(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】切粉切屑除去装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B23Q11/00 P
B23Q11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020177081
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591014835
【氏名又は名称】高松機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】寺下 真二朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 正一
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038071(WO,A1)
【文献】実開昭62-011511(JP,U)
【文献】特開2021-194752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストコレクターから排出される排気の風力を利用することで、工作機械による加工の際に発生する切粉や切屑を除去する切粉切屑除去装置であって、
ミストコレクター本体と、
前記ミストコレクター本体から排出される排気を切粉や切屑が堆積する場所に送るために、前記ミストコレクター本体の排気口に接続する送風部材と、
前記送風部材の先に切粉や切屑を除去する際、排気の流れを調整するための噴出部材を
備えており、
前記噴出部材は、水平方向に対して10°~45°の角度になるように設置されており、噴出口の断面が水平方向に対して横長の矩形に形成されており、縦長:横長=1:12~1:25であることを特徴とする切粉切屑除去装置。
【請求項2】
前記送風部材は、先端側が分岐していることを特徴とする請求項1に記載の切粉切屑除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械による加工の際に発生する切粉や切屑等を除去する切粉切屑除去装置に関する。さらに言えば、粒子状物質に区分されるオイルミストを吸引して空気と分離するための装置であるミストコレクターから排出される排気の風力をエアブローとして利用することで、工作機械等による加工の際に発生する切粉や切屑等を除去する切粉切屑除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミストコレクターとは、主に粒子状物質(ガスや蒸気等の気体物質、粉塵、ヒューム等)に区分されるオイルミストを吸引して空気と分離するための装置である。工場内での生産活動に伴って発生する粒子状物質は、空気中に浮遊することで作業環境を汚染し、健康障害を引き起こす可能性が出てくる。(因みに、工作機械においては、加工時に切削点に供給する切削油が、(加工時に発生する)加工熱によってミスト化するのだが、それを捕獲することで浮遊させないようにするために設置することが多い。)このため、全体換気や局所排気装置を設置し、取り除く必要がある。従来、ミストコレクターは作業環境を保全するための局所排気装置であった。
【0003】
一方、空気中に浮遊するオイルミストとは異なり切粉や切屑等は、ミストコレクターにより回収されることが無いため、(工作機械稼働時に)切粉や切屑等が、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター部等の機械カバー部にも堆積してしまうため、(堆積した)その都度、作業員が工場内に設置された圧縮空気にて切粉や切屑等をエアブローで吹き飛ばす、箒等の道具を用いて切粉や切屑等を除去する作業を行っていた。掛かる作業は意外と手間が掛かる作業であり、かつ、邪魔な作業であるとも言えた。さらに、清掃のために、その都度工作機械を止める必要があり、生産性を落とす要因になっていた。そのため、作業者の負担の軽減の観点、及び生産性の観点から、切粉や切屑等が、シャッター部等の機械カバー部の上部に堆積しないようにする方法や装置が希求されていた。
【0004】
特許文献1には、「被加工材の切断作業時に発生する切粉が、切断方向の前方領域に堆積することを防止する」ことを課題として、「本体ハウジングに形成され、モータ冷却後の風を前方に向かって排出する排気口と、アンギュラープレートに形成され、排気口から排出された風をベースの移動方向の前方領域に導く開口部と、排気口から排出された風が、ブレードを覆う第2の領域の前端とアンギュラープレートの一端部の間を通ってベースの移動方向の側方へ流出することを規制し、これにより排気口から排出された風が前記開口部へ流れるように促す規制部を有する構成とした」切断機(特許文献1:発明の名称)が開示されている。