(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240702BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240702BHJP
C23F 1/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L21/306 Z
H01L21/306 D
H01L21/304 648G
H01L21/304 647A
H01L21/304 643A
C23F1/10
(21)【出願番号】P 2020126869
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 香奈
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524408(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0132586(KR,A)
【文献】国際公開第2019/058642(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/081453(WO,A1)
【文献】特表2011-511442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
C23F 1/10
B08B 3/00-3/14
C23F 1/00-4/04
G03F 7/00
G03F 7/06-7/07
G03F 7/12-7/14
G03F 7/26-7/42
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング機能を有する第1ポリマーおよび固体形成機能を有する第2ポリマーを含有する半固体状の塗布膜を基板の表面に形成し、前記基板上の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングするエッチング工程と、
固体形成処理によって前記塗布膜中の前記第2ポリマーを硬化させて前記塗布膜を固化膜に変化させることによって、前記基板の表層部のエッチングを停止させるエッチング停止工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記エッチング工程が、前記第1ポリマーおよび前記第2ポリマーを含有する混合液の液膜を形成し、前記混合液の液膜中の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングする液膜エッチング工程と、前記混合液の液膜から前記塗布膜を形成し、前記塗布膜中の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングする塗布膜エッチング工程とを含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記液膜エッチング工程が、前記基板の表面に対向するノズルから前記基板の表面に向けて前記混合液を吐出して前記混合液の液膜を形成する混合液膜形成工程を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記液膜エッチング工程が、前記第1ポリマーを含有する第1ポリマー液および前記第2ポリマーを含有する第2ポリマー液を前記基板の上面に供給して前記第1ポリマー液および前記第2ポリマー液の混合液の液膜を前記基板の上面に形成する混合液膜形成工程を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記混合液膜形成工程が、前記基板の表面への前記第1ポリマー液の供給と前記基板の表面への前記第2ポリマー液の供給とを同時に実行する工程を含む、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記混合液膜形成工程が、前記基板の表面に向けて前記第1ポリマー液を供給する第1ポリマー液供給工程と、前記第1ポリマー液供給工程の後、前記基板の表面に向けて前記第2ポリマー液を供給して前記基板の表面に前記混合液の液膜を形成する第2ポリマー液供給工程とを含む、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記固体形成処理が、前記塗布膜に対する加熱処理を含み、
前記第2ポリマーが、熱硬化性樹脂である、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記固体形成処理が、前記塗布膜への光照射処理を含み、
前記第2ポリマーが、光硬化性樹脂である、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記固化膜に表面に剥離液を供給することによって、前記固化膜を前記基板の表面から剥離して、前記固化膜を前記基板の表面から除去する固化膜除去工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記エッチング停止工程において、前記第2ポリマーよりも前記剥離液に対する溶解性が高い溶解成分を含有する前記固化膜が形成され、
前記固化膜除去工程において供給される前記剥離液によって、前記固化膜中の前記溶解成分が溶解される、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記エッチング工程において、前記基板の表層部がエッチングされることによってエッチング残渣が形成され、
前記エッチング停止工程において形成される前記固化膜によって前記エッチング残渣が保持され、
前記固化膜除去工程が、前記エッチング残渣が前記固化膜に保持された状態で、前記固化膜とともに前記エッチング残渣を除去する工程を含む、請求項9または10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
エッチング機能を有する第1ポリマーおよび固体形成機能を有する第2ポリマーを含有する塗布膜を基板の表面に形成する塗布膜形成ユニットと、
前記基板の表面上の前記塗布膜中の前記第2ポリマーを固化または硬化させて固化膜を形成する固体形成処理を行う固体形成ユニットと、
前記基板の表面に向けて前記固化膜を前記基板の表面から剥離する剥離液を供給する剥離液供給ユニットと、
前記塗布膜形成ユニット、前記固体形成ユニットおよび前記剥離液供給ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記塗布膜形成ユニットによって基板の表面に塗布膜を形成し、前記塗布膜中の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングするエッチング工程と、前記固体形成ユニットによる前記固体形成処理によって前記塗布膜中の前記第2ポリマーを硬化させて前記塗布膜を固化膜に変化させることによって、前記基板の表層部のエッチングを停止させるエッチング停止工程と、前記固化膜に表面に剥離液を供給することによって、前記固化膜を前記基板の表面から剥離して、前記固化膜を前記基板の表面から除去する固化膜除去工程とを実行するようにプログラムされている、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、ならびに、液晶表示装置、プラズマディスプレイおよび有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用の基板等の基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板の表面をエッチングするエッチング液としてフッ酸が用いられる(下記特許文献1を参照)。エッチング液で基板を処理した後には、DIW等のリンス液によって基板の表面をリンスする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなエッチング処理では、エッチング液や、エッチング液と混ざったリンス液の排液量が多く、環境負荷が大きい。そこで、この発明の1つの目的は、エッチング成分の使用量を低減可能な基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一実施形態は、エッチング機能を有する第1ポリマーおよび固体形成機能を有する第2ポリマーを含有する半固体状の塗布膜を基板の表面に形成し、前記基板上の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングするエッチング工程と、固体形成処理によって前記塗布膜中の前記第2ポリマーを硬化させて前記塗布膜を固化膜に変化させることによって、前記基板の表層部のエッチングを停止させるエッチング停止工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0006】
この方法によれば、基板の表面には、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含有する半固体状の塗布膜が形成される。基板上の塗布膜中の第1ポリマーによって基板の表層部がエッチングされる。固体形成処理によって塗布膜中の第2ポリマーが固化される。これにより、塗布膜が固化膜に変化する。第1ポリマーは、塗布膜中よりも固化膜中において拡散しにくい。そのため、塗布膜が固化膜に変化することによって、第1ポリマーによる基板の表層部のエッチングが停止される。
【0007】
この方法とは異なり、基板の表面に向けてフッ酸等のエッチング液の連続流を供給し続けながら基板の表層部をエッチングする手法では、エッチング液が次々に基板外方へ排出される。
一方、半固体状の塗布膜の流動性は、連続流のエッチング液の流動性よりも低い。そのため、基板の外方に排出される第1ポリマーの量、すなわち、エッチング成分の消費量を低減することができる。
【0008】
この発明の一実施形態では、前記エッチング工程が、前記第1ポリマーおよび前記第2ポリマーを含有する混合液の液膜を形成し、前記混合液の液膜中の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングする液膜エッチング工程と、前記混合液の液膜から前記塗布膜を形成し、前記塗布膜中の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングする塗布膜エッチング工程とを含む、
この方法によれば、塗布膜中の第1ポリマーによる基板の表層部のエッチングだけでなく、塗布膜のベースとなる混合液の液膜中の第1ポリマーによっても基板の表層部がエッチングされる。混合液の液膜中において基板の表面に接触する部分の第1ポリマーは、基板の表層部をエッチングすることによって消失する。混合液の流動性は、半固体状の塗布膜の流動性よりも高い。そのため、塗布膜によるエッチングと比較して、基板の表面付近の第1ポリマーがエッチングにより消失した際に、液膜中の第1ポリマーは、液膜中において基板の表面に接触する部分の第1ポリマーの濃度が低減しないように拡散しやすい。そのため、基板の表面付近の第1ポリマーの濃度の低減を抑制できるので、基板の表層部を速やかにエッチングできる。
【0009】
また、混合液の液膜が基板の表面に形成された状態でエッチングが行われるため、基板の表面に向けてフッ酸等のエッチング液の連続流を供給し続けながら基板の表層部をエッチングする手法と比較して、基板外方に排出される第1ポリマーの量、すなわち、エッチング成分の消費量を低減することができる。
この発明の一実施形態では、前記液膜エッチング工程が、前記基板の表面に対向するノズルから前記基板の表面に向けて前記混合液を吐出して前記混合液の液膜を形成する混合液膜形成工程を含む。
【0010】
この方法によれば、第1ポリマーおよび第2ポリマーを予め含有する混合液が基板の表面に供給される。基板の表面上で第1ポリマーおよび第2ポリマーを混合する必要がないため、塗布膜を速やかに形成できる。ひいては、基板処理に要する時間を短縮できる。
この発明の一実施形態では、前記液膜エッチング工程が、前記第1ポリマーを含有する第1ポリマー液および前記第2ポリマーを含有する第2ポリマー液を前記基板の上面に供給して前記第1ポリマー液および前記第2ポリマー液の混合液の液膜を前記基板の上面に形成する混合液膜形成工程を含む。
【0011】
