(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】スパイラルベースの薄膜メッシュシステム及び関連の方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/91 20130101AFI20240702BHJP
【FI】
A61F2/91
(21)【出願番号】P 2020572542
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 US2019039999
(87)【国際公開番号】W WO2020006520
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-23
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519223941
【氏名又は名称】モナーク・バイオサイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】キーリー,コリン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,ヴィカース
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-230913(JP,A)
【文献】国際公開第2011/072053(WO,A1)
【文献】特表2009-515589(JP,A)
【文献】特表2016-535650(JP,A)
【文献】特開平11-128364(JP,A)
【文献】特表2005-525510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスパイラル部を含み、前記複数のスパイラル部のそれぞれが複数のスパイラルアームを含む、薄膜メッシュ
を含む、
植込み型医療機器。
【請求項2】
前記複数のスパイラルアームは、3個のスパイラルアーム、4個のスパイラルアーム、6個のスパイラルアーム、12個のスパイラルアーム、又は24個のスパイラルアームのうちの1つを含む、請求項1に記載の
植込み型医療機器。
【請求項3】
前記スパイラル部のそれぞれに関し、隣接するスパイラルアーム間の距離は、前記スパイラルアームが前記スパイラル部の中心から放射状に広がるにつれて、長くなる、請求項1に記載の
植込み型医療機器。
【請求項4】
前記薄膜メッシュは、さらに、複数の三角形の相互接続部を含み、前記三角形の相互接続部のそれぞれは、前記スパイラル部のうちの3つを互いにつないでいる、請求項1に記載の
植込み型医療機器。
【請求項5】
前記スパイラル部のそれぞれは、対数スパイラル部、黄金スパイラル部、近似黄金スパイラル部、ボックスファイスパイラル部、又はフィボナッチスパイラル部のうちの1つである、請求項1に記載の
植込み型医療機器。
【請求項6】
前記ボックスファイスパイラル部は、2ボックスファイスパイラル部、3ボックスファイスパイラル部、又は4ボックスファイスパイラル部のうちの1つである、請求項
5に記載の
植込み型医療機器。
【請求項7】
前記薄膜メッシュは薄膜ニチノール(TFN)を含む、請求項1に記載の
植込み型医療機器。
【請求項8】
前記薄膜メッシュは、治療モダリティにコーティングされるか又は接合されるかの少なくとも一方である、請求項1に記載の
植込み型医療機器。
【請求項9】
前記治療モダリティは、小分子、ペプチド、抗体、ポリマー、バイオポリマー、細胞、又は組み換え細胞のうちの少なくとも1つを含む、請求項
8に記載の
植込み型医療機器。
【請求項10】
長手方向軸に延在するバックボーン;及び
前記バックボーンに組み立てられた薄膜メッシュ
を含む、
植込み型医療機器であって、
前記薄膜メッシュは、複数のスパイラル部を含み、前記複数のスパイラル部のそれぞれが複数のスパイラルアームを含む、
植込み型医療機器。
【請求項11】
前記複数のスパイラルアームは、3個のスパイラルアーム、4個のスパイラルアーム、6個のスパイラルアーム、12個のスパイラルアーム、又は24個のスパイラルアームのうちの1つを含む、請求項
10に記載の
植込み型医療機器。
【請求項12】
前記薄膜メッシュは、さらに、複数の三角形の相互接続部を含み、前記三角形の相互接続部のそれぞれは、前記スパイラル部のうちの3つを互いにつないでいる、請求項
10に記載の
植込み型医療機器。
【請求項13】
前記薄膜メッシュはシリンダー形状を含み、及び、前記スパイラル部のうちの少なくとも1つが、前記薄膜メッシュが前記シリンダー形状の長手方向軸に沿って及び前記シリンダー形状の周方向に沿って拡張するように、拡張される、請求項
10に記載の
植込み型医療機器。
【請求項14】
前記薄膜メッシュは、前記周方向に沿って拡張可能であり、前記シリンダー形状を半径方向に拡張させて、前記シリンダー形状の直径を大きくさせることができる、請求項
13に記載の
植込み型医療機器。
【請求項15】
前記バックボーンは、複数のS字形状の湾曲部を含む、請求項
10に記載の
植込み型医療機器。
【請求項16】
植込み型医療機器を構成する薄膜メッシュを形成するための方法であって:
基板の表面にトレンチの微細パターンを深掘反応性イオンエッチングすることであって、前記トレンチは、形成されるべき、前記薄膜メッシュにある、複数のスパイラル部の陰の領域に対応しており、前記複数のスパイラル部のそれぞれが複数のスパイラルアームを含むこと;
前記エッチングされた基板にリフトオフ層を堆積すること;
前記リフトオフ層の上側を覆って第1のニチノール層を堆積すること;及び
前記薄膜メッシュを形成するために前記リフトオフ層をエッチングすること
を含む、方法。
【請求項17】
前記トレンチは、さらに、三角形の相互接続部の陰の領域に対応し、これは、それぞれ、前記スパイラル部のうちの3つを互いにつなぐ、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、
前記第1のニチノール層の少なくとも1つの領域にボンディング層を堆積すること;
前記第1のニチノール層の残りの領域に犠牲層を堆積すること;
前記ボンディング層及び前記犠牲層に第2のニチノール層を堆積すること;並びに
前記ボンディング層を備える前記第1のニチノール層及び前記第2のニチノール層をアニールすること;
を含み、
前記エッチングは、さらに、前記犠牲層をエッチングして、三次元形状を有する前記薄膜メッシュを形成する、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、2018年6月29日出願の米国特許出願第16/024,649号の継続であり、且つその優先権を主張し、その全体を本願明細書に援用する。
【0002】
[0002] 本開示は、概して、医療機器に関し、より詳細には、スパイラルベースの薄膜メッシュシステム及び関連の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 医療用インプラントは、一般に、広範囲の不規則な解剖面に適合する必要がある。例えば、従来の血管内ステントは、一般に、編組ワイヤ機器又はレーザ切断機器であり、これは、圧縮されて、カテーテル及びガイドワイヤを使用して患者の体内の治療箇所まで送達される。ステントは、アテローム硬化型動脈及び動脈瘤疾患を含む、広範囲の臨床病状を治療するために使用される。
【0004】
[0004] 血管内ステントを覆うために薄膜メッシュが使用され得る。ステントは、曲がりくねった血管床に展開され得、且つ送達及び植込みプロセスの間に、半径方向の大きさ及び軸方向の大きさが劇的に変化し得る。従って、当業界には、複数の次元において可撓性を可能にする改良型の薄膜メッシュに対するニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本開示は、スパイラルベースの薄膜メッシュのための方法、システム、及び装置に関する。薄膜メッシュは、複数の次元において可撓性であるため、不規則な解剖面に簡単に適合できる。これらの特性によって、薄膜メッシュを、植込み型医療機器の理想的な構成要素にする。薄膜メッシュの追加的な利点は、限定されるものではないが、小分子、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリマー、及び細胞を含む全てのタイプの治療モダリティを、対象のいずれの解剖学的部位にも、局所的に送達するために使用され得ることである。
【0006】
