(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】床パネル及び床構造
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
E04F15/02 101B
(21)【出願番号】P 2020108032
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐田 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】一色 太
(72)【発明者】
【氏名】池田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】岩 善一
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148785(JP,A)
【文献】実公昭63-049450(JP,Y2)
【文献】特開平05-112996(JP,A)
【文献】特開平08-209832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床梁のフランジに固定される床パネルであって、
端部を有する床材と、
前記床材の前記端部に固定された固定板と、を備え、
前記固定板は、前記床材に固定された第1部分と、前記フランジに固定された第2部分と、を含み、
前記第1部分は、前記第2部分よりも前記床材の端から離れた位置にあ
り、
前記第2部分の上面には、前記第2部分を前記フランジに固定するためのナットが固定されており、
前記床材の前記端部には、前記ナットを収容するための凹部が形成されている、
床パネル。
【請求項2】
前記固定板は、前記床材の前記端部から外側にはみ出た第3部分を、更に含み、
前記第3部分は、前記床パネルの吊り下げに用いられる引っ掛け部を有する、
請求項1の床パネル。
【請求項3】
前記床材は、CLTである、
請求項1又は2の床パネル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項の床パネルと、
前記床パネルが固定された前記床梁と、を備えた
床構造。
【請求項5】
前記床パネルを複数備え、
前記複数の床パネルに含まれる1つの床パネルが備える前記床材の側面と、前記複数の床パネルに含まれる別の床パネルが備える前記床材の側面とが、互いに接している、
請求項4の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床パネル、床構造、及び床構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床梁のフランジに床パネルの端部を固定する構造が、例えば特許文献1に開示されている。この構造では、ボルトが上方に突設された取付金具を用い、該ボルトを、床パネルに貫通形成された透孔に対して下方から挿入し、この状態で該ボルトに対して上方からナットを締め付けている。これにより、取付金具とナットとの間で、床梁のフランジと床パネルの端部が挟持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の構造は、床パネルのうち、床梁のフランジに乗せたときに該フランジとは重ならない部分(つまり床パネルの端からある程度離れた部分)に透孔を形成し、この透孔に挿し通したボルト等を介して、床梁のフランジと床パネルの端部とを上下に挟み込む構造であり、床パネルのうち端に近い部分を、床梁のフランジに対して強固に固定するものではなかった。
【0005】
本開示は、床パネルのうち端に近い部分を、床梁のフランジに対して強固に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る床パネルは、床梁のフランジに固定される床パネルであって、端部を有する床材と、前記床材の前記端部に固定された固定板と、を備える。前記固定板は、前記床材に固定された第1部分と、前記フランジに固定された第2部分と、を含む。前記第1部分は、前記第2部分よりも前記床材の端から離れた位置にある。
【0007】
本開示の一態様に係る床構造は、前記床パネルと、前記床パネルが固定された前記床梁と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る床構造の施工方法は、床パネルを製造する製造工程と、前記床パネルを施工現場に搬入する搬入工程と、前記施工現場で、前記床パネルを床梁のフランジに固定する固定工程と、を備える。前記製造工程では、床材が有する端部に、固定板の第1部分を固定する。前記固定工程では、前記フランジの上面に、前記固定板の第2部分を固定する。前記第1部分は、前記第2部分よりも前記床材の端から離れた位置にある。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、床パネルのうち端に近い部分を、床梁のフランジに対して強固に固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1の床パネルを用いた床構造の要部断面図である。
