(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 35/00 20060101AFI20240702BHJP
F16H 1/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16H35/00 H
F16H1/02
(21)【出願番号】P 2020190416
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智文
(72)【発明者】
【氏名】竹田 康紘
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-501917(JP,A)
【文献】特開2004-263615(JP,A)
【文献】実開平2-801(JP,U)
【文献】特開2007-298115(JP,A)
【文献】実開昭60-161747(JP,U)
【文献】特開2010-112438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 35/00
F16H 1/00
F16K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部品を回転させて駆動する駆動軸と、
前記駆動軸に伝動機構を介して接続された駆動用モータと、
前記伝動機構に含まれて前記駆動軸とともに回転する駆動用ギアと、
前記伝動機構に含まれる回転体を回転方向の一方であるリターン方向に付勢するリターンスプリングと、
前記駆動用ギアの軸線方向の端面に突設された突起と、
前記駆動用ギアの回転に伴って前記突起が移動する際の前記突起の移動範囲に対して出入りする切換レバーを有し、前記駆動用ギアの回転が許容される非ロック状態と前記駆動用ギアの前記リターン方向への回転が規制されるロック状態とを切換えるロック機構とを備え、
前記切換レバーは、前記突起の移動範囲の中に位置している状態で前記突起によって押されて回るように回動自在であり、
前記ロック機構は、
前記駆動用ギアが前記リターン方向に回転する際に前記突起に押されて回る前記切換レバーの回転を規制するストッパーと、
前記ストッパーによって回転が規制される際の回転方向とは反対の方向に前記切換レバーを付勢するロック解除用スプリングとを備え、
前記切換レバーの回転が前記ストッパーによって規制されることにより前記ロック状態になることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のアクチュエータにおいて、
前記駆動用ギアは、前記被駆動部品が動作可能範囲の一端から他端まで回転するにあたって複数回にわたって回転するものであることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のアクチュエータにおいて、
前記切換レバーは、前記駆動用ギアの軸線とは交差する方向に延びる回動軸に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載のアクチュエータにおいて、
前記切換レバーは、
前記駆動用ギアの軸線と平行な回動軸に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式の被駆動部品を一方向に付勢するリターンスプリングを備えたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転式の被駆動部品を備えた装置としては、例えば電動バルブがある。一般的に、電動バルブにおいては、停電時などの通電が切れた時にバルブを閉じるような緊急遮断機能を有している。電動バルブに採用されている緊急遮断機能は、例えば特許文献1に記載されているように、回転式の弁軸を閉方向に付勢するリターンスプリングを用いる、スプリングリターンタイプが多い。
【0003】
スプリングリターンタイプのアクチュエータは、非通電時にはバルブが全閉になってしまう。このため、非通電状態でバルブを任意の開度で保持する必要がある場合は、手動でバルブを開閉操作でき、しかも、バルブをリターンスプリングのばね力に抗して停止させてロックしておくことが可能な開度保持機構が用いられる。なお、このような開度保持機構を備える場合は、手動でフリーとロックとを切り替えるだけでなく、モータ駆動再開時には自動でロックを解除できるようにする必要がある。
【0004】
