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特許7513458ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20240702BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20240702BHJP
   C08J 9/14 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C08G18/40 018
C08G18/00 H
C08G18/00 L
C08G18/22
C08G18/50 021
C08J9/14 CFF
C08G101:00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020136195
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032435
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆康
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014840(JP,A)
【文献】特開2014-237757(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050139(WO,A1)
【文献】特開2016-141719(JP,A)
【文献】特開2003-048943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
71/00- 71/04
101/00
C08J 9/00- 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを主体とするポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとを、触媒として少なくともイミダゾール系触媒及びカルボン酸金属塩触媒を用いて反応せしめると共に、発泡剤による発泡にて、ポリウレタンフォームを形成するための発泡性組成物にして、
前記発泡剤がハロゲン化ハイドロオレフィンであり、前記ポリオール組成物が、前記ポリオールとして、ポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B)とを質量比においてA:B=70:30~40:60の割合で含有し、且つ該ポリエーテルポリオールの70質量%以上が、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成されていると共に、更に、ポリマー微粒子を含有していることを特徴とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項2】
前記ポリマー微粒子が、前記ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して0.05~2.0質量部の割合において、含有せしめられることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項3】
前記ポリマー微粒子が、所定のポリオール中に分散されてなる形態において、配合せしめられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項4】
前記ポリマー微粒子が前記所定のポリオール中においてエチレン性不飽和モノマーを重合させることによって形成されて、かかる所定のポリオール中に分散されてなる形態とされている請求項3に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸金属塩触媒が、錫、鉛、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれた金属のカルボン酸塩であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸金属塩触媒が、カルボン酸錫、カルボン酸鉛、カルボン酸亜鉛及びカルボン酸ジルコニウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項7】
前記ポリウレタンフォームが少なくとも40mm以上の厚さにおいて形成される発泡性組成物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項8】
記ハロゲン化ハイドロオレフィンが、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項9】
前記ハロゲン化ハイドロオレフィンが、前記ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して10~50質量部の割合において、含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項10】
前記発泡剤として、ハロゲン化ハイドロオレフィンと共に、更に水が用いられ、且つかかる水が、前記ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して1~5質量部の割合において、含有せしめられることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項11】
前記発泡剤が、前記ポリオール組成物に配合せしめられていることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項12】
前記ポリウレタンフォームが、80~90%の独立気泡率を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物を用いて、かかる発泡性組成物を、所定の構造体の表面に吹き付けて、発泡・硬化せしめることにより、所定厚さのポリウレタンフォーム層を形成することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法に係り、特に、吹付け施工時の液ダレや横伸びの問題を有利に解消しつつ、フォームの収縮を効果的に抑制したポリウレタンフォームを有利に製造することの出来る発泡性組成物と、それを用いて、優れた特性を有するポリウレタンフォームを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性や接着性を利用して、主に断熱部材として、建築用内外壁材やパネル等の断熱を始め、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、また輸液パイプ等の断熱に、実用化されてきている。そして、かかるポリウレタンフォームは、一般に、ポリオール化合物を主体とし、これに、発泡剤、更に必要に応じて触媒や整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合したポリオール配合液(プレミックス液)からなるポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを、混合装置により連続的に又は断続的に混合して、フォーム形成箇所に適用し、反応せしめて、発泡・硬化させることにより、製造されているのである。
【0003】
ところで、かかるポリウレタンフォームの製造のために、現在使用されている発泡剤としては、地球温暖化係数において比較的優位とされるHFC-134a、HFC-245fa、HFC-365mfc等のハイドロフルオロカーボン(HFC)系発泡剤が知られている。このハイドロフルオロカーボン系発泡剤は、オゾン層破壊の少ない又は生じない代替フロンとして認識されているものではあるが、近い将来、環境破壊の問題に対する強い要請により、そのような代替フロンの使用も制限されるとの推測から、それに代わり、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低くなるハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)と呼ばれるハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤が、開発されてきている。
【0004】
例えば、特表2013-500386号公報(特許文献1)においては、ハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤の一つであるHCFO-1233zdを用い、それと、少なくとも一つのポリエステルポリオール及び少なくとも一つのポリエーテルポリオールとを含む組成物を形成して、この組成物とポリイソシアネートとを反応、発泡・硬化させることにより、ポリウレタンフォームを形成せしめる技術が、提案されている。そして、そこで用いられるハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤は、上記したHFC系発泡剤と比較して、ポリオールとの相溶性が良好であり、系内から発泡剤が脱離し難い性質を有しているものではあるが、そこで提案されているポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを、ポリオール成分として、単に併用するだけでは、施工性が充分でなく、また形成されるフォームの寸法安定性や加工性等において良好な特性を発揮する硬質のポリウレタンフォームを得ることは、困難なことであった。
【0005】
また、特開2016-74885号公報(特許文献2)には、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含有し、且つポリオール化合物として、アミノ基含有化合物を開始剤として得られるポリエーテルポリオールや、マンニッヒ系化合物を開始剤として得られるポリエーテルポリオールの少なくとも一つを含有することにより、硬化不良を抑制して、ポリウレタンフォームの収縮を抑制出来るポリオール組成物を得ることが出来ることが、明らかにされている。更に、特開2019-14840号公報(特許文献3)においても、発泡剤として、少なくともハロゲン化ハイドロオレフィンを用いてなるポリウレタンフォーム用発泡性組成物において、ポリオールとして、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを併用し、且つかかるポリエーテルポリオールの70質量%以上をエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成することにより、施工性、特に現場での吹付け発泡の作業性を向上すると共に、良好な寸法安定性を有利に発揮し得るポリウレタンフォームを形成することが出来ることが、明らかにされている。
