(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】屋内ダニ忌避剤、及び屋内ダニ忌避方法
(51)【国際特許分類】
A01N 37/02 20060101AFI20240702BHJP
A01N 31/04 20060101ALI20240702BHJP
A01N 31/06 20060101ALI20240702BHJP
A01N 37/10 20060101ALI20240702BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A01N37/02
A01N31/04
A01N31/06
A01N37/10
A01P17/00
(21)【出願番号】P 2020213379
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019237496
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】田丸 友裕
(72)【発明者】
【氏名】下方 宏文
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170362(WO,A1)
【文献】特開2017-145217(JP,A)
【文献】特開2019-178145(JP,A)
【文献】特開2011-026290(JP,A)
【文献】特開2010-184919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは直鎖構造又は分岐構造を有し、炭素数1~4の飽和炭化水素を表す。)
で示される脂肪酸トリシクロデセニルエステルを有効成分(a)として含有する屋内ダニ忌避剤。
【請求項2】
さらに、p-メンタン-3,8-ジオール、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベンジルベンゾエートからなる群より選択される1種以上を有効成分(b)として含有する請求項1に記載の屋内ダニ忌避剤。
【請求項3】
前記有効成分(a)に対する前記有効成分(b)の配合比率((b)/(a))は、質量比で0.5~10である請求項2に記載の屋内ダニ忌避剤。
【請求項4】
液状の形態、ゲル状の形態、ビーズ状の形態、又は固形担体に含浸又は保持された形態で製剤化されている請求項1~3の何れか一項に記載の屋内ダニ忌避剤。
【請求項5】
屋内空間に
請求項1~4の何れか一項に記載の屋内ダニ忌避剤を使用する屋内ダニ忌避方法。
【請求項6】
前記屋内空間が、容積18.8~33.3m
3の居室である
請求項5に記載の屋内ダニ忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内ダニ忌避剤、及び屋内ダニ忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居住環境の変化により、屋内空間にコナダニ、ヒョウヒダニ、ホコリダニ等の屋内塵性ダニ類が大発生し、不快感を与えるばかりでなく、アレルギー性喘息や皮疹を惹起する等の問題を生じている。
そこで、カーペットや寝具等を処理するための屋内用殺ダニ剤が求められてきたが、屋内空間では直接肌に接触する使用場面が多いため、より安全性の高い薬剤の開発が必要とされ、今なお的確な防除法は確立されていない。更に、アレルギー性喘息を引き起こすヒョウヒダニ類は、虫体の死骸そのものでもアレルギーの原因になることが明らかとなってきた。
【0003】
かかる状況を背景として、屋内塵性ダニ類を殺すのではなく、人や患者にダニを近づけないようにする技術も模索され、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1(特開平3-264504号公報)には、n-ヘキシルサリシレート、n-ヘキシルベンゾエートやオイゲノール等を有効成分とする殺ダニまたは屋内ダニ忌避剤が開示されている。また、特許文献2(特開平6-16515号公報)は、室内用ダニ防除剤の有効成分として、ベチバー油、パチョウリ油、クローブ油などの植物精油を開示し、天然産志向と安全性への配慮を謳っているが、屋内塵性ダニ類に対する忌避効果は満足するものとは言えない。
【0004】
一方、本発明者らは、先に酢酸シンナミルや桂皮酸メチル等の桂皮酸誘導体がダニ忌避成分として有用であることを知見し、特許文献3(特開2006-89424号公報)を出願した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-264504号公報
【文献】特開平6-16515号公報
【文献】特開2006-89424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの屋内ダニ忌避剤は、いずれも精油または香料の成分であり、一般的に強い臭いを持っている。そのため、臭いを生かした製品とする場合や人があまり滞在しないような場所で使用する製品とする場合は良い。しかし、人が常時滞在するようなリビング等の居室で使用する場合は、ほとんど臭いのなく、屋内ダニに対する優れた忌避活性を有する屋内ダニ忌避剤が消費者に求められている。