この方法によれば、第1ポリマー液と第2ポリマー液とが基板の表面上で混合される。そのため、第1ポリマーと第2ポリマーとが互いに反応するものである場合に、基板の表面に第1ポリマーおよび第2ポリマーが供給される前に第1ポリマーと第2ポリマーとが反応することを抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記混合液形成工程が、前記基板の表面への前記第1ポリマー液の供給と前記基板の表面への前記第2ポリマー液の供給とを同時に実行する工程を含む。第1ポリマー液の供給と第2ポリマー液の供給とを同時に実行する場合、第1ポリマー液および第2ポリマー液を基板の表面に順次に供給する方法と比較して、塗布膜の形成に要する時間を短縮できる。ひいては、基板処理に要する時間を短縮できる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記混合液形成工程が、前記基板の表面に向けて前記第1ポリマー液を供給する第1ポリマー液供給工程と、前記第1ポリマー液供給工程の後、前記基板の表面に向けて前記第2ポリマー液を供給して前記基板の表面に前記混合液を形成する第2ポリマー液供給工程とを含む。
この方法によれば、第2ポリマー液に先立って第1ポリマー液が基板の表面に供給される。そのため、基板の表面上には第2ポリマー液が混合されていない液膜が形成される。第1ポリマー液中の第1ポリマーの濃度は、混合液中の第1ポリマーの濃度よりも高い。そのため、混合液が形成される前に、高濃度の第1ポリマーによって、基板の表層部を速やかにエッチングできる。
【0013】
さらに、エッチングの進行によって第1ポリマーがある程度消費された後に、第1ポリマー液と第2ポリマー液とが基板の表面上で混合される。そのため、第1ポリマーと第2ポリマーとが互いに反応するものである場合に、第1ポリマーと第2ポリマーとの反応を一層抑制できる。
この発明の一実施形態では、前記固体形成処理が、前記塗布膜に対する加熱処理を含み、前記第2ポリマーが、熱硬化性樹脂である。そのため、塗布膜中の第2ポリマーとしての熱硬化性樹脂が加熱によって硬化される。熱硬化性樹脂の硬化によって塗布膜が固化膜に変化する。熱硬化性樹脂の硬化によって固化膜が形成されるため、第1ポリマーの拡散を一層抑制できる。したがって、第1ポリマーによる基板の表層部のエッチングを一層確実に停止できる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記固体形成処理が、前記塗布膜への光照射処理を含み、前記第2ポリマーが、光硬化性樹脂である。そのため、塗布膜中の第2ポリマーとしての光硬化性樹脂が光の照射によって硬化される。光硬化性樹脂の硬化によって塗布膜が固化膜に変化する。光硬化性樹脂の硬化によって固化膜が形成されるため、エッチング成分の拡散を一層抑制できる。したがって、エッチング成分による基板の表層部のエッチングを一層確実に停止できる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記固化膜に表面に剥離液を供給することによって、前記固化膜を前記基板の表面から剥離して、前記固化膜を前記基板の表面から除去する固化膜除去工程をさらに含む。
塗布膜中の第1ポリマーを用いて基板の表層部をエッチングする場合、基板の表面にエッチング残渣が付着しやすい。そこで、固化膜除去工程において、固化膜が、剥離液に溶解されて基板の表面から除去されるのではなく、基板の表面から剥離されて除去される方法であれば、固化膜がエッチング残渣を保持したまま基板の表面から引き剥がされる。その結果、固化膜とともにエッチング残渣を基板の表面から除去することができる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記エッチング停止工程において、前記第2ポリマーよりも前記剥離液に対する溶解性が高い溶解成分を含有する前記固化膜が形成される。そして、前記固化膜除去工程において供給される前記剥離液によって、前記固化膜中の前記溶解成分が溶解される。
この方法によれば、固化膜中には溶解成分が含有される。固化膜中の溶解成分は、その後に基板の表面に供給される剥離液によって溶解される。剥離液で固化膜中の溶解成分を溶解させることによって固化膜に隙間(貫通孔)が形成される。そのため、固化膜中に形成された貫通孔を介して剥離液を固化膜と基板との界面に速やかに到達させることができる。剥離液は、基板と固化膜との界面に進入して基板の表面から固化膜を剥離する。これにより、第1ポリマーによるエッチングが終了した後に、基板の表面から固化膜を速やかに剥離することができる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記エッチング工程において、前記基板の表層部がエッチングされることによってエッチング残渣が形成される。前記エッチング停止工程において形成される前記固化膜によって前記エッチング残渣が保持される。そして、前記固化膜除去工程が、前記エッチング残渣が前記固化膜に保持された状態で、前記固化膜とともに前記エッチング残渣を除去する工程を含む。
【0018】
この方法によれば、基板の表層部のエッチングによって発生したエッチング残渣が、固化膜除去工程において、固化膜とともに基板の表面から除去される。そのため、固化膜を除去した後に、エッチング残渣を別途除去するための処理を行う必要がない。
この発明の他の実施形態は、エッチング機能を有する第1ポリマーおよび固体形成機能を有する第2ポリマーを含有する塗布膜を基板の表面に形成する塗布膜形成ユニットと、前記基板の表面上の前記塗布膜中の前記第2ポリマーを固化または硬化させて固化膜を形成する固体形成処理を行う固体形成ユニットと、前記基板の表面に向けて前記固化膜を前記基板の表面から剥離する剥離液を供給する剥離液供給ユニットと、前記塗布膜形成ユニット、前記固体形成ユニットおよび前記剥離液供給ユニットを制御するコントローラとを含む、基板処理装置を提供する。
【0019】
この基板処理装置において、前記コントローラが、前記塗布膜形成ユニットによって基板の表面に塗布膜を形成し、前記塗布膜中の前記第1ポリマーによって前記基板の表層部をエッチングするエッチング工程と、前記固体形成ユニットによる前記固体形成処理によって前記塗布膜中の前記第2ポリマーを硬化させて前記塗布膜を固化膜に変化させることによって、前記基板の表層部のエッチングを停止させるエッチング停止工程と、前記固化膜に表面に剥離液を供給することによって、前記固化膜を前記基板の表面から剥離して、前記固化膜を前記基板の表面から除去する固化膜除去工程とを実行するようにプログラムされている。
【0020】
この装置によれば、上述した基板処理方法の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【
図3】
図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図5A】
図5Aは、前記基板処理の混合液供給工程(ステップS2)の様子を説明するための模式図である。
【
図5B】
図5Bは、前記基板処理の塗布膜形成工程(ステップS3)の様子を説明するための模式図である。
【
図5C】
図5Cは、前記基板処理の固化膜形成工程(ステップS4)の様子を説明するための模式図である。
【
図5D】
図5Dは、前記基板処理の固化膜除去工程(ステップS5)の様子を説明するための模式図である。
【
図5E】
図5Eは、前記基板処理の固化膜除去工程(ステップS5)の様子を説明するための模式図である。
【
図5F】
図5Fは、前記基板処理のリンス工程(ステップS6)の様子を説明するための模式図である。
【
図6A】
図6Aは、前記基板処理中の基板の表面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図6B】
図6Bは、前記基板処理中の基板の表面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図6C】
図6Cは、前記基板処理中の基板の表面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図6D】
図6Dは、前記基板処理中の基板の表面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図6E】
図6Eは、前記基板処理中の基板の表面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理における混合液供給工程(ステップS2)の第1例を説明するための模式図である。
【
図9A】
図9Aは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理における混合液供給工程(ステップS2)の第2例を説明するための模式図である。
【
図9B】
図9Bは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理における混合液供給工程(ステップS2)の第2例を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る基板処理装置による基板処理における固化膜形成工程(ステップS4)の一例を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る基板処理の固化膜形成工程(ステップS4)中の基板の表面付近の様子を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る基板処理装置の変形例について説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る処理ユニットに備えられる光照射ユニットの第1変形例について説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る処理ユニットに備えられる光照射ユニットの第2変形例について説明するための模式図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係る基板処理装置の構成について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の一実施形態にかかる基板処理装置1のレイアウトを示す模式的な平面図である。
基板処理装置1は、シリコンウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板Wとしては、表面にエッチング可能な成分が露出している基板を用いることができる。基板Wとしては、表面にSiO
2(酸化シリコン)、TiN(窒化チタン)、Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、Co(コバルト)、Mo(モリブデン)およびW(タングステン)のうちの少なくともいずれかが露出している基板を用いることが好ましい。基板Wの表面には、上述した物質のうち、1種類の物質のみが露出していてもよいし、上述した物質のうち複数の物質が露出していてもよい。
【0023】
基板処理装置1は、基板Wを流体で処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。詳しくは後述するが、処理ユニット2内で基板Wに向けて供給される流体には、混合液、第1ポリマー液、第2ポリマー液、剥離液、リンス液等が含まれる。
【0024】
各処理ユニット2は、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0025】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、スピンチャック5と、ヒータユニット6と、第1移動ノズル9と、第2移動ノズル10と、第3移動ノズル11とをさらに含む。
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら、回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させる基板保持回転ユニットの一例である。回転軸線A1は、基板Wの中央部を通る鉛直な直線である。スピンチャック5は、複数のチャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、スピンモータ23とを含む。
【0026】
スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、基板Wの周縁を把持する複数のチャックピン20が、スピンベース21の周方向に間隔を空けて配置されている。
複数のチャックピン20は、ピン開閉ユニット24によって開閉される。複数のチャックピン20は、ピン開閉ユニット24によって閉状態にされることによって基板Wを水平に保持(挟持)する。複数のチャックピン20は、ピン開閉ユニット24によって開状態にされることによって基板Wを解放する。複数のチャックピン20は、開状態において、基板Wを下方から支持する。
【0027】