【0006】
しかしながら、それら従来の、発泡剤としてハロゲン化ハイドロオレフィンを用いたポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、そのような発泡性組成物を、通常の吹付け施工法に従って、フォーム形成対象物に吹き付け、目的とする硬質のポリウレタンフォームを形成したとき、施工性に関係する横伸び現象の抑制乃至は阻止が充分でないことに加えて、得られるフォームの加工性も不充分である問題があり、更にそのようなポリウレタンフォームの厚肉(例えば50mm厚)の層を形成したときに、ポリウレタンフォームの収縮が大きくなって、フォームの寸法安定性が悪くなる問題があった。また、形成されるポリウレタンフォームの密度を低下させて、その軽量化を図るべく、発泡性組成物中の発泡剤の含有量を増量させたりすると、フォームのセル強度が低下して、セル内部が減圧することにより、ポリウレタンフォームの収縮が大きくなって、寸法安定性が悪化する問題も、内在している。
【0007】
さらに、WO2012/105657や特開2011-256399号公報には、ポリマー微粒子(重合体微粒子)を分散、含有せしめてなるポリオール組成物を用いて、それと、ポリイソシアネートとを反応させて、目的とする硬質フォーム乃至はポリウレタン樹脂を製造する方法が、明らかにされている。具体的には、WO2012/105657には、ポリマー粒子を分散、含有せしめてなるポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを、ハイドロフルオロオレフィン類からなる発泡剤及び整泡剤、触媒の存在下で、反応させることにより、良好な特性、特に軽量化した場合でも寸法安定性の良好な硬質フォームが得られることが明らかにされ、そこでは、ポリオール組成物におけるポリオールとして、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール、マンニッヒ縮合物を開始剤とするポリエーテルポリオール等の各種のポリオール化合物を組み合わせて、用いられている。また、特開2011-256399号公報には、重合体微粒子を分散せしめてなるポリオールを10~100重量%の割合で含有するポリオール成分を、イソシアネート成分と反応させることにより、得られるポリウレタン樹脂であるポリウレタンフォームにおいて、その切断伸度等の機械物性の向上を図り得ることが、明らかにされている。
【0008】
しかしながら、そのようなポリマー微粒子を分散してなるポリオール組成物を用いて、ポリイソシアネートと反応して得られるポリウレタンフォームにあっては、フォーム加工性が充分でないことに加えて、その厚さが25mm程度のフォーム層においては、良好な寸法安定性を発揮するものであるが、その厚さが50mmとなるような厚肉のフォーム層を形成した場合には、その寸法安定性が充分でないという問題を内在している。しかも、そのようなポリマー微粒子分散ポリオール組成物とポリイソシアネートとを混合して、吹付け施工したときに、所謂液ダレや横伸び等の問題が惹起されて、施工性が悪化するようになると共に、形成されるフォーム層の特性にも、問題を内在するものであった。なお、ここで、横伸び現象とは、横滑り現象とも称され、発泡性組成物をスプレー塗装したときに、発泡開始段階において、フォームが塗装表面に添うように横方向(水平方向)に発泡・成長する現象を指すものであり、この横伸び現象は、一層目(下吹き)を吹き付けた後の第二層目(上吹き)の吹付け発泡工程で、特に顕著に認められ、所定の厚みが得られないばかりか、剥離が惹起される場合があり、吹付け施工時の大きな問題となっているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2013-500386号公報
【文献】特開2016-74885号公報
【文献】特開2019-14840号公報
【文献】WO2012/105657
【文献】特開2011-256399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、フォームの収縮が効果的に抑制され得る厚肉のポリウレタンフォームを有利に形成し得る発泡性組成物を提供することにあり、また他の課題とするところは、良好な断熱性能を保持しつつ、優れた寸法安定性を具備するポリウレタンフォームを、液ダレや横伸びの如き吹付け施工上の問題の解消を図りつつ、有利に製造し得る手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載やそこに開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0012】
(1) ポリオールを主体とするポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成さ れ、かかるポリオールとポリイソシアネートとを、触媒として少なくともカルボン 酸金属塩触媒を用いて反応せしめると共に、発泡剤による発泡にて、ポリウレタン フォームを形成するための発泡性組成物にして、前記ポリオール組成物が、前記ポ リオールとして、ポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B) とを質量比においてA:B=70:30~40:60の割合で含有し、且つ該ポリ エーテルポリオールの70質量%以上が、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオ ールにて構成されていると共に、更に、ポリマー微粒子を含有していることを特徴 とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(2) 前記ポリマー微粒子が、前記ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部 に対して0.05~2.0質量部の割合において、含有せしめられることを特徴と する前記態様(1)に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(3) 前前記ポリマー微粒子が、所定のポリオール中に分散されてなる形態において、 配合せしめられることを特徴とする前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のポ リウレタンフォーム用発泡性組成物。
(4) 前記ポリマー微粒子の分散されたポリオールが、かかるポリオール中においてエ チレン性不飽和モノマーを重合させることによって形成されたものであることを特 徴とする前記態様(3)に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(5) 前記カルボン酸金属塩触媒が、錫、鉛、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マ ンガン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれた金属のカルボン酸塩で あることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載のポ リウレタンフォーム用発泡性組成物。
(6) 前記カルボン酸金属塩触媒が、カルボン酸錫、カルボン酸鉛、カルボン酸亜鉛及 びカルボン酸ジルコニウムからなる群より選択されることを特徴とする前記態様( 1)乃至前記態様(5)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成 物。
(7) 前記ポリウレタンフォームが少なくとも40mm以上の厚さにおいて形成される 発泡性組成物であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか 1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(8) 前記発泡剤が、ハロゲン化ハイドロオレフィンであることを特徴とする前記態様 (1)乃至前記態様(7)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組 成物。
(9) 前記ハロゲン化ハイドロオレフィンが、前記ポリオール組成物中の全ポリオール の100質量部に対して10~50質量部の割合において、含有せしめられること を特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載のポリウレタ ンフォーム用発泡性組成物。
(10)前記発泡剤として、ハロゲン化ハイドロオレフィンと共に、更に水が用いられ、 且つかかる水が、前記ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して 1~5質量部の割合において、含有せしめられることを特徴とする前記態様(1) 乃至前記態様(9)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(11)前記発泡剤が、前記ポリオール組成物に配合せしめられていることを特徴とする 前記態様(1)乃至前記態様(10)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム 用発泡性組成物。
(12)前記ポリウレタンフォームが、80~90%の独立気泡率を有していることを特 徴とする前記態様(1)乃至前記態様(11)の何れか1つに記載のポリウレタン フォーム用発泡性組成物。
