.4mVの範囲で、入力の位置によって大きく変動している。
【0068】
図7の接触面積の算出処理では、図10(A)及び(C)に示すように2点を結ぶ線分がY軸方向に平行である場合には使用できない。使用できない理由は、図10(B)及び(D)に示すように、入力の位置によって電圧Vx1及び電圧Vx2の値が大きく変動し、求められる接触面積も大きく変動するからである。そのため、上述したように、図10(A)及び(C)に示すように2点を結ぶ線分がY軸方向に平行である場合には図8の接触面積の算出処理を使用する。
【0069】
以下、図8の接触面積の算出処理を説明する。なお、電圧測定部ADY1で測定された電圧を電圧Vy1と称し、電圧測定部ADY2で測定された電圧を電圧Vy2と称する。
【0070】
図8において、CPU31は、スイッチSW1、SW6及びSW8をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして(S41)、電圧測定部ADY1で電圧Vy1を測定する(S42)。なお、SW1及びSW8をONとしているので、抵抗膜10全体に電源電圧Vccが均一に印加される。
【0071】
続けて、CPU31は、スイッチSW1、SW8及びSW12をONとし、これ以外のスイッチをOFF状態にして(S43)、電圧測定部ADY2で電圧Vy2を測定する(S44)。ここでも、SW1及びSW8をONとしているので、抵抗膜10全体に電源電圧Vccが均一に印加される。
【0072】
CPU31は、図2のS3と同様に、接触点が2点であるか否かの判断を行う(S45)。接触点が1点である場合には(S45でNO)、CPU31は、電圧Vy1と電圧Vy2との合計値を接触点の接触面積としてメモリ33に記憶し(S46)、本処理を終了する。
【0073】
接触点が2点である場合には(S45でYES)、電圧Vy2と電圧Vy1との差分が閾値(例えば、300mV)未満であるか否かを判別する(S47)。この判別では、2点の接触面積が略同一であるか否かを判定している。
【0074】
電圧Vy2と電圧Vy1との差分が閾値未満である場合(S47でYES)、CPU31は、電圧Vy2と電圧Vy1との合計値を2点の各入力点の接触面積としてメモリ33に記憶し(S48)、本処理を終了する。
【0075】
電圧Vy2と電圧Vy1との差分が閾値以上である場合(S47でNO)、CPU31は、電圧Vy2が電圧Vy1よりも大きいか否かを判別する(S49)。ここでは、2点の入力点のうち、どちらの接触面積が大きいかを判定している。
【0076】
電圧Vy2が電圧Vy1よりも大きい場合には(S49でYES)、CPU31は、電圧Vy1に対する電圧Vy2の割合を電圧Vy1及び電圧Vy2の合計値に乗算した値(=(Vy1+Vy2)×Vy2/Vy1)をYL電極24に近い入力点の接触面積とし、電圧Vy2に対する電圧Vy1の割合を電圧Vy1及び電圧Vy2の合計値に乗算した値(=(Vy1+Vy2)×Vy1/Vy2)をYH電極22に近い入力点の接触面積として(S50)、本処理を終了する。
【0077】
電圧Vy1が電圧Vy2よりも大きい場合には(S49でNO)、CPU31は、電圧Vy2に対する電圧Vy1の割合を電圧Vy1及び電圧Vy2の合計値に乗算した値(=(Vy1+Vy2)×Vy1/Vy2)をYH電極22に近い入力点の接触面積とし、電圧Vy1に対する電圧Vy2の割合を電圧Vy1及び電圧Vy2の合計値に乗算した値(=(Vy1+Vy2)×Vy2/Vy1)をYL電極24に近い入力点の接触面積として(S51)、本処理を終了する。
【0078】
図7図8の処理で算出された接触面積は、各入力点における接触面積の大きさによって動作を変更するアプリケーションなどに適用することができる。例えば、(1)指先よりも押下時の接触面積が小さいペン先での入力を有効と判断するボタン、又は指先での入力を有効と判断するボタンを表示するアプリケーション、(2)ボタンが反応する接触面積をリアルアイムに変更するアプリケーション、(3)押下時の接触面積によってジェスチャー機能を変更させるアプリケーション、などに図7図8の処理で算出された接触面積を適用できる。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態によれば、1点入力では、CPU31は電圧Vx1及び電圧Vx2の合計値を1点入力の接触面積とする。そして、2点入力では、電圧Vx1と電圧Vx2との差分(と電圧Vy2との差分)が閾値未満である場合、CPU31は電圧Vx1及び電圧Vx2(又は電圧Vy1及び電圧Vy2)の合計値を2点入力の各々の接触面積とする。CPU31は、電圧Vx1と電圧Vx2との差分(又は電圧Vy1と電圧Vy2との差分)が閾値以上である場合、電圧Vx1及び電圧Vx2(又は電圧Vy1及び電圧Vy2)のうち小さい方に対する大きい方の割合を電圧Vx1及び電圧Vx2(又は電圧Vy1及び電圧Vy2)の合計値に乗算した値を、2点入力のうち大きい方の値が測定された電極に近い入力の接触面積とし、電圧Vx1及び電圧Vx2(又は電圧Vy1及び電圧Vy2)のうち大きい方に対する小さい方の割合を電圧Vx1及び電圧Vx2(又は電圧Vy1及び電圧Vy2)の合計値に乗算した値を、2点入力のうち小さい方の値が測定された電極に近い入力の接触面積とする。
【0080】
このように、電圧Vx1及び電圧Vx2(又は電圧Vy1及び電圧Vy2)の合計値を用いることで、入力位置の違いによる接触面積の算出値の変動を抑制し、入力位置に依存しない接触面積の検出を実現できる。また、2点入力では、電圧Vx1及び電圧Vx2(又は電圧Vy1及び電圧Vy2)の合計値に適切な割合を乗算した値を各接触点での入力時における接触面積に割り当てるので、実態に即した接触面積を算出することができる。
【0081】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
ADX1、ADX2、ADY1、ADY2 電圧測定部
R,Rx1,Ry1 抵抗
SW1~SW12 スイッチ
10,20 抵抗膜
12 XH電極
14 XL電極
22 YH電極
24 YL電極
30 制御部
31 CPU
32 AD変換器
33 メモリ
36 入出力部
100 タッチパネル装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10