【0007】
そこで、本発明は、消費者の嗜好に合う、実質的に臭いのない屋内ダニ忌避剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、屋内ダニは精油や香料の臭いに反応して近寄らないために、忌避効果を示すと考えられていた。そのため、屋内ダニ忌避活性を示し、ほとんど臭いのない化合物を見出すことは困難であると考えられていた。本発明者らは様々な化合物を鋭意検討した結果、特定の脂肪酸トリシクロデセニルエステルは、屋内ダニに対する優れた忌避活性を有し、さらに、香料と比較してほとんど臭いがないことを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の構成が上記目標達成のために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは直鎖構造又は分岐構造を有し、炭素数1~4の飽和炭化水素を表す。)
で示される脂肪酸トリシクロデセニルエステルを有効成分(a)として含有する屋内ダニ忌避剤。
(2)さらに、p-メンタン-3,8-ジオール、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベンジルベンゾエートからなる群より選択される1種以上を有効成分(b)として含有する(1)に記載の屋内ダニ忌避剤。
(3)屋内空間に(1)又は(2)に記載の屋内ダニ忌避剤を使用する屋内ダニ忌避方法。
(4)前記屋内空間が、容積18.8~33.3m
3の居室である(3)に記載の屋内ダニ忌避方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の屋内ダニ忌避剤、及び屋内ダニ忌避方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定することを意図するものではない。
【0011】
本発明の屋内ダニ忌避剤の有効成分(a)は下記一般式(1)
【化2】
(式中、Rは直鎖構造又は分岐構造を有し、炭素数1~4の飽和炭化水素を表す。)で示される脂肪酸トリシクロデセニルエステルであり、具体的にはトリシクロデセニルアセテート、トリシクロデセニルノルマルプロピオネート、トリシクロデセニルイソプロピオネート、トリシクロデセニルノルマルブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート、トリシクロデセニルノルマルペンタノエート等が挙げられる。中でも、屋内ダニ忌避活性と無臭性の観点からトリシクロデセニルアセテート、トリシクロデセニルノルマルプロピオネート、トリシクロデセニルイソプロピオネート、トリシクロデセニルノルマルブチレート、トリシクロデセニルイソブチレートが好ましく、トリシクロデセニルノルマルプロピオネート、トリシクロデセニルイソプロピオネート、トリシクロデセニルイソブチレートがさらに好ましい。
【0012】
本発明の屋内ダニ忌避剤の有効成分である脂肪酸トリシクロデセニルエステルは以下の方法により製造することができる。すなわち、
【化3】
で示されるトリシクロデセニルアルコール(3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メンタノ-1H-インデ-6-オールとも称する。)と
【化4】
(式中、Rは直鎖構造又は分岐構造を有し、炭素数1~4の飽和炭化水素を表す。)
で示される脂肪酸を用いたエステル化反応などの方法により製造することができる。
【0013】
これらの化合物は、無色透明であり、実質的に無臭であるが、屋内ダニに対する忌避効果をもち、屋内ダニが生息するのを防ぐことができる。実質的に無臭であるとは、全くの無臭ではないが、香料と比較してほとんど臭いがない無臭性であり、多くの人が臭気を感じにくいものを言う。すなわち、本発明においては、屋内ダニ忌避剤の有効成分に由来する臭いがほとんどないものを言う。
【0014】
さらに、本発明の屋内ダニ忌避剤は、上記有効成分(a)に加え、有効成分(b)として、上記有効成分(a)に加えて、p-メンタン-3,8-ジオール、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベンジルベンゾエートからなる群より選択される1種以上を含有することで、無臭性を維持したままで、屋内ダニに対する忌避効果を高めることができる。また、(b)の(a)に対する配合比率(質量比)は、0.1≦(b)/(a)≦20であることが好ましく、0.5≦(b)/(a)≦10であることがより好ましい。
【0015】
また、本発明の屋内ダニ忌避剤には防虫効果を付加する目的で、常温揮散性ピレスロイド等を配合することができる。常温揮散性ピレスロイドとしてはエンペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン等が挙げられる。
【0016】