スピンベース21および複数のチャックピン20は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットを構成している。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。スピンモータ23は、回転軸22に回転力を与える。スピンモータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。スピンモータ23は、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板回転ユニットの一例である。
【0028】
ヒータユニット6は、基板Wの全体を加熱する基板加熱ユニットの一例である。ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット6は、スピンベース21の上面と基板Wの下面との間に配置されている。ヒータユニット6は、基板Wの下面に下方から対向する対向面6aを有する。
ヒータユニット6は、プレート本体61およびヒータ62を含む。プレート本体61は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。プレート本体61の上面が対向面6aを構成している。ヒータ62は、プレート本体61に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ62に通電することによって、対向面6aが加熱される。対向面6aは、たとえば、195℃に加熱される。
【0029】
処理ユニット2は、給電線63を介してヒータ62に電力を供給するヒータ通電ユニット64と、ヒータユニット6をスピンベース21に対して相対的に昇降させるヒータ昇降ユニット65を含む。ヒータ通電ユニット64は、たとえば、電源である。ヒータ昇降ユニット65は、たとえば、ボールねじ機構(図示せず)と、それに駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。ヒータ昇降ユニット65は、ヒータリフタともいう。
【0030】
ヒータユニット6の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸66が結合されている。昇降軸66は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔21aと、中空の回転軸22とを挿通している。昇降軸66内には、給電線63が通されている。
ヒータ昇降ユニット65は、昇降軸66を介してヒータユニット6を昇降させる。ヒータユニット6は、ヒータ昇降ユニット65によって昇降されて、下位置および上位置に位置することができる。ヒータ昇降ユニット65は、下位置および上位置だけでなく、下位置および上位置の間の任意の位置にヒータユニット6を配置することが可能である。
【0031】
ヒータユニット6は、上昇する際に、開状態の複数のチャックピン20から基板Wを受け取ることが可能である。ヒータユニット6は、ヒータ昇降ユニット65によって、基板Wの下面に接触する位置、または、基板Wの下面に近接する位置に配置されることによって、基板Wを加熱することができる。
処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード71と、複数のガード71によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ72と、複数のガード71および複数のカップ72を取り囲む円筒状の外壁部材73とを含む。
【0032】
この実施形態では、2つのガード71(第1ガード71Aおよび第2ガード71B)と、2つのカップ72(第1カップ72Aおよび第2カップ72B)とが設けられている例を示している。
第1カップ72Aおよび第2カップ72Bのそれぞれは、上向きに開放された環状溝の形態を有している。
【0033】
第1ガード71Aは、スピンベース21を取り囲むように配置されている。第2ガード71Bは、第1ガード71Aよりも外側でスピンベース21を取り囲むように配置されている。
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bは、それぞれ、ほぼ円筒形状を有している。各ガード71の上端部は、スピンベース21に向かうように内方に傾斜している。
【0034】
第1カップ72Aは、第1ガード71Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ72Bは、第1ガード71Aと一体に形成されており、第2ガード71Bによって下方に案内された液体を受け止める。
処理ユニット2は、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを別々に鉛直方向に昇降させるガード昇降ユニット74を含む。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第1ガード71Aを昇降させる。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第2ガード71Bを昇降させる。
【0035】
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bがともに上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第1ガード71Aによって受けられる。第1ガード71Aが下位置に位置し、第2ガード71Bが上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第2ガード71Bによって受けられる。第1ガード71Aおよび第2ガード71Bがともに下位置に位置するときに、基板Wの搬入および搬出のために搬送ロボットCRがスピンチャック5にアクセスすることが可能である。
【0036】
ガード昇降ユニット74は、たとえば、第1ガード71Aに結合された第1ボールねじ機構(図示せず)と、第1ボールねじ機構に駆動力を与える第1モータ(図示せず)と、第2ガード71Bに結合された第2ボールねじ機構(図示せず)と、第2ボールねじ機構に駆動力を与える第2モータ(図示せず)とを含む。ガード昇降ユニット74は、ガードリフタともいう。
【0037】
第1移動ノズル9は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含有する混合液を供給(吐出)する混合液ノズル(混合液供給ユニット)の一例である。
第1移動ノズル9は、第1ノズル移動ユニット35によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル9は、水平方向において、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第1移動ノズル9は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の中央領域に対向する。
【0038】
第1移動ノズル9は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第1移動ノズル9は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第1ノズル移動ユニット35は、第1移動ノズル9に結合され水平に延びるアーム(図示せず)と、アームに結合され鉛直方向に沿って延びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0039】
回動軸駆動ユニットは、鉛直な回動軸線まわりに回動軸を回動させることによってアームを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを昇降させる。アームの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル9が水平方向および鉛直方向に移動する。
第1移動ノズル9は、第1移動ノズル9に混合液を案内する混合液配管40に接続されている。混合液配管40に介装された混合液バルブ50が開かれると、混合液が、第1移動ノズル9の吐出口から下方に連続流で吐出される。第1移動ノズル9が中央位置に位置するときに混合液バルブ50が開かれると、混合液が基板Wの上面の中央領域に供給される。
【0040】
混合液には、溶質および溶媒が含有されている。混合液に含有される溶媒は、たとえば、有機溶剤である。
有機溶剤としては、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
混合液には、溶質として、第1ポリマー、第2ポリマーおよび溶解成分が含有されている。第1ポリマーは、基板Wの表層をエッチングすることができる成分、すなわちエッチング機能を有する成分である。第1ポリマーは、たとえば、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸ポリマーである。カルボン酸としては、たとえば、下記化学式1に示す、ポリアクリル酸が挙げられる。スルホン酸としては、たとえば、下記化学式2に示す、ポリスチレンスルホン酸が挙げられる。
【0042】
【0043】
【0044】
第2ポリマーは、加熱や光照射等の固体形成処理によって固化または硬化する成分、すなわち、固体形成機能を有する成分である。第1実施形態では、第2ポリマーは、加熱によって硬化する熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、たとえば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0045】
溶解成分は、後述する剥離液に対する溶解性が第2ポリマーよりも高い物質である。溶解成分は、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。溶解成分は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに限られない。溶解成分の詳細については後述する。
第2移動ノズル10は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けてアンモニア水等の剥離液を連続流で供給(吐出)する剥離液ノズル(剥離液供給ユニット)の一例である。剥離液は、基板W上に形成されている固化膜を、基板Wの上面から剥離するための液体である。
【0046】
第2移動ノズル10は、第2ノズル移動ユニット36によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第2移動ノズル10は、水平方向において、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
第2移動ノズル10は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の中央領域に対向する。第2移動ノズル10は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第2移動ノズル10は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0047】
第2ノズル移動ユニット36は、第1ノズル移動ユニット35と同様の構成を有している。すなわち、第2ノズル移動ユニット36は、第2移動ノズル10に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、アームに結合され鉛直方向に沿って延びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0048】
第2移動ノズル10は、第2移動ノズル10に剥離液を案内する剥離液配管41に接続されている。剥離液配管41に介装された剥離液バルブ51が開かれると、剥離液が、第2移動ノズル10の吐出口から下方に連続流で吐出される。第2移動ノズル10が中央位置に位置するときに剥離液バルブ51が開かれると、剥離液が基板Wの上面の中央領域に供給される。
【0049】
第2移動ノズル10から吐出される剥離液は、固体形成成分よりも溶解成分を溶解させやすい液体が用いられる。第2移動ノズル10から吐出される剥離液は、たとえば、アンモニア水等のアルカリ性水溶液(アルカリ性液体)である。アルカリ性水溶液の具体例として、アンモニア水、SC1液(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)水溶液、および、コリン水溶液、ならびにこれらのいずれかの組合せが挙げられる。剥離液は、アルカリ性液体に限られず、純水(好ましくはDIW)、あるいは、中性および酸性のいずれかの水溶液(非アルカリ性水溶液)であってもよい。
