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特許7513495医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240702BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240702BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240702BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240702BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
A61B5/055 380
A61B6/46 506Z
A61B6/50 500B
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020182284
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072694
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】益田 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】青山 岳人
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0171766(US,A1)
【文献】特開2019-202142(JP,A)
【文献】特開2014-108313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0155094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時点で撮像された医用画像を取得する画像取得部と、
前記複数の時点のうち、心臓弁の各弁葉が第1の状態となる第1の時点と当該第1の時点とは異なり、前記心臓弁の各弁葉が前記第1の状態とは異なる第2の状態となる第2の時点とで撮像された医用画像から、前記第1の状態及び前記第2の状態における前記心臓弁の各弁葉の構造をそれぞれ取得する構造取得部と、
前記構造取得部によって取得された前記第2の状態における心臓弁の各弁葉の構造と前記第1の状態における心臓弁の各弁葉の構造とに基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出する算出部と、
を有し、
前記構造取得部は、前記心臓弁が閉口した状態である前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記心臓弁が開口した状態である前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における弁葉の構造に関する長さと、前記第2の状態における弁葉の構造に関する長さとに基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出する医用情報処理装置。
【請求項2】
前記構造取得部は、前記第1の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造をそれぞれ取得し、前記第2の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造をそれぞれ取得し、
前記算出部は、前記第1の状態において撮像された前記複数の医用画像からそれぞれ抽出された前記心臓弁の各弁葉の構造の中から、構造の特徴に基づいて第1の構造を選択し、前記第2の状態において撮像された前記複数の医用画像から抽出された前記心臓弁の各弁葉の構造の中から、構造の特徴に基づいて第2の構造を選択し、前記第1の構造と前記第2の構造に基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出する、請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部の長さを算出する、請求項1又は2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記構造取得部は、前記第1の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記第2の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における前記心臓弁の各弁葉のうち第1の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを前記複数の医用画像のうちの第1の医用画像から選択し、前記第1の弁葉とは異なる第2の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを前記第1の医用画像から取得し、前記第1の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、前記第2の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、前記第2の状態における前記複数の医用画像から選択した前記第1の弁葉の弁輪から弁の先端までの長さ及び前記第2の弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部の長さを算出する、請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記構造取得部は、前記第1の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記第2の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における接触開始点から弁輪までの最短の長さと、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部の長さを算出する、請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、前記弁葉の接触開始点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、前記心臓弁の各弁葉について、前記第1の構造と前記第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分のうち最短値を前記心臓弁の接触部の長さとして測定する、請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さと、前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部に関する長さを算出する、請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記構造取得部は、前記第1の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記第2の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における曲率が最大となる点から弁輪までの最短の長さと、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、前記心臓弁に対する手技可能な長さを算出する、請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、前記弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、前記心臓弁の各弁葉について、前記第1の構造と、前記第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分のうち最短値を前記心臓弁に対する手技可能な長さとして測定する、請求項に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記算出部は、前記第2の時点における前記心臓弁の各弁葉に対して設定された断面に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造と、前記第1の時点における前記心臓弁の各弁葉に対して設定された断面に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造とに基づいて、前記第1の時点の前記断面の位置における接触部に関する計測値を算出する、請求項1~のいずれか1つに記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記構造取得部は、前記第1の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造をそれぞれ取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における弁葉の構造に関する長さとして、前記第1の状態において撮像された前記複数の医用画像からそれぞれ抽出された前記心臓弁の各弁葉における弁葉の接触開始点から弁輪までの長さの平均を算出する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記構造取得部は、前記第2の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造をそれぞれ取得し、
前記算出部は、前記第2の状態における弁葉の構造に関する長さとして、前記第2の状態において撮像された前記複数の医用画像からそれぞれ抽出された前記心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの長さの平均を算出する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記計測値を表示部にて表示させる表示制御部をさらに備える、請求項1~12のいずれか1つに記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
前記算出部は、前記心臓弁の各弁葉に対して設定された複数の断面について、前記心臓弁の接触部に関する計測値をそれぞれ算出する、請求項10に記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
前記複数の断面の位置で計測された各計測値に基づく表示情報を表示部にて表示させる表示制御部をさらに備える、請求項14に記載の医用情報処理装置。
【請求項16】
前記表示制御部は、前記複数の断面の位置ごとの計測値を示すグラフ上に前記計測値を判定するための閾値を示した表示情報を表示させる、請求項15に記載の医用情報処理装置。
【請求項17】
前記構造取得部は、前記医用画像の画質が所定の状態を超えた医用画像を対象として、前記心臓弁の各弁葉の構造を取得する、請求項1~16のいずれか1つに記載の医用情報処理装置。
【請求項18】
前記構造取得部は、前記医用画像とは異なる種別であり、かつ、前記心臓弁の各弁葉を含む医用画像に基づいて決定された前記断面の位置における、前記心臓弁の各弁葉の構造を取得する、請求項10に記載の医用情報処理装置。
【請求項19】
前記構造取得部は、前記心臓弁の各弁葉の構造を2次元又は3次元で取得する、請求項1~18のいずれか1つに記載の医用情報処理装置。
【請求項20】
複数の時点で撮像された医用画像を取得し、
前記複数の時点のうち、心臓弁の各弁葉が第1の状態となる第1の時点と当該第1の時点とは異なり、前記心臓弁の各弁葉が前記第1の状態とは異なる第2の状態となる第2の時点とで撮像された医用画像から、前記第1の状態及び前記第2の状態における前記心臓弁の各弁葉の構造をそれぞれ取得し、
取得された前記第2の状態における心臓弁の各弁葉の構造と前記第1の状態における心臓弁の各弁葉の構造とに基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出する、
ことを含み、
前記心臓弁が閉口した状態である前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記心臓弁が開口した状態である前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記第1の状態における弁葉の構造に関する長さと、前記第2の状態における弁葉の構造に関する長さとに基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出する、医用情報処理方法。
【請求項21】
複数の時点で撮像された医用画像を取得する画像取得機能と、
前記複数の時点のうち、心臓弁の各弁葉が第1の状態となる第1の時点と当該第1の時点とは異なり、前記心臓弁の各弁葉が前記第1の状態とは異なる第2の状態となる第2の時点とで撮像された医用画像から、前記第1の状態及び前記第2の状態における前記心臓弁の各弁葉の構造をそれぞれ取得する構造取得機能と、
取得された前記第2の状態における心臓弁の各弁葉の構造と前記第1の状態における心臓弁の各弁葉の構造とに基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出する算出機能と、
をコンピュータに実行させ
