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特許7513528神経の熱的遮断のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】神経の熱的遮断のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20240702BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61F7/00 310Z
A61N1/05
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020570509
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019038065
(87)【国際公開番号】W WO2019246318
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】62/686,712
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520493005
【氏名又は名称】サーマキル,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511248397
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイアー エデュケーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ポピラルスキー,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】タイ,チャンフン
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,グラント
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/096007(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0366703(US,A1)
【文献】特表2015-531661(JP,A)
【文献】特表2015-500113(JP,A)
【文献】特開2010-088914(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209333(US,A1)
【文献】特表2010-540177(JP,A)
【文献】特表2017-526479(JP,A)
【文献】特表2016-501074(JP,A)
【文献】特表2017-527428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276539(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の身体内における神経の可逆的な遮断のための熱エネルギーシステムであって、
前記神経の近くに植え込まれるように構成された少なくとも1つの加熱素子であって、断熱材が、前記神経及び前記神経の近くに植え込まれた前記少なくとも1つの加熱素子の周囲にほぼ球形に注入されるように構成された、少なくとも1つの加熱素子と、
前記対象の皮膚上で外部に配置されるように構成された少なくとも1つの冷却素子と、
前記神経上又はその近くの温度を検出するように構成された少なくとも1つのフィードバックセンサと、
温度コントローラと、
システムコントローラであって、前記システムコントローラ及び前記温度コントローラは、電源に接続され、且つ前記フィードバックセンサと通信し、且つ前記加熱素子及び前記冷却素子を制御するように構成されている、システムコントローラと、を備え、
前記少なくとも1つのフィードバックセンサは、前記対象の生体信号を監視するよう構成され、
前記システムコントローラとのユーザ制御通信をさらに含み、ここで、前記ユーザは、痛みレベルを示す入力要因を選択する、熱エネルギーシステム。
【請求項2】
前記システムコントローラ及び前記温度コントローラは、前記少なくとも1つのフィードバックセンサから受信された検出温度に基づいて及び/又はユーザ入力に基づいて前記加熱素子及び前記冷却素子を制御するように構成されている、請求項1に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項3】
前記冷却素子は、1つ以上の冷却液チャンネル内において、前記冷却素子を通して、前記皮膚のためのインターフェースまで運ばれる流体を冷却する、請求項1に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項4】
前記加熱素子は、電気抵抗加熱素子、誘導加熱素子、ペルチェヒータ、マイクロ波加熱素子、高周波加熱素子及び赤外線エミッタからなる群から選択される、請求項1に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項5】
前記加熱素子は、放射電磁場を受信する誘導コイルによって給電される前記電気抵抗加熱素子を含む可撓性部分を含み、前記可撓性部分は、前記温度コントローラを含む内部制御機構に接続され、前記温度コントローラは、任意選択的に、前記システムコントローラと無線通信する、請求項4に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項6】
前記加熱素子は、前記システムコントローラによって制御される加熱流体ポンプと流体連通する加熱流体タンクから経皮管を通して受け取られた加熱流体によって加熱される、請求項1に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項7】
対象における神経の可逆的な遮断のための完全外部熱エネルギーシステムであって、
前記対象の皮膚上で外部に配置されるように構成された少なくとも1つの加熱素子と、前記対象の前記皮膚上で外部に配置されるように構成された少なくとも1つの冷却素子とであって、断熱材が、前記少なくとも1つの加熱素子又は前記少なくとも1つの冷却素子を囲む領域の周囲に配置されるように構成された、少なくとも1つの加熱素子及び少なくとも1つの冷却素子と、
前記神経上又はその近くの温度を検出することができる少なくとも1つのフィードバックセンサと、
温度コントローラと、
前記少なくとも1つのフィードバックセンサへの電源及び前記温度コントローラに接続されたシステムコントローラであって、前記システムコントローラ及び前記温度コントローラは、前記加熱素子によって可能にされる加熱相と、前記冷却素子によって可能にされる冷却相との間で温度の遷移を行うように前記加熱素子及び前記冷却素子を制御するように構成されている、システムコントローラと、を備え、
前記少なくとも1つのフィードバックセンサは、前記対象の生体信号を監視するよう構成され、
前記システムコントローラとのユーザ制御通信をさらに含み、ここで、前記ユーザは、痛みレベルを示す入力要因を選択する、完全外部熱エネルギーシステム。
【請求項8】
前記加熱相と前記冷却相との間の前記遷移は、1分未満で発生する、請求項7に記載の完全外部熱エネルギーシステム。
【請求項9】
前記冷却相は、0℃~15℃の範囲内である、請求項7に記載の外部熱エネルギーシステム。
【請求項10】
前記冷却相は、15℃~35℃の範囲内である、請求項7に記載の完全外部熱エネルギーシステム。
【請求項11】
ヘッドバンド内に収容され、前記少なくとも1つの加熱素子及び前記少なくとも1つの冷却素子は、後頭神経の近くの前記対象の頭部に位置決めされる、請求項7に記載の完全外部熱エネルギーシステム。
【請求項12】
対象の身体内における神経の可逆的な遮断のための熱エネルギーシステムであって、
前記神経の近くに植え込まれるように構成された少なくとも1つの加熱素子と、前記神経の近くに植え込まれるように構成された少なくとも1つの冷却素子とであって、断熱材が、前記神経の近くに植え込まれた前記少なくとも1つの加熱素子又は前記少なくとも1つの冷却素子を囲む領域の周囲に注入されるように構成された、少なくとも1つの加熱素子及び少なくとも1つの冷却素子と、
前記神経上又はその近くの検出温度を感知するように構成された少なくとも1つのフィードバックセンサと、
外部システムコントローラと、
温度コントローラと、
前記外部システムコントローラ及び前記温度コントローラに接続された電源と、を備え、
前記フィードバックセンサは、前記検出温度を前記外部システムコントローラ及び前記温度コントローラに通信し、且つ前記外部システムコントローラ及び前記温度コントローラは、前記加熱素子及び前記冷却素子を制御するように構成され、
前記少なくとも1つのフィードバックセンサは、前記対象の生体信号を監視するよう構成され、
前記システムコントローラとのユーザ制御通信をさらに含み、ここで、前記ユーザは、痛みレベルを示す入力要因を選択する、熱エネルギーシステム。
【請求項13】
前記外部システムコントローラ及び前記温度コントローラは、前記少なくとも1つのフィードバックセンサから受信された検出温度に基づいて及び/又はユーザ入力に基づいて前記加熱素子及び前記冷却素子を制御するように構成されている、請求項12に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項14】
前記加熱素子及び/又は前記冷却素子は、経皮ワイヤによって前記外部システムコントローラに接続されている、請求項12に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項15】
前記加熱素子は、前記外部システムコントローラによって制御される少なくとも1つの流体ポンプと流体連通する少なくとも1つの流体タンクから経皮管を通して受け取られた加熱流体によって加熱され、及び/又は前記冷却素子は、前記外部システムコントローラによって制御される少なくとも1つの流体ポンプと流体連通する少なくとも1つの流体タンクから経皮管を通して受け取られた冷却流体によって冷却される、請求項12に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項16】
前記システムコントローラは、前記少なくとも1つのフィードバックセンサからの前記対象の生体信号を受信及び処理する、請求項12に記載の熱エネルギーシステム。
【請求項17】
対象の身体内における神経の可逆的な遮断のための完全植え込み型熱エネルギーシステムであって、
前記神経の近くに植え込まれるように構成された少なくとも1つの加熱素子と、前記神経の近くに植え込まれるように構成された少なくとも1つの冷却素子とであって、断熱材が、前記神経の近くに植え込まれた前記少なくとも1つの加熱素子又は前記少なくとも1つの冷却素子を囲む領域の周囲に注入されるように構成された、少なくとも1つの加熱素子及び少なくとも1つの冷却素子と、
前記神経上又はその近く温度を検出することができる少なくとも1つのフィードバックセンサと、
電源に接続され、且つ前記加熱素子及び前記冷却素子を制御するように構成された温度コントローラ及びシステムコントローラと、を備え、
前記少なくとも1つのフィードバックセンサは、前記対象の生体信号を監視するよう構成され、
前記システムコントローラとのユーザ制御通信をさらに含み、ここで、前記ユーザは、痛みレベルを示す入力要因を選択する、完全植え込み型熱エネルギーシステム。
【請求項18】
前記システムコントローラ及び前記温度コントローラは、前記少なくとも1つのフィードバックセンサから受信された検出温度に基づいて及び/又はユーザ入力に基づいて前記加熱素子及び前記冷却素子を制御するように構成されている、請求項17に記載の熱エネルギーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、「Devices, Uses and Methods for Reversible Nerve Block at Moderate Temperature」という名称であり、2018年6月19日に出願された米国仮特許出願第62/686,712号に対する優先権を主張し、その内容は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
[0002] 本出願は、「Device and Method for Nerve Block by Local Cooling to Room Temperature」という名称であり、2016年12月1日に出願されたPCT出願PCT/米国特許出願公開第2016/064364号も全体として参照により援用する。
【0003】
連邦支援の研究又は開発に関する声明
[0003] 本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたDK068566、DK094905、DK102427及びDK111382下における政府支援によって行われた。政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0004】
[0004] 本発明の分野は、ヒト及び動物対象における熱エネルギーによる可逆的な神経遮断である。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本開示は、以下の図面を参照してよりよく理解され得る。図面の要素は、必ずしも互いに縮尺通りではなく、本開示の原理を明白に説明するために強調されている。さらに、同様の参照符号は、いくつかの図を通して対応する部分を指定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】[0006]神経伝導の可逆的な遮断のための熱エネルギーシステムの例示的な実施形態を説明するブロック図である。
図1B】[0006]神経伝導の可逆的な遮断のための熱エネルギーシステムの例示的な実施形態を説明するブロック図である。
図2】[0007]神経伝導の可逆的な遮断のための熱エネルギーシステムの追加的な例示的な実施形態を説明するブロック図である。
図3A】[0008]神経伝導の可逆的な遮断のための例示的な熱エネルギーシステムを示す。
図3B】[0008]神経伝導の可逆的な遮断のための例示的な熱エネルギーシステムを示す。
図3C】[0008]神経伝導の可逆的な遮断のための例示的な熱エネルギーシステムを示す。
図4】[0009]神経伝導の可逆的な遮断のための熱エネルギーシステムの別の例示的な実施形態を説明するブロック図である。
図5A】[0010]図4に示されるような、神経伝導の可逆的な遮断のための別の例示的な熱エネルギーシステムのイメージ図である。
図5B】[0010]図4に示されるような、神経伝導の可逆的な遮断のための別の例示的な熱エネルギーシステムのイメージ図である。
図6A】[0011]熱エネルギーシステムによってもたらされ得るような、加熱又は冷却された神経又は組織温度に対する距離の例示的な影響を示す。
図6B】[0011]熱エネルギーシステムによってもたらされ得るような、加熱又は冷却された神経又は組織温度に対する距離の例示的な影響を示す。
図7】[0012]図5Aによって示す実施形態など、熱エネルギーシステムの構成要素の植え込みを支援するために使用され得るような例示的な挿入シースを示す。