[0006] 1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュ機器は、全方向に拡張可能な複数のスパイラル部を含む、薄膜メッシュを含む。少なくとも1つの実施形態では、複数のスパイラル部は、薄膜メッシュのほぼ中心点の周りに配置される。いくつかの実施形態では、スパイラル部のそれぞれは、3個のスパイラルアーム、4個のスパイラルアーム、6個のスパイラルアーム、12個のスパイラルアーム、又は24個のスパイラルアームを含む。少なくとも1つの実施形態では、スパイラル部のそれぞれに関し、スパイラルアームがスパイラル部の中心から放射状に広がるにつれ、隣接するスパイラルアーム間の距離は長くなる。1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュは、さらに、複数の三角形の相互接続部を含み、三角形の相互接続部のそれぞれは、スパイラル部のうちの3つを互いにつなぐ。
【0007】
[0007] 1つ以上の実施形態では、スパイラル部のそれぞれは、対数スパイラル部、黄金スパイラル部、近似黄金スパイラル(approximated golden spiral)部、ボックスファイスパイラル(box Phi spiral)部、又はフィボナッチ(Fibonacci)スパイラル部である。いくつかの実施形態では、ボックスファイスパイラル部は、2ボックスファイスパイラル部、3ボックスファイスパイラル部、又は4ボックスファイスパイラル部である。少なくとも1つの実施形態では、薄膜メッシュは、薄膜ニチノール(TFN:thin-film Nitinol)を含む。
【0008】
[0008] 1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュは、治療モダリティにコーティング及び/又は接合される。いくつかの実施形態では、治療モダリティは、小分子、ペプチド、抗体、ポリマー、バイオポリマー、細胞、及び/又は組み換え細胞(engineered cell)を含む。
【0009】
[0009] 1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュ機器は、長手方向軸に延在するバックボーンと、バックボーンに組み立てられた薄膜メッシュとを含む。1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュは、全方向に拡張可能な複数のスパイラル部を含む。
【0010】
[0010] 1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュはシリンダー形状を含み、ここで、スパイラル部のうちの少なくとも1つが拡張されて、薄膜メッシュが、シリンダー形状の長手方向軸に沿って及びシリンダー形状の周方向に沿って拡張するようにする。いくつかの実施形態では、薄膜メッシュは周方向に沿って拡張可能であり、シリンダー形状を半径方向に拡張させて、シリンダー形状の直径を大きくさせることができる。1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュは薄膜ニチノール(TFN)を含む。いくつかの実施形態では、バックボーンは、複数のS字形状の湾曲部を含む。
【0011】
[0011] 少なくとも1つの実施形態では、薄膜メッシュは、インプラントすなわち植込み前に、治療モダリティによってコーティング又は処理される。治療モダリティは、小分子、タンパク質、抗体、ポリマー、及び/又は細胞で構成され得る。
【0012】
[0012] 1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュを形成するための方法が、基板の表面にトレンチの微細パターンを深掘反応性イオンエッチングすることを含み、トレンチは、形成されるべき、薄膜メッシュにある、複数のスパイラル部の陰の領域に対応している。方法は、さらに、エッチングされた基板にリフトオフ層を堆積することを含む。また、方法は、リフトオフ層の上側を覆って第1のニチノール層を堆積することを含む。さらに、方法は、薄膜メッシュを形成するためにリフトオフ層をエッチングすることを含む。
【0013】
[0013] 1つ以上の実施形態では、トレンチは、さらに、三角形の相互接続部の陰の領域に対応し、そのそれぞれが、スパイラル部のうちの3つを互いにつなぐ。
【0014】
[0014] 1つ以上の実施形態では、方法は、さらに、第1のニチノール層の少なくとも1つの領域にボンディング層を堆積することを含む。また、方法は、第1のニチノール層の残りの領域に犠牲層を堆積することを含む。さらに、方法は、ボンディング層及び犠牲層に第2のニチノール層を堆積することを含む。さらに、方法は、ボンディング層を備える第1のニチノール層及び第2のニチノール層をアニールすることを含む。1つ以上の実施形態では、エッチングは、さらに、犠牲層をエッチングして、三次元形状を有する薄膜メッシュを形成する。
【0015】
[0015] 1つ以上の実施形態では、ステントが、長手方向軸に延在するバックボーンと、バックボーンに組み立てられたステントカバーとを含む。1つ以上の実施形態では、ステントカバーは薄膜メッシュを含み、これは、全方向に拡張可能な複数のスパイラル部を含む。いくつかの実施形態では、薄膜メッシュは、さらに、複数の三角形の相互接続部を含み、三角形の相互接続部のそれぞれは、スパイラル部のうちの3つを互いにつなぐ。
【0016】
[0016] 特徴、機能、及び利点は、本開示の様々な実施形態においては独立して達成されても、又はさらに他の実施形態においては組み合わせられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】[0017]ある実施形態による薄膜メッシュ機器の概略的な側面の斜視図である。
【
図1B】[0018]ある実施形態による、薄膜メッシュ機器が配置される、動脈瘤がある血管の概略的な断面図である。
【
図1C】[0019]ある実施形態による、薄膜マイクロメッシュ機器が曲線状の輪郭を付けられるすなわち曲げられるシナリオを示す。
【
図2A】[0020][0021]ある実施形態による2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルを示す。ある実施形態による3ボックスファイスパイラルを示す。
【
図2B】[0020][0022]ある実施形態による2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルを示す。ある実施形態による4ボックスファイスパイラルを示す。
【
図3A】[0023][0024]ある実施形態による2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの正三角形の単位セルを示す。ある実施形態による、3個のスパイラルアームを有するスパイラルを含む、3ボックスファイスパイラルの正三角形の単位セルを示す。
【
図3B】[0023][0025]ある実施形態による2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの正三角形の単位セルを示す。ある実施形態による、3個のスパイラルアームを有するスパイラルを含む、4ボックスファイスパイラルの正三角形の単位セルを示す。
【
図4A】[0026]ある実施形態による、
図3Aの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な3ボックスファイスパイラルの正三角形ベースのシステムを示す。
【
図4B】[0027]ある実施形態による、
図3Bの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な4ボックスファイスパイラルの正三角形ベースのシステムを示す。
【
図5A】[0028][0029]ある実施形態による、2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの正方形の単位セルを示す。ある実施形態による、4個のスパイラルアームを備えるスパイラルを含む、3ボックスファイスパイラルの正方形の単位セルを示す。
【
図5B】[0028][0030]ある実施形態による、2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの正方形の単位セルを示す。ある実施形態による、4個のスパイラルアームを備えるスパイラルを含む、4ボックスファイスパイラルの正方形の単位セルを示す。
【
図6A】[0031]ある実施形態による、
図5Aの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な3ボックスファイスパイラルの正方形ベースのシステムを示す。
【
図6B】[0032]ある実施形態による、