前記構造取得機能は、前記心臓弁が閉口した状態である前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記心臓弁が開口した状態である前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出機能は、前記第1の状態における弁葉の構造に関する長さと、前記第2の状態における弁葉の構造に関する長さとに基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出する、医用情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈弁や僧帽弁などの心臓弁の疾患の状態を診断するために、弁葉の接触部(弁が閉じた状態の時の弁葉が接触している部分)の長さが計測されている。かかる計測方法としては、例えば、心臓弁を含む医用画像から弁葉を抽出し、抽出した弁葉の接触部の長さを直接計測する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-202142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、接触部に関連する計測を正確に行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用情報処理装置は、画像取得部と、構造取得部と、算出部とを備える。画像取得部は、複数の時点で撮像された医用画像を取得する。構造取得部は、前記複数の時点のうち第1の時点と当該第1の時点とは異なる第2の時点とで撮像された医用画像から複数の生体器官の構造を取得する。算出部は、前記構造取得部によって取得された前記第2の時点における複数の生体器官の構造と前記第1の時点における複数の生体器官の構造とに基づいて、前記第1の時点における前記複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の処理回路が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係る判定機能による判定処理の一例を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る設定機能による設定処理の一例を説明するための図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態に係る断面位置の設定に関する条件設定の一例を説明するための図である。
図5B図5Bは、第1の実施形態に係る断面位置の設定に関する条件設定の一例を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る設定機能による断面の設定の例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る算出機能による算出処理を説明するための図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る代表値の決定に関する条件設定の一例を説明するための図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る算出機能による算出処理を説明するための図である。
図10A図10Aは、変形例1に係る設定機能による設定処理の一例を示す図である。
図10B図10Bは、変形例1に係る制御機能による表示処理の一例を示す図である。
図11図11は、変形例1に係る制御機能による表示処理の一例を示す図である。
図12図12は、変形例1に係る制御機能による表示処理の一例を示す図である。
図13図13は、変形例1に係る制御機能による表示処理の一例を示す図である。
図14図14は、変形例5に係る算出機能による算出処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係る医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、本実施形態に係る医用情報処理装置3は、医用画像診断装置1及び医用画像保管装置2と、ネットワークを介して通信可能に接続されている。なお、図1に示すネットワークには、その他種々の装置及びシステムが接続される場合でもよい。
【0009】
医用画像診断装置1は、被検体を撮像して医用画像を生成する。そして、医用画像診断装置1は、生成した医用画像をネットワーク上の各種装置に送信する。例えば、医用画像診断装置1は、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置等である。
【0010】
医用画像保管装置2は、被検体に関する各種の医用画像を保管する。具体的には、医用画像保管装置2は、ネットワークを介して医用画像診断装置1から医用画像を取得し、当該医用画像を自装置内の記憶回路に記憶させて保管する。例えば、医用画像保管装置2は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。また、例えば、医用画像保管装置2は、PACS(Picture Archiving and Communication System)等によって実現され、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に準拠した形式で医用画像を保管する。
【0011】
医用情報処理装置3は、被検体に関する各種の情報処理を行う。具体的には、医用情報処理装置3は、ネットワークを介して医用画像診断装置1又は医用画像保管装置2から医用画像を取得し、当該医用画像を用いて各種の情報処理を行う。例えば、医用情報処理装置3は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0012】
例えば、医用情報処理装置3は、通信インターフェース31と、入力インターフェース32と、ディスプレイ33と、記憶回路34と、処理回路35とを備える。
【0013】
通信インターフェース31は、医用情報処理装置3と、ネットワークを介して接続された他の装置との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、通信インターフェース31は、処理回路35に接続されており、他の装置から受信したデータを処理回路35に出力、又は、処理回路35から出力されたデータを他の装置に送信する。例えば、通信インターフェース31は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0014】
入力インターフェース32は、利用者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インターフェース32は、処理回路35に接続されており、利用者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路35に出力する。例えば、入力インターフェース32は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インターフェース、及び音声入力インターフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インターフェース32は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース32の例に含まれる。
【0015】
ディスプレイ33は、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ33は、処理回路35に接続されており、処理回路35から出力された各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ33は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。
【0016】
記憶回路34は、各種データ及び各種プログラムを記憶する。具体的には、記憶回路34は、処理回路35に接続されており、処理回路35から入力されたデータを記憶、又は、記憶しているデータを読み出して処理回路35に出力する。例えば、記憶回路34は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0017】
処理回路35は、医用情報処理装置3の全体を制御する。例えば、処理回路35は、入力インターフェース32を介して利用者から受け付けた入力操作に応じて、各種処理を行う。例えば、処理回路35は、他の装置から送信されたデータを通信インターフェース31を介して受信し、受信したデータを記憶回路34に記憶する。また、例えば、処理回路35は、受信したデータを記憶回路34から通信インターフェース31に出力することで、当該データを他の装置に送信する。また、例えば、処理回路35は、記憶回路34から受信したデータをディスプレイ33に表示する。
【0018】
以上、本実施形態に係る医用情報処理装置3の構成例について説明した。例えば、本実施形態に係る医用情報処理装置3は、病院や診療所等の医療施設に設置され、医師等の利用者によって行われる各種診断や治療計画の策定等を支援する。例えば、医用情報処理装置3は、心臓弁の接触部に関する計測をより正確に行うための各種処理を実行する。
【0019】
上述したように、心臓弁の接触部に関する計測では、心臓弁を含む医用画像から弁葉を抽出し、抽出した弁葉の接触部の長さ(coaptation height)を直接計測する方法が知られている。しかしながら、かかる方法では、時間分解能・空間分解能が低い医用画像を用いた場合に、弁葉の構造を正確に取得することができず、弁葉の計測情報を直接算出することが困難となる場合がある。
【0020】
例えば、心臓弁が開いた状態(開口状態)では、血流によって心臓弁の先端が細かく動いているため、時間分解能が低い医用画像には、時間分解能の不足により心臓弁の先端がブレて描出されてしまい正確な構造の把握ができない。また、例えば、心臓弁が閉じた状態(閉口状態)では、空間分解能の不足により各弁葉の接触部以下の箇所における各弁葉の夫々の構造の把握ができない。すなわち、閉口状態の心臓弁において、各弁葉が接触している接触部と、弁の先端側で弁葉が接触していない部分とを識別することができず、各弁葉の構造を把握することができない。したがって、弁葉の接触部の長さを医用画像から直接計測することが困難となる場合がある。
【0021】
そこで、本実施形態に係る医用情報処理装置3は、複数の時点で撮像された医用画像における複数の生体器官(例えば、心臓弁の各弁葉など)の構造を用いて複数の生体器官の接触部に関する計測を行うことで、接触部に関連する計測を正確に行うことができるように構成されている。
【0022】
具体的には、医用情報処理装置3は、複数の生体器官の状態が異なるタイミングで撮像された複数の医用画像を用いて、各状態における複数の生体器官の構造をそれぞれ取得し、取得した各状態における複数の生体器官の構造から接触部に関する計測値を算出する。例えば、医用情報処理装置3は、開口状態及び閉口状態の心臓弁の医用画像に基づいて、開口状態の各弁葉の構造と、閉口状態の各弁葉の構造とを取得し、夫々の構造を用いて閉口状態の各弁葉の接触部の長さを計測する。以下、このような構成を有する医用情報処理装置3について、詳細に説明する。
【0023】
例えば、図1に示すように、本実施形態では、医用情報処理装置3の処理回路35が、制御機能351と、画像取得機能352と、判定機能353と、設定機能354と、抽出機能355と、算出機能356とを実行する。ここで、制御機能351は、表示制御部の一例である。画像取得機能352は、画像取得部の一例である。また、抽出機能355は、構造取得部の一例である。また、算出機能356は、算出部の一例である。
【0024】
制御機能351は、入力インターフェース32を介した操作に応じて、種々のGUI(Graphical User Interface)や、種々の表示情報を生成して、ディスプレイ33に表示するように制御する。例えば、制御機能351は、接触部に関する計測値を算出するための条件を設定するためのGUIや、算出された計測値に基づく表示情報などをディスプレイ33に表示させる。また、制御機能351は、画像取得機能352によって取得された医用画像に基づいて、種々の表示画像を生成することもできる。なお、制御機能351の処理によって表示されるGUI及び表示情報については、後に詳述する。
【0025】
画像取得機能352は、通信インターフェース31を介して、医用画像診断装置1又は医用画像保管装置2から被検体の医用画像を取得する。具体的には、画像取得機能352は、複数の生体器官からなる構造と複数の状態とを有し、当該複数の生体器官からなる構造が接触する部位の形態情報を含む医用画像を取得する。より具体的には、画像取得機能352は、処理対象とする生体器官の解剖構造の形態情報を含み、生体器官が異なる状態となる複数の医用画像を取得する。なお、画像取得機能352は、処理対象とする生体器官の機能情報を含む複数の医用画像を取得することもできる。
【0026】
ここで、画像取得機能352は、生体器官が異なる状態となる複数の医用画像として、生体器官を2次元又は3次元で時間方向に複数撮像することで得られる複数の医用画像を取得する場合でもよく、或いは、第1の状態の生体器官と第2の状態の生体器官とが異なる検査で撮像された医用画像をそれぞれ取得する場合でもよい。
【0027】
