(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】レチノールの生産
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20240702BHJP
C12N 9/04 20060101ALI20240702BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240702BHJP
C12P 7/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N9/04 Z ZNA
C12N1/19
C12P7/02
(21)【出願番号】P 2020512729
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2018076031
(87)【国際公開番号】W WO2019057998
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】バルチ, ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ブロムクィスト, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ドーテン, リード
(72)【発明者】
【氏名】ヒューストン, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ラム, イーサン
(72)【発明者】
【氏名】マクマホン, ジェナ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルーハート, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアルージュ, セリーヌ
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/042338(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0170720(US,A1)
【文献】特表2003-518382(JP,A)
【文献】JANG, Hui-Jeong et al.,Biotechnology and Bioengineering,2015年08月,Vol. 112, No. 8,pp. 1604-1612,DOI: 10.1002/bit.25577
【文献】HONG, Seung-Hye et al.,Applied Microbiology and Biotechnology,2015年08月,Vol. 99, No. 19,pp. 7813 - 7826,DOI: 10.1007/s00253-015-6830-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00- 9/99
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フザリウム属由来の異種真菌レチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]を含むベータ-カロテン産生宿主細胞であって、前記宿主細胞がレチナール及びレチノールを含むレチノイド混合物を産生し、前記レチノイド混合物中のレチナール及びレチノールの総量を基準として前記レチノールの割合が少なくとも95%であ
り、宿主細胞がヤロウイア・リポリティカである、ベータ-カロテン産生宿主細胞。
【請求項2】
前記レチノールデヒドロゲナーゼの作用によって還元され得る前記レチナールが、トランス-レチナール及びシス-レチナールの混合物を含み、前記レチナール混合物中のトランス-レチナールの割合が、少なくとも61~98%の範囲である、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
前記フザリウム属RDHが、配列番号1に従うポリペプチドから選択される、請求項
1又は2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
前記レチノールがさらにアセチル-トランスフェラーゼ酵素の作用によって酢酸レチノールに変換される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項5】
前記レチノイド混合物に存在する前記レチナールが、前記混合物中のレチナールの総量を基準として、少なくとも61%のトランス-アイソフォームのレチナールを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養することを含む、比率が少なくとも9.5:1であるレチノール及びレチナールを含むレチノイド混合物を生産するためのプロセス。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のベータ-カロテン産生宿主細胞を用いてレチノールを生産するためのプロセスであって、ベータ-カロテンからレチナールへの変換を触媒するベータ-カロテン酸化酵素(BCO)を発現することを更に含む、プロセス。
【請求項8】
レチノールから酢酸レチノールへの変換を触媒する真菌アセチル-トランスフェラーゼ酵素(ATF)を発現することを更に含む、請求項
6又は
7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記BCO及び/又はATFが異種発現している、請求項
7又は
8に記載のプロセス。
【請求項10】
(a)配列番号1に従うポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有するレチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]をコードする核酸分子を、請求項1に記載の適切な宿主細胞に導入し異種発現するステップと、
(b)前記レチノールデヒドロゲナーゼの発現によって、レチナールを、少なくとも9.5:1の比率のレチノール及びレチナールを含むレチノイド混合物に酵素変換するステップと
を含む、ビタミンAの生産プロセス。
【請求項11】
少なくとも9.5:1の比率のレチノール及びレチナールを含むレチノイド混合物を生産するためのプロセスにおける、請求項1~
5のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用であって、前記宿主細胞が異種レチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]を発現している、使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、レチナールの変換によってビタミンAアルコール(レチノール)を生産するための新規の酵素プロセスに関し、本プロセスは、レチナールレダクターゼとしての活性を有する異種酵素の使用を含み、特に、この反応は、レチナールからレチノールへの少なくとも約90%の変換をもたらす。前記プロセスは特に、ビタミンAの生物工学的生産のために有用である。
【0002】
レチノールは、特に、ビタミンAの生産プロセスなどのレチノイドの生産プロセスにおける重要な中間体/前駆体である。ビタミンAを含むレチノイドは、栄養による供給を受けなければならないヒトにとって非常に重要で不可欠な栄養素の1つである。レチノイドは、特に視覚、免疫系及び成長に関して、ヒトの健康な状態を促進する。
【0003】
ビタミンA及びその前駆体を含むレチノイドの現在の化学的生産方法は、例えば、高エネルギー消費、複雑な精製工程及び/又は望ましくない副産物などのいくつかの望ましくない特徴を有する。したがって、過去数十年間にわたって、ビタミンA及びその前駆体を含むレチノイドを製造するために、より経済的且つ生態学的であり得る、微生物変換工程を含む他のアプローチが研究されている。
【0004】
