(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】繊維抜出設備の制御方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/04 20060101AFI20240702BHJP
C03B 37/07 20060101ALI20240702BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20240702BHJP
【FI】
C03B37/04
C03B37/07
G01J5/00 101A
(21)【出願番号】P 2020547108
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 FR2019050545
(87)【国際公開番号】W WO2019175503
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】エゼッディーヌ ウーゲンミ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ミヒャエル リーベルクネヒト
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ドミニク デピュイユ
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-340442(JP,A)
【文献】特開平05-132391(JP,A)
【文献】特開昭60-205325(JP,A)
【文献】特開2009-294189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00 - 37/16
D01D 1/00 - 13/02
G01J 5/00 - 5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維形成装置(1)に使用される回転式繊維形成スピナーホイール(10)の特定点を決定する方法であって、以下の工程を含む、方法:
-温度測定装置(40)の角度位置の関数としての温度を表す曲線を構成する少なくとも1つの計算ユニット(30、45)にデータを提供するために、繊維形成スピナーホイールの温度の測定値を取得すること、ここで、前記スピナーホイールの温度の測定値は、温度測定装置の複数の角度位置において、前記スピナーホイールの温度の測定値を取得するように適合された温度測定装置によって取得する;
-計算ユニット(30)によって、角度位置の関数としての温度の曲線の二次導関数の計算を行うことによって、前記測定値を処理すること;
-二次導関数が所定の条件を満たす少なくとも1つの特定点を探索すること、
ここで、前記所定の条件は、前記二次導関数の値をゼロに等しくすることにある。
【請求項2】
前記温度が最大であることを特徴とする特定点を探索することにある追加の探索工程を含む、請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記温度の測定値を、規則的な間隔の間に得て、次いで、前記処理工程の前に平均化する、請求項1又は2に記載の決定方法。
【請求項4】
前記測定値を、2秒~5秒の間隔、好ましくは3秒の間隔で得る、請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
繊維形成装置(1)を用いて鉱物繊維を製造する繊維形成方法による鉱物繊維の製造を制御する方法であって、前記繊維形成装置は、繊維の遠心生成を可能にするために穿孔されている繊維形成スピナーホイール(10)と、繊維を延伸するための環状ガス流を生成する環状バーナー(22)とを含み、以下の工程を含む、方法:
-温度測定装置(40)の種々の環状の位置における温度測定装置により、前記繊維形成スピナーホイールの温度を測定すること;
-請求項1~4のいずれか一項に記載の決定方法を使用して少なくとも1つの第1の特定点を決定すること;
-測定した温度を前記少なくとも1つの第1の特定点に対する所定の値と比較すること;
-温度変化手段によって前記少なくとも1つの第1の特定点において前記繊維形成スピナーホイールの温度を調整するための少なくとも1つの第1の制御信号を生成すること。
【請求項6】