例えば、画像取得機能352は、上記した複数の医用画像として、CT画像、超音波画像、MRI画像、X線画像、Angio画像、PET画像、SPECT画像などを取得する。なお、本実施形態では、3次元で時間方向に複数撮像した4次元のCT画像が取得される場合を一例に挙げて説明する。
【0028】
判定機能353は、画像取得機能352によって取得された複数の医用画像について、各医用画像に含まれる複数の生体器官の状態を判定する。具体的には、判定機能353は、複数の医用画像について、接触の状態が経時的に変化する複数の生体器官の状態を判定する。例えば、判定機能353は、各医用画像に含まれる心臓弁について、心臓弁が開いた状態(開口状態)に属するか、或いは、心臓弁が閉じた状態(閉口状態)に属するかを判定する。なお、判定機能353による処理については、後に詳述する。
【0029】
設定機能354は、複数の生体器官において、接触部に関する計測の対象となる断面を設定する。具体的には、設定機能354は、画像取得機能352によって取得された複数の医用画像の夫々について、複数の生体器官の接触部が描出される断面をそれぞれ設定する。なお、設定機能354による処理については、後に詳述する。
【0030】
抽出機能355は、画像取得機能352によって取得された複数の医用画像の夫々について、注目構造を抽出する。具体的には、抽出機能355は、画像取得機能352によって取得された複数の医用画像の夫々について、接触部に関する計測を行う対象となる構造を抽出する。例えば、抽出機能355は、画像取得機能352によって取得された複数の医用画像の夫々において設定された断面における心臓弁(例えば、僧帽弁の前尖と後尖の両方)を抽出する。なお、抽出機能355による処理については、後に詳述する。
【0031】
算出機能356は、複数の生体器官における接触部に関する計測値を算出する。具体的には、算出機能356は、異なる時点で撮像された複数の医用画像において抽出された複数の生体器官の構造に基づいて、複数の生体器官における接触部に関する計測値を算出する。すなわち、算出機能356は、複数の生体器官において接触部に関する計測を行う対象となる構造(注目構造)の計測値を算出する。例えば、算出機能356は、開口状態の複数の生体器官の構造(開口状態の注目構造)と、閉口状態の複数の生体器官の構造(閉口状態の注目構造)とを用いて、閉口状態における接触部に関する計測値を算出する。なお、算出機能356による処理については、後に詳述する。
【0032】
上述した処理回路35は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路34に記憶される。そして、処理回路35は、記憶回路34に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路35は、各プログラムを読み出した状態で、図1に示した各処理機能を有することとなる。
【0033】
なお、処理回路35は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路35が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路35が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応するプログラムが単一の記憶回路34に記憶される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各処理機能に対応するプログラムが複数の記憶回路が分散して記憶され、処理回路35が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0034】
上述したように、医用情報処理装置3は、複数の時点で撮像された医用画像における複数の生体器官(例えば、心臓弁の各弁葉など)の構造を用いて複数の生体器官の接触部に関する計測を行う。ここで、まず、医用情報処理装置3による処理の手順について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3の処理回路35が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
例えば、図2に示すように、本実施形態では、画像取得機能352が、医用画像診断装置1又は医用画像保管装置2から被検体の医用画像を取得する(ステップS101)。例えば、画像取得機能352は、入力インターフェース32を介した医用画像の取得操作に応じて、処理対象とする生体器官の解剖構造の形態情報を含み、生体器官が異なる状態となる複数の医用画像を取得する。この処理は、例えば、処理回路35が、画像取得機能352に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0036】
続いて、判定機能353が、取得された複数の医用画像について、各医用画像に含まれる複数の生体器官の状態を判定する(ステップS102)。この処理は、例えば、処理回路35が、判定機能353に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0037】
そして、設定機能354が、取得された複数の医用画像の夫々について、接触部に関する計測を行うための断面を設定する(ステップS103)。この処理は、例えば、処理回路35が、設定機能354に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0038】
続いて、抽出機能355が、取得された複数の医用画像の夫々について、設定された断面における注目構造(接触部に関する計測を行う対象となる構造)を抽出する(ステップS104)。この処理は、例えば、処理回路35が、抽出機能355に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0039】
そして、算出機能356が、異なる時点で撮像された複数の医用画像において抽出された複数の生体器官の構造(例えば、設定された断面における注目構造)に基づいて、複数の生体器官における接触部に関する計測値を算出する(ステップS105)。この処理は、例えば、処理回路35が、算出機能356に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0040】
その後、制御機能351が、算出された計測値を表示させる(ステップS106)。この処理は、例えば、処理回路35が、制御機能351に対応するプログラムを記憶回路34から呼び出して実行することにより実現される。
【0041】
以下、医用情報処理装置3によって実行される各処理の詳細について、説明する。なお、以下では、僧帽弁のおける接触部を計測する場合を一例に挙げて説明する。
【0042】
(医用画像の取得処理)
図2のステップS101で説明したように、画像取得機能352は、入力インターフェース32を介した医用画像の取得操作に応じて、生体器官が異なる状態となる複数の医用画像を取得する。例えば、画像取得機能352は、僧帽弁を3次元で時間方向に複数撮像した4次元のCT画像を取得する。
【0043】
なお、ステップS101における医用画像の取得処理は、上記したように、入力インターフェース32を介したユーザの指示により動作が開始される場合でもよいが、自動的に処理が開始される場合でもよい。かかる場合には、例えば、画像取得機能352は、医用画像保管装置2を監視しておき、新しい医用画像が保管されるごとに自動的に医用画像を取得する。
【0044】
ここで、画像取得機能352は、予め設定された取得条件に基づいて新しく保管された医用画像を判定し、医用画像が取得条件を満たした場合に取得処理を実行するようにしてもよい。例えば、医用画像の状態を判定することができる取得条件が記憶回路34に記憶され、画像取得機能352は、記憶回路34に記憶された取得条件に基づいて、新しく保管された医用画像を判定する。
【0045】
一例を挙げると、記憶回路34は、取得条件として、「心臓を対象とする撮像プロトコルで撮像された医用画像を取得」や、「拡大再構成された医用画像を取得」、或いは、それらの組み合わせを記憶する。画像取得機能352は、上記した取得条件を満足する医用画像を取得する。
【0046】
(状態の判定処理)
図2のステップS102で説明したように、判定機能353は、複数の医用画像について、接触の状態が経時的に変化する複数の生体器官の状態を判定する。例えば、判定機能353は、僧帽弁を3次元で時間方向に複数撮像した4次元のCT画像について、各CT画像における僧帽弁が開口状態であるか、或いは、閉口状態であるかを判定する。
【0047】
図3は、第1の実施形態に係る判定機能353による判定処理の一例を説明するための図である。ここで、図3では、画像取得機能352が、t1~t6の時点で、僧房弁を対象として撮像されたCT画像を取得した場合を示す。例えば、僧帽弁は、主に心臓の収縮期初期から拡張期初期の間の時点で開口し、拡張期初期から拡張期末期の間の時点で閉口するため、開口状態と閉口状態の2つの状態がある。
【0048】
判定機能353は、t1~t6の時点で撮像された各CT画像における僧帽弁が、上記した2つの状態(開口状態及び閉口状態)のうちどちらに属するかを判定する。例えば、判定機能353は、図3に示すように、t1及びt6の時点におけるCT画像を開口状態として判定し、t2~t5の時点におけるCT画像を閉口状態として判定する。
【0049】
ここで、判定機能353は、判定を行うための方法として、種々の方法を用いることができる。一般に、心臓に対するCT画像の撮像時には心臓の動きに合わせて撮像するために心電同期撮像が実施され、撮像の際の心電の情報がDICOMヘッダに格納されていることが多い。そこで、判定機能353は、例えば、DICOMヘッダから心電に関する情報を取得し、当該心電の情報から状態を特定することができる。例えば、心電における一心拍の間隔(RR間隔)を100%として、予め各時点(%の数値)と状態との関係を条件として定めておき、判定機能353は、当該条件に基づいて状態を判定する。一例を挙げると、判定機能353は、40%~90%の時点で再構成された画像を開口状態に属すると判定し、その他の時点で再構成された画像を閉口状態に属すると判定する。
【0050】
なお、心電の情報から状態を判定する方法としては、RR間隔における所定の割合の時点(%)に対して状態を設定する上記した方法以外にも、RR間隔の最初のR波の時点からの所定の経過時間(ms)に対して条件を設定する方法でもよい。すなわち、RR間隔の最初のR波の時点からの経過時間と状態との関係を条件として定めておき、判定機能353は、当該条件に基づいて状態を判定する。
【0051】
また、別の判定方法として、例えば、CT画像の撮像時に心音を同時に記録しておき、当該心音の情報に基づいて僧帽弁の開口状態と閉口状態とを判定する方法が用いられてもよい。また、別の判定方法として、例えば、僧帽弁の形状を既知の領域抽出技術を用いて取得し、当該形状から開口状態と閉口状態とを判定する方法が用いられてもよい。ここで、既知の領域抽出技術としては、例えば、CT値に基づく大津の二値化法、領域拡張法、スネーク法、グラフカット法、ミーンシフト法などがある。
【0052】
また、その他、機械学習技術(深層学習含)を用いて事前に準備された学習用データに基づいて構築される画像の状態(条件)と僧帽弁の状態との関係を示す学習モデルを用いて開口状態と閉口状態とを判定する方法が用いられてもよい。
【0053】
または、僧帽弁の状態に関係する僧帽弁以外の生体器官の形状に基づいて判定処理が実行されてもよい。かかる場合には、例えば、左心室の容積が用いられてもよい。左心室は心臓の動きによってその容積が変化するため、その容積から心位相ひいては僧房弁の動作状態を推定することができる。左心室は僧帽弁よりも大きい構造をもつため画像上の僧帽弁の状態から直接推定するより正確に算出できる可能性がある。
【0054】
上記した判定方法はあくまでも例であり、本実施形態においては処理対象の生体器官の状態がどのような方法によって特定されてもよく。例えば、入力インターフェース32を介してユーザが手動で指定する場合でもよい。
【0055】
(断面の設定処理)
図2のステップS103で説明したように、設定機能354は、状態が判定された複数の医用画像について、複数の生体器官の接触部に関する計測を行うための断面をそれぞれ設定する。例えば、設定機能354は、僧帽弁における開口状態及び閉口状態が判定されたt1~t6の時点における各CT画像について、僧帽弁の接触部に関する計測を行うための断面(ユーザが計測したい2次元断面)を設定する。
【0056】
図4は、第1の実施形態に係る設定機能354による設定処理の一例を説明するための図である。ここで、図4においては、図3に示すt1~t6の時点における各CT画像のうち、t1の時点のCT画像における僧帽弁に対して断面を設定する場合を示す。
【0057】
例えば、設定機能354は、まず、図4の1段目の図に示すように、t1の時点のCT画像において僧帽弁の特徴的な位置である前交連部P1及び後交連部P2を特定する。なお、前交連部P1及び後交連部P2は、前尖11及び後尖12をつなぐ部位である。ここで、設定機能354による特徴的な位置の特定は、入力インターフェース32を介して手動で実施されてもよく、既知の画像処理技術に基づいて実施されてもよい。手動で実施される場合、設定機能354は、入力インターフェース32を介して指定された位置を特徴的な位置(前交連部P1及び後交連部P2)として特定する。
【0058】
