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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】吸口体を備えた電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/04 20060101AFI20240702BHJP
   A47L 9/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A47L9/04 A
A47L9/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020142951
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038440
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 泰治
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-120474(JP,A)
【文献】特開2019-030456(JP,A)
【文献】特開2012-016470(JP,A)
【文献】特開2020-103486(JP,A)
【文献】実開平04-000348(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/02- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸口ケースと、
前記吸口ケースに設けられ前記吸口ケースの前進方向に対して順回転する前側の回転清掃体と、
前記吸口ケースに設けられ前記吸口ケースの前進方向に対して逆回転する後側の回転清掃体と、
前記吸口ケースに設けられ前記後側の回転清掃体の後方に配置された車輪と、
前記吸口ケースに上下方向に回動可能に取付けられた吸口継手と、を有し、
前記吸口継手の回動軸は、前記後側の回転清掃体の回転軸と前記車輪の回転軸との間に位置しており、
前記吸口ケースの下面の左右両端部には、前記吸口ケースの前側から後側に亘って連続し、清掃面に対して密着する固定刷毛が設けられており、
前記前側の回転清掃体及び後側の回転清掃体は、いずれもブラシやロータリーコアを備えた構成であり、
前記前側の回転清掃体の回転軸の清掃面からの高さは、前記後側の回転清掃体の回転軸の清掃面からの高さより低い構成であり、
前記固定刷毛の床面に接する下面を傾斜させることで、前記前側の回転清掃体の回転軸の床面からの高さを前記後側の回転清掃体の回転軸の床面からの高さより低くしたことを特徴とする吸体を備えた電気掃除機。
【請求項2】
前記前側の回転清掃体及び後側の回転清掃体は、ロータリーコアと、前記ロータリーコアの外周部の軸方向に形成された複数の螺旋状の溝と、前記複数の螺旋状の溝にそれぞれ挿入されたブラシと、を備えており、
前記ロータリーコアの外径は、前記ブラシの外径の1/2よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の吸体を備えた電気掃除機。
【請求項3】
前記固定刷毛は、柔軟性を有する部材からなることを特徴とする請求項1に記載の吸体を備えた電気掃除機。
【請求項4】
前記固定刷毛の下面は、
前記前側の回転清掃体及び前記後側の回転清掃体の回転軸に沿う軸方向から見た場合に、前記前側の回転清掃体と前記後側の回転清掃体との回転軸同士を結ぶ基準線に対して、前記吸口ケースの前側から後側に向かうに従い前記基準線から離れる方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の吸体を備えた電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸体を備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機の吸口体に係る技術として特許文献1,2に開示されたものが知られている。このうち、特許文献1の電気掃除機の吸口体は、一組の回転可能な撹拌器と1つ以上のホイールとを備えている。一組の撹拌器は、相反する方向に回転するように構成されている。ホイールは、展開位置と退避位置との間で移動可能に構成され、展開位置にある場合に清浄すべき床に接触し、退避位置にある場合に清浄すべき床から離隔するように持ち上げられる。吸口体は、ホイールが退避位置にある場合に、撹拌器のみを介して清浄すべき床の上に支持されるようになっている。
【0003】