第2の特定点を決定し、調整する、請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記繊維形成装置が、前記第1の特定点の温度を変化させるための第1の手段(50)を含む、請求項5又は6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記繊維形成装置が、前記第2の特定点の温度を変化させるための第2の手段(60)を含む、請求項6に記載の制御方法。
【請求項9】
繊維形成スピナーホイール(10、10’)が、環状壁(10a、10a’)を含み、前記環状壁(10a、10a’)に、一連のオリフィスが穿設されており、かつ上部(10b、10c’)及び下部(10c、10b’)によって横方向に延設されており、少なくとも1つの特定点を、
周辺ストリップの穿孔部分と周辺ストリップを横方向に延設している上部との間の接合部に見られる丸みの点、
温度が最も高い点に対応するホットスポット、及び
底点
から決定する、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
決定された前記特定点のうちの少なく
とも2つ、すなわち、前記底点である前記第1の特定点、及び前記丸みの点である前記第2の特定点において、温度を調整する、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法の工程
の全部をコンピュータに実行させるための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法の工程
の全部をコンピュータに実行させるための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法の工程
の全部をコンピュータに実行させるための命令を含むコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法の工程
の全部をコンピュータに実行させるための命令を含むコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維形成装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる断熱ガラス繊維は、内部遠心によって、すなわち、高速で回転し、その周囲に非常に多数のオリフィスを有する繊維形成スピナーホイールとしても知られる遠心機に溶融ガラスの流れを導入することによって、日常的に製造されている。遠心力の作用によって、ガラスは、フィラメントの形態でこれらのノズルを通って射出される。遠心力に加えて、遠心機の周縁ストリップの穿孔壁に接線方向に放出される高温高速のガス流による延伸を行うことができる。これらの技術において、遠心機は、機械的起源(高い回転速度)、熱的起源(1000℃付近のガラス)及び化学的起源(溶融ガラスによる腐食)の応力によって、非常に大きな負荷を受けている。
【0003】
遠心機にかかるこれらの応力は、その劣化、すなわち、例えばそのオリフィスの寸法の変化によって具現化する劣化をもたらす。
【0004】
ここで、製造される繊維の品質は、遠心機の正しい動作に依存し、すなわち、その良好な一般状態、及び速度及び温度の設定値の遵守に非常に密接に依存する。
【0005】
現在、温度に関与することによって遠心機の摩耗を抑制することが知られている。実際、寿命を改善するために、ストリップの頂部及び底部における温度、及びストリップに沿ったプロファイルを制御することができる。
【0006】
EP0479675から公知の制御方法は、異なる複数の点で繊維形成スピナーホイールの温度を測定して、その後に、スピナーホイールの回転速度を修正することによって、及び/又は溶融ガラスの温度を修正することによって、この繊維形成スピナーホイールの温度を調整することにある。
【0007】
これらの特定点は、温度センサを介してスピナーホイールの温度を測定することによって位置が特定される。
【0008】
このセンサは、少なくともその一部が枢動可能に取り付けられており、繊維形成装置の垂直対称軸と交差する角度を掃引して、連続的な往復運動により周縁ストリップの高さ全体に及ぶようにされている高温計である。各測定点の垂直座標は、周辺ストリップの各掃引で決定され、温度プロファイルがストリップの高さにわたる垂直座標の形で保存される。このプロファイルは、ストリップの最高点、最も高温の点、及び最低点又はストリップ底部にそれぞれ対応する3つの注目すべき点A、B、及びCを含む。点Aは全ての場合において曲線の極値に対応するわけではないが、その垂直座標を点Cの位置に対して見つけることができ、AとCとの間の距離は周辺ストリップの高さに正確に対応することに留意されたい。点B及びCは、垂直座標を用いて温度プロファイルに対応する曲線から導出された曲線の分析によって同定される。既知の制御方法は、周辺ストリップの高さにわたる温度プロファイルに対応する曲線から導出された曲線の分析によって、ストリップの注目すべき点(頂部及び底部の点及び最も高温の点)の温度及び座標を決定する。