本発明では、屋内ダニ忌避剤の有効成分に由来する臭いがほとんどないという本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、香料等の他の成分を配合して、消費者の嗜好に合う香り付きの屋内ダニ忌避剤としてもよい。テルピネオール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、メントール、ボルネオール、イソボルネオール等のテルペン系アルコール、シトロネラール、シトラール、ジメチルオクタナール等のテルペン系アルデヒド、カルボン、ジヒドロカルボン、プレゴン、メントン等のテルペン系ケトン等があげられるが、これらに限定されない。また、これらの成分を含有する植物精油、例えば、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、ヒバ油、ラベンダー油、オレンジ油、グレープフルーツ油、シダーウッド油、ゼラニウム油、タイムホワイト油、ハッカ油等を配合してもよい。また、ソープ系香料、シトラス系香料、ミント系香料、フローラル系香料、ラベンダー系香料、ローズ系香料、グリーンハーブ系香料等の調合香料を配合してもよい。かかる香料の配合量(質量)は、有効成分(a)及び有効成分(b)の配合量の総和(質量)に対して、0.5倍~2倍であることが好ましく、0.5倍~1.5倍であることがより好ましい。
【0017】
本発明の屋内ダニ忌避剤は必要に応じて、2-フェニルフェノール(OPP)や4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)等の防黴成分を適宜配合してもよい。また、抗菌成分、除菌成分、消臭成分、BHT等の安定化剤、クエン酸等のpH調整剤、着色剤、ビトレックス等の苦味剤などを配合してもよい。また、溶剤、界面活性剤(例えば、後述の液状の屋内ダニ忌避剤の調製で使用できる溶剤、界面活性剤として例示している成分等を配合することができる)なども適宜配合してもよい。これらの各種成分は特に限定されない。
【0018】
本発明では、屋内ダニ忌避剤原液を調製し、使用場面のニーズ等に合わせて、液状、ゲル状、ビーズ状、固形状、シート状等の種々形態として製剤化できる。ここで、屋内ダニ忌避剤原液中の有効成分(a)の配合量は、0.1質量%~1.0質量%であることが好ましく、有効成分(b)の配合量は、0.1質量%~2.0質量%であることが好ましい。
【0019】
液状の屋内ダニ忌避剤を調製するにあたって使用できる溶剤や界面活性剤等の各種成分は特に限定されないが、水のほか、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶剤、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールのようなグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等の各種溶剤や、界面活性剤(可溶化剤)等が適宜用いられる。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤等を例示できる。
【0020】
ゲル状体の調製に用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ゼラチン、オクチル酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸などがあげられる。
【0021】
ビーズ状体としては、特定の吸水性ポリマーによるゲルビーズに、液状の屋内ダニ忌避剤の成分を保持させ調製できる。水性ゲルビーズを形成する吸水性ポリマーには、アクリル酸系吸水性ポリマーが好ましく使用される。アクリル酸系吸水性ポリマーは、吸水性に優れており、自重の100倍以上の水を吸収することができる。粒径約2mm程度(1.5mm~2.5mm)のアクリル酸系吸水性ポリマーであれば、含浸液を吸収した後も略透明な状態を維持しつつ、粒径約10mm程度(6mm~10mm)にまで膨張し得る。アクリル酸系吸水性ポリマーとしては、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体(アクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体やアクリル酸/アクリル酸カリウム塩共重合体等)やアクリルアミド/アクリル酸又はその塩の共重合体が挙げられる。
【0022】
本発明の屋内ダニ忌避剤の成分を固形担体に含浸又は保持させた場合は、通気性ケースもしくは袋に収納して製剤とすることができる。そして、かかる屋内ダニ忌避剤を、リビング、キッチン等の居室に設置し、固形担体から有効成分を揮散させればよい。固形担体としては、パルプ、リンター、レーヨン等の繊維質担体、セルロース(再生セルロース)製ビーズもしくは発泡体、ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等の無機多孔質担体、トリオキサン、アダマンタン等の昇華性担体等があげられる。繊維質担体では厚さが1~3mm程度のマットもしくはシート状のものが使い易く、一方、セルロース製ビーズの場合、これに炭を配合することによって消臭効果を付与することもできる。
【0023】