従来の開度保持機構としては、例えば特許文献2~4に記載されているものがある。特許文献2に開示された開度保持機構は、図示していないバルブを所定の開度で保持するためのもので、
図11に示すように構成されている。特許文献2に示す開度保持機構1は、モータ2の動力を伝達する伝動機構3に含まれる駆動用ギア4と、この駆動用ギア4に選択的に噛み合うロック用ギア5とを用いて構成されている。
【0005】
伝動機構3は、モータ2から回転力が伝達される上流側のギア3aと、上流側のギア3aに接続された駆動用ギア4と、この駆動用ギア4から回転力が伝達される下流側のギア群(図示せず)などによって構成されている。下流側のギア群の回転は、図示していない被駆動部品の回転軸に伝達される。伝動機構3は、手動で被駆動部品を動作させるための手動開閉操作用ハンドル6を接続できるように構成されている。
図11は、駆動用ギア4に手動開閉操作用ハンドル6を接続した状態で描いてある。
【0006】
上流側のギア3aは、リターンスプリング7によって一方向に付勢されている。駆動用ギア4は、リターンスプリング7のばね力で
図11中に矢印Rで示す方向に回転する。以下において、リターンスプリング7のばね力が作用することによって回転する方向を単に「リターン方向」という。
ロック用ギア5は、駆動用ギア4に噛み合うことが可能な扇形ギアで、駆動用ギア4の軸線と平行な回動軸8に設けられている。ロック用ギア5は、回動軸8を手動で操作することにより、
図11に示すロック位置と、
図12に示す非ロック位置との間で回動する。ロック用ギア5の近傍には、ストッパー9が設けられている。
【0007】
ストッパー9は、ロック用ギア5が駆動用ギア4に噛み合っている状態で駆動用ギア4がリターン方向に回ることを規制するものである。
回動軸8には、ロック用ギア5をストッパー9から離間する方向へ付勢するロック解除用スプリング10が設けられている。
【0008】
この開度保持機構1によれば、ロック用ギア5が
図12に示すように駆動用ギア4に噛み合っていない状態において、手動開閉操作用ハンドル6を操作することによりバルブを手動で開閉することができる。バルブを所定の開度でロックするためには、バルブが所定の開度となっている状態で手動開閉操作用ハンドル6から手を離すことなく操作を止め、
図11に示すように、ロック用ギア5をロック解除用スプリング10のばね力に抗して回して駆動用ギア4に噛み合わせる。
【0009】
ロック用ギア5が駆動用ギア4に噛み合っている状態で手動開閉操作用ハンドル6を持つ手を緩めることにより、駆動用ギア4がリターン方向に回り、これに伴ってロック用ギア5がストッパー9に向けて回る。ロック用ギア5の回転は、ロック用ギア5がストッパー9に当接することにより規制される。このため、駆動用ギア4のリターン方向への回転も規制され、バルブが所定の開度でロックされるようになる。
【0010】
モータ駆動を行うときには、駆動用ギア4がモータ2の動力でリターン方向とは反対方向に回ることにより、
図12に示すように、ロック用ギア5が駆動用ギア4から外れてロック解除用スプリング10のばね力で非ロック位置に移動する。このため、ロックが自動で解除される。
【0011】
特許文献3に記載されている開度保持機構は、引っ張りコイルばねのばね力で全開または全閉の位置に保持するように構成されている。
特許文献4に記載されている開度保持機構は、被駆動部品とともに回転するギアに手動で歯付き部品を噛み合わせて任意の開度でロックするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2002-206656号公報
【文献】特表2007-501917号公報
【文献】特許第3645225号公報
【文献】特許第6709140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2に開示された開度保持機構においては、以下の2つの課題がある。
第1の課題は、駆動用ギア4にロック用ギア5を噛み合わせるときに歯と歯が衝突して歯が損傷するおそれがあることである。
第2の課題は、ロック用ギア5でロックをする操作(駆動用ギア4に噛み合わせる操作)が煩わしいことである。すなわち、ロック用ギア5を駆動用ギア4と噛み合わせるためには、手動開閉操作用ハンドル6を操作して駆動用ギア4をリターン方向に回転させ、この駆動用ギア4と同期するようにロック用ギア5を回さなければならない。
【0014】