【0009】
ここで、これらの垂直座標の使用は、経時的に調整の不正確さをもたらすという欠点を有する。実際、繊維形成スピナーホイールは、時間の経過と共に摩耗を受け、その結果、各点の垂直座標は時間の経過と共に変化する。したがって、もはや必要とされる注目すべき点ではない点に基づいて調整が行われる。
【0010】
また、繊維形成スピナーホイールは、作動中に振動することがある。摩耗の場合と同様に、これらの振動は、要求される顕著な点が調整に用いられていないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
(原文に記載なし)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、より効果的な調整及び改善された寿命を可能にする繊維形成方法を提供することによって、これらの欠点を除去することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は繊維形成装置に使用される回転式繊維形成スピナーホイールの特定点を決定する方法であって、以下の工程を含む、方法に関する:
-温度測定装置の角度位置の関数としての温度を表す曲線を構成する少なくとも1つの計算ユニットにデータを提供するために、繊維形成スピナーホイールの温度の測定値を取得すること、ここで、スピナーホイールの温度の測定値は、スピナーホイールの回転軸の方向における複数の角度位置でスピナーホイールの温度の測定値を取得するように適合された温度測定装置によって取得される;
-計算ユニットによって、角度位置の関数としての温度曲線の、二次導関数の計算を行うことによって、前記測定値を処理すること;
-二次導関数が所定の条件を満たす少なくとも1つの特定点を探索すること。
【0014】
繊維形成スピナーホイールの特定点を決定する方法は、有利には信頼性のある点を与えることを可能にする。実際、繊維形成スピナーホイールの特定点の決定の発明による方法は、繊維形成スピナーホイールが受ける摩耗及び/又は振動を無視することを可能にする。この目的のために、本発明による決定方法は、曲線の傾き(温度、位置)の変化の分析に基づいており、温度測定装置の角度位置の関数として温度を表す曲線の二次導関数を使用し、前記振動又は摩耗によって変化する垂直座標は使用しない。
【0015】
一例によれば、所定の条件は、二次導関数の値をゼロに等しくすることにある。
【0016】
一例によれば、この決定方法は、温度がその位置で最大値にあるという事実によって特徴付けられる特定点を探索することにある追加の探索工程を含む。
【0017】
一例によれば、温度の測定値を、規則的な間隔の間に得て、次いで、処理工程の前に平均化する。
【0018】
一例によれば、前記測定値を、2秒~5秒の間隔、好ましくは3秒の間隔で得る。
【0019】
本発明は更に、鉱物繊維を製造するための繊維形成装置を使用する繊維形成方法による鉱物繊維の製造を制御する方法であって、繊維形成装置は、繊維の遠心生成を可能にするために穿孔されている繊維形成スピナーホイールと、繊維を延伸するための環状ガス流を生成する環状バーナーとを含み、以下の工程を含む、方法に関する:
-温度測定装置の種々の環状の位置における温度測定装置により、繊維形成スピナーホイールの温度を測定すること;
-決定方法の実施形態のいずれかを使用して少なくとも1つの特定点を決定すること;
-測定した温度をこの少なくとも1つの第1の特定点に対する所定の値と比較すること;
-第1の調整部材によって、前記特定点における繊維形成装置の温度を調整するための少なくとも1つの第1の制御信号を生成すること。
【0020】
一例によれば、第2の特定点を決定し、調整する。
【0021】
一実施形態によれば、繊維形成装置は、第1の特定点の温度を変化させるための第1の手段を含む。
【0022】
一実施形態によれば、繊維形成装置は、第2の特定点の温度を変化させるための第2の手段を含む。
【0023】
1つの例によれば、前記繊維形成スピナーホイールは、環状壁を含み、この環状壁に、複数のオリフィスが穿設されており、かつ上部及び下部によって横方向に延設されており、少なくとも1つの特定点を、