図5Bの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な4ボックスファイスパイラルの正方形ベースのシステムを示す。
【
図7A】[0033][0034]ある実施形態による、2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの六角形の単位セルを示す。ある実施形態による、6個のスパイラルアームを有するスパイラルを含む、3ボックスファイスパイラルの六角形の単位セルを示す。
【
図7B】[0033][0035]ある実施形態による、2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの六角形の単位セルを示す。ある実施形態による、6個のスパイラルアームを有するスパイラルを含む、4ボックスファイスパイラルの六角形の単位セルを示す。
【
図8A】[0036]ある実施形態による、
図7Aの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な3ボックスファイスパイラルの六角形ベースのシステムを示す。
【
図8B】[0037]ある実施形態による、
図7Bの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な3ボックスファイスパイラルの六角形ベースのシステムを示す。
【
図9A】[0038][0039]ある実施形態による、2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの十二角形の単位セルを示す。ある実施形態による、12個のスパイラルアームを有するスパイラルを含む、3ボックスファイスパイラルの十二角形の単位セルを示す。
【
図9B】[0038][0040]ある実施形態による、2つの異なるタイプのボックスファイスパイラルの十二角形の単位セルを示す。ある実施形態による、12個のスパイラルアームを有するスパイラルを含む、4ボックスファイスパイラルの十二角形の単位セルを示す。
【
図10A】[0041]ある実施形態による、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な3ボックスファイスパイラルの十二角形ベースのシステムを示す。
【
図10B】[0042]ある実施形態による、三角形の相互接続部を備える、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な3ボックスファイスパイラルの十二角形ベースのシステムを示す。
【
図10C】[0043]ある実施形態による、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラルを含む、別の例示的な3ボックスファイスパイラルの十二角形ベースのシステムを示す。
【
図11A】[0044]ある実施形態による、
図9Bの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な4ボックスファイスパイラルの十二角形ベースのシステムを示す。
【
図11B】[0045]ある実施形態による、三角形の相互接続部を備える、
図9Bの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な4ボックスファイスパイラルの十二角形ベースのシステムを示す。
【
図12】[0046]ある実施形態による、論理的なフル拡張に伸張された三角形の相互接続部を備える、
図9A又は
図9Bの複数の相互接続されたスパイラルを含む、スパイラルの十二角形ベースのシステムを示す。
【
図13】[0047]ある実施形態による2ボックスファイスパイラルを示す。
【
図14A】[0048]ある実施形態による、24個のアームを含む2ボックスファイスパイラルの二十四角形の単位セルを示す。
【
図14B】[0049]ある実施形態による、三角形の相互接続部を備える、
図14Aの複数の相互接続されたスパイラルを含む、例示的な2ボックスファイスパイラルの二十四角形ベースのシステムを示す。
【
図15A】[0050]ある実施形態による、伸張されていない
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュの一部分を示す。
【
図15B】[0051]ある実施形態による、伸張されている
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュの一部分を示す。
【
図16A】[0052]ある実施形態による、伸張されていない、三角形の相互接続部を備える、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュの一部分を示す。
【
図16B】[0053]ある実施形態による、伸張されている、三角形の相互接続部を備える、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュの一部分を示す。
【
図17A】[0054]ある実施形態による、伸張されている、代替的な三角形の相互接続部を備える、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュの一部分を示す。
【
図17B】[0055]ある実施形態による、
図17Aの薄膜メッシュの一部分の拡大図を示す。
【
図18】[0056]ある実施形態による、薄膜メッシュカバー(例えば、ステントカバー)によって覆われた薄膜メッシュ機器(例えば、血管内ステント)の概略的な斜視図である。
【
図19A】[0057]曲線状の輪郭を付けられるすなわち曲げられて、脱出を示す、従来の薄膜メッシュ機器のイメージである。
【
図19B】[0058]ある実施形態による、曲線状の輪郭を付けられるすなわち曲げられて、脱出を示さない、薄膜メッシュ機器のイメージである。
【
図20】[0059]ある実施形態による、医療機器用の薄膜メッシュを製作するためのプロセスのフロー図である。
【
図21A】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21B】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21C】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21D】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21E】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21F】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21G】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21H】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21I】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21J】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21K】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21L】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21M】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21N】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21O】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21P】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【
図21Q】[0060]ある実施形態による、薄膜メッシュを製作するために基板上に形成されている層の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0061] 本開示の実施形態及びそれらの利点は、以下の詳細な説明を参照することによって、最もよく理解される。同様の参照符号を使用して、図面の1つ以上に示される同様の要素を特定し、図面は、実施形態を、限定するためではなく、説明するために示していることが理解されるべきである。
【0019】