【
図2】
図2Aは、同上の床パネルの平面図であり、
図2Bは、同上の床パネルの側面図であり、
図2Cは、同上の床パネルの別の側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態2の床パネルを用いた床構造の要部断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態3の床パネルを用いた床構造の要部断面図である。
【
図7】
図7は、同上の床構造の別の要部断面図である。
【
図8】
図8Aは、同上の床パネルの平面図であり、
図8Bは、同上の床パネルの側面図であり、
図8Cは、同上の床パネルの別の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
実施形態1の床パネル1を用いて構成された床構造9について、
図1から
図3に基づいて以下に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の床構造9の要部を示す断面図である。
図2Aは、床構造9に用いられる床パネル1の平面図であり、
図2Bと
図2Cは、床パネル1をそれぞれ別の方向から見た側面図である。
図3Aは、
図2Aのa部拡大図であり、
図3Bは、
図3AのX-X線断面図であり、
図3Cは、
図2Cのb部拡大図である。
【0013】
本実施形態の床パネル1は、平面視において矩形状の外形を有する床材2(
図2A参照)と、床材2が有する複数の端部22のそれぞれの下面に固定された複数の金属製の固定板3とを備える。本文の説明において用いる上下等の方向は、床パネル1が施工されたときの姿勢を基準とする。
【0014】
(床材)
床材2は、CLT(Cross Laminated Timber)で構成されている。CLTは、複数のひき板を、互いの繊維方向が直交するように重ねて接着させた木質の床材であり、直交集成板とも称される。本実施形態の床材2において、CLTは3層のひき板を備える。床材2を構成するCLTのひき板の層数は、3層以上であることが好ましい。
【0015】
床材2は、平面視において一直線状の端部22を、4つ有する。4つの端部22のうち互いに隣接する2つの端部22は、L字をなすように互いに直交する位置関係にあり、隣接する2つの端部22の間には、コーナー部分が形成されている。床材2が有する都合4か所のコーナー部分には、それぞれ切り欠き23が形成されている。
【0016】
床材2には、コーナー部分の切り欠き23とは別に、建物の柱等に対応した適宜の切り欠き24が設けられている。本実施形態の床材2では、4つの端部22のうち2つの端部22には切り欠き24が設けられず、これとは別の1つの端部22には切り欠き24が1つ設けられ、残り1つの端部22には切り欠き24が2つ設けられている。
【0017】
床材2の各端部22の下面には、非貫通の丸穴である凹部25が、複数形成されている。各端部22において、複数の凹部25は、端部22の長手方向に距離をあけて並設されている。これら複数の凹部25は、固定板3が有する複数の貫通孔34と、一対一に対応するように構成されている。各凹部25は、床材2のCLTが有する3層のひき板のうち、下側の2層のひき板に(つまり最も上の1層のひき板には至らないように)形成されている。
【0018】
(固定板)
固定板3は、床材2が備える4つの端部22と一対一で対応するように、4つ設けられている(
図2A参照)。4つの固定板3は、床材2が有する長辺側の一対の端部22に一対一で対応する2つの固定板3と、床材2が有する短辺側の一対の端部22に一対一で対応する2つの固定板3とで、構成されている。各固定板3は、対応する端部22の長さ方向の全長に亘って、該端部22の下面に固定されている。本実施形態の固定板3では、各固定板3を、複数の取付ビス39を打ち付けることで端部22に固定しているが、固定板3を端部22に固定する手段はこれに限定されない。
【0019】
固定板3には、固定板3の厚み方向に貫通した貫通孔34が複数設けられている。複数の貫通孔34は、固定板3の長手方向に距離をあけて並設されている。
【0020】
上記したように、これら複数の貫通孔34は、端部22が有する複数の凹部25と一対一で対応するように構成されており、端部22の下面に対してこれを覆うように固定板3がビス固定された状態において、固定板3が有する複数の貫通孔34は、端部22に設けられた複数の凹部25に対して、一対一で上下に連通する。貫通孔34の開口は、これと連通する凹部25の開口よりも、小さく設定されている。貫通孔34の貫通方向で見たとき、貫通孔34の開口縁は、凹部25の開口縁よりも小さく、凹部25の開口縁の内側に収まるように位置する。
【0021】