(13) 前記態様(1)乃至前記態様(12)の何れか1つに記載のポリウレタンフォ ーム用発泡性組成物を用いて、かかる発泡性組成物を、所定の構造体の表面に吹き 付けて、発泡・硬化せしめることにより、所定厚さのポリウレタンフォーム層を形 成することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、ポリイソシアネートに混合されて、反応せしめられるポリオール組成物の主体となるポリオールにおいて、それが、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの所定の割合にて構成され、更に、かかるポリエーテルポリオールの大部分が、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成されると共に、触媒として、少なくともカルボン酸金属塩触媒が用いられ、また、かかるポリオール組成物には、更に、ポリマー微粒子が分散、含有せしめられているところから、そのような発泡性組成物によって形成されるポリウレタンフォームは、それらポリオールの組合せに基づいて、低密度で、より均一なセルが形成せしめられて、吹付け施工時の横伸びの問題の解消と共に、液ダレの防止によるフォームの寸法安定性が向上されることに加えて、そのフォームの一部(気泡乃至はセル)がポリマー微粒子の作用によって破泡されたものとなり、これによって、フォームのセル内が減圧となることが有利に抑制乃至は回避され得ることとなるのであり、以て、フォームの収縮が効果的に抑制せしめられ得て、フォームの寸法安定性が相乗的によくなり、特に、厚肉発泡して得られる硬質ポリウレタンフォームの寸法安定性の向上に著しく寄与し得ることとなると共に、フォームの柔軟性をも有利に向上せしめられ得ることとなることによって、良好なフォーム加工性が発揮され得る利点も有しているのである。
【0014】
しかも、ポリマー微粒子をポリオール組成物に含有せしめて、発泡性組成物を構成することにより、そのような発泡性組成物から形成されるポリウレタンフォームの独立気泡率が低下するようになり、そして、この独立気泡率の低下に従って、熱伝導率も悪化するようになるのであるが、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、それより形成されるフォームの独立気泡率が80~90%となるように構成され、これによって、形成されるフォームの熱伝導率の悪化が効果的に抑制乃至は阻止され得るようにして、その良好な断熱性能を有利に保持し得るようになっているのである。
【0015】
さらに、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、液ダレや横伸び等の施工上の問題が効果的に改善乃至は解消されており、そのために、そのような発泡性組成物を用いて、通常の吹付け施工法に従って、躯体等のフォーム形成対象面に吹き付けても、そのような発泡性組成物の液ダレや横伸び現象が効果的に抑制乃至は阻止され得ることとなるのであり、特に、下吹きと上吹きからなる2段階の吹付け作業により、厚肉のフォーム層を形成するに際しても、良好な施工性が有利に確保され得ることとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物と、それを用いたポリウレタンフォームの製造方法の具体的な構成について、詳細に説明することとする。
【0017】
先ず、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、ポリオールを主体とするポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとを、触媒として少なくともカルボン酸金属塩触媒を用いて反応せしめると共に、発泡剤による発泡にて、ポリウレタンフォームを与える発泡性組成物であって、そこで用いられるポリオール組成物を構成する主たる成分であるポリオールは、ポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B)にて構成されるものであるが、それら必須の構成成分の他にも、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、ポリイソシアネートと反応してポリウレタンを生じる、公知の各種のポリオール化合物(例えば、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリマーポリオール等)が、単独で又は適宜に組み合わされて、全ポリオール中、一般に、10質量%程度以下、好ましくは5質量%程度以下の割合において、用いられ得るものである。なお、そのようなポリオール組成物における全ポリオールの合計量は、一般に50~80質量%程度、好ましくは60~70質量%程度とされることとなる。
【0018】
そして、そのようなポリオール組成物中のポリオールを構成する、上記したポリエステルポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)のうち、ポリエステルポリオール(A)としては、多価アルコール-多価カルボン酸縮合系のポリオールや、環状エステル開環重合体系のポリオール等の、公知のものを挙げることが出来る。そこにおいて、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることが出来、中でも、2価アルコールが好ましく用いられることとなる。また、多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらの無水物等が挙げられる。更に、環状エステルとしては、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0019】
中でも、ポリエステルポリオールとしては、難燃性や相溶性の観点から、芳香族系のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、具体的には、フタル酸系ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、更にそのようなポリエステルポリオールの2種類以上を組み合わせることも有効である。なお、フタル酸系ポリエステルポリオールには、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの無水物等と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の二価アルコールとの縮合物からなるフタル酸系ポリエステルポリオールが、好ましく用いられることとなる。このようなフタル酸系ポリエステルポリオールを使用すると、低温(-10~5℃程度)下において、現場発泡を実施した場合でも、建築躯体等からの剥離が惹起され難く、更に現場発泡後のフォーム端部の切断処理等の加工が比較的容易な程度の柔軟性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることが出来る利点がある。特に、ハイドロフルオロオレフィン系発泡剤又はハイドロクロロフルオロオレフィン系発泡剤を含有せしめた際に、組成物としての保存安定性に優れたものを与える特徴がある。
【0020】
また、フタル酸系ポリエステルポリオールの複数を組み合わせて、用いる場合にあっては、無水フタル酸系ポリエステルポリオールとテレフタル酸系ポリエステルポリオールの2種を組み合わせるのが好ましい。けだし、無水フタル酸は安価に入手することが出来、それから得られるポリエステルポリオールは、安価に製造することが可能であり、コスト的に有利である特徴を有している。また、芳香環を有しているところから、難燃性に優れており、発泡剤として好適に用いられるハロゲン化ハイドロオレフィンとの相溶性にも優れている特徴を有している。更に、テレフタル酸系ポリエステルポリオールは、無水フタル酸系ポリエステルポリオールよりも更に難燃性に優れたものであり、また剛直な構造を有していることから、寸法安定性の向上に寄与する特徴を有している。このようなことから、無水フタル酸系とテレフタル酸系の2つのポリエステルポリオールを組み合わせることにより、発泡剤であるハロゲン化ハイドロオレフィンを程良く相溶させ、難燃性にも優れる硬質ポリウレタンフォームを有利に製造することが可能となる。
【0021】
一方、ポリオール組成物中のポリオールの他の一つの必須の構成成分たるポリエーテルポリオール(B)は、その70質量%以上、好ましくは80質量%以上が、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成されている必要がある。かかるポリエーテルポリオール中のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの割合が、70質量%未満となると、硬化速度が低下し、施工時に液ダレや横伸び現象等が惹起され易くなり、吹付け作業時のフォーム端部において剥離を生じる等という問題が惹起されるようになる。そこにおいて、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとしては、主な反応開始剤として、エチレンジアミンを使用し、これに、アルキレンオキシドを付加してなるポリオールであって、その水酸基価が400~1000mgKOH/gとなるように調整されたものが、好適に用いられることとなる。そこで、エチレンジアミンとしては、二塩化エチレンとアンモニアとの反応により生成する通常のものを使用することが出来、またアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等を、単独で又は2種以上組み合わせて用いることが出来るが、原料の価格や硬質フォームの物性上からして、プロピレンオキシドが有利に用いられることとなる。なお、かかるエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの水酸基価が400mgKOH/g未満となると、フォーム強度の発現が不充分となり、吹付け施工時において横伸び現象が生じて、形成される硬質フォームが施工面から剥離する恐れがある。また、1000mgKOH/gを越えるようになると、フライアビリティが大きくなると共に、スコーチが発生する等の問題を生じ易くなる。
【0022】