特許文献3に開示された開度保持機構では、全開から全閉の間の任意の位置で保持することはできないという問題がある。
特許文献4に開示された開度保持機構では、モータ駆動によるロックの自然解除を行うことはできない。
【0015】
本発明の目的は、ロック時に歯が損傷することがなく、任意の位置で簡単にロックすることができ、しかも、モータ駆動でロックを解除することが可能なアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、本発明に係るアクチュエータは、被駆動部品を回転させて駆動する駆動軸と、前記駆動軸に伝動機構を介して接続された駆動用モータと、前記伝動機構3に含まれて前記駆動軸とともに回転する駆動用ギアと、前記伝動機構に含まれる回転体を回転方向の一方であるリターン方向に付勢するリターンスプリングと、前記駆動用ギアの軸線方向の端面に突設された突起と、前記駆動用ギアの回転に伴って前記突起が移動する際の前記突起の移動範囲に対して出入りする切換レバーを有し、前記駆動用ギアの回転が許容される非ロック状態と前記駆動用ギアの前記リターン方向への回転が規制されるロック状態とを切換えるロック機構とを備え、前記切換レバーは、前記突起の移動範囲の中に位置している状態で前記突起によって押されて回るように回動自在であり、前記ロック機構は、前記駆動用ギアが前記リターン方向に回転する際に前記突起に押されて回る前記切換レバーの回転を規制するストッパーと、前記ストッパーによって回転が規制される際の回転方向とは反対の方向に前記切換レバーを付勢するロック解除用スプリングとを備え、前記切換レバーの回転が前記ストッパーによって規制されることにより前記ロック状態になるものである。
【0017】
本発明は、前記アクチュエータにおいて、前記駆動用ギアは、前記被駆動部品が動作可能範囲の一端から他端まで回転するにあたって複数回にわたって回転するものであってもよい。
【0018】
本発明は、前記アクチュエータにおいて、前記切換レバーは、前記駆動用ギアの軸線とは交差する方向に延びる回動軸に設けられていてもよい。
【0019】
本発明は、前記アクチュエータにおいて、前記切換レバーは、前記駆動用ギアの軸線と平行な回動軸に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、駆動用ギアの歯を使用することなくロックできるため、駆動用ギアの歯を損傷させることはない。
切換レバーは駆動用ギアの突起に当接するため、歯と歯を噛み合わせるように操作する場合と較べてロック操作を簡単に行うことができる。駆動用ギアが複数回転する構成を採ることにより任意の位置でロックすることができる。駆動用ギアがモータによって駆動されてリターン方向とは反対の方向に回転することにより、切換レバーがロック解除用スプリングのばね力によって押されて回り、駆動用ギアの突起から外れるとともに初期の位置に自動で復帰する。
したがって、本発明によれば、ロック時に歯が損傷することがなく、任意の位置で簡単にロックすることができ、しかも、モータ駆動でロックを解除することが可能なアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係るアクチュエータの構成を示す平面図である。
【
図2】
図2は、アクチュエータの構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態によるロック機構の側面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態によるロック機構の構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第3の実施の形態による駆動用ギアの断面図である。
【
図11】
図11は、従来の開度保持機構の構成を示す平面図である。
【
図12】
図12は、従来の開度保持機構の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るアクチュエータの一実施の形態を
図1~
図6を参照して詳細に説明する。
(アクチュエータ全体の説明)
図1に示すアクチュエータ11は、図示していない電動バルブや空調用のダクトに設けられるダンパーなどを駆動するために使用できるものである。この実施の形態においては、本発明に係るアクチュエータ11を電動バルブに用いる場合の一例について説明する。
【0023】