[0062] 下記の説明では、システムのより徹底的な説明を提供するために、多数の詳細情報が説明される。しかしながら、当業者には、これらの具体的な詳細情報がなくても、開示のシステムを実施し得ることが明らかである。他の例では、システムを不必要に曖昧にしないようにするために、周知の特徴は詳細に説明されていない。
【0020】
[0063] 本開示の実施形態は、本明細書では、機能的構成要素及び様々な加工段階に関して説明され得る。当業者は、本開示の実施形態は、他の構成要素と併せて実施され得ること、及び本明細書で説明するシステムは、本開示の単なる例示的な実施形態であることを理解する。
【0021】
[0064] I.スパイラルベースの薄膜メッシュ
[0065] 本明細書で開示する方法及び装置は、スパイラルベースの薄膜メッシュ用の操作システムを提供する。1つ以上の実施形態では、本開示のシステムは、様々な異なる医学的応用に利用され得るスパイラルベースの薄膜メッシュを提供する。
【0022】
[0066] 上述のように、複数の次元において可撓性を可能にする薄膜メッシュに対するニーズがある。そのようなものとして、薄膜メッシュは、可撓性であり、且ついずれの方向にも伸張できる必要がある。さらに、医療機器応用では、薄膜メッシュは、所望の細孔径、金属被覆百分率(percent metal coverage)、及び単位面積当たりの細孔密度を維持するために、効率的に「パッキングすなわち密集(packed)」できる必要がある。薄膜メッシュはまた、(1)薄膜メッシュが最小侵襲手段によって(例えば、カテーテル、腹腔鏡、胸腔鏡、及び/又は針によって)送達されることができるように、構造的完全性を維持しながら、極度に変形する、(2)医療機器支持構造(例えば、ステント、曲がりくねった解剖学的構造において展開されるとき)に正確に適合する、(3)最長の支柱間距離が流れを遮断するのに十分である細孔径を維持する(例えば、ダイバーティングステントに関し、及び/又は組織の内方成長(in-growth)及び解剖学的欠陥の再構成を促すために、ここで、メッシュは、細胞増殖のための足場の機能を果たす)、並びに(4)その好都合な細孔径、表面積対体積比、及び支柱寸法ゆえに、小分子、タンパク質、抗体、ポリマー、細胞、及び細胞ベースの治療のための送達プラットフォームとして使用されることができる必要がある。開示のスパイラルベースの薄膜メッシュは、これらの望ましい基準に適合できる。
【0023】
[0067] 本開示のスパイラルベースの薄膜メッシュは、複数のスパイラル部を含む。スパイラルは、限定されるものではないが、対数スパイラル、黄金スパイラル、近似黄金スパイラル、ボックスファイスパイラル、又はフィボナッチスパイラルを含む、様々な異なるタイプのスパイラルとし得る。さらに、スパイラルは、様々な異なる数のスパイラルアームを含み得、且つ様々な異なる手段(例えば、三角形の相互接続部によって)及び配置構成によって互いにつながれ得る。様々な異なるタイプのスパイラルの例は、開示の薄膜メッシュに用いられ得るスパイラル部の様々な異なる接続及び配置構成と併せて、下記で説明され、且つ
図2A~17Bに示される。
【0024】
[0068] 薄膜メッシュのスパイラル部は、薄膜メッシュを全方向に拡張可能(すなわち全ての方向において拡張可能)にできる。薄膜メッシュは、スタンドアロン機器として、又は血管内ステント(例えば、
図1A、
図1B、及び
図18参照)などのシリンダー状の薄膜メッシュ機器の医療用インプラントのカバー若しくは主要な構成要素(例えば、ステントカバー)として、用いられ得る。薄膜メッシュは、複数の方向、例えばシリンダー状の薄膜メッシュ機器の半径方向及び長手方向に拡張できる。複数の次元において薄膜メッシュが柔軟に拡張できる能力は、不規則な形状の血管内で薄膜メッシュ機器を全体的に拡張できるようにして、薄膜メッシュが不規則な形状の血管の内面を裏打ちするすなわち補強するようにする。薄膜メッシュは、そうでなければ、本明細書でさらに説明するようにその好都合な特性のために、他のタイプの医療機器に、例えば組織工学用の又は全てのタイプの治療モダリティの局所的な送達用の薄膜メッシュ足場に含まれ得る。
【0025】
[0069] スパイラル部を有するスパイラルベースの薄膜メッシュの特定の利点は、それらが:(1)完全なクローズドセルである、つまり、単位セルの、くっついていない角がない、(2)いずれの方向にも拡張できる、(3)大量の材料(例えば、メッシュ)を小さな空間にパッキングさせる効率が極めて良い、及び(4)「自己相似」である、つまり、それらは、スパイラルの全ての点において同じ湾曲度を有し、それにより、スパイラルアームが真っ直ぐにされるときに、応力がスパイラルアームの至る所で均一に分配されるため、それらを伸張にうまく適合させることである。これらの特性は、医学的応用において使用されている薄膜メッシュには特に好都合である。なぜなら、医療用インプラントは、曲がりくねった解剖学的構造に適合する必要があり、それゆえ、複数の軸上で拡張及び収縮できる必要があるためである。
【0026】
[0070] スパイラルベースの薄膜メッシュ設計の別の利点は、最大限まで伸張するときでも、非常に高い細孔密度及び短い支柱間距離を維持することである。これは、目標が解剖学的欠陥を再構成すること及び/又は高濃度の小分子、高濃度の大分子、細胞療法、バイオポリマー、又はメッシュに接合されたか若しくは他の方法でそれに取り付けられたポリマーを送達することである用途では、特に好都合である。それゆえ、スパイラルベースの薄膜メッシュは、それらの薄型、単位表面積当たりの高細孔密度、いずれの方向にも伸張する能力、他の治療モダリティと組み合わせられる能力、並びに最小侵襲型の医療機器及び他のインプラントへそれらを簡単に組み込めることに起因して、医薬において広い適用範囲を有する。薄膜メッシュでのスパイラル部(例えば、対数スパイラル部)の使用は、薄膜メッシュが、全方向の伸張能力、薄膜メッシュの開窓(fenestrations)の調節可能な細孔径、及び薄膜メッシュの調節可能な金属被覆百分率の特に好都合な特性を有することができるようにする。
【0027】
[0071] 本明細書では、薄膜メッシュは、厚さ100μm(マイクロメートル又はミクロン)未満とし得る。様々な実施形態では、薄膜メッシュは、有窓の薄膜ニチノール(TFN)を使用して形成され得る。他の薄膜メッシュ材料は、本明細書で開示する薄膜メッシュを形成するために使用され得る。それゆえ、以下の説明は、普遍性を失うことなく、TFNメッシュに関する。
【0028】
[0072] II.スパイラルベースの薄膜メッシュ機器
[0073] 上述のように、開示の薄膜メッシュは、複数の次元において可撓性であるため、不規則な解剖面に簡単に適合できる。そのようなものとして、これらの特性は、薄膜メッシュを、様々な異なる植込み型医療機器の理想的な構成要素にする。1つのそのような植込み型機器は、血管内ステントである。
【0029】
[0074]
図1Aは、薄膜メッシュ110及びバックボーン122(例えば、ステントバックボーン)を含む薄膜メッシュ機器120(例えば、血管内ステント)の概略的な側面の斜視図である。その三次元形態(例えば、シリンダー状チューブ又は他の形状)へと拡張された薄膜メッシュ110は、バックボーン122の上側を覆って組み立てられ得、これは、薄膜メッシュ110に構造支持をもたらす一方で、薄膜メッシュ110の好都合な特徴、例えば血管内に配置されるときの線維素沈着及び細胞増殖(例えば、内皮化(endothelialization))を維持する。
【0030】
[0075] 薄膜メッシュ110は、複数の相互接続されたスパイラル部を含み、及び形状がシリンダー状である。スパイラル部は、薄膜メッシュ110を全方向に拡張可能にできる。薄膜メッシュ110のスパイラル部のうちの少なくとも1つが、薄膜メッシュ110がシリンダー形状の長手方向軸に沿って及びシリンダー形状の周方向に沿って拡張するように、拡張され得る。薄膜メッシュ110は、周方向に拡張可能とし得、それにより、シリンダー形状を半径方向に拡張させて、シリンダー形状の直径を大きくさせることができる。
【0031】
[0076]
図1Bは、動脈瘤134及び分枝血管136(例えば、分枝動脈)があって、
図1Aの薄膜メッシュ機器120が植込まれている血管132の概略的な断面図を示す。薄膜メッシュ機器120は、好都合なことに、薄膜メッシュ110の特性に起因してフローダイバータとして使用され得る。フローダイバータは、いずれの動脈瘤周囲(perianeurysmal)の分枝血管においても流れを可能にすることと、その一方で、動脈瘤嚢(aneurysm sac)からの流れをそらすこととを上手く両立させる必要があるとし得る。薄膜メッシュ110は、好都合なことに、血流を動脈瘤134へとそらし、且つ動脈瘤134の頸部138での迅速な線維素の沈着及び内皮化を促すため、動脈瘤134が閉塞されると同時に、分枝血管136を通る血流を可能にする。