一方、特許文献2の電気掃除機の吸口体は、駆動源により相反する方向に回転するように構成された回転清掃体を前後に有している。前側の回転清掃体は、吸口体の前進方向に対して順回転し、径方向に突出するゴム製のブレードを有している。後側の回転清掃体は、吸口体の前進方向に対して逆回転し、前側の回転清掃体のブレードよりも径方向に突出する突出量が大きく、かつ清掃面に当接する側に起毛を有する起毛布を備えた布ブレードを有している。布ブレードの摺接抵抗は、前側の回転清掃体のブレードの摺接抵抗よりも小さくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-110855号公報
【文献】特許第3140338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電気掃除機の吸口体は、一組の撹拌器が相反する方向に回転するため、吸口体を前進させる際の操作力が軽減され難かった。また、特許文献1の電気掃除機の吸口体は、一組の撹拌器の間にホイールが設けられている構成であるため、特に吸口体の後退時に前側の撹拌器が清掃面から離れて清掃面との密着性が損なわれる可能性があった。このように、吸口体の後退時に前側の撹拌器が清掃面から離れてしまうと、後側の撹拌器によって弾かれた塵埃が前側の撹拌器の下をすり抜けて、吸口体の前方へ飛び出すそれがあった。
【0006】
また、特許文献2の電気掃除機の吸口体は、前側の回転清掃体と後側の回転清掃体との構成が異なるため、製造コストが高くなり、また、生産時に前後の組み付け間違いも生じるおそれがあった。この組み付け間違いは、ユーザが回転清掃体を取り外して清掃した後の再組み付け時にも生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、吸口体と清掃面との密着性を向上させることにより掃除性能を高めることができるとともに、同じ回転清掃体を用いながら前方への操作力を軽減できる吸体を備えた電気掃除機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の吸体を備えた電気掃除機は、吸口ケースと、前記吸口ケースに設けられ前記吸口ケースの前進方向に対して順回転する前側の回転清掃体と、前記吸口ケースに設けられ前記吸口ケースの前進方向に対して逆回転する後側の回転清掃体と、前記吸口ケースに設けられ前記後側の回転清掃体の後方に配置された車輪と、前記吸口ケースに上下方向に回動可能に取付けられた吸口継手と、を有し、前記吸口継手の回動軸は、前記後側の回転清掃体の回転軸と前記車輪の回転軸との間に位置しており、前記吸口ケースの下面の左右両端部には、前記吸口ケースの前側から後側に亘って連続し、清掃面に対して密着する固定刷毛が設けられており、前記前側の回転清掃体及び後側の回転清掃体は、いずれもブラシやロータリーコアを備えた構成であり、前記前側の回転清掃体の回転軸の清掃面からの高さは、前記後側の回転清掃体の回転軸の清掃面からの高さより低い構成であり、前記固定刷毛の床面に接する下面を傾斜させることで、前記前側の回転清掃体の回転軸の床面からの高さを前記後側の回転清掃体の回転軸の床面からの高さより低くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸口体と清掃面との密着性を向上させることにより掃除性能を高めることができるとともに、同じ回転清掃体を用いながら前方への操作力を軽減できる吸体を備えた電気掃除機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電気掃除機の吸口体及びこれを備えた電気掃除機の全体を示す外観斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体を示す上面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体を示す下面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体を示す側面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体に備わる回転清掃体を示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体の前進時における図2のII-II線断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体の後進時における図2のII-II線断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体の変形例を示す側面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る電気掃除機の吸口体を示す上面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る電気掃除機の吸口体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。