また、既知の画像処理技術によって実施される場合、設定機能354は、既知の領域抽出技術により、t1の時点のCT画像における僧帽弁の前交連部P1及び後交連部P2を直接特定する、或いは、前尖11と後尖12の位置を抽出しその境界の位置に基づいて、前交連部P1及び後交連部P2を特定する。
【0059】
また、設定機能354は、機械学習技術(深層学習含)を用いて事前に準備された学習用データに基づいて構築される交連部の位置を示す学習モデルに対して、t1の時点のCT画像を入力させることで、前交連部P1及び後交連部P2の位置を出力させることもできる。なお、上記した例では、特徴的な位置として交連部を特定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、右繊維三角と左繊維三角であってもよい。
【0060】
上記したように、特徴的な位置を特定すると、設定機能354は、次に、特定した位置に基づいて断面を設定する。例えば、設定機能354は、図4の2段目の図に示すように、前交連部P1と後交連部P2とを結ぶ線分L1を設定する。そして、設定機能354は、図4の3段目の図に示すように、線分L1に対して直交する線分L2で示す断面を設定する。
【0061】
ここで、線分L2で示す断面の位置は、種々の手法に基づいて設定される。例えば、設定機能354は、予め設定され、記憶回路34に保存されている断面位置に関する条件、或いは、入力インターフェース32を介してユーザが手動で設定した断面位置に関する条件を取得する。断面位置に関する条件は、例えば、前交連部から後交連部までの距離に基づいて、百分率又は絶対的な距離を示す数値として設定される。或いは、断面位置に関する条件は、例えば、前交連部と後交連部との中点から前交連部又は後交連部までの距離に基づいて百分率又は絶対的な距離を示す数値として設定される。
【0062】
図5A及び図5Bは、第1の実施形態に係る断面位置の設定に関する条件設定の一例を説明するための図である。なお、図5Aは、入力インターフェース32を介してユーザが手動で条件を設定する場合のGUIを示す。例えば、制御機能551は、図5Aに示すように、「前交連部から後交連部方向に」、「中点から後交連部方向に」、「中点から前交連部方向に」とする数値を設定する範囲を指定するためのチェックボックス、及び、絶対的な距離又は百分率の数値を設定するためのテキストボックスを含む断面条件設定GUIをディスプレイ33に表示させる。すなわち、制御機能551は、複数の生体器官(僧帽弁の各弁尖)に設定する断面位置の条件として複数の生体器官(僧帽弁の各弁尖)における特徴点に基づいて設定される距離又は百分率の数値を受け付けるための入力画面を表示させる。
【0063】
ユーザは、図5Aに示すGUIを用いて所望の条件を設定する。例えば、ユーザは、入力インターフェース32を介して、図5Aに示すように、「中点から後交連部方向に」のチェックボックスにチェックを入れ、百分率の数値を設定するためのテキストボックスに「30」を入力する。これにより、前交連部と後交連部とを結ぶ線分L1の「中点から後交連部方向に30%」の位置に断面が設定されることとなる。すなわち、設定機能354は、図5Bに示すように、線分L1の中点から後交連部までの距離D1を「1」として、中点P3から後交連部方向に「30%」の位置に、線分L2で示す断面を設定する。
【0064】
なお、断面条件が予め設定され、記憶回路34に保存される場合、上記した数値を設定する範囲及び数値が予め設定される。設定機能354は、記憶回路34から保存された条件を読み出して適用することで、線分L2で示す断面を設定する。
【0065】
また、図4の4段目の図に示すように、マウスカーソルなどを用いて、線分L2で示す断面を手動で設定させるようにすることもできる。かかる場合には、制御機能351が、断面位置を示す線分L2を表示画面上に(臨床画像と重ねて)表示させる。ユーザは、入力インターフェース32を介して線分L2を所望の位置に移動させる。設定機能354は、移動後の線分L2の位置に断面を設定する。なお、前交連部と後交連部とに基づいてユーザが手動で断面位置を設定できる位置の範囲を制限するように制御してもよい。例えば、断面を示す線分は、交連部を端点とする線分に垂直にしか動かせない、交連部を超えて動かすことはできない等の制限としてもよい。
【0066】
なお、上記した断面の設定はあくまでも一例であり、ユーザが計測値を計測したい断面を設定できればどのような方法が用いられてもよい。また、上記した例では、交連部を端点とする線分を直線で設定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、弁口の形状に合わせた曲線状に設定する場合でもよい。
【0067】
設定機能354は、ステップS102において状態が判定された全ての医用画像について、上記した断面を設定する。図6は、第1の実施形態に係る設定機能354による断面の設定の例を示す図である。例えば、設定機能354は、図6に示すように、t1の時点のCT画像の他、t2~t6の時点のCT画像についても、線分L2で示す断面をそれぞれ設定する。
【0068】
ここで、設定機能354は、t2~t6の時点の各CT画像に対して、t1の時点のCT画像と同様の処理を繰り返し実行する場合でもよいが、t1の時点のCT画像に対する処理結果を用いて、t2~t6の時点の各CT画像に対して断面を設定する場合でもよい。かかる場合には、例えば、設定機能354は、断面を設定したt1の時点のCT画像と、他の時点のCT画像とをそれぞれ位置合わせすることで、t1の時点のCT画像と他のCT画像との対応関係をそれぞれ特定する。
【0069】
そして、設定機能354は、特定した対応関係に基づいて各時点のCT画像に対して断面を設定する。例えば、設定機能354は、t1の時点のCT画像とt2の時点のCT画像との位置合わせの結果に基づく画像間の位置の対応関係を用いて、t2の時点のCT画像に対して断面を設定する。同様に、設定機能354は、t3~t6の時点のCT画像について、t1の時点のCT画像との対応関係をそれぞれ用いて、断面をそれぞれ設定する。
【0070】
なお、位置合わせは、既知の変形位置合わせ技術により実施できる。例えば、既知の変形位置合わせ技術としては、FFD(Free-Form deformation)手法やLDDMM手法(Large deformation diffeomorphic metric mapping)手法などがある。
【0071】
なお、上記した例では、特定の線分(線分L1)に対して垂直な方向に断面を設定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、ユーザにより任意の方向の断面を設定できるようにする場合でもよい。
【0072】
(注目構造の抽出処理)
図2のステップS104で説明したように、抽出機能355は、複数の医用画像の夫々について、注目構造を抽出する。具体的には、抽出機能355は、複数の時点のうち第1の時点と当該第1の時点とは異なる第2の時点とで撮像された医用画像から複数の生体器官の構造を取得する。より具体的には、抽出機能355は、複数の生体器官が第1の状態となる第1の時点と、複数の生体器官が第1の状態とは異なる第2の状態となる第2の時点とで撮像された医用画像から、第1の状態及び第2の状態における複数の生体器官の構造をそれぞれ取得する。例えば、抽出機能355は、閉口状態の僧帽弁を撮像した医用画像と、開口状態の僧帽弁を撮像した医用画像とから、僧帽弁の構造をそれぞれ抽出する。
【0073】
ここで、抽出機能355は、第1の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる複数の生体器官の構造をそれぞれ取得し、第2の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる複数の生体器官の構造をそれぞれ取得する。例えば、抽出機能355は、心臓弁が閉口した状態である第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得し、心臓弁が開口した状態である第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得する。一例を挙げると、抽出機能355は、t1~t6の時点の各CT画像に対して設定された断面における僧帽弁の前尖と後尖の両方をそれぞれ抽出する。なお、注目構造は、ステップS102に記載した既知の領域抽出技術(CT値に基づく大津の二値化法、領域拡張法、スネーク法、グラフカット法、ミーンシフト法)を用いて抽出してもよいし、機械学習技術(深層学習含)を用いて事前に準備された学習用データに基づいて構築される注目構造の学習モデルを用いて抽出してもよい。
【0074】
(接触部の長さの算出処理)
図2のステップS105で説明したように、算出機能356は、抽出機能355によって抽出された第2の時点における複数の生体器官の構造(第2の時点における注目構造)と第1の時点における複数の生体器官の構造(第1の時点における注目構造)とに基づいて、第1の時点における複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する。具体的には、算出機能356は、第2の状態における複数の生体器官の構造(第2の状態の注目構造)と第1の状態における複数の生体器官の構造(第1の状態の注目構造)とに基づいて、第1の状態における複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する。
【0075】
例えば、算出機能356は、開口状態の心臓弁の構造と閉口状態の心臓弁の構造とに基づいて、閉口状態の心臓弁における弁葉の接触部に関する計測値を算出する。一例を挙げると、算出機能356は、開口状態の僧帽弁の前尖及び後尖の構造と、閉口状態の僧帽弁の前尖及び後尖の構造とに基づいて、閉口状態における前尖と後尖との接触部に関する計測値を算出する。すなわち、算出機能356は、閉口状態(第1の状態)における弁葉の構造に関する長さと、開口状態(第2の状態)における弁葉の構造に関する長さとに基づいて、閉口状態(第1の状態)における心臓弁の接触部に関する計測値を算出する。
【0076】
ここで、算出機能356は、第1の状態において撮像された複数の医用画像からそれぞれ抽出された複数の生体器官の構造(第1の状態の各医用画像から抽出された注目構造)の中から、構造の特徴に基づいて第1の構造を選択し、第2の状態において撮像された複数の医用画像から抽出された複数の生体器官の構造(第2の状態の各医用画像から抽出された注目構造)の中から、構造の特徴に基づいて第2の構造を選択し、第1の構造と第2の構造に基づいて、第1の状態における複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する。
【0077】
例えば、算出機能356は、閉口状態(第1の状態)における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、開口状態(第2の状態)における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の長さとに基づいて、心臓弁の接触部の長さを算出する。一例を挙げると、算出機能356は、閉口状態(第1の状態)における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における接触開始点から弁輪までの最短の長さと、開口状態(第2の状態)における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、心臓弁の接触部の長さを算出する。
【0078】
例えば、算出機能356は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、弁葉の接触開始点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、弁輪から弁の先端までの長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、心臓弁の各弁葉について、第1の構造と第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分のうち最短値を心臓弁の接触部の長さとして測定する。
【0079】
一例を挙げると、算出機能356は、心臓弁の閉口状態を上記第1の状態とし、心臓弁の開口状態を上記第2の状態として、以下の処理を実行する。例えば、算出機能356は、僧帽弁の前尖と後尖のそれぞれについて、閉口状態の僧帽弁において接触部の開始点から弁輪までの長さが最短となる構造を、閉口状態の僧帽弁を撮像したt2~t5の時点のCT画像から選択する。また、算出機能356は、開口状態の僧帽弁の前尖及び後尖について、弁輪から弁の先端までの長さが最長となる構造を、開口状態の僧帽弁を撮像したt1及びt6の時点のCT画像からそれぞれ選択する。そして、算出機能356は、開口状態における前尖及び後尖の弁輪から弁の先端までの長さの最長値と閉口状態における前尖及び後尖の接触開始点から弁輪までの長さの最短値との差分値を前尖及び後尖についてそれぞれ算出して、短い方の差分値を接触部の長さとして算出する。
【0080】
図7は、第1の実施形態に係る算出機能356による算出処理を説明するための図である。ここで、図7においては、設定機能354によって設定された断面(僧帽弁に設定された線分L2で示す断面)を示す。例えば、僧帽弁の開口状態のCT画像(t1及びt6の時点のCT画像)及び閉口状態のCT画像(t2~t5の時点のCT画像)のそれぞれについて設定機能354によって設定された断面を対象として、抽出機能355は、図7に示す前尖11及び後尖12をそれぞれ抽出する。