アクチュエータ11は、電動バルブの被駆動部品としての弁体12を回転させて駆動する駆動軸13と、駆動軸13に伝動機構14を介して接続された駆動用モータ15などを備えている。このアクチュエータ11を構成する各部品はケース16の中に収容されている。
駆動軸13は、
図1の紙面と直交する方向を軸線方向として図示していないフレームに回転自在に支持されている。駆動軸13の一端部に回転式の弁体12が設けられている。弁体12は、駆動軸13が一方に回転することにより全閉状態となり、駆動軸13が他方に回転することにより全開状態となる。この実施の形態においては、アクチュエータ11が電動バルブの上端部に取付けられて駆動軸13が上下方向に延びる場合について説明する。弁体12は、駆動軸13の下端部に設けられている。
【0024】
伝動機構14は、複数のギアを用いて駆動用モータ15の回転を減速して駆動軸13に伝達するものである。この実施の形態による伝動機構14は、駆動用モータ15のピニオン17と駆動軸13との間に9個のギア18~26を備えている。これらのギア18~26のうち、動力伝達経路の上流端から数えて5番目に位置する駆動用ギア22の回転軸27には、この伝動機構14が動作するときに回転する回転体を回転方向の一方に付勢するリターンスプリング28が接続されている。この回転体とは、ギアや軸などである。
図1および
図2においては、リターンスプリング28を収容するハウジングの外観のみを図示している。
【0025】
リターンスプリング28が回転体を付勢する方向は、この回転体に連動するように連結された弁体12が閉方向に回るような方向である。以下においては、リターンスプリング28のばね力で回転体が回転する方向を「リターン方向」という。このため、このアクチュエータ11においては、駆動用モータ15の通電が絶たれることによって、弁体12がリターンスプリング28のばね力で全閉位置まで移動する。伝動機構14を構成する複数のギア18~26は、リターンスプリング28のばね力によって
図1中に矢印で示す方向(リターン方向)に回転する。
【0026】
リターンスプリング28が接続された回転軸27の一端部(上端部)は、手動開閉操作用ハンドル29(
図2参照)を着脱自在に取付けることができるように形成されており、ケース16の外に露出している。手動開閉操作用ハンドル29は、弁体12を手動で開方向あるいは閉方向に回すときに操作するハンドルである。
【0027】
(駆動用ギアの説明)
駆動用ギア22は、伝動機構14に含まれて駆動軸13とともに回転するギアである。この駆動用ギア22は、弁体12が動作可能範囲の一端となる全閉位置から他端となる全開位置まで回転するにあたって複数回にわたって回転する。
駆動用ギア22の軸線方向の一端面には、後述するロック機構31の一部を構成する突起32が設けられている。この実施の形態による突起32は、
図2および
図4に示すように、駆動用ギア22の下面22aであって駆動用ギア22の回転方向の1箇所に突設されている。
【0028】
突起32は、図示してはいないが、駆動用ギア22の下面22aの代わりに上面に突設することができる。この場合は、後述するロック機構31が駆動用ギア22の上方に設けられることになる。突起32は、駆動用ギア22が回転することにより、
図4中に二点鎖線で示す移動範囲Aの中を移動する。なお、ロック機構31は、駆動用ギア22とは異なるギアを用いて構成することができる。例えば、駆動軸13に設けられているギア26を用いて構成する場合は、ギア26が駆動用ギアとして機能し、ギア26の回転方向の複数の位置に突起32が設けられる。
【0029】
(ロック機構の説明)
ロック機構は、駆動用ギア22の回転が許容される非ロック状態と、駆動用ギア22の回転が規制されるロック状態とを切換レバー33を用いて切換えるものである。この実施の形態によるロック機構31は、
図3に示すように、駆動用ギア22の下方に位置する切換レバー33と、ストッパー34と、ロック解除用スプリング35とを有している。
【0030】
(切換レバー33の説明)
切換レバー33は、この実施の形態においては、駆動用ギア22の軸線Cとは直交する方向に延びる回動軸36に設けられている。この回動軸36の切換レバー33とは反対側の先端部は、
図1に示すように、ケース16の側部16aからケース外に突出するように形成されている。回動軸36の先端部には、切換レバー33を操作するための操作子37(
図1参照)が設けられている。回動軸36は、アクチュエータ11の下部フレーム38(
図3参照)に図示していないブラケットを介して回転自在に支持されている。