図8】[0013]流体チューブへの接続がない状態の例示的な流体神経インターフェースの斜視後面図である。
図9】[0014]断熱材によってさらに囲まれるような、伝導性ゲルによって囲まれる神経の周囲の、図8に示すような例示的な流体神経インターフェースの実施形態の断面図である。
図10A】[0015]図8に示すような例示的な流体神経インターフェースの実施形態の追加的な断面図である。
図10B】[0015]図8に示すような例示的な流体神経インターフェースの実施形態の追加的な断面図である。
図11】[0016]流体チャンネルが後ろに延在する状態の、神経の周囲の、図8に示すような例示的な流体神経インターフェースの概略斜視前面図である。
図12A】[0017]流体チューブが取り付けられた状態の、図8に示すような例示的な流体神経インターフェースの斜視図である。
図12B】[0017]流体チューブが取り付けられていない状態の、図8に示すような例示的な流体神経インターフェースの斜視図である。
図13A】[0018]本明細書で説明されるような遮断態様を適用するための例示的な方法を示すフローチャートの一部である。
図13B】[0018]本明細書で説明されるような遮断態様を適用するための例示的な方法を示すフローチャートの一部である。
図13C】[0018]本明細書で説明されるような遮断態様を適用するための例示的な方法を示すフローチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0019] 詳細な説明
[0020] 本発明は、ヒト又は他の哺乳類の身体内で神経を熱的に調節するための一連の方法及び機器に関する。本発明は、慢性疼痛の可逆的な遮断に特に役立ち得る。
【0008】
[0021] 本開示の実施形態は、図1図13に例示として説明されている。本明細書では、全ての用語は、当技術分野で公知のような及び下記でさらに説明し且つ詳細に論じられているような一般的な意味が与えられることに留意すべきである。本明細書及び以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多くの用語に言及する。
【0009】
[0022] 本明細書では、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上明白な指示がない場合、複数の指示対象を含む。
【0010】
[0023] 本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲で表されるとき、実施形態は、一方の特定の値から及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、値が「約」を使用することによって近似値で表されるとき、特定の値は、別の実施形態を形成することが理解される。複数の範囲のそれぞれの終点は、他方の終点との関連で及び他方の終点とは無関係の両方において有意であることが理解される。本明細書に開示されるいくつかの値があり、各値も、その値自体に加えて、「約」その特定の値として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「50」が開示される場合、「約50」も開示される。
【0011】
[0024] 本明細書では、「適度な冷却」は、発生し得るいずれの神経損傷も可逆的であるとみなされる、体温を下回るレベルへの及び持続時間での冷却を意味する。例えば、適度な冷却は、約15℃~約30℃に及ぶ温度での冷却を含む。
【0012】
[0025] 本明細書では、「適度な加熱」は、発生し得るいずれの神経損傷も可逆的であるとみなされる、体温を上回るレベルへの及び持続時間での加熱を意味する。例えば、適度な加熱は、約42℃~約48℃に及ぶ温度での約5~10分以下の持続時間にわたる加熱を含み得る。
【0013】
[0026] 本明細書では、「可逆的」は、部分的又は完全に遮断された神経が、遮断を誘発する治療後の約1か月の期間内に有用な神経機能の大部分を取り戻す能力を意味する。「可逆的」のこの定義により、アブレーションは、可逆的であるとみなされない。
【0014】
[0027] 本明細書では、用語「治療」又は「治療する」は、疾患又は状態の症状又は病状に対するいずれかの所望の効果を含み、且つ治療中の疾患又は状態の1つ以上の測定可能なマーカの最低限の減少を含み得る。「治療」は、必ずしも疾患若しくは状態又はその関連する症状の完全な根絶又は治癒を示すものではない。
【0015】
[0028] 本明細書では、用語「患者」又は「対象」は、ヒトを含むいずれの哺乳類も含む。
【0016】
[0029] 本明細書では、用語「通信する」、「通信」又は「通信すること」は、信号、入力、コマンド及び出力を含むデータを伝送すること、送ること、送信すること及び受信することを指す。機器、構成要素又はシステムは、物理的接続によって直接又は無線伝送などによって間接的のいずれかで別の又はいくつかの他の機器、構成要素又はシステムと通信し得る。通信されるデータは、機器間、構成要素間又はシステム間で変換され得るか、書き換えられ得るか又は他の方法で処理され得る。用語「連通する」、「連通」又は「連通すること」は、1つ又はいくつかの機器、構成要素又はシステムから別の又はいくつかの他の機器、構成要素又はシステムに流体を伝えるか、移すか、循環させるか又は移動させることをさらに指し得る。当技術分野で公知のいずれの電子通信手段又は流体連通手段も考慮される。
【0017】
[0030] 本明細書では、神経の「遮断」は、ニューロンが活動電位を伝播させないか、又は振幅の小さい誘発活動電位を有する状況を指す。神経の遮断は、ブロックされていないニューロンよりも低い割合のニューロンが活動電位を伝播させる場合又は誘発活動電位の振幅が、ブロックされていないニューロンによって誘発された活動電位の振幅よりも小さいとき、部分的であり得る。
【0018】
[0031] 本明細書では、構成要素、機器又はシステムの「内部」の箇所は、人体に関するものである。例えば、内部に位置する機器は、患者の身体内、すなわち患者の皮膚の下側に位置し得る。
【0019】
[0032] 本明細書では、構成要素、機器又はシステム「外部」の箇所は、人体に関するものである。例えば、外部に位置する機器は、患者の身体内又は患者の皮膚の下側ではなく、患者の身体の外部若しくは患者の身体上に位置し得る。
【0020】
[0033] 複数の態様において、本明細書では、熱調節によって神経を可逆的に刺激及び/又はブロックするための方法及び機器が提供される。神経のブロックは、限定されるものではないが、後頭神経痛を治療するための後頭神経、人工膝関節全置換術に続く慢性的な膝の強い痛みに関する伏在神経、変形性関節症に関連する痛みを低減させるために膝の1つ又は複数の関節内領域、慢性的な強い痛みのための脊髄の後根神経節及び他の領域、処置に続く術後の痛みを治療するための切開部位に沿った若しくは痛む傷の周りのいずれかの領域又は正中神経、腸骨鼠径神経、脛骨神経、座骨神経、肋間神経、腓骨神経、大腿神経、腋窩神経、肩甲上神経、腓腹神経、尺骨神経、橈骨神経、外側大腿皮神経又は痛みの原因である任意の他の神経の遮断及び/又は刺激を含む、多くの状態の治療に有用であり得る。本方法及び機器の他の例示的な使用は、腹部迷走神経枝をブロックすることによる患者の肥満症の治療、交感神経及び任意選択的に大内臓神経、内臓神経又は交感神経幹の1つ以上をブロックすることによる患者の心不全の治療、陰部神経をブロックすることによる患者の尿閉の治療、筋肉を支配する神経による患者の筋痙攣の治療、迷走神経による患者の心血管疾患の治療並びに後頭神経による患者の後頭神経痛又は片頭痛の治療を含む。本方法及び機器は、神経ブロックが状態又は疾患若しくはその症状の分析、特定又は管理に好適である、いずれかのそのような状態又は疾患の監視、診断又は治療の使用に考えられる。
【0021】
[0034] 一実施形態では、熱調節は、神経の加熱のみ、冷却のみ、交互に加熱及び冷却又は同時に加熱及び冷却からなる群から選択される。加熱のみ、冷却のみ並びに交互に加熱及び冷却の例示的な方法及び機器が本明細書で説明される。
【0022】
[0035] いくつかの実施形態では、本発明によって達成される可逆的な熱的遮断は、神経の規定されたセクションを適度に加熱し、その後、適度に冷却することによって達成され得る。より長い持続時間にわたる神経の極端な加熱又は冷却は、その神経に不可逆的な損傷を生じさせ得ることがよく知られている。例えば、約50℃以上及び約5℃以下の温度が単一温度の神経ブロックのための当技術分野で公知の方法で使用されてきた。しかしながら、これらの極端な温度を神経に加えることは、数分又は数時間以内に永久的な損傷を発生させ得る。
【0023】
[0036] 初期の加熱ステップは、完全又は部分的な神経遮断を発生させるために加えられる冷却温度を、初期の加熱ステップのない他の方法で可能な又は容認できるものよりも高くすることができる。本発明は、初期の適度な加熱ステップ及びそれに続く適度な冷却ステップの組み合わせにより、潜在的に永久的な損傷を誘発する極端な温度の使用を回避し得る。神経の遮断は、本方法に従って又は本機器を用いて治療されるニューロンが活動電位を伝播させないか、又はブロックされていないニューロンよりも低い割合のニューロンが活動電位を伝播させる状況を含む。
【0024】
[0037] 本発明は、少なくとも部分的に不可逆的な神経損傷が回避される安全温度の神経に影響を及ぼし得る。本発明は、最初に、ある持続時間にわたり、体温を上回るが、前記持続時間にわたって神経に不可逆的な損傷を生じさせ得る温度を下回る温度である適度な温度で神経を加熱することにより、これらの極端な及び潜在的に損傷を引き起こす温度の使用を回避し得る。適度な加熱中、神経伝導は、部分的又は完全に低減され得、神経は、部分的又は完全に減少した誘発活動電位又は信号を有することが観察され得る。神経の適度な加熱に続いて、適度な冷却は、ある持続時間にわたり、体温を下回るが、不可逆的な損傷が前記持続時間にわたって神経に生じ得る温度を上回る温度で実施され得る。適度な冷却中、温度は、冷却温度に保持されるか、又は冷却温度を低下させる一連のステップにおいて低下され得る。前記ステップは、等しい又は異なる持続時間であり得、且つ等しい又は異なる温度の大きさであり得る。加熱相と冷却相との遷移は、約1分未満、約1分~約3分又は約3分~約5分で起こり得る。一実施形態では、加熱相と冷却相との温度の遷移は、約5分~約25分で起こり得る。一実施形態では、加熱相と冷却相との温度の遷移は、約25分~約60分で起こり得る。
【0025】
[0038] 一実施形態では、冷却相は、約-5℃~約0℃の範囲内である。一実施形態では、冷却相は、約0℃~約15℃の範囲内である。一実施形態では、冷却相は、約15℃~約35℃の範囲内である。一実施形態では、加熱相は、約40℃~約51℃の範囲内である。一実施形態では、加熱相は、約43℃~約48℃の範囲内である。
【0026】
[0039] 図1A図1Bで説明する実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、熱調節のために、患者の外部に位置するか、患者に植え込まれるか、又は神経上若しくはその近くの箇所の外部及び内部に位置する構成要素を有し得る。図1Aに示すように、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、内部構成要素と外部構成要素との組み合わせを含み得る。一実施形態では、内部構成要素と外部構成要素との組み合わせは、神経の加熱、冷却、交互に加熱及び冷却又は同時に加熱及び冷却に用いられ得る。一実施形態では、図1Aにおけるような熱エネルギーシステム(105、305、505)は、神経の近くに植え込まれた少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び少なくとも1つの冷却素子(107、307)、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)、例えば一実施形態では少なくとも1つの箇所の近くの温度を検出することができる温度センサを含む温度コントローラ(106、306)と、電源に接続された外部システムコントローラ(109、309、510)とを含み得る。内部温度コントローラ(106、306)は、図1Aに示すように、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)、少なくとも1つの冷却素子(107、307)及び一実施形態では温度センサなどの少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。一実施形態では、システムコントローラ(109、309、510)は、プロセッサ(111、311、522)を含み得、且つ内部温度コントローラ(106、306)と通信し得、内部温度コントローラは、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び少なくとも1つの冷却素子(107、307)の温度を制御し、且つ少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)から信号によって情報を受信できる。温度は、温度センサを含む少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)から受信される信号に基づいてシステムコントローラ(109、309、510)によって調整され得る。
【0027】
[0040] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、電気抵抗加熱素子、誘導加熱素子、ペルチェヒータ、マイクロ波加熱素子、高周波加熱素子及び赤外線エミッタ又は神経の熱調節における適度な加熱ステップにおいて必要とされる加熱温度及び持続時間をもたらすことができる任意の他の好適な加熱手段であり得る。一実施形態では、少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、冷却管、熱電クーラー、冷凍システム、ペルチェクーラー、氷又は神経の熱調節における適度な冷却ステップにおいて必要とされる冷却温度及び持続時間をもたらすことができる任意の他の好適な冷却手段であり得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、熱電対、サーミスタ又は神経をブロックするか若しくは部分的にブロックするために、熱調節前、熱調節中及び熱調節後の神経の温度変化を監視できる任意の他の好適な機器若しくは材料である。温度センサなどのフィードバックセンサ(110、310、516)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)の周辺内若しくはその近く、又は身体内若しくは身体上の他の箇所、又は機器内の他の箇所に置かれ得る。
【0028】
[0041] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、誘導手段によって給電される電気抵抗加熱素子を含み得る。電気抵抗加熱素子は、放射電磁場を受信する誘導コイルによって給電される少なくとも1つの電気抵抗加熱素子を含む可撓性部分を含み得、前記可撓性部分は、内部制御機構に接続されている。内部制御機構は、任意選択的にシステムコントローラ(109、309、510)と無線で通信し得る温度コントローラ(106、306)をさらに含み得る。システムコントローラ(109、309、510)は、内部に位置するか又は異なる実施形態では外部にあり得る。