【0032】
[0077] 薄膜メッシュ機器120は、好都合なことに、従来のフローダイバータと比較すると、遅発性動脈瘤破裂率が低下している。従来のワイヤ製フローダイバータステントは、動脈瘤頸部の閉塞をもたらし得るが、そのような機器の細孔が、血液凝固産物、炎症細胞、及び細胞破片(cellular debris)で構成された粒子で塞がれることが多いため、そのような粒子が、除去され、且つ遅発性動脈瘤破裂を引き起こし得る。実際、従来のワイヤ製フローダイバータステントにおいて、内皮化は、ゆっくりと発生し、且つよくても、部分的であることが多い。対照的に、薄膜メッシュ110は、血管壁が内皮化によって急速に再建される構造を提供するため、健康で安定した細胞の裏打ち(cellular lining)を促し、及び細胞の裏打ちは、血液凝固産物などの粒子のように除去される傾向がないので、遅発性動脈瘤破裂率は著しく低下する。
【0033】
[0078]
図1Cは、シリンダー状の薄膜機器120がU字形状に曲線状の輪郭を付けられるすなわち曲げられるシナリオを示す。U字形状は、患者の体内の特定の治療箇所に適合する必要があるとし得る。U字形状の内半径rは約6.37ミリメートル(mm)とし得、U字形状の外半径Rは約10.37mmとし得、及びシリンダー状の薄膜機器120の直径は約4mmとし得る。そのようなシナリオでは、外カーブ(約32.6mm)は、内カーブ(約20mm)よりも約63%長い。そのような治療箇所に適合するために、シリンダー状の薄膜機器120の外カーブ側は、シリンダー状の薄膜機器120の長手方向150に沿って内カーブ側よりも約63%多く拡張する必要があるであろう。それゆえ、主に半径方向に拡張し且つ長手方向における拡張性又は可撓性が制限されている従来のシリンダー状の薄膜機器120は、そのような条件に適合しない可能性がある。
【0034】
[0079] 従って、複数の次元において可撓性を可能にする改良型の薄膜メッシュ110が提案される。例えば、改良型の薄膜メッシュ110は、複数の相互接続されたスパイラル部を含み得る。特に、薄膜メッシュ110のスパイラル部は、シリンダー状の薄膜機器120の半径方向において及び長手方向軸に沿っての双方で薄膜メッシュが柔軟に拡張できるようにする。さらに、薄膜メッシュ110は、送達プロセス中に曲がるすなわち曲線状の輪郭を付け、且つ患者の体内の治療箇所の様々な形状に適合し得る。
【0035】
[0080] III.スパイラルベースの薄膜メッシュ用のスパイラル部設計
[0081] 薄膜メッシュ110は、複数のモザイクの単位セルを含むような構造にされる。単位セルのそれぞれは、対数スパイラルとし得るスパイラル部を含む。
図2A~17Bは、開示の薄膜メッシュ110の単位セルに用いられ得る様々な多数の異なるスパイラルを示す。単位セルは、薄膜メッシュ110のほぼ中心点の周りに配置される。単位セルは、拡大縮小(scaled)され、且つ2次元にモザイクにされて、独特の望ましい特性を備える構造を生じ得る。中心点の周りに配置された単位セルの数を増減させることによって、及び/又は単位セルのスパイラル部のそれぞれのスパイラルアームの長さを長くすることによって、追加的な構造変更が行われ得る。
【0036】
[0082] 幾何学的形状では、3つの形状のみが2次元内で完全なモザイクになることが分かっている:正三角形、正方形、及び六角形。それゆえ、3個のスパイラルアーム(正三角形の単位セルを形成する、
図3A及び
図3B参照)、4個のスパイラルアーム(正方形の単位セルを形成する、
図5A及び
図5B参照)、又は6個のスパイラルアーム(六角形の単位セルを形成する、
図7A及び
図7B参照)を含むスパイラル部で構成された単位セルを含む薄膜メッシュ110が、完全なモザイクになり、及びこの設計の特に効率的な実施形態である。薄膜メッシュは、ほとんどどんな個数のスパイラルアームでも有することができるスパイラル部を備えるモザイクの単位セルから製造され得るが、これらの3つの単位セルの形状(すなわち正三角形(3個のスパイラルアームを含むスパイラル部を含む)、正方形(4個のスパイラルアームを含むスパイラル部を含む)、及び六角形(6個のスパイラルアームを含むスパイラル部を含む))は、最も基本的な配置構成を提供し、ここでは、モザイクの単位セルを接続するために追加的な構造は全く必要ない。
【0037】
[0083] 薄膜メッシュ110は、対数スパイラルとし得る複数のスパイラル部を含み得る。対数スパイラルは、r=aebθ(式中、rは、原点からの距離に等しく、θは、x軸からの角度に等しく、並びにa及びbは任意定数である)の極方程式を有する。対数スパイラルは「自己相似」である、つまり、それらは、それらのサイズに関わらず、同じ形状を有する。
【0038】
[0084] 黄金スパイラル及びフィボナッチスパイラルは、対数スパイラルの特例である。薄膜メッシュ110は、複数の黄金スパイラル又はフィボナッチスパイラルを含み得る。黄金スパイラルは、成長係数(growth factor)がファイ(φ)、黄金比(すなわち1.68)である、対数スパイラルである。ギリシャ文字ファイ(φ)は、黄金比を表すために使用される。黄金スパイラルは、スパイラルの1/4巻き毎にφ倍で広がる(又は原点から離れる)。初期の半径が1に等しい黄金スパイラルが、r=φθ(2/π)の極方程式を有する。黄金スパイラルの極方程式はr=aebθであり、ここで、bの絶対値は、θに関して0.0053468度に等しい。
【0039】
[0085] 黄金スパイラルと同様のスパイラルは、近似黄金スパイラルと呼ばれることが多い。薄膜メッシュ110は、複数の近似黄金スパイラルを含み得る。これらのスパイラルは、黄金スパイラルに近似しているが、真の対数スパイラルではないことが多い。例えば、近似黄金スパイラルは、まず、その長さと幅の比が黄金比である長方形から始まることによって、形成され得る。次いで、この長方形は、正方形と、同様の長方形とに分割され、その後、長方形が同じ方法で分けられる。任意の回数のステップだけこのプロセスを続けた後、長方形をほぼ完全に正方形に分割する結果となる。正方形の角は、四分円によって接続されて、近似黄金スパイラルを形成する。
【0040】
[0086] 別の例の近似黄金スパイラルはフィボナッチスパイラルである。フィボナッチスパイラルは、2つの正方形に分割された長方形で始まることによって、構成される。各ステップにおいて、長方形の長辺の長さの正方形が、その長方形に加えられる。連続的なフィボナッチ数間の比は、フィボナッチ数が無限大に近づくにつれて黄金比に近づくため、フィボナッチスパイラルの形状は、より多くの正方形が加えられるにつれて黄金スパイラルの形状により似てくる。
【0041】
[0087] 対数スパイラルは、中心コアの周りに材料を分配するのに効果的な手段であることが知られていることに留意すべきである。例えば、自然界では、ヒマワリはそれらの種をファイ(φ)スパイラルパターンに分配している。この配置構成は、種を効果的に密集させること、及び日光を等しく利用できるようにすることを保証する。
【0042】
[0088] 薄膜メッシュ110の単位セルは、限定されるものではないが、正三角形の単位セル(3個のスパイラルアームのあるスパイラル部を含む)、正方形の単位セル(4個のスパイラルアームのあるスパイラル部を含む)、六角形の単位セル(6個のスパイラルアームのあるスパイラル部を含む)、十二角形の単位セル(12個のスパイラルアームのあるスパイラル部を含む)、及び二十四角形の単位セル(24個のスパイラルアームのあるスパイラル部を含む)を含む、様々な異なる単位セルの形状とし得る。単位セルのそれぞれは、スパイラル部を含み得る。単位セルのスパイラルは、ボックスファイ(φ)スパイラルとし得る。
図2A、
図2B、及び
図13は、薄膜メッシュ110の単位セルのスパイラル部に用いられ得る、異なるボックスファイスパイラルを示す。具体的には、
図2Aは、3ボックスファイスパイラルを示し、
図2Bは、4ボックスファイスパイラルを示し、及び
図13は、2ボックスファイスパイラルを示す。
【0043】
[0089] 薄膜メッシュ110によって用いられ得る様々な異なるタイプの単位セルは、様々な異なるタイプのボックスファイスパイラル部を含み得る。図面を参照すると、
図3A及び
図3Bは、例示的な3ボックスファイスパイラル部の正三角形の単位セル3000、及び例示的な4ボックスファイスパイラル部の正三角形の単位セル3010をそれぞれ示す;ここで、
図3A及び