特に、本発明にあっては、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとして、水酸基価が400mgKOH/g以上、600mgKOH/g未満のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと、水酸基価が600mgKOH/g以上、1000mgKOH/g以下のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとを、併用して用いることが推奨され、これによって、硬化速度を向上させながら、未反応の水酸基の残存を効果的に抑制することが可能であり、寸法安定性が向上する利点を享受することが出来る。なお、そのような水酸基価:400mgKOH/g以上、600mgKOH/g未満のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと、水酸基価:600mgKOH/g以上、1000mgKOH/g以下のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、質量比で、10:90~30:70、好ましくは15:85~25:75となる割合において、配合せしめられることが望ましい。
【0023】
また、本発明では、ポリオール組成物中のポリオールの必須の構成成分の一つであるポリエーテルポリオールは、上述の如きエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成される場合の他、そのようなエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの70質量%以上と、このエチレンジアミン系ポリエーテルポリオール以外の、他のポリエーテルポリオールの30質量%以下とを組み合わせて、構成することも可能である。そして、そこにおいて用いられる、他のポリエーテルポリオールとしては、マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、グリセリン系ポリエーテルポリオール、芳香族系ポリエーテルポリオール、シュクロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオール、トルエンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール等を挙げることが出来る。
【0024】
中でも、本発明にあっては、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと共に用いられる、他のポリエーテルポリオール成分として、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールの併用が推奨されるところである。マンニッヒ系ポリエーテルポリオールは、反応活性に優れているところから、その使用によって樹脂化反応の促進に有効に寄与することとなるため、吹付けを行った際に、硬化反応(樹脂化)及び泡化反応で生じた反応熱が、低温環境下にさらされた被着体へ移行して、被着体に奪われるようなことが有利に防止され、その結果、生じた反応熱は、更なる硬化反応及び泡化反応に効果的に利用され得て、初期の発泡性を効果的に改善せしめることが可能となるのである。
【0025】
なお、上記したマンニッヒ系ポリエーテルポリオールは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子中に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、またはそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオール又はそれらの混合物である。また、それらの中でも、フェノール類、アルデヒド類及び第2級アミンを反応させたマンニッヒ縮合物、またはそのようなマンニッヒ縮合物にアルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオール等の、フェノール類をベースとしたマンニッヒ系ポリエーテルポリオールが、好ましく用いられることとなる。
【0026】
ところで、本発明において用いられるポリオール組成物中のポリオールを構成する、上述の如きポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B)とは、質量比において、(A):(B)=70:30~40:60、好ましくは65:35~45:55の割合において用いられることとなるが、そこにおいて、ポリエステルポリオール(A)の割合が70質量%よりも多くなった[ポリエーテルポリオール(B)の割合が30質量%よりも少なくなる]場合には、硬化速度が低下し、吹付け施工時に、液ダレや横伸び現象等が惹起され、吹付け作業時のフォーム端部において剥離を生じる等という問題が惹起される恐れがある。また、ポリエーテルポリオール(B)の割合が60質量%よりも多くなった[ポリエステルポリオール(A)の割合が40質量%よりも少なくなる]場合には、硬化速度が上昇し過ぎ、吹付け施工時にスプレーガンの先端でフォームが硬化して、円形のスプレーパターンにおいて噴霧が出来なくなるというガン詰り現象を惹起し、吹付け施工の継続が困難となる問題を惹起する恐れがある。
【0027】
そして、本発明にあっては、上述の如きポリエステルポリオール(A)とエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールが70質量%以上を占めるポリエーテルポリオール(B)とが、所定割合で配合されてなるポリオール組成物を用いて、それとポリイソシアネートとによって、目的とする発泡性組成物が構成されることとなるが、そのような発泡性組成物には、従来から、ポリウレタンフォームの製造に際して用いられる各種の添加剤、例えば、触媒、発泡剤(及び/又はその発生源)、整泡剤、難燃剤等が、適宜に配合されて、含有せしめられるものであるところ、本発明にあっては、特に、触媒として、カルボン酸金属塩触媒が少なくとも用いられ、これにより、上述の如きポリオールの組み合わせと、後述するポリマー微粒子との協働作用によって、吹付け施工時の施工性のより一層の改善に寄与し、また、得られるポリウレタンフォームの寸法安定性やフォーム加工性の向上にも、より一層寄与し得ることとなるのである。
【0028】
ここにおいて、かかる本発明における触媒の一つとして必須の成分であるカルボン酸金属塩は、有機カルボン酸のカルボキシル基の水素を、錫、鉛、亜鉛、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、ジルコニウム、ビスマス等の金属に置き換えてなる形態の化合物からなるものであって、具体的には、カルボン酸錫、カルボン酸鉛、カルボン酸亜鉛、カルボン酸鉄、カルボン酸銅、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸マンガン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸ビスマス等を挙げることが出来る。
【0029】
そして、それらカルボン酸金属塩のうちのカルボン酸錫としては、より具体的には、酢酸錫、酪酸錫、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ラウリン酸錫、オクタン酸第一錫、ジラウリン酸第一錫、ジパルミチン酸第一錫、ジステアリン酸第一錫、ジオレイン酸第一錫、ビス(ネオデカン酸)錫、ステアリン酸錫、安息香酸錫等が挙げられる。また、カルボン酸鉛としては、酢酸鉛、酪酸鉛、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オレイン酸鉛、オクタン酸鉛、ネオデカン酸鉛、ラウリン酸鉛、ステアリン酸鉛、安息香酸鉛等が挙げられる。更に、カルボン酸亜鉛としては、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛等が挙げられる。
【0030】
加えて、カルボン酸鉄としては、酢酸鉄、酪酸鉄、オクチル酸鉄、ナフテン酸鉄、オレイン酸鉄、オクタン酸鉄、ネオデカン酸鉄、ラウリン酸鉄、ステアリン酸鉄、安息香酸鉄等が挙げられ、またカルボン酸銅としては、酢酸銅、酪酸銅、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、オクタン酸銅、ネオデカン酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅等が挙げられる。更に、カルボン酸ニッケルとしては、酢酸ニッケル、酪酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オレイン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル、ネオデカン酸ニッケル、ラウリン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、安息香酸ニッケル等が挙げられ、またカルボン酸コバルトとしては、酢酸コバルト、酪酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オレイン酸コバルト、オクタン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ラウリン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、安息香酸コバルト等が挙げられる。
【0031】
更にまた、カルボン酸マンガンとしては、酢酸マンガン、酪酸マンガン、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オレイン酸マンガン、オクタン酸マンガン、ネオデカン酸マンガン、ラウリン酸マンガン、ステアリン酸マンガン、安息香酸マンガン等が挙げられる。また、カルボン酸ジルコニウムとしては、酢酸ジルコニウム、酪酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、オレイン酸ジルコニウム、オクタン酸ジルコニウム、ネオデカン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、安息香酸ジルコニウム等が挙げられ、更に、カルボン酸ビスマスとしては、酢酸ビスマス、酪酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ラウリン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス、安息香酸ビスマス等が挙げられる。