【0029】
[0042] 一実施形態では、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)、例えば一実施形態では温度を検出することができる温度センサは、患者の皮膚上若しくはその近く、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)上若しくはその近く、1つ以上の冷却液チャンネル内若しくはその近く又は熱電クーラー内若しくはその近くからなる群から選択される少なくとも1つの箇所に位置する。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、神経に向けられている熱エネルギーを修正するために、様々なバイオマーカー又は生体信号を監視するための1つ以上のフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。システムコントローラ(109、309、510)は、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)からの対象の生体信号を受信及び処理し得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、温度センサであるが、フィードバックセンサ(110、310、516)は、神経上又はその近くの温度及び化学物質レベルからなる群から選択される生体信号も監視し得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、温度センサであるが、フィードバックセンサ(110、310、516)は、体温、血圧、心拍、時間、発汗、酸素飽和度、心電図信号及び/又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータからなる群から選択される生体信号も監視し得る。一実施形態では、複数のフィードバックセンサ(110、310、516)があり、それらの出力信号は、冷却素子(107、307)及び加熱素子(108、308、515)を制御するためのソフトウェアのために設定されている温度コントローラ(106、306)及び/又はシステムコントローラ(109、309、510)のプロセッサ(111、311、522)によって受信される。熱エネルギーシステム(105、305、505)は、前記フィードバックセンサ(110、310、516)によって検出された前記パラメータをシステムコントローラ(109、309、510)と通信するように構成されている。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、植え込み後又は患者の外部への配置後、システムコントローラ(109、309、510)のプロセッサ(111、311、522)又は温度コントローラ(106、306)のソフトウェア又はファームウェアの1つ以上のパラメータを選択することにより、臨床医又はユーザによって設定可能である。別の実施形態では、パラメータは、事前設定され得る。一実施形態では、ユーザは、システムコントローラ(109、309、510)との通信を制御し得、ここで、ユーザは、痛みの程度、運動機能の程度、痛みに触れることを含む感覚感受性、鋭さ、温度及びストレスレベルからなる群から入力要因を選択し得る。ユーザは、電源を「入れる」若しくは「切る」か又は任意のレベルでの動作を変化させることによってもシステムを制御し得る。
【0030】
[0043] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するために情報を提供し得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、冷却ステップが後に続く加熱ステップを使用する神経の部分的又は完全な遮断後、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するように設定可能である。この実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、感覚、体温、血圧、心拍、時間、発汗、酸素飽和度、心電図信号、神経上若しくはその近くの温度及び化学物質レベル又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータを含む群から選択される、患者に対する影響に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を決定し得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の配置は、痛みの程度、運動機能の程度、痛みに触れることを含む感覚感受性、鋭さ、温度及びストレスレベルからなる群からのユーザ入力要因によってさらに導かれ得る。一実施形態では、フィードバックループは、限定されるものではないが、温度センサを含むフィードバックセンサ(110、310、516)によって検出される温度に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)に送給される電力を制御するために利用され得る。
【0031】
[0044] 温度コントローラ(106、306)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)の加熱、少なくとも1つの冷却素子(107、307)の冷却を制御し、且つ神経の温度を監視するために、プロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)に物理的に又は無線で接続され得る。少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)への無線電力伝送手段は、電磁誘導又はマイクロ波エネルギー伝達であり得る。
【0032】
[0045] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、電源によって給電され、ここで、電源は、内部一次バッテリと、内部(再充電可能)二次バッテリと、電磁誘導電力伝送、マイクロ波無線伝達を含む無線電力伝送と、非可視レーザ電力伝送と、交流電流と、運動エネルギーハーベスティングシステムとからなる群から選択される。
【0033】
[0046] 一実施形態では、図2に示すように、温度コントローラ(106、306)は、開放した皮膚を通して、経皮ワイヤ及び/又は管(312)或いは他のそのような好適な接続手段を使用することなどによって患者に接続されて、温度コントローラ(106、306)の内部構成要素を制御し得る。熱エネルギーシステム(105、305、505)のこの実施形態では、経皮ワイヤ及び/又は管(312)は、プロセッサ(111、311、522)を含む外部システムコントローラ(109、309、510)から加熱素子(108、308、515)又は冷却素子(107、307)の少なくとも一方に接続され得、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)は、プロセッサ(111、311、522)と通信し得る。一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び/又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、電源への経皮ワイヤ(312)から受け取られた電力によって制御され得る。
【0034】
[0047] 図1A図1Bに示すものなどの様々な実施形態では、流体輸送は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに加熱温度及び冷却温度を正確に達成し得るように、熱エネルギーシステム(105、305、505)の熱エネルギーを伝えるために利用され得る。一実施形態では、ヒートパイプは、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに加熱温度及び冷却温度を正確に達成し得るように、熱エネルギーシステム(105、305、505)の熱エネルギーを伝えるために利用される。前記ヒートパイプは、可撓性であり得、且つ生体適合性材料で構成され得る。
【0035】
[0048] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)の少なくとも一方は、加熱又は冷却された流体を循環させるためのチャンネル(113)を含み得る。一実施形態では、加熱流体タンク(114)は、加熱流体を循環させるためにチャンネル(113)と連通し得る。一実施形態では、冷却流体タンク(115)は、冷却流体を循環させるためにチャンネル(113)と連通し得る。前記加熱流体タンク(114)、前記冷却流体タンク(115)又は再生流体タンク(512)は、タンク内の流体の温度を迅速に上昇又は低下させることができ、流体が、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに神経の加熱及び冷却をもたらすように循環されることを可能にする。図1Aは、冷却流体を、少なくとも1つの冷却素子(107、307)に接続された冷却流体タンク(115)に連通させるためのチャンネル(113)を示すが、これは、例示的な実施形態であり、本明細書で説明されるような他のチャンネル形態が可能である。例えば、図1Aのチャンネル(113)は、加熱流体を加熱流体タンク(114)と連通させるために少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)に接続され得る。一実施形態では、図2に説明されているように、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、外部システムコントローラ(109、309、510)によって制御される少なくとも1つの流体ポンプと流体連通する少なくとも1つの流体タンクから経皮管(312)を通して受け取られた加熱流体によって加熱され、及び/又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、外部システムコントローラ(109、309、510)によって制御される少なくとも1つの流体ポンプと流体連通する少なくとも1つの流体タンクから経皮管(312)を通して受け取られた冷却流体によって冷却される。
【0036】
[0049] 一実施形態では、加熱流体タンク(114)及び/又は冷却流体タンク(115)内の流体の温度の急速な上昇又は低下は、米国特許第9,283,109号(その全体が参照により本明細書に援用される)に説明されているものと同様の温熱療法機器を使用して行われ得る。前記機器は、流体を加熱及び/又は冷却する熱交換器と、加熱又は冷却された流体の移動のためのポンプとをさらに含み得る。加熱流体タンク(114)及び/又は冷却流体タンク(115)内の流体を急速に加熱又は冷却できる他の熱交換機構が本発明において考慮される。急速な上昇又は低下は、約60分、25分、5分、約3分以下又は好ましくは約1分以下の時間にわたる約1~約10℃の温度変化を含み得る。
【0037】
[0050] 熱エネルギーシステム(105、305、505)は、図3A図3Cによって説明され得、ここで、図3Aは、標準的な鉛筆の先端を基準として、熱エネルギーシステム(105、305、505)の一実施形態の植え込み型温度コントローラ(106、306)の相対的な大きさを示す。図3Bは、標的神経を囲む植え込み型構成要素の図を示す。図3Cは、神経上又はその近くに位置する熱エネルギーシステム(105、305、505)の植え込み型構成要素の詳細を示す。少なくとも1つの加熱素子及び/又は冷却素子(108、308、515)、(107、307)は、伝導性材料(103)に沿って伝達される熱エネルギーを提供して、神経を加熱又は冷却する。神経に隣接していない機器の複数の部分では、断熱材(104)が伝導性材料(103)を囲んで、神経への熱エネルギー伝達を制限し、且つ非標的神経への熱エネルギーの伝達を回避する。機器全体又はその一部分は、生体適合性コーティング(102)でコーティングされ得、熱エネルギーシステム(105、305、505)が、有意な免疫応答をトリガすることなく、治療に必要な持続時間にわたり、神経上又はその近くに植え込まれ得るようにする。一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、図3B図3Cに例として示すような馬蹄、C字形状、ボウル及び半円の形状を含む形状に構成される。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、生体適合性材料で構成されるか、又は機器の少なくとも1つのセグメントに生体適合性コーティングを含む。前記生体適合性コーティングは、ゲル、エアロゲル、ヒドロゲル、微小粒子、ダーマルフィラー若しくは他のフィラー、注入可能なスラリー又は有意な免疫応答を生じさせない組織若しくは血液よりも熱伝導率が劣る他の材料であり得る。生体適合性コーティングは、植え込み前に熱エネルギーシステム(105、305、505)上に存在するか、又は植え込みに続いて熱エネルギーシステム(105、305、505)の少なくとも一部分にコーティングされ得る。前記生体適合性コーティングは、生分解性であり得、且つ有限期間にわたって分解し得る。前記分解は、インビボで発生しないか、又はインビボで数カ月若しくは数年の期間などの長期間にわたってゆっくりと分解するのみであり得る。
【0038】
[0051] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、完全に外部にあり、且つ図1Bに示すように、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)と、少なくとも1つの冷却素子(107、307)と、プロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)と、一実施形態では温度センサなどの少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)とを含む温度コントローラ(106、306)をさらに含み得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、対象の神経を可逆的に遮断するための外部熱エネルギーシステム(105、305、505)である。外部熱エネルギーシステム(105、305、505)は、電源及び温度コントローラ(106、306)に接続された少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び/又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)と、システムコントローラ(109、309、510)と、一実施形態では少なくとも1つの箇所上又はその近くの温度を検出することができる温度センサなどの少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)とを含む温度コントローラ(106、306)を含み得る。外部熱エネルギーシステム(105、305、505)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)によって可能にされる加熱相と、少なくとも1つの冷却素子(107、307)によって可能にされる冷却相との間で温度遷移を行うように構成され得る。