各固定板3の上面には、床パネル1を床梁8のフランジ82に固定するために用いられる複数のナット4が、溶接によって固着されている。各ナット4は、ボルト5が螺合するように上下に貫通したねじ孔を有する。各ナット4の下面(つまり、各ナット4のねじ孔の軸方向の一側の端面)が、固定板3の上面のうち対応する貫通孔34を囲む部分に対して、強固に結合されている。
【0022】
各固定板3が備える複数の貫通孔34には、その上方にねじ孔が位置するようにナット4が固定される貫通孔34と、それ以外の貫通孔34とが含まれる。前者の貫通孔34は、ボルト5のねじ棒52を下方から挿し通すためのものであり、以下においては、これをボルト挿通用の貫通孔34と称する。後者の貫通孔34(つまり、その上方にナット4が固定されない貫通孔34)は、施工時の床パネル1の位置調整に用いられるものであり、以下においては、これを位置調整用の貫通孔34と称する。
【0023】
固定板3のうち、床材2の切り欠き24と対応する部分(つまり、床材2に固定された状態で切り欠き24の下方に位置する部分)には、床材2の切り欠き24よりも一回り小さな切り欠き36が設けられている(
図2A参照)。固定板3の長手方向において、固定板3の切り欠き36は、床材2の切り欠き24よりも小さな寸法を有する。固定板3のうち、切り欠き36を挟んだ長手方向の両側の部分は、床材2の切り欠き24を通じて上方に露出する。この両側の部分のうち一方には、ボルト挿通用の貫通孔34が形成されており、その上面にはナット4が固着されている(
図2C参照)。
【0024】
また、4つの固定板3のうち、短辺側の一対の固定板3(つまり、床材2の短辺側の一対の端部22に固定される一対の固定板3)においては、長手方向の両端部33が、床材2のコーナー部分の切り欠き23を通じて上方に露出するようになっている。固定板3の両端部33には、引っ掛け部35が設けられている。引っ掛け部35は、貫通孔351を有する起立片352を含んでいる。起立片352は、固定板3の端部33に貫通孔351を設け、かつ端部33をL字状に曲げ加工することで形成可能である。貫通孔351には、例えば吊り下げ用のリング部材を挿し通すことができる。そのため。吊り治具を別途用意して床パネル1に着脱する必要がなく、施工性が高められる。引っ掛け部35の具体的な構成はこれに限定されず、床パネル1の吊り下げに用いることができる範囲内において、他の構成を備えることも可能である。
【0025】
床材2が有する4か所のコーナー部分には、それぞれ引っ掛け部35が配置されている。これら4か所の引っ掛け部53に、それぞれリング部材等を介してワイヤーを引っ掛けることが可能である。
【0026】
(施工方法)
次に、本実施形態の床構造9の施工方法について説明する。本実施形態の床構造9の施工方法は、床パネル1を製造する製造工程と、床パネル1を施工現場に搬入する搬入工程と、搬入した床パネル1を施工現場で床梁8のフランジ82に固定する固定工程と、を備える。
【0027】
(製造工程)
製造工程では、工場において、3層のCLTに加工を施すことで、複数の切り欠き23,24や凹部25を有する床材2を形成する。また、直線状の鋼鈑に複数の貫通孔34や引っ掛け部35を設けることで固定板3を形成し、固定板3の所定部分の上面にナット4を固着させる。
【0028】
そして、床材2が有する4辺の端部22のそれぞれの下面に、対応する固定板3の内側の半部31を、ビス固定する。固定板3の内側の半部31は、固定板3を床材2の端部22に固定したときに、床材2の端2aから離れて位置する側の半部である。以下において、固定板3の内側の半部31を、固定板3の「第1部分31」と称する。
【0029】
このとき、固定板3に固着されたナット4が、対応する凹部25内に収容されるように、固定板3の位置合わせを行ったうえで、固定板3のビス固定を行う。固定板3が床材2にビス固定された状態で、凹部25内におけるナット4の上方には、ビス5のねじ棒52を挿し込むことのできるスペースが確保されている。
【0030】
(搬入工程)
搬入工程では、床パネル1がそのコーナー部分に有する4か所の引っ掛け部35に、それぞれリング部材等を介してワイヤーの端部を引っ掛け、床パネル1を吊り下げ支持しながら施工現場に搬入することが可能である。以下において、引っ掛け部35が設けられる固定板3の端部33を、固定板3の「第3部分33」と称する。第3部分33は、固定板3の長手方向において、床材2の端部22から外側にはみ出る部分である。
【0031】
(固定工程)
固定工程では、まず、床梁8が有する上側のフランジ82の上面に、床パネル1が有する固定板3のうち外側の半部32を乗せる。固定板3の外側の半部32は、固定板3のうち床材2の端2aに近い側の半部である。床材2の端2aは、床材2の端部22のうち最も外側方に位置する部分である。以下において、固定板3の外側の半部32を、固定板3の「第2部分32」と称する。床パネル1を床梁8に乗せた状態において、固定板3の第2部分32がフランジ82に隠れ、第1部分31が下方に露出する。
【0032】