その際の通気性ケースとしては、例えば、開孔部を有するプラスチック製容器等があげられ、通気性袋としては、不織布袋、綿袋、ネットケース等を例示できる。後者の不織布袋の場合、不織布の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリ乳酸、レーヨン等があげられ、これらは単一の繊維であってもよいし、あるいは紙を積層したポリエステルやポリプロピレン/レーヨンのような積層品(有効成分を一部吸着してその揮散量を二次的に調節可能)や混紡品を用いても構わない。また、不織布袋の形状や構成も適宜決定することができ、例えば、両面を前記材質の通気性不織布で構成してもよいし、あるいは、片面が前記材質の通気性不織布で、他面が小孔を多数有してもよいプラスチックフィルムを貼り合わせたものであってもよい。
【0024】
本発明の屋内ダニ忌避剤全体量に対する有効成分の配合量は、製剤の形態によっても異なるが、屋内ダニ忌避剤一個当たり0.1mg~10g程度に設定するのが好適である。また、使用する空間の体積に応じて適宜施用個数を設定すればよい。
【0025】
このようにして得られた屋内ダニ忌避剤は、屋内空間で使用することができ、リビング、キッチン、寝室等の約4.5~8畳に相当する(容積18.8~33.3m3であり、床面積7.5~13.3m2、高さ2.2~3.0m)大きさの居室でも使用者が屋内ダニ忌避剤の有効成分に由来する臭気をほとんど感じることなく、屋内ダニを忌避することができるため快適に使用することができる。また、タンス、引き出し、クローゼットや衣類収容箱に密閉空間に近い空間においても有効成分に由来する臭いを気にすることなく使用することができる。各種含浸担体から有効成分が揮散し、ケナガコナダニ、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ、ツメダニ等の屋内塵性ダニ類に対して実用的な忌避効果を奏するものであり、実用性は高い。また、忌避対象としてはこれらのダニ類に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
次に、具体的な実施例に基づき、本発明の屋内ダニ忌避剤について更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
<ダニ忌避効力試験>
各試験において薬量が200mg/m2となるように処理し、JIS L 1920記載の侵入阻止法に準じてダニ忌避効力試験を行い、次式により侵入阻止率を算出した。
侵入阻止率(%)=[無処理区の侵入ダニ数-処理区の侵入ダニ数]/無処理区の侵入ダニ数×100
そして、得られた侵入阻止率から、さらに以下の基準で各成分のダニ忌避効果の評価を行った。
◎:侵入阻止率90~100%、○:侵入阻止率70~90%、△:侵入阻止率50~70%、×:侵入阻止率<50%
【0028】
ダニ忌避試験の結果を表1に示した。(表中、成分名は有効成分名を表す。)
【0029】
【0030】
<無臭性確認試験>
表2記載の各々の成分10mgを底面積6cm2のシャーレに塗布して、容量約14Lのアルミ円筒の底面中央に設置し、5分間密閉した。その後、アルミ円筒の一部を開放して20代~50代の5人のパネラーにより臭気の有無を以下の基準で評価をした。
◎;5人中0~1人が臭気を感じる。〇;5人中2人が臭気を感じる。△;5人中3人が臭気を感じる。×;5人中4~5人が臭気を感じる。
【0031】
無臭性確認試験の結果を表2に示した。(表中、成分名は有効成分名を表す。)
【0032】
【0033】
ダニ忌避試験と無臭性確認試験の結果より、Rは直鎖構造又は分岐構造を有し、炭素数1~4の飽和炭化水素である脂肪酸トリシクロデセニルエステルはダニ忌避効果を示し、さらにほとんど臭いがないことが分かった。さらに、p-メンタン-3,8-ジオール、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベンジルベンゾエートからなる群より選ばれる1種以上を含有すると、有効成分の無臭性を維持したまま、屋内ダニに対する忌避効果を高めることができることが分かった。一方、酢酸シンナミルは優れたダニ忌避効果を示すが、臭気が感じられた。Rが炭素数1未満の脂肪酸トリシクロデセニルエステルやRが炭素数4を上回る脂肪酸トリシクロデセニルエステルはダニ忌避活性と有効成分の無臭性の点で劣った結果となった。また、トリシクロデセニルノルマルプロピオネートにp-メンタン-3,8-ジオール、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベンジルベンゾエートからなる群から選ばれる1種以上でないエチルベンゾエートを加えても、屋内ダニに対する忌避効果を高めることができず、臭いも感じられた。
【0034】
(実施例10)
トリシクロデセニルノルマルプロピオネート20質量%、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール50質量%、及びその他成分を配合した屋内ダニ忌避組成物を調製した。