周辺ストリップの穿孔されている部分と周辺ストリップを横方向に延設している上部との間の接合部に見られる丸みの点、
温度が最も高い点に対応するホットスポット、及び
底点
から決定する。
【0024】
一例によれば、決定された特定点のうちの少なくとも2つ、すなわち、底点である第1の特定点、及び丸みの点である第2の特定点において、温度を調整する。
【0025】
本発明は更に、コンピュータプログラムであって、このプログラムをコンピュータによって実行するときに、繊維形成スピナープレートを調整する方法の特定点又は工程の一部又は全部を決定するための方法の工程の一部又は全部を実行するための命令を含む、コンピュータプログラムに関する。
【0026】
本発明は更に、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、このプログラムをコンピュータによって実行するときに、繊維形成スピナープレートを調整するための方法の特定点又は工程の一部又は全部を決定するための方法の工程の一部又は全部を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
他の特定の特徴及び利点を、非限定的な例示として与え、添付の図面を参照する以下の説明から明らかにしよう。
【0028】
【
図1】
図1は、本発明による繊維形成システムの概略図である。
図1’は、繊維形成システムの変形態様の遠心機の概略図である;
【
図2】
図2は、本発明によるセンサモジュールの概略図である;
【
図3】
図3は、繊維形成スピナーホイールの位置の関数としての温度図の概略図である;
【
図4】
図4は、繊維形成スピナーホイール上の複数の特定点の概略図である;
【
図5】
図5は、スピナーホイールの温度を変化させるための手段を備えた繊維形成装置の概略図である;
【
図6】
図6は、スピナーホイールの温度を変化させるための2つの手段を備えた繊維形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、繊維形成システム1が示されている。この種の繊維形成システムは、高速で回転し、その周囲に非常に多数のオリフィスを有するシャフト12に固定されている、繊維形成スピナーホイールとしても知られている遠心機10を含む。遠心力の作用のために、ガラスは、フィラメントの形態でこれらのノズルを通って投射される。当然、遠心機は、任意のタイプ、すなわち
図1’に見られるような底部を有するタイプであり得、又は
図1に見られるような底部を有さないタイプのものであり得る。
【0030】
繊維形成スピナーホイール10は、内部遠心によってマイクロメートル直径の鉱物繊維を形成するための装置である。繊維形成スピナーホイール10は、複数のオリフィスが穿設されており、上部及び下部によって横方向に延設されている環状壁10aを備える。第1の構成では、
図1において、上部は、スピナーホイールを駆動軸へと連結しているウェブ10bであり、下部は、駆動軸の方向に曲げられている内部リップ10cである。
図1’に示す底部を有するスピナーホイールとして知られる第2の構成では、上部は、駆動軸の方向に曲げられた内部リップ10c’であり、下部は、スピナーホイール10’の底部を形成するウェブ10b’である。
【0031】
この繊維形成スピナーホイールは、加熱モジュール20によって加熱される。加熱モジュール20は、繊維の延伸を可能にする少なくとも1つのバーナー22を含む。この内燃バーナーは、燃料及び酸化剤が供給される燃焼チャンバーを含み、該チャンバーは、閉じた第1の端部と、これを通して燃焼ガスが排出される反対側の排気開放端部とを有する外囲器を含み、該外囲器は、2つの端部を接続している少なくとも2つの対向する壁を有する。バーナーは、チャンバー内でかつ閉じた第1の端部のレベルで、燃料及び酸化剤を供給される少なくとも1つの燃焼装置を含む。
【0032】
バーナーによって、遠心力の作用によって投射されたフィラメントは、次いで、遠心機の壁面に沿って、高温かつ高速で、延伸環状ガス流の作用を受け、遠心機の壁面はそれらを薄くし、それらを繊維に変化させる。
【0033】
この加熱モジュール20は、計算ユニット30によって制御される。この種の計算ユニット30は例えば、操作者が繊維形成システムを調節することを可能にするインターフェースを備えたコンピュータからなる。したがって、計算ユニット30は、コマンドを送信するために加熱モジュール20に接続される。
【0034】
繊維形成システム1は、