固定板3は、第2部分32をフランジ82に乗せて固定したときに、第1部分31がフランジ82の先端を超えて内側方に突出するように、構成されている。第1部分31の下面は、第2部分32の下面よりも大面積を有するが、第1部分31の下面が、第2部分32の下面と同じ面積を有してもよいし、第2部分32の下面よりも小さな面積を有してもよい。
【0033】
第1部分31の下面(つまり、固定板3のうちフランジ82に固定された状態で下方に露出する部分)には、第2部分32においてボルト挿通用の貫通孔34が設けられている部分と、位置調整用の貫通孔34が設けられている部分とを視覚的に示す適宜の印(例えば、色違いで設けた三角形の印)が設けられていることが好ましい。
【0034】
次いで、位置調整用の貫通孔34を用いて床パネル1の位置調整を行い、ボルト挿通用の貫通孔34と、フランジ82の貫通孔825とが上下に連通するように調整したうえで、貫通孔825を通じて下方からボルト5のねじ棒52を挿し込み、ナット4のねじ孔に対してねじ棒52を螺合させる。床パネル1が備える4辺の固定板3のそれぞれにおいて、複数箇所のナット4に対して下方からボルト5を螺合させることで、各固定板3の第2部分32を、フランジ82に対して強固に固定することができる。
【0035】
上記のようにして施工された本実施形態の床構造9では、床パネル1のうち端に近い部分(つまり、床パネル1が備える固定板3のうち床材2の端2aに近い第2部分32)を、フランジ82の貫通孔825を通じてボルト5を挿し込む簡単な施工で、フランジ82に対して強固に固定することができる。下方から挿し込まれたボルト5のねじ棒52は、ナット4が収容されている凹部25に、そのまま収容される。凹部25は、ナット4とこれに螺合するボルト5のねじ棒52とを収容することができる寸法形状を有する。本実施形態の床構造9では、固定板3の第1部分31は、フランジ82を延長するように機能する。そのため、フランジ82を幅広に設けずとも、床パネル1の端部を強固に支持することが可能である。
【0036】
また、本実施形態の床構造9では、CLTからなる床材2を用いて床パネル1を構成しているので、床パネル1の面内剛性を高めて大版化を図ることが可能となっているが、床材2としてALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)等の他の部材を用いることも可能である。
【0037】
(実施形態2)
実施形態2の床パネル1を用いて構成された床構造9について、
図4、
図5に基づいて説明する。なお、本実施形態の説明において、実施形態1において既に説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。以下においては、実施形態1とは異なる構成について詳述する。
【0038】
本実施形態の床パネル1では、床材2が、5層のCLTに加工を施して形成されている。床材2の端部22では、CLTの下側の2層を削るように加工が施されている。床材2のうち、端部22を除いた部分は5層のひき板を有し、端部22は3層のひき板を有する。
【0039】
本実施形態の床材2の端部22は、切り欠き24を有さず、床材2の端部22に固定される固定板3は、引っ掛け部35と切り欠き36を有さない。
【0040】
本実施形態の床構造9は、実施形態1と同じく床パネル1を複数備え、これら複数の床パネル1に含まれる1つの床パネル1(以下においては符号1aを付す。)が備える床材2の側面と、別の床パネル1(以下においては符号1bを付す。)が備える床材2の側面とが、互いに接している。床パネル1a,1bの互いの床材2が接する箇所において、床パネル1aの床材2の端部22に固定された固定板3と、床パネル1bの床材2の端部22に固定された固定板3とは、パネル接合板6を介して強固に結合されている。
【0041】
パネル接合板6は、鋼板を用いて形成され、床パネル1aの固定板3の第2部分32が乗せられる第1半部61と、床パネル1bの固定板3の第2部分32が乗せられる第2半部62とを有する。第1半部61には、これに乗せられる固定板3の複数の貫通孔34と対応する部分(つまり複数の貫通孔34と上下に連通する複数の部分)に、それぞれ貫通孔615が形成されている。第2半部62には、これに乗せられる固定板3の複数の貫通孔34と対応する部分(つまり複数の貫通孔34と上下に連通する複数の部分)に、それぞれ貫通孔625が形成されている。
【0042】
本実施形態の床構造9の施工方法では、隣接する床パネル1a,1bの互いの床材2の端部22を突き合わせるとともに、突き合わせた端部22の固定板3同士を、パネル接合板6を介して結合させる。
【0043】
具体的には、床パネル1aの固定板3が有するボルト挿通用の貫通孔34に対して、第1半部61の貫通孔615を通じて下方からボルト5のねじ棒52を挿し込み、ナット4に対してねじ棒52を螺合させる。同様に、床パネル1bの固定板3が有するボルト挿通用の貫通孔34に対して、第2半部62の貫通孔625を通じて下方からボルト5のねじ棒52を挿し込み、ナット4に対してねじ棒52を螺合させる。