一般に、レチノイドを産生する生物系は産業的に扱いが困難であり、且つ/或いは非常に低レベルの化合物を生じるので、商業規模の単離が実用的でない。これには、このような生物系におけるレチノイドの不安定性、又は比較的高い副産物の生成を含むいくつかの理由がある。
【0005】
したがって、ベータ-カロテンからビタミンAへの酵素変換の産物特異性及び/又は生産性を改善することが継続中の課題である。特に、レチノールに対するレチナールの変換に関与する酵素の生産性を最適化すること、すなわち、高レチナール還元活性を有する酵素を探すことが望ましい。
【0006】
驚くことに、我々は今回、レチノールの生成に対して少なくとも約90%の全変換率で、レチナールをレチノールに変換することができる特異的なレチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)を特定することができた。
【0007】
特に、本発明は、適切な宿主細胞、例えば、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞などにおいて異種発現され、レチナールをレチノールに還元する活性を有するRDH、好ましくは真菌RDHに関し、前記宿主細胞により産生されるレチノイドの総量を基準として、レチノールの産生に対する全変換率は少なくとも約90%、好ましくは92、95、97、98、99又はさらに100%であり、すなわち、宿主細胞により産生された前記レチノイド混合物中に存在するレチナールの量と比較して、レチノールの量は少なくとも約90%である。
【0008】
本発明は、1つの態様では、好ましくは、本明細書で定義されるようなRDHを含むカロテノイド産生宿主細胞、特にレチノイド産生宿主細胞に関し、前記宿主細胞は、レチノール及びレチナールの両方を含むレチナール混合物を産生し、レチノールの割合は、レチノール混合物中のレチノイド(レチナール/レチノールを含む)の総量を基準として少なくとも約90%、好ましくは92、95、97、98、99又はさらに100%である。
【0009】
「レチナールレダクターゼ」、「レチノールデヒドロゲナーゼ」、「レチナール還元活性を有する酵素」又は「RDH」という用語は本明細書において互換的に使用され、レチナールからレチノールへの変換と、さらにレチナールをもたらす逆反応とを触媒することができる酵素[EC1.1.1.105]を指し、後者の活性は、本発明に従って、約10%以下まで低減され得る。
【0010】
レチノールの酵素触媒作用に関連する「変換」、「酸化」、「還元」という用語は本明細書において互換的に使用され、本明細書で定義されるRDHの作用を指す。
【0011】
本明細書で使用される場合、「真菌宿主細胞」という用語は、特に、宿主細胞としての酵母、例えば、ヤロウイア属(Yarrowia)又はサッカロミケス属(Saccharomyces)などを含む。
【0012】
レチナールの酵素触媒作用からのレチノールの産生に対する少なくとも約90%の全変換率をもたらす本明細書で定義されRDHは、好ましくは適切な宿主細胞に導入される、すなわち異種酵素として発現されるか、又は内在性酵素として発現されてもよい。好ましくは、本明細書に記載される酵素は異種酵素として発現される。
【0013】
本発明の目的で、レチノールの形成に対して少なくとも約18%、例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80%の増大をもたらす任意のレチナール還元酵素を本明細書で定義されるプロセスにおいて使用することができ、このような増大は、適切なカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞、例えば、ヤロウイア属(Yarrowia)菌株又はサッカロミケス属(Saccharomyces)菌株などに存在する内在性RDHを用いてレチノール形成において計算される。
【0014】
本明細書で定義されるような、レチノール形成、すなわちレチナール還元反応に対する活性を有するRDHは、例えば、植物、ヒトを含む動物、藻類、酵母を含む真菌、又は細菌などの任意の供給源から得ることができる。
【0015】
一実施形態では、本明細書で定義されるRDH活性を有する、すなわちレチノールに対して少なくとも90%の全変換率を有するポリペプチドは、子嚢菌門又はケカビ目から選択される真菌を含むがこれらに限定されない真菌、特にディカリア又はケカビ(Mycoromycetes)から得ることができ、好ましくは、フザリウム属(Fusarium)又はムコール属(Mucor)から得られ、より好ましくは、F.フジクロイ(F.fujikuroi)又はM.キルキネロイデス(M.circinelloides)から単離され、例えば、F.フジクロイ(F.fujikuroi)FfRDH12(EXK27040に由来するポリペプチド配列)又はM.キルキネロイデス(M.circinelloides)McRDH12(EPB85547.1に由来するポリペプチド配列)に対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチド、例えば、配列番号2に従うポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドなど含む、配列番号1に従うポリペプチドに対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドなどである。
【0016】
さらなる実施形態では、本明細書で定義されるRDH活性を有する、すなわちレチノールに対して少なくとも90%の全変換率を有するポリペプチドはヒトを含む動物から得ることができ、好ましくは、ラット又はヒトから得られ、例えば、ヒトHsRDH12(NP_689656.2に由来するポリペプチド配列)又はラットRnRDH12(NP_001101507.1に由来するポリペプチド配列)、例えば、配列番号5又は6によってコードされるポリペプチドに対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドなどである。
【0017】
一実施形態では、本明細書に記載される宿主細胞は、レチノールの産生に対して少なくとも約90%、好ましくは92、95、97、98、99又はさらに100%の全変換率でレチナールを変換することができる。好ましくは、このような変換は、少なくとも約61%の割合をトランス-レチナールとして含む、例えば、約61~90%のトランス-アイソフォームを含む、宿主細胞において産生されるレチナール混合物から得られる。レチナールは、それぞれのベータ-カロテンオキシダーゼ(BCO)、例えば、好ましくはドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)BCO、DmNinaB、又は配列番号3に従うポリペプチドに対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、95、97、98、99%若しくは最大100%までの同一性を有するポリペプチドにより触媒される、ベータ-カロテンからレチナールへの変換によって得ることができる。好ましくは、本明細書で定義されるRDHの作用によりレチノールに変換され得るレチナール混合物は、少なくとも61~65%のトランス-レチナール、例えば、約61~90%トランス-アイソフォームを含むが、本発明に従うRDHの活性/変換は、トランス-及びシス-レチナールの割合に無関係である。
【0018】
したがって、一実施形態では、本発明は、(1)ベータ-カロテンからシス-及びトランス-レチナール混合物への変換を触媒し、レチナール混合物中のトランス-レチナールの割合が少なくとも61%である、立体選択的ベータ-カロテンオキシダーゼ(BCO)、すなわちトランス特異的BCOと、(2)レチナール、例えば混合物中のレチナールの総量を基準として少なくとも61%の割合のトランス-レチナールを有するレチナール混合物からレチノールへの変換を触媒し、レチノールに対する全変換率が少なくとも約90%である、本明細書で定義される特異的RDHと、を含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に関する。