次に、この屋内ダニ忌避組成物10gに、界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル5.0g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油2.0g、及びラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド1.8gを加え、さらに溶剤としてエタノール20g、消臭成分として緑茶抽出物1.5g、安定剤としてBHT1.9g、微量のイソチアゾリン系防腐剤、微量の苦味剤(ビトレックス)、及び適量の水を配合し、全体を386gとして含浸液(屋内ダニ忌避剤原液)を調製した。
【0035】
上面に総面積24cm2の開口部を有し、容量が500mLの円筒状のプラスチック容器(φ:8cm、高さ:10cm)に、吸水性ポリマーとして、粒径が約2mmのアクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体14gを入れた。これに上記含浸液(屋内ダニ忌避剤原液)を注ぎ込んだ
ところ、吸水性ポリマーが膨潤し、粒径が約10mmの本発明の水性ゲルビーズタイプの屋内ダニ忌避剤1が得られた。
【0036】
(実施例11)
トリシクロデセニルアセテート10質量%、ベンジルベンゾエート20質量%、及びその他成分を配合した屋内ダニ忌避組成物を調製した。
次に、この屋内ダニ忌避組成物10gに、界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル5.0g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油2.0g、及びラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド1.8gを加え、さらに溶剤としてエタノール20g、消臭成分として緑茶抽出物1.5g、安定剤としてBHT1.9g、微量のイソチアゾリン系防腐剤、微量の苦味剤(ビトレックス)、及び適量の水を配合し、全体を386gとして含浸液(屋内ダニ忌避剤原液)を調製した。
【0037】
上面に総面積24cm2の開口部を有し、容量が500mLの円筒状のプラスチック容器(φ:8cm、高さ:10cm)に、吸水性ポリマーとして、粒径が約2mmのアクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体14gを入れた。これに上記含浸液(屋内ダニ忌避剤原液)を注ぎ込んだところ、吸水性ポリマーが膨潤し、粒径が約10mmの本発明の水性ゲルビーズタイプの屋内ダニ忌避剤2が得られた。
【0038】
実施例10及び11で得られた水性ゲルビーズタイプのダニ忌避剤1及び2をクローゼット内においてそれぞれ使用した。1週間後にクローゼット内を確認したところ、水性ゲルビーズタイプの屋内ダニ忌避剤1及び2のいずれを用いた場合でもダニの寄り付きは認められず、また、クローゼット内は屋内ダニ忌避剤の有効成分に由来する臭いがほとんどなく、極めて実用性の高いものであった。
【0039】
(実施例12)
トリシクロデセニルノルマルプロピオネート10質量%、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール25質量%、ソープ系香料20質量%、及びその他成分を配合した屋内ダニ忌避組成物を調製した。
次に、この屋内ダニ忌避組成物10gに、界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル5.0g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油2.0g、及びラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド1.8gを加え、さらに溶剤としてエタノール20g、消臭成分として緑茶抽出物1.5g、安定剤としてBHT1.9g、微量のイソチアゾリン系防腐剤、微量の苦味剤(ビトレックス)、及び適量の水を配合し、全体を386gとして含浸液(屋内ダニ忌避剤原液)を調製した。
【0040】
上面に総面積24cm2の開口部を有し、容量が500mLの円筒状のプラスチック容器(φ:8cm、高さ:10cm)に、吸水性ポリマーとして、粒径が約1.8mmのアクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体14gを入れた。これに上記含浸液(屋内ダニ忌避剤原液)を注ぎ込んだところ、吸水性ポリマーが膨潤し、粒径が約8mmの本発明の水性ゲルビーズタイプの屋内ダニ忌避剤3が得られた。
【0041】
実施例12で得られた水性ゲルビーズタイプの屋内ダニ忌避剤3をクローゼット内において使用した。1週間後にクローゼット内を確認したところ、水性ゲルビーズタイプの屋内ダニ忌避剤3を用いた場合、ダニの寄り付きは認められず、また、クローゼット内は屋内ダニ忌避剤の有効成分に由来する臭いがほとんどなく、せっけんの爽やかな香りが感じられ、極めて実用性の高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ダニ忌避剤として、広く利用可能である。