【0081】
算出機能356は、抽出機能355によって抽出された僧帽弁の前尖11及び後尖12について、僧帽弁の状態ごとに図7に示す各長さを算出する。例えば、算出機能356は、t1及びt6の時点のそれぞれの僧帽弁の前尖11及び後尖12について、開口状態の前尖11の弁輪から前尖11の先端までの長さ「D2」と後尖12の弁輪から後尖12の先端までの長さ「D3」とをそれぞれ算出する。なお、開口状態の前尖11の弁輪から前尖11の先端までの長さ「D2」及び後尖12の弁輪から後尖12の先端までの長さ「D3」は、各弁尖の形状に沿った曲線の長さである。
【0082】
また、例えば、算出機能356は、t2~t5の時点のそれぞれの僧帽弁の前尖11及び後尖12について、閉口状態における前尖11と後尖12との接触部の開始点から前尖11の弁輪までの長さ「D4」と、当該接触部の開始点から後尖12の弁輪までの長さ「D5」とをそれぞれ算出する。なお、接触部の開始点は、弁輪から各弁尖の先端に向かって接触し始めの位置である。また、上記した長さ「D4」及び長さ「D5」は、各弁尖の形状に沿った曲線の長さである。
【0083】
上述したように、各状態の各時点における弁尖の長さを算出すると、算出機能356は、任意の条件に基づいて各状態における代表値を選択する。例えば、算出機能356は、開口状態の僧帽弁の各弁尖の長さについて、代表値をそれぞれ決定する。ここで、開口状態における代表値を選択するための条件としては、例えば、「最大値を代表値として採用する」という条件である。
【0084】
基本的に、前尖や後尖の弁輪から前尖や後尖の先端までの長さは短期間(例えば、心位相における1周期)では変化しない。しかしながら、開口状態の弁の先端はよく動くためX線CT装置の時間分解能では先端部をうまく描出できず、各時点における前尖や後尖の弁輪から前尖や後尖の先端までの長さとして異なる値が算出される場合がある。従って、複数のCT画像における計測値の中で最も長い値を代表値として採用することで、より正確な前尖及び後尖の弁輪から前尖や後尖の先端までの長さを算出できる可能性がある。
【0085】
そこで、算出機能356は、例えば、上記した条件に基づいて、開口状態の各時点(t1及びt6)における長さ「D2」を比較して、最大値を選択する。すなわち、算出機能356は、t1における長さ「D2」とt6における長さ「D2」とを比較して、最大値を開口状態における前尖11の弁輪から前尖11の先端までの代表値として選択する。同様に、算出機能356は、t1における長さ「D3」とt6おける長さ「D3」とを比較して、最大値を開口状態における後尖12の弁輪から後尖12の先端までの代表値として選択する。
【0086】
なお、開口状態における代表値を決定するための条件は、上記した例(最大値)に限られず、例えば、「平均値を代表値として採用する」としてもよい。同様に、開口状態の弁の先端はよく動くため、特に僧帽弁閉鎖不全の患者では、各時点における前尖や後尖の弁輪から前尖や後尖の先端までの長さが異なる値で算出される場合がある。従って、複数の画像の計測値の平均値を代表値として採用することでより正確な前尖及び後尖の弁輪から前尖や後尖の先端までの長さを算出できる可能性がある。
【0087】
また、例えば、算出機能356は、閉口状態の僧帽弁の接触部の開始点から前尖の弁輪までの長さと後尖の弁輪までの長さとについて、代表値をそれぞれ決定する。ここで、閉口状態における代表値を選択するための条件としては、例えば、「最小値を代表値として採用する」という条件である。
【0088】
上記したように、基本的に、前尖や後尖の長さは短期間では変化しないため、前尖及び後尖の弁輪部から接触部の開始点までの長さが最小の時には、接触部の開始点から各弁尖の先端までの長さが最大となると想定され、接触部の長さがより長い状態となっている可能性が高い。
【0089】
そこで、算出機能356は、例えば、上記した条件に基づいて、閉口状態の各時点(t2~t5)における長さ「D4」を比較して、最小値を選択する。すなわち、算出機能356は、t2における長さ「D4」と、t3における長さ「D4」と、t4における長さ「D4」と、t5における長さ「D4」とを比較して、最小値を閉口状態における前尖11の弁輪部から接触部の開始点までの長さの代表値として選択する。同様に、算出機能356は、t2における長さ「D5」と、t3における長さ「D5」と、t4における長さ「D5」と、t5における長さ「D5」とを比較して、最小値を閉口状態における後尖12の弁輪部から接触部の開始点までの長さの代表値として選択する。
【0090】
なお、閉口状態における代表値を決定するための条件は、上記した例(最小値)に限られず、例えば、「平均値を代表値として採用する」という条件としてもよい。上記したように、前尖及び後尖の弁輪部から接触部の開始点までの長さが最小の時には、接触部の長さがより長い状態となっている可能性が高いが、必ずしもそのような状態となっているとは限らない。また、上記したように、長さ「D4」の最小値及び長さ「D5」の最小値を夫々独立して選択した場合、接触部の位置が夫々の弁尖側にずれることで「D4+D5」が僧帽弁の直径に達しない長さになる可能性も考えられる。
【0091】
そこで、算出機能356は、例えば、「平均値を代表値として採用する」という条件に基づいて、閉口状態の各時点(t2~t5)における長さ「D4」の平均値を算出する。すなわち、算出機能356は、t2における長さ「D4」とt3における長さ「D4」とt4における長さ「D4」とt5における長さ「D4」との平均値を算出して、平均値を閉口状態における前尖11の弁輪部から接触部の開始点までの長さの代表値として選択する。同様に、算出機能356は、t2における長さ「D5」とt3における長さ「D5」とt4における長さ「D5」とt5における長さ「D5」との平均値を算出して、平均値を閉口状態における後尖12の弁輪部から接触部の開始点までの長さの代表値として選択する。
【0092】
また、上記した例では、前尖11及び後尖12の夫々について条件に基づく代表値を選択する場合について説明した。しかしながら、算出機能356は、前尖11又は後尖12のいずれか一方の弁尖について条件に基づく代表値を選択し、当該代表値に対応する医用画像から他方の弁尖の代表値を取得することもできる。
【0093】
具体的には、算出機能356は、閉口状態(第1の状態)における心臓弁の各弁葉のうち第1の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを複数の医用画像のうちの第1の医用画像から選択し、第1の弁葉とは異なる第2の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを第1の医用画像から取得する。一例を挙げると、算出機能356は、閉口状態の各時点(t2~t5)における長さ「D4」を比較して、最小値を選択する。ここで、仮にt3における長さ「D4」が最小であり、前尖11の弁輪部から接触部の開始点までの長さの代表値として選択すると、算出機能356は、t3における長さ「D5」を後尖12の弁輪部から接触部の開始点までの長さの代表値として選択する。
【0094】
また、上記した開口状態及び閉口状態における代表値の算出にあたり統計学的な手法(例えば、スミノルフグラブス検定)を用いて外れ値を同定し、当該外れ値は代表値(例えば、最大値、最小値又は平均値)として特定しないように制御してもよい。
【0095】
上記したように、算出機能356は、任意の条件に基づいて各状態における代表値を決定する。ここで、上記した条件は、予め設定しておいてもよく、或いは、入力インターフェース32を介してユーザによって設定されてもよい。図8は、第1の実施形態に係る代表値の決定に関する条件設定の一例を説明するための図である。なお、図8は、入力インターフェース32を介してユーザが手動で条件を設定する場合のGUIを示す。
【0096】
例えば、制御機能551は、図8に示すように、「開口状態 代表値条件設定」を行うためのチェックボックス「最大」、「最小」及び「平均」と、「閉口状態 代表値条件設定」を行うためのチェックボックス「最大」、「最小」及び「平均」とを含むGUIをディスプレイ33に表示させる。ここで、制御機能551は、図8に示すように、外れ値を除外させるか否かを設定するためのチェックボックスをさらに含めたGUIを表示させることができる。すなわち、制御機能551は、閉口状態(第1の状態)において撮像される複数の医用画像からそれぞれ抽出される複数の生体器官の構造(僧帽弁の各弁尖の構造)の代表値と、開口状態(第2の状態)において撮像される複数の医用画像からそれぞれ抽出される複数の生体器官の構造(僧帽弁の各弁尖の構造)の代表値とを選択するための入力画面を表示させる。
【0097】
ユーザは、図8に示すGUIを用いて所望の条件を設定する。例えば、ユーザは、入力インターフェース32を介して、図8に示すように、「外れ値を除外」のチェックボックスにチェックを入れ、「開口状態 代表値条件設定」の「最大」のチェックボックスにチェックを入れ、「閉口状態 代表値条件設定」の「最小」のチェックボックスにチェックを入れる。これにより、外れ値を除外しつつ、開口状態の代表値として最大値が選択され、閉口状態の代表値として最小値が選択される条件が設定される。
【0098】
なお、代表値の条件が予め設定され、記憶回路34に保存される場合、算出機能356は、記憶回路34から保存された条件を読み出して適用することで、開口状態及び閉口状態における代表値を決定する。
【0099】
また、開口状態又は閉口状態に属する画像が1つだけの場合は、上記した比較の処理をスキップして、当該画像における計測値を採用してもよい。
【0100】
上記したように、各状態について代表値を決定すると、算出機能356は、開口状態の代表値と閉口状態の代表値とから前尖と後尖の接触部の長さを算出する。例えば、算出機能356は、前尖11と後尖12との夫々において、開口状態の代表値と閉口状態の代表値との差の値を算出する。すなわち、算出機能356は、前尖11と後尖12の夫々において、接触部の開始点から弁の先端までの長さを算出することができる。
【0101】
図9は、第1の実施形態に係る算出機能356による算出処理を説明するための図である。ここで、図9においては、設定機能354によって設定された断面(僧帽弁に設定された線分L2で示す断面)を示す。例えば、算出機能356は、開口状態の長さ「D2」の代表値から閉口状態の長さ「D4」の代表値を差分することで、図9に示す「前尖11における接触部の開始点P4から先端までの長さ:D6」を算出する。同様に、算出機能356は、開口状態の長さ「D3」の代表値から閉口状態の長さ「D5」の代表値を差分することで、図9に示す「後尖12における接触部の開始点P4から先端までの長さ:D7」を算出する。
【0102】
そして、算出機能356は、前尖11における接触部の開始点P4から先端までの長さ「D6」と後尖12における接触部の開始点P4から先端までの長さ「D7」とを比較して、短い方の長さ「D7」を前尖11と後尖12の接触部の長さ(Coaptation Height)として算出する。このように、算出機能356は、各弁尖の長さと、各弁尖における弁輪から接触部の開始点までの長さとを用いることで、前尖11と後尖12の接触部の長さを算出することができる。
【0103】
(計測値の表示処理)
図2のステップS106で説明したように、算出機能356によって計測値が算出されると、制御機能351は、計測値をディスプレイ33に表示するように制御する。例えば、制御機能351は、算出機能356によって算出された接触部の長さを、臨床画像に重畳させて表示させたり、臨床画像とは異なる領域に表示させたり、僧帽弁の断面を示す模式図と合わせて表示させたりする。
【0104】
(変形例1)
上述した実施形態では、設定機能354が接触部の長さの計測対象として単一の断面を設定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の断面が設定され、各断面における接触部の長さがそれぞれ算出される場合でもよい。かかる場合には、設定機能354は、複数の生体器官の特徴点(例えば、僧帽弁の交連部)の特定と、特定した特徴点に基づく断面の設定とを繰り返し実行することで、複数の断面を設定してもよい。
【0105】
或いは、設定機能354は、複数の生体器官の特徴点(例えば、僧帽弁の交連部)を端点とする線分(例えば、線分L1)に垂直な断面を当該線分の端点から端点までを任意の間隔で複数設定してもよい。なお、当該任意の間隔は、予め設定されていてもよく、図示しないGUIを用いてユーザによって設定さされてもよい。また、任意の間隔は、等間隔でもよいし不等間隔でもよい。
【0106】
図10Aは、変形例1に係る設定機能354による設定処理の一例を示す図である。例えば、設定機能354は、図10Aに示すように、僧帽弁の交連部に基づいて設定した線分L1に対して直交する線分L2-1~L2-5を設定する。線分L2-1~L2-5によって示される各断面における接触部の長さは、上記したステップS104~ステップS106が繰り返し実行されることで算出される。
【0107】
上記したように、複数の断面において接触部の長さが算出されると、制御機能351は、算出された接触部の長さを種々の方法によって表示させる。図10Bは、変形例1に係る制御機能351による表示処理の一例を示す図である。例えば、制御機能351は、図10Bに示すように、複数の断面(L2-1~L2-5)の長さを並べた表示情報を表示することができる。