【0019】
本明細書で定義されるようなBCOの例は、例えば、植物、動物、細菌、真菌、藻類などの任意の供給源から得ることができる。特に有用な立体選択的BCOは、子嚢菌門又は担子菌門から選択される真菌を含むがこれらに限定されない真菌、特にディカリアから得られ、好ましくはフザリウム属(Fusarium)又はウスチラゴ属(Ustilago)から得られ、より好ましくはF.フジクロイ(F.fujikuroi)又はU.マイディス(U.maydis)から単離され、例えば、FfCarX(AJ854252に由来するポリペプチド配列)、UmCCO1(EAK81726に由来するポリペプチド配列)などである。さらに、特に有用な立体選択的BCOは昆虫、特に双翅目から得られ、好ましくはドロソフィラ属(Drosophila)から、より好ましくはD.メラノガスター(D.melanogaster)から得られ、例えば、DmNinaB又はDmBCO(NP_650307.2に由来するポリペプチド配列)などである。さらに、特に有用な立体選択的BCOは植物、特に被子植物から得られ、好ましくはクロクス属(Crocus)から、より好ましくはC.サティブス(C.sativus)得られ、例えば、CsZCO(Q84K96.1に由来するポリペプチド配列)などである。さらに、特に有用な立体選択的BCOは真核生物、特に魚綱(pesces)から得られ、好ましくはダニオ属(Danio)又はイクタルルス属(Ictalurus)から、より好ましくはD.レリオ(D.rerio)又はI.プンクタトゥス(I.punctatus)から得られ、例えば、DrBCO1(Q90WH4に由来するポリペプチド配列)、IpBCO(XP_017333634に由来するポリペプチド配列)などである。
【0020】
本発明の1つの好ましい態様では、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、(1)D.メラノガスター(D.melanogaster)などのドロソフィラ属(Drosophila)から選択される立体選択的BCO、好ましくは配列番号3に従うポリペプチドと、(2)真菌、例えば、フザリウム属(Fusarium)、好ましくはF.フジクロイ(F.fujikuroi)、より好ましくはFfRDH12(配列番号1)から選択される、本明細書で定義されるレチノールの生成に対する活性を有するRDHとを含む。
【0021】
本明細書で定義される宿主細胞に、遺伝子及び/又はタンパク質、例えば、本明細書で定義されるレチノールの形成に対する選択性を有するトランス選択的BCO又はRDHなどのコピーをより多く生じさせるための改変は、強力なプロモーター、適切な転写及び/若しくは翻訳エンハンサーの使用、又はカロテノイド産生宿主細胞への1つ若しくは複数の遺伝子コピーの導入を含み、所与の時間におけるそれぞれの酵素の蓄積の増大をもたらし得る。当業者には、宿主細胞に基づいてどの技術を使用するかが分かる。遺伝子発現の増大又は低減は、例えば、ノーザン、サザン又はウエスタンブロット技術などの当該技術分野で知られている種々の方法によって測定することができる。
【0022】
核酸又はアミノ酸への突然変異の発生、すなわち突然変異誘発は、例えば、ランダム若しくは部位特異的(side-directed)突然変異誘発、例えば放射線などの作用物質によって生じる物理的損傷、化学的処理、又は遺伝因子の挿入などによる種々の方法で実施され得る。当業者には、突然変異を導入する方法が分かる。
【0023】
したがって、本発明は、発現ベクター、又は宿主の染色体DNAに組み込まれた本明細書に記載されるRDHをコードするポリヌクレオチドを含む、本明細書に記載されるカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に関する。本明細書に記載されるRDHをコードする、発現ベクター上の又は染色体DNAに組み込まれた異種ポリヌクレオチドを含むこのようなカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、組換え宿主細胞と呼ばれる。カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、本明細書で定義されるRDHをコードする遺伝子、例えば、配列番号1に従うポリペプチドに対して少なくとも約60%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどの1つ又は複数のコピーを含有し、本明細書で定義されるRDHをコードするこのような遺伝子の過剰発現をもたらし得る。遺伝子発現の増大は、例えば、ノーザン、サザン又はウエスタンブロット技術などの当該技術分野で知られている種々の方法によって測定することができる。
【0024】
本明細書で開示される配列と、少なくとも約90%の全変換率を有するレチナールからレチノールへの還元に対する優先性とに基づいて、レチナールからレチノールへの変換に使用され得る、本明細書で定義されるレチナール還元活性を有するポリペプチドをコードするさらなる適切な遺伝子を容易に推定することができ、特に、変換され得るレチナール混合物中のトランス-レチナールの割合は、レチナール混合物中に存在するトランス-レチナールが少なくとも約61%、例えば、少なくとも約61~90%である。したがって、本発明は、新規のレチナール還元酵素を同定するための方法に関し、ここで、少なくとも約90%の全変換率のレチノールの産生に対する優先性を有する新規のレチナール還元酵素のスクリーニングプロセスにおけるプローブとして、F.フジクロイ(F.fujikuroi)RDH12(配列番号1)に対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドが使用される。還元作用が、反応混合物中のレチナールの量と比較して少なくとも約90%のレチノールをもたらす限り、RDH活性を有するあらゆるポリペプチドが、本明細書に記載されるレチナールからのレチノールの産生のために使用され得る。したがって、本発明に従うプロセスのために使用される適切なRDHは、例えば、レチノールからレチナールへの変換(逆反応)から得られるレチノイドの総量に基づいて、約10%以下のレチナールを産生することができる酵素を含む。
【0025】
本発明は特に、レチノールの生産プロセスにおけるこのような新規のレチナール還元酵素の使用に関し、ここで、本明細書で定義される前記RDHの作用によるレチナールの産生は低減又は消失され、レチノールの産生は増大されており、レチノイド混合物中のレチノールとレチナールの比率は少なくとも約9:1になる。このプロセスは、前記RDHを発現する適切なカロテノイド産生宿主細胞を用いて実施することができ、好ましくは、前記RDHをコードする遺伝子は異種発現される、すなわち前記宿主細胞に導入される。レチノールはさらに、(既知の)適切な機構の作用によってビタミンAに変換され得る。
【0026】
レチノールからレチナールへの変換に対する活性の低減又は消失は、本明細書で使用される場合、レチナールの産生に対する活性がレチノールの産生に対する酵素活性と比べて低下されることを意味する。本明細書で使用される場合、レチノールからレチナールへの変換に対する活性の低減又は消失、すなわちレチナールからレチノールへの還元に対する産物比の改善は、レチノイド混合物中のレチノールとレチナールの産物比が少なくとも約9:1、例えば、9.1:1、9.2:1、9.5:1、9.8:1又は最大10:1までであることを意味し、この産物比は、本明細書で定義される特異的なRDHを用いて達成される。
【0027】
レチノイド混合物中のレチナールの量の低減又は消失は、本明細書で定義されるRDHの酵素作用によって産生されるレチノイドの総量を基準として、レチノイド混合物中のレチナールを約10%以下まで制限することを意味する。
【0028】