【0039】
[0052] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、電気抵抗加熱素子、誘導加熱素子、ペルチェヒータ、マイクロ波加熱素子、高周波加熱素子、赤外線エミッタ又は神経の熱調節における適度な加熱ステップにおいて必要な加熱温度及び持続時間を提供できる任意の他の好適な加熱手段であり得る。一実施形態では、少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、冷却管、熱電クーラー、冷凍システム、ペルチェクーラー、氷又は神経の熱調節における適度な冷却ステップにおいて必要な冷却温度及び持続時間を提供できる任意の他の好適な冷却手段であり得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、熱電対、サーミスタ又は神経をブロックするか若しくは部分的にブロックするために、熱調節前、熱調節中及び熱調節後に神経の温度変化を監視できる任意の他の好適な機器若しくは材料である。温度センサなどのフィードバックセンサ(110、310、516)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)の周辺内若しくはその近く、又は身体内若しくは身体上の他の箇所、又は機器内の他の場所に配置され得る。
【0040】
[0053] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、放射電磁場を受信する誘導コイルによって給電される少なくとも1つの抵抗加熱素子を含む可撓性部分を含む電気抵抗加熱素子であり、ここで、可撓性部分は、内部制御機構に接続されている。内部制御機構は、任意選択的にシステムコントローラ(109、309、510)と無線で通信し得る温度コントローラ(106、306)を含み得る。
【0041】
[0054] 温度コントローラ(106、306)は、プロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)に物理的に又は任意選択的に無線で接続されて、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)の加熱、少なくとも1つの冷却素子(107、307)の冷却を制御し、且つ神経の温度を監視し得る。前記プロセッサ(111、311、522)は、温度コントローラ(106、306)のメモリに記憶され得るプログラミング命令を実行し得る。外部熱エネルギーシステム(105、305、505)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)への無線電力伝送を含み得、ここで、無線電力は、電磁誘導又はマイクロ波エネルギー伝達である。
【0042】
[0055] 熱エネルギーシステム(105、305、505)及びシステムコントローラ(109、309、510)は、電源によって給電される。電源は、内部一次バッテリと、内部二次(再充電可能)バッテリと、電磁誘導無線電力伝送、マイクロ波無線電力伝送を含む無線電力伝送と、非可視レーザ電力伝送と、交流電流と、運動エネルギーハーベスティングシステムとからなる群から選択され得る。
【0043】
[0056] 一実施形態では、完全外部熱エネルギーシステム(105、305、505)は、外部熱エネルギーシステム(105、305、505)の構成要素の全て又は組み合わせを用いて、全て外部手段によって対象の身体内における神経の可逆的な遮断の方法を提供するために用いられ得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、慢性状態又は症状を治療するために、約数分、約数時間若しくは数日又は何年もの持続時間の医療的処置中、1つ又は複数の神経を可逆的にブロックし得る。
【0044】
[0057] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、完全に植え込み可能であり、且つ図1Bに示すように、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)と、少なくとも1つの冷却素子(107、307)と、プロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)と、一実施形態では温度センサなどの少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)とを含む温度コントローラ(106、306)をさらに含み得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、対象の神経を可逆的に遮断するための植え込み型熱エネルギーシステム(105、305、505)である。完全植え込み型熱エネルギーシステム(105、305、505)は、神経の近く又はその上に植え込まれた少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び/又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)と、少なくとも1つの箇所の近くの、一実施形態では温度を検出することができる温度センサなどの少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)と、電源に接続された、プロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)とを含む温度コントローラ(106、306)を含み得る。
【0045】
[0058] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、電気抵抗加熱素子、誘導加熱素子、ペルチェヒータ、マイクロ波加熱素子、高周波加熱素子、赤外線エミッタ又は神経の熱調節における適度な加熱ステップにおいて必要な加熱温度及び持続時間を提供できる任意の他の好適な加熱手段であり得る。一実施形態では、少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、冷却管、熱電クーラー、冷凍システム、ペルチェクーラー又は神経の熱調節における適度な冷却ステップにおいて必要な冷却温度及び持続時間を提供できる任意の他の好適な冷却手段であり得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、熱電対、サーミスタ又は神経をブロックするか若しくは部分的にブロックするために、熱調節前、熱調節中及び熱調節後に神経の温度変化を監視できる任意の他の好適な機器若しくは材料である。温度センサなどのフィードバックセンサ(110、310、516)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)の周辺内若しくはその近く、又は身体若しくは身体上の他の箇所、又は機器内の他の場所に配置され得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、放射電磁場を受信する誘導コイルによって給電される少なくとも1つの抵抗加熱素子を含む可撓性部分を含む電気抵抗加熱素子であり、ここで、可撓性部分は、内部制御機構に接続されている。内部制御機構は、任意選択的にシステムコントローラ(109、309、510)と無線で通信し得る温度コントローラ(106、306)を含み得る。システムコントローラ(109、309、510)は、内部に位置するか又は異なる実施形態では外部にあり得る。
【0046】
[0059] 温度コントローラ(106、306)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)の加熱、少なくとも1つの冷却素子(107、307)の冷却を制御し、且つ神経の温度を監視するために、プロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)に物理的に又は任意選択的に無線で接続され得る。前記プロセッサ(111、311、522)は、温度コントローラ(106、306)のメモリに記憶され得るプログラミング命令を実行し得る。熱エネルギーシステム(105、305、505)及びシステムコントローラ(109、309、510)は、電力供給装置によって給電され得る。無線電力伝送は、電源と少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)との間で発生し得、ここで、無線電力伝送は、電磁誘導又はマイクロ波エネルギー伝達を含む。
【0047】
[0060] 一実施形態では、完全植え込み型熱エネルギーシステム(105、305、505)は、内部熱エネルギーシステム(105、305、505)の構成要素の全て又は組み合わせを用いて、全て内部手段によって対象の身体内における神経の可逆的な遮断の方法を提供するために使用され得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、慢性状態又は症状を治療するために、約数分、約数時間若しくは数日又は何年もの時間の医療的処置中、1つ又は複数の神経を可逆的にブロックし得る。
【0048】
[0061] 様々な完全に植え込み可能な又は完全に外部の実施形態において、一実施形態では温度を検出することができる温度センサなどの少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)は、患者の皮膚上若しくはその近く、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)上若しくはその近く、1つ以上の冷却液チャンネル内若しくはその近く又は熱電クーラー内若しくはその近くからなる群から選択される少なくとも1つの箇所に位置し得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、神経に向けられている熱エネルギーを修正するために、様々なバイオマーカー又は生体信号を監視するための1つ以上のフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。システムコントローラ(109、309、510)は、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)からの対象の生体信号を受信及び処理し得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、温度センサであるが、フィードバックセンサ(110、310、516)は、神経上又はその近くの温度及び化学物質レベルからなる群から選択される生体信号も監視し得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、温度センサであるが、フィードバックセンサ(110、310、516)は、体温、血圧、心拍、時間、発汗、酸素飽和度、心電図信号及び/又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータからなる群から選択される生体信号も監視し得る。一実施形態では、複数のフィードバックセンサ(110、310、516)があり、それらの出力信号は、温度コントローラ(106、306)及び/又はシステムコントローラ(109、309、510)のプロセッサ(111、311、522)によって受信され、これらは、冷却素子(107、307)及び加熱素子(108、308、515)を制御するためのソフトウェアのために設定されている。熱エネルギーシステム(105、305、505)は、前記フィードバックセンサ(110、310、516)によって検出された前記パラメータをシステムコントローラ(109、309、510)と通信するように構造されている。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、植え込み後又は患者の外部に配置後、システムコントローラ(109、309、510)のプロセッサ(111、311、522)又は温度コントローラ(106、306)のソフトウェア又はファームウェアにおける1つ以上のパラメータを選択することにより、臨床医又はユーザによって設定可能である。別の実施形態では、パラメータは、事前設定され得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、システムコントローラ(109、309、510)とのユーザ制御通信を含み得、ここで、ユーザは、痛みの程度、運動機能の程度、痛みに触れることを含む感覚感受性、鋭さ、温度及びストレスレベルからなる群から入力要因を選択し得る。ユーザは、電源を「入れる」若しくは「切る」か又は任意のレベルでの動作を変化させることによってもシステムを制御し得る。
【0049】
[0062] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するための情報を提供し得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、冷却ステップが後に続く加熱ステップを使用する神経の部分的又は完全な遮断後、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するように設定可能である。この実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、体温、血圧、心拍、時間、発汗、酸素飽和度、心電図信号、神経上若しくはその近くの温度及び化学物質レベル及び/又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータを含む群から選択される患者に対する影響に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を決定し得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の配置は、痛みの程度、運動機能の程度、痛みに触れることを含む感覚感受性、鋭さ、温度及びストレスレベルからなる群からのユーザ入力要因によってさらに導かれ得る。一実施形態では、フィードバックループは、限定されるものではないが、温度センサを含むフィードバックセンサ(110、310、516)によって検出される温度に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)に送給される電力を制御するために用いられ得る。
【0050】
[0063] 図1Bにおいて説明されているものなどの様々な完全に植え込み可能な又は完全に外部の実施形態では、流体輸送は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに加熱温度及び冷却温度を正確に達成し得るように、熱エネルギーシステム(105、305、505)の熱エネルギーを伝えるために用いられ得る。一実施形態では、ヒートパイプは、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに加熱温度及び冷却温度を正確に達成し得るように、熱エネルギーシステム(105、305、505)の熱エネルギーを伝えるために用いられる。前記ヒートパイプは、可撓性であり得、且つ生体適合性材料で構成され得る。