即ち、切断機のモータの冷却に使用した排気を利用して、切断方向の前方領域に堆積しようとする切粉を吹き飛ばす切断機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る切断機(特許文献1:発明の名称)は、切断機のモータの冷却に使用した排気の風力を利用して切粉を吹き飛ばすことができるという効果が期待される。しかしながら、「切断機において、被加工材の切断作業時に発生する切粉が、切断方向の前方領域に堆積することを防止する上で・・・(特許文献1:0004段落)」との記載より、排気口から排出された排気の挙動を制御する機能としては、「切断方向の前方領域」との記載より極めて限定的であると考えられ、実際の構成としては、排気が側方へ流出することを規制する構成を備えているだけである。工作機械の稼働時に発生する切粉や切屑の除去に適応させるためには、さらに、排気の挙動を制御する機能(即ち、排気が排出されるまでの構成等)の工夫が必要であると言える。
【0007】
本発明の目的は、ミストコレクターから排出される排気の風力をエアブローとして利用することで、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター部等の機械カバー部の上部に切粉や切屑が堆積しないようにする切粉切屑除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、ミストコレクターから排出される排気の風力を利用することで、工作機械による加工の際に発生する切粉や切屑を除去する切粉切屑除去装置であって、ミストコレクター本体と、前記ミストコレクター本体から排出される排気を切粉や切屑が堆積する場所に送るために、前記ミストコレクター本体の排気口に接続する送風部材と、前記送風部材の先に切粉や切屑を除去する際、排気の流れを調整するための噴出部材を備えており、前記噴出部材は、水平方向に対して10°~45°の角度になるように設置されており、噴出口の断面が水平方向に対して横長の矩形に形成されており、縦長:横長=1:12~1:25であることを特徴とする切粉切屑除去装置であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記送風部材は、先端側が分岐している切粉切屑除去装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明はミストコレクターから排出される(排気の)風力を利用することで、工作機械による加工の際に発生する切粉や切屑を除去する切粉切屑除去装置である。ミストコレクター本体と、ミストコレクター本体から排出される空気を切粉や切屑が堆積する場所に送るために、ミストコレクター本体の排気口に接続する送風部材と、送風部材の先に切粉や切屑を除去する際、空気の流れを調整するための噴出部材を備えている。
【0012】
従来、ミストコレクターから排出される排気は、そのまま大気中に排出していた(
図1(a)参照)。一方で、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に切粉や切屑が堆積した場合(
図1(a)参照)、作業者が定期的に清掃する必要があった。ミストコレクターの排気口から、排気を切粉切屑除去装置の送風部材、及び噴出部材を経由して、シャッター等の機械カバー上部まで誘導し、噴出部材から排気を排出することで、切粉や切屑を除去することができるようになった(
図1(b)参照)。
【0013】
要するに、ミストコレクターから排出される排気を、送風部材と噴出部材を経由させて(ミストコレクターから排出される排気の流れの挙動を制御して)切粉や切屑の堆積し易い場所へ送り、排出することができるようになった。ミストコレクターから排出される風力による切粉や切屑の除去であるので、(工作機械稼働中には、常にミストコレクターも作動させるので)、常にミストコレクターから排出される(排気の)風力により、シャッター等の機械カバー上部に、切粉や切屑が堆積することが無いため作業者による清掃が不要になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る切粉切屑除去装置の技術的思想を説明するための図である。
【
図2】切粉切屑除去装置の使用状態を説明するための図である。
【
図3】送風部材と噴出部材の正面側から見た斜視図、及び側面図である。
【
図4】噴出部材の実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<切粉切屑除去装置の技術的思想>
以下、本発明に係る切粉切屑除去装置10の一実施形態について、
図1~
図4に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る切粉切屑除去装置10の技術的思想を説明するための図である。
図1(a)は、従来のミストコレクターの使用状態を説明するための図であり、
図1(b)は、切粉切屑除去装置10におけるミストコレクターの役割を説明するための図である。
【0016】
切粉切屑除去装置10の詳細について説明する前に、
図1を参照しつつ、本発明が為される以前において、工作機械の稼働中、被加工物である金属の塊を加工する際に発生する切粉や切屑が、どのような状態になっていたのかを説明する。従来、ミストコレクターから排出される排気は、