【0044】
上記のようにして施工された本実施形態の床構造9では、実施形態1と同様に、施工現場では下方からのボルト締結作業によって床パネル1を固定することができ、しかも、床パネル1のうち端に近い部分(具体的には固定板3の第2部分32)を、床梁8のフランジ82に対して強固に固定することができる。固定板3の第1部分31は、フランジ82を延長するように機能するため、フランジ82を幅広に設けずとも床パネル1の端部を強固に支持することが可能である。
【0045】
(実施形態3)
実施形態3の床パネル1を用いて構成された床構造9について、
図6から
図9に基づいて説明する。なお、本実施形態の説明において、実施形態1において既に説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。以下においては、実施形態1とは異なる構成について詳述する。
【0046】
本実施形態の床パネル1では、床材2が、5層のCLTに加工を施して形成されている。床材2の端部22の下面には、他の部分よりも凹んだ凹段部27と、凹段部27の一部から更に凹んだ凹部25とが、設けられている。凹段部27は、下方及び外側方に向けて開放された構造を有する。凹部25は、凹段部27を通じて下方に開放され、かつ、外側方に向けて開放された構造を有する。
【0047】
床材2の端部22には、凹段部27の上端部分から固定板3の一部を水平に挿し入れるためのスリット28が形成されている。スリット28は、凹段部27の上端部分から、内側方に向けて切り込まれた構造を有する。床材2において、スリット28よりも上方には、3層のひき板が確保されていることが好ましい。
【0048】
更に、床材2の端部22には、ドリフトピン7を打ち込むためのピン孔29が、上下に貫通形成されている。端部22には、1つのスリット28に対して、これと交差するように複数のピン孔29が形成されている。
【0049】
床材2が備える4つの端部22には、それぞれスリット28が複数設けられている。本実施形態の床パネル1では、床材2の各端部22に複数の固定板3が挿し込まれる。これら複数の固定板3は、ドリフトピン7を用いて各端部22に固定される。
【0050】
固定板3の第1部分31には、ドリフトピン7を挿し通すためのピン孔315が、複数形成されている。固定板3の第2部分32には、貫通孔34が複数形成されている。第2部分32の上面には、ナット4が固着されている。固定板3が備える複数の貫通孔34には、その上方にナット4が固定されるボルト挿通用の貫通孔34と、ナット4が固定されない位置調整用の貫通孔34とが含まれる。本実施形態の固定板3には、ボルト挿通用の貫通孔34と位置調整用の貫通孔34が、1つずつ設けられている。
【0051】
床材2の各端部22の下面に設けられた複数の凹部25は、固定板3のボルト挿通用の貫通孔34に対応する凹部25と、位置調整用の貫通孔34に対応する凹部25とを含む。前者の凹部25にはナット4が収容されており、後者の凹部25にはナット4が収容されていない。
【0052】
次に、本実施形態の床構造9の施工方法について説明する。本実施形態の床構造9の施工方法は、床パネル1を製造する製造工程と、床パネル1を施工現場に搬入する搬入工程と、搬入した床パネル1を施工現場で床梁8のフランジ82に固定する固定工程と、を備える。
【0053】
製造工程では、工場において5層のCLTに加工を施すことで、上記した凹段部27、凹部25、スリット28及びピン孔29を有する床材2を形成する。また、矩形状の鋼鈑に貫通孔34やピン孔315を設けることで固定板3を形成し、固定板3の第2部分32の上面にナット4を固着させる。
【0054】
そして、床材2が有する各スリット28に固定板3の第1部分31を挿し込み、床材2が有する各ピン孔29にドリフトピン7を打ち込むと、ドリフトピン7が第1部分31のピン孔315を貫通することによって、固定板3の第1部分31は、床材2の端部22に強固に固定される。このとき、固定板3に固着されたナット4は、対応する凹部25内に収容される。
【0055】
搬入工程では、本実施形態の床パネル1が施工現場まで搬入される。
【0056】
固定工程では、床梁8が有する上側のフランジ82の上面に、床パネル1が有する固定板3の第2部分32を乗せる。次いで、フランジ82の貫通孔825を通じて下方からボルト5のねじ棒52を挿し込み、ナット4に対してねじ棒52を螺合させる。床パネル1が備える各固定板3のナット4にボルト5を螺合させることで、各固定板3の第2部分32をフランジ82に対して強固に固定することができる。
【0057】
上記のようにして施工された本実施形態の床構造9では、フランジ82の下方からボルト5を挿し込む簡単な施工で、床パネル1のうち端に近い部分(具体的には固定板3の第2部分32)を、フランジ82に対して強固に固定することができる。フランジ82に挿し込まれたボルト5のねじ棒52は、ナット4が収容されている凹部25に、そのまま収容される。