【0051】
[0064] 1つの完全に植え込み可能な又は完全に外部の実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)の少なくとも一方は、加熱又は冷却された流体を循環させるためのチャンネル(113)を含み得る。一実施形態では、加熱流体タンク(114)は、加熱流体を循環させるためにチャンネル(113)と連通し得る。一実施形態では、冷却流体タンク(115)は、冷却流体を循環させるためにチャンネル(113)と連通し得る。前記加熱流体タンク(114)、前記冷却流体タンク(115)又は再生流体タンク(512)は、タンク内の流体の温度を迅速に上昇又は低下させ得るため、流体は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに神経の加熱及び冷却をもたらすように循環され得る。図1Bは、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)に接続されている加熱流体タンク(114)に加熱流体を連通させるためのチャンネル(113)を示すが、これは、例示的な実施形態であり、本明細書で説明されるような他のチャンネル形態が可能である。例えば、図1Bのチャンネル(113)は、冷却流体を冷却流体タンク(115)と連通させるために、少なくとも1つの冷却素子(107、307)に接続され得る。
【0052】
[0065] いくつかの実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、完全に非侵襲的であり、且つ外部に位置するか又は完全に植え込み可能である。少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、加熱流体タンク(114)及び冷却流体タンク(115)とそれぞれ連通するチャンネル(113)をそれぞれ含み得る。加熱流体タンク(114)及び冷却流体タンク(115)は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに流体温度を急速に上昇又は低下させることができるようにし得る。急速な上昇又は低下は、約5分、約3分以下又は好ましくは約1分以下の時間にわたる約1~約10℃の温度変化を含み得る。一実施形態では、加熱流体タンク(114)又は冷却流体タンク(115)内の流体の温度の急速な上昇又は低下は、米国特許第9,283,109号(その全体が参照により本明細書に援用される)に説明されているものと同様の温熱療法機器を使用して行われ得る。前記機器は、流体を加熱及び/又は冷却する熱交換器と、加熱又は冷却された流体を移動させるためのポンプとをさらに含み得る。加熱流体タンク(114)及び冷却流体タンク(115)内の流体を急速に加熱又は冷却できる他の熱交換機構が本発明において考慮される。
【0053】
[0066] 一実施形態では、約112°F~約118°Fに及ぶ高温の流体が加熱流体タンク(115)に生じ、且つそこから少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)に輸送されるため、外部から加えられる加熱流体は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに神経に適度な加熱をもたらす。一実施形態では、約112°F~約114°Fに及ぶ高温の流体が加熱流体タンク(115)に生じ、且つそこから少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)に輸送されるため、外部から加えられる加熱流体は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに神経に初期の適度な加熱をもたらす。その後、約115°F~約117°Fに及ぶ高温の流体が加熱流体タンク(115)に生じ、且つそこから少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)に輸送され得るため、外部から加えられる加熱流体は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに神経への適度な加熱の上昇をもたらし得る。熱エネルギーシステム(105、305、505)は、患者の皮膚に直接接するように配置されるか、又は熱エネルギーシステム(105、305、505)から患者への熱エネルギー伝達を促すための熱伝導性ゲル層を含み得る。
【0054】
[0067] 熱伝導性ゲル、自己硬化性ポリマー、発泡体、プラスチック若しくは他の生体適合性ポリマー又は複合材料が身体内に注入又は挿入され得、ゲル又は材料が機器と標的神経との間の領域における熱伝導率及び熱エネルギー伝達速度を高めることにより、熱エネルギーシステム(105、305、505)の性能を高めるようにし得る。熱伝導性ゲル又は材料は、他の方法で広げられるであろうよりも長い距離にわたっても熱エネルギーを広げ得、多くの神経が熱エネルギーを受け取ることができるようにする。この熱エネルギーの広がりは、膝関節内領域などの複数の場所において有用であり得るか、又は手術切開部位に沿って神経を熱的に調節し得る。熱伝導性ゲル、発泡体又は他のキャリア材料は、一般に、ベースポリマーを熱伝導性フィラーと組み合わせることによって作製される。ベースポリマーは、室温で注入され、且つその位置で体温によってそれらの最終形状に硬化するゲルを含むヒドロゲル及びシリコーンを含み得る。フィラーは、熱伝導率が1~40W/mKの範囲である熱伝導性ポリマー、例えばCelaneseにより市販されているCoolPoly-D、CoolPoly Elastomers及びCoolPoly-E材料をもたらすために一般に使用されるようなグラファイト、カーボンファイバー及びセラミックを含み得る。他の熱伝導性ゲル又は材料が本発明での使用に考慮される。熱伝導性ゲル又は材料の使用は、機器と標的神経との間の熱伝導率及び熱エネルギー伝達速度を高めることにより、熱エネルギーシステム(105、305、505)の性能を高め得る。熱伝導性ゲル又は材料は、他の方法で広げられるであろうよりも長い距離にわたっても熱エネルギーを広げ得、これにより多くの神経が熱エネルギーを受け取ることができるようにし得る。熱エネルギーのこの広がりは、膝関節内領域などの複数の箇所において有用であり得る。他の熱伝導性ゲル又は材料が本発明での使用に考慮される。
【0055】
[0068] 一実施形態では、約6℃~約10℃に及ぶ低温の流体が冷却流体タンク(115)に生じ、且つ少なくとも1つの冷却素子(107、307)に輸送されるため、外部から加えられる冷却流体は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに神経に適度な冷却をもたらし得る。一実施形態では、低温の流体は、約0℃又は約0℃よりも高いことができ、且つ患者の快適さに望ましいように約6℃~約10℃の範囲に温度を上昇させ得る。
【0056】
[0069] 一実施形態では、熱伝導性材料は、加熱ステップ及び冷却ステップを使用して神経をブロック又は部分的にブロックする前に神経の近くで灌流され得る。一実施形態では、断熱材は、加熱ステップ及び冷却ステップを使用して神経の軸索をブロック又は部分的にブロックする前に前記神経の近くで灌流され得る。
【0057】
[0070] 本発明の一実施形態では、図4の例によって示すように、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、神経の近く又はその上に植え込まれた少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)と、対象の皮膚上で外部に配置された冷却素子(107、307)と、少なくとも1つの箇所の近くの温度を検出することができる少なくとも1つの温度センサと、電源又は電力供給装置に接続されたシステムコントローラ(109、309、510)とを含む温度コントローラ(106、306)を含む。
【0058】
[0071] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、電気抵抗加熱素子、誘導加熱素子、ペルチェヒータ、マイクロ波加熱素子、高周波加熱素子、赤外線エミッタ又は神経の熱調節における適度な加熱ステップにおいて必要な加熱温度及び持続時間を提供できる任意の他の好適な加熱手段であり得る。一実施形態では、少なくとも1つの冷却素子(107、307)は、冷却管、熱電クーラー、冷凍システム、ペルチェクーラー、氷又は神経の熱調節における適度な冷却ステップにおいて必要な冷却温度及び持続時間を提供できる任意の他の好適な冷却手段であり得る。一実施形態では、冷却素子(107、307)は、1つ以上の冷却液チャンネル内において、皮膚のためのインターフェースまで運ばれる流体を冷却する。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、熱電対、サーミスタ又は神経をブロックするか若しくは部分的にブロックするために、熱調節前、熱調節中及び熱調節後、神経の温度変化を監視できる任意の他の好適な機器若しくは材料である。温度センサは、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)又は少なくとも1つの冷却素子(107、307)の周辺内若しくはその近く、又は身体内若しくは身体上の他の箇所、又は機器内の他の場所に配置され得る。
【0059】
[0072] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、誘導手段によって給電される電気抵抗加熱素子を含み得る。熱エネルギーシステム(105、305、505)の少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、放射電磁場を受信する誘導コイルによって給電される少なくとも1つの抵抗加熱素子を含む可撓性部分を含む電気抵抗加熱素子であり得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の可撓性部分は、温度コントローラ(106、306)を含む内部制御機構に接続され得、ここで、前記温度コントローラ(106、306)は、任意選択的に、システムコントローラ(109、309、510)と無線で通信し得る。システムコントローラ(109、309、510)は、内部に位置するか又は異なる実施形態では外部にあり得る。
【0060】
[0073] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、電源への経皮ワイヤから受け取られた電力によって加熱される。一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、システムコントローラ(109、309、510)によって制御される加熱流体ポンプと流体連通する加熱流体タンクから経皮管を通して受け取られた加熱流体によって加熱される。
【0061】
[0074] 一実施形態では、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)、例えば一実施形態では温度を検出することができる温度センサは、患者の皮膚上若しくはその近く、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)上若しくはその近く、1つ以上の冷却液チャンネル内若しくはその近く又は熱電クーラー内若しくはその近くからなる群から選択される少なくとも1つの箇所に位置する。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、神経に向けられている熱エネルギーを修正するために、様々なバイオマーカー又は生体信号を監視する1つ以上のフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。システムコントローラ(109、309、510)は、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)からの対象の生体信号を受信及び処理し得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、温度センサであるが、フィードバックセンサ(110、310、516)は、神経上又はその近くの温度及び化学物質レベルからなる群から選択される生体信号も監視し得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、温度センサであるが、フィードバックセンサ(110、310、516)は、体温、血圧、心拍、時間、発汗、酸素飽和度、心電図信号及び/又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータからなる群から選択される生体信号も監視し得る。一実施形態では、複数のフィードバックセンサ(110、310、516)があり、それらの出力信号は、冷却素子(107、307)及び加熱素子(108、308、515)を制御するためのソフトウェアのために設定されているシステムコントローラ(109、309、510)及び/又はシステムコントローラ(109、309、510)のプロセッサ(111、311、522)によって受信される。熱エネルギーシステム(105、305、505)は、前記フィードバックセンサ(110、310、516)によって検出された前記パラメータをシステムコントローラ(109、309、510)と通信するように構造されている。一実施形態では、システムコントローラ(109、309、510)は、少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)から対象の生体信号を受信する。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、システムコントローラ(109、309、510)のプロセッサ(111、311、522)のソフトウェア又はファームウェアの1つ以上のパラメータを選択することにより、植え込み後又は患者の外部に配置後、臨床医又はユーザによって設定可能である。別の実施形態では、パラメータは、事前設定され得る。一実施形態では、ユーザは、システムコントローラ(109、309、510)との通信を制御し得、ここで、ユーザは、痛みの程度、運動機能の程度、痛みに触れることを含む感覚感受性、鋭さ、温度及びストレスレベルからなる群から入力要因を選択し得る。ユーザは、電源を「入れる」若しくは「切る」か又は任意のレベルでの動作を変化させることによってもシステムを制御し得る。
【0062】