図2に示すように、センサモジュール40を更に備えており、この種のセンサモジュール40は、温度センサ41を含み、かつ計算ユニット30に接続されている。
【0035】
使用する温度センサは、高温測定型センサである。この種の高温測定センサは赤外線を用いる。実際、温度計/高温測定IRは、絶対零度(0K)を超える物体がこの放射線を放出することに基づいて、放出される赤外線放射エネルギーを定量することによって温度を測定する。物体から放出されるエネルギー量とその放放出率を知ることで、その温度を求めることができる。大まかに言えば、原則は、赤外光エネルギーを、それを電気信号に変換する検出器によって測定することにある。レンズによって、放射線IRを検出器上に集中させることができる。この方法は、有利には温度の遠隔測定を可能にする。
【0036】
温度センサIRは、
図2に見られるミラーシステムと関連しており、この種のミラーシステムは、赤外線を任意の位置から検出器に向けることを可能にする。ミラーシステム42は、支持体44上に枢動可能に取り付けられたミラー43を備える。主に
図2に見られる繊維形成スピナーホイールの回転軸に平行な方向に延びており、スピナーホイールに直交する方向に延びるスピナーホイールの垂直面内で、スピナーホイールの異なる位置からの放射IRを導くことが、ミラー43のこの枢動可能な装着が可能にする。しかしながら、温度センサは、それ自体で使用されてもよく、それ自体が枢動可能に取り付けられてもよい。
【0037】
高温計及びミラーを含むアセンブリの、温度を異なる点で測定するこの能力は、繊維形成スピナーホイールの温度プロットを得ることを可能にする。この温度プロットは、温度を調節するため、計算ユニット30により使用される。
【0038】
このプロットを得るために、鉱物繊維の製造を制御する本発明による方法の第1の工程は、高温計(測定範囲500~2000℃)及び振動ミラーを使用することにある。ミラー43は、繊維形成スピナーホイール10を掃引し、ミラーの角度位置αの関数として温度の測定値を得るために、ある周波数で振動させられる。これらの測定値は、ミラーの角度位置の関数としての温度の曲線を直接提供するために、前記センサモジュール40の内部の計算装置45によって処理されることができ、又は、センサモジュール40が処理され、かつミラーの角度位置αの機能として温度の曲線を得るように接続されている計算装置30に送信されることができる。
【0039】
図1によるスピナーホイールを表す
図3における曲線は、このようにして得られる。
【0040】
これらの温度測定は連続的に行われる。角度位置の関数としての温度の曲線を滑らかにして、ノイズを除去することができる。この目的のために、所定の規則的な間隔で得られる測定値が平均化され、この間隔は、2~5秒(3秒が好ましい)である。したがって、測定値は、ある期間にわたって記憶装置に記憶され、次いで平均化されることが明らかである。
【0041】
制御方法の第2の工程において、特定点を決定する本発明による方法によって少なくとも1つの特定点を抽出するために、この曲線が計算ユニット30によって処理される。
【0042】
決定方法は、温度測定装置40によって得られる、繊維形成スピナーホイールの温度の測定値を得ることにある第1の工程を含む。
【0043】
決定方法の第2の工程は、計算ユニット30によってデータを処理して、ミラー43の角度位置の関数として温度の曲線の二次導関数を計算し、得ることにある。この二次導関数は、複数の特徴点/特定点を探索するために使用される。実際、二次導関数は、勾配の変化を得ることを可能にする。
【0044】
決定方法の第3の工程では、ミラー43の角度位置の関数としての温度の曲線の二次導関数を、複数の特定点を探索するために計算ユニット30によって解析する。これらの複数の特定点は、二次導関数が所定の条件を満たす点である。一例では、この条件は、二次導関数の値がゼロに等しいことである。この条件は、繊維形成スピナーホイール上の頂点及び底点の特徴であり、曲線の端点に対応する。
【0045】
その後、特定点/特徴点が何に対応するかを定義することが可能である。スピナーホイールのストリップの底部及びスピナーホイールの丸みの特徴である点は、曲線の局所極値において、ホットスポットのそれぞれの対向する側にあることは明らかである。
【0046】
本発明の場合、2つの特定点/特徴点(
図4のゾーン1及び3に対応する)が探索される。
図4に見られるように、第1の特定点は、スピナーホイールのストリップの底部の温度(ゾーン1)に対応し、第2の特定点は、スピナーホイールの丸み(ゾーン3)に対応する。