【0058】
本実施形態の床パネル1においても、固定板3の第1部分31は、床梁8のフランジ82を延長するように機能する。そのため、フランジ82を幅広に設けずとも床パネル1の端部を強固に支持することが可能である。
【0059】
また、本実施形態の床構造9では、
図7に示すように、実施形態2と同様のパネル接合板6を介して、1つの床パネル1(1a)の床材2の端部22に固定された固定板3と、隣接する別の床パネル1(1b)の床材2の端部22に固定された固定板3とを、強固に結合することも可能である。パネル接合板6の構成は、実施形態2で説明したものと同様であることから、詳しい説明は省略する。
【0060】
(効果)
上記の実施形態1から3に基づいて説明したように、本開示の床パネル1は、以下の構成を備える。
【0061】
本開示の床パネル1は、床梁8のフランジ82に固定される床パネル1であって、端部22を有する床材2と、床材2の端部22に固定された固定板3と、を備える。固定板3は、床材2に固定された第1部分31と、フランジ82に固定された第2部分32と、を含む。第1部分31は、第2部分32よりも床材2の端2aから離れた位置にある。したがって、本開示の床パネル1によれば、床パネル1のうち床材2の端2aに近い部分(つまり固定板3のうち床材2の端2aに近い第2部分32)を、床梁8のフランジ82に対して強固に固定することができる。
【0062】
また、本開示の床パネル1において、第2部分32の上面には、第2部分32をフランジ82に固定するためのナット4が固定されている。したがって、本開示の床パネル1によれば、ナット4にボルト5を締結させる作業(乾式工法)で、床梁8と床パネル1を強固に固定することができる。
【0063】
また、本開示の床パネル1において、床材2の端部22には、ナット4を収容するための凹部25が形成されている。したがって、本開示の床パネル1によれば、ナット4を収容するスペースを端部22に確保することができ、このスペースに、ナット4に締結されたボルト5の一部を収容することも可能である。
【0064】
また、本開示の床パネル1において、固定板3は、床材2の端部22から外側にはみ出た第3部分33を、更に含む。第3部分33は、床パネル1の吊り下げに用いられる引っ掛け部35を有する。したがって、本開示の床パネル1によれば、床パネル1の施工現場への搬入作業を、固定板3の一部(つまり第3部分33)を利用して効率的に行うことができる。
【0065】
また、本開示の床パネル1において、床材2はCLTである。したがって、本開示の床パネル1によれば、床パネル1の面内剛性を高めることができ、床パネル1の大版化を図ることができる。また、建築物の床面積当りの木材使用量を高めることができ、森林資源の有効活用を図ることができる。
【0066】
本開示の床構造9は、上記した床パネル1と、床パネル1が固定された床梁8とを備える。したがって、本開示の床構造9によれば、床パネル1のうち床材2の端2aに近い部分(つまり固定板3のうち床材2の端2aに近い第2部分32)を、床梁8のフランジ82に対して強固に固定することができる。
【0067】
また、本開示の床構造9は、床パネル1を複数備え、複数の床パネル1に含まれる1つの床パネル1aが備える床材2の側面と、複数の床パネル1に含まれる別の床パネル1bが備える床材2の側面とが、互いに接している。したがって、本開示の床構造9によれば、床構造9の面内剛性の低下を抑えることができ、目板も不要である。
【0068】
本開示の床構造9の施工方法は、床パネル1を製造する製造工程と、床パネル1を施工現場に搬入する搬入工程と、施工現場で床パネル1を床梁8のフランジ82に固定する固定工程と、を備える。製造工程では、床材2が有する端部22に、固定板3の第1部分31を固定する。固定工程では、フランジ82の上面に、固定板3の第2部分32を固定する。第1部分31は、第2部分32よりも床材2の端2aから離れた位置にある。したがって、本開示の床構造9の施工方法によれば、床パネル1のうち床材2の端2aに近い部分(つまり固定板3のうち床材2の端2aに近い第2部分32)を、床梁8のフランジ82に対して強固に固定することができる。
【0069】
以上、本開示の床パネル、床構造、及び床構造の施工方法を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示の床パネル、床構造、及び床構造の施工方法は前記の実施形態に限定されない。本開示の意図する範囲内であれば、各実施形態において適宜の設計変更を行うことや、各実施形態の構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 床パネル
1a 1つの床パネル
1b 別の床パネル
2 床材
2a 端
22 端部
25 凹部
3 固定板
31 第1部分
32 第2部分
33 第3部分
35 引っ掛け部
4 ナット
8 床梁
82 フランジ
9 床構造