本明細書で定義されるレチナール還元酵素の使用は、レチナールの低減に関するさらなる遺伝子改変を有さない、すなわち宿主細胞中に存在する内在性真菌RDH相同体を発現する、例えばヤロウイア属(Yarrowia)又はサッカロミケス属(Saccharomyces)などのこのような真菌宿主細胞において内在性RDH(のみ)を保有する非改変宿主細胞と比較して、全変換率の少なくとも約18%、例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80%などの増大をもたらす。
【0029】
本明細書で使用される場合、レチノールの産生に関して、特に本明細書で定義されるRDHを用いたレチナールの変換からのレチノールの産生に関して「少なくとも約90%」という用語は、少なくとも約90%、例えば、92、95、98%又は最大100%までのレチナールがレチノールに変換されることを意味する。レチナールの産生に関して、特に本明細書で定義されるRDHを用いたレチノールの変換からのレチナールの産生に関して「約10%以下」という用語は、約10%以下、例えば、8、7、5、2又は0%までの産生したレチノールが変換されてレチナールに戻ることを意味する。これらの数値は全て、本明細書で定義される適切なカロテノイド産生宿主細胞中に存在するレチノイド混合物中のレチナール及びレチノールの量を基準とする。
【0030】
「配列同一性」、「同一性%」又は「配列相同性」という用語は、本明細書において互換的に使用される。本発明の目的で、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の配列相同性又は配列同一性の割合を決定するために、配列は最適な比較を目的として整列されることが本明細書において定義される。2つの配列間のアライメントを最適化するために、比較される2つの配列のいずれかにギャップが導入され得る。このようなアライメントは、比較されている配列の全長にわたって行うことができる。或いは、アライメントは、より短い長さ、例えば約20、約50、約100又はそれ以上の核酸/塩基又はアミノ酸にわたって行われてもよい。配列同一性は、報告された整列領域にわたる2つの配列間の同一マッチの割合である。2つのアミノ酸配列間又は2つのヌクレオチド配列間の配列同一性パーセントは、2つの配列のアライメントのためのNeedleman及びWunschアルゴリズム(Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443-453)を用いて決定され得る。アミノ酸配列及びヌクレオチド配列はいずれも、このアルゴリズムによって整列され得る。Needleman-WunschアルゴリズムはコンピュータプログラムNEEDLEに実装されている。本発明の目的では、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムを使用した(バージョン2.8.0以上、EMBOSS:European Molecular Biology Open Software Suite(2000)Rice,Longden and Bleasby,Trends in Genetics 16,(6)pp276-277、http://emboss.bioinformatics.nl/)。タンパク質配列については、置換マトリックスのためにEBLOSUM62が使用される。ヌクレオチド配列につては、EDNAFULLが使用される。使用される任意選択的パラメータは、10のギャップ-オープンペナルティ及び0.5のギャップ伸長ペナルティである。当業者は、これらの異なるパラメータ全てがわずかに異なる結果をもたらし得るが、異なるアルゴリズムを用いたときに2つの配列の全体の同一性の割合は有意に変化されないことを認識するであろう。
【0031】
上記のプログラムNEEDLEによるアライメントの後、クエリー配列と本発明の配列との間の配列同一性の割合は、以下のように計算される:両方の配列内の同一アミノ酸又は同一ヌクレオチドを示すアライメント内の対応する位置の数を、アライメント内のギャップの総数を差し引いた後のアライメントの全長で除する。本明細書で定義される同一性は、NOBRIEFオプションを使用することによってNEEDLEから得ることができ、プログラムの出力において「最長同一性」として標識される。比較される両方のアミノ酸配列が、そのアミノ酸のいずれにおいても違いがない場合、これらは同一である、すなわち100%の同一性を有する。本明細書で定義される植物に由来する酵素に関して、当業者には、植物由来の酵素が例えば葉緑体プロセシング酵素(CPE)などの特異的酵素により切断され得る葉緑体標的シグナルを含有し得ることが分かる。
【0032】
宿主細胞に応じて、本明細書で定義されるポリヌクレオチドは、それぞれの宿主細胞における発現のために最適化され得る。当業者には、このような改変ポリヌクレオチドを作成する方法が分かる。本明細書で定義されるポリヌクレオチドは、このような宿主最適化核酸分子が本明細書で定義されるそれぞれの活性を有するポリペプチドを依然として発現する限り、これらも包含することが理解される。
【0033】
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書で定義されるRDHをコードするポリヌクレオチドを含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に関し、これは、宿主細胞又は酵素の成長又は発現パターンに影響を与えずに、前記宿主細胞における発現のために最適化されている。特に、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)などのヤロウイア属(Yarrowia)から選択され、本明細書で定義されるRDHをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2、5、6、又は7に対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリヌクレオチドから選択される。
【0034】
本明細書で定義されるRDHは、酵素活性を変更しないアミノ酸置換を保有する酵素も包含し、すなわちこれらは野生型酵素に関して同じ特性を示し、特に、レチノールの産生に対して、少なくとも約90%の全変換率で、レチナールからレチノールへの変換を触媒する。このような突然変異は「サイレント変異」とも呼ばれ、本明細書に記載される酵素の(酵素)活性を変更しない。
【0035】
本発明に従う核酸分子は、例えば配列番号2、4、5、6又は7に従うポリヌクレオチド配列などの、本発明により提供される核酸配列の一部のみ又は断片、例えば、プローブ若しくはプライマーとして使用され得る断片、又は本明細書で定義されるRDHの一部をコードする断片を含み得る。RDH遺伝子のクローニングから決定されるヌクレオチド配列は、他の種からの他の相同体の同定及び/又はクローニングにおいて使用するために設計されるプローブ及びプライマーの作成を可能にする。プローブ/プライマーは、通常、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含み、これは通常、配列番号2、4、5、6又は7に従うヌクレオチド配列の少なくとも約12又は15、好ましくは約18又は20、より好ましくは約22又は25、さらにより好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65、又は75以上の連続ヌクレオチド又はその断片又は誘導体に対して好ましくは高ストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
【0036】
このようなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、約45℃における6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中のハイブリダイゼーションと、その後の、50℃、好ましくは55℃、より好ましくは60℃、さらにより好ましくは65℃における1xSSC、0.1%SDS中の1回又は複数回の洗浄である。