図1(a)に記載したように、利用されること無くそのまま大気中に排出されていた(大気開放)。工作機械の稼働中に、被加工物である金属の塊を切削加工することで発生したオイルミストは、ミストコレクターにより、空気とともに吸引され、空気中からフィルターを通して(人体に有害な)オイルミスト等を除去した後、清浄な空気のみが大気中に放出される。
【0017】
その一方で、被加工物である金属の塊を切削加工することで発生した切粉や切屑は、飛散した後、そのまま落下した状態で周辺に堆積していた。具体的には、工作機械の加工室内(主軸周辺)や工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に堆積していた(
図1(a)参照)。そのため、定期的に作業者が清掃しなければならなかった。尚、シャッター等の機械カバー上部に切粉や切屑が堆積する要因として、シャッターを開けた状態で行う、加工後の被加工物のエアブローによる飛散によるもの、被加工物の搬送装置による搬送時に、被加工物に付着していた切粉や切屑が落下して、シャッター上部に堆積するもの等が挙げられる。
【0018】
かかる状況の下、作業者が(工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部)を定期的に清掃する必要が無いようにするために、切粉切屑除去装置が開発された。切粉切屑除去装置の原理は、簡単に言うと、
図1(b)に記載したように、ミストコレクターの排出口から延びるダクト等を設置することにより、(従来はそのまま大気中に排出されていた)ミストコレクターから排出された清浄な空気を利用して、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に堆積する切粉や切屑を(堆積してしまう前に)エアブローする装置であると言える。ミストコレクターは、工作機械が稼働している間は、作動し続けているので、常にエアブローを行うことで、設置した場所(具体的には、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部)には切粉や切屑が全く堆積しないという効果が期待できる(
図1(b)参照)。
【0019】
<切粉切屑除去装置の使用状態、及び構造>
図2は、切粉切屑除去装置10の使用状態を説明するための図である。
図2に記載したように、切粉切屑除去装置10は、ミストコレクター本体20(図示しない。以下同じ)から排出される排気の風力を利用することで、工作機械による加工の際に発生する(工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に堆積する)切粉や切屑を除去する切粉切屑除去装置10である。切粉切屑除去装置10は、排気発生源であるミストコレクター本体20と、ミストコレクター本体20から排出される排気を切粉や切屑が堆積する場所に送るために、ミストコレクター本体20の排気口に接続する送風部材30と、送風部材30の先(排気の流れに沿って「先」という意味である)に切粉や切屑を除去する際、排気の流れを調整するための噴出部材40を備えている。
【0020】
切粉切屑除去装置10の作動時には、
図2に記載したように、ミストコレクター本体20から排出された排気が矢印で記載したような流れを生じることとなり(
図2参照)、(工作機械の加工室と加工室外との間を仕切る)シャッター上部に堆積しようとする切粉や切屑をエアブローにより除去することになる。具体的には、ミストコレクター本体20から排出された排気は、ミストコレクター本体20の排気口に接続する送風部材30の先端側にて二方向に分割される。因みに、工作機械には主軸が2つ平行に並んだ機種もあり、このような機種の工作機械に対応する際、送風部材30の先端側にて二方向に分割された形態であれば、切粉や切屑の除去効果が向上すると言える。尚、送風部材30は、切粉や切屑の堆積状況によっては、必ずしも先端側が分岐していなくても良い。
【0021】
さらに、空気の流れを調整するための噴出部材40により、平面上に広がるような流れになる(
図2参照)。要するに、ミストコレクター本体20から排出された直後の局所的(極端に言えば一点集中型)な排気が、送風部材30、及び噴出部材40を通過することで、平面上に広がるような流れになることに特徴がある。以下に(
図3を参照しつつ)、ミストコレクター本体20から排出された直後の局所的な排気が、送風部材30、及び噴出部材40を通過することで、平面上に広がるような流れになり、最終的に噴出部材40の噴出口から(工作機械の加工室と加工室外との間を仕切る)シャッター上部に排出される仕組みについて記載する。
【0022】
図3は、送風部材30と噴出部材40の正面側から見た斜視図、及び側面図である。
図3(a)が正面側から見た斜視図であり、
図3(b)が側面図である。送風部材30は、円筒形状をベース形状とし、途中で角度(排気の進行方向)を変えるために、接続部品を介して接続されており、先端側が水平方向に分岐している(正面から見た全体的な形状が逆Tの字状になっている:
図3(a)、及び
図2参照)。尚、繰り返しになるが、送風部材30は、切粉や切屑の堆積状況によっては、必ずしも先端側が分岐していなくても良い。噴出部材40は、送風部材30の先(排気の流れに沿って「先」という意味である)に、水平方向に対して、10°~45°の角度になるように設置されており、噴出口の断面が水平方向に対して横長の矩形に形成されている(極端に言えば、直線状に形成されている)ことに特徴があると言える。
【0023】
送風部材30は、ミストコレクター本体20から排出された局所的な排気を、円筒形状の断面のまま、噴出部材40の手前まで送風する部材であり、噴出部材40は、断面が円筒形状の排気を、断面が水平方向に対して横長の矩形に変換させる部材(平面的排気に変換する部材)であると言える。噴出部材40について詳細に説明すると、噴出部材40は、噴出口の断面が水平方向に対して横長の矩形に形成されている、即ち、(極端に言えば)直線状に形成されているので(
図3(a)参照)、排気が平面状に広がって排出されることになる。切粉切屑除去装置10は、ミストコレクター本体20から排出された排気が、最終的に平面状に広がって排出されるように設計されている。
【0024】
ミストコレクター本体20から排出された排気が、このような状態で排出されれば、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部のほぼ全面をカバーすることができるので、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に、切粉や切屑が堆積するのを未然に防止するという効果がより得やすい態様であると言える。
【0025】
送風部材30からの排気が、噴出部材40に送風されてから排出される際、噴出部材40の排出口全域に亘って排出されるために必要な、送風部材30の円柱形状の断面積と、噴出部材40の矩形の噴出口の断面積の関係について記載する。排気の単位時間当たりの送風部材30通過量と、単位時間当たりの噴出部材40からの排出量は等しいので、単位面積当たりの排気通過量をできるだけ落とすことなく維持することが望ましい。但し、本発明の目的は、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に、切粉や切屑が堆積するのを未然に防止することであるため、切粉や切屑を吹き飛ばす風力が担保されれば足るのである。
【0026】
これらの事を考慮して、送風部材30の円柱形状の断面積と、噴出部材40の矩形の噴出口の断面積の関係は、以下の様であることが必要である。即ち、送風部材30の円柱形状の断面積と、噴出部材40の矩形の噴出口の断面積の比率は、「円柱形状の断面積:噴出口の断面積=0.1:1~1:1.3」であることが望ましい。尚、ミストコレクター本体20から排出された排気が、平面状に広がって排出されるように、噴出部材40の噴出口の断面は、縦長と横長の比率が寸法的に、縦長:横長=1:12~1:16となるように設計されているが、これよりも横長の形状(~1:25)になっていても良い。
【0027】
<切粉切屑除去装置の効果>
従来、被加工物である金属の塊を切削加工することで発生した切粉や切屑は、飛散した後、そのままの状態で、工作機械の加工室内(主軸周辺)や工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に溜まっていた(
図1(a)参照)。本発明に係る切粉切屑除去装置10は、ミストコレクターの排気を利用することで、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に切粉や切屑が堆積しないように(切粉切屑除去箇所を特化して)設計されたということに特徴がある。切粉切屑除去装置10により、ミストコレクター本体20から排出される排気を、送風部材30と噴出部材40を経由させて、ミストコレクター本体20から排出される排気の流れの挙動を制御しつつ、切粉や切屑の堆積し易い場所(工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部)へ送り、排出することで、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に切粉や切屑が堆積するのを未然に防止することができるようになった。
【0028】
ミストコレクター本体20はオイルミストが工場内に飛散することが無いように、工作機械の稼働中は継続的に作動しているので、工作機械の稼働している間は、継続的に切粉や切屑が堆積することが無い。従って、本発明に係る切粉切屑除去装置10により、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部を清掃するという概念すら無くなったということが本発明の技術的な意義である。
【0029】