【0032】
特に、本発明にあっては、上記したカルボン酸金属塩の中でも、カルボン酸錫、カルボン酸鉛、カルボン酸亜鉛、及びカルボン酸ジルコニウムからなる群より選ばれたものが好適に用いられ、これによって、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が効果的に進行せしめられて、目的とするポリウレタンフォームが有利に形成されることとなる。
【0033】
なお、このような触媒の一つとして用いられるカルボン酸金属塩触媒の使用量は、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、一般に、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、0.1~10質量部程度、好ましくは0.3~5質量部の範囲内において、選択されることとなる。このカルボン酸金属塩触媒の使用量が少なくなり過ぎると、ポリウレタンフォームの硬化速度が遅くなり過ぎる等の問題があり、一方、その使用量が多くなり過ぎると、ポリウレタンフォームの硬化速度が速くなり過ぎる等の問題がある。
【0034】
ところで、本発明にあっては、触媒として、上述の如きカルボン酸金属塩触媒と共に、更に必要に応じて、硬質のポリウレタンフォームの形成に寄与する他の公知の各種の触媒が、適宜に用いられることとなる。例えば、イソシアヌレート化触媒の如き樹脂化触媒が有利に併用されることとなるのである。なお、イソシアヌレート化触媒としては、第四級アンモニウム塩、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等を挙げることが出来る。これらのうち、第四級アンモニウム塩を用いることが、特に好ましい。
【0035】
ここで有利に用いられる第四級アンモニウム塩における第四級アンモニウム基(窒素原子に4個の有機基が共有結合した形態の1価のカチオン)としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム化合物、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール等のヒドロキシアンモニウム化合物、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム化合物等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能なところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウムが、好ましく用いられることとなる。
【0036】
また、かくの如き第四級アンモニウム基とイオン結合して、第四級アンモニウム塩を構成する1価のアニオンである有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基が好ましい。
【0037】
さらに、このような第四級アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U-CAT 18X、U-CAT 2313(サンアプロ社製)、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0038】
そして、かかる触媒の一つとして用いられる樹脂化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、0.5~8質量部、好ましくは0.8~5質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、この樹脂化触媒の使用量が少なくなり過ぎると、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる問題があり、またスプレー発泡施工においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題があり、一方、その使用量が多くなり過ぎると、樹脂化反応時に発熱が高くなり、フォームの黄変等、外観に異常をきたし、発泡中に発生する飛沫に含まれる樹脂化触媒により、吹付け施工を行っている作業現場の作業環境を悪化せしめる恐れがある。
【0039】
また、上述の如き樹脂化触媒に加えて、更に必要に応じて、従来からポリウレタンフォームの製造に際して用いられている公知の触媒が、適宜に選択されて、ポリオール組成物に含有せしめられることとなる。例えば、アミン系触媒は、ポリウレタンの初期発泡性を有利に向上せしめ得るものであり、またスキン層とコア層との密度差を変えることなく、フォームの密度を全体的に下げる作用があり、更にフォームのべたつきを改善して、ゴミ等の付着による外観の悪化を有利に阻止し得ると共に、スプレー発泡法においては、床等に付着した飛沫のべたつきによる作業性の悪化等を改善する特徴を発揮するものである。そして、そのようなアミン系触媒としては、化学構造内にOH基やNH基を有する反応性アミン化合物や、環状構造を有する環式アミン化合物を用いることが推奨され、中でも、反応性アミン化合物を触媒として用いることによって、より一層臭気の低減を図ることが出来る。
【0040】
なお、そのようなアミン系触媒として用いられる反応性アミン化合物や環式アミン化合物は、公知のウレタン化触媒の中から適宜に選択され得るところであって、例えば、反応性アミン化合物としては、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、エトキシ化ヒドロキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、1,4-ビス(2-ヒドロキシプロピル)、2-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、3,3-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン等を挙げることが出来る。また、環式アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、メチレンビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、モルフォリン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、N-(2-ジメチルアミノエチル)モルフォリン、4,4’-オキシジエチレンジモルフォリン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、1,8-ジアゾビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等を挙げることが出来る。
【0041】
そして、かかる触媒の一つとして用いられるアミン系触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させつつ、臭気や作業環境の悪化等の問題を低減して、有効なフォーム特性を得るべく、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、0.1~7質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.3~3質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、このアミン系触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、触媒としての機能を充分に発揮せしめ難くなると共に、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる等の問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題を惹起する。また、かかるアミン系触媒の使用量が7質量部よりも多くなると、得られるポリウレタンフォームの臭気が顕著となり、また発泡中に揮発するアミン系触媒により、吹付け作業環境が悪化する等の問題を惹起するようになる。このため、臭気の点から、かかるアミン系触媒の添加量は、少ないことが好ましいのである。
【0042】
さらに、本発明にあっては、イミダゾール系触媒も、上記したアミン系触媒と共に、或いはそれに代えて、有利に用いられることとなる。このイミダゾール系触媒は、ポリウレタンの反応後期の硬化反応を促進させ、フォーム強度の向上に寄与する効果があり、フォームのべたつきを改善して、ごみ等の付着による外観の悪化を阻止し得ると共に、スプレー発泡においては、床等に付着した飛沫のべたつきによる作業性を改善する特徴を発揮する。また、そのようなイミダゾール系触媒を構成するイミダゾール化合物は、一般的に、アミン系触媒を与えるアミン化合物と比較して、沸点が高いため、吹付け作業時に揮発し難く、また臭気の発生源になり難い特性を有している。そのようなイミダゾール系触媒としては、化学構造内にイミダゾール環を含有し、その窒素原子にアルキル基等が結合してなる構造の化合物を用いることが推奨され、中でも分子量の大きなイミダゾール化合物を触媒として用いることにより、臭気の有効な低減を図ることが出来る。
【0043】
なお、イミダゾール系触媒として用いられるイミダゾール化合物としては、公知のウレタン化触媒から中から適宜に選択され得るところであって、例えば、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、1-メチルベンズイミダゾール、1-エチルベンズイミダゾール、1-プロピルベンズイミダゾール、1-イソプロピルベンズイミダゾール、1-イソブチルベンズイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール等を挙げることが出来る。
【0044】