【0037】
高ストリンジェント条件には、例えば、100μg/mlサケ精子DNAを含むか又は含まないDigEasyHyb溶液(Roche Diagnostics GmbH)、又は50%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、0.02%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%N-ラウロイルサルコシン、及び2%ブロッキング試薬(Roche Diagnostics GmbH)を含む溶液などの溶液中でジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブ(DIG標識化系;Roche Diagnostics GmbH,68298 Mannheim,Germanyを用いて調製)を用いた42℃における2時間~4日間のインキュベーションと、その後、室温において2xSSC及び0.1%SDS中で5~15分間フィルターを2回洗浄し、次に、65~68℃において0.5xSSC及び0.1%SDS又は0.1xSSC及び0.1%SDS中で15~30分間2回洗浄することが含まれる。
【0038】
本明細書で定義される特異的RDHの1つをコードする酵素/ポリヌクレオチドの発現は、カロテノイド/レチノイドの産生に適しており、且つ本明細書に記載される機能的等価物又は誘導体を含む本明細書で開示される酵素の1つをコードする核酸の発現を可能にする(微)生物を含む任意の宿主系において達成することができる。適切なカロテノイド/レチノイド産生宿主(微)生物の例は、細菌、藻類、酵母を含む真菌、植物又は動物細胞である。好ましい細菌は、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)などのエシェリキア属(Escherichia)、ストレプトミケス属(Streptomyces)、パンテア属(Pantoea)(エルウィニア属(Erwinia))、バチルス属(Bacillus)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、シネココックス属(Synechococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロコックス属(Micrococcus)、ミクソコックス属(Mixococcus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ゴルドニア属(Gordonia)、ディエトジア属(Dietzia)、ムリカウダ属(Muricauda)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、シノコキスティス属(Synochocystis)、例えばパラコックス・ゼアキサンチニファキエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)などのパラコックス属(Paracoccus)のものである。好ましい真核微生物、特に酵母を含む真菌は、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などのサッカロミケス属(Saccharomyces)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などのアスペルギルス属(Aspergillus)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などのピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などのハンゼヌラ属(Hansenula)、フィコミケス・ブラケスレアヌス(Phycomyces blakesleanus)などのフィコミケス属(Phycomyces)、ムコール属(Mucor)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、スポロボロミケス属(Sporobolomyces)、キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyces)、ファフィア属(Phaffia)、例えばブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)などのブラケスレア属(Blakeslea)、又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)などのヤロウイア属(Yarrowia)から選択される。特に好ましいのは、例えば、ヤロウイア属(Yarrowia)若しくはサッカロミケス属(Saccharomyces)などの真菌宿主細胞における発現、又はエシェリキア属(Escherichia)における発現、より好ましくは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)又はサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現である。
【0039】
本発明に関して、例えば、微生物、真菌、藻類、又は植物などの生物は、原核生物の国際命名規約又は藻類、真菌、及び植物の国際命名規約(メルボルン規約)によって定義されるような、同じ生理学的特性を有するこのような種の同義語又はバソニムも含むことが理解される。
【0040】
本明細書で使用される場合、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、それぞれのポリペプチドがインビボで発現され且つ活性であり、カロテノイド、例えばベータ-カロテンの産生をもたらす宿主細胞である。カロテノイド産生宿主細胞を作成するための遺伝子及び方法は当該技術分野において知られており、例えば、国際公開第2006102342号パンフレットが参照される。産生されるカロテノイドに応じて、異なる遺伝子が関与し得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、レチノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、それぞれのポリペプチドがインビボで発現され且つ活性であり、ベータ-カロテンからレチナール及びレチノールへの酵素変換によって、レチノイド、例えば、ビタミンA及びその前駆体の産生をもたらす宿主細胞である。これらのポリペプチドは、本明細書で定義されるRDHを含む。ビタミンA経路の遺伝子、及びレチノイド産生宿主細胞の作成方法は、当該技術分野において知られている。好ましくは、ベータ-カロテンはベータ-カロテン酸化酵素の作用によってレチナールに変換され、レチナールは本明細書で定義されるRDHの作用によってさらにレチノールに変換され、レチノールは、アセチル-トランスフェラーゼ酵素、例えばATF1などの作用によって酢酸レチノールに変換される。酢酸レチノールは、宿主細胞から単離される最適なレチノイドであり得る。
【0042】
本発明は、本明細書に記載されるRDHの作用によるレチナールの還元によって、特に少なくとも90%の全変換率でレチノールを生産するための方法に関し、生産されるレチノイド混合物中のレチナールの量は約10%以下であり、レチナール還元酵素は、好ましくは、本明細書に記載される適切な条件下、適切な宿主細胞において異種発現される。産生されるレチノールは培地及び/又は宿主細胞から単離され、任意選択的にさらに精製され得る。さらなる実施形態では、レチノールは、ビタミンAをもたらす多段階プロセスにおける前駆体として使用することができる。ビタミンAは、当該技術分野で知られているように培地及び/又は宿主細胞から単離され、任意選択的にさらに精製され得る。
【0043】