[0075] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するための情報を提供し得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、冷却ステップが後に続く加熱ステップを使用する神経の部分的又は完全な遮断後、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するように設定可能である。この実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、体温、血圧、心拍、時間、発汗、酸素飽和度、心電図信号、神経上若しくはその近くの温度及び化学物質レベル及び/又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータを含む群から選択される患者に対する影響に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を決定し得る。一実施形態では、フィードバックループは、限定されるものではないが、温度センサを含むフィードバックセンサ(110、310、516)によって検出される温度に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)に送給される電力を制御するために用いられ得る。
【0063】
[0076] プロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)の加熱、少なくとも1つの冷却素子(107、307)の冷却を制御し、且つ神経の温度を監視するために、制御エレクトロニクス(513)に物理的に又は無線で接続され得る。システムコントローラ(109、309、510)は、熱エネルギーシステム(105、305、505)の他の構成要素に植え込まれるか又はその外部にあり得る。無線電力伝送は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)に電力を提供するために使用され得、ここで、無線電力伝送は、電磁誘導又はマイクロ波エネルギー伝達を含み得る。
【0064】
[0077] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、電源によって給電され得、ここで、電源は、内部一次バッテリと、内部(再充電可能)二次バッテリと、電磁誘導電力伝送、マイクロ波無線伝達を含む無線電力伝送と、非可視レーザ電力伝送と、交流電流と、運動エネルギーハーベスティングシステムとからなる群から選択される。
【0065】
[0078] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の抵抗加熱型インプラント(506)は、神経を可逆的に遮断するために神経上又はその近くに植え込まれ得る。好ましい実施形態では、図4に例として示すように、熱エネルギーシステム(105、305、505)の抵抗加熱型インプラント(506)は、神経を可逆的に遮断するために、加熱のために神経上又はその近くに植え込まれ得る。前記熱エネルギーシステム(105、305、505)は、外部チラーポンプ(507)と、システムコントローラ(109、309、510)、外部冷却送達機器(509)及び誘導電力供給装置(511)を含むウェアラブルデバイス(508)とをさらに含み得る。誘導加熱型インプラント(506)は、任意選択的に、エコー源性ガイド(514)、制御エレクトロニクス(513)、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。熱エネルギーシステム(105、305、505)の構成要素は、下記で詳細に説明する。
【0066】
[0079] 抵抗加熱型インプラント(506)は、医療的処置中、1つ又は複数の神経をブロックするために約数分の時間或いは慢性状態若しくは症状を治療するために約数時間若しくは数日間又は何年にもわたって植え込まれ得る。一実施形態では、抵抗加熱型インプラント(506)は、図5Aの例によって示すような細く、線形であり、全体的に可撓性のインプラントであり得る。抵抗加熱型インプラント(506)は、剛性部分(525)及び可撓性部分(526)を含み得る。前記剛性部分(525)は、動作に必要であるような少なくとも1つの正の熱係数抵抗素子(519)、主誘導素子(520)、少なくとも1つの電力制御MOSFET(518)、マイクロコントローラ(517)及び支持型パッシブエレクトロニクス(521)を含む制御エレクトロニクス(513)を収容し得る。前記可撓性部分(526)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び温度を感知するためのものなどの少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)を収容し得る。前記少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)及び前記少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)は、少なくとも1つの印刷回路基板(PCB)(524)の構成要素であり得る。一実施形態では、可撓性部分(526)は、少なくとも1つのPCB(524)を含むフレキシブル回路を含み得る。
【0067】
[0080] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)又は熱エネルギーシステム(105、305、505)の少なくとも1つの構成要素の少なくともセクションは、生体適合性材料で構成されるか、又は機器の少なくとも1つのセグメントに生体適合性コーティングを含む。前記生体適合性コーティングは、ゲル、エアロゲル、ヒドロゲル、微小粒子、ダーマルフィラー若しくは他のフィラー、注入可能なスラリー又は有意な免疫応答を生じさせない組織若しくは血液よりも熱伝導率が低い他の材料であり得る。生体適合性コーティングは、植え込み前に誘導加熱型インプラント(506)に存在するか、又は植え込みに続いて誘導加熱型インプラント(506)の少なくとも一部分にコーティングされ得る。前記生体適合性コーティングは、生分解性であり得、且つ有限期間にわたって分解し得る。前記分解は、インビボで発生しないか、又はインビボで数カ月若しくは数年の期間などの長期間にわたってゆっくりと分解するのみであり得る。
【0068】
[0081] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、神経上又はその近くの温度及び化学物質レベルからなる群から選択される生体信号を監視するためにフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、体温、血圧、心拍、時間、発汗、酸素飽和度、心電図信号又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータからなる群から選択される生体信号を監視するためのフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。熱エネルギーシステム(105、305、505)は、前記フィードバックセンサ(110、310、516)によって検出された前記パラメータをシステムコントローラ(109、309、510)と通信し得る。一実施形態では、ユーザは、システムコントローラ(109、309、510)との通信を制御し得、ここで、ユーザは、痛みの程度、運動機能の程度、痛みに触れることを含む感覚感受性、鋭さ、温度及びストレスレベルからなる群から入力要因を選択し得る。ユーザは、電源を「入れる」若しくは「切る」か又は任意のレベルでの動作を変化させることによってもシステムを制御し得る。
【0069】
[0082] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するための情報を提供し得る。好ましい実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、冷却ステップが後に続く加熱ステップを使用する部分的又は完全な神経の遮断後、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を支援するための情報を提供し得る。この実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、感覚、器官の機能、痛みの程度、運動機能の程度、温度、鋭さ、血圧、時間、流量、心拍、発汗、ストレスレベル又は患者の健康状態、症状若しくは快適さの任意の他のそのような有用で好適なパラメータを含む群から選択される患者に対する影響に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)の容認可能な配置を決定し得る。一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の配置は、痛みの程度、運動機能の程度、痛みに触れることを含む感覚感受性、鋭さ、温度及びストレスレベルからなる群からのユーザ入力要因によってさらに導かれ得る。一実施形態では、フィードバックループは、フィードバックセンサ(110、310、516)によって検出される温度に基づいて、熱エネルギーシステム(105、305、505)に送給される電力を制御するために用いられ得る。
【0070】
[0083] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、抵抗加熱型インプラント(506)と通信するプロセッサ(111、311、522)を含むシステムコントローラ(109、309、510)、外部冷却送達機器(509)、誘導電源(511)及び外部チラーポンプ(507)を含む。システムコントローラ(109、309、510)の通信の説明は、下記に詳述される。
【0071】
[0084] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)の抵抗加熱型インプラント(506)は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに神経に加熱をもたらし、且つ誘導電力供給装置(511)からの放射電磁場によって給電される。好ましい実施形態では、抵抗加熱型インプラント(506)内のマイクロコントローラ(517)は、システムコントローラ(109、309、510)と通信し、且つシステムコントローラ(109、309、510)からセキュアなイネーブル信号を受信した後、神経を可逆的にブロックするために必要に応じて加熱の温度設定点、持続時間を決定し、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)への電力潮流を制御し、且つ抵抗加熱型インプラント(506)の他の機能を指示する。前記マイクロコントローラ(517)は、前記システムコントローラ(109、309、510)と無線通信し得るか、又は前記システムコントローラ(109、309、510)に物理的に接続され得る。無線通信は、Bluetooth接続又は任意の他の好適な無線通信手段によって行われ得る。外来の無線信号は、マイクロコントローラ(517)によって認識されないことがあり得るため、抵抗加熱型インプラント(506)の予期しない加熱事象が回避され得る。
【0072】
[0085] 一実施形態では、誘導電力供給装置(511)は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに抵抗加熱型インプラント(506)に給電する。誘導電力供給装置(511)は、抵抗加熱型インプラント(506)に対して前記誘導加熱型インプラント(506)を誘導式に給電できるように置かれ得る。誘導加熱型インプラント(506)のマイクロコントローラ(517)は、少なくとも1つの電力制御MOSFET(518)又は他の固体スイッチを用いて、誘導電力供給装置(511)から少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)に伝送される電力を制限し得る。前記少なくとも1つの電力制御MOSFET(518)は、修正されたパルス幅であり得る。前記少なくとも1つの電力制御MOSFET(518)は、前記少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)がその温度設定点に到達するように、電力を徐々に上げるために用いられ得る。好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)の温度設定点は、約45℃である。マイクロコントローラ(517)は、低電力レベルを維持し、且つ神経を冷却している温度の継続的な監視を指示するために用いられ得る。マイクロコントローラ(517)は、システムコントローラ(109、309、510)と連続的に通信して、連続的なフィードバックループをもたらし得る。正の熱係数抵抗素子(519)は、誤動作の場合にアナログ式に誘導加熱型インプラント(506)への電力を制限するためのフェイルセーフシステムとして利用され得る。少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)の内蔵ヒューズは、過電流事象に対して前記少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)を保護し、且つそのような過電流事象において少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)を遮断し得る。
【0073】
[0086] 一実施形態では、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)は、電気抵抗加熱素子、誘導加熱素子、ペルチェヒータ、マイクロ波加熱素子、高周波加熱素子、赤外線エミッタ又は神経の熱調節における適度な加熱ステップにおいて必要な加熱温度及び持続時間を提供できる任意の他の好適な加熱手段であり得る。一実施形態では、フィードバックセンサ(110、310、516)は、温度センサ、例えば熱電対、サーミスタ又は神経をブロックするか若しくは部分的にブロックするための熱調節前、熱調節中及び熱調節後、神経の温度変化を監視できる任意の他の好適な機器若しくは材料である。フィードバックセンサ(110、310、516)は、少なくとも1つの加熱素子(108、308、515)の周辺内若しくはその近く、又は身体内若しくは身体上の他の箇所、又は機器内の他の場所に配置され得る。一実施形態では、任意選択的な少なくとも1つのエコー源性ガイド(514)又は他のそのような好適なガイド材料又は機器が抵抗加熱型インプラント(506)内に置かれて、前記抵抗加熱型インプラント(506)の配置を支援し得る。
【0074】