図3Bの正三角形の単位セル3000、3010はそれぞれ、3個のスパイラルアーム3040、3050を有するスパイラル部3020、3030を含む。
図4Aは、3ボックスファイスパイラル部の正三角形の単位セル3000の複数の相互接続されたスパイラル部3020を含む、例示的な3ボックスファイスパイラル部の正三角形ベースのシステムを示す;及び
図4Bは、4ボックスファイスパイラル部の正三角形の単位セル3010の複数の相互接続されたスパイラル部3030を含む、例示的な4ボックスファイスパイラル部の正三角形ベースのシステムを示す。
図4A及び
図4Bに示すシステムは、それぞれ、合計6個の単位セル3000、3010を示すが、薄膜メッシュ110は、
図4A及び
図4Bに示すものよりも多い又は少ない単位セル3000、3010を含んでもよい。
【0044】
[0090]
図5A及び
図5Bは、例示的な3ボックスファイスパイラル部の正方形の単位セル5000、及び例示的な4ボックスファイスパイラル部の正方形の単位セル5010をそれぞれ示す;
図5A及び
図5Bの正方形の単位セル5000、5010は、それぞれ、4個のスパイラルアーム5040、5050を有するスパイラル部5020、5030を含む。
図6Aは、3ボックスファイスパイラル部の正方形の単位セル5000を含む複数の相互接続されたスパイラル部5020を含む、例示的な3ボックスファイスパイラル部の正方形ベースのシステムを示す;及び
図6Bは、4ボックスファイスパイラル部の正方形の単位セル5010の複数の相互接続されたスパイラル部5030を含む、例示的な4ボックスファイスパイラル部の正方形ベースのシステムを示す。薄膜メッシュ110は、
図6A及び
図6Bで説明するシステムにおいて示されているように、4個の単位セル5000、5010よりも多い又は少ない単位セル5000、5010を含んでもよい。
【0045】
[0091]
図7A及び
図7Bは、例示的な3ボックスファイスパイラル部の六角形の単位セル7000、及び例示的な4ボックスファイスパイラル部の六角形の単位セル7010をそれぞれ示す;ここで、
図7A及び
図7Bの六角形の単位セル7000、7010は、それぞれ、6個のスパイラルアーム7040、7050を有するスパイラル部7020、7030を含む。
図8Aは、3ボックスファイスパイラル部の六角形の単位セル7000の複数の相互接続されたスパイラル部7020を含む、例示的な3ボックスファイスパイラル部の六角形ベースのシステムを示す;及び
図8Bは、4ボックスファイスパイラル部の六角形の単位セル7010の複数の相互接続されたスパイラル部7030を含む、例示的な4ボックスファイスパイラル部の六角形ベースのシステムを示す。
図8A及び
図8Bにおいて説明するシステムは、それぞれ、合計7個の単位セル7000、7010を示すが、薄膜メッシュ110は、
図8A及び
図8Bに示すものよりも多い又は少ない単位セル7000、7010を含んでもよい。
【0046】
[0092]
図9A及び
図9Bは、例示的な3ボックスファイスパイラル部の十二角形の単位セル9000、及び例示的な4ボックスファイスパイラル部の十二角形の単位セル9010をそれぞれ示す;ここで、
図9A及び
図9Bの十二角形の単位セル9000、9010は、それぞれ、12個のスパイラルアーム9040、9050を有するスパイラル部9020、9030を含む。
図10Aは、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020を含む例示的な3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを説明する。
図10Aのシステムでは、3ボックスファイスパイラル部の十二角形の単位セル9000のスパイラル部9020のスパイラルアーム9040のいくつかは解放されて自由であり(loose)、何にも接続されていないことに留意すべきである。
【0047】
[0093] いくつかの実施形態では、単位セルのスパイラル部は、例えば、
図10Aに示されているように、単にスパイラルアームをつなげることによる以外の、代替的な手段によって相互接続され得る。例えば、
図10Bに示すように、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020は、三角形の相互接続部9060によってつなげられる。三角形の相互接続部9060のそれぞれは、スパイラル部9020のうちの3個をつなげて、
図10Bに示すように、3個のスパイラル部9020のそれぞれからのスパイラルアーム9040が、三角形の相互接続部9060の角にそれぞれ接続されるようにする。他の実施形態では、
図10Bに示されているような三角形以外の様々な異なる形状の相互接続部が、単位セルのスパイラル部をつなげるために、薄膜メッシュ110によって用いられてもよい。
【0048】
[0094] 1つ以上の実施形態では、薄膜メッシュ110の単位セルは、様々な異なる代替的な方法においてモザイクとし得る。例えば、
図10Cは、
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020を含む、別の例示的な3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを説明し、ここで、システムの単位セル9000は、
図10Aに示されているような単位セル9000とは異なるモザイクにされている。
【0049】
[0095]
図11Aは、
図9Bの複数の相互接続されたスパイラル部9030を含む、例示的な4ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを説明する。そして、
図11Bでは、
図9Bの複数の相互接続されたスパイラル部9030は、三角形の相互接続部9060を用いてつなげられる。例示的な薄膜メッシュ110のフル拡張を示すための理論的目的で、
図12は、理論的なフル拡張で伸張された状態の、三角形の相互接続部9060を備える、
図9A又は
図9Bの複数の相互接続されたスパイラル部9020、9030を含むスパイラル部の十二角形ベースのシステムを示す。
【0050】
[0096]
図14Aは、例示的な2ボックスファイスパイラル部の二十四角形の単位セル1100を示し、ここで、
図14Aの二十四角形の単位セル1100は、24個のスパイラルアーム1140を有するスパイラル部1120を含む。
図14Bは、実施形態による三角形の相互接続部1160を備える、
図14Aの複数の相互接続されたスパイラル部1120を含む、例示的な2ボックスファイスパイラル部の二十四角形ベースのシステムを説明する。三角形の相互接続部1160のそれぞれは、スパイラル部1120のうちの3個をつなげて、
図14Bに示されているように、3個のスパイラル部1120のそれぞれからのスパイラルアーム1140が三角形の相互接続部1160の角にそれぞれ接続されるようにする。
【0051】
[0097]
図15A~17Bは、非伸張状態及び伸張状態にある薄膜メッシュ110の部分を示す。例えば、
図15Aは、伸張されていない(すなわち非伸張状態にある)
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュ110の一部分を示す。
図15Bは、伸張されている(すなわち伸張状態にある)
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュ110の一部分を示す。
【0052】
[0098]
図15A及び
図15Bのスパイラル部9020は、異なるスパイラル部9020のスパイラルアーム9040を一緒につなぐことによって、相互接続部される。このタイプの相互接続部は、スパイラル部9020が3つの伸張軸を有することができるようにする。スパイラル部9020のスパイラルアーム9040のそれぞれは、幅がおよそ3ミクロンとし得る。実験データによって、スパイラルアーム9040の幅がおよそ3ミクロンの状態では、スパイラル部9020が伸張されていないとき(すなわち非伸張状態にある)、ノード(例えば、スパイラル部の中心)からノード(例えば、スパイラル部の中心)までの距離が、およそ130μmであることが示されている。そして、スパイラル部9020が伸張されているとき(すなわち伸張状態にある)、ノード(例えば、スパイラル部の中心)からノード(例えば、スパイラル部の中心)までの距離は、およそ220μmである。そのようなものとして、軸当たりの伸張の百分率は、およそ67パーセントである。これは、およそ270パーセントの薄膜メッシュ110の表面積の増加をもたらす。
【0053】
[0099]
図16A~17Bは、非伸張状態及び伸張状態にある、三角形の相互接続部9060を含む薄膜メッシュ110の部分を示す。特に、