また、かかるイミダゾール系触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させつつ、臭気や作業環境の悪化等の問題を低減して、有効なフォーム特性を得るために、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、一般に0.1~7質量部、好ましくは0.3~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部の範囲内において、選択されることとなる。
【0045】
ところで、本発明において、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によって形成されるポリウレタンを発泡せしめて、ポリウレタンフォームを得るために用いられる発泡剤には、公知の各種の非フロン系やフロン系の発泡剤が、適宜に選択されることとなるが、その中でも、非フロン系発泡剤(及び/又はその発生源)が有利に用いられ、例えば、ハイドロカーボン(HC)や、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)及びハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)の如きハロゲン化ハイドロオレフィン等を挙げることが出来る。そして、それらの中より選ばれた1種又は2種以上の有機の発泡剤が、好適に用いられるのである。
【0046】
なお、そのような本発明において好適に用いられる発泡剤の中で、非フロン系発泡剤の1つであるハイドロカーボン(HC)としては、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、イソブタン等を挙げることが出来る。また、ハロゲン化ハイドロオレフィンの1つであるハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン類、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン類、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン類、テトラフルオロブテン(HFO1345)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1354)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等を挙げることが出来る。また、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)等を挙げることが出来る。
【0047】
さらに、本発明にあっては、発泡剤としての水が、上記したハロゲン化ハイドロオレフィンと共に、有利に用いられることとなる。このように、水がポリオール組成物中に存在することによって、ポリオール組成物とポリイソシアネートとが混合せしめられて、反応させられるときに、かかる水とポリイソシアネートとが反応して、二酸化炭素を生じる際に、反応熱が発生することとなるため、その熱によって、ウレタン化反応やイソシアヌレート化反応が、効果的に進行せしめられ得て、得られるポリウレタンフォームの圧縮強度が、更に高められ得るようになるのである。そして、そのようなポリオール組成物中の水の存在によって、ポリオール組成物とポリイソシアネートとが混合せしめられて、反応させられると、かかる水とポリイソシアネートとの反応によって二酸化炭素が発生し、この二酸化炭素も、ポリウレタンの発泡に寄与することとなるのである。しかも、かかるハロゲン化ハイドロオレフィンと水との併用によって、ハロゲン化ハイドロオレフィンが揮発する際に、吸熱反応が生じることとなるが、水とポリイソシアネートとが反応して二酸化炭素を生じる際に反応熱が発生することにより、そのような反応熱で、ハロゲン化ハイドロオレフィンが揮発し易くなる利点があり、それによって、ハロゲン化ハイドロオレフィンの使用量を少なくして、そのコストを低減せしめ得る利点も生じることとなる。
【0048】
なお、上記したハロゲン化ハイドロオレフィン等の発泡剤の使用量は、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましく、更には20~40質量部であることが好ましい。かかる発泡剤の使用量が50質量部を超えるようになると、フォームのコア密度が低くなり、それによって、フォームの強度の低下、ひいては寸法安定性の悪化が惹起される恐れがある。また、コストの面でも不利となる問題もある。一方、発泡剤の使用量が10質量部よりも少なくなると、発泡剤としての特性を充分に発揮することが出来ず、得られたフォームの密度が高くなってしまうことがあり、またポリオール組成物の粘度が高くなってしまい、ポリイソシアネートとの混合性が悪化して、良好なスプレーパターンを得ることが出来なくなる等の問題を惹起するようになる。
【0049】
また、発泡剤としての水の使用量に関して、水は、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、1~5質量部、好ましくは1~4質量部の割合となるように、含有せしめられる。この水の使用量が、全ポリオールの100質量部に対して、5質量部よりも多くなると、かえってフォームの強度の低下を招くようになる。それは、水とポリイソシアネートとの反応によって生じる尿素結合が樹脂中に多くなること、またイソシアヌレート化反応に用いられるポリイソシアネートが水との反応で消費されてしまい、反応系のポリイソシアネートが少なくなるためである。また、かかる水の使用量が1質量部よりも少なくなると、水を含有したことによる発泡剤としての効果が、充分に得られなくなる問題がある。
【0050】
そして、上述の如く、発泡剤(ハロゲン化ハイドロオレフィン)と水とを併用する場合において、発泡剤と水とは、質量比で、80:20~99:1、好ましくは85:15~95:5となる割合において、使用することが望ましい。この範囲を外れて、水の割合が20を超えるようになると、反応の進行につれて、脆性が発現し、また躯体面との接着性が低下して、剥離等の問題を惹起する恐れがある。また、ポリイソシアネートとの反応によって発生する二酸化炭素が熱伝導率を悪化させ、充分でない熱伝導率の発泡層を形成する恐れがある。
【0051】
また、本発明においては、そこで用いられるポリオール組成物に、ポリマー微粒子が分散、含有せしめられているところに、大きな特徴がある。そのようなポリマー微粒子が、ポリオール組成物中に分散、存在せしめられていることにより、吹付け発泡等によるポリウレタンフォームの形成時に、ポリマー微粒子が、物理的にフォーム内部の一部のセル(気泡)を破泡させて、連続気泡の形成を促進することとなり、以て、ポリウレタンフォームの独立気泡率を低減させる一方、フォーム内部の減圧を抑制して、形成されるフォームの収縮を抑制乃至は阻止して、寸法安定性を向上せしめ得るようになるのである。なお、ポリオール組成物中のポリマー微粒子は、吹付け発泡等の操作により、形成されるフォーム中に均一に分散されることとなり、以て、フォーム中の収縮の偏りが効果的に回避され得て、特に、厚肉の吹付け発泡施工を行なっても、厚肉のフォーム全体の寸法安定性が有利に高められ得ることとなるのである。しかも、ポリマー微粒子は、複数のポリオールの組合せとの相乗効果によって、フォームの寸法安定性をより一層向上せしめ得ることとなることに加えて、厚さ方向への発泡性をよくすることによって、吹付け施工時の横伸びを効果的に抑制して、フォーム端部の剥離や接着性能の低下を防止し得る特徴を発揮するものである。そして、低密度で均一なセルの形成によって、切断や切削等のフォーム加工性が向上せしめられて、吹付け発泡法によるフォーム製造後に実施される切削作業が容易となる特徴を発揮することとなる。
【0052】
そして、そのようなポリマー微粒子の存在によって、本発明に従う発泡性組成物から形成されるポリウレタンフォームの独立気泡率は、一般に、80~90%、好ましくは82~88%となるように、調整されることとなる。なお、かかる独立気泡率が80%よりも低くなると、ポリウレタンフォームの熱伝導率が悪化する等の問題を生じ、また90%よりも高くなると、フォームの寸法安定性が悪くなる等の問題を惹起する恐れが生じる。
【0053】
ところで、かかるポリマー微粒子としては、公知の各種のものを適宜に選択して用いることが可能であり、それは、直接に、ポリオール組成物中に分散、含有せしめられ得るものであるが、本発明にあっては、特に、分散媒としての所定のポリオール中に分散されてなる形態において配合せしめられて、目的とするポリオール組成物が調製されることとなる。また、そのようなポリマー微粒子の分散されたポリオールは、分散媒としてのポリオール中において、所定のエチレン性不飽和モノマーを重合させて、ポリマー微粒子を析出させることによって形成されるものが、有利に用いられることとなる。ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、少なくとも1個、好ましくは厳密に1個のエチレン性不飽和基、即ち、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合を有するモノマーを言うものである。
【0054】
ここで、分散媒としてのポリオールには、先に例示したポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールが用いられ得る他、公知の各種のポリオールが、適宜に選択して、用いられることとなる。また、そのような分散媒としてのポリオール中において重合せしめられるエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2,4-ジシアノブテン-1等のシアノ基含有モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのアルキルエステルやアクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、その他のジエン系モノマー;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和脂肪酸エステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等を挙げることが出来るが、好ましくは、アクリロニトリルの20~90質量%と、スチレン、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル等の他のモノマーの10~80質量%との組み合わせからなるモノマー混合物が、好適に用いられることとなる。更に、ポリオール中でのポリマー微粒子の分散安定性等の特性を高めるべく、フッ素含有アクリレートやフッ素含有メタクリレートを用いることも、有利に採用されるところである。