【0108】
一例を挙げると、制御機能351は、図10Bに示すように、断面位置ごとに、開口状態及び閉口状態における前尖の代表値と、開口状態及び閉口状態における後尖の代表値と、接触部の長さとを示した表示情報を表示させることができる。また、制御機能351は、図10Bに示すように、各代表値の平均値や、合計値を含む表示情報を表示させることができる。なお、複数の断面における接触部の長さの情報の記述統計(平均値、最大値、最小値、分散等)又は推測統計(信頼区間等)の情報を表示するようにしてもよい。また、制御機能351は、図10Bに示した種々の長さの情報を模式図や臨床情報と並べて又は重ねて表示させることもできる。
【0109】
また、例えば、制御機能351は、断面位置に関する情報(例えば、交連部からの距離)と接触部の長さとの関係を表すグラフを表示させることができる。図11は、変形例1に係る制御機能351による表示処理の一例を示す図である。例えば、制御機能351は、図11に示すように、僧帽弁の前交連部から距離ごとの接触部の長さを示す曲線L3を表示させる。かかる場合には、まず、設定機能354が、前交連部から後交連部を結ぶ線分L1上に複数の断面を設定し、算出機能356が、各断面における接触部の長さをそれぞれ算出する。そして、制御機能351が、算出機能356によって算出された断面位置ごとの接触部の長さに基づいて曲線L3を示すグラフを生成して表示させる。
【0110】
また、制御機能351は、上記したグラフの他、複数の断面の位置ごとの計測値に基づく情報を医用画像上で示した表示画像を表示させることができる。図12は、変形例1に係る制御機能351による表示処理の一例を示す図である。例えば、制御機能351は、図12に示すように、僧帽弁の医用画像上に、接触部の長さに応じて割り当てられた色情報を、接触部の位置と当該位置における接触部の長さと対応付けて重畳させた表示画像を表示させる。これにより、接触部の位置と当該位置における接触部の長さとの対応関係を一目で把握させることを可能にする。
【0111】
また、制御機能351は、夫々の断面における接触部の長さ等の計測値において、予め設定する範囲の値(異常な値や特徴的な値、又は心臓弁の治療用クリップの適用範囲内の値等)を強調して表示するように制御することもできる。例えば、制御機能351は、複数の断面の位置ごとの計測値を示すグラフ上に計測値を判定するための閾値を示した表示情報を表示させる。図13は、変形例1に係る制御機能351による表示処理の一例を示す図である。例えば、制御機能351は、図13に示すように、グラフ上に異常な値や特徴的な値を判別するための接触部の長さの閾値を示す直線L4を表示させる。これにより、ユーザは、例えば、心臓弁の治療用クリップを留置できない僧帽弁上の位置(図中、接触部の長さが直線L4を下回っている部分)について容易に認識することができる。
【0112】
例えば、僧帽弁を対象とした治療用クリップの留置は、僧帽弁が閉まりきらずに左心房に血液が逆流する僧帽弁閉鎖不全の患者を対象として実施され、僧帽弁の前尖と後尖を治療用クリップで挟むことで、血液の逆流を減少させる。ここで、治療用クリップの留置に係る手技では、血液の逆流の状況に応じて、仮留置した治療用クリップの位置の修正や、追加の治療用クリップの留置が実施される場合がある。医用情報処理装置3は、このような治療用クリップの留置において、弁尖における治療用クリップの適用範囲を提示することで、治療用クリップの留置可能な位置を把握させ、適切な位置への治療用クリップの留置を支援することができる。
【0113】
(変形例2)
上記した例では、ステップS102~ステップS106において、取得した全ての画像に対して処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、予め定める基準を満たさない画像に対して処理を実施しないように制御してもよい。すなわち、判定機能353、設定機能354、抽出機能355、及び、算出機能356のうち少なくとも1つが、医用画像の画質を判定し、画質が所定の状態を超えた医用画像を対象として処理を行う。例えば、判定機能353が、ステップS102において、各画像の画質を判定する処理を実行し、画質が一定以下の画像が存在した場合は、当該画質の悪い画像を後段の処理で活用しないように制御する。なお、ユーザがアーチファクトの多い画像を指定した場合に、その画像に対する処理を実施しないように制御してもよく、或いは、後からその画像に対する計測値は使用しないように制御してもよい。
【0114】
(変形例3)
上記した例では、ステップS103において、計測値を算出する断面位置として、予め定めた条件又はユーザの指定した断面を使用するように制御する場合を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、他のモダリティから得られる注目臓器の情報を用いて断面を設定できるようにしてもよい。
【0115】
一例を挙げると、設定機能354は、同一患者を撮像した超音波画像によって僧帽弁の閉鎖不全となっている位置(逆流がある位置)を特定し、当該位置に対応する断面を、計測値を算出する断面として設定する。かかる場合には、設定機能354は、超音波画像における特徴的な位置(例えば、僧帽弁又は交連部など)を抽出し、CT画像における対応する特徴的な位置と位置合わせすることにより、CT画像における僧帽弁の閉鎖不全となっている位置を特定する。なお、位置合わせは既知の変形位置合わせ技術を用いることで実施することができる。
【0116】
(変形例4)
上記した例では、ステップS103で設定した断面上における注目構造(僧帽弁の前尖及び後尖)を抽出し計測値を算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ステップS101の後からステップS103の前までの間の時点において、先に画像上における注目構造(僧帽弁の前尖及び後尖)を画像全体で抽出してもよい。このように、予め画像全体で注目構造を抽出した後にステップS103の断面の設定を行うことにより、複数の断面を設定して接触部に関する計測値を算出する場合でも、注目構造の抽出処理は最初の1度で済むこととなる。
【0117】
(変形例5)
上記した例では、ステップS104において、閉口状態での前尖及び後尖の弁輪部から接触部の開始点までの長さを算出することで、接触部の長さを算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、接触部に関する計測値として接触部の長さ以外の値を算出する場合でもよい。一例を挙げると、心臓弁の治療用クリップにより挟むことが可能な長さを算出したい場合、閉口状態での長さとして、前尖及び後尖の弁輪部から曲率が最大となる位置までの長さが用いられる場合でもよい。
【0118】
かかる場合には、算出機能356は、閉口状態(第1の状態)における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さと、開口状態(第2の状態)における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、心臓弁の接触部に関する長さを算出する。例えば、算出機能356は、閉口状態(第1の状態)における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における曲率が最大となる点から弁輪までの最短の長さと、開口状態(第2の状態)における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、心臓弁に対する手技可能な長さを算出する。
【0119】
一例を挙げると、算出機能356は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、心臓弁の各弁葉について、第1の構造と、第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分うち最短値を心臓弁に対する手技可能な長さとして測定する。
【0120】
図14は、変形例5に係る算出機能356による算出処理の一例を説明するための図である。ここで、図14においては、設定機能354によって設定された断面(僧帽弁に設定された線分L2で示す断面)を示す。例えば、算出機能356は、閉口状態の前尖11について、弁輪から曲率が最大となる位置P5までの長さを算出する。同様に、算出機能356は、閉口状態の後尖12について、弁輪から曲率が最大となる位置P6までの長さを算出する。そして、算出機能356は、閉口状態の前尖11における代表値及び閉口状態の後尖12における代表値をそれぞれ決定する。
【0121】
その後、算出機能356は、開口状態の前尖11における長さ「D2」の代表値から閉口状態の前尖11における代表値を差分することで、図14に示す「前尖11における曲率が最大となる位置P5から先端までの長さ」を算出する。同様に、算出機能356は、開口状態の後尖12における長さ「D3」の代表値から閉口状態の後尖12における代表値を差分することで、図14に示す「後尖12における曲率が最大となる位置P6から先端までの長さ」を算出する。
【0122】
そして、算出機能356は、「前尖11における曲率が最大となる位置P5から先端までの長さ」と「後尖12における曲率が最大となる位置P6から先端までの長さ」とを比較して、短い方の長さを心臓弁の治療用クリップにより挟むことができる長さとして算出する。すなわち、算出機能356は、図14における長さ「D8」を心臓弁の治療用クリップにより挟むことができる長さとして算出する。
【0123】
なお、本実施形態では、複数の構造は必ず接触することを前提として説明した。しかしながら、僧帽弁閉鎖不全の患者等の場合は複数の構造(前尖及び後尖)は接触しない場合がある。この場合においても、閉口状態での計測値は前尖及び後尖の弁輪部から曲率が最大となる位置までの長さとすることで、心臓弁の治療用クリップにより挟むことができる長さを算出することができる。ここで、曲率に基づいて挟むことができる長さを算出する上記した方法はあくまでも一例であって、複数の構造の幾何学的情報から予想される当該複数の構造の接触可能な範囲(距離)を推定できれば、どのような方法であってもよい。
【0124】
上述したように、第1の実施形態によれば、画像取得機能352は、複数の時点で撮像された医用画像を取得する。抽出機能355は、複数の時点のうち第1の時点と当該第1の時点とは異なる第2の時点とで撮像された医用画像から複数の生体器官の構造を取得する。算出機能356は、抽出機能355によって取得された第2の時点における複数の生体器官の構造と第1の時点における複数の生体器官の構造とに基づいて、第1の時点における複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、複数の時点における複数の生体器官の構造に基づいて接触部に関する計測値を算出することができ、接触部に関連する計測を正確に行うことを可能にする。
【0125】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、複数の生体器官が第1の状態となる第1の時点と、複数の生体器官が第1の状態とは異なる第2の状態となる第2の時点とで撮像された医用画像から、第1の状態及び第2の状態における複数の生体器官の構造をそれぞれ取得する。算出機能356は、第2の状態における複数の生体器官の構造と第1の状態における複数の生体器官の構造とに基づいて、第1の状態における複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、複数の生体器官において異なる状態となっている時点の構造に基づいて接触部に関する計測値を算出することができ、接触部に関連する計測をより正確に行うことを可能にする。
【0126】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、第1の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる複数の生体器官の構造をそれぞれ取得し、第2の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる複数の生体器官の構造をそれぞれ取得する。算出機能356は、第1の状態において撮像された複数の医用画像からそれぞれ抽出された複数の生体器官の構造の中から、構造の特徴に基づいて第1の構造を選択し、第2の状態において撮像された複数の医用画像から抽出された複数の生体器官の構造の中から、構造の特徴に基づいて第2の構造を選択し、第1の構造と第2の構造に基づいて、第1の状態における複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、各状態において撮像された複数の医用画像から代表値をそれぞれ決定することができ、接触部に関連する計測をより正確に行うことを可能にする。
【0127】
また、第1の実施形態によれば、複数の生体器官は、心臓弁における各弁葉であり、抽出機能355は、心臓弁が閉口した状態である第1の状態における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得し、心臓弁が開口した状態である第2の状態における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得する。算出機能356は、第1の状態における弁葉の構造に関する長さと、第2の状態における弁葉の構造に関する長さとに基づいて、第1の状態における心臓弁の接触部に関する計測値を算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、状態が異なる弁葉の構造に関する長さから心臓弁の接触部に関する計測値を算出することを可能にする。