【0047】
また、決定方法の任意の第4の工程を実施してもよい。この任意の第4の工程は、繊維形成スピナーホイールのホットスポットを見つけることにある。この目的のために、計算ユニット30は、前記ホットスポットに対応する曲線の絶対最大値を探索する。このホットスポットは、スピナーホイールのストリップの底部の温度に対応する点(ゾーン1)とスピナーホイールの丸みに対応する点(ゾーン3)との間の中央の特異点/特徴点(ゾーン2)である。
【0048】
この二次導関数の使用は、有利には、スピナーホイールの寸法の変動を無視することを可能にする。実際、スピナーホイールの寸法は、摩耗及び/又は振動によって変化し得る。ここで、スピナーホイールの寸法のこの変化にもかかわらず、その一般的な形状はまったく同じままである。このため、特定点/特徴点は変動しない。これによれば、複数の特定点を正確に識別する位置に常にあることが可能となる。したがって、結果として生じる調整は、スピナーホイールの真の特徴である正確な複数の特定点で常に行われる。この二次導関数の計算と、鏡の角度位置に関する関数としての温度の曲線の使用とが依存することは明らかである。実際、ミラーの角度位置の関数として温度の曲線を使用することにより、動作時の熱応力のために、その摩耗又はその変形によって生じるスピナーホイールの寸法の変化から差し引かれた温度プロファイルを得ることが可能になる。二次導関数を使用することにより、この温度プロファイル上で、探索される複数の特定点を常に見つけることが可能になる。その結果、これは、自動調整の使用を可能にする、すなわち、必要な結果を得るための補足的な算出を実行するためにオペレータが介在することなく可能にする。
【0049】
制御方法の次の段階では、特定点の温度値を、繊維形成スピナーホイール10の調整のために使用する。
【0050】
実際、繊維形成スピナーホイールの3つの特定点、すなわちスピナーホイールのストリップの底部の点、ホットスポット及びスピナーホイールの丸みの点の温度は、所定の間隔内になければならない。
図1の例の場合、所定の温度は、例示として以下のとおりである:
-ストリップの底部(ゾーン1)については、905~930℃
-丸め(ゾーン3)については、960~990℃
-ホットスポット(ゾーン2)については、960~980℃。
【0051】
これらの所定の温度は、測定された温度と比較することによって使用される閾値を構成する。
【0052】
第1の調整ループでは、スピナーホイール10の第1の特定点、又はストリップの底部の点が調整される。この目的のために、第1の調整ループは、
図5に見られるように、第1の温度変化手段50に作用し、この場合、第1の温度変化手段50は、繊維形成スピナーホイールの温度の変化を可能にする手段であり、第1の温度変化手段として機能する
図5に見られる周波数発生器52に接続されている、誘導コイル51を含む。この周波数発生器52は、誘導コイル51に送られる信号SIを発生する。誘導コイル52の誘導電力を変調することを可能にし、かつ加熱温度を変化させることを可能にするのはこの信号である。誘導コイル51は、信号SIに誘導コイル51を通過させると、周波数変調された電流である信号SIが磁界を発生させ、それが次に、近くの金属に電流を誘導することに注意されたい。この金属において生じる渦電流損失及びヒステリシス損失は、ジュール効果により熱エネルギー(熱)を発生させる。この誘導コイル51は、繊維形成スピナーホイールの底部、より詳細には繊維形成スピナーホイールの下部に配置されている。この誘導コイルはスピナーホイールのこの底部を局所的に加熱することができるようにするために、前記スピナーホイールによって作り出された繊維の流れに直面するように適合されている。
【0053】
調節ループの一例は、スピナーホイールのストリップの底部(ゾーン1)で測定された温度を設定値温度と比較することにあり、第1の制御信号が計算ユニットによって生成される。この制御信号は電源からコイルに供給される電力を決定する。この電力は、電流及び周波数に依存する。この例では、求められる増分は、1℃である。
【0054】
第2のループでは、例えば、第2の特定点又は丸みの点の温度を調整する。この目的のために、