各実施形態において同一の部分には同一の符号を付し重複する説明は省略する。実施形態の説明において、「前後」、「左右」を言うときは、図2,3に示した方向を基準とし、「上下」を言うときは、図4,6等に示した方向を基準とする。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、電気掃除機1は、手元操作スイッチSW等が設けられた掃除機本体2と、延長管5と、吸口体6とを備えている。掃除機本体2は、吸引力を発生させる電動送風機21、この電動送風機21の吸引力で集塵した塵埃を収容する集塵部22等を備えている。掃除機本体2には、掃除機本体2及び吸口体6の駆動用電源である充電式電池24が装着されている。なお、本実施形態では、いわゆるサイクロン式の電気掃除機1を例に挙げて説明するが、いわゆる紙パック式の電気掃除機に本発明を適用してもよい。
【0013】
延長管5の内側には、図示しない通風路が形成されている。延長管5の一端は、掃除機本体2の集塵部22と連通するように掃除機本体2の接続口23に接続されている。一方、延長管5の他端は、吸口体6に接続されている。また、延長管5には、掃除機本体2から給電される図示しない給電端子が設けられている。
【0014】
手元操作スイッチSWは、電動送風機21の運転と停止、強中弱の切り替え、さらに、吸口体6に設けられた電動機(図示せず)の運転と停止を操作可能である。
【0015】
吸口体6は、図2に示すように、上面視において略T字形状を呈する吸口ケース10と、吸口ケース10に連結される吸口継手13とを備えている。
吸口ケース10は、上面視において、左右方向(幅方向)に細長く形成された吸口本体11と、吸口本体11の左右方向の中央部に一体的に設けられた連結部12とを備えている。連結部12には吸口継手13が連結されている。連結部12の内部には、吸口本体11と吸口継手13とを連通させる流路R(図3参照)が形成されている。
【0016】
吸口本体11には、前端面から左右側面にかけてバンパ11aが設けられている。バンパ11aは、ゴムやエラストマー等の弾性材料から形成されている。バンパ11aは、電気掃除機1(図1参照)の使用時に、吸口本体11内の気密を確保するとともに吸口本体11が家具等に衝突した際の当該家具等への傷付き防止、及び吸口本体11への衝撃を吸収する緩衝材の役割をなす。
【0017】
吸口継手13は、連結部12に対して回動自在に連結される第1連結部14と、この第1連結部14に対して回動自在に連結される第2連結部15とを備えている。第1連結部14は、図2の上面視において略D字形状を呈し、連結部12と連結される円筒形状の軸部14aを有している。この軸部14aは、軸方向が吸口本体11の左右方向であって、軸部14aの両端部が連結部12に形成された軸受部(図示せず)に支持されている。また、第1連結部14は、床面(清掃面)M(図4参照)に対して略平行な状態から略垂直な状態まで回動可能となるように構成されている(図4参照)。すなわち、軸部14aを支点として第1連結部14を吸口ケース10に対して回動させることにより、延長管5(図1参照)を床面Mに略平行な状態と略垂直な状態との間において回動させることができる。
【0018】
軸部14aの回動軸14Jは、図3に示すように、吸口体6の前後方向において、後側の回転清掃体30の回転軸30Jと車輪17の回転軸17Jの間に配置されている。また、回動軸14Jは、図6に示すように、吸口体6の上下方向において、後側の回転清掃体30の外周縁部(外径Φ2、図5参照)よりも上側に位置している。
【0019】
図2に示すように、第2連結部15は、第1連結部14に対して吸口本体11の左右方向に(図2の紙面上において時計回り方向および反時計回り方向に)回動可能である。これにより、例えば、延長管5を床面Mに対して略垂直にした状態から、延長管5を床面Mに略平行な状態に向けて左右方向に倒すことができる。また、第2連結部15には、給電が行われる給電端子15aが設けられている。なお、本実施形態では、吸口体6に給電する電力を、掃除機本体2から延長管5を通じて供給するように構成している。
【0020】