【0055】
なお、上述の如きポリマー微粒子分散ポリオールのより具体的な製造手法については、先に指摘したWO2012/105657や特開2011-256399号公報等に詳細に明らかにされており、本発明にあっては、それら公報に開示の手法を採用して得られたポリマー微粒子分散ポリオールを、そのまま用いることが可能である。また、ポリマー微粒子分散ポリオールは、市販もされているところであって、例えば、旭硝子株式会社製のFB512や三洋化成工業株式会社製のサンニックスFA728R等があり、それらが、本発明においても、有利に用いられることとなる。
【0056】
また、本発明において用いられるポリマー微粒子の粒子径としては、0.01~10μm程度が好ましく、中でも0.03~8μm、更には0.05~5μmが特に好ましい。用いられるポリマー微粒子の粒子径が10μmを超えるようになると、ポリオール中で分散され難くなり、時間の経過と共に沈降する恐れが内在し、また0.01μm未満となると、ポリマー微粒子の添加効果が充分に発揮され難い問題を内在する。ここで、ポリマー微粒子の粒子径は、レーザ回折/散乱法の原理を用いて測定した、体積基準の粒度分布から求められる平均粒子径を意味するものである。
【0057】
そして、本発明にあっては、かくの如きポリマー微粒子が、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、一般に、0.05~2.0質量部、好ましくは0.2~1.0質量部の割合において用いられて、前記した望ましい独立気泡率を有するポリウレタンフォームが形成されることとなるのである。なお、かかるポリマー微粒子の使用量が少なくなり過ぎると、フォームの独立気泡率の低減が充分でなく、その添加効果を発揮し難い等の問題を内在し、一方、その使用量が多くなり過ぎると、独立気泡率の低下が著しくなり、フォームの熱伝導率(断熱特性)の悪化を惹起する等の問題を生じる恐れがある。
【0058】
また、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、上記した配合成分乃至は含有成分に加えて、更に必要に応じて、公知の整泡剤や難燃剤等の、従来から知られている各種の助剤(添加剤)を適宜に選択して、配合せしめることも可能である。
【0059】
ここで用いられる整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、シリコーン系のものや非イオン系界面活性剤が、好適に採用される。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの、1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられる。なお、この整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜に決定されるところであるが、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは1~8質量部の範囲で選択されることとなる。
【0060】
また、難燃剤としては、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等のリン酸エステルが、有利に用いられる。このリン酸エステルを配合する場合、その配合量は、所期のフォーム特性や難燃剤の種類等に応じて適宜に決定され得るところであるが、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、一般に5~60質量部、好ましくは10~40質量部の範囲で選択される。また、上記リン酸エステル以外にも、難燃剤として、赤リン、水酸化アルミニウム等が好適に使用され得る。なお、前記した難燃剤としては、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等のリン酸エステルが、有利に用いられる。このリン酸エステルを配合する場合、その配合量は、所期のフォーム特性や難燃剤の種類等に応じて適宜決定され得るが、ポリオール組成物中の全ポリオールの100質量部に対して、一般に5~60質量部、好ましくは10~40質量部の範囲で選択される。
【0061】
加えて、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、更に必要に応じて、例えば、尿素、メラミン等のホルムアルデヒド捕捉剤や、気泡微細化剤、可塑剤、補強基材等の、従来から知られている各種添加剤を、適宜に選択して配合することも出来る。
【0062】
ところで、上述の如き触媒を始め、発泡剤、整泡剤、難燃剤等の各種の添加剤(助剤)は、適宜に、ポリオール組成物又はポリイソシアネートに配合されて、本発明に従う発泡性組成物が構成されることとなるのであるが、本発明にあっては、特に、それら添加剤(助剤)は、ポリオール組成物に配合されてなる形態において、ポリイソシアネートと共に発泡性組成物を構成して、目的とするポリウレタンフォームの形成に用いられることとなるのである。
【0063】
一方、上記したポリオール組成物と共に、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を構成するポリイソシアネートは、かかるポリオール組成物に対して配合せしめられて、ポリオール組成物中のポリオールと反応することにより、ポリウレタン(樹脂)を生成するものであって、分子中に2つ以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。一般的には、反応性や経済性、取り扱い性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、好適に用いられることとなる。
【0064】
なお、かかるポリイソシアネートと前記したポリオール組成物との配合割合は、形成されるフォームの種類(例えば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート)によって、適宜に決定されることとなるが、一般に、ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)とポリオール組成物中のポリオールの水酸基(OH)との比率を示すNCO/OHインデックス(当量比)が、0.9~2.5程度の範囲となるように、適宜に決定されることとなる。中でも、ポリオール組成物とポリイソシアネートとは、体積比で1:1~1:2の割合で混合されて、目的とするポリウレタンフォームを形成するようにすることが推奨される。
【0065】
そして、上述の如くして得られたポリオール組成物とポリイソシアネートとを用いて、触媒の存在下で反応させて、発泡・硬化せしめるに際しては、公知の各種のポリウレタンフォームの製造手法が採用され得るところであって、例えば、それらポリオール組成物とポリイソシアネートとの混合物を面材上に塗布して、板状に発泡・硬化を行うラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性の要求される空間部内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内に注入、充填して、発泡・硬化を行う注入発泡法、または現場発泡機のスプレーガンヘッドから所定の被着体(構造体)へ吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法によって、本発明に従う発泡性組成物は発泡・硬化せしめられ、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなるのである。
【0066】
特に、本発明にあっては、環境温度(周囲温度)下において、現場発泡せしめられるスプレー発泡法が、好適に採用され、そこでは、本発明に従う発泡性組成物が、所定の構造体の表面に吹き付けられて、発泡・硬化せしめられることにより、本発明の特徴が有利に発揮され得る、厚手の、特に40mm以上、好ましくは50mm以上の厚さのポリウレタンフォーム層が、形成せしめられるのである。このような現場吹付け発泡法への適用によって、本発明の特徴が更に有利に発揮され、以て、フォームの収縮の効果的な抑制乃至は阻止が実現され、更には、寸法安定性、加工性等の特性に優れたポリウレタンフォームが、有利に形成されることとなるのである。
【実施例
【0067】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0068】
また、以下の実施例や比較例において得られたポリウレタンフォームの密度や独立気泡率、施工性(液ダレ・横伸び)、寸法安定性、熱伝導率及びフォーム加工性については、それぞれ、以下の如くして評価乃至は測定した。
【0069】
(1)密度の測定
それぞれの実施例や比較例で得られた硬質ポリウレタンフォームについて、それぞれの密度を、JIS-K-7222に準拠して、測定した。即ち、発泡後、72時間以上経過した発泡体であり、且つ測定前に23℃±2℃で16時間以上静置したポリウレタンフォームから、100mm×100mm×30mm角の試験片を、5個以上切り出した。次いで、各試験片について、ノギスを使用して、縦、横、高さの各寸法を3回以上測定して、その平均値を求め、各試験片の体積を算出した。その後、各試験片の質量を測定し、試験片の密度(ρ)を、以下の式から算出した。そして、かかる密度は高過ぎると、ポリウレタンフォームが硬くなって、安定性が悪くなるところから、30kg/m3 以下であることが推奨される。
ρ(kg/m3)=[m(g)/V(mm3)]×106
ここで、ρ:密度、m:試験片の質量、V:試験片の体積である。
【0070】
(2)独立気泡率の測定
独立気泡率は、ASTM-D-2856に準拠して測定した。
【0071】
(3)施工性の評価
-液ダレ-