図6に見られるように、第2の温度変化手段60を使用し、1つの非限定的な実施形態では、この第2の温度変化手段60は、吸込部及び送風部を含む空気循環手段である。より具体的には、本実施形態に係る空気循環手段は、バーナーから発生する煙の排気を制御するために使用する手段である。実際に、この煙の流量が、スピナーホイールの丸みの温度に大きく影響することが分かっている。したがって、本発明による空気循環手段は、繊維形成スピナーホイールの丸みの温度を修正するために、煙の排出を減少又は増加させることを可能にする手段である。
【0055】
この空気循環手段は、1つ若しくは2つのタービン又は1対の空気注入ノズルとすることができる流れ変化手段を含む。両方の場合において、ここでの目的は排煙流に追加される空気の流れを生成することであり、この追加の流れは、正又は負であり、すなわち、正である場合、この追加の流れがこの排出流を増加させることを可能にし、又は負である場合、この追加の流れがこの排出流を減速させることを可能にする。したがって、送風部は負の付加的な流れの生成を可能にし、一方、吸込部は正の付加的な流れを生成する。
【0056】
この第2のループは、丸みで測定された温度を設定値温度と比較し、第2の制御信号が計算ユニット30によって生成される。注入又は吸引される空気の温度に作用することによって温度を調整することが可能であるという事実とは別に、送風又は吸込に使用される空気の流量に作用することによって温度を調整することが可能である。この目的のために、1つの解決策は、バルブの開口に作用する計算ユニットによって生成される第2の信号にある。空気循環装置の各部は、ソレノイドバルブを備える。このソレノイドバルブは、このバルブに印加される電流に応じて大きく又は小さく開くことができる。その結果、前記バルブの開度を修正することによって空気の流量を修正することが可能になる。したがって、これにより、温度を正確に修正することができる。
【0057】
当然、並行して又は連続的に機能する2つの調整ループを想定することができる。更に、2つのループの一方のみを含む本発明による繊維形成装置を想定することができる。
【0058】
2つのループ、すなわち、繊維形成スピナーホイール10の底部に作用することができるループ、及び頂部に作用することができるループを有することにより、スピナーホイールの温度及びストリップ上のそのプロファイルを、燃焼ガスの温度から独立させることが可能である。したがって、外部バーナーが制御されないので、製造される繊維の品質を維持することが可能である。
【0059】
特定点の決定方法及び調整方法はそれぞれ、コンピュータプログラムであって、このコンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、前記方法の工程の一部又は全部を実行するための命令を含むコンピュータプログラムの形態をとる。
【0060】
特定点の決定方法及び調整方法のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶される。この媒体は、CD、DVD、若しくはフラッシュメモリ、又はクラウドなどの他の可能な媒体とすることができる。
【0061】
可能な限り円滑な調整を行うために、空気循環装置の種々のバルブに対する作用は、有利には、バルブが同時に命令されないように実施される。実際、空気を送風するためのバルブの開放と空気を吸い込むためのバルブの開放とを同時に修正する調整は、変動することがあり、かつ繊維の品質に影響を及ぼすことがある温度によって不安定となることがある。一方、順次的なものとして記載した調整は、温度の変動をより小さくすることを可能にする。具体的には、この種の調整は、使用中のバルブが閉鎖された後に他の循環路のバルブが開放されることを意味している。したがって、調整は、複数の順序を含む。空気循環装置が吸込モード、すなわち温度を上げている例では、この吸込バルブを閉じることで温度を下げる。このバルブの閉止が十分であれば、送風循環路のバルブは開かれない。一方、吸込バルブの閉止に伴い温度が十分下がらない場合には、送風バルブは徐々に開く。したがって、排煙流の修正工程は、前記排煙流に追加された追加の流れの注入の順序、及び/又は前記排煙フローに対向する追加の流れの注入の順序を含む。
【0062】
これは、繊維の品質を最適化するためにより滑らかな調整曲線を生成する、より低い調整周波数を有することを可能にする。
【0063】
当然、本発明は、示された例に限定されるものではなく、当業者には明らかとなる多様な変形態様及び修正態様に役立つ。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1~15に記載する。
〈項目1〉繊維形成装置(1)に使用される回転式繊維形成スピナーホイール(10)の特定点を決定する方法であって、以下の工程を含む、方法:
-温度測定装置(40)の角度位置の関数としての温度を表す曲線を構成する少なくとも1つの計算ユニット(30、45)にデータを提供するために、繊維形成スピナーホイールの温度の測定値を取得すること、ここで、前記スピナーホイールの温度の測定値は、温度測定装置の複数の角度位置において、前記スピナーホイールの温度の測定値を取得するように適合された温度測定装置によって取得する;
-計算ユニット(30)によって、角度位置の関数としての温度の曲線の二次導関数の計算を行うことによって、前記測定値を処理すること;
-二次導関数が所定の条件を満たす少なくとも1つの特定点を探索すること。
〈項目2〉前記所定の条件は、前記二次導関数の値をゼロに等しくすることにある、項目1に記載の決定方法。
〈項目3〉前記温度が最大であることを特徴とする特定点を探索することにある追加の探索工程を含む、項目1又は2に記載の決定方法。
〈項目4〉前記温度の測定値を、規則的な間隔の間に得て、次いで、前記処理工程の前に平均化する、項目1~3のいずれか一項に記載の決定方法。
〈項目5〉前記測定値を、2秒~5秒の間隔、好ましくは3秒の間隔で得る、項目4に記載の測定方法。
〈項目6〉繊維形成装置(1)を用いて鉱物繊維を製造する繊維形成方法による鉱物繊維の製造を制御する方法であって、前記繊維形成装置は、繊維の遠心生成を可能にするために穿孔されている繊維形成スピナーホイール(10)と、繊維を延伸するための環状ガス流を生成する環状バーナー(22)とを含み、以下の工程を含む、方法:
-温度測定装置(40)の種々の環状の位置における温度測定装置により、前記繊維形成スピナーホイールの温度を測定すること;
-項目1~5のいずれか一項に記載の決定方法を使用して少なくとも1つの第1の特定点を決定すること;
-測定した温度を前記少なくとも1つの第1の特定点に対する所定の値と比較すること;
-温度変化手段によって前記少なくとも1つの第1の特定点において前記繊維形成スピナーホイールの温度を調整するための少なくとも1つの第1の制御信号を生成すること。
〈項目7〉第2の特定点を決定し、調整する、項目6に記載の制御方法。
〈項目8〉前記繊維形成装置が、前記第1の特定点の温度を変化させるための第1の手段(50)を含む、項目6又は7に記載の制御方法。
〈項目9〉前記繊維形成装置が、前記第2の特定点の温度を変化させるための第2の手段(60)を含む、項目7に記載の制御方法。
〈項目10〉繊維形成スピナーホイール(10、10’)が、環状壁(10a、10a’)を含み、前記環状壁(10a、10a’)に、一連のオリフィスが穿設されており、かつ上部(10b、10c’)及び下部(10c、10b’)によって横方向に延設されており、少なくとも1つの特定点を、
周辺ストリップの穿孔部分と周辺ストリップを横方向に延設している上部との間の接合部に見られる丸みの点、
温度が最も高い点に対応するホットスポット、及び
底点
から決定する、項目9に記載の制御方法。
〈項目11〉決定された前記特定点のうちの少なくとも2つ、すなわち、前記底点である前記第1の特定点、及び前記丸みの点である前記第2の特定点において、温度を調整する、項目10に記載の制御方法。
〈項目12〉コンピュータプログラムであって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、項目1~5のいずれか一項に記載の方法の工程の一部又は全部を実行するための命令を含む、コンピュータプログラム。
〈項目13〉コンピュータプログラムであって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、項目6~11のいずれか一項に記載の方法の工程の一部又は全部を実行するための命令を含む、コンピュータプログラム。
〈項目14〉コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、項目1~5のいずれか一項に記載の方法の工程の一部又は全部を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体。
〈項目15〉コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムをコンピュータによって実行するときに、項目6~11のいずれか一項に記載の方法の工程の一部又は全部を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体。