吸口体6は、図3に示すように、前側の回転清掃体(回転ブラシ)20と後側の回転清掃体(回転ブラシ)30とを備えている。吸口ケース10(吸口本体11)には、下面(清掃面と向き合う面)に開口部を有するブラシ室Qが形成されている。
前側の回転清掃体20と後側の回転清掃体30とは、吸口本体11の前側において左右方向に沿って配置され、ブラシ室Q内に回転可能に支持されている。また、前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30は、吸口本体11の左右方向の一端側から他端側まで連続して設けられている。
前側の回転清掃体20の回転軸20Jと後側の回転清掃体30の回転軸30Jとは、略平行に配置されている。本実施形態では、前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30に対応した構成、具体的にはブラシB1,B2やロータリーコアRCの部品が同一構成のものを用いている。なお、狙いとする効果を奏するものであれば、つまり、前側と後側とを逆に組み付けても問題の生じないものであれば、必ずしも同一構成でなくともよいが、部品の共通化などを考慮すると同一構成のものがよい。
【0021】
前側の回転清掃体20の回転軸20Jの床面Mからの高さH1は、図6に示すように、後側の回転清掃体30の回転軸30Jの床面Mからの高さH2よりも低く設定されている。これにより、前側の回転清掃体20は、後側の回転清掃体30よりも吸口本体11の下面よりも下方に突出している。
【0022】
前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30は、硬さや高さの異なるブラシ等からなる複数種類のブラシB1,B2を備えている。各ブラシB1,B2は周方向にらせん状に配設されている。
【0023】
連結部12の後端下部には、図3図4に示すように、車輪17が設けられている。車輪17は、延長管5で操作される吸口体6の前後動のサポートや、回転操作の応力を受けて吸口体6の下面を床面Mに密着させるように作用し、吸口体6の操作性能を向上する役割をなす。
【0024】
吸口本体11の下面の左右両端部には、図3に示すように、固定刷毛40,40が設けられている。固定刷毛40,40は、吸口本体11の前側から後側に亘って連続的に配置されている。固定刷毛40,40は、図4に示すように、床面M(清掃面)に対して接している。これにより、固定刷毛40,40は、ブラシ室Q(図3参照)の気密性を向上させ、微細な塵埃の集塵性能を向上させている。
【0025】
固定刷毛40,40は、例えば、柔軟性を有する不織布等で構成されており、吸口本体11の下面による床面Mへの傷つきを防止するとともに、適度な弾力により前進時及び後進時における吸口体6の前後の傾きを可能にしている。
【0026】
図5は前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30の構成を示す斜視図である。回転清掃体20,30は、ロータリーコアRCの長手方向に形成された複数のらせん状の溝に、各ブラシB1,B2を挿入して構成されている。なお、本実施形態では、2種類のブラシB1,B2を配設した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、1種類のブラシであってもよく、3種類以上のブラシを備えていてもよい。また、螺旋状に配置されたブラシ間にゴムなどの弾性材料からなるブレード部材を螺旋状に配置する構成を追加してもよく、適宜変更することができる。このように、回転清掃体20,30のブラシ構成を容易に変更できるので、たとえば木床用や絨毯用のような目的別の吸口体6に対応が容易であるという効果も得られる。
【0027】
また、複数の螺旋状の溝に、各ブラシB1,B2が挿入される構成のため、組み立て工程が容易であり、製造コストが抑えられるという効果も得られる。
また、隣り合う溝は、千鳥状に、回転ラジアル方向に異なる高さで配置されている。このため、各ブラシB1,B2の間隔を狭く、高密度に配置できる。これにより、ブラシ室Qの気密性を向上でき、微細な塵埃の集塵性能を向上させることができる。
【0028】
ロータリーコアRCの外径Φ1は、各ブラシB1,B2の外径Φ2の1/2よりも大きく設定されている。これにより、各ブラシB1,B2の間隔を狭く、高密度状態に配置できる。
【0029】
このような高密度状態の配置により、前側の回転清掃体20の回転によりはじかれた塵埃が、後側の回転清掃体30のブラシ20A,20Bの隙間をすり抜けて吸口体6の後方に飛び出すことが防止される。したがって、後側の回転清掃体30の後方に、例えば後側の回転清掃体30と平行な固定刷毛等を設ける必要がない。