【0050】
第3移動ノズル11は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて純水等のリンス液を連続流で供給(吐出)するリンス液ノズル(リンス液供給ユニット)の一例である。リンス液は、基板Wの表面に付着した液体を洗い流す液体である。
第3移動ノズル11は、第3ノズル移動ユニット37によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第3移動ノズル11は、水平方向において、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
【0051】
第3移動ノズル11は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の中央領域に対向する。第3移動ノズル11は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第3移動ノズル11は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第3ノズル移動ユニット37は、第1ノズル移動ユニット35と同様の構成を有している。すなわち、第3ノズル移動ユニット37は、第3移動ノズル11に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、アームに結合され鉛直方向に沿って延びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0052】
第3移動ノズル11は、第3移動ノズル11にリンス液を案内するリンス液配管42に接続されている。リンス液配管42に介装されたリンス液バルブ52が開かれると、リンス液が、第3移動ノズル11の吐出口から下方に連続流で吐出される。第3移動ノズル11が中央位置に位置するときにリンス液バルブ52が開かれると、リンス液が基板Wの上面の中央領域に供給される。
【0053】
リンス液としては、DIW等の純水、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)のアンモニア水、還元水(水素水)等が挙げられる。
剥離液と相溶性を有するものであれば、リンス液として、IPA等の有機溶剤を用いることも可能である。相溶性とは、2種類の液体が互いに溶けて混ざり合う性質のことである。後述する基板処理では、基板W上のリンス液が振り切られることによって、基板Wの上面が乾燥されるが、リンス液が低表面張力液体であれば、基板Wの上面が乾燥される際に基板Wの上面に作用する表面張力を低減することができる。
【0054】
低表面張力液体として機能する有機溶剤としては、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトン、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)およびTrans-1,2-ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液等が挙げられる。
低表面張力液体として機能する有機溶剤は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。たとえば、IPAとDIWとの混合液であってもよいし、IPAとHFEとの混合液であってもよい。
【0055】
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。
具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0056】
とくに、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ23、ピン開閉ユニット24、第1ノズル移動ユニット35、第2ノズル移動ユニット36、第3ノズル移動ユニット37、ヒータ通電ユニット64、ヒータ昇降ユニット65、ガード昇降ユニット74、混合液バルブ50、剥離液バルブ51、および、リンス液バルブ52を制御するようにプログラムされている。コントローラ3によってバルブが制御されることによって、対応するノズルからの処理流体の吐出の有無や、対応するノズルからの処理流体の吐出流量が制御される。
【0057】
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図4は、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
図5A~
図5Eは、基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、
図4に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、混合液供給工程(ステップS2)、塗布膜形成工程(ステップS3)、固化膜形成工程(ステップS4)、固化膜除去工程(ステップS5)、リンス工程(ステップS6)、スピンドライ工程(ステップS7)および基板搬出工程(ステップS8)がこの順番で実行される。
【0058】
以下では、主に
図2および
図4を参照する。
図5A~
図5Eについては適宜参照する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図1参照)によってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。
基板Wの搬入時には、ヒータユニット6は、ヒータ62が通電された状態で、基板Wに対する加熱が行われない非加熱位置に配置されている。非加熱位置は、たとえば、下位置である。ヒータユニット6は、この基板処理とは異なり、ヒータ通電ユニット64の通電の有無によって、基板Wの加熱と、加熱の停止とを切り替えてもよい。
【0059】
スピンチャック5による基板Wの保持は、スピンドライ工程(ステップS7)が終了するまで継続される。基板保持工程が開始されてからスピンドライ工程(ステップS7)が終了するまでの間、ガード昇降ユニット74は、少なくとも一つのガード71が上位置に位置するように、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bの高さ位置を調整する。基板Wがスピンチャック5に保持された状態で、スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wの回転が開始される(基板回転工程)。
【0060】
次に、搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、基板Wの上面に混合液を供給する混合液供給工程(ステップS2)が実行される。具体的には、第1ノズル移動ユニット35が、第1移動ノズル9を処理位置に移動させる。第1移動ノズル9の処理位置は、たとえば、中央位置である。
第1移動ノズル9が処理位置に位置する状態で、混合液バルブ50が開かれる。これにより、
図5Aに示すように、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第1移動ノズル9から混合液が供給(吐出)される(混合液供給工程、混合液吐出工程)。基板Wの上面に供給された混合液は、遠心力によって、基板Wの上面の全体に広がり基板Wの上面の全体に混合液の液膜101が形成される(混合液膜形成工程)。混合液の液膜101中の第1ポリマー(有機酸ポリマー)によって基板Wの表層部がエッチングされる(エッチング工程、液膜エッチング工程)。
【0061】
第1移動ノズル9からの混合液の供給は、所定時間、たとえば、2秒~4秒の間継続される。混合液供給工程において、基板Wは、所定の混合液回転速度、たとえば、10rpm~1500rpmで回転される。基板Wの上面に塗布される混合液の量は2cc程度である。
混合液回転速度は、混合液が基板Wの外方へ飛散しない程度の速度であることが好ましく、混合液の液膜101が基板W上でパドル状態となることが好ましい。パドル状態とは、基板Wの上面が液膜101で覆われており、かつ、基板Wが回転方向に静止している状態または低回転速度(50rpm以下)で回転している状態を意味する。
【0062】
次に、
図5Bに示すように、基板W上の混合液から溶媒を蒸発させて塗布膜102を形成する塗布膜形成工程(ステップS3)が実行される。
具体的には、混合液バルブ50が閉じられる。そして、第1ノズル移動ユニット35によって第1移動ノズル9がホーム位置に移動される。
基板Wの回転に起因する遠心力は、基板W上の混合液だけでなく、液膜101に接する気体にも作用する。そのため、遠心力の作用により、当該気体が基板Wの中心側から周縁側に向かう気流が形成される。この気流により、液膜101に接する気体状態の溶媒が基板Wに接する雰囲気から排除される。そのため、基板W上の混合液からの溶媒の蒸発(揮発)が促進され、半固体状の塗布膜102が形成される(塗布膜形成工程)。半固体状とは、固体成分と液体成分とが混合した状態である。第1移動ノズル9およびスピンモータ23は、塗布膜形成ユニットの一例である。
【0063】
塗布膜102中の第1ポリマー(有機酸ポリマー)によって基板Wの表層部がエッチングされる(エッチング工程)。塗布膜102は、液膜101と比較して粘度が高い。塗布膜形成工程において、スピンモータ23は、混合液中の溶媒を蒸発させる蒸発ユニット(蒸発促進ユニット)として機能する。
塗布膜形成工程(ステップS3)は、たとえば、30秒間継続される。塗布膜形成工程(ステップS3)において、基板Wは、所定の塗布膜形成速度、たとえば、800rpmで回転される。
【0064】
次に、基板W上の塗布膜102を硬化させることによって固化膜100を形成する固化膜形成工程(ステップS4)が実行される。
具体的には、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を加熱位置に配置する。加熱位置は、たとえば、基板Wの下面から離間した位置で基板Wを加熱する離隔加熱位置である。これにより、
図5Cに示すように、ヒータユニット6によって、基板Wを介して塗布膜102が加熱される(塗布膜加熱工程)。
【0065】
塗布膜102に対する加熱によって、塗布膜102中の第2ポリマー(熱硬化性樹脂)が硬化される。第2ポリマーの硬化によって固化膜100が形成される(固化膜形成工程)。加熱によって塗布膜102中の第2ポリマーを硬化させて塗布膜102を固化膜100に変化させることによって、基板Wの表層部のエッチングが停止される(エッチング停止工程)。加熱によって固化膜100が形成されるため、加熱は、固体形成処理の一例である。ヒータユニット6は、固体形成ユニットの一例である。
【0066】
塗布膜102の加熱は、所定時間、たとえば、30秒間継続される。固化膜形成工程(ステップS4)において、基板Wは、所定の固化膜形成速度、たとえば、800rpmで回転される。
次に、
図5Dおよび
図5Eに示すように、基板Wの上面に剥離液を供給して、基板Wの上面から固化膜100を剥離して除去する固化膜除去工程(ステップS5)が実行される。
【0067】
具体的には、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を非加熱位置に移動させる。そして、第2ノズル移動ユニット36が第2移動ノズル10を処理位置に移動させる。第2移動ノズル10の処理位置は、たとえば、中央位置である。
第2移動ノズル10が処理位置に位置する状態で、剥離液バルブ51が開かれる。これにより、
図5Dに示すように、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第2移動ノズル10から剥離液が供給(吐出)される(剥離液供給工程、剥離液吐出工程)。基板Wの上面に供給された剥離液は、遠心力によって、基板Wの全体に広がる。基板Wの上面に供給された剥離液は、固化膜100中の溶解成分を溶解させながら基板Wの上面と固化膜100との界面に達し、固化膜100と基板Wの上面との間に進入する。
図5Eに示すように、剥離液の供給を継続することで、基板Wの上面から固化膜100が剥離され、除去される(固化膜除去工程)。
【0068】
剥離液の供給は、たとえば、30秒間継続される。固化膜除去工程(ステップS5)において、基板Wは、所定の除去回転速度、たとえば、800rpmで回転される。
次に、
図5Fに示すように、基板Wの上面から剥離液を洗い流すリンス工程(ステップS6)が実行される。具体的には、剥離液バルブ51が閉じられ、第2ノズル移動ユニット36が第2移動ノズル10を退避位置に移動させる。そして、第3ノズル移動ユニット37が、第3移動ノズル11を処理位置に移動させる。第3移動ノズル11の処理位置は、たとえば、中央位置である。