【0031】
切換レバー33は、回動軸36とともに回動することにより、突起32の移動範囲Aに対して下方から出入りする。すなわち、切換レバー33は、
図3に示すように突起32の移動範囲に入るロック位置と、
図6に示すように突起32の移動範囲の外に出る非ロック位置との間で回動することができる。切換レバー33が突起32の移動範囲Aの中に入る状態においては、駆動用ギア22が回転することによって突起32が切換レバー33に当たる。回動軸36の軸線方向は、切換レバー33がこのように突起32によって押されたときに回動軸36を中心にして回るような方向である。すなわち、切換レバー33は、突起32の移動範囲Aの中に位置している状態で突起32によって押されて回るように回動自在である。
【0032】
(ストッパーの説明)
ストッパー34は、切換レバー33が所定の方向に移動する際の移動経路を遮るように位置付けられており、下部フレーム38に固定されている。ここでいう所定の方向とは、駆動用ギア22がリターン方向へ回るときにロック位置にある切換レバー33が突起32によって押されて回る方向(
図3においては反時計方向)である。すなわち、ストッパー34は、駆動用ギア22がリターン方向に回転する際に、突起32に押されて回る切換レバー33の回転を規制する。切換レバー33の回転がストッパー34によって規制されることによって、ロック機構31がロック状態になる。
【0033】
(ロック解除用スプリングの説明)
ロック解除用スプリング35は、切換レバー33の回転がストッパー34によって規制される際の回転方向とは反対の方向(
図3においては時計方向)に切換レバー33を付勢するスプリングである。ロック解除用スプリング35のばね力は、リターンスプリング28のばね力より小さい。この実施の形態によるロック解除用スプリング35は、
図3、
図5および
図6に示すように、ねじりコイルばねによって構成され、回動軸36が貫通する状態で切換レバー33と下部フレーム38との間に設けられている。しかし、ロック解除用スプリング35は、切換レバー33をストッパー34から離間する方向に付勢できるものであれば、どのようなものでもよい。ロック解除用スプリング35は、ねじりコイルばねの他に引っ張りコイルばねによっても構成することができる。
【0034】
(アクチュエータの動作の説明)
このように構成されたアクチュエータ11においては、切換レバー33が
図6に示す非ロック位置にある状態で駆動用モータ15の電源が絶たれることによって、弁体12がリターンスプリング28のばね力で全閉位置に移動する。その後、弁体12を所定の開度でロックするためには、手動開閉操作用ハンドル29を用いて回転軸27をリターンスプリング28のばね力に抗してリターン方向とは反対の方向に回し、弁体12を開弁方向に移動させる。
【0035】
そして、弁体12が所定の開度に達した後に、
図3に示すように切換レバー33を突起32の移動範囲Aの中に入るように回し、手動開閉操作用ハンドル29に加える力を緩めて駆動用ギア22をリターンスプリング28のばね力でリターン方向に回す。駆動用ギア22がリターン方向に回転することにより、突起32が切換レバー33をストッパー34に向けて押すようになる。
【0036】
突起32によって押された切換レバー33は、ロック解除用スプリング35のばね力に抗してストッパー34よって回転が規制されるまで回る。切換レバー33の回転がストッパー34によって規制されることにより駆動用ギア22が停止する。この駆動用ギア22は、停止した位置にリターンスプリング28のばね力によって保持される。すなわち、弁体12が所定の開度となる位置に保持される。
【0037】
このようにロック機構31がロック状態にあるときに駆動用モータ15の動力で駆動用ギア22がリターン方向とは反対の方向に駆動されると、突起32が切換レバー33およびストッパー34から離れる方向に移動する。この結果、切換レバー33がロック解除用スプリング35のばね力でストッパー34から離れる方向に押され、
図6に示すように、初期の非ロック位置に自動的に復帰してロックが自動で解除される。
【0038】
(実施の形態による効果の説明)
この実施の形態によるアクチュエータ11においては、駆動用ギア22の歯を使用することなくロックできるため、駆動用ギア22の歯が損傷することはない。