【0030】
次に、図6,7等を参照して、前進時及び後進時における吸口体6の作用について説明する。
ユーザが手元操作スイッチSW(図1参照)を操作して運転を開始すると、電動送風機21(図1参照)が作動し、吸口体6から空気が吸い込まれる。これと同時に、手元操作スイッチSWにより吸口体6の電動機(図示せず)が駆動されると、ベルトや歯車(図示せず)を介して、前側の回転清掃体20と後側の回転清掃体30とが逆方向に回転駆動される。
【0031】
この状態で吸口体6を前進させると、図6に示すように、後側の回転清掃体30の回転軸30Jと車輪17の回転軸17Jの間に、第1連結部14の回動軸14Jを配置しているので、吸口体6の前部が床面Mに向けて押し付けられ、前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30の両方が床面Mに密着する。なお、回動軸14Jは、吸口体6の上下方向において、後側の回転清掃体30の外周縁部(外径Φ2、図5参照)よりも上側に位置しているので、外径Φ2と同等の位置に配置されている場合に比べて、吸口体6の前部が床面Mに向けて好適に押し付けられる。
【0032】
さらに、図6に示すように、前側の回転清掃体20の回転軸20Jの床面Mからの高さH1と、後側の回転清掃体30の回転軸30Jの床面Mからの高さH2との関係がH1<H2の関係に設定されているので、後側の回転清掃体30に比べて前側の回転清掃体20の床面Mへの接触抵抗が増大する。これにより、前方への推進力が吸口体6に対して大きく作用し、ユーザーは、吸口体6を前進方向に楽に操作することができる。
【0033】
また、柔軟性を有する固定刷毛40は、ユーザーにより床面Mに吸口体6が強く押し付けられることで前部側が圧縮される。これにより、床面Mからの高さH1が高さH2よりさらに小さくなるので、前側の回転清掃体20の床面Mに対する接触抵抗がより増大し、前方への推進力がより大きくなる。
そして、前方の塵埃Dは、前側の回転清掃体20により掻き上げられ、ブラシ室Qから流路Rを流れる流れFによって運ばれ、延長管5(図1参照)を通り、集塵部22(図1参照)に収容される。
【0034】
このとき、前側の回転清掃体20の回転によりはじかれた塵埃は、後側の回転清掃体30の床面Mへの密着により吸口体6の後方に飛び出すことが防止される。また、後側の回転清掃体30のブラシB1,B2の高密度配置により、前側の回転清掃体20の回転によりはじかれた塵埃が各ブラシB1,B2の隙間をすり抜けて吸口体6の後方に飛び出すことも防止される。
【0035】
一方、吸口体6を後進させると、図7に示すように、第1連結部14の回動軸14Jを中心にして、吸口体6の前部が持ち上がる力が働く。
ここで、このような吸口体6の前部が持ち上がる力が大きくなると、前側の回転清掃体20が床面Mから離れてしまい、ブラシ室Qの気密が低下してしまう。さらには、後側の回転清掃体30の回転によりはじかれた塵埃が、前側の回転清掃体20のブラシの下側をすり抜けて吸口体6の前方に飛び出す現象も生じるおそれがある。
【0036】
これに対して、本実施形態では、後側の回転清掃体30の回転軸30Jと車輪17の回転軸17Jの間に、第1連結部14の回動軸14Jを配置している。これにより、吸口体6の前部が持ち上がる力が車輪17により抑えられる。
そして、前側の回転清掃体20の回転軸20Jの床面Mからの高さH1と、後側の回転清掃体30の回転軸30Jの床面Mからの高さH2との関係がH1<H2の関係に設定されているので、吸口体6の前部が持ち上がる力が働いて仮に吸口体6の前部が持ち上がったとしても、前側の回転清掃体20が床面Mから離れることが防止される。
【0037】
一方、後側の回転清掃体30のほうが前側の回転清掃体20よりも床面Mに対する接触抵抗が増大するので、後方への推進力が得られる。これにより、ユーザーは、吸口体6を後進方向に楽に操作することができる。
【0038】
そして、後方の塵埃Dは、吸口本体11と床面Mとの隙間を通過し、後側の回転清掃体30により掻き上げられ、ブラシ室Qから流路Rを流れる流れFによって運ばれ、延長管5を通り、集塵部22に集塵される。
このとき、後側の回転清掃体30の回転によりはじかれた塵埃が各ブラシB1,B2の隙間をすり抜けて吸口体6の前方に飛び出すことが防止される。これにより、吸口体6の後方の塵埃も、吸口体6を後進させる動作で好適に吸引することができる。
【0039】