【0069】
そして、第3移動ノズル11が処理位置に位置する状態で、リンス液バルブ52が開かれる。これにより、
図5Fに示すように、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第3移動ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(リンス液供給工程、リンス液吐出工程)。基板Wの上面に供給されたリンス液は、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。これにより、基板Wの上面に付着していた剥離液が、リンス液とともに基板W外に排出され、リンス液で置換される(リンス工程、剥離液排出工程)。
【0070】
基板Wの上面および下面へのリンス液の供給は、所定時間、たとえば、30秒間継続される。リンス工程(ステップS6)において、基板Wは、所定のリンス回転速度、たとえば、800rpmで回転される。
次に、基板Wを高速回転させて基板Wの上面を乾燥させるスピンドライ工程(ステップS7)が実行される。具体的には、リンス液バルブ52が閉じられる。これにより、基板Wの上面へのリンス液の供給が停止される。
【0071】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転させる。スピンドライ工程における基板Wは、乾燥速度、たとえば、1500rpmで回転される。スピンドライ工程は、所定時間、たとえば、30秒間の間実行される。それによって、大きな遠心力が基板W上のリンス液に作用し、基板W上のロリンス液が基板Wの周囲に振り切られる。
【0072】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。ガード昇降ユニット74が第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを下位置に移動させる。
搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5のチャックピン20から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(ステップS8)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0073】
次に、
図6A~
図6Eを用いて、基板処理中の基板Wの表面付近の様子を詳細に説明する。
図6A~
図6Eは、基板処理中の基板Wの表面付近の様子を説明するための模式図である。
塗布膜形成工程(ステップS3)において形成された塗布膜102は、第1ポリマー(有機酸ポリマー)、第2ポリマー(熱硬化性樹脂)および溶解成分を含有している。塗布膜102中の第1ポリマーによって、基板Wの表層部150がエッチングされる(エッチング工程)。基板Wの表層部150とは、基板Wの表面近傍の部分のことである。
【0074】
塗布膜102において基板Wの上面151に接触する部分の第1ポリマーは、基板Wの表層部150をエッチングすることによって消失する。そのため、塗布膜102において基板Wの上面151に接触する部分の第1ポリマーの濃度が低減しないように、塗布膜102中の第1ポリマーが基板Wの上面151側に移動する。そのため、
図6Bに示すように、基板Wの表層部150のエッチングが徐々に進行し、基板Wの上面151が基板Wの下面側に後退する。基板Wの表層部150がエッチングされることでエッチング残渣104が形成される。
【0075】
そして、基板Wを介して、塗布膜102が加熱されることによって、
図6Cに示すように、塗布膜102が固化膜100に変化する。固化膜100には、固体状態の第1ポリマー、第2ポリマーおよび溶解成分が含まれている。固体状態の第1ポリマーを第1ポリマー固体110という。固体状態の第2ポリマーを第2ポリマー固体111という。固体状態の溶解成分を溶解成分固体112という。固化膜100(特に、第2ポリマー固体111)は、エッチング工程によって形成されたエッチング残渣104を保持する。
【0076】
次に、
図6Dを参照して、剥離液によって、溶解成分固体112が選択的に溶解される。すなわち、固化膜100が部分的に溶解される(溶解工程、部分溶解工程)。
「固体状態の溶解成分固体112が選択的に溶解される」とは、固体状態の溶解成分固体112のみが溶解されるという意味ではない。「固体状態の溶解成分固体112が選択的に溶解される」とは、固体状態の第2ポリマー固体111も僅かに溶解されるが、大部分の固体状態の溶解成分固体112が溶解されるという意味である。
【0077】
溶解成分固体112の選択的な溶解をきっかけとして、固化膜100において溶解成分固体112が偏在している部分に貫通孔106が形成される(貫通孔形成工程)。
溶解成分固体112が偏在している部分には、溶解成分固体112のみが存在するのではなく、第2ポリマー固体111も存在する。剥離液が溶解成分固体112だけでなく溶解成分固体112の周囲の第2ポリマー固体111も溶解させるため、貫通孔106の形成が促進される。
【0078】
貫通孔106は、平面視で、たとえば、直径数nmの大きさである。貫通孔106は、観測可能な程度に明確に形成されている必要はない。すなわち、貫通孔106は、固化膜100の上面から基板の上面まで剥離液を移動させる経路が固化膜100に形成されていればよく、その経路が全体として固化膜100を貫通していればよい。
ここで、固化膜100中に溶媒が適度に残留している場合には、剥離液は、固化膜100に残留している溶媒に溶け込みながら固化膜100を部分的に溶解する。詳しくは、剥離液が固化膜100中に残留している溶媒に溶け込みながら固化膜100中の溶解成分固体112を溶解して貫通孔106を形成する。そのため、固化膜100内に剥離液が進入しやすい(溶解進入工程)。
【0079】
基板Wの上面151に到達した剥離液は、固化膜100と基板Wとの界面に作用して固化膜100を剥離し、剥離された固化膜100を基板Wの上面151から排除する(剥離排除工程)。
詳しくは、剥離液に対する第2ポリマー固体111の溶解性は、剥離液に対する溶解成分固体112よりも低く、大部分の第2ポリマー固体111は固体状態で維持される。そのため、第2ポリマー固体111は、剥離液によってその表面付近が僅かに溶解されるだけである。そのため、貫通孔106を介して基板Wの上面151付近まで到達した剥離液は、第2ポリマー固体111において基板Wの上面151付近の部分を僅かに溶解させる。これにより、
図6Dの拡大図に示すように、剥離液が、基板Wの上面151付近の固体状態の第2ポリマー固体111を徐々に溶解させながら、固化膜100と基板Wの上面151との間の隙間Gに進入していく(剥離液進入工程)。
【0080】
そして、たとえば、貫通孔106の周縁を起点として固化膜100に亀裂(クラック)が形成される。そのため、溶解成分固体112は、クラック発生成分ともいわれる。固化膜100は、亀裂の形成によって分裂し、膜片108となる。
図6Eに示すように、固化膜100の膜片108は、エッチング残渣104を保持している状態で基板Wから剥離される(固化膜分裂工程、固化膜剥離工程)。
【0081】
そして、剥離液の供給を継続することによって、膜片108となった固化膜100が、エッチング残渣104を保持している状態で、剥離液によって洗い流される。言い換えると、エッチング残渣104を保持する膜片108が基板W外に押し出されて基板Wの上面151から排除される(固化膜排除工程、エッチング残渣排除工程)。これにより、基板Wの上面151を良好に洗浄することができる。
【0082】
第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
第1実施形態によれば、基板Wの上面151には、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含有する半固体状の塗布膜102が形成される。塗布膜102中の第1ポリマーによって基板Wの表層部150がエッチングされる。加熱処理(固体形成処理)によって塗布膜102中の第2ポリマーが固化される。これにより、塗布膜102が固化膜100に変化する。第1ポリマーは、塗布膜102中よりも固化膜100中において拡散しにくい。そのため、塗布膜102が固化膜100に変化することによって、第1ポリマーによる基板Wの表層部150のエッチングが停止される。
【0083】
この方法とは異なり、基板Wの上面151に向けてフッ酸等のエッチング液の連続流を供給し続けながら基板Wの表層部150をエッチングする手法では、エッチング液が次々に基板Wの外方へ排出される。
一方、半固体状の塗布膜102の流動性は、連続流のエッチング液の流動性よりも低い。そのため、基板W外方に排出される混合液の量を低減することができる。したがって、第1ポリマーの消費量、すなわち、エッチング成分の消費量を低減することができる。
【0084】
塗布膜102中の第1ポリマーを用いて基板Wの表層部150をエッチングする場合、基板Wの上面151にエッチング残渣104が付着しやすい。第1実施形態に係る方法では、固化膜除去工程において、固化膜100は、剥離液に溶解されて基板Wの上面151から除去されるのではなく、基板Wの上面151から剥離されて除去される。そのため、固化膜100がエッチング残渣104を保持したまま基板Wの上面151から引き剥がされる。その結果、固化膜100とともにエッチング残渣104を基板Wの上面151から除去することができる。
【0085】
また第1実施形態によれば、エッチング工程が、液膜エッチング工程および塗布膜エッチング工程を含む。そのため、塗布膜102中の第1ポリマーによる基板Wの表層部150のエッチングだけでなく、塗布膜102のベースとなる混合液の液膜101中の第1ポリマーによっても基板Wの表層部150がエッチングされる。混合液の液膜101中において基板Wの上面151に接触する部分の第1ポリマーは、基板Wの表層部150をエッチングすることによって消失する。混合液の流動性は、半固体状の塗布膜102の流動性よりも高い。
【0086】
そのため、塗布膜102によるエッチングと比較して、基板Wの上面151付近の第1ポリマーがエッチングにより消失した際に、混合液の液膜101中の第1ポリマーは、塗布膜102中の第1ポリマーよりも速やかに拡散しやすい。そのため、基板Wの上面151付近の第1ポリマーの濃度の低減を抑制できるので、基板Wの表層部150が速やかにエッチングされる。
【0087】
また、混合液の液膜101が基板Wの上面に形成された状態でエッチングが行われるため、基板Wの上面151に向けてフッ酸等のエッチング液の連続流を供給し続けながら基板Wの表層部150をエッチングする手法と比較して、基板Wの外方に排出される第1ポリマーの量、すなわち、エッチング成分の消費量を低減することができる。
液膜エッチング工程が、基板Wの上面151に対向する第1移動ノズル9から基板Wの上面151に向けて混合液の液膜を形成する混合液膜形成工程を含む。そのため、第1ポリマーおよび第2ポリマーが予め混合された状態で基板Wの上面151に供給される。基板Wの上面151上で第1ポリマーおよび第2ポリマーを混合する必要がないため、塗布膜102を速やかに形成できる。ひいては、基板処理に要する時間を短縮できる。
【0088】
また第1実施形態によれば、塗布膜102中の第2ポリマーとしての熱硬化性樹脂が加熱によって硬化される。熱硬化性樹脂の硬化によって塗布膜102が固化膜100に変化する。熱硬化性樹脂の硬化によって固化膜100が形成されるため、第1ポリマーの拡散を一層抑制できる。したがって、第1ポリマーによる基板Wの表層部150のエッチングを一層確実に停止できる。
【0089】
また第1実施形態によれば、固化膜100が、第2ポリマーよりも剥離液に対する溶解性が高い溶解成分を含有する。そして、剥離液によって、固化膜100中の溶解成分固体112が溶解される。剥離液で固化膜100中の溶解成分固体112を溶解させることによって固化膜100に貫通孔106が形成される。そのため、固化膜100中に形成された貫通孔を106介して剥離液を固化膜100と基板Wとの界面に速やかに到達させることができる。剥離液は、基板Wと固化膜100との界面に進入して基板Wの上面151から固化膜100を剥離する。これにより、第1ポリマーによるエッチングが終了した後に、基板Wの上面151から固化膜100を速やかに剥離することができる。
【0090】