切換レバー33を突起32の移動範囲Aの中に入れるという簡単な操作で駆動用ギア22の突起32に当接させることができ、ロック時に歯と歯を噛み合わせるために駆動用ギアを少し回転させて戻すような手間もかかることがない。このため、スムーズにロック動作が可能で、ロック操作を簡単に行うことができる。
【0039】
また、弁体12が全閉位置から全開位置まで移動する際に複数回転する駆動用ギア22を用いてロック機構31が構成されているために、弁体12を任意の位置でロックすることができる。
さらに、駆動用ギア22が駆動用モータ15によって駆動されてリターン方向とは反対の方向に回転することにより、突起32が切換レバー33から外れ、切換レバー33がロック解除用スプリング35のばね力で非ロック位置に自動的に復帰する。
したがって、この実施の形態によれば、ロック時に歯が損傷することがなく、任意の位置で簡単にロックすることができ、しかも、モータ駆動でロックを解除することが可能なアクチュエータを提供することができる。
【0040】
特に、この実施の形態においては、駆動用ギア22に突設された突起32と単純な形状の切換レバー33とを用いて駆動用ギア22の回転を止めているから、歯と歯を噛み合わせて回転を止める場合と較べて安価に実現できる。
また、突起32は駆動用ギア22の上下方向の一方に設けられているから、駆動用ギア22の下方または上方の空きスペースを有効に活用でき、省スペースでロック機構31を実現することができる。詳述すると、特許文献2に記載されている開度保持機構では、ロック用ギアの配置スペースをギア列の側方に別途確保しなければならないが、この実施の形態においては、ギア列(伝動機構14)の上下方向の空きスペースを有効に活用できるため、空間利用率を高くすることができ省スペースを実現できる。
【0041】
この実施の形態による切換レバー33は、駆動用ギア22の軸線Cとは交差(直交)する方向に延びる回動軸36に設けられている。このため、切換レバー33を操作するための操作子37をケース16の側部16aに設けることができるから、操作子37がケース16の上面または下面に設けられている場合と較べると操作性が高い。アクチュエータ11は、上下方向に反転させてバルブ等に組み付けられることがある。操作子37がケース16の上面に設けられている場合、ケース16がバルブ等に上下反転した状態で組み付けられると操作子37が下方に位置することになって操作し難くなる。なお、回動軸36がケース16を上下方向に貫通する構成を採ることによって、バルブ等への組み付けに関して上下方向の制約はなくなる。しかし、このような構成を採ると、構造が複雑になってしまう。
【0042】
(第2の実施の形態)
ロック機構は
図7および
図8に示すように構成することができる。これらの図において、
図1~
図6によって説明したものと同一もしくは同等の部材には同一符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
【0043】
図7に示す駆動用ギア22は、上面22bに突起32を有している。駆動用ギア22は、図示していないリターンスプリングのばね力で
図7中に矢印Rで示す方向(リターン方向)に回る。
図7に示す切換レバー33は、駆動用ギア22の軸線Cと平行な回動軸41に設けられ、突起32と同じ高さとなる位置に配置されている。また、切換レバー33は、図示していないロック解除用スプリングによって回動軸41を中心にして
図7において時計方向に回るように付勢されている。
【0044】
回動軸41は、詳細には図示してはいないが、切換レバー33の一端部に取付けられているとともに、切換レバー33と水平方向に隣接するように設けられたストッパー34に回動自在に支持されている。このため、切換レバー33とストッパー34とは、いわゆる蝶番42となるように構成されており、回動軸41を介して切換レバー33がストッパー34に対して回動するように連結されている。
【0045】
切換レバー33は、回動軸41を中心にして回動することにより、
図8中に実線で示すように突起32の移動範囲Aの中に入ったロック位置と、
図8中に二点鎖線で示すように突起32の移動範囲Aの外に出た非ロック位置との間で移動する。ロック位置に移動した切換レバー33は、ストッパー34に当接することによりそれ以上の回転が規制される。
回動軸41は、アクチュエータ用ケース(図示せず)の例えば上面から突出するように形成されている。回動軸41の先端部には操作子(図示せず)が設けられる。
【0046】
この実施の形態においては、