以上説明した本実施形態の電気掃除機1の吸口体6によれば、後側の回転清掃体30の回転軸30Jと車輪17の回転軸17Jの間に、第1連結部14の回動軸14Jを配置しているので、吸口体6を前進させた場合に、吸口体6の前部が床面Mに向けて好適に押し付けられ、前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30が床面Mに密着する。したがって、掃除性能を高めることができる。
また、吸口体6を前進させた場合の吸口体6の前部の持ち上がりを車輪17により抑えることができるので、吸口体6の床面Mへの密着性を高めることができ、掃除性能を高めることができる。
【0040】
さらに、前側の回転清掃体20の回転軸20Jの床面Mからの高さH1と、後側の回転清掃体30の回転軸30Jの床面Mからの高さH2との関係がH1<H2の関係に設定されている。これにより、吸口体6を前進させると、前側の回転清掃体20の床面Mへの接触抵抗が増大し、より負荷が重い前方への推進力が大きくなる。したがって、吸口体6を前進方向に楽に操作することができ、ユーザの操作負荷を軽減できる。
また、前側の回転清掃体20によりはじかれた塵埃は、後側の回転清掃体30の各ブラシB1,B2の隙間をすり抜けて吸口体6の後方に飛び出すことがないので、掃除性能が向上する。また、後方の回転清掃体30の後方に固定刷毛等を設ける必要がないので、コストを低減することができる。
【0041】
また、高さがH1<H2の関係に設定されているので、吸口体6を後進方向に操作した場合に吸口体6の前部が仮に持ち上がっても、前側の回転清掃体20が床面Mから離れることを防止できる。したがって、掃除性能を高めることができる。
さらに、吸口体6を後進方向に操作した場合には、後側の回転清掃体30のほうが前側の回転清掃体20よりも床面Mに対する接触抵抗が増大するので、後方への推進力が得られる。これにより、吸口体6を後進方向へ楽に操作することができ、ユーザの操作負荷を軽減できる。
【0042】
また、吸口体6を後進方向に操作した場合に、後側の回転清掃体30の回転によりはじかれた塵埃が各ブラシB1,B2の隙間をすり抜けて吸口体6の前方に飛び出すことを防止できるので、吸口体6の後方の塵埃も吸引でき、掃除効率が向上する。
【0043】
さらに、固定刷毛40,40は、吸口本体11の下面から床面M(清掃面)に接するように設けられているとともに、吸口本体11の下面の左右端近くに、吸口本体11の前部から後部に亘って連続的に設けられている。これにより、ブラシ室Qの気密性を向上させることができ、微細な塵埃の集塵性能を向上できる。
【0044】
また、固定刷毛40,40は、柔軟性を有する部材からなるので、吸口本体11の下面による床面Mへの傷つきを防止できる。また、固定刷毛40,40の有する適度な弾力により前進時及び後進時における吸口体6の前後の傾きが可能である。したがって、前側の回転清掃体20や後側の回転清掃体30の床面Mへの密着性を高めることができる。
【0045】
また、前後で同じ構成の回転清掃体20,30を用いているので、前後別構成の2種類の回転清掃体を用いた場合に比べて、コストを低減できる。
さらに、前後で同じ構成の回転清掃体20,30を用いているので、生産時に前後の組み付け間違いが生じるのを防止でき、また、ユーザが回転清掃体20,30を取り外して清掃した後の再組み付け時に組み付け間違いが生じるのを確実に防止できる。
【0046】
また、ロータリーコアRCの外径Φ1は、各ブラシB1,B2の外径Φ2の1/2よりも大きく設定されているので、各ブラシB1,B2の間隔を狭く、高密度状態に配置できる。したがって、掃除性能を高めることができる。
【0047】
図8は本発明の第1実施形態に係る電気掃除機の吸口体の変形例を示す側面図である。図8に示した変形例では、吸口本体11の下面に設けられた固定刷毛40A,40A(図8では片側のみ図示)の下面40a(床面に接する面)を傾斜させることで、前側の回転清掃体20の回転軸20Jの床面からの高さH1を、後側の回転清掃体30の回転軸30Jの床面からの高さH2よりも低くしたものである。
【0048】
固定刷毛40Aの下面40aは、前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30の回転軸20J,30Jに沿う軸方向から見た場合に、前側の回転清掃体20と後側の回転清掃体30との回転軸20J,30J同士を結ぶ基準線K1に対して、吸口本体11の前側から後側に向かうに従い基準線K1から離れる方向に傾斜している。これにより、前側の回転清掃体20における高さH1と、後側の回転清掃体30における高さH2との関係がH1<H2の関係に設定されている。なお、固定刷毛40の下面40aに接する接線K2と基準線K1との関係は、上記した高さH1と高さH2との関係と同様に、吸口本体11の前方の上下方向の間隔H3が後方の間隔H4よりも小さくなっている。