【0128】
また、第1の実施形態によれば、算出機能356は、第1の状態における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、第2の状態における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、心臓弁の接触部の長さを算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、医用画像において描出されやすく、計測しやすい値を用いて心臓弁の接触部の長さを算出することができ、接触部の計測をより正確に行うことを可能にする。
【0129】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得し、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得する。算出機能356は、第1の状態における心臓弁の各弁葉のうち第1の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを複数の医用画像のうちの第1の医用画像から選択し、第1の弁葉とは異なる第2の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを第1の医用画像から取得し、第1の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、第2の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、第2の状態における複数の医用画像から選択した第1の弁葉の弁輪から弁の先端までの長さ及び第2の弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、心臓弁の接触部の長さを算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、心臓弁の閉口状態に沿った代表値の選択を行うことを可能にする。
【0130】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得し、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得する。算出機能356は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における接触開始点から弁輪までの最短の長さと、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、心臓弁の接触部の長さを算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、実際の値により近似した値を用いて、心臓弁の接触部の長さを算出することを可能にする。
【0131】
また、第1の実施形態によれば、算出機能356は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、弁葉の接触開始点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、心臓弁の各弁葉について、第1の構造と第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分のうち最短値を心臓弁の接触部の長さとして測定する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、心臓弁の接触部の長さをより正確に計測することを可能にする。
【0132】
また、第1の実施形態によれば、算出機能356は、第1の状態における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さと、第2の状態における医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、心臓弁の接触部に関する長さを算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、医用画像において描出されやすく、計測しやすい値を用いて心臓弁の接触部に関する長さを算出することができ、接触部に関する計測をより正確に行うことを可能にする。
【0133】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得し、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉の構造を取得する。算出機能356は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における曲率が最大となる点から弁輪までの最短の長さと、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、心臓弁に対する手技可能な長さを算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、実際の値により近似した値を用いて、心心臓弁に対する手技可能な長さを算出することを可能にする。
【0134】
また、第1の実施形態によれば、算出機能356は、第1の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、第2の状態における複数の医用画像に含まれる心臓弁の各弁葉について、長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、心臓弁の各弁葉について、第1の構造と、第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分うち最短値を心臓弁に対する手技可能な長さとして測定する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、心臓弁に対する手技に関する計測値をより正確に計測することを可能にする。
【0135】
また、第1の実施形態によれば、算出機能356は、第2の時点における複数の生体器官に対して設定された断面に含まれる複数の生体器官の構造と、第1の時点における複数の生体器官に対して設定された断面に含まれる複数の生体器官の構造とに基づいて、第1の時点の断面の位置における接触部に関する計測値を算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、生体器官の構造に関する計測を容易にすることを可能にする。
【0136】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、計測値をディスプレイ33にて表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、計測値をユーザに提供することを可能にする。
【0137】
また、第1の実施形態によれば、算出機能356は、複数の生体器官に対して設定された複数の断面について、複数の生体器官の接触部に関する計測値をそれぞれ算出する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、生体器官の接触部全体にわたって計測値を算出することを可能にする。
【0138】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、複数の断面の位置で計測された各計測値に基づく表示情報をディスプレイ33に表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、生体器官の接触部全体にわたる計測値をユーザに提供することを可能にする。
【0139】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、複数の断面の位置ごとの計測値を示すグラフ上に計測値を判定するための閾値を示した表示情報を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、計測値に関する種々の参照情報をユーザに提供することを可能にする。
【0140】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、複数の生体器官に設定する断面位置の条件として複数の生体器官における特徴点に基づいて設定される距離又は百分率の数値について入力を受け付けるための入力画面を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、断面の設定を容易にすることを可能にする。
【0141】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、第1の状態において撮像される複数の医用画像からそれぞれ抽出される複数の生体器官の構造の代表値と、第2の状態において撮像される複数の医用画像からそれぞれ抽出される複数の生体器官の構造の代表値とを選択するための入力画面を表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、所望の代表値を容易に設定することを可能にする。
【0142】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、各計測値に基づく統計情報、複数の断面の位置ごとの計測値を示すグラフ、及び、複数の断面の位置ごとの計測値に基づく情報を医用画像上で示した表示画像のうち、少なくとも1つを表示させる。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、生体器官の接触部全体にわたる計測値の情報を種々の形態で提供することを可能にする。
【0143】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、医用画像の画質が所定の状態を超えた医用画像を対象として、複数の生体器官の構造を取得する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、信頼度の高い対象のみを算出対象とすることを可能にする。
【0144】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、医用画像とは異なる種別であり、かつ、複数の生体器官を含む医用画像に基づいて決定された断面の位置における、複数の生体器官の構造を取得する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、ユーザが所望する情報を容易に提供することを可能にする。
【0145】
また、第1の実施形態によれば、抽出機能355は、複数の生体器官に構造を2次元又は3次元で取得する。したがって、第1の実施形態に係る医用情報処理装置3は、状況に応じて処理負荷を低減することを可能にする。
【0146】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、各状態でそれぞれ取得した複数の医用画像のそれぞれから注目構造(例えば、僧帽弁の前尖及び後尖)を抽出し、その中から状態毎に代表値を選択する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、状態ごとに複数の医用画像の中から1つの医用画像をそれぞれ選択し、選択した医用画像を対象にして、長さを算出する場合でもよい。
【0147】
例えば、図3に示すt1~t6の医用画像が取得された場合、判定機能353は、まず、各医用画像の状態として、t1及びt6の医用画像を開口状態と判定し、t2~t5の医用画像を閉口状態と判定する。その後、判定機能353は、任意に設定された条件に基づいて、各状態について1つの医用画像を選択する。すなわち、判定機能353は、条件に基づいて、開口状態の医用画像としてt1又はt6のいずれかを選択する。また、判定機能353は、条件に基づいて、閉口状態の医用画像としてt2~t5のいずれかを選択する。
【0148】
ここで、医用画像を選択する選択条件としては、例えば、各医用画像の画質や、各医用画像が撮像された際の心位相、ユーザによる指定操作などが挙げられる。
【0149】
上記したように、判定機能353によって状態ごとの医用画像がそれぞれ選択されると、設定機能354が選択された2つの医用画像に断面を夫々設定する。そして、抽出機能355が注目構造を抽出して、算出機能356が注目構造における計測値を算出する。
【0150】
なお、上述した実施形態では、接触部に関する計測の対象として、僧帽弁を一例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限られない。すなわち、複数の生体器官からなる構造と複数の状態とを有し、当該複数の生体器官からなる構造が接触する部位であればよく、例えば、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁などの心臓弁を対象とする場合でもよい。また、例えば、咽頭や瞼、口などを対象とする場合でもよい。
【0151】