それぞれの実施例や比較例におけるポリオール組成物とポリメリックMDIとを、現場スプレー発泡機(商品名:A-25、グラコ社製)を用いて、撹拌混合して、発泡性混合液を形成すると共に、かかる発泡性混合液を、雰囲気温度:15℃の条件下において、躯体である所定大きさの無機フレキシブルボード表面に吹き付けて、硬質ポリウレタンフォームからなる肉厚:25mmの発泡層を形成せしめた。そして、かかる発泡層の形成に際しての「液ダレ」の状況について、「初期の発泡性」及び「スプレーパターンの形状」から、以下の評価基準に従って、判断した。
×:液ダレが発生し、スプレーパターンが円形でないため、表面が平滑でない
△:液ダレが僅かに発生し、パターン形状が若干変化して、表面が一部平滑でない
○:液ダレが発生せず、パターン形状が変化せず、表面が平滑である
【0072】
-横伸び-
上記のスプレー発泡により形成された硬質ポリウレタンフォームについて、フォームの硬化完了後に水平方向に裁断し、発泡性混合液の塗着位置から横方向に発泡して形成されたフォームの距離(mm)を測定した。測定は、10ヶ所において行ない、その平均値を求めた。
【0073】
(4)寸法安定性の評価
寸法変化率の測定を、ASTM-D-2126に準じて、以下の方法に従って行った。先ず、試験片として、それぞれの実施例や比較例で調製された発泡性組成物を用いて、吹付けにより形成された発泡層から、25mm試験片及び50mm試験片を、それぞれ、切り出した。具体的には、25mm試験片は、吹付けにより30mm肉厚で形成された2層の発泡層から中間のスキン層を1層含むようにして、100mm×100mm×25mmのサイズにて切り出すことにより、採取された。また、50mm試験片は、吹付けにより60mm肉厚で形成された1層の発泡層から、100mm×100mm×50mmのサイズの試験片を切り出すことにより、採取された。
【0074】
次いで、その切り出された試験片を、23℃、50RH%の条件下に、20時間静置した後、70℃、95RH%の条件下に曝露し、そして48時間後に試験片を取り出した。その後、かかる試験片の寸法を、厚み:5点、幅・長さ:3点において測定し、それぞれ平均値を求めて、それぞれの変化率を、以下の式に従って算出した。
長さの変化率=100×(lt -l0 )/l0
幅の変化率 =100×(bt -b0 )/b0
厚みの変化率=100×(δt -δ0 )/δ0
[l0 、b0 及びδ0 :最初の寸法の平均値、lt 、bt 及びδt :48時間経過後の最終寸法の平均値]
【0075】
そして、寸法安定性の評価において、上記式で計算された3つの変化率が、一点でも、10%以上の場合には、良好な寸法安定性を保持出来ていないために「×」とし、一点でも5%以上10%未満があるものを「△」とし、全て5%未満であるものを「○」とし、更に、全て3%未満であるものを、「◎」として、評価した。
【0076】
(5)熱伝導率の測定
上記の寸法安定性の評価で用いた25mm試験片について、200mm×200mm×25mmのサイズに切り出して、熱伝導率測定装置:AUTO-A-HC-074/200(英弘精機株式会社製)を用いて、JIS-A-1412-2付属書A(規定)平板比較法のA6.測定方法に準拠して、それぞれの試験片の熱伝導率を測定した。そして、その得られた熱伝導率について、以下の基準に従って、その評価を行なった。
○:0.023W/m・K以下
△:0.023W/m・K超~0.026W/m・K以下
×:0.026W/m・K超
【0077】
(6)フォーム加工性の評価
それぞれの実施例や比較例で得られた、無機フレキシブルボード上に吹き付けて形成した、スキン層(表面層)の存在するポリウレタンフォームを用いて、そのフレキシブルボードからはみ出たポリウレタンフォームの端部を、フレキシブルボードの周縁部に沿ってカッターナイフで切断し、その際の触感により、下記の基準にてポリウレタンフォームの加工性を評価した。
◎:切断の際にほとんど力を必要とせず、切断面も良好である
○:切断の際に多少の力を必要とするが、切断面は良好である
△:切断の際に大きな力を要し、切断面に多少の難点がある
×:カッターナイフによる切断は困難で、のこぎりにての切断は可能であり、その切 断面に難点がある
【0078】
-ポリオール組成物の調製-
ポリオールとして、フタル酸系ポリエステルポリオールであるRDK133(川崎化成工業株式会社製)、フタル酸系ポリエステルポリオールであるRFK505(川崎化成工業株式会社製)、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールである750ED(旭硝子株式会社製)、及びマンニッヒ系ポリエーテルポリオールであるDK3776(第一工業製薬株式会社製)をそれぞれ準備し、また触媒として、第四級アンモニウム塩であるカオーライザーNo.420(花王株式会社製)、3級アミンであるN,N-ジシクロヘキシルメチルアミン(エボニック・ジャパン株式会社製、ポリキャット12)、イミダゾール系触媒であるTOYOCAT-DM70(東ソー株式会社製)、及びカルボン酸金属塩であるヘキソエート鉛(東栄化工株式会社製)、ナフテン酸鉛(東栄化工株式会社製)、オクチル酸ジルコニウム(東栄化工株式会社製)、オクチル酸亜鉛(東栄化工株式会社製)、オクチル酸カリウム(日本化学産業株式会社製、プキャット15G)を、それぞれ準備した。また、ポリマー微粒子としては、ポリマー微粒子分散ポリオールであるFB512(旭硝子株式会社製)及びサンニックスFA728R(三洋化成工業株式会社製)を、それぞれ準備した。更に、難燃剤として、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(ワンシャン社製、TCPP)を準備し、整泡剤として、シリコーン系整泡剤であるNiax Silicone L-6100(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を準備した。加えて、発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(Honeywell社製、HCFO-1233zd)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Chemours社製、HFO-1336mzz)、及び水を、それぞれ準備した。
【0079】
そして、それら各種のポリオール、触媒、ポリマー微粒子、難燃剤、整泡剤、及び発泡剤を、下記表1~表4に示される各種の組合せ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~19及び比較例1~7に係る各種のポリオール組成物を調製した。
【0080】
-ポリイソシアネートの調製-
ポリイソシアネートとして、ポリメリックMDI(万華化学ジャパン株式会社製、Wannate PM-130)を準備した。
【0081】
-ポリウレタンフォームの製造-
上記で得られた各種のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを、体積比1:1で用い、現場スプレー発泡機(商品名:A-25、グラコ社製)により撹拌混合せしめて、発泡原液とし、これを、雰囲気温度:15℃の条件下において、被着体である無機フレキシブルボードの表面に、所定回数吹き付けて、発泡・硬化させることにより、実施例1~19及び比較例1~7に係る各種の硬質ポリウレタンフォームを、所定厚さにおいて、それぞれ、作製した。
【0082】
そして、かくして得られた各種のポリウレタンフォームを用いて、その密度、独立気泡率、施工性(液ダレ及び横伸び)、寸法安定性、熱伝導率、及びフォーム加工性の測定乃至は評価を、それぞれ実施し、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1~表4に併せ示した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
かかる表1~表3の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1~19において採用された、ポリオール組成物とポリイソシアネートとの組合せからなる発泡性組成物にあっては、ポリオールとして、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールが所定の組合せと配合割合において用いられていると共に、触媒として、少なくともカルボン酸金属塩触媒が用いられ、更にポリマー微粒子が添加、含有せしめられていることによって、そのような発泡性組成物から得られるポリウレタンフォーム(発泡体)において、その独立気泡率が効果的に低減せしめられ得て、その収縮が抑制乃至は阻止され得ることにより、肉厚が50mmのポリウレタンフォームにおいても、優れた寸法安定性が発揮され得ることが認められ、また熱伝導率が小さく、以て、断熱特性に優れたポリウレタンフォームであることが認められると共に、施工性(液ダレ・横伸び)やフォーム加工性においても、優れた結果がもたらされていることが認められる。
【0088】
これに対して、表4の結果に示される如く、ポリマー微粒子が添加、含有されていない比較例1~3に係るポリオール組成物を用いて、ポリイソシアネートと反応させて、得られたポリウレタンフォームにあっては、何れも、独立気泡率が90%を超えるものとなるものであり、そのために、50mm厚の試験片においては、収縮が著しく、寸法安定性において劣るものとなったことに加えて、施工性(横伸び)において充分なものではなく、フォーム加工性も不可となるものであった。更に、ポリマー微粒子を添加、含有せしめてなるポリオール組成物であっても、組み合わされるポリオールの種類やそれらの配合割合が、本発明の範囲外となる比較例4~6において得られるポリウレタンフォームにあっては、独立気泡率は90%以下となるものの、50mm厚の試験片においては、寸法安定性が悪く、またフォーム加工性も悪いことに加えて、液ダレ及び横伸びの何れの評価においても不良となり、施工性が充分でないことが認められる。加えて、本発明に従うポリオール組成を有し、更にポリマー微粒子を含有せしめてなるポリオール組成物であっても、触媒の1つとして、カルボン酸金属塩が不使用の場合にあっては、横伸び(施工性)が悪い結果となり且つフォーム加工性においても不良となり、目的とするポリウレタンフォームを形成することが出来ない結果となった。