図8中に実線で示すように切換レバー33が水平方向に移動して突起32の移動範囲Aの中に入ることによって、突起32の移動が切換レバー33によって規制されて駆動用ギア22のリターン方向への回転が規制され、ロック状態になる。一方、駆動用モータの動力で駆動用ギア22がリターン方向とは反対の方向に回ると、切換レバー33がロック解除用スプリングによって押されて自動的に初期の位置に復帰する。
【0047】
したがって、この実施の形態においても、ロック時に歯が損傷することがなく、任意の位置で簡単にロックすることができ、しかも、モータ駆動でロックを解除することが可能なアクチュエータを提供することができる。
特に、この実施の形態で示すように回動軸41がケース16の上方に突出する構成を採ることにより、アクセス方向が上方からのみとなるように制約を受けるような装置であっても、操作性を犠牲にすることなくアクチュエータを組み付けることができる。
【0048】
(第3の実施の形態)
駆動用ギアに設ける突起は
図9および
図10に示すように構成することができる。
図9および
図10において、
図1~
図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材には同一符号を付し、詳細な説明は適宜省略する。
図9は
図10におけるIX-IX線断面図である。
【0049】
図9および
図10に示す駆動用ギア22の下面22aは、下方に向けて開口する溝51を有している。なお、溝51は、駆動用ギア22の上面22bに形成することもできる。その場合は、切換レバー33が駆動用ギア22の上方に配置される。溝51は、
図10に示すように、駆動用ギア22の中心部から外周部まで延びる帯状の突起52を除いて駆動用ギア22の周方向に延びている。突起52の下面52aは、駆動用ギア22の下面22aと同一平面上に位置付けられている。このように溝51が駆動用ギア22の下面22aに形成されることにより、駆動用ギア22の軸線方向の端面に突起52が突設されることになる。溝51の内部の空間は、駆動用ギア22の回転に伴って突起32が移動する際の突起52の移動範囲Aになる。
【0050】
この実施の形態を採るときの切換レバー33は、駆動用ギア22の軸線Cとは直交する回動軸36に設けられており、回動軸36が回動することにより溝51に対して出入りするように構成されている。すなわち、
図9中に実線で示すように切換レバー33が溝51の中に入っている状態で駆動用ギア22がリターン方向に回ることにより、突起52が切換レバー33を押してストッパー34に押し付けるようになってロック状態になる。
また、ロック状態にあるときに駆動用ギア22がモータの動力でリターン方向とは反対の方向に回ることにより、切換レバー33がロック解除用スプリングによって押されて自動的に初期の位置に復帰する。
【0051】
したがって、この実施の形態においても、ロック時に歯が損傷することがなく、任意の位置で簡単にロックすることができ、しかも、モータ駆動でロックを解除することが可能なアクチュエータを提供することができる。
特に、この実施の形態においては、突起52が駆動用ギア22から下方(あるいは上方)に突出することがないから、駆動用ギア22の軸線方向(上下方向)にコンパクトなロック機構を実現することができる。また、駆動用ギア22の下面22aあるいは上面22bの近傍に伝動機構の他のギア53(
図9参照)の一部を張り出させたとしても、この他のギア53が駆動用ギア22の回転に伴って移動する突起52と干渉することがない。このため、上述したようにロック機構がコンパクトになることと相俟って、アクチュエータの更なる小型化を図ることができる。
【0052】
上述した各実施の形態においては本発明を電動バルブのアクチュエータに適用する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、流体を制御する機器全般に適用することができる。すなわち、回転式の駆動軸を回転させるアクチュエータであれば、どのようなアクチュエータにも適用することができ、例えば空調用のダクトに設けられる電動式ダンパーのアクチュエータにも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
11…アクチュエータ、12…弁体(被駆動部品)、13…駆動軸、14…伝動機構、15…駆動用モータ、22…駆動用ギア、27…回転軸、28…リターンスプリング、31…ロック機構、32…突起、33…切換レバー、34…ストッパー、36,41…回動軸、A…移動範囲。