したがって、本発明は、レチノイド混合物中のレチナールの割合を低減するため、又はレチノイド混合物中のレチノールの割合を増大させるためのプロセスに関し、レチノールは、本明細書で定義されるRDHの1つと、レチナールとを接触させ、少なくとも約90%の割合のレチノール又は約35%以下のレチナールを有するレチノール/レチナール混合物をもたらすことによって生成される。特に、前記プロセスは、(a)本明細書で定義されるRDHの1つをコードする核酸分子を、本明細書で定義される適切なカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に導入することと、(b)前記発現されたRDHの作用によってレチナールをレチノールに酵素切断し、レチノールの割合が、レチノイド混合物中のレチナール及びレチノールの総量を基準として少なくとも90%であることと、任意選択的に(3)当業者に知られている適切な条件下でレチノール、好ましくはトランス-レチノールをビタミンAに変換することとを含む。
【0044】
ベータ-カロテン産生遺伝子、本明細書で定義されるRDH遺伝子、任意選択的に、ベータ-カロテン酸素化酵素をコードする遺伝子、及び/又は任意選択的に、ビタミンAの生合成に必要とされるさらなる遺伝子を発現することができる宿主細胞、すなわち微生物、藻類、真菌、動物又は植物細胞は、好気性又は嫌気性条件下で適切な栄養分が補充され、種々の宿主細胞のために当業者により知られているような水性培地中で培養され得る。任意選択的に、このような培養は、本明細書で定義される電子の移動に関与するタンパク質及び/又は補助因子の存在下で行われる。宿主細胞の培養/成長は、バッチ、流加バッチ(fed-batch)、半連続又は連続モードで行うことができる。宿主細胞に応じて、好ましくは、例えば、ビタミンA及び前駆体(レチナール、レチノールなど)などのレチノイドの産生は、当業者に知られているように異なり得る。ヤロウイア属(Yarrowia)から選択されるベータ-カロテン及びレチノイド産生宿主細胞の培養及び単離は、例えば、国際公開第2008042338号パンフレットに記載されている。E.コリ(E.coli)から選択される宿主細胞におけるレチノイドの産生に関して、方法は、例えば、Jang et al,Microbial Cell Factories,10:95(2011)に記載されている。例えば、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母宿主細胞においてベータ-カロテン及びレチノイドを生産するための特定の方法は、例えば、国際公開第201496992号パンフレットに開示されている。
【0045】
本明細書で使用される場合、酵素に関して「比活性」又は「活性」という用語は、その触媒活性、すなわち所与の基質からの産物の形成を触媒するその能力を意味する。比活性は、規定温度において所与の期間に規定量のタンパク質によって消費される基質及び/又は産生される産物の量を定義する。通常、比活性は、タンパク質1mg当たり1分間に消費される基質又は形成される産物のμmolで表される。通常、μmol/分はU(=単位)で略される。したがって、μmol/分/(タンパク質mg)又はU/(タンパク質mg)という比活性の単位の定義は、本文書を通して互換的に使用される。酵素は、インビボで、すなわち本明細書で定義される宿主細胞内、又は適切な基質が存在する系内でその触媒活性を実施すれば活性である。当業者には、酵素活性、特に、本明細書で定義されるRDHの活性の測定方法が分かる。レチナールの変換からのレチノールの産生について本明細書で定義される適切なRDHの能力を評価するための分析方法は当該技術分野において知られており、例えば、国際公開第2014096992号パンフレットの実施例4などに記載されている。簡単には、レチノール、トランス-レチナール、シス-レチナール、ベータ-カロテンなどの産物の力価は、HPLCによって測定することができる。
【0046】
本明細書で使用されるレチノイドは、レチナール、レチノール酸、レチノール、レチノイン酸メトキシド(retinoic methoxide)、酢酸レチニル、レチニルエステル、4-ケト-レチノイド、3ヒドロキシ-レチノイド又はこれらの組合せを含むが、これらに限定されないアポカロテノイドとしても知られているベータカロテン切断産物を含む。レチナール及びレチノールを含む混合物は、本明細書では「レチノイド混合物」と呼ばれ、レチノールに関して「少なくとも約90%」、又はレチナールに関して「約10%以下」の割合は、このようなレチノイド混合物中のレチノール対レチナールの比率を指す。レチノイドの生合成は、例えば、国際公開第2008042338号パンフレットに記載されている。
【0047】
本明細書で使用されるレチナールは、IUPAC名(2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナールで知られている。これは、本明細書では互換的にレチンアルデヒド又はビタミンAアルデヒドと称され、シス-及びトランス-アイソフォームの両方、例えば、11-シスレチナール、13-シスレチナール、トランス-レチナール及び全トランスレチナールなどが含まれる。
【0048】
本明細書で使用される「カロテノイド」という用語は、当該技術分野においてよく知られている。これは、2つの20炭素ゲラニルゲラニルピロリン酸分子の連結により天然で形成される長い40炭素の結合イソプレノイドポリエンを含む。これらには、4-ケト位置又は3-ヒドロキシ位置で酸化されてカンタキサンチン、ゼアキサンチン、又はアスタキサンチンをもたらし得る、フィトエン、リコペン、及び例えばベータ-カロテンなどのカロテンが含まれるが、これらに限定されない。カロテノイドの生合成は、例えば、国際公開第2006102342号パンフレットに記載される。
【0049】
本明細書で使用されるビタミンAは、水溶液中に見られるビタミンAの任意の化学形態(例えば、その遊離酸形態で非解離、又はアニオンとして解離)であり得る。本明細書で使用される用語は、生物工学的ビタミンA経路における全ての前駆体又は中間体を含む。また、酢酸ビタミンAも含む。
【0050】
特に、本発明は、本実施形態を特徴とする:
【0051】
- レチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]を含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞であって、前記宿主細胞がレチナール及びレチノールを含むレチノイド混合物を産生し、前記レチノイド混合物中に存在するレチナールの量と比較して、レチノールの割合が少なくとも約90%、好ましくは92、95、97、98、99又はさらに100%である、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
【0052】
- レチノールデヒドロゲナーゼの作用によって還元され得るレチナールが、トランス-レチナール及びシス-レチナールの混合物を含み、前記レチナール混合物中のトランス-レチナールの割合が、少なくとも約61~98%、好ましくは少なくとも約61~95%、より好ましくは少なくとも約61~90%の範囲である、上記の及び本明細書で定義されるカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
【0053】
- 異種レチノールデヒドロゲナーゼを含む、上記の及び本明細書で定義されるカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
【0054】