【0049】
このような変形例においても、第1実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0050】
(第2実施形態)
図9,10を参照して本発明の第2実施形態に係る電気掃除機の吸口体について説明する。図9は本発明の第2実施形態に係る電気掃除機の吸口体を示す上面図、図10は同じく電気掃除機の吸口体を示す側面図である。
【0051】
図9,10に示すように、本実施形態の吸口体6は、上面視において略T字形状を呈する吸口ケース50と、吸口ケース50に連結される吸口継手53とを備えている。
吸口ケース50は、上面視において、左右方向(幅方向)に細長く形成された吸口本体51と、吸口本体51の左右方向の中央部に設けられ吸口継手53と連結される連結部52とを備えている。連結部52には、吸口本体51と吸口継手53とを連通させる流路R(図示せず)が形成されている。
【0052】
吸口継手53は、連結部52に対して回動自在に連結される第1連結部54と、この第1連結部54に対して回動自在に連結される第2連結部55とを備えている。第2連結部55は、第1連結部54と連結される軸部55aを有している。この軸部55aは、軸方向が吸口本体51の左右方向であって、軸部55aの両端部が第1連結部54に形成された軸受部(図示せず)に支持されている。
また、第2連結部55は、床面(清掃面)M(図10参照)に対して略平行な状態から略垂直な状態まで回動可能となるように構成されている。すなわち、第2連結部55を吸口ケース50に対して軸部55aを支点として回動させることによって、延長管5(図1参照)を床面M(図4参照)に略平行な状態と略垂直な状態との間において回動させることができる。
【0053】
軸部55aの回動軸55Jは、図9,10に示すように、吸口体6の前後方向において、後側の回転清掃体30の回転軸30Jと車輪17の回転軸17Jとの間に配置されている。また、回動軸55Jは、図10に示すように、吸口体6の上下方向において、後側の回転清掃体30の外周縁部(外径Φ2、図5参照)よりも上側となる、床面Mから高さH5に配置されている。高さH5は、第1実施形態で説明した軸部14aの回動軸14Jの設置位置の高さに比べて低い位置となっている。
【0054】
第1連結部54は、連結部52に対して吸口本体51の左右方向に(図9の紙面上において時計回り方向および反時計回り方向に)回動可能となるように構成されている。また、第2連結部55には、給電が行われる給電端子15aが設けられている。
【0055】
前側の回転清掃体20及び後側の回転清掃体30は、第1実施形態と同様に、吸口本体51の前側において左右方向に沿って配置され、ブラシ室Q(図9参照)内に回転可能に支持されている。また、前側の回転清掃体20の回転軸20Jと後側の回転清掃体30の回転軸30Jは、略平行に配置されている。
【0056】
図10に示すように、前側の回転清掃体20の回転軸20Jの床面Mからの高さH1は、後側の回転清掃体30の回転軸30Jの床面Mからの高さH2より小さく設定されている。
【0057】
以上説明した本実施形態の電気掃除機の吸口体6によれば、第1実施形態で説明した作用効果に加えて、第2連結部55の回動軸54Jの床面からに高さH5を低くできるので、吸口体6を後進させるときに、吸口体6の前部を持ち上げる力がより小さくなるという効果が得られる。
【0058】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0059】
例えば、吸口ケース10の前後方向における前側の回転清掃体20,後側の回転清掃体30及び車輪17の位置は、適宜設定することができる。
【0060】
また、軸部14aの回動軸14Jや軸部55aの回動軸55Jは、後側の回転清掃体30と車輪17との略中間部に配置したものを示したが、これに限られることはなく、後側の回転清掃体30側に近づけて配置してもよく、これとは反対側となる車輪17側に近づけて配置してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 電気掃除機
6 吸口体
10 吸口ケース
13 吸口継手
14J 回動軸
14a 軸部
17 車輪
17J 回転軸
20 前側の回転清掃体
20J 回転軸
30 後側の回転清掃体
30J 回転軸
40 固定刷毛
40A 固定刷毛
40a 下面
50 吸口ケース
53 吸口継手
55J 回動軸
H1,H2 高さ
K1 基準線
M 床面(清掃面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10