第2ポリマーが固体状態で維持されるため、溶解成分固体112が溶解された後においても、第2ポリマー固体111によってエッチング残渣104を保持することができる。剥離液の供給によって固化膜100を基板Wの上面から排除する際においても、固化膜100によってエッチング残渣104が保持された状態を維持することができる。そのため、エッチング残渣104が固化膜100によって保持されてない場合と比較して、剥離液の流れから受けるエネルギー(物理力)を増大させることができる。その結果、剥離液によって、基板Wの上面からエッチング残渣104を効果的に除去することができる。
【0091】
また第1実施形態によれば、基板Wの表層部150のエッチングによって発生したエッチング残渣104が、固化膜除去工程において、固化膜100とともに基板Wの上面151から除去される。そのため、固化膜100を除去した後に、エッチング残渣104を別途除去するための処理を行う必要がない。
また第1実施形態では、ポリマーでない酢酸等の有機酸よりも粘性が高い有機酸ポリマーが第1ポリマーとして用いられる。そのため、有機酸ポリマーを用いることで、エッチング成分として基板Wの上面を覆う際に、基板Wから排出される液体の量を低減できる。そのため、エッチング成分の使用量を低減できる。
【0092】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pに備えられる処理ユニット2の概略構成を示す模式的な部分断面図である。
図7において、前述の
図1~
図6Eに示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する(後述する
図8~
図9Bにおいても同様)。
【0093】
第2実施形態に係る基板処理装置1Pが第1実施形態に係る基板処理装置1と主に異なる点は、第1ポリマーと第2ポリマーとが別々のノズルから吐出されるように、基板処理装置1Pの処理ユニット2が構成されている点である。
詳しくは、処理ユニット2が、第1ポリマーを含有する第1ポリマー液を基板Wの上面に向けて供給する第1移動ノズル9Pと、第2ポリマーを含有する第2ポリマー液を基板Wの上面に向けて供給する第4移動ノズル12とを含む。
【0094】
第1移動ノズル9Pは、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて、第1ポリマー液を供給(吐出)する第1ポリマー液ノズル(第1ポリマー液供給ユニット)の一例である。
第1移動ノズル9Pは、第1実施形態に係る第1移動ノズル9と同様に、第1ノズル移動ユニット35によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル9Pは、水平方向において、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
【0095】
第1移動ノズル9Pは、第1移動ノズル9Pに第1ポリマー液を案内する第1ポリマー液配管40Pに接続されている。第1ポリマー液配管40Pに介装された第1ポリマー液バルブ50Pが開かれると、第1ポリマー液が、第1移動ノズル9Pの吐出口から下方に連続流で吐出される。第1移動ノズル9Pが中央位置に位置するときに第1ポリマー液バルブ50Pが開かれると、第1ポリマー液が基板Wの上面の中央領域に供給される。
【0096】
第1ポリマー液には、溶質および溶媒が含有されている。第1ポリマー液に含有される溶媒は、たとえば、有機溶剤である。有機溶剤としては、第1実施形態に係る混合液に含有される溶媒として列挙されている有機溶剤を用いることができる。
第1ポリマー液には、溶質として、第1ポリマーが含有されている。第1ポリマーとしては、第1実施形態に係る混合液に含有される第1ポリマーとして列挙されているポリマーを用いることができる。
【0097】
第4移動ノズル12は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて、第2ポリマー液を供給(吐出)する第2ポリマー液ノズル(第2ポリマー液供給ユニット)の一例である。
第4移動ノズル12は、第4ノズル移動ユニット38によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第4移動ノズル12は、水平方向において、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
【0098】
第4移動ノズル12は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の中央領域に対向する。第4移動ノズル12は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第4移動ノズル12は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第4ノズル移動ユニット38は、第1ノズル移動ユニット35と同様の構成を有している。すなわち、第4ノズル移動ユニット38は、第4移動ノズル12に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、アームに結合され鉛直方向に沿って延びる回動軸(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0099】
第4移動ノズル12は、第4移動ノズル12に第2ポリマー液を案内する第2ポリマー液配管43に接続されている。第2ポリマー液配管43に介装された第2ポリマー液バルブ53が開かれると、第2ポリマー液が、第4移動ノズル12の吐出口から下方に連続流で吐出される。第4移動ノズル12が中央位置に位置するときに第2ポリマー液バルブ53が開かれると、第2ポリマー液が基板Wの上面の中央領域に供給される。
【0100】
第2ポリマー液には、溶質および溶媒が含有されている。第2ポリマー液に含有される溶媒は、たとえば、有機溶剤である。有機溶剤として、第1実施形態に係る混合液に含有される溶媒として列挙されている有機溶剤を用いることができる。
第2ポリマー液には、溶質として、第2ポリマーおよび溶解成分が含有されている。第2ポリマーは、第1実施形態と同様に熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂は、第1実施形態と同様に、たとえば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。溶解成分の詳細については、後述する。
【0101】
第2実施形態に係る基板処理装置1Pを用いて、第1実施形態に係る基板処理装置1と同様の基板処理(
図4を参照)を実行することができる。
ただし、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理では、基板Wの上面上で第1ポリマー液および第2ポリマー液が混合されることによって、基板Wの上面に混合液が形成される。
図8は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理における混合液供給工程(ステップS2)の第1例を説明するための模式図である。
【0102】
具体的には、第1移動ノズル9Pおよび第4移動ノズル12が処理位置に位置する状態で、第1ポリマー液バルブ50Pおよび第2ポリマー液バルブ53が開かれる。これにより、第1移動ノズル9Pから基板Wの上面に向けて第1ポリマー液が吐出され、かつ、第4移動ノズル12から基板Wの上面に向けて第2ポリマー液が吐出される。基板Wの上面への第1ポリマー液の供給と基板Wの上面への第2ポリマー液の供給とが同時に実行される。
【0103】
基板Wの上面に供給された第1ポリマー液および第2ポリマー液が基板Wの上面で混合されることによって、基板Wの上面で混合液が形成される(混合液形成工程)。これにより、基板Wの上面に混合液が供給される(混合液供給工程)。第1ポリマー液および第2ポリマー液は、遠心力によって、基板Wの上面に広がりながら混合される。これにより、基板Wの上面の全体に混合液の液膜101が形成される(混合液膜形成工程)。第1ポリマー液の吐出および第2ポリマー液の吐出は、同時に開始されてもよい。混合液の液膜101はパドル状態であることが好ましい。
【0104】
混合液の液膜101中の第1ポリマー(有機酸ポリマー)によって、基板Wの表層部がエッチングされる(エッチング工程、液膜エッチング工程)。
第1移動ノズル9Pからの第1ポリマー液の供給および第4移動ノズル12からの第2ポリマー液の供給は、所定時間、たとえば、2秒~4秒の間継続される。混合液供給工程において、基板Wは、所定の混合液回転速度、たとえば、10rpm~1500rpmで回転される。基板Wの上面に塗布される混合液の量は2cc程度である。
【0105】
混合液供給工程(ステップS2)における基板Wの回転速度は、混合液が基板Wの外方へ飛散しない程度の速度であることが好ましく、混合液の液膜101が基板W上でパドル状態となることが好ましい。
その後、第1ポリマー液バルブ50Pおよび第2ポリマー液バルブ53が閉じられ、第1移動ノズル9Pおよび第4移動ノズル12がホーム位置へ向けて移動される。そして、第1実施形態において説明したように、遠心力の作用により発生した気流によって、基板W上で形成された混合液からの溶媒の蒸発(揮発)が促進される。これにより、
図5Bに示すように、半固体状の塗布膜102が形成される(塗布膜形成工程)。塗布膜102中の第1ポリマー(有機酸ポリマー)によって基板Wの表層部がエッチングされる(エッチング工程、塗布膜エッチング工程)。第2実施形態において、第1移動ノズル9P、第4移動ノズル12およびスピンモータ23によって塗布膜形成ユニットが構成されている。
【0106】
基板Wの表層部のエッチングは、基板Wの上面への第1ポリマー液の着液の開始と同時に開始され、固化膜100の形成によって終了する。
第2実施形態に係る基板処理の第1例では、第1ポリマー液および第2ポリマー液が基板W上で混合して混合液が形成される。そのため、仮に、第1ポリマーと第2ポリマーとが互いに反応するものである場合に、基板Wの上面に第1ポリマーおよび第2ポリマーが供給される前に第1ポリマーと第2ポリマーとが反応することを抑制できる。
【0107】
さらに、第1ポリマー液および第2ポリマー液を基板Wの上面に順次に供給する方法と比較して、塗布膜102の形成に要する時間を短縮できる。ひいては、基板処理に要する時間を短縮できる。
第2実施形態に係る基板処理装置1Pでは、
図8に示す第1例の基板処理とは異なる基板処理を実行することも可能である。たとえば、混合液供給工程(ステップS2)において、基板Wの上面に向けて第1ポリマー液を供給し、第1ポリマー液の供給の終了後に、基板Wの上面に向けて第2ポリマー液が供給する第2例の基板処理を実行することが可能である。
図9Aおよび
図9Bは、基板処理装置1Pによる基板処理における混合液供給工程(ステップS2)の第2例を説明するための模式図である。
【0108】
基板処理装置1Pによる第2例の基板処理について詳しく説明する。まず、第1移動ノズル9Pが処理位置に位置する状態で、第1ポリマー液バルブ50Pが開かれる。これにより、第1移動ノズル9Pから基板Wの上面に向けて第1ポリマー液が供給(吐出)される(第1ポリマー液供給工程、第1ポリマー液吐出工程)。基板Wの上面に着液した第1ポリマー液は、遠心力によって、基板Wの上面の全体に広がり基板Wの上面の全体に第1ポリマー液の液膜120が形成される(第1ポリマー液膜形成工程)。液膜120は、パドル状態であることが好ましい。
【0109】
第1移動ノズル9Pからの第1ポリマー液の供給は、所定時間、たとえば、2秒~4秒の間継続される。第1ポリマー液供給工程において、基板Wは、所定の第1ポリマー液回転速度、たとえば、10rpm~1500rpmで回転される。基板Wの上面に塗布される第1ポリマー液の量は2cc程度である。
基板Wの上面に第1ポリマー液の液膜120が形成されると、第1ポリマー液バルブ50Pが閉じられ、第1移動ノズル9Pがホーム位置へ向けて移動される。一方、第4移動ノズル12は、処理位置に向けて移動される。第4移動ノズル12が処理位置に位置する状態で、第2ポリマー液バルブ53が開かれる。これにより、基板Wの上面に向けて第4移動ノズル12から第2ポリマー液が供給(吐出)される(第2ポリマー液供給工程、第2ポリマー液吐出工程)。
【0110】
第1ポリマー液の液膜120に第2ポリマー液が供給されることによって、第1ポリマー液および第2ポリマー液が混合されて混合液が形成される(混合液形成工程)。これにより、基板Wの上面に混合液が供給される(混合液供給工程)。第1ポリマー液の液膜120に第2ポリマー液が混合されることによって、基板Wの上面の全体に混合液の液膜101が形成される(混合液膜形成工程)。混合液の液膜101はパドル状態であることが好ましい。
【0111】
第1移動ノズル9Pからの第1ポリマー液の吐出が終了する前に、第4移動ノズル12からの第2ポリマー液の吐出が開始されてもよい。