- 宿主細胞が、植物、真菌、藻類又は微生物から選択され、好ましくは、酵母を含む真菌から、より好ましくは、サッカロミケス属(Saccharomyces)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、フィコミケス属(Phycomyces)、ムコール属(Mucor)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、スポロボロミケス属(Sporobolomyces)、キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyces)、ファフィア属(Phaffia)、ブラケスレア属(Blakeslea)又はヤロウイア属(Yarrowia)から、さらにより好ましくは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)又はサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から選択される、上記の及び本明細書で定義されるカロテノイド産生宿主細胞。
【0055】
- 宿主細胞が、植物、真菌、藻類又は微生物から選択され、好ましくは、エシェリキア属(Escherichia)、ストレプトミケス属(Streptomyces)、パンテア属(Pantoea)、バチルス属(Bacillus)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、シネココックス属(Synechococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロコックス属(Micrococcus)、ミクソコックス属(Mixococcus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ゴルドニア属(Gordonia)、ディエトジア属(Dietzia)、ムリカウダ属(Muricauda)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、シノコキスティス属(Synochocystis)又はパラコックス属(Paracoccus)から選択される、上記の及び本明細書で定義されるカロテノイド産生宿主細胞。
【0056】
- レチノールデヒドロゲナーゼが、真菌、好ましくはフザリウム属(Fusarium)、より好ましくはフザリウム・フジクロイ(Fusarium fujikuroi)から選択され、最も好ましくは、F.フジクロイ(F.fujikuroi)RDH12の群から選択され、特に、配列番号1に従うポリペプチド、又は配列番号2に従うポリヌクレオチドによってコードされる配列に対して少なくとも60%の同一性を有するポリペプチドから選択される、上記の及び本明細書で定義されるカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
【0057】
- レチノールがさらにビタミンAに変換される、上記の及び本明細書で定義されるカロテノイド産生宿主細胞。
【0058】
- ドロソフィラ属(Drosophila)から選択される、ベータ-カロテンからレチナール混合物への変換を触媒するトランス選択的ベータ-カロテン酸化酵素であって、混合物が、混合物中のレチナールの総量を基準として、少なくとも約61%、好ましくは65、68、70、75、80、85、90、95、98又は最大100%までのトランス-アイソフォームのレチナールを含み、より好ましくは、配列番号3に従うポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性を有する配列から選択されるトランス選択的ベータ-カロテン酸化酵素をさらに含む、上記の及び本明細書で定義されるカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
【0059】
- レチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]の酵素活性によってレチノール及びレチナールを含むレチノイド混合物を生産するためのプロセスであって、レチナールを前記レチノールデヒドロゲナーゼと接触させることを含み、レチノイド混合物中のレチノール対レチナールの比率が少なくとも約9:1である、プロセス。
【0060】
- レチノールデヒドロゲナーゼの酵素作用から生じるレチノイド混合物中のレチナールの量を低減するためのプロセスであって、前記プロセスが、レチナールを本明細書で定義されるレチノールデヒドロゲナーゼと接触させることを含み、前記酵素作用から得られるレチノイド混合物中のレチナールの量がレチノールの量と比較して約10%以下の範囲である、プロセス。
【0061】
- レチノールデヒドロゲナーゼの酵素作用から生じるレチノイド混合物中のレチノールの量を増大させるためのプロセスであって、前記プロセスが、レチナールを本明細書で定義されるレチノールデヒドロゲナーゼと接触させることを含み、前記酵素作用から得られるレチノイド混合物中のレチノールの量がレチノールの量と比較して少なくとも約90%の範囲である、プロセス。
【0062】
- レチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]を含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞を用いる、上記に従う及び本明細書で定義されるプロセスであって、前記宿主細胞がレチナール及びレチノールを含むレチノイド混合物を産生し、前記レチノイド混合物中に存在するレチナールの量と比較して、レチノールの割合が少なくとも約90%、好ましくは92、95、97、98、99又はさらに100%である、プロセス。
【0063】
- (a)本明細書で定義されるレチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]をコードする核酸分子を適切なカロテン産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に導入するステップと、
(b)レチナールを、少なくとも約9:1の比率のレチノール及びレチナールを含むレチノイド混合物に酵素変換するステップと、
(c)適切な培養条件下でレチノールをビタミンAに変換するステップと
を含む、ビタミンAの生産プロセス。
【0064】
- 9:1の比率のレチノール及びレチナールを含むレチノイド混合物を生産するための、上記の及び本明細書で定義されるレチノールデヒドロゲナーゼ[EC1.1.1.105]の使用であって、レチノールデヒドロゲナーゼが適切なカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞において異種発現される、使用。
【0065】
以下の実施例は説明のためだけのものであって、本発明の範囲を限定することは全く意図されない。本出願全体を通して引用される全ての参考文献、特許出願、特許、及び公開特許出願、特に国際公開第2006102342号パンフレット、国際公開第2008042338号パンフレット又は国際公開第2014096992号パンフレットの内容は、参照によって本明細書に援用される。
【0066】
[実施例]
[実施例1:一般的な方法、菌株、及びプラスミド]
本明細書に記載される全ての基本的な分子生物学及びDNA操作手順は、一般的に、Sambrook et al.(eds.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press:New York(1989)、又はAusubel et al.(eds).Current Protocols in Molecular Biology.Wiley:New York(1998)に従って実施される。
【0067】
[振とうプレートアッセイ]
通常、800μlの0.075%酵母抽出物、0.25%ペプトン(0.25X YP)に、10μlの新たに成長させたヤロウイア属(Yarrowia)を播種し、200μlのDrakeol5鉱油でオーバーレイし、炭素源として鉱油中5%のコーン油及び/又は水相中5%のグルコースを用いた。24ウェルプレート(Multitron,30℃、800RPM)において、形質転換体をYPD培地中で20%のドデカンと共に4日間成長させた。鉱油画分を振とうプレートウェルから取り出し、フォトダイオードアレイ検出器を用いて、順相カラムでHPLCにより分析した。
【0068】
[DNA形質転換]