[0087] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)による神経の冷却は、外部から加えられ得る。一実施形態では、神経の冷却は、外部チラーポンプ(507)に接続された外部冷却送達機器(509)によって送達される。外部冷却送達機器(509)、誘導電力供給装置(511)及びシステムコントローラ(109、309、510)は、標的箇所に位置決めされ得、ここで、前記標的箇所は、図4において説明し且つ図5Bに例として示すように、植え込まれた抵抗加熱型インプラント(506)及びその標的神経を覆う皮膚に接している。好ましい実施形態では、外部冷却送達機器(509)、誘導電力供給装置(511)及びシステムコントローラ(109、309、510)は、ウェアラブルデバイス(508)内に収容されているため、ウェアラブルデバイス(508)が標的箇所に位置決めされ得、ここで、前記標的箇所は、植え込まれた抵抗加熱型インプラント(506)及びその標的神経を覆う皮膚に接している。ウェアラブルデバイス(508)は、パッチ、ヘッドバンド、ストラップ、バンド又は前記外部冷却送達機器(509)、誘導電力供給装置(511)及びシステムコントローラ(109、309、510)を前記標的箇所に収容し、且つ皮膚と前記ウェアラブルデバイス(508)との間に熱的接触をもたらす任意のそのような手段であり得る。一実施形態では、ウェアラブルデバイス(508)は、ストラップ又は他のそのような好適な手段を備える軟質の適合弾性材料(例えば、Shore Scale 25A)で構成されて、患者の標的箇所に適合し得る。一実施形態では、薄くて適合する熱伝導性エラストマー、例えばCOOLPOLY(登録商標)Thermally Conductive Plastic(Celanese, Ltd.)は、ウェアラブルデバイス(508)が熱的接触を行い得るように、ウェアラブルデバイス(508)の患者の皮膚に接する側面にコーティングされ得る。一実施形態では、熱伝導性ゲルは、ウェアラブルデバイス(508)との熱的接触を高めるために使用され得る。好ましい実施形態では、ウェアラブルデバイス(508)は、後頭神経に関連する疼痛に関わる状態を治療するように位置決めされたヘッドバンドであり得る。
【0075】
[0088] 熱エネルギーシステム(105、305、505)の外部冷却送達機器(509)は、外部チラーポンプ(507)によってもたらされた冷流体を使用して神経の冷却を行い得る。一実施形態では、外部冷却送達機器(509)及び外部チラーポンプ(507)は、ウェアラブルデバイス(508)内に収容されている。好ましい実施形態では、外部冷却送達機器(509)は、ウェアラブルデバイス(508)内に収容され、且つ別々の位置にある外部チラーポンプ(507)に接続されている。外部冷却送達機器(509)及び外部チラーポンプ(507)は、断熱され得る冷却流体管路によって接続され得るため、冷流体は、外部チラーポンプ(507)から、標的箇所にある外部冷却送達機器(509)に方向付けられ、且つ再生流体は、外部冷却送達機器(509)から外部チラーポンプ(507)に戻されて冷やされ得る。一実施形態では、外部チラーポンプ(507)は、ペルチェ冷却システムを含み得るため、再生流体は、再使用するための冷流体となるように冷やされ得る。再生流体は、外部チラーポンプ(507)の再生流体タンク(512)で収集され得、再生流体タンク(512)内の流体の温度は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに迅速に上昇又は低下する。一実施形態では、システムコントローラ(109、309、510)は、外部チラーポンプ(507)に、冷却流体管路内の冷流体温度及び流量を制御するように指示し得る。外部チラーポンプは、冷流体、再生流体の温度及び再生流体タンク(512)内の温度を監視するための少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)を含み得る。前記少なくとも1つのフィードバックセンサ(110、310、516)は、温度測定値を連続的に提供するために又はシステムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りにシステムコントローラ(109、309、510)と通信し得る。
【0076】
[0089] 再生流体及び冷流体は、同じ組成物であり得、且つ熱エネルギーシステム(105、305、505)の冷却流体管路内に位置し得る。再生流体と冷流体との唯一の著しい違いは、それぞれの温度であり得、且つ再生流体及び冷流体は、それらの温度を交互にすることによって互いに変換され得る。再生流体及び冷流体の両方の組成物は、食塩水又は任意の他の好適な流体であり得、流体は、前記流体が凍ることなく、神経を冷却するために必要な温度まで冷やされ得る。好ましい実施形態では、冷流体は、約0℃まで又は約0℃をわずかに下回る温度まで冷やされ得、神経は、システムコントローラ(109、309、510)によって指示されるような温度まで冷却され得る。
【0077】
[0090] 図6A図6Bは、組織の加熱及び冷却に対する距離の影響を実証している。図6Aでは、神経を約15℃まで冷却させるために必要な冷却ステップがシミュレーションを使用して実証されている。シミュレーションでは、冷流体は、0℃の温度を患者の皮膚の標的箇所に約10分もたらして、皮膚の表面の8mm以内の神経に15℃の温度を生じさせ得る一方、冷流体は、0℃の温度を標的箇所の患者の皮膚に約20~約30分もたらして、皮膚の表面の20mm内の神経に15℃の温度を生じさせ得ると決定された。皮膚の表面から20mmの深さを越えると、冷流体に必要な温度が患者にとって不快であるか又は容認できない可能性があり、且つ外来のエネルギーを生じさせる必要があり得るため、神経を外部から冷却することは、実現困難であり得る。15℃の神経冷却温度が達成されると、患者の皮膚表面において約8℃~約10℃に及ぶ温度の冷流体を用いて神経に15℃の冷却温度を維持することが可能であり得ると決定された。図6Bでは、植え込まれた抵抗加熱型インプラント(506)が組織内の20mmの深さで45℃に加熱され、及び前記組織の温度が抵抗加熱型インプラント(506)から様々な距離において監視されている。抵抗加熱型インプラント(506)からの加熱は、45℃の標的温度にほぼ等しいままであるが、組織の温度は、距離と共に数度低下する。
【0078】
[0091] 抵抗加熱型インプラント(506)の挿入は、当技術分野で公知の任意の好適な挿入又は外科的手段によって実施され得る。一実施形態では、抵抗加熱型インプラント(506)の挿入は、図7に示すような挿入機器(535)を使用して実施され得る。前記挿入機器(535)は、挿入シース(538)、シース制御アーム(537)及びプランジャー(536)を含み得、且つ患者の身体内に挿入するために滅菌できる任意の材料で構成され得る。挿入シース(538)は、抵抗加熱型インプラント(506)を囲むか、さもなければ包囲するか若しくは組み込んで、前記抵抗加熱型インプラント(506)を標的箇所に導いて挿入し得る。シース制御アーム(537)は、臨床医がプランジャー(536)を保持している間に前記臨床医によって引かれて、挿入シース(538)が引っ込められ得るようにし、抵抗加熱型インプラント(506)が露出され、且つ挿入機器(535)が標的部位から取り出され得るようにする。植え込まれた抵抗加熱型インプラント(506)は、その挿入された標的箇所に留まり得る。
【0079】
[0092] 一実施形態では、熱エネルギーシステム(105、305、505)は、熱エネルギープローブ(405)を含む。熱エネルギープローブ(405)は、図8に例として示すように、馬蹄、C字形状、U字形状、ボウル及び半円の形状を含む形状に構成され得る。熱エネルギープローブ(405)は、神経又はその近くに植え込まれて、加熱及び/又は冷却をもたらし得、神経が可逆的な遮断を受けるようにし得る。一実施形態では、熱エネルギープローブ(405)は、U字形状にされ、且つ神経の周りに延在する。熱エネルギープローブ(405)の材料は、神経又はその近くに植え込まれるときに熱伝導性及び生体適合性である任意の材料で構成され得る。一実施形態では、熱エネルギープローブ(405)は、銀で構成される。熱エネルギープローブ(405)は、3次元印刷、射出成形、商業的な鋳造法又は任意の他の好適な生産技術によって生産され得る。
【0080】
[0093] 熱エネルギープローブ(405)は、神経の直径に対応するようなサイズにされ得るため、神経の可逆的な遮断に望まれるように、熱エネルギープローブ(405)が神経の周りに延在し得るか又は神経に沿って特定の距離延在し得るようにする。一実施形態では、U字形状の熱エネルギープローブ(405)は、図9に示すような平面的な軸上の図から、4つの側面のうちの3つの側面で神経を囲んで、神経の少なくともあるセクションの全体を通して均等な温度分布が維持され得るようにする。そのため、熱エネルギープローブ(405)の断面のパラメータは、可逆的な遮断の標的であり得る神経の直径によって決定され得る。熱エネルギープローブ(405)は、例えば、直径2mm及び軸方向断面2mmの神経に関して、4mm×3mm×5mmの熱エネルギープローブ(405)を含むミリメートル規模の寸法であり得る。
【0081】
[0094] 一実施形態では、熱エネルギープローブ(405)のサイズは、図10A図10Bの寸法を参照して、式(1)~(4)に従って標的神経の寸法から計算され得る。
X1=D+1.5mm (1)
X2=X1+2mm (2)
Y=D+2mm (3)
Z=Zn+1.5mm (4)
【0082】
[0095] 式(1)では、X1は、図10Aに示すようなU字形状の熱エネルギープローブ(405)の寸法である。神経の直径は、Dである。式(2)では、X1は、図10Aに示すようなU字形状の熱エネルギープローブ(405)の寸法である。式(3)では、Yは、図10Aに示すようなU字形状の熱エネルギープローブ(405)の寸法である。式(4)では、Zは、図10Bに示すようなU字形状の熱エネルギープローブ(405)の寸法である。標的神経の軸方向長は、Znである。
【0083】
[0096] 一実施形態では、熱エネルギープローブは、少なくとも1つの流体チャンネル(406)をさらに含み得、加熱流体又は冷却流体が熱エネルギープローブ(405)に入り、且つ熱エネルギーを熱エネルギープローブ(405)に伝達して、神経を加熱又は冷却するようにし得る。少なくとも1つの流体チャンネル(406)は、約0.3mmの直径又はチューブ(407)にはまるのに好適な任意の直径を有し得る。少なくとも1つの流体チャンネル(406)は、約1.5mmの長さ又は任意の他の好適な長さを有して、チューブ(407)が適所に確実に保持されるようにし得、且つ熱エネルギープローブ(405)のサイズが植え込むために最小にされるようにする。少なくとも1つの流体チャンネル(406)は、加熱流体又は冷却流体のための入口及び出口を提供し得、且つ熱エネルギープローブ(405)の背後又は熱エネルギープローブ(405)に加熱流体又は冷却流体を提供することに関して任意の好適な箇所に位置し得る。加熱流体又は冷却流体は、水、食塩水又は任意の他の好適な流体であり得、流体は、前記流体が蒸発するか又は凍ることなく、神経を加熱又は冷却するのに必要な温度に加熱され得るか又は冷やされ得る。冷却流体又は加熱流体は、熱エネルギープローブ(405)から、出口の機能を果たし得る少なくとも1つの流体チャンネル(406)を通して出ることができる。一実施形態では、冷却流体又は加熱流体は、チューブ(407)を使用して少なくとも1つの流体チャンネル(406)を通して運ばれ得、チューブ(407)は、可撓性であり、断熱され、且つ少なくとも1つの流体チャンネル(406)の寸法にはまるように適合する。
【0084】
[0097] 一実施形態では、熱エネルギープローブ(405)は、図9図11に示すように、神経に最も近い表面上に伝導性ゲル(408)のコーティングをさらに含む。伝導性ゲル(408)は、熱エネルギープローブ(405)内の神経の衝撃を和らげるために使用され得、且つ熱エネルギープローブ(405)から神経への熱エネルギー伝達を促し得る。伝導性ゲル(408)は、神経の少なくとも1つのセクションの全体を通して低レベルの温度分散を維持するようにさらに機能し得る。より高い熱伝導率の伝導性ゲル(408)は、熱エネルギープローブ(405)からのより効率的な熱エネルギー伝達を生じさせ得る。伝導性ゲル(408)は、神経又はその近くに植え込むために生体適合性であり得る。他の熱伝導性ゲル又は材料が本発明での使用に考慮される。
【0085】
[0098] 一実施形態では、熱エネルギープローブ(405)は、神経と相互作用しない熱エネルギープローブ(405)の少なくとも1つの表面上に断熱性裏張り(409)を含み得る。断熱性裏張り(409)は、熱エネルギープローブ(405)の特徴に適合し、且つ低熱伝導率で断熱する固形物を含み得る。一実施形態では、断熱性裏張り(409)は、ポリウレタンで作製され、且つ断熱性裏張り(409)の熱伝導率は、約0.027W/mKである。断熱性裏張り(409)は、熱エネルギープローブ(405)の裏面に配置され得、且つ少なくとも1つの流体チャンネル(406)などの特徴に適合し得る。断熱性裏張り(409)は、エネルギープローブ(405)からの熱エネルギーの損失を防止し得る。断熱性裏張り(409)を備える熱エネルギープローブ(405)は、図11に示されている。
【0086】
[0099] 一実施形態では、熱エネルギープローブ(405)は、可逆的な遮断のために神経又はその近くに植え込まれる。熱エネルギープローブ(405)の配置は、超音波によって導かれ、且つ熱エネルギープローブ(405)を配置するためのアプリケータ又は他のそのような好適な機器を使用して、切開部を通して挿入され得る。熱エネルギープローブ(405)は、熱エネルギープローブ(405)の表面をコーティングする伝導性ゲル(408)によって神経の衝撃を和らげるように位置決めされ得る。U字形状の熱エネルギープローブ(405)が使用される場合、伝導性ゲル(408)は、U字状特徴の内側にコーティングされ得る。一実施形態では、挿入している間、断熱材(410)は、熱エネルギープローブ(405)の周りに注入又は配置され得る。断熱材(410)は、熱エネルギー伝達を所望の箇所に限定し、且つ熱エネルギープローブ(405)を神経又はその近くのその所望の箇所に保持することを支援し得る。断熱材(410)は、神経及び熱エネルギープローブ(405)の周りにほぼ球形に注入され得、且つ所望の箇所に適用するために1回以上の注入を伴い得る。一実施形態では、断熱材(410)は、直径10mmの球に注入され得る。断熱材(410)は、断熱性且つ生体適合性であり得、及び液体、ゲル又は発泡体であり得る。好ましい実施形態では、断熱材(410)は、熱伝導率が約0.027W/mKであるポリウレタン発泡体である。低熱伝導率の断熱材(410)が望ましい。断熱材(410)は、部位への注入を可能にするように十分に低い粘性であるが、ある程度の時間の設置後に標的領域から離れることを防止するように十分に高い粘性を有する必要がある。理想的な断熱材(410)は、CryoLifeのBioFoam Surgical Matrixなど、液体として注入されてから化学反応して固まって、その形状及び箇所を維持する準備ができる自己硬化材料であり得る。
【0087】
[00100] 断熱性ゲル、自己硬化性ポリマー、発泡体、プラスチック若しくは他の生体適合性ポリマー又は複合材料は、身体内に注入又は挿入されて、ゲル又は材料が、機器及び標的神経の周りの影響を受ける所望の領域外の領域における熱伝導率及び熱エネルギー伝達速度を低下させることにより、熱エネルギーシステム(105、305、505)の加熱及び/又は冷却を指示し得るか又は含み得るようにし得る。断熱性ゲル又は材料は、他の方法で広げられるであろう以上の領域にわたる熱エネルギーの広がりも防止し得、これは、より的を絞った熱調節の使用又は熱的に調節することが望ましくない領域及びその近くでの熱調節の使用を可能にし得る。熱エネルギーのこの限定は、疼痛の原因ではない、運動又は感覚を制御する神経に影響を及ぼすことなく、不快感の原因となっている、関節内の明確に標的にする神経などの複数の箇所において有用であり得る。断熱性ゲル、発泡体又は他のキャリア材料は、一般に、ベースポリマーを断熱性フィラーと組み合わせることによって作製される。ベースポリマーは、室温で注入され得、且つそれらの最終形状にその位置で体温によって硬化され得るゲルを含め、ヒドロゲル及びシリコーンを含み得る。フィラーは、一般に、熱伝導率が.1~.01W/mKの範囲である断熱性ポリマーをもたらすために使用されるように、ポリウレタン発泡体、ポリスチレン、ガラス繊維及びエアロゲル、例えばポリスチレン、Cabotcorpのエアロゲル及びGeneral Plastics corpのポリウレタン発泡体を含み得る。他の断熱性ゲル又は材料が本発明での使用に考慮される。