混合液の液膜101中の第1ポリマー(有機酸ポリマー)によって基板Wの表層部がエッチングされる(エッチング工程、液膜エッチング工程)。
第4移動ノズル12からの第2ポリマー液の供給は、所定時間、たとえば、2秒~4秒の間継続される。第2ポリマー液供給工程において、基板Wは、所定の第2ポリマー液回転速度、たとえば、10rpm~1500rpmで回転される。基板Wの上面に塗布される第2ポリマー液の量は2cc程度である。
【0112】
第2ポリマー液供給工程における基板Wの回転速度は、第2ポリマー液が基板Wの外方へ飛散しない程度の速度であることが好ましく、第2ポリマー液の液膜101が基板W上でパドル状態となることが好ましい。
その後、第2ポリマー液バルブ53が閉じられ、第4移動ノズル12がホーム位置へ向けて移動される。そして、第1実施形態において説明したように、遠心力の作用により発生した気流によって、基板W上で形成された混合液からの溶媒の蒸発(揮発)が促進される。これにより、
図5Bに示すように、半固体状の塗布膜102が形成される(塗布膜形成工程)。塗布膜102中の第1ポリマー(有機酸ポリマー)によって基板Wの表層部がエッチングされる(エッチング工程、塗布膜エッチング工程)。
【0113】
基板Wの表層部のエッチングは、基板Wの上面への第1ポリマー液の着液の開始と同時に開始され、固化膜100の形成によって終了する。
第2実施形態に係る基板処理の第2例では、第1ポリマー液および第2ポリマー液が基板W上で混合して混合液が形成される。そのため、仮に、第1ポリマーと第2ポリマーとが互いに反応するものである場合に、基板Wの上面に第1ポリマーおよび第2ポリマーが供給される前に第1ポリマーと第2ポリマーとが反応することを抑制できる。
【0114】
さらに、第2ポリマー液に先立って第1ポリマー液が基板Wの上面に供給される。そのため、基板Wの上面上の液膜120には第2ポリマー液が混合されていない。そのため、第1ポリマー液の液膜120中の第1ポリマーの濃度は、混合液の液膜101中の第1ポリマーの濃度よりも高い。そのため、第1ポリマー液の液膜120中の第1ポリマーによって、基板Wの表層部を短時間でエッチングできる。
【0115】
さらに、エッチングの進行によって第1ポリマーがある程度消費された後に、第1ポリマー液と第2ポリマー液とが基板Wの上面で混合される。そのため、第1ポリマーと第2ポリマーとが互いに反応するものである場合に、第1ポリマーと第2ポリマーとの反応を一層抑制できる。
【0116】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係る基板処理装置1Qに備えられる処理ユニット2の概略構成を示す模式図である。
図10において、前述の
図1~
図9Bに示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する(後述する
図11においても同様)。
【0117】
第3実施形態に係る基板処理装置1Qが第1実施形態に係る基板処理装置1と主に異なる点は、ヒータユニット6の代わりに、光照射ユニット8が設けられている点である。
光照射ユニット8は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面(上側の表面)に上方から対向する対向面13aを有する対向部材13と、対向面13aに取り付けられた複数のランプ80とを含む。
【0118】
対向部材13は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成されている。対向面13aは、スピンチャック5よりも上方でほぼ水平面に沿って配置されている。
対向部材13において対向面13aとは反対側には、回転軸130が固定されている。
対向部材13は、対向面13aと基板Wの上面との間の空間内の雰囲気を当該空間の外部の雰囲気から遮断する。そのため、対向部材13は、遮断板ともいう。
【0119】
複数のランプ80は、対向面13aの全域に等間隔で配置されている。処理ユニット2は、複数のランプ80を通電させたり複数のランプ80への通電を停止したりするように構成されているランプ通電ユニット85をさらに含む。ランプ80は通電されることにより光を発する。各ランプ80から発せられる光は、たとえば、赤外線、紫外線、可視光等が挙げられる。
【0120】
処理ユニット2は、対向部材13を昇降させる対向部材昇降ユニット131と、対向部材13を回転軸線A1まわりに回転させる対向部材回転ユニット132とをさらに含む。
対向部材昇降ユニット131は、下位置から上位置までの任意の位置(高さ)に対向部材13を鉛直方向に位置させることができる。下位置とは、対向部材13の可動範囲において、対向面13aが基板Wに最も近接する位置である。上位置とは、対向部材13の可動範囲において対向面13aが基板Wから最も離間する位置である。対向部材13が上位置に位置するときに、基板Wの搬入および搬出のために搬送ロボットCRがスピンチャック5にアクセスすることができる。
【0121】
対向部材昇降ユニット131は、たとえば、回転軸130を支持する支持部材(図示せず)に結合されたボールねじ機構(図示せず)と、当該ボールねじ機構に駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。対向部材昇降ユニット131は、対向部材リフタ(遮断板リフタ)ともいう。対向部材回転ユニット132は、たとえば、回転軸130を回転させるモータ(図示せず)を含む。
【0122】
対向部材昇降ユニット131は、対向部材13とともに複数のランプ80を昇降させる。対向部材昇降ユニット131は、ランプ昇降ユニット(ランプリフタ)の一例である。対向部材回転ユニット132は、対向部材13とともに複数のランプ80を回転させる。対向部材回転ユニット132は、ランプ回転ユニット(ランプ回転モータ)の一例である。
【0123】
第3実施形態とは異なり、対向部材13は、たとえば、チャンバ4の上壁に取り付けられており、固定されていてもよい。
混合液に含有されている溶媒は、たとえば、有機溶剤である。有機溶剤としては、第1実施形態に係る混合液に含有されている溶媒として列挙されている有機溶剤を用いることができる。混合液に含有されている第1ポリマーとしては、第1実施形態に係る混合液に含有される第1ポリマーとして列挙されているポリマーを用いることができる。
【0124】
第3実施形態に係る混合液に含有されている第2ポリマーは、第1実施形態に係る混合液に含有されている第2ポリマーとは異なり、光の照射によって硬化する光硬化性樹脂である。光硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。
ランプ通電ユニット85、対向部材昇降ユニット131および対向部材回転ユニット132は、コントローラ3によって制御される(
図3を参照)。
【0125】
第3実施形態に係る基板処理装置1Qは、第1実施形態に係る基板処理(
図4を参照)と同様の基板処理を実行することができる。ただし、固化膜形成工程(ステップS4)において、塗布膜102に対して光が照射される。
詳しくは、塗布膜形成工程(ステップS3)の後、対向部材昇降ユニット131によって、対向部材13を、上位置と下位置との間の処理位置に配置する。対向部材13が処理位置に位置する状態でランプ80が通電されることによって、基板W上の塗布膜102(
図5Bを参照)に光が照射される。これにより、
図11に示すように、固化膜100が形成され、基板Wの表層部のエッチングが停止される(エッチング停止工程)。光照射によって固化膜100が形成されるため、光照射は、固体形成処理の一例である。光照射ユニット8は、固体形成ユニットの一例である。
【0126】
図12に示すように、塗布膜102に光が照射されることによって、塗布膜102が固化膜100に変化することを除いては、基板処理中の基板Wの表面付近の様子についても第1実施形態とほぼ同様である。
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、固体形成処理が、塗布膜102への光照射処理を含み、第2ポリマーが、光硬化性樹脂である。そのため、塗布膜中の第2ポリマーとしての光硬化性樹脂が光の照射によって硬化される。光硬化性樹脂の硬化によって塗布膜102が固化膜100に変化する。光硬化性樹脂の硬化によって固化膜100が形成されるため、エッチング成分の拡散を一層抑制できる。したがって、エッチング成分による基板Wの表層部150のエッチングを一層確実に停止できる。
【0127】
第3実施形態の基板処理装置1Qは、第1ポリマー液と第2ポリマー液とが基板W上で混合されるように構成されていてもよい。具体的には、第1移動ノズル9の代わりに、
図13に示すように、第2実施形態に係る第1移動ノズル9Pおよび第4移動ノズル12が設けられていてもよい。この構成であれば、第2実施形態に係る基板処理(
図8~
図9Bを参照)と同様の基板処理を実行することができる。
【0128】
次に、
図14および
図15を用いて、光照射ユニット8の変形例について説明する。
図14は、光照射ユニット8の第1変形例について説明するための模式図である。
図15は、光照射ユニット8の第2変形例について説明するための模式図である。
たとえば、
図14に示す第1変形例のように、光照射ユニット8は、チャンバ4内に設けられたランプ移動ユニット86によって、照射位置とホーム位置(退避位置)との間で移動するように構成されていてもよい。
【0129】
照射位置は、基板Wの上面に光照射ユニット8が対向する位置である。照射位置は、光照射ユニット8から基板Wの上面への光の照射が可能な位置である。退避位置は、光照射ユニット8から基板Wの上面へ光が照射されない位置である。光照射ユニット8は、照射位置に位置するときに、光照射ユニット8が基板Wの上面に対向する。光照射ユニット8は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。
【0130】
図14に示す構成では、光照射ユニット8は、ランプ80と、ランプ80を収容するランプホルダ81とを含む。ランプ移動ユニット86は、ランプホルダ81を支持するアーム87と、アーム87に接続され鉛直に延びる回動軸89と、回動軸89を介してアーム87を移動させるアーム移動ユニット88とを含む。アーム移動ユニット88は、たとえば、アーム87を水平移動させるために回動軸89をその中心軸線(回動軸線A2)まわりに回転させるモータと、回動軸89とともにアーム87を昇降させるボールねじ機構とを含む。
また、
図15に示す第2変形例のように、ランプ80は、直線状に延びるアーム87内に配置された棒状であってもよい。
【0131】
<第4実施形態>
図16は、第4実施形態に係る基板処理装置1Rの構成について説明するための模式図である。第4実施形態に係る基板処理装置1Rが第3実施形態に係る基板処理装置1Qと主に異なる点は、基板処理装置1Rが、固化膜100の形成と、固化膜100の剥離とが、別々のチャンバ4A,4B内で行われるように構成されている点である。
【0132】
基板処理装置1Rは、固化膜100を形成する固化膜形成処理ユニット2Aと、固化膜100を除去する固化膜除去処理ユニット2Bとを含む。
固化膜形成処理ユニット2Aは、基板Wを水平に保持した状態で基板Wを回転させるスピンチャック5Aと、基板Wの上面に混合液を供給する第1移動ノズル9と、スピンチャック5Aおよび第1移動ノズル9を収容するチャンバ4Aとを含む。
【0133】
チャンバ4Aには、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口4Aaが形成されている。チャンバ4Aには、この出入口を開閉するシャッタユニット4Abが備えられている。
固化膜形成処理ユニット2Aは、チャンバ4Aの出入口4Aaを通過する基板Wに対して光を照射する光照射ユニット8をさらに含む。光照射ユニット8は、たとえば、赤外線、紫外線、可視光等を発するランプを含む。光照射ユニット8は、チャンバ4Aの側壁に取り付けられている。
【0134】
固化膜除去処理ユニット2Bは、基板Wを水平に保持した状態で基板Wを回転させるスピンチャック5Bと、基板Wの上面に剥離液を供給する第2移動ノズル10と、基板Wの上面にリンス液を供給する第3移動ノズル11と、スピンチャック5B、第2移動ノズル10および第3移動ノズル11を収容するチャンバ4Bとを含む。
チャンバ4Bには、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口4Baが形成されている。チャンバ4Bには、この出入口を開閉するシャッタユニット4Bbが備えられている。
【0135】
第4実施形態に係る基板処理装置1Rによる基板処理では、搬送ロボットCRによって基板Wが固化膜形成処理ユニット2Aのチャンバ4A(第1チャンバ)内に搬入された後、チャンバ4A内で、