菌株をYPDプレート培地上で一晩成長させることにより形質転換させる。50μlの細胞をプレートからこすり取り、1μgの形質転換DNA、通常は組込み形質転換のための直鎖DNA、40%のPEG 3550MW、100mMの酢酸リチウム、50mMのジチオスレイトール、5mMのTris-Cl(pH8.0)、0.5mMのEDTAを含む500μl中、40℃で60分間のインキュベーションにより形質転換させ、選択培地に直接プレーティングするか、或いは優性抗生物質マーカー選択の場合は、細胞をYPD液体培地において30℃で4時間増殖させた後、選択培地にプレーティングする。
【0069】
[DNA分子生物学]
pUC57ベクターにおいてNhel及びMlul末端を用いて遺伝子を合成した。国際公開第2016172282号パンフレットの場合のように、通常、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)形質転換におけるマーカー選択のために、遺伝子をMB5082「URA3」、MB6157HygR、及びMB8327NatRベクターにサブクローニングした。遺伝子及びマーカーHindlll/Xbal(MB5082)又はPvull(MB6157及びMB8327)のランダム非相同末端結合によるクリーンな遺伝子挿入のために、それぞれゲル電気泳動及びQiagenゲル精製カラムにより精製した。
【0070】
[プラスミドのリスト]
使用するプラスミド、菌株、ヌクレオチド及びアミノ酸配列は、表1、2及び配列表に記載される。ヌクレオチド配列番号2、4、5、6、及び7は、ヤロウイア属(Yarrowia)における発現に対してコドン最適化される。
【0071】
【0072】
【0073】
[順相レチノール法]
Waters 717オートサンプラーに取り付けたWaters 1525バイナリーポンプを用いて、サンプルを注入した。安全シリカガードカラムキットを有するPhenomenex Luna 3μ Silica(2),150x4.6mmを使用して、レチノイドを分離した。移動相は、アスタキサンチン関連化合物に対する1000mLのヘキサン、30mLのイソプロパノール、及び0.1mLの酢酸、又はゼアキサンチン関連化合物に対する1000mLのヘキサン、60mLのイソプロパノール、及び0.1mLの酢酸のいずれかからなる。それぞれの流速は、0.6mL/分である。カラム温度は周囲温度である。注入容積は20μLである。検出器は、210nmから600nmまでを収集するフォトダイオードアレイ検出器である。表3に従って分析物を検出した。
【0074】
【0075】
[サンプル調製]
条件に応じて種々の方法によりサンプルを調製した。全培養液又は洗浄培養液サンプルのために、培養液を秤量したPrecellys(登録商標)管に入れ、移動相を添加した。製造指示書に従って最高設定3XにおいてPrecellys(登録商標)ホモジナイザー(Bertin Corp,Rockville,MD,USA)内でサンプルを処理した。洗浄培養液中、サンプルを微量遠心管において10000rpmで1分間、1.7ml管内で回転させ、培養液をデカントし、1mlの水を添加し、混合し、ペレットにし、デカントして、元の容積にした。混合物を再度ペレットにし、適切な量の移動相中に入れ、Precellys(登録商標)ビーズビーティングにより処理した。鉱油画分の分析のために、サンプルを4000RPMで10分間回転させ、ポジティブディスプレイスメントピペット(Eppendorf,Hauppauge,NY,USA)により油を上部からデカントして除去し、移動相中に希釈し、ボルテックスにより混合し、HPLC分析によりレチノイド濃度を測定した。
【0076】
[発酵条件]
発酵は既に記載された条件と同一であり、鉱油のオーバーレイと、0.5L~5Lの全容積のベンチトップ反応器内に供給されたコーン油である攪拌槽とを用いた(国際公開第2016172282号パンフレットを参照)。一般的に、生産性が増大された流加バッチ攪拌漕反応器を用いて同じ結果が観察され、レチノイドの生産のためのシステムの有用性が実証された。
【0077】
[実施例2:ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)におけるレチノイドの産生]
通常、異種RDHの発現のために、ベータカロテン菌株ML17767を、URA3プロモーターへのレチノールデヒドロゲナーゼ(RDH)遺伝子断片リンカーを含有するプラスミド由来の精製HinDIII/Xbal断片で形質転換した。6~8の単離株を振とうプレートアッセイレチノール:レチナール比の低下についてスクリーニングし、成功した単離株を流加バッチ攪拌漕反応器において8日間実行させ、プロセスの生産性の一桁の増大が示され、大規模生産における有用性が示された。フザリウム属(Fusarium)RDH12相同体を用いて最良の結果が得られ、上記のような8日間の振とうフラスコインキュベーションの後に維持された残留レチナールはわずか2%であった。フザリウム属(Fusarium)配列に由来する単離株は、下記の表に示すようにレチノールの還元の増大を実証した。
【0078】
[実施例3:サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるレチノイドの産生]
通常、ベータカロテン菌株は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許出願公開第20160130628号明細書又は国際公開第2009126890号パンフレットに記載される)ような標準的方法に従って、ベータカロテンを産生している構築されたゲラニルゲラニルシンターゼ、フィトエンシンターゼ、リコペンシンターゼ、リコペンシクラーゼなどの酵素をコードする異種遺伝子で形質転換される。さらに、ベータカロテンオキシダーゼ遺伝子で形質転換される場合、レチナールを産生することができる。さらに、レチノールデヒドロゲナーゼで形質転換されると、レチノールを産生することができる。このアプローチを用いて、レチノールに対する生産性に対する特異性に関して同様の結果が得られる。
【0079】
[実施例4:ベータ-カロテンからのレチノールの生産]
実施例2、3及び4に記載される単一の改変に加えて、異種FtRDH12と一緒に異種を保有する菌株を構築した。レチノイドの発酵及び分析を上記のように行った。
【0080】
ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)DmNinaBからの異種BCO(DmBCO1;配列番号3)を発現するために、ベータカロテン菌株ML17544を、URA3栄養マーカーに連結されたコドン最適化断片を含有するベータカロテンオキシダーゼ(BCO)のHindll及びXbal媒介による制限エンドヌクレオチド切断によって、精製直鎖DNA断片で形質転換した。形質転換DNAは、MB6702ドロソフィラ属(Drosophila)NinaB BCO遺伝子に由来し、それにより、コドン最適化配列(配列番号4)が使用された。次に、遺伝子を成長させ、振とうプレート分析において6~8の単離株をスクリーニングし、うまく機能する単離株を流加バッチ攪拌漕反応において8~10日間実行させた。国際公開第2014096992号パンフレットトに記載されるような標準パラメータを用いるが、レチノイド分析物の精製標準物を用いて較正して、HPLCによりシス-及びトランス-レチナールの検出を行った。ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)からのBCO(配列番号3)を異種発現するレチナール混合物中のトランス-レチナールの量は、レチナールの総量を基準として、61%のトランス-レチナールという結果であった(図示せず)。
【0081】
異種FtRDH12の存在は、分析物中で検出されるレチナールの量を20%から4%に低減し、これは、フザリウム属(Fusarium)RDH12の特異的なレチナール還元活性の良好な表示であり(実施例2を参照)、トランス-レチノールの割合は、依然として少なくとも61%の範囲である。
【配列表】