図16Aは、伸張されていない(すなわち非伸張状態にある)三角形の相互接続部9060を備える
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュ110の一部分を示す。
図16Bは、伸張されている(すなわち伸張状態にある)三角形の相互接続部9060を備える
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む、薄膜メッシュ110の一部分を示す。
【0054】
[0100]
図16A及び
図16Bのスパイラル部9020は、三角形の相互接続部9060によって異なるスパイラル部9020のスパイラルアーム9040を一緒につなぐことによって、相互接続部される。このタイプの相互接続部は、スパイラル部9020が6個の伸張軸を有することができるようにする。スパイラル部9020のスパイラルアーム9040のそれぞれは、幅がおよそ3ミクロンとし得る。実験データによって、スパイラルアーム9040の幅がおよそ3ミクロンの状態で、スパイラル部9020が伸張されていないとき(すなわち非伸張状態にある)、ノード(例えば、スパイラル部の中心)からノード(例えば、スパイラル部の中心)までの距離はおよそ130μmであることが示されている。そして、スパイラル部9020が伸張されているとき(すなわち伸張状態にある)、ノード(例えば、スパイラル部の中心)からノード(例えば、スパイラル部の中心)までの距離はおよそ270μmである。軸当たりの伸張の百分率は、およそ68パーセントである。これにより、およそ280パーセントの薄膜メッシュ110の表面積の増加をもたらす。この設計はまた、mm
2当たりおよそ150個の細孔の細孔密度をもたらし、及び最長支柱間距離はおよそ50μmである。
【0055】
[0101]
図17A及び
図17Bは、非伸張状態及び伸張状態にある、代替的な三角形の相互接続部9070を含む薄膜メッシュ110の部分を示す。
図17A及び
図17Bの三角形の相互接続部9070は、
図16A及び
図16Bの三角形の相互接続部9060とは異なるように設計されており、
図17A及び
図17Bの三角形の相互接続部9070が、ある角度回転されて、薄膜メッシュ110の単位セル9000をより効率的にパッキングさせることができるようにしている。
図17Aは、代替的な三角形の相互接続部9070を備える
図9Aの複数の相互接続されたスパイラル部9020を含む3ボックスファイスパイラル部の十二角形ベースのシステムを含む薄膜メッシュ110の一部分を示す。
図17Bは、
図17Aの薄膜メッシュ110の一部分の拡大図を示す。
【0056】
[0102] IV.脱出防止(Anti-Prolapse)バックボーン設計によるスパイラルベースの薄膜メッシュ機器
[0103] 薄膜メッシュ110は、薄膜メッシュ機器120、例えば血管内ステントにおいて用いられ得る。
図18は、薄膜メッシュ110で被覆された薄膜メッシュ機器(例えば、血管内ステント)120を示す。薄膜メッシュ機器120は、起伏のある湾曲形状を含むバックボーン(例えば、ステントバックボーン)122を含み得、これは、
図18に示すように、さらに、湾曲形状の起伏部間に取り付けられた複数のS字形状122sを含む。バックボーン122に組み込まれたS字形状122sは、薄膜機器120が曲線状の輪郭を付けられるすなわち曲げられるときに、薄膜機器120の薄膜メッシュ110の脱出を防止する。
【0057】
[0104] 例えば、
図19Aは、ステント1900が曲線状の輪郭を付けられるすなわち曲げられるときに脱出1930を示す、従来の血管内ステント1900のステントカバー1910を示す。ステント1900は、追加的な構造がバックボーン1920に含まれていない、起伏のある湾曲形状を含む(例えば、追加的な構造がバックボーン1920の起伏のある湾曲形状内に含まれていない)、従来のバックボーン1920を含む。従来のステント1900が曲げられるとき、ステントカバー1910は脱出し1930、それにより、ステント1900の完全性及び機能性に影響を及ぼす。
図19Bは、薄膜メッシュ機器120のバックボーン122内にS字形状の湾曲部122sを追加しているため、脱出していない状態で曲線状の輪郭を付けられているすなわち曲げられている、
図19Aの薄膜メッシュ機器120を示す。
【0058】
[0105] V.スパイラルベースの薄膜メッシュの製造プロセス
[0106]
図20は、薄膜メッシュ機器、例えば薄膜メッシュ機器120用の薄膜メッシュ、例えば薄膜メッシュ110を製作するためのプロセス2000のフロー図である。
図21A~21Eに示すように、ブロック2002において、トレンチがウエハ2100(例えば、シリコンウエハ又は他のウエハ)に形成される。
図21Aは、上部に厚さ500ナノメートル(nm)~1マイクロメートル(μm)の酸化物層を有し得るウエハ2100を示す。
図21Bに示すように、フォトレジスト2102が、ウエハ2100上にスピンコート(spun-coated)される。
図21Cに示すように、フォトレジスト2102をパターニングし、且つフォトリソグラフィを使用して現像することによって、露出した領域2104のパターンが形成される。パターンは、スパイラル部の陰の領域及び/又は相互接続部、例えば三角形の相互接続部の陰の領域を規定し得る。露出した領域2104のパターンは、エッチングに利用可能である。
図21Dに示すように、少なくとも15μmの深さ(例えば、25μm~200μmの深さ)の溝又はトレンチ2106を形成するために、深掘反応性イオンエッチング(DRIE:Deep reactive ion etching)が行われる。フォトレジスト2102が除去され、且つウエハ2100が洗浄されて、
図21Eに示すような、トレンチ2106のある、エッチング済みのウエハ2100を生じる。トレンチ2106は、薄膜メッシュ210用のテンプレートを提供する微細パターンを形成し得る。例えば、微細パターンは、
図15A~17Bに示すものなどのスパイラル部の陰の領域を規定し得る。DRIEプロセスを使用する微細パターンの解像度は、例えばおよそ1μmとし得る。ウエハ2100は、複数の微細パターンを含み得る。本明細書では、測定可能な値に言及するときの用語「およそ」は、その値の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は±0.1%の変動を含む。
【0059】
[0107] ブロック2004において、
図21Fに示すように、リフトオフ層とも呼ばれる犠牲層2108(例えば、クロム犠牲層又は銅犠牲層)が堆積される。犠牲層2108は、スパッタ堆積又は蒸着、例えば電子ビーム物理蒸着(EBPVD:electron beam physical vapor deposition)によって堆積され得る。犠牲層2108の厚さは、例えば、1μm以下(例えば、およそ500nm)とし得る。
【0060】
[0108] ブロック2006において、
図21Gに示すように、ニチノール層2110が堆積される。ニチノール層2110の厚さは、例えば、1μm~20μm(例えば、およそ5μm)とし得る。トレンチ2106に対応する領域にスパッタされたニチノールは、トレンチ2106の底部に落ちるため、ウエハ2100のトレンチ2106の微細パターンは、
図15A~17Bに示すような、薄膜メッシュ110のスパイラル部の陰の領域などに対応する開窓(fenestrations)(例えば、閉ざされた開窓)としてニチノール層2110に複製される。結果として生じる開窓のパターンはまた、フィッシュ(fiche)として示され得、その開窓は、薄膜メッシュ110の拡張前、閉ざされた形態にある(例えば、
図15A及び
図16Aを参照)。マイクロフィッシュと同様に、開窓の各フィッシュ又はパターンは、薄膜メッシュ110が、開窓を完全に開けるまで拡張されるとき(例えば、
図15B及び
図16Bを参照)、結果として生じる開窓を効果的にコード化する。
【0061】
[0109] ブロック2008において、
図21Hに示すように、シャドーマスク2112が適用される。シャドーマスク2112は、メッシュ領域2114に適用され、且つボンディング層2118を堆積するためのシーム領域2116を露出する。
【0062】
[0110] ブロック2010において、
図21Iに示すように、ボンディング層2118(例えば、アルミニウムボンディング層)が堆積される。ボンディング層2118の厚さは、例えば、1μm以下(例えば、およそ500nm)とし得る。
【0063】
[0111] ブロック2012において、
図21Jに示すように、シャドーマスク2112が除去される。
【0064】
[0112] ブロック2014において、