今まで全く無駄にしていたミストコレクター本体20の排気を利用するので、わざわざ工場内に設置した圧縮空気を使用することが無いため、経済的で有り省エネルギーである。要するに、今まで全く考慮することが無かったミストコレクター本体20の排気を利用することが斬新なアイデアであると言える。発明が為された結果として、その都度、作業員が工場内に設置された圧縮空気等にて切粉や切屑等を吹き飛ばす、箒等の道具を用いて切粉や切屑等を除去する作業を行う必要が全く無くなったのである。
【0030】
ミストコレクター本体20から排出された排気が、平面上に広がって切粉や切屑を吹き飛ばす風力が担保しつつ排出されるように、送風部材30の円柱形状の断面積と、噴出部材40の矩形の噴出口の断面積の比率は、「円柱形状の断面積:噴出口の断面積=0.1:1~1:1.3」であること、及び噴出口の断面は、縦長と横長の比率が、縦長:横長=1:12~1:16(場合によっては(~1:25))となるように設計されていることにより、ミストコレクター本体20から排出された排気が、(工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部への)切粉や切屑の堆積を未然に防止する切粉切屑除去装置10としての最大の効果を得ることができるようになった。
【0031】
<切粉切屑除去装置の実施例>
図4は、本発明に係る切粉切屑除去装置10の噴出部材40の実施例を説明するための図である。切粉切屑除去装置10の噴出部材40は、ミストコレクター本体20から排出された排気が、(
図2の説明で述べたように)噴出部材40の噴出口から平面状に広がって排出されることに加え、さらに、風力を増幅させる目的で、噴出部材40の噴出口を絞った形状にすることができる。具体的には、噴出部材40の噴出口の高さを噴出部材40の本体高さの1/4~1/3に絞り込むことで(噴出部材40の噴出口に向かって絞り込む:
図4左側:40(1)参照)、ミストコレクター本体20から排出された排気が、噴出部材40の噴出口から風力が増幅させた状態で排出されることになる。
【0032】
そして、ミストコレクター本体20から排出された排気が、噴出部材40の噴出口からの風力を増幅させる目的で、(横並びに)小さな穴をいくつも開けた形状にすることもできる。即ち、噴出部材40の噴出口を全面的に開放せずに、噴出部材40の噴出口の高さの1/4~1/3の径を有する円形状の穴を横並びに形成することになる(
図4右側:40(2)参照)。具体的には、穴径の実寸法が、φ4mm(~φ8mmの間で自由に選択することができる)の穴を横並びになるように形成することになる。穴は、一列横並びに形成する以外にも、二列横並びであっても良いし、それ以上の列であっても良い。さらに、穴の代わりに複数の縦長スリット状の隙間(幅4mm~8mm)を形成することもできる。噴出部材40の噴出口をこのように形成することで、ミストコレクター本体20から排出された排気が、噴出部材40の噴出口から風力が増幅させた状態で排出されることになる。
【0033】
さらに、噴出部材40の内部を仕切り板(排気の流れる方向と平行になるように設置する)で区分けすることで、ミストコレクター本体20から排出された排気が偏ること無く、噴出部材40の噴出口から同じ風量で(均一に)噴出させるようにすることもできる。即ち、噴出部材40の内部に仕切り板を設置し、噴出部材40の噴出口を10区域~20区域に分割することで、ミストコレクター本体20から排出された排気の流れを整えることができる(整流作用)。(仕切り板による)噴出部材40の内部の区分け(噴出口の分割方法)は、等分割であっても良いし、それぞれの幅が異なっていても良く、自由に選択することができる。
【0034】
<切粉切屑除去装置の変更例>
本発明に係る切粉切屑除去装置は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、送風部材、噴出部材等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、送風部材の先端側は、二股以上に分岐されていても良い。そして、噴出部材を、工作機械の加工室と加工室外との間を仕切るシャッター等の機械カバー上部に固定するための固定部材を備えること、及び、固定部材が、工作機械に対して移動自在になるように設置される移動部材を設置することもできる。さらに、送風部材と噴出部材の継目に角度調整機能を備えていても良いし、排気発生源であるミストコレクター本体を2台(若しくはそれ以上)にして、ミストコレクター本体を2台(若しくはそれ以上)の排気を集約し、風量を増加させる態様にして排気を送風してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る切粉切屑除去装置は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、工作機械等による加工の際に発生する切粉や切屑等が堆積するのを未然に防止する切粉切屑除去装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
10・・切粉切屑除去装置
20・・ミストコレクター本体
30・・送風部材
40・・噴出部材