また、上述した実施形態では、接触部に関する計測値の情報を医用情報処理装置3のディスプレイ144に表示させる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、接触部に関する計測値の情報をネットワークに接続された他の装置のディスプレイに表示させる場合でもよい。
【0152】
また、上述した実施形態では、各処理を医用情報処理装置3が実行する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、サーバークライアント型のコンピュータ構成をとることにより、一部の計算をサーバ側で実施してもよい。
【0153】
なお、上述した実施形態では、本明細書における画像取得部、構造取得部、算出部、及び、表示制御部を、それぞれ、処理回路の画像取得機能、抽出機能、算出機能、及び、制御機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における画像取得部、構造取得部、算出部、及び、表示制御部は、実施形態で述べた画像取得機能、抽出機能、算出機能、及び、制御機能によって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0154】
また、上述した実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0155】
ここで、プロセッサによって実行される医用情報処理プログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、この医用情報処理プログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、この医用情報処理プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、この医用情報処理プログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体から医用情報処理プログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0156】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0157】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0158】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、接触部に関連する計測を正確に行うことができる。
【0159】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0160】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0161】
(付記1)
複数の時点で撮像された医用画像を取得する画像取得部と、
前記複数の時点のうち第1の時点と当該第1の時点とは異なる第2の時点とで撮像された医用画像から複数の生体器官の構造を取得する構造取得部と、
前記構造取得部によって取得された前記第2の時点における複数の生体器官の構造と前記第1の時点における複数の生体器官の構造とに基づいて、前記第1の時点における前記複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する算出部と、
を有する医用情報処理装置。
(付記2)
前記構造取得部は、前記複数の生体器官が第1の状態となる前記第1の時点と、前記複数の生体器官が前記第1の状態とは異なる第2の状態となる前記第2の時点とで撮像された医用画像から、前記第1の状態及び前記第2の状態における前記複数の生体器官の構造をそれぞれ取得し、
前記算出部は、前記第2の状態における前記複数の生体器官の構造と前記第1の状態における前記複数の生体器官の構造とに基づいて、前記第1の状態における前記複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出してもよい。
(付記3)
前記構造取得部は、前記第1の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる前記複数の生体器官の中から、構造の特徴に基づいて、前記複数の生体器官をそれぞれ1つ抽出し、かつ、前記第2の状態において撮像された複数の医用画像のそれぞれに含まれる前記複数の生体器官の中から、構造の特徴に基づいて、前記複数の生体器官をそれぞれ1つ抽出し、
前記算出部は、前記第1の状態において撮像された前記複数の医用画像から抽出された前記複数の生体器官の構造と、前記第2の状態において撮像された前記複数の医用画像から抽出された前記複数の生体器官の構造とに基づいて、前記第1の状態における前記複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出してもよい。
(付記4)
前記複数の生体器官は、心臓弁における各弁葉であり、
前記構造取得部は、前記心臓弁が閉口した状態である前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記心臓弁が開口した状態である前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における弁葉の構造に関する長さと、前記第2の状態における弁葉の構造に関する長さとに基づいて、前記第1の状態における前記心臓弁の接触部に関する計測値を算出してもよい。
(付記5)
前記算出部は、前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部の長さを算出してもよい。
(付記6)
前記構造取得部は、前記第1の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記第2の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における接触開始点から弁輪までの最短の長さと、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部の長さを算出してもよい。
(付記7)
前記構造取得部は、前記第1の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記第2の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における前記心臓弁の各弁葉のうち第1の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを前記複数の医用画像のうちの第1の医用画像から選択し、前記第1の弁葉とは異なる第2の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さを前記第1の医用画像から取得し、前記第1の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、前記第2の弁葉の接触開始点から弁輪までの長さと、前記第2の状態における前記複数の医用画像から選択した前記第1の弁葉の弁輪から弁の先端までの長さ及び前記第2の弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部の長さを算出してもよい。
(付記8)
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、前記弁葉の接触開始点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、前記心臓弁の各弁葉について、前記第1の構造と前記第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分のうち最短値を前記心臓弁の接触部の長さとして測定してもよい。
(付記9)
前記算出部は、前記第1の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さと、前記第2の状態における前記医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の弁輪から弁の先端までの長さとに基づいて、前記心臓弁の接触部に関する長さを算出してもよい。
(付記10)
前記構造取得部は、前記第1の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、前記第2の状態における複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉の構造を取得し、
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における曲率が最大となる点から弁輪までの最短の長さと、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉における弁輪から弁の先端までの最長の長さとに基づいて、前記心臓弁に対する手技可能な長さを算出してもよい。
(付記11)
前記算出部は、前記第1の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、前記弁葉の曲率が最大となる点から弁輪までの長さが最短となる第1の構造をそれぞれ選択し、前記第2の状態における前記複数の医用画像に含まれる前記心臓弁の各弁葉について、長さが最長となる第2の構造をそれぞれ選択し、前記心臓弁の各弁葉について、前記第1の構造と、前記第2の構造との差分をそれぞれ算出し、算出した差分のうち最短値を前記心臓弁に対する手技可能な長さとして測定してもよい。
(付記12)
前記算出部は、前記第2の時点における前記複数の生体器官に対して設定された断面に含まれる前記複数の生体器官の構造と、前記第1の時点における前記複数の生体器官に対して設定された断面に含まれる前記複数の生体器官の構造とに基づいて、前記第1の時点の前記断面の位置における接触部に関する計測値を算出してもよい。
(付記13)
前記計測値を表示部にて表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
(付記14)
前記算出部は、前記複数の生体器官に対して設定された複数の断面について、前記複数の生体器官の接触部に関する計測値をそれぞれ算出してもよい。
(付記15)
前記複数の断面の位置で計測された各計測値に基づく表示情報を表示部にて表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
(付記16)
前記表示制御部は、前記複数の断面の位置ごとの計測値を示すグラフ上に前記計測値を判定するための閾値を示した表示情報を表示させてもよい。
(付記17)
前記表示制御部は、前記各計測値に基づく統計情報、前記複数の断面の位置ごとの計測値を示すグラフ、及び、前記複数の断面の位置ごとの計測値に基づく情報を前記医用画像上で示した表示画像のうち、少なくとも1つを表示させてもよい。
(付記18)
前記複数の生体器官に設定する断面位置の条件として前記複数の生体器官における特徴点に基づいて設定される距離又は百分率の数値について入力を受け付けるための入力画面を表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
(付記19)
前記第1の状態において撮像される前記複数の医用画像からそれぞれ抽出される前記複数の生体器官の構造の代表値と、前記第2の状態において撮像される前記複数の医用画像からそれぞれ抽出される前記複数の生体器官の構造の代表値とを選択するための入力画面を表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
(付記20)
前記構造取得部は、前記医用画像の画質を判定し、画質が所定の状態を超えた医用画像を対象として、前記複数の生体器官の構造を取得してもよい。
(付記21)
前記構造取得部は、前記医用画像とは異なる種別であり、かつ、前記複数の生体器官を含む医用画像に基づいて、前記断面の位置を決定してもよい。
(付記22)
前記構造取得部は、前記複数の生体器官に構造を2次元又は3次元で取得してもよい。
(付記23)
複数の時点で撮像された医用画像を取得し、
前記複数の時点のうち第1の時点と当該第1の時点とは異なる第2の時点とで撮像された医用画像から複数の生体器官の構造を取得し、
取得された前記第2の時点における複数の生体器官の構造と前記第1の時点における複数の生体器官の構造とに基づいて、前記第1の時点における前記複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する、
ことを含む、医用情報処理方法。
(付記24)
複数の時点で撮像された医用画像を取得する画像取得機能と、
前記複数の時点のうち第1の時点と当該第1の時点とは異なる第2の時点とで撮像された医用画像から複数の生体器官の構造を取得する構造取得機能と、
取得された前記第2の時点における複数の生体器官の構造と前記第1の時点における複数の生体器官の構造とに基づいて、前記第1の時点における前記複数の生体器官の接触部に関する計測値を算出する算出機能と、
をコンピュータに実行させる、医用情報処理プログラム。
【符号の説明】
【0162】
3 医用情報処理装置
35 処理回路
351 制御機能
352 画像取得機能
353 判定機能
354 設定機能
355 抽出機能
356 算出機能
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14