図21Kに示すように、シャドーマスク2120が適用される。シャドーマスク2120は、シーム領域2116に適用され、且つ犠牲層2122を堆積するためにメッシュ領域2114を露出する。
【0065】
[0113] ブロック2016において、
図21Lに示すように、犠牲層2122(例えば、クロム犠牲層又は銅犠牲層)が堆積される。犠牲層2122の厚さは、例えば、1μm以下(例えば、およそ500nm)とし得る。
【0066】
[0114] ブロック2018において、
図21Mに示すように、シャドーマスク2120が除去される。
【0067】
[0115] ブロック2020において、
図21Nに示すように、ニチノール層2124が堆積される。ニチノール層2124の厚さは、例えば、1μm~50μm(例えば、およそ5μm)とし得る。ブロック2006と同様に、トレンチ2106に対応する領域にスパッタされたニチノールは、トレンチ2106の底部に落ちるため、ウエハ2100のトレンチ2106の微細パターンは、
図15A及び
図16Aに示すような、対応する開窓(例えば、閉ざされた開窓)、例えば薄膜メッシュ110のスパイラル部の陰の領域として、ニチノール層2124上に複製される。
【0068】
[0116] ブロック2022において、
図21Oに示すように、保護層2126(例えば、保護クロム層)が堆積される。保護層2126の厚さは、例えば、1μm以下(例えば、およそ500nm)とし得る。
【0069】
[0117] ブロック2024において、ニチノール層2110、2124及びボンディング層2118はアニールされて、
図21Pに示すように薄膜メッシュ110を形成する。ニチノール層2110、2124及びボンディング層2114を備えるウエハ2100が、高温で(例えば、およそ675℃でおよそ10分)アニールされて、ボンディング層2118を融解し、且つ非晶質のニチノール層2110、2124を結晶化させ得る。ニチノール層2110及びニチノール層2124は、内側シーム(inseam)領域2116に融合される。
【0070】
[0118] ブロック2026において、
図21Qに示すように薄膜メッシュ110が剥離される。アニールされたウエハ2100は、クロムエッチング液内に(例えば、およそ1時間)置かれて、ウエハ2100の上部から薄膜メッシュ110を剥離し得る。
【0071】
[0119] ブロック2028において、薄膜メッシュ110は拡張されて、開放されたスパイラル部、例えば
図15B及び
図16Bに示すようなスパイラル部を備える三次元薄膜メッシュ110を形成する。リフトオフプロセスと、犠牲層の複数の層によって分離されたニチノールの複数の層の堆積とを組み合わせることによって、他の実施形態において、様々な他の三次元形状の薄膜メッシュ110の製作を可能にすることが理解される。
【0072】
[0120] 薄膜メッシュ膜(例えば、薄膜メッシュ110)、又は対応するハイブリッド膜/構造が、下記で説明するような様々な治療に使用され得る。
【0073】
[0121] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜は、患者の体内の様々な治療箇所において、例えば様々なタイプの神経血管系(neurovasculature)、頚動脈血管床、心血管床、大動脈血管床、腸骨血管床、腎血管床、抹消血管床、上肢血管床において、及び他の同様の治療箇所において、使用され得る。
【0074】
[0122] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、例えば、火傷、褥瘡、瘢痕形成術、下肢虚血性潰瘍、並びに他の急性及び慢性創傷の創傷治癒を促すために使用され得る。
【0075】
[0123] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、損傷からか又は外科的介入からかに関わらず、激しい出血を止めるために使用され得る(「止血」)。
【0076】
[0124] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、骨治癒を促すために使用され得、これは、骨折部位の周りに巻かれる若しくはその内部に置かれるか、又は骨間の隙間を塞ぐ他の材料(例えばチタン)で形成された構造要素の周りに巻かれる。
【0077】
[0125] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、ヒトの軟骨細胞を増殖させ、且つ薄い軟骨板を生じるために使用され得る。この軟骨板は、膝若しくは股関節の関節置換手術又は他の骨関節炎の状態を遅らせるために、関節の手術において使用され得る。
【0078】
[0126] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、腫瘍の外科的切除に続いて腫瘍部位で直接化学療法を行うために使用され得る。
【0079】
[0127] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、心筋梗塞部位に心筋細胞を配置するために心臓手術において使用され得る。梗塞を受けて、外科医は、瘢痕領域を切除し、且つ膜又はハイブリッド膜を挿入して、一般に心筋梗塞を伴う瘢痕組織とは対照的な、健康な組織の再生を促す。
【0080】
[0128] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、損傷後の神経再生用の足場機器として使用され得る。薄膜メッシュ膜又はハイブリッド膜は、軸索成長を制御式に促すために、天然(native)の神経の様に整列したチャンネルを有する。
【0081】
[0129] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、薄膜メッシュの弾性特性ゆえに、靭帯を置き換えるために、再建手術又は美容整形において使用され得る(例えば、乳房組織は、器官の形状及び機械的特性を生じさせる複数の小さい靭帯要素を含み、及び乳房切除後プロテーゼ、すなわち、乳房インプラントは、本質的には、食塩水、シリコーンゲル、又は他の材料の非構造化袋である)。
【0082】
[0130] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、及び/又は対応するハイブリッド膜/構造は、軟骨細胞の下地が作られた(seeded)とき、より複雑な軟骨性構造(例えば、外耳、鼻の複数の部分)の基礎を作るために接合され得る。
【0083】
[0131] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、外傷によって又は疾患(例えば、腫瘍)によって損傷された眼の複数の要素を置き換えるために使用され得る。
【0084】
[0132] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、肺の気管支樹の置換要素を構成するために使用され得る。
【0085】
[0133] いくつかの実施形態では、ニチノールで構成されるか若しくはそれを含む、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、筋細胞の下地が作られて、置換骨格筋を構成し得る。ニチノールは、そこに電流が通されると形状を変化させる能力を有するため、好都合にも、義肢に使用され得る。
【0086】
[0134] いくつかの実施形態では、薄膜メッシュ膜、薄膜メッシュ構造、又は対応するハイブリッド膜/構造は、対象の解剖学的部位へ小分子及び大分子(すなわちタンパク質)の双方を送達するための手段として使用され得る。
【0087】
[0135] 上述の方法が、ある順序で発生するいくつかの事象を示す場合、本開示の恩恵にあずかる当業者は、順序は修正されてもよいこと、及びそのような修正例は、本開示の変形例に従うことを認識する。さらに、方法の複数の部分は、可能なときには、並行プロセスにおいて同時に実施されても、並びに連続して実施されてもよい。さらに、方法のより多くのステップ又はより少ないステップが実施され得る。
【0088】
[0136] いくつかの説明に役立つ実施形態及び方法を本明細書で開示したが、上記の開示から、当業者には、そのような実施形態及び方法の変形例及び修正例は、本開示の真の趣旨及び範囲から逸脱せずになされ得ることが明らかとし得る。多くの他の例が存在し、それぞれ、詳細情報に関してのみ、他のものとは異なる。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲並びに適用法のルール及び原理によって求められる範囲に限定されるだけであるとする。