【0088】
[00101] 熱エネルギープローブ(405)は、挿入後に展開し得る位置決めフックを含み得るため、熱エネルギープローブ(405)が神経又はその近くの所望の箇所にロックされるようにする。
【0089】
[00102] 一実施形態では、熱エネルギープローブ(405)は、流体の流れ及び温度を制御するための構成要素に接続され得る。構成要素は、植え込まれるか又は患者の外部にあり得る。構成要素は、ポンプ、熱交換器、熱電クーラー、システムコントローラ(109、309、510)、電源及びチューブ(407)を含み得る。ポンプは、図12A~Bに示すように、且つシステムコントローラ(109、309、510)によって指示される通りに、加熱又は冷却流体を、チューブ(407)を通して熱エネルギープローブ(405)内に輸送するために使用され得る。電源は、バッテリ又は熱エネルギーシステム(105、305、505)の構成要素に給電するのに好適な任意の他の電源であり得る。
【0090】
[00103] 一実施形態では、熱交換器及び熱電クーラーは、それぞれ流体を加熱及び冷却するために使用される。一実施形態では、加熱流体は、約42C~約54Cである。一実施形態では、冷却流体は、約2C~約15Cである。好ましい実施形態では、冷却流体は、約15Cであり、及び加熱流体は、加熱及び冷却中、約50Cであり、周囲組織では±2Cである。システムコントローラ(109、309、510)は、熱交換器及び/又は熱電クーラーに、前記温度が神経において維持され得るように指示し得る。流体は、加熱又は冷却のために、熱エネルギープローブ(405)から熱交換器及び/又は熱電クーラーに戻るように再生され得る。一実施形態では、加熱又は冷却流体の流量は、加熱又は冷却流体の温度に依存して約0.0004L/分~約0.0001L/分に及び得る。ポンプは、チューブ(407)の直径に依存して、これらの流量を達成するために約5mbar~約400mbarの圧力を提供し得る。
【0091】
[00104] 可逆的な遮断のための熱調節に使用される機器又はシステムは、図13A~Cに例として表示されるように、疼痛のタイプ及び持続時間並びに皮膚からの神経の深さに基づいて調整され得る。一実施形態では、神経に関連する疼痛は、慢性又は急性であり得、ここで、慢性疼痛は、長続きし得、且つ数日、数週、数カ月又は数年の持続時間にわたって発生し得、及び急性疼痛は、最近及び/又は突然発症のものであり得、且つ数時間、数日、数週間又は数カ月の短い持続時間にわたって発生し得る。一実施形態では、慢性疼痛は、少なくとも約3カ月の持続時間にわたって発生し得る。一実施形態では、急性疼痛は、約2週間以下の持続時間にわたって発生し得る。慢性疼痛は、寛解期間又は再発期間を含み得、且つ身体の1つ以上の領域に影響を及ぼし得る。急性疼痛は、激しいことがあり、且つ身体の1つ以上の領域に影響を及ぼし得る。慢性疼痛又は急性疼痛は、持続性又は散発性であり得、持続性疼痛は、1つ以上のレベルの重症度で連続的に発生し、及び散発性疼痛は、定期的又は不規則な疼痛発作で、1つ以上のレベルの重症度で断続的に発生し得る。図13A~Cにおける機器の決定は、例示であり、機器の選択及び使用の方法は、患者毎に異なり得る。本発明の様々な実施形態に関して考慮される標的神経の深さの範囲は、患者毎に異なり得、且つ図13A~Cに例示される。
【0092】
[00105] 植え込み可能な又は外部に装着される加熱素子及び/又は冷却素子(108、308、515)、(107、307)の選択は、少なくとも部分的に神経の深さ並びに温度に対する個人の感覚的認知力及び耐性に基づく。神経ブロックを開始し、且つそれを維持するための神経の十分な加熱、例えば約40~45℃に達する神経温度は、皮膚の下側の神経の深さが約4~8ミリメートル以下であるとき、ほとんどの患者に関して加熱素子(108、308、515)によって外部で発生され、その場合、加熱素子(108、308、515)は、患者が、温かい温度に対する特別な感受性を有する場合又は他の方法で加熱素子(108、308、515)を植え込むことを好む場合でない限り、優先的にこの範囲外にあり得る。皮膚表面の下側約4~8ミリメートルよりも深い神経のブロックは、一般的に、加熱素子(108、308、515)が植え込まれる必要があり、植え込まれると、神経の約1~8ミリメートル内にあることを必要とする。神経ブロックを開始し、且つそれを維持するための神経の十分な冷却、例えば約15~30℃の範囲の神経温度は、冷却素子(107、307)が任意選択的に植え込まれ得るか又はこの範囲の神経の深さ外にあるように神経の深さが約20~25ミリメートル以下であるとき、冷却素子(107、307)により、皮膚を通して外部から発生され得る。神経が約20~25ミリメートルよりも深いとき、冷却素子(107、307)及び加熱素子(108、308、515)は、一般的に、最大限の効力のために植え込まれる必要があるため、冷却素子(107、307)は、神経の約20~25ミリメートル内にあり、及び加熱素子(108、308、515)は、神経の約4~8ミリメートル内にある。これらの範囲は、ゲル、エラストマー又は他の混合物などの熱伝導性材料を加熱及び/又は冷却素子(108、308、515)、(107、307)と神経との間に挿入することによって狭くされ得る。
【0093】
[00106] 一実施形態では、図13Aにおいて例として説明されるように、熱調節は、慢性の持続性疼痛(205)の治療のための可逆的な遮断を含む。この場合、標的神経の応答が最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。神経の熱調節は、臨床の場で検査されて、可逆的な遮断の効果を評価し得る。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。好ましい実施形態では、熱調節は、完全植え込み型熱システム(206)から適用され得る。熱調節が不成功である場合、熱調節は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。
【0094】
[00107] 一実施形態では、図13Aにおいて例として説明されるように、熱調節は、慢性の散発性疼痛(208)の治療のための可逆的な遮断を含む。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約20mmを上回る深さに位置する(209)。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。神経が患者の皮膚から約20mm超の範囲の深さに位置する好ましい実施形態では、熱調節は、完全植え込み型熱システムから適用され得る(206)。熱調節が不成功である場合、熱は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約6mm~約20mmの範囲の深さに位置する(210)。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。神経が患者の皮膚から約6mm~約20mmの範囲の深さに位置する好ましい実施形態では、熱調節は、経皮的な冷却(220)及び植え込み型誘導加熱機器(219)によって行われ得る。熱調節が不成功であるか又は部分的に成功である場合、熱は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約6mm未満の深さに位置する(211)。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。好ましい実施形態では、神経が患者の皮膚から約6mm未満の深さに位置するとき、熱調節は、経皮的な加熱及び冷却機器によって行われ得る(212)。熱調節が不成功であるか又は部分的に成功である場合、熱調節は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。
【0095】
[00108] 一実施形態では、図13Bにおいて例として説明されるように、熱調節は、急性の持続性疼痛の治療のための可逆的な遮断を含む(213)。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約20mm超の(209)又は患者の皮膚から約6mm~約20mmの範囲の(210)深さに位置する。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。好ましい実施形態では、神経が患者の皮膚から約20mm超又は患者の皮膚から約6mm~約20mmの範囲の深さに位置するとき、熱調節機器は、一時的なサーマルプローブであり得(215)、医師が必要に応じて継続的な熱調節の必要性を評価し得るようにする。熱調節が必要であり続ける場合(216)、機器が利用され続け得る。熱調節がもはや必要ではない場合(217)、機器は、除去され得る(218)。熱調節が不成功である場合、熱調節は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約6mm未満の深さに位置する(211)。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。神経が患者の皮膚から約6mm未満の深さに位置する好ましい実施形態では、熱調節は、経皮的な加熱及び冷却機器によって行われ得る(212)。熱調節が不成功であるか又は部分的に成功である場合、熱調節は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。
【0096】
[00109] 一実施形態では、図13B図13Cにおいて例として説明されるように、熱調節は、急性の散発性疼痛の治療のための可逆的な遮断を含む(214)。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約20mm超の深さに位置する(209)。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。神経が患者の皮膚から約20mm超の深さに位置する好ましい実施形態では、熱調節機器は、一時的なサーマルプローブであり得(215)、医師が必要に応じて継続的な熱調節の必要性を評価し得るようにする。熱調節が必要であり続ける場合(216)、機器が利用され続け得る。熱調節がもはや必要ではない場合(217)、機器は、除去され得る(218)。熱調節が不成功である場合、熱調節又は電気調節は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約6mm~約20mmの範囲の深さに位置する(210)。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。一実施形態では、熱調節は、臨床の場で検査され、且つ可逆的な遮断が評価される。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。神経が患者の皮膚から約6mm~約20mmの範囲の深さに位置する好ましい実施形態では、熱調節は、経皮的な冷却(220)及び植え込み型誘導加熱機器(219)を用いて行われ得る。熱調節が不成功であるか又は部分的に成功である場合、熱調節は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。一実施形態では、神経は、患者の皮膚から約6mm未満の深さに位置する(211)。この場合、標的神経の応答は、最初に臨床の場で検査されて、熱調節に対するその応答を決定し得る。一実施形態では、熱調節は、臨床の場で検査され、且つ選択的な遮断が評価される。熱調節が成功である場合、熱調節機器又はシステムは、外部又は植え込み型機器としてのいずれかで利用され得る。神経が患者の皮膚から約6mm未満の深さに位置する好ましい実施形態では、熱調節は、経皮的な加熱及び冷却機器(212)を用いて行われ得る。熱調節が不成功であるか又は部分的に成功である場合、熱調節は、治療に適切でないことがあり得、及び他の選択肢が調査され得る(207)。
【0097】
[00110] 熱調節機器を利用すると決定する場合、患者又は他のユーザは、前記機器の使用に関して訓練又は指導され得る。熱調節は、熱ブロックを使用して行われ得る。熱ブロックは、完全に外部の経皮的なシステムから完全植え込み型システムまで、様々な程度の植え込みの機器の使用を含み得る。例えば、熱ブロックは、熱エネルギープローブ、経皮的な冷却及び誘導給電加熱機器、経皮的な加熱及び冷却機器又は完全植え込み型熱システムの使用を含み得る。
【0098】
[00111] 加熱素子及び/又は冷却素子を神経の近くの身体上又は身体内に装着すること、身体内の加熱素子及び/又は冷却素子の周りに伝導性ゲル又はエラストマーを挿入することを含む、身体内の神経の周囲の領域の可逆的な遮断のための熱エネルギー機器と、神経の近くにあり得る、影響を受ける周囲の領域との間の熱エネルギー伝達に関する患部を選択する方法がさらに開示される。
【0099】
[00112] 本明細書では、加熱素子及び/又は冷却素子を神経の近くの身体上又は身体内に装着すること、身体内の加熱素子及び/又は冷却素子を囲む所望の患部の周りに断熱性ゲル又はエラストマーを挿入して、所望の患部(加熱素子及び/又は冷却素子並びに神経からなる)と、温度の影響が望まれていない身体の他の領域との間に熱ブロックを集中させることを含む、身体内の神経の周囲の領域の可逆的な遮断のための熱エネルギー機器間の熱エネルギー伝達のための患部を選択する方法がさらに開示される。
【0100】
[00113] 温度、圧力、時間及び/又は流量などのセンサデータを使用する方法、使用する機器及びセンサデータの使用であって、場合により、必須ではないが、フィードバックループへの入力として機械インターフェースを経る人の入力又はアルゴリズム制御を提供して、限定されるものではないが、ポンプ流量又はペルチェ電極若しくは他の温度制御機器を加熱若しくは冷却させて、アルゴリズム制御によって指示される通りに温度変更させた温度を含む、本明細書で説明したシステム/機器の出力を制御するアルゴリズムを含む方法、機器及び使用である。本発明は、ウェアラブルデバイスからの他のデータ源、包括的でない例として、例えば心拍、発汗の程度、心機能(cardiac function)/心機能(cardiac performance)、血圧、ストレスレベル又はGPSも含む。他のセンサは、神経伝導を最適に制御するために機器に追加されるか又はシステムの入力に含まれ得る。本発明は、機器の動作又は性能に何らかの点で影響を及ぼす、ここで具体的に列挙されない他の出力に対するアルゴリズム制御も含む。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C