図4に示す混合液供給工程(ステップS2)および塗布膜形成工程(ステップS3)が実行される。つまり、混合液供給工程(ステップS2)の開始から塗布膜形成工程(ステップS3)の終了までの間、基板Wは、チャンバ4A内のスピンチャック5Aに保持される(第1基板保持工程)。
【0136】
その後、上面に塗布膜102が形成された基板Wが、
図16に示すように、搬送ロボットCRによって、固化膜形成処理ユニット2Aのチャンバ4Aから搬出される(搬出工程)。基板Wがチャンバ4Aの出入口4Aaを通過する際、光照射ユニット8によって塗布膜102中の第2ポリマーが硬化され、固化膜100が形成される。すなわち、搬出工程中に固化膜形成工程(ステップS4)が実行される。基板Wは、その上面に固化膜100が形成された状態で、固化膜除去処理ユニット2Bのチャンバ4Bに搬入される(搬入工程)。搬送ロボットCRは、搬送ユニットの一例である。
【0137】
そして、チャンバ4B内で、
図4に示す固化膜除去工程(ステップS5)、リンス工程(ステップS6)およびスピンドライ工程(ステップS7)が実行される。つまり、固化膜除去工程(ステップS5)の開始からスピンドライ工程(ステップS7)の終了までの間、基板Wは、チャンバ4B内のスピンチャック5Bに保持される(第2基板保持工程)。
【0138】
第4実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第4実施形態によれば、固化膜100の形成と固化膜100の除去とが別々のチャンバ4A,4B内で行われる構成において、基板Wの搬送中に固化膜100を形成することができる。そのため、基板処理に要する時間を短縮できる。
図16には図示されていないが、固化膜形成処理ユニット2Aおよび固化膜除去処理ユニット2Bには、処理カップ7(
図2を参照)が設けられていてもよい。
【0139】
<溶解成分の詳細>
以下では、上述の実施形態に用いられる溶解成分について説明する。
以下では、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
【0140】
溶解成分はクラック促進成分である。クラック促進成分は、炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基(-OH)および/またはカルボニル基(-C(=O)-)を含んでいる。クラック促進成分がポリマーである場合、構成単位の1種が1単位ごとに炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基および/またはカルボニル基を有する。カルボニル基とは、カルボン酸(-COOH)、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、エノンが挙げられ、カルボン酸が好ましい。
【0141】
権利範囲を限定する意図はなく、理論に拘束されないが、塗布膜が乾燥され基板上に固化膜を形成し、剥離液が固化膜を剥離する際に溶解成分が、固化膜が剥がれるきっかけとなる部分を生むと考えられる。このために溶解成分は剥離液に対する溶解性が、低溶解性成分よりも高いものであることが好ましい。クラック促進成分がカルボニル基としてケトンを含む態様として環形の炭化水素が挙げられる。具体例として、1,2-シクロヘキサンジオンや1,3-シクロヘキサンジオンが挙げられる。
【0142】
より具体的な態様として、溶解成分は、下記(A)、(B)および(C)の少なくともいずれか1つで表される。
(A)は下記化学式3を構成単位として1~6つ含んでなり(好適には1~4つ)、各構成単位が連結基(リンカーL1)で結合される化合物である。ここで、リンカーL1は、単結合であってもよいし、C1~6アルキレンであってもよい。前記C1~6アルキレンはリンカーとして構成単位を連結し、2価の基に限定されない。好ましくは2~4価である。前記C1~6アルキレンは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
【0143】
【0144】
Cy1はC5~30の炭化水素環であり、好ましくはフェニル、シクロヘキサンまたはナフチルであり、より好ましくはフェニルである。好適な態様として、リンカーL1は複数のCy1を連結する。
R1はそれぞれ独立にC1~5アルキルであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、またはブチルである。前記C1~5アルキルは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
【0145】
nb1は1、2または3であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。nb1’は0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。
下記化学式4は、化学式3に記載の構成単位を、リンカーL9を用いて表した化学式である。リンカーL9は単結合、メチレン、エチレン、またはプロピレンであることが好ましい。
【0146】
【0147】
権利範囲を限定する意図はないが、(A)の好適例として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)、2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、1,3-シクロヘキサンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,6-ナフタレンジオール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、が挙げられる。これらは、重合や縮合によって得てもよい。
【0148】
一例として下記化学式5に示す2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノールを取り上げ説明する。同化合物は(A)において、化学式3の構成単位を3つ有し、構成単位はリンカーL1(メチレン)で結合される。nb1=nb1’=1であり、R1はメチルである。
【0149】
【0150】
(B)は下記化学式6で表される。
【0151】
【0152】
R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、好ましくは水素、メチル、エチル、t-ブチル、またはイソプロピルであり、より好ましくは水素、メチル、またはエチルであり、さらに好ましくはメチルまたはエチルである。
リンカーL21およびリンカーL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンである。これらの基はC1~5のアルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよい。ここで、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価の炭化水素を意味し、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価の炭化水素基を意味するものとする。リンカーL21およびリンカーL22は、好ましくはC2~4のアルキレン、アセチレン(C2のアルキニレン)またはフェニレンであり、より好ましくはC2~4のアルキレンまたはアセチレンであり、さらに好ましくはアセチレンである。
【0153】
nb2は0、1または2であり、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
権利範囲を限定する意図はないが、(B)の好適例として、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、が挙げられる。別の一形態として、3-ヘキシン-2,5-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノールも(B)の好適例として挙げられる。
【0154】
(C)は下記化学式7で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量 (Mw)が500~10,000のポリマーである。Mwは、好ましくは600~5,000であり、より好ましくは700~3,000である。
【0155】
【0156】
ここで、R25は-H、-CH3、または-COOHであり、好ましくは-H、または-COOHである。1つの(C)ポリマーが、それぞれ化学式7で表される2種以上の構成単位を含んでなることも許容される。
権利範囲を限定する意図はないが、(C)ポリマーの好適例として、アクリル酸、マレイン酸、またはこれらの組合せの重合体が挙げられる。ポリアクリル酸、マレイン酸アクリル酸コポリマーがさらに好適な例である。
【0157】
共重合の場合、好適にはランダム共重合またはブロック共重合であり、より好適にはランダム共重合である。
一例として、下記化学式8に示す、マレイン酸アクリル酸コポリマーを挙げて説明する。同コポリマーは(C)に含まれ、化学式7で表される2種の構成単位を有し、1の構成単位においてR25は-Hであり、別の構成単位においてR25は-COOHである。
【0158】
【0159】
言うまでもないが、溶解成分として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。例えば、溶解成分は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールの双方を含んでも良い。
溶解成分は、分子量80~10,000であってもよい。溶解成分は、好ましくは分子量90~5000であり、より好ましくは100~3000である。溶解成分が樹脂、重合体またはポリマーの場合、分子量は重量平均分子量(Mw)で表す。
溶解成分は合成しても購入しても入手することが可能である。供給先としては、シグマアルドリッチ、東京化成工業、日本触媒が挙げられる。
【0160】
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
スピンチャック5は、複数のチャックピン20を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、基板Wの下面をスピンベース21の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
また、上述した実施形態における各液体(混合液、第1ポリマー液、第2ポリマー液、剥離液、リンス液)は、移動ノズルから吐出されるように構成されているが、各基板処理装置1、1P、1Q、1Rは、基板Wに対する位置が固定された固定ノズルから液体が吐出されるように構成されていてもよい。
【0161】
上述した実施形態では、塗布膜102の加熱は、ヒータユニット6によって行われる。しかしながら、塗布膜102は、たとえば、基板Wの下面に温水が供給されることによって加熱されてもよい。
上述した実施形態では、リンス工程の後、スピンドライ工程が実行される。しかしながら、リンス工程において純水等のリンス液で基板Wの上面を洗浄した後に、IPA等の有機溶剤でリンス液が置換され、その後に、スピンドライ工程が実行されてもよい。
【0162】
また、上述した実施形態では、混合液の液膜101から塗布膜102が形成される。しかしながら、上述した実施形態とは異なり、基板Wの上面に、第1ポリマーおよび第2ポリマーを含有する高粘度の塗布剤を塗布することによって、基板Wの上面に塗布膜102が形成されてもよい。塗布剤には、溶媒が含有されていてもよいが、第1ポリマーおよび第2ポリマーが塗布可能な程度に流動性を有している場合には、塗布剤に溶媒が含有されていなくてもよい。
【0163】
この明細書において、「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、特に限定されて言及されない限り、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0164】
1 :基板処理装置
1P :基板処理装置
1Q :基板処理装置
1R :基板処理装置
3 :コントローラ
6 :ヒータユニット(固体形成ユニット)
8 :光照射ユニット(固体形成ユニット)
9 :第1移動ノズル(塗布膜形成ユニット)
9P :第1移動ノズル(塗布膜形成ユニット)
10 :第2移動ノズル(剥離液供給ユニット)
12 :第4移動ノズル(塗布膜形成ユニット)
23 :スピンモータ(塗布膜形成ユニット)
100 :固化膜
102 :塗布膜
104 :エッチング残渣
150 :表層部
151